JP4430726B2 - フェリチンを基板上に二次元配列させる方法 - Google Patents

フェリチンを基板上に二次元配列させる方法 Download PDF

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Description

本発明はフェリチンを基板上に二次元配列させる方法に関する。
フェリチンは球状のタンパク質であり、内部には酸化鉄に代表される金属化合物を内包している。なお、内部に金属化合物を内包せず、当該内部が空洞になっている場合には、「アポフェリチン」と呼ばれる。
フェリチンを基板上に二次元的に配列させた後、当該フェリチンを加熱により除去し、必要に応じて金属酸化物を還元することにより、容易に金属を基板上に二次元的に配列させてなる量子ドットを得ることができる。そのため、図1に示されるように、フェリチンを基板上に二次元的に配列させることが報告されている(例えば、特許文献1や非特許特許文献1を参照)。
国際公開第03/040025号公報パンフレット Langmuir, Vol.23, p1615-1618, (2007)
特許文献1の方法によれば、図87に示されるように、隣接する2つのフェリチン15の間を2価の金属イオン(図87ではカドミニウムイオン)で架橋する。
フェリチンを加熱により除去した後、この2価の金属イオンが基板上に不純物として残存する。
この不純物はイオンとして基板上を移動すると考えられている上、金属を基板上に二次元的に配列させてなる量子ドットにおいて、予想もしていなかった界面準位が当該不純物によって発生することがある。
結果として、この不純物は上記量子ドットにおいて悪影響をもたらす。
非特許文献1の方法によれば、2価の金属イオンを使うこと無く2次元結晶を形成しているが、図88に示されるように、特定のペプチド(カーボンナノ材料認識ペプチド、配列番号5)をフェリチン外表面に呈示させる必要がある。
本発明は、このような悪影響がなく、フェリチンを基板上に二次元配列させる方法を提供する。
上記の課題を達成する本発明は、フェリチンを基板上に二次元配列させる方法であって、前記基板の表面は親水性を有しており、前記方法は、水からなる溶媒および前記フェリチンを有する溶液を前記基板上に展開する工程、および前記基板上に展開した溶液から前記溶媒を除去する除去工程を包含し、前記フェリチンにはN末端に配列番号1で示されるアミノ酸配列が修飾されているという特徴を有する。
前記基板の表面は、SiOで覆われていることが好ましい。
前記溶液は、PIPES(Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)、硫酸アンモニウム、または酢酸アンモニウムの少なくとも1種を含むことが好ましい。
前記溶液がPIPESを含む場合、その濃度は、5mM以上50mM以下とすることが好ましい。
また、前記溶液が硫酸アンモニウムを含む場合、その濃度は、6.5mM以上52mM以下とすることが好ましい。
また、前記溶液が酢酸アンモニウムを含む場合、その濃度は、2mM以上100mM以下とすることが好ましい。
なお、前記溶液のpHは、6.0以上8.0以下の範囲に調整することが好ましい。
本発明によれば、隣接する2つのフェリチンの間を結合させる金属イオンは存在しない。そのため、金属を基板上に二次元的に配列させてなる量子ドットにおいて、予想もしていなかった界面準位が現れるということに代表される悪影響を抑制することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において用いられるフェリチンは、外周面にDYYSSSYYEYYS(以下、配列番号1)で示されるアミノ酸配列を有している。一例として、本発明において用いられるフェリチンは、配列番号2に示されるタンパク質である。このタンパク質は、187残基を有し、174残基のウマ由来フェリチンのアミノ酸配列(配列番号6)のアミノ末端に、開始コドンに対応するメチオニンと配列番号1のアミノ酸配列とからなる13残基のアミノ酸配列が付加されたものである。
後述する実験例では、本発明において用いられるフェリチンは、「Y6S4DE-Fer0」と記述される。アポフェリチンである場合には、それは「apoY6S4DE-Fer0」と記述される。後述する実験例では、他のアポフェリチンについても、フェリチン名の前に「apo」を付して記述される。
従来のフェリチンはこの配列番号1で示されるアミノ酸配列を有さない。従来例のフェリチン(非特許文献1を参照)は、174残基のウマ由来フェリチンのアミノ酸配列(配列番号6)のアミノ末端に、開始コドンに対応するメチオニンとペプチド配列DYFSSPYYEQLF(配列番号5)とからなる13残基のアミノ酸配列が付加されたものである。後述する比較例からも理解されるように、従来例のフェリチンにおいて、配列番号5に相当するアミノ酸配列を闇雲に改変したフェリチンを用いても、基板上に二次元配列させることはできない。後述する実験例では、従来例のフェリチンは、「N1-LF」と記述される。
本明細書において用いられる用語「二次元配列」とは、図1に模式図を示すように、平面視において複数のフェリチン15が基板11の上に規則的に配置され、断面視において複数のフェリチン15によって1層のフェリチン膜が形成されている配列を意味する。
図2の断面図に示されるように、2層以上のフェリチン膜が形成されている配列は、用語「二次元配列」には含まれない。このような配列は、必要な場合、「三次元配列」と呼ばれ、本明細書では用語「二次元配列」とは区別される。ただし、1層のフェリチン膜において、ごく一部に(すなわち局所的に)三次元配列となっているような場合までを、用語「二次元配列」から排除することは意図されない。
本明細書における「二次元配列」の評価方法には、フェリチンを含む300nm X 300 nm のSEM観察像を二次元フーリエ変換し、得られたフーリエ変換像を用いる。図1の模式図に示す六方最密充填された二次元配列は、60度ずつ方向の異なった3つの正弦波の重なったもので近似できることが知られている。前述の二次元配列のフーリエ変換像では3つの正弦波に対応する図3のように6つの点が現れる。各点は波数0の点を中心に60度ずつ回転した位置にある。前述の近似が成立しない(すなわち、二次元配列が存在しない)場合は、フーリエ変換像に6つの点は現れない。
図1の模式図に示す二次元配列の周期性が崩れた(すなわち二次元配列が劣化した)場合や、二次元配列が単一の結晶のみから構成される単結晶ではなく複数の結晶粒塊から構成される多結晶の場合、フーリエ変換像に明瞭な6つの点は現れず、方位の異なる多結晶の数だけ同心円上に点が現れ、極端な場合は図4のように円状の図形が現れる。したがって、図3に模式図を示すように、明瞭な6つの点が現れる場合を「良質な二次元配列」、元のSEM観察像には「二次元配列」が含まれるが図4に模式図を示すように明瞭な6つの点が現れない場合を「劣った二次元配列」、それ以外を「二次元配列を形成しない」と評価する。
基板の表面は親水性を有している。基板としてはSi基板を用いることができる。
Si基板の表面を酸化してSiOとすることにより、表面に親水性が付与され得る。この場合、基板の表面は微弱なマイナスの電位を有する。
本発明に係るフェリチンを基板上に2次元配列させる方法は、展開工程および除去工程を有する。まず、展開工程を説明する。
(1)展開工程について
展開工程では、溶媒、前記フェリチン、および12.5mM PIPES-NaOH (pH7.0), 12.5mM PIPES-Tris (pH7.0), 13mMの硫酸アンモニウム((NH4)2SO4)、もしくは20mMの酢酸アンモニウム(CH3CO2NH4)を有する溶液を前記基板上に展開する。なお、緩衝液としてPIPES(弱酸性)を使用する場合には、pHをNaOHにより調節する(このような緩衝液を「PIPES-NaOH」と記述する)が、本発明では、金属イオンは不純物となり得る。そのため、弱アルカリ性の緩衝液を採用し、そのpHをHClなどの酸によって調節する方が望ましい。
