JP4427220B2 - ガス殺菌の制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、ガスによる表面殺菌を制御する方法に関する。その殺菌効果は、ガスが表面上に凝縮することに起因する。
【0002】
(背景技術)
欧州特許第0774263号は、過酸化水素蒸気による殺菌のための方法および装置を開示する。チャンバを殺菌するために、ガスをチャンバに循環させて、さらに、チャンバに接続された減湿器に循環させる。ガスの湿度はモニタされており、湿度が十分に低い場合には過酸化水素が循環しているガスにガス中の過酸化水素の循環が適当になるまで投入される。過酸化水素は、そのレベル以上を適当な時間のあいだ維持する。追加の過酸化水素をガスに加えることによりそのレベルを維持するようにしてもよい。その後で、例えば、過酸化水素を水と酸素に分離する金属触媒の上を通過させることにより、過酸化水素をガスから取り除く。ガス中の過酸化水素レベルを測定するために、センサを通過させる前に、過酸化水素を含むガスを既知の比率で希釈するようにしてもよい。
米国特許第4898713号は、容器を殺菌するプロセスおよび換気・濾過循環路を備えた容器でそのプロセスを行う装置を開示する。容器は隔離されており、内部の相対湿度レベルは、乾燥カートリッジを内蔵する組立部品により低減される。続いて、殺菌剤が閉ざされた循環路に露点に近い相対湿度レベルに達するまで投入される。殺菌剤は、所定の接触時間のあいだ容器内に保持されて、その後、換気・濾過循環路によって取り除かれる。
医薬品およびヘルスケアの業界において、チャンバの壁面およびそのチャンバの中身の両方に対して表面殺菌を施すことが求められる状況が非常に多い。そのような状況は、最終的に殺菌することができない医薬製品をガラス瓶またはその他の入れ物に無菌状態で詰めたり、予め殺菌した製品を入れている袋の外装から汚染を除去したり、医療機器または器具を表面殺菌したりすることが求められるような場合であろう。
【0003】
そのような表面殺菌は、ガスによる技術を用いて行われることが最も一般的である。そのようにすれば、確実にガスが表面のすべての部分に行き渡るようにすることが出来るからである。そのようなガスによる表面殺菌プロセスのうちのすべてではないにしても、そのほとんどが、存在する水蒸気レベルだけでなく活性ガスの濃度にも左右される。ポートナーら(Dorothy M Portner et al)(後述する参考文献I)によれば、過酢酸蒸気は、相対湿度(RH)80%では効果があり、相対湿度(RH)20%では効果がない。また、ホルマリン蒸気は相対湿度が高いほどより効果的であるということがラック(Lack)(後述する参考文献II)によって報告されており、オゾンおよび酸化エチレンについても同様の主張がなされている。
【0004】
水溶液から発生する過酸化水素ガスは、一般に30重量%(w/w)であり、医薬品業界において好ましいガス殺菌剤とされている。このように選ばれる理由は、殺胞子性であり、時間がかからず、残留物を残さないことに加えて、持続性がないからである。欧州特許第0486623号(EP0486623B1)において示されたような一般的な理解としては、それは乾式のガスプロセスであるとともに蒸気の凝縮は避けるべきであるということである。
【0005】
ワットリングら(Watling et al)(後述する参考文献III)によれば、急速な表面殺菌は、殺菌される表面上に細かい層が微細に凝縮するのを促進することによって最適に達成される。マルコス(M. A. Marcos)(後述する参考文献IV)は、欧州特許第0486923号(EP0486923B1)において示されたように操作される場合にガス状の過酸化水素による殺菌において凝縮を避けることは不可能であると述べている。
【0006】
表面殺菌を確実にするために従来から行われている測定は、ガス濃度、温度、湿度、および時間である。混合ガスの水蒸気含有量およびガス濃度を測定しようとする試みは為されてきているが、その結果は概して疑わしい。これは、主に、水分を含むガスが約100℃の高温で発生して、続いて殺菌が行われることになっているチャンバを通過するのにつれて冷めるのを妨げられないからであると考えられる。この冷却プロセスの間を通じて、蒸気は飽和状態になり、液滴が形成されるのは必至である。従って、器具類は湿ったガスにさらされており、特別な装備が施されない限り、気相濃度を測定することはおそらく不可能であろう。過酸化水素と水の混合物の飽和蒸気圧は、スキャチャードら(Scatchard et al)(参考文献V)により示された活量係数に基づいて算出することが可能である。室温における水と過酸化水素について算出された飽和濃度は、殺菌されることになっているチャンバに通常供給されるガス濃度と比べるとかなり低く、このため表面凝縮は不可避となる。
