JP4426332B2 - 溶解性の改善されたエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法 - Google Patents

溶解性の改善されたエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プリント基板や絶縁封止材等の電気・電子材料に適した変性ポリフェニレンエーテルの製造方法に関するものである。
従来、プリント基板、絶縁封止材等の電子材料としてはエポキシ樹脂が最も汎用的に用いられてきたが、近年、携帯電話やパソコン等の情報処理機器では演算処理すべき情報の大容量化とともに処理速度の高速化が求められており、より高耐熱、低誘電の材料特性が要求されている。また、回路誤作動を防ぐための信頼性確保の観点から、低吸水性も重要な要求特性の一つである。エポキシ樹脂の高耐熱化、低誘電化、吸水率低減の手法として、エポキシ樹脂にポリフェニレンエーテルを添加する方法(例えば、特許文献1、特許文献2)がある。
しかし、ポリフェニレンエーテルは種々の溶剤への溶解性が低く、高濃度で均一に溶解できる溶剤はトルエンやクロロホルム等に限定され、従来エポキシ樹脂のプリント基板製造工程で用いられていたメチルエチルケトン(MEK)、アセトンに対する溶解性は極めて低い。従って、ポリフェニレンエーテル系プリント基板の製造において、MEK、アセトンを使った従来のエポキシ樹脂用の製造ラインを直接使用することができないという問題があった。また、トルエンやクロロホルムを溶剤に使うことは作業環境、自然環境へも悪影響を与えるため、これら溶剤の使用は好ましくない等の課題があった。
ポリフェニレンエーテルのMEKやアセトンに対する溶解性を改善する手段として、ポリフェニレンエーテルをエポキシ樹脂をはじめとする多官能型エポキシ化合物で変性する方法がある。(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5)。
しかし、当該文献で開示された方法で得られるエポキシ変成ポリフェニレンエーテルでは十分な溶解性を得るまでには至っていない。
欧州特許出願公開第592145号明細書 欧州特許出願公開第921158号明細書 特公昭50−15519号公報 欧州特許出願公開第537005号明細書 特開昭58−219217号公報
本発明は、従来からエポキシ樹脂プリント基板工程に使われていたMEKやアセトンに対して良好な溶解性を示すエポキシ変成ポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、ポリフェニレンエーテルとクレゾール−ノボラックエポキシ化合物を混合、反応させるエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法において、ポリフェニレンエーテルが特定割合の揮発成分を含むとMEKやアセトンに対し良好な溶解性を示すエポキシ変成ポリフェニレンエーテルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1] (A)ポリフェニレンエーテルと(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物とを混合、反応させるエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法において、(A)ポリフェニレンエーテルが0.1〜5.0重量%の揮発成分を含むことを特徴とするエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法、
[2] (A)ポリフェニレンエーテルが0.5〜2.0重量%の揮発成分を含むことを特徴とする[1]に記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法、
[3] (A)ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が10,000以下であることを特徴とする[1]または[2]記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法、
[4] (A)ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5,000以下であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法、
である。
本発明はMEKやアセトンに対して良好な溶解性を示すエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することを可能とした。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の製造方法において使用する(A)ポリフェニレンエーテルは、下記式(1)の繰り返しユニットから構成される重合体、または共重合体である。
Figure 0004426332
(式中、R1、R2、R3、R4は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアミノ基を有するアルキル基を表す。)
本発明で用いられる(A)ポリフェニレンエーテル重合体の具体例は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等である。
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル共重合体の具体例は、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−メチルブチルフェノール)、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビフェノールAとの共重合体のようなポリフェニレンエーテル共重合体などが挙げられる。中でもポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6ジメチルフェノールとテトラメチルビスフェノールAとの共重合体が好ましく使用でき、最も好ましくは2,6ジメチルフェノールとテトラメチルビスフェノールAとの共重合体である。
本発明で用いる(A)ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は攪拌の操作性の観点から10,000以下であることが好ましく、より好ましくは5,000以下、特に好ましくは3,500以下である。分子量が低いと、ポリフェニレンエーテルとクレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の反応系の液粘度を低くできるため攪拌の操作性は改良される。電子材料への応用において、ポリフェニレンエーテルの低誘電率の特性の発現の観点から(A)ポリフェニレンエーテルの数平均分子量は500以上が好ましい。
分子鎖末端フェノール性水酸基は(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の反応点になるため、多い方が(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルのエポキシ基数は多くなり、ワニス作成時に用いられるMEK、アセトン等の溶剤に対する溶解性が向上する上、得られる硬化物の架橋性、硬化性も優れる。
本発明の(A)ポリフェニレンエーテルは分子鎖末端にフェノール性水酸基を有し、その位置は硬化性、架橋性の観点から両末端が好ましい。分子鎖末端に有するフェノール性水酸基の個数は1分子鎖あたり平均1.3個以上であることが好ましく、より好ましくは1.5個以上である。分子鎖末端に有するフェノール性水酸基の個数が1.3個以上のポリフェニレンエーテルの製造方法として、2,6−キシレノール等のフェノール性化合物を酸化重合を行う際、2,6置換のビスフェノール類等を添加することで製造することができる。
本発明の製造方法において用いる(A)ポリフェニレンエーテルは0.1〜5.0重量%の揮発成分を含むことが必要であり、好ましくは0.5〜2.0重量である。溶解性の十分な(C)エポキシ変成ポリフェニレンエーテルを得るには0.1重量%以上5.0重量%以下の揮発成分を含むことが必要である。