具体的な展開の方法としては、基板上に溶液を滴下する方法の他、次のような方法も挙げられる。すなわち、パラフィルムに代表される薄膜の表面に溶液を滴下し、次いで親水性を有する面を下にして基板を溶液上に静かに置く。すなわち、パラフィルムに代表される薄膜と、親水性を有する面を下にした基板との間に溶液を挟む。
(2)除去工程について
次に、除去工程について説明する。除去工程では、基板上に展開した溶液から溶媒を除去する。代表的には溶液は緩衝液であるため、溶媒は当該緩衝液の大部分を占める水である。そこで、ここでは基板上から水を除去する方法を説明する。
溶媒を除去する具体的な方法としては、基板を遠心分離させる方法や、基板から溶媒を蒸発させる方法などが挙げられる。速やかに溶媒を除去するという観点から、基板を遠心分離させる方法が好ましい。いずれにせよ、乾燥、濃縮、手法を問わず、除去工程では基板上から水を除去すればよい。
このようにして、フェリチンを基板上に2次元配列させることができる。なお、量子ドットを得る場合、一般的にこのように2次元配列されたフェリチンを加熱して、外側のタンパク質を除去し、さらに必要に応じて金属酸化物を還元することにより、容易に金属を基板上に二次元的に配列させてなる量子ドットを得ることができる。
なお、金属を化合物半導体に置換することも可能である(国際公開第03/099008号パンフレットを参照)。
[実施例]
以下、本発明を実験例と共にさらに詳細に説明する。
本実験例では、以下の表1に示される試薬を用いた。
本実験例では、174残基のウマ由来フェリチンのアミノ酸配列(配列番号6)のアミノ末端に、開始コドンに対応するメチオニンと以下の表2に示されるアミノ酸配列とからなるペプチド配列を導入したフェリチンを用いた。各アミノ酸配列に対応するDNA配列は、表2に記載の通りである。本実験例において、各フェリチンは、「ペプチド名称-Fer0」と記述される。
(準備1・タンパク質発現ベクターの構築)
まず、以下にタンパク質発現ベクターの構築手順を示す。
1.タンパク質発現用プラスミドベクターpKIS9(配列番号4)溶液を準備した。必要ならば、前述のプラスミドベクターを保持する大腸菌より単離精製した。(QIAGEN社より頒布されている、QIAprep_Miniprepプロトコールとトラブルシューティングも参照)
2.プラスミド溶液の260nmを含む吸収波長をUV/VISスペクトロメーター(ND-1000, NanoDrop社)で測定し、DNA濃度を算出した。
3.オートクレーブ滅菌済1.5mlエッペンドルフチューブに、2μLのx10 NEB 4 buffer, 15μLの148ng/μLのpKIS9 プラスミドDNA溶液[TE Buffer (10 mM Tris-HCl(pH8.0)、1 mM EDTA], 1μLのSac I溶液, 1μLのNde I溶液を加え、ピペッティングで混合し、37℃で1時間、反応させた。
4.反応液を2%(w/v)アガロースゲルを用いたアガロースゲル電気泳動し、目的のプラスミドDNA断片を分離し、アガロースゲルより抽出した (QIAGEN社より頒布されている、MinElute Gel Extraction Kitプロトコールとトラブルシューティングも参照)。
5.DNA断片溶液の260nmを含む吸収波長をUV/VISスペクトロメーター(ND-1000, NanoDrop社)で測定し、DNA濃度を算出した。
6.所望のアミノ酸配列をコードするDNA配列の5’末端側にNde I制限酵素切断部位、3’末端側にSaI制限酵素切断部位を付加した一本鎖オリゴDNAを合成した。同時に、前述の一本鎖オリゴDNAを相補するオリゴDNAを合わせて合成した(一本鎖オリゴDNAは、シグマジェノシスもしくはTaKaRaバイオより入手した)。
7.挿入する5μMの一本鎖オリゴDNA溶液と5μMの相補DNA鎖溶液を10μLずつ等量混合し、95℃で3分間アニーリングした後、室温で冷却し、末端にNde I/Sac I部位をもつ二本鎖オリゴDNAを作製した。
8.pKIS9 プラスミドDNA断片と二本鎖オリゴDNAを接合させ、タンパク質発現用(各フェリチン発現用)プラスミドベクターを作製した(TaKaRa社より頒布されている、DNA Ligation System DNA Ligation Kit Ver.2.1説明書も参照)。
(準備2-1・Y6S4DE-Fer0大量発現・精製)
まず、以下にapo Y6S4DE-Fer0の合成・精製手順を示す。なお、Shuffle-Fer0, D2N-Fer0, E10Q-Fer0, E10S-Fer0, P7S-Fer0, ΔHY-Fer0, 2ndhalf-Fer0, Y8F-Y9F-Fer0、S5T-S6T-Fer0、NF-LFの合成・精製方法も、使用するタンパク質発現用プラスミドベクターのN末端側の塩基配列がそれぞれ表2に記載の塩基配列である点以外は同様である。
1.大腸菌XL1-blue (NOVAGENE)にタンパク質発現用プラスミドベクター(配列番号3)を導入し、形質転換した (ニッポンジーンにより頒布されている、ECOS TM Competent E.coli DH5α, JM109, XL1-Blue, BL21(DE3) Manual (ver.6)のマニュアルも参照) 。
2.形質転換済の大腸菌コロニーを15ml滅菌済コーニングチューブに入れた1 ml のLB培地(50μg/ml アンピシリンを含む)で振盪培養(装置:TAITEC Bio Shaker BR-40LF、設定温度:37℃、培養時間:5〜7時間、振盪速度120rpm)した。
3.前述の培養液(0.1〜0.5ml)を500mlの三角フラスコ中で50 ml のLB培地(50μg/ml アンピシリンを含む)で37℃、16-20時間、振盪培養した。
4.培地の濁度測定を分光光度計(Ultrospec 3100 pro, GEヘルスケアバイオサイエンス社)で行い、OD600: 0.1〜0.5に達した時点で、前述の培養液50mlを6LのLB培地(100μg/ml アンピシリンを含む)で撹拌培養(装置:ABLE BMS-10/05、設定温度:37℃、撹拌速度:振盪速度200rpm、空気流量:4L/min、培養時間:18〜20時間)した。
5.培地の濁度測定を行い、OD600: 4.0〜5.0であることを確認し、低速遠心機(型番:Avanti HP-25、ローター型番:JA-10, BECMAN社、設定温度:4℃、設定回転数:8000rpm, 時間:10min)でJA-10用遠沈管に集菌した。
6.集菌した菌体を、50mM Tris-HCl (200ml〜300ml) に懸濁し、低速遠心機(前述5と同様)でJA-10用遠沈管に回収した。
7.集菌した菌体を、50mM Tris-HCl (120ml) に懸濁、氷中に設置し、超音波破砕機(装置:Branson Digital Sonifier 450、設定出力値:140W、パルス設定:on/off 1秒、破砕時間:2分間 x 3回、)で、細胞を破砕した。
8.低速遠心機(型番:Avanti HP-25、ローター型番:JA-20, BECMAN社、設定温度:4℃、設定遠心力:6000×g, 時間:10min)で遠心し、上清を回収した。
9.回収した上清を、熱処理(75℃, 20分間)し、熱処理後、常温に戻るまで(おおよそ1時間程度)室温に静置した。
10.低速遠心機(前述8と同様)で遠心し、上清を回収した。
11.回収した上清に最終濃度0.5 M NaClとなるように、5 M NaClを加え懸濁した。