【0007】
また、過酸化水素水溶液が殺胞子性であり、その最低評価('D' value)は濃度と温度に左右されるということが、スワートリングら(Swartling et al)(参考文献VI)によって繰り返し言われている。もし凝縮が殺菌作用の主な要因であれば、そのプロセスは、スワートリングが水溶液について明らかにしたのと同様の結果を伴う湿式のプロセスとして扱われるべきである。
【0008】
我々は、時間を凝縮の開始から計るという条件で、殺菌されるチャンバの温度を上げると最低評価は減少して、温度を下げるとその反対の効果があるということを自らの実験研究から明らかにした。温度に伴う最低評価の変化は、スワートリングによる報告と極めて類似している。
【0009】
上述から、ほとんどのガスによる殺菌プロセスの間を通じて制御されるべきであるのはガス濃度ではないということが理解されるであろう。すべての議論は過酸化水素ガスを用いた実験研究に基づいているが、水蒸気がプロセスの最も重要な部分であるその他のガスについても同様の議論が当てはまるということは当然であると考えられる。
【0010】
(発明の開示)
本発明は、密閉可能な容器を殺菌する方法であって、最初に容器内の相対湿度を雰囲気よりも実質的に低いレベルに調整するステップと、キャリアガスを雰囲気より高温で容器に循環させるステップと、ガスを実質的に飽和させるのに十分な殺菌剤蒸気を循環しているキャリアガスに供給するステップを備える方法によって、容器内が冷めると、殺菌剤蒸気の凝縮液が容器内の表面上に形成されて、ガス/蒸気を容器にくまなく行き渡らせて、確実に殺菌剤蒸気の凝縮液が容器のすべての表面上に形成されるようにして、容器の表面上に形成された凝縮液の量を測定して、必要な量の凝縮液が前記表面上に形成されるまでガス/蒸気を循環させつづけて、ガスに殺菌剤蒸気を供給するのを終了する一方で、飽和したガス/蒸気を循環させつづけることにより容器表面上の凝縮液を所定の時間のあいだ維持して、最後に殺菌剤蒸気を容器から抜き取ることを特徴とする方法を提供する。
【0011】
このように、ガスによる表面殺菌は3段階プロセスである。第1の段階においては、容器を、ひいては容器内の表面を所定の湿度になるように調整する。これにより、確実に、表面上のどんな生物体であっても乾燥するようにして凝縮のための核が形成されるようにする。
【0012】
第2の段階においては、活性ガスおよび水蒸気を容器に流し込むことにより表面上に凝縮層を形成する。この凝縮層を十分な時間のあいだ維持することにより必要なレベルまで微生物を失活させるはずである。
【0013】
最終段階においては、容器から活性ガスを安全なレベルまで除去する。
【0014】
殺菌サイクルの各段階の制御は、適切な器具類およびタイマを適正に使用することにより行うことが可能である。
【0015】
第1の段階においては減湿が行われるが、容器内の空気を適正な相対湿度に保ち、殺菌される容器内のすべての表面を確実に安定した状態にすることが求められる。実験研究から、最速の殺菌サイクルは、相対湿度が減湿段階の間を通じて40%に達する場合に実現されるということが明らかになっている。相対湿度が高いほど、微生物が乾燥しないだけでなく、凝縮があってもすでに対象物を取り囲んでいる水分によって希釈されるということを意味する。相対湿度が低いほど、より大量の殺菌剤が凝縮に至るためには必要となるので、このガス処理段階は延長される。また、容器によっては、表面が平衡状態になることを妨げないように相対湿度を40%レベル、具体的にはおよそ30%から40%に保つことが必要な場合もあるということが明らかになっている。
【0016】
殺菌プロセスのうちガス処理段階は3つの部分に分かれており、第1の部分においては、ガス濃度を凝縮が起きるレベルまで引き上げる。これが達成されると、ガス処理は適正なレベルの凝縮が施されるまで継続すべきである。微生物を失活させるプロセスは時間に左右されるものであり、従って、必要とされるレベルの凝縮を一定の時間のあいだ維持しなければならない。時間の長さは、殺されるべき微生物の種類および温度に左右される。
【0017】