12.低速遠心機(前述8と同様)で遠心し、沈殿を回収した。
13.回収した沈殿を50mM Tris-HCl (120ml) に懸濁し、最終濃度0.4 M NaCl となるように、5M NaClを10.54ml加え懸濁した。
14.低速遠心機(前述8と同様)で遠心し、沈殿を回収した。
15.沈殿を回収後、13〜14の操作を再度繰り返した。
16.沈殿を50mM Tris-HCl (60ml) に懸濁し、0.22μmのシリンジフィルターに通し、精製を完了した。
(準備2-2・apoΔAR-Fer0の大量発現・精製)
まず、以下にapoΔAR-Fer0の合成・精製手順を示す。なお、1st half-Fer0, 5AA-Fer0の合成・精製方法も、使用するタンパク質発現用プラスミドベクターのN末端側の塩基配列がそれぞれ表2に記載の塩基配列である点以外は同様である。
1.大腸菌XL1-blue (NOVAGENE)にタンパク質発現用プラスミドベクターを導入し、形質転換した。(ニッポンジーンにより頒布されている、ECOS TM Competent E.coli DH5α, JM109, XL1-Blue, BL21(DE3) Manual (ver.6)のマニュアルも参照)
2.形質転換済の大腸菌コロニーを15ml滅菌済コーニングチューブに入れた1 ml のLB培地(50μg/ml アンピシリンを含む)で振盪培養(装置:TAITEC Bio Shaker BR-40LF、設定温度:37℃、培養時間:5〜7時間、振盪速度120rpm)した。
3.前述の培養液(0.1〜0.5ml)を500mlの三角フラスコ中で50 ml のLB培地(50μg/ml アンピシリンを含む)で37℃、16-20時間、振盪培養した。
4.培地の濁度測定を分光光度計(Ultrospec 3100 pro, GEヘルスケアバイオサイエンス社)で行い、OD600: 0.1〜0.5に達した時点で、前述の培養液50mlを6LのLB培地(100μg/ml アンピシリンを含む)で撹拌培養(装置:ABLE BMS-10/05、設定温度:37℃、撹拌速度:振盪速度200rpm、空気流量:4L/min、培養時間:18〜20時間)した。
5.培地の濁度測定を行い、OD600: 4.0〜5.0であることを確認し、低速遠心機(型番:Avanti HP-25、ローター型番:JA-10, BECMAN社、設定温度:4℃、設定回転数:8000rpm, 時間:10min)でJA-10用遠沈管に集菌した。
6.集菌した菌体を、50mM Tris-HCl (200ml〜300ml) に懸濁し、低速遠心機(前述5と同様)でJA-10用遠沈管に回収した。
7.集菌した菌体を、50mM Tris-HCl (120ml) に懸濁、氷中に設置し、超音波破砕機(装置:Branson Digital Sonifier 450、設定出力値:140W、パルス設定:on/off 1秒、破砕時間:2分間 x 3回、)で、細胞を破砕した。
8.低速遠心機(型番:Avanti HP-25、ローター型番:JA-20, BECMAN社、設定温度:4℃、設定遠心力:6000×g, 時間:10min)で遠心し、上清を回収した。
9.回収した上清を、熱処理(75℃, 20分間)し、熱処理後、常温に戻るまで(おおよそ1時間程度)室温に静置した。
10.低速遠心機(前述8と同様)で遠心し、上清を回収した。
11.但し、十分に破砕物が沈殿しない場合は、低速遠心機(型番:Avanti HP-25、ローター型番:JA-20, BECMAN社、設定温度:4℃、設定遠心力:15000×g, 時間:10min)で遠心し、上清を回収した。
12.破砕上清を0.22μmフィルター (MilieX-GV Cat.No.SLGV033RS, Millipore社) で濾過し、濾液1を得た。
13.陰イオン交換カラムHiLoad-26/10 Q Sepharose-HP(GE Healthcare社)をタンパク質精製用HPLCシステム(AKTA explorer 10S, GE Heathcare社)に接続した。
14.50mM Tris-HCl緩衝液pH8.0を開始移動相(buffer A)として用い、事前に400ml以上を毎分7.0mlの流速で送液した。
15.上記濾液1をサンプルループに装填し、毎分7mlの流速で上記カラムに注入した。
16.50mM Tris-HCl緩衝液pH8.0を開始移動相(buffer A)として用い、400ml以上を毎分7.0mlの流速で送液し、非吸着画分を取り除いた。
17.1 M NaClを含む50mM Tris-HCl緩衝液pH8.0を勾配移動相(buffer B)として用い、カラムベッド容量(53.093 ml)の10容量(530.93ml)でbuffer Aとの混合比10〜60 %の勾配でタンパク質画分の溶出を実施した。
18.目的のタンパク質はおおよそ混合比30%程度で溶出した。
19.混合比30%を含む各画分より10μLを取り分け、アクリルアミド濃度12.5%のSDS-PAGEゲルを用い、SDS-PAGEを実施した。
20.SDS-PAGEにより目的タンパク質の画分を決定し、限外ろ過装置(Centriprep YM30, Millipore社)に上記画分を移した。
21.上記Centriprep YM30を遠心機(LC-200 TOMY社 設置温度:4℃)のスウィングローターに設置した。
22.回収管に残る溶液が3ml以下になるまで、3000rpmで遠心を繰り返し濃縮した。
23.回収管より濃縮溶液を回収した。
24.(準備2-1)に示した精製手順と比較して、目的タンパク質の純度が低い場合は、以下の手順でゲル濾過を実施した。
25.TSK-GEL BIOASSIST G4SWXL樹脂(東ソー社)を充填したTricorn 10/600カラム(GE Healthcare社)を汎用HPLCシステム(8020シリーズ 東ソー社)に接続した。
26.150mM NaClを含む50mM Tris-HCl緩衝液pH8.0を移動相として用い、事前に100ml以上を毎分0.5mlの流速で送液した。
27.3ml以下の濃縮溶液1をサンプルループに装填し、毎分0.5mlの流速で上記カラムに注入した。
28.280nmの波長をUV/VIS検出器(UV-8020 東ソー社)で監視し、制御用PCにインストールされたソフトウェア(LC-8020 Model II東ソー社)を用いて記録した。
29.フラクションコレクター (FC-8020 東ソー社)で溶出液を1.0mlずつ回収し、目的タンパク質の含まれる画分を回収した。
30.得られたタンパク質溶液は濃度未知である。
(準備3・タンパク質の濃度定量)
上記大量発現・精製により得られたタンパク質溶液(例えばapoY6S4DE0-Fer0を含む溶液)は濃度未知である。そこで、以下の方法に従って、濃度未知のタンパク質溶液の濃度を測定した。
タンパク質濃度定量は、Lowry法に従い、DCプロテインアッセイキット(Cat. No. 500-0112JA, BioRad社)を用いた。
1.標準タンパク質として、濃度既知のBSA (Bovine Albumin Serum, Cat. No. 23209 PIACE社)溶液を、所定の濃度(0.2, 0.4, 0.6, 1.0, 2.0 mg/ml)に超純水で希釈して用いた。
2.反応液を次の手順で作製した。タンパク質溶液(もしくはコントロールとして超純水)25 μlと試薬A 125 μlをマイクロチューブに取り混合した。
3.続いて、試薬B 1mlを同マイクロチューブに取り混合し、室温25(±1)℃で15分以上反応させた。
4.反応後、1時間以内に750nmで吸光度を分光光度計(Ultrospec 3100 pro, GEヘルスケアバイオサイエンス社)で測定した。
5.BSA溶液のタンパク質濃度に対する750nmの吸光度をプロットし、最小二乗法により(未知試料のタンパク質濃度)=A(未知試料の750nmの吸光度)+Cの式を導いた。