失活時間は、通常、所定のやり方で示されたどんな特定の微生物についてであっても確定される。この時間が一定の温度について明らかになると、スワートリング(参考文献VI)の研究に基づいて関数が生成されて、他のどんな温度であっても有効な失活時間を設定することが可能となる。ガス処理段階のうち、この失活時間の間を通じて、凝縮のレベルが維持されることが不可欠である。温度上昇のため、または漏れを補うために新鮮できれいな空気がシステムに取り込まれるため、表面から蒸発が生じることがある。従って、凝縮モニタからの出力をガス発生器と結びつけて必要なレベルの凝縮を維持するようにすることが不可欠である。
【0018】
失活のための時間を含むガス処理段階の終了時に、活性ガスを容器から取り除くことが必要である。これは、ガスを失活システムに循環させて活性ガスを取り除くことにより、または、容器内のガスを含む空気を外部の供給源からの新鮮できれいな空気と置き換えることにより行われることが可能である。当然のことながら、これらの方法を組み合わせて用いることも可能である。重要な要素は、活性ガス濃度を安全なレベルまで低下させることであり、過酸化水素について、これは一般に1ppmまで許容される。可能なかぎり早くに容器を利用することが可能となるように、低濃度の活性ガスを正確に測定するガスセンサが求められる。
【0019】
主たる関心事は、常に、ガス処理殺菌サイクルが有効であることを確実にすることであるが、可能なかぎり短時間でこれを達成することも重要である。
【0020】
ガスが表面から脱着するのに時間がかかるので、一般に、最も長時間の段階は、どんなガスによる殺菌サイクルであっても、空気混和(aeration)段階である。従って、活性ガスの吸着は時間とともに増加して、より大量のガスを吸着すればそれだけ完全な空気混和を施すためにかかる時間はより長くなるので、可能なかぎり短時間で殺菌を完了することを確実にすることが重要である。
【0021】
凝縮についての限界パラメータ(critical parameter)を用いて殺菌を正確に制御することによる二次的な利点は時間である。
【0022】
凝縮についての限界パラメータは、関連づけられた時間と温度の作用に応じて制御されているので、殺菌状態はパラメータにより確保されており、パラメータによる制御が用いられているので、結果として、ガス処理段階を最適化して活性ガスを表面にさらす時間を最短にすることが可能となっている。このように短時間さらすことにより、吸着を最低限にするとともに、これにより空気混和を短縮して可能なかぎり短時間かつ信頼できるサイクルとすることにつながる。従って、このようなタイプの制御を用いることにより、可能なかぎり短時間で殺菌が達成される。
【0023】
(発明を実施するための最良の形態)
以下に、容器(enclosure)を殺菌するための装置を示す添付の説明図を参照して、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
【0024】
殺菌ガスを発生するための装置は、制御装置にとって極めて重要というわけではないが、発生装置は、容器へのガスの質量流量を正確に制御することが可能でなければならない。また、減湿段階の間を通じて容器に供給される空気の湿度を制御することが可能でなければならないばかりでなく、空気流中の活性ガスの濃度が制御システムの要求に応じて調節可能でなければならない。
【0025】
さらに、容器から流出する際にガスを失活する方法を備えることも必要である。好適なガス発生器が、英国特許出願公告第2354443号において説明されている。発生器により供給されているガス濃度を制御するための好適な方法は、我々の英国特許出願第0006825.4号において説明されている。
【0026】
密閉された容器10は、パイプ11およびパイプ12によりガス発生器に流体を介して接続されている。発生器は、再循環タイプであってもよいし、フロースルー(Flow Through)システムであってもよいし、またはその両方のタイプの組み合わせであってもよい。発生器は、いくつかの制御機能を有する制御システム13を含む。これには、通常、+200パスカル(Pa)から−200パスカル(Pa)の範囲内に、密閉された容器内の圧力を制御するための圧力制御システム14が含まれる。また、制御システム13は、容器に供給されるガス流量の制御部15とともに、相対湿度の制御部16、および活性ガス濃度の制御部17を含む。これらの機能はすべて、制御システム13によって調整されている。
【0027】
殺菌サイクルの開始に際して、発生器が空気を容器10に通過させるとともに、温度・RHモニタ18が相対湿度を測定する。制御システム13が温度・RHモニタからの出力信号を用いて減湿装置16を作動させることにより、センサにおいて必要とされるレベルの湿度に達するようにする。
【0028】
上述した装置は、特に、我々の英国特許出願第9922364.6号において説明および図示した容器殺菌装置での使用に適している。
【0029】
適正なレベルの湿度に達すると、コントローラは、このレベルを必要とされる所定の時間間隔のあいだ減湿器(16)の働きにより維持する。
【0030】
減湿持続時間が終了すると、コントローラは、そのサイクルのガス処理段階を開始させる。この段階の間を通じて高濃度ガスセンサ20の出力を記録することにより、確実に、適正な飽和蒸気レベルに達するようにする。高濃度ガスセンサは、低濃度ガスセンサ21に対して直列に設けられている。密閉された容器10内で飽和に達すると、凝縮が生じ始めるとともに凝縮モニタ22によって測定される。凝縮モニタは、我々の英国特許出願第0006822.1号に開示したような光学装置であってもよいし、表面における電気固有抵抗を割り出すことにより表面上の凝縮を検知するという装置であってもよい。必要とされるレベルの凝縮が達成されると、制御システム13は、ガス蒸発器への液体の流入を減少または停止させることにより、必要とされる時間のあいだ凝縮を維持するようにする。凝縮を持続させる一時停止時間は温度に左右される。すなわち、温度が低くなると殺菌プロセスの有効性が低減されるため、より長い一時停止時間が必要となる。時間と温度の関係は、スワートリング(参考文献VI)によって明確にされており、制御システムにプログラムとして書き込まれる。
【0031】
凝縮一時停止時間の終わりに達すると、コントローラは、蒸発器に液体を流入させるのを止めて、新鮮できれいな空気を供給する。これを減湿して密閉路に流すようにしてもよい。この新鮮できれいな空気は、密閉された容器10内のガス濃度を低減させるとともに表面凝縮を取り除く。残留濃縮ガスがチャンバから流出する様子は、高濃度ガスセンサ20および低濃度ガスセンサ21によってモニタされている。許容レベルに達すると、制御システムはサイクルの完了を表示する。
【0032】
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V. Scratchard et al. J. Am. Chem. Soc., 74, 3715, 1952
VI. Swartling et al. The sterlising effect against bacillus subtilis of hydrogen peroxide at different temperatures and concentrations. J Dairy Res. (1968), 35, 423.

Claims (4)

  1. 密閉可能な容器を殺菌する方法であって、
    最初に容器内の相対湿度を雰囲気よりも低いレベルに調整するステップと、
    キャリアガスを雰囲気より高温で容器に循環させるステップと、
    殺菌剤蒸気を循環しているキャリアガスに供給するステップと、
    ガス/蒸気を容器にくまなく行き渡らせて、容器をくまなく殺菌することを確実にするステップと、
    殺菌が完了するまでガス/蒸気を容器に循環させつづけるステップと、
    ガスに殺菌剤蒸気を供給するのを終了する一方で、飽和したガス/蒸気を循環させつづけることにより容器表面上の凝縮液を所定の時間のあいだ維持するステップと、
    最後に殺菌剤蒸気を容器から抜き取るステップと、
    を備える方法であって、
    十分な殺菌剤蒸気をキャリアガスに加えることによりガスを飽和させ、それによって、容器内が冷めると、殺菌剤蒸気の凝縮液が容器に形成され、容器の表面上に形成された凝縮液の量を測定するとともに、凝縮液が容器表面上にくまなく形成されるまでガス/蒸気を循環させつづけることを特徴とする方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、容器の相対湿度が30%から40%に調整されることを特徴とする方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の方法であって、殺菌剤蒸気が過酸化水素蒸気および水蒸気を含むことを特徴とする方法。
  4. 請求項3に記載の方法であって、前記容器表面上の凝縮液を維持する前記所定の時間の後で、ガス/蒸気は殺菌剤蒸気をその成分に分解する触媒の上を循環させられるとともに、水蒸気は循環しているガスから取り除かれて、乾燥したガスはすべての殺菌剤が容器から抜き取られるまで容器を循環させられることを特徴とする方法。
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