6.試料の任意希釈液を上記の手順でタンパク質濃度を定量し、希釈率を掛けて試料原液の濃度を導いた。得られたタンパク質濃度(溶液に含まれるapoY6S4DE-Fer0の濃度)は、2.5 mg/mlであった。
(準備4・アポフェリチンの純度検定)
得られたアポフェリチン(例えば、apoY6S4DE-Fer0)が、コア合成に適した純度であるかどうかについて、以下の手順により検定した。
純度は以下のようなゲル濾過により決定した。
1.TSK-GEL BIOASSIST G4SWXLカラム(東ソー社)を接続したを汎用HPLCシステム(8020シリーズ 東ソー社)を用いた。
2.50mM Tris-HCl緩衝液pH8.0を移動相として用い、事前に50ml以上を毎分1.0mlの流速で送液した。
3.濃度1mg/mlの精製溶液0.1mlをサンプルループに装填し、毎分1.0mlの流速で上記カラムに注入した。
4.280nmの波長をUV/VIS検出器(UV-8020 東ソー社)で監視し、制御用PCにインストールされたソフトウェア(LC-8020 Model II東ソー社)を用いて記録した。
5.試料に含まれるフェリチンサブユニット相当のピーク(溶出時間:13〜14分)が検出限界以下であり、アポフェリチン由来のピーク(単量体:8.6分, 二量体:7.8分)のみであることを確認した。
(準備5・Inを内包するフェリチンの合成)
以下のように、二次元配列作製に用いるIn酸化物をアポフェリチン(例えば、apoY6S4DE-Fer0)の内部に合成した。
本実施例では、最終溶液組成が[0.2 M リン酸二水素ナトリウム, 12 mM アンモニア, 40 mM HCl, 0.1 mg/ml apoY6S4DE-Fer0, 1 mM 硫酸インジウム]となるように以下の手順で80 mlの反応液を調製した。
1.125 mlの角形培地瓶(Nalge Nunc 2019-0125)に16 mlの1 M リン酸二水素ナトリウム, 0.96 mlの1 M アンモニア, 3.2 mlの1 N HCl, 56.64 mlの超純水を表記の順番で加え撹拌子で撹拌した。
2.pHメーターでpHを測定し、pH 2.88 (±0.02以内)であることを確認した。
3.3.2 mlの2.5 mg/ml apoY6S4DE-Fer0を含む2 mM Tris (pH8.0)溶液を加え、撹拌子で撹拌した。
4.41.4 mgの硫酸インジウム粉末を加え、粉末を反応液に溶かした。
5.反応液の入った角形培地瓶をキャップで密封し、撹拌しつつ25℃(±1℃)で3時間、反応させた。
6.反応後、反応液を40mlずつ50mlのファルコンチューブに分注した。
7.ファルコンチューブを遠心機LC-200(TOMY)のスウィングローターに設置し、3000rpm、10分間遠心し、上清1を取り除き、沈殿1を回収した。
8.沈殿1に5mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を加え、vortexミキサーを使い懸濁した。
9.沈殿1を含むファルコンチューブを遠心機LC-200のスウィングローターに設置し、3000rpm、10分間遠心し、上清2と沈殿2とを得た。上清2を新しいファルコンチューブに分注した。
10.沈殿2に5mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を加え、vortexミキサーを使い懸濁した。
11.沈殿2を含むファルコンチューブを遠心機LC-200のスウィングローターに設置し、3000rpm、10分間遠心し、上清2’と沈殿2’とを得た。上清2’を新しいファルコンチューブに分注した。
12.沈殿2'に5mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を加え、vortexミキサーを使い懸濁した。
13.沈殿2'を含むファルコンチューブを遠心機LC-200のスウィングローターに設置し、3000rpm、10分間遠心し、上清2’'と沈殿2’'とを得た。上清2'’を新しいファルコンチューブに分注した。
14.上清2(約5ml)、上清2'(約5ml)、および上清2''(約5ml)のそれぞれに0.5mlの5 M NaClを加え、ファルコンチューブを倒置し、撹拌した。
15.上記ファルコンチューブを遠心機LC-200のスウィングローターに設置し、3000rpm、10分間遠心し、上清3、上清3’、上清3’’、を取り除き、沈殿3、沈殿3’、沈殿3’’を回収した。
16.沈殿3に10mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を加え、vortexミキサーを使い懸濁し、懸濁液3を得た。
17.沈殿3’に懸濁液3を加え、vortexミキサーを使い懸濁し、懸濁液3’を得た。
18.沈殿3’’に10mlの懸濁液3’を加え、vortexミキサーを使い懸濁し、懸濁液3’’を得た。
19.上記の懸濁液3’’(約10ml)に0.9mlの5 M NaClを加え、ファルコンチューブを倒置し撹拌した。
20.ファルコンチューブを遠心機LC-200のスウィングローターに設置し、3000rpm、10分間遠心し、上清4を取り除き、沈殿4を回収した。
21.沈殿4に10mlの50mM Tris-HCl緩衝液(pH8.0)を加え、vortexミキサーを使い懸濁し、懸濁液4を得た。
22.Apollo 20ml(QMWL 150kDa) 遠心濃縮器の回収管に懸濁液5を移した。
23.Apollo 20ml遠心濃縮器を遠心機LC-200のスウィングローターに設置し、回収管に残る溶液が1ml以下になるまで、3000rpmで遠心を繰り返し濃縮した。
24.回収管より濃縮溶液1を回収した。
25.上記「準備3・タンパク質の濃度定量」に示した手順で、In酸化物をコアに持つY6S4DE-Fer0(以下、Y6S4DE-Fer0(In)と表記)の濃度を決定した。以下においては、In酸化物をコアに持つフェリチンを、フェリチン名の最後に(In)との表記を付して表す。
(準備6・X-Fer0(In)の高純度化)
二次元規則配列化には、In酸化物コアを内部に持つ高純度(単量体純度99.5%以上)なフェリチン(以後、X-Fer0 (In)と表記、XはY6S4DEなどのペプチド名称)が望まれる。
そこで、本実施例では、以下に示すように、二次元規則配列化に用いるX-Fer0 (In)を高純度化した。
1.TSK-GEL BIOASSIST G4SWXL樹脂(東ソー社)を充填したTricorn 10/600カラム(GE Healthcare社)を汎用HPLCシステム(8020シリーズ 東ソー社)に接続した。
2.50mM Tris-HCl緩衝液pH8.0を移動相として用い、事前に100ml以上を毎分0.5mlの流速で送液した。
3.3ml以下の濃縮溶液1をサンプルループに装填し、毎分0.5mlの流速で上記カラムに注入した。
4.280nmの波長をUV/VIS検出器(UV-8020 東ソー社)で監視し、制御用PCにインストールされたソフトウェア(LC-8020 Model II東ソー社)を用いて記録した。
5.フラクションコレクター (FC-8020 東ソー社)で溶出液を1.0mlずつ回収し、X-Fer0 (In)単量体の含まれる画分を回収した。
6.上記「準備3・タンパク質の濃度定量」に示した手順で、X-Fer0 (In)の濃度を決定した。
(準備7・基板の準備)
本発明の二次元配列化に用いる、表面が親水性を有する基板を準備する。
(熱酸化シリコン基板)
UV/オゾン処理(紫外線/オゾンによる洗浄)により、表面の有機物を取り除く手順を以下に示す。
1.使用直前(すなわち、後述するように、フェリチンを2次元配列させる直前)に、熱酸化シリコン基板(SiO2膜厚3nm)を5 x 10 mmに劈開した。
2.装置 (Model UV-1, SAMCO社)を用い、 基板温度110℃, 酸素流量0.5 L/min, 洗浄時間10分間として熱酸化シリコン基板をUV/オゾン処理した。
(フェリチンの二次元配列)
以上の準備1〜7が終了後、フェリチンを以下の手順(以下、「サンドウィッチ法」と呼ぶことがある)に従って2次元配列させた。
1.最終濃度の2倍濃度のタンパク質/2mM Tris緩衝液を用意した。例えば、最終濃度が0.5mg/ml Y6S4DE-Fer0 (In)の場合は、1.0mg/ml Y6S4DE-Fer0 (In)を用意した。
2.最終濃度の2倍濃度の配列化溶液を用意した。例えば、最終濃度が13 mM 硫安の場合は、26 mM 硫安溶液を用意した。
3.タンパク質溶液、結晶化溶液それぞれ5 μlずつをマイクロテストチューブに取り、ピペッティングもしくはVortex mixtureで混合した。
4.任意の大きさのパラフィルムをプラスチックシャーレ中に設置し、混合溶液5 μlをパラフィルム上に滴下した。
5.「(準備7・基板の準備)」に従い準備した基板の親水化処理面を液滴に接触させるように設置した。
6.プラスチックシャーレの蓋を被せて、恒温器(LTI-2000, 東京理化器械社)中で20(±0.5) ℃ 30分間、静置した。
7.所定時間経過後、基板を真空ピンセットでパラフィルムより引き剥がし、1.5 mlのマイクロテストチューブ内に移した。
8.上記のマイクロテストチューブを遠心機(5415D eppendrf社)で1500G 10分間、遠心し基板上の余剰溶液を除去した。
9.基板をマイクロテストチューブより取り出し、SEM(JEOL SEM7400F)観察を行う。観察条件は加速電圧:5 kV, エミッション電流10μAとした。
結果は以下の通りである。
(実施例1)
0.5mg/ml Y6F4DE-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図5に、そのフーリエ変換像を図6に示す。
(実施例2)
0.5mg/ml Y6F4DE-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-Tris (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図7に、そのフーリエ変換像を図8に示す。
(実施例3)
0.5mg/ml Y6F4DE-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図9に、そのフーリエ変換像を図10に示す。
(実施例4)
0.5mg/ml Y6F4DE-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図11に、そのフーリエ変換像を図12に示す
図5から図12までに示されるように、外周面に配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するフェリチンは「良質な二次元配列」もしくは「劣った二次元配列」を形成することが確認された。
(比較例1)
0.5mg/ml N1-LF(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図13に、そのフーリエ変換像を図14に示す。
(比較例2)
0.5mg/ml N1-LF(In)、および12.5 mM PIPES-Tris (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図15に、そのフーリエ変換像を図16に示す。
(比較例3)
0.5mg/ml N1-LF(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図17に、そのフーリエ変換像を図18に示す。
(比較例4)
0.5mg/ml N1-LF(In)、および20 mM 酢安、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図19に、そのフーリエ変換像を図20に示す。
外周面に配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するフェリチンは、図13から図20までに示される従来例のN1-LFと比較して同等にもしくは条件付き同等(例えば、二次元配列のドメインサイズが小さい)だが、「良質な二次元配列」もしくは「劣った二次元配列」を形成することが確認できた。
(比較例5)
0.5mg/ml D2N-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図21に、そのフーリエ変換像を図22に示す。
(比較例6)
0.5mg/ml D2N-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図23に、そのフーリエ変換像を図24に示す。
(比較例7)
0.5mg/ml D2N-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図25に、そのフーリエ変換像を図26に示す。
(比較例8)
0.5mg/ml E10Q-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図27に、そのフーリエ変換像を図28に示す。
(比較例9)
0.5mg/ml E10Q-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図29に、そのフーリエ変換像を図30に示す。
(比較例10)
0.5mg/ml E10Q-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図31に、そのフーリエ変換像を図32に示す。
(比較例11)
懸濁されたE10S-Fer0(In)、および2 mM Tris-HCl緩衝液pH8.0、および/熱酸化シリコン基板を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図33に、そのフーリエ変換像を図34に示す。
(比較例12)
0.5mg/ml P7S-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図35に、そのフーリエ変換像を図36に示す。
(比較例13)
0.5mg/ml P7S-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図37に、そのフーリエ変換像を図38に示す。
(比較例14)
0.5mg/ml P7S-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図39に、そのフーリエ変換像を図40に示す。
外周面に従来例のN1-LFと一つ異なるアミノ酸配列を有するフェリチンD2N-Fer0, E10Q-Fer0, E10S-Fer0, P7S-Fer0は、「良質な」もしくは「劣った」二次元配列を形成することが確認できた。
(比較例15)
0.5mg/ml Y8FY9F-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図41に、そのフーリエ変換像を図42に示す。
(比較例16)
0.5mg/ml Y8FY9F-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-Tris (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図43に、そのフーリエ変換像を図44に示す。
(比較例17)
0.5mg/ml Y8FY9F-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図45に、そのフーリエ変換像を図46に示す。
(比較例18)
0.5mg/ml S5TS6T-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図47に、そのフーリエ変換像を図48に示す。
(比較例19)
0.5mg/ml S5TS6T -Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図49に、そのフーリエ変換像を図50に示す。
(比較例20)
0.5mg/ml S5TS6T -Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図51に、そのフーリエ変換像を図52に示す。
外周面に従来例のN1-LFと2つ異なるアミノ酸配列を有するフェリチンY8FY9F-Fer0, S5TS6T-Fer0は、「劣った二次元配列」を形成することが確認できた。
(比較例21)
0.5mg/ml ΔHY-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図53に、そのフーリエ変換像を図54に示す。
(比較例22)
0.5mg/ml ΔHY-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図55に、そのフーリエ変換像を図56に示す。
(比較例23)
0.5mg/ml ΔHY-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図57に、そのフーリエ変換像を図58に示す。
外周面に従来例のN1-LFと5つ異なるアミノ酸配列を有するフェリチンΔHY-Fer0は、二次元配列を形成しないことが確認できた。
(比較例24)
0.5mg/ml ΔAR-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図59に、そのフーリエ変換像を図60に示す。
(比較例25)
0.5mg/ml ΔAR-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図61に、そのフーリエ変換像を図62に示す。
(比較例26)
0.5mg/ml ΔAR-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図63に、そのフーリエ変換像を図64に示す。
外周面に従来例のN1-LFと5つ異なるアミノ酸配列を有するフェリチンΔAR-Fer0は、「良質な二次元配列」もしくは「劣った二次元配列」を形成することが確認できた。
(比較例27)
0.5mg/ml Shuffle-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図65に、そのフーリエ変換像を図66に示す。
(比較例28)
0.5mg/ml shuffle-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真を図67に、そのフーリエ変換像を図68に示す。
外周面に従来例のN1-LFと12つ異なるアミノ酸配列を有するフェリチンShuffle-Fer0は、「劣った二次元配列」を形成することが確認できた。
(比較例29)
0.5mg/ml 1st-half-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図69に、そのフーリエ変換像を図70に示す。
(比較例30)
0.5mg/ml 1st-half-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図71に、そのフーリエ変換像を図72に示す。
(比較例31)
0.5mg/ml 1st-half-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図73に、そのフーリエ変換像を図74に示す。
(比較例32)
0.5mg/ml 2nd-half-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図75に、そのフーリエ変換像を図76に示す。
(比較例33)
0.5mg/ml 2nd-half-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図77に、そのフーリエ変換像を図78に示す。
(比較例34)
0.5mg/ml 2nd-half-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図79に、そのフーリエ変換像を図80に示す。
外周面に従来例のN1-LF(アミノ酸残基数12)よりアミノ酸を削除した、すなわち短いアミノ酸配列(アミノ酸残基数6)を有するフェリチン1st-half-Fer0, 2nd-half-Fer0は、「二次元配列を形成しない」ことが確認できた。
(比較例35)
0.5mg/ml 5AA-Fer0(In)、および12.5 mM PIPES-NaOH (pH7.0)を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図81に、そのフーリエ変換像を図82に示す。
(比較例36)
0.5mg/ml 5AA-Fer0(In)、および13 mM 硫安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図83に、そのフーリエ変換像を図84に示す。
(比較例37)
0.5mg/ml 5AA-Fer0(In)、および20 mM 酢安を用い、得られたフェリチンの吸着の様子を示す写真を図85に、そのフーリエ変換像を図86に示す
外周面に従来例のN1-LF(アミノ酸残基数12)より、7個のアミノ酸を削除した、すなわち短いアミノ酸配列(アミノ酸残基数5)を有するフェリチン5AA-Fer0は、「二次元配列を形成しない」ことが確認できた。
二次元配列形成とアミノ改変数(N1-LFからの改変数)の対応を表3にまとめる。
本発明に用いられたフェリチンは、二次元配列を形成する際に二価の金属イオンを必要としない。そのため、金属を基板上に二次元的に配列させてなる量子ドットにおいて、予想もしていなかった界面準位が現れるということに代表される悪影響を抑制することができる。
本発明に用いられたフェリチンの外表面に呈示された配列番号1で表されるペプチドは、配列番号5で表される従来例のアミノ酸配列と比較して12アミノ酸残基中5アミノ酸残基が異なる新たな配列を有し、基板上に「良質な二次元配列」もしくは「劣った二次元配列」を形成することが出来る。
上記より、本発明で用いられたフェリチンは、予想もしていなかった界面準位が現れるということに代表される悪影響がなく、基板上に二次元配列可能なフェリチンであって、従来例と異なる配列を持つ新たなペプチドを外表面に呈示させたフェリチンであることが理解できる。
本発明は、基板上に配置したナノ粒子を利用する各種デバイス、半導体装置、などに利用できる。
基板上で複数個のフェリチンが二次元配列した状態を示す概略図(特許文献1の図8)である。 三次元配列の断面図である。 二次元フーリエ変換によって得られたフーリエ変換像の模式図である。 二次元フーリエ変換によって得られたフーリエ変換像の模式図である。 実施例1により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 実施例1により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 実施例2により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 実施例2により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真フーリエ変換像である。 実施例3により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 実施例3により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 実施例4により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 実施例4により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真フーリエ変換像である。 比較例1により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例1により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例2により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例2により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例3により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例3により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例4により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例4により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例5により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例5により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例6により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例6により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例7により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例7により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例8により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例8により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例9により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例9により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例10により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例10により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例11により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例11により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例12により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例12により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例13により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例13により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例14により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例14により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例15により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例15により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例16により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例16により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例17により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例17により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例18により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例18により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例19により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例19により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例20により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例20により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例21により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例21により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例22により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例22により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例23により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例23により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例24により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例24により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例25により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例25により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例26により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例26により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例27により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例27により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例28により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例28により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例29により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例29により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例30により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 である。 比較例30により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例31により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例31により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例32により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例32により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例33により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例33により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例34により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例34により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例35により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例35により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例36により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例36により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 比較例37により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真である。 比較例37により得られたフェリチンの二次元配列の様子を示す写真のフーリエ変換像である。 特許文献1の図8に示される、隣接する2つのフェリチンの間が2価の金属イオン(図87ではカドミニウムイオン)で架橋された状態を示す模式図である。 非特許文献1に記載された改変型フェリチン(N1-LF)の模式図である。
符号の説明
11 基板
15 フェリチン
配列表のフリーテキスト
配列番号1の<223>:本発明のフェリチンを基板に配列させるための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号2の<223>:本発明のアミノ末端にアミノ末端メチオニンと12残基からなるアミノ酸とが付加された改変ウマ由来フェリチン
配列番号3の<223>: 本発明のフェリチン・タンパク質発現用プラスミドベクター
配列番号4の<223>: タンパク質発現用プラスミドベクター
配列番号5の<223>: 非特許文献1に記載されたフェリチンを基板に配列させるための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号7の<223>: E10S-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号8の<223>: D2N-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号9の<223>: E10Q-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号10の<223>: P7S-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号11の<223>: Shuffle-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号12の<223>: S5T-S6T-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号13の<223>: ΔAR-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号14の<223>: Y8F-Y9F-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号15の<223>: ΔHY-Fer0製造のための12残基からなるアミノ酸配列
配列番号16の<223>: 1st half-Fer0製造のための6残基からなるアミノ酸配列
配列番号17の<223>: 2nd half-Fer0製造のための6残基からなるアミノ酸配列
配列番号18の<223>: 5AA-Fer0製造のための5残基からなるアミノ酸配列
配列番号19の<223>: ペプチドY6S4DE対応のDNA
配列番号20の<223>: ペプチドE10S対応のDNA
配列番号21の<223>: ペプチドD2N対応のDNA
配列番号22の<223>: ペプチドE10Q対応のDNA
配列番号23の<223>: ペプチドP7S対応のDNA
配列番号24の<223>: ペプチドShuffle対応のDNA
配列番号25の<223>: ペプチドS5T-S6T対応のDNA
配列番号26の<223>: ペプチドΔAR対応のDNA
配列番号27の<223>: ペプチドY8F-Y9F対応のDNA
配列番号28の<223>: ペプチドΔHY対応のDNA
配列番号29の<223>: ペプチド1st half対応のDNA
配列番号30の<223>: ペプチド2nd half対応のDNA
配列番号31の<223>: ペプチド5AA対応のDNA

Claims (6)

  1. フェリチンを基板上に二次元配列させる方法であって、
    前記フェリチンにはN末端に配列番号1で示されるアミノ酸配列が修飾されており、
    前記基板の表面は親水性を有しており、
    前記方法は、
    水からなる溶媒および前記フェリチンを有する溶液を前記基板上に展開する工程、および
    前記基板上に展開した溶液から前記溶媒を除去する除去工程
    を包含する。
  2. 前記基板の表面がSiO2で覆われている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記溶液が、PIPES、硫酸アンモニウム、または酢酸アンモニウムの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記溶液におけるPIPES濃度が5mM以上50mM以下である、請求項1に記載の方法。
  5. 前記溶液における硫酸アンモニウム濃度が6.5mM以上52mM以下である、請求項1に記載の方法。
  6. 前記溶液における酢酸アンモニウム濃度が2mM以上100mM以下である、請求項1に記載の方法。
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