本発明において、ポリフェニレンエーテル中に含まれる揮発成分量とは、170℃、10N/mの条件で5時間減圧乾燥させた後のポリフェニレンエーテルパウダーの重量を、乾燥前のポリフェニレンエーテルパウダーの重量から減算することで求められる重量の乾燥前のポリフェニレンエーテルパウダーの重量に対する含有割合を言う。
本発明の揮発成分は主に(A)ポリフェニレンエーテル製造工程で使用される溶媒の残存溶媒であり、その具体例としてはトルエン、キシレン、エチルベンゼン、ブタノール、メタノール、MEK等が挙げられる。
本発明で用いられるポリフェニレンエーテルは、通常の方法で製造でき、例えば米国特許第3306874号明細書記載の第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法がある。分子鎖末端に有するフェノール性水酸基の個数が1.3個以上のポリフェニレンエーテルの製造方法として、前記したように2,6−キシレノール等のフェノール性化合物を酸化重合を行う際、2,6置換のビスフェノール類等を添加することで製造することができる。
数平均分子量が10,000以下のポリフェニレンエーテルを製造する手法としては、所望の数平均分子量に達する時間で、重合中に供給される酸素或いは空気の通気を停止し、例えば塩酸や酢酸等の酸、エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩などの水性液を反応液に加えて触媒を水性液に移し重合を停止した後、溶剤洗浄や公知の還元剤で処理することで得ることができる。または、分子量10,000以上のポリフェニレンエーテルをフェノール性化合物、過酸化物等と加熱、反応させる方法を用いることができる。
本発明において必須の(A)ポリフェニレンエーテルに含まれる揮発成分の含有量を0.1〜5.0重量%にするには、(A)ポリフェニレンエーテルの製造に際して、得られた湿潤ポリフェニレンエーテルの真空乾燥工程で乾燥時間を制御することで行う。ポリフェニレンエーテル中に含まれる揮発成分が0.1重量%以下の場合、ポリフェニレンエーテル製造に用いた原料に含まれる成分のうち、室温で液体状態を有する成分を乾燥ポリフェニレンエーテルに添加し、揮発成分が0.1重量%〜5.0重量%となるよう調整することが可能である。また、揮発成分が5.0重量%以上の場合、100℃程度の温度で再度真空乾燥させ5.0重量%以下とすることが可能である。
本発明に用いられる(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物は分子内に複数のエポキシ基を有するものであれば良く、一般に下記式(2)で表される。
Figure 0004426332
(式中、nは0以上の整数を表す。)
本発明の製造方法において、生産性の観点から(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物は(A)ポリフェニレンエーテルとの反応時に液体であることが好ましい。(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の軟化点は150℃以下であることが好ましく、より好ましくは130℃以下、特に好ましくは110℃以下である。軟化点の低い方がより低い温度で液状化し、また、軟化点の低い方が同じ温度での液粘度は低いため、(A)ポリフェニレンエーテルと混合させる時の混合性が良く、操作性に優れる。
本発明の製造方法における(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の仕込み組成は(A)ポリフェニレンエーテルと(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の合計100重量部に対し、20重量部以上であることが好ましく、より好ましくは40重量部以上、特に好ましくは50重量部以上である。(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の仕込み組成の高い方が反応系の粘度が低いため攪拌混合性に優れ、反応生成物の均一性の観点から好ましい。また、電子材料として、低誘電率等の特性の十分な発現の観点から(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物が90重量部以下であることが好ましい。
本発明に用いられる反応器は、(A)ポリフェニレンエーテルと(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物を均一に混合、攪拌または混練できるものであれば使用できる。原料組成や温度条件によっては均一混合物が溶融状態となり反応系の溶融粘度が高くなる、或いは反応の進行に伴い粘度が上がる場合には、ニーダーや押出し機等の高粘度物にも対応可能な混練機を用いることができる。
本発明の製造方法は連続反応プロセス、バッチ反応プロセスのいずれのプロセス形態でもよい。
本発明の製造方法における反応温度は、(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルの生産性を考慮し80〜250℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは120〜220℃の範囲、さらに好ましくは140〜190℃の範囲である。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルを製造する際の(A)ポリフェニレンエーテルと(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の混合、反応系の状態は溶液または溶融状態であることが好ましい。(A)ポリフェニレンエーテルが粉体、ペレット等の固体状態であっても構わないが、伝熱速度が遅いため昇温に長時間要し、生産効率が低い。
本発明において、(A)ポリフェニレンエーテルと(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物の反応時間は3時間以内が好ましい。より好ましくは2時間以内、特に好ましくは40分以内である。MEKに対する溶解性の観点から反応時間は1分以上が好ましい。生産性を考慮して(A)ポリフェニレンエーテルと(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物を溶融状態で反応させる場合には、反応時間が3時間を越えると架橋反応が進行して高分子量成分が増大するため、加工性とMEK溶解性が著しく低下する。
本発明の製造方法では、反応速度の向上や副反応抑制、(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルの構造制御の観点から、反応系に塩基性化合物を加えることもできる。塩基性化合物とは、具体的には例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、トリエチルアミンやトリブチルアミン等の3級アミン、イミダゾール、ナトリウムフェノキシド、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられるが、中でもナトリウムメチラート、トリエチルアミン、トリブチルアミン、水酸化ナトリウム等が好ましい。上記塩基性化合物の他にも4級アンモニウム塩も触媒として用いることができる。
本発明の製造方法では、混合、反応系にその他の樹脂を添加することもできる。使用に供される樹脂は何等限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が好適に使用される。熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル等のビニル化合物の単独重合体や2種以上のビニル化合物の共重合体、或いはポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等を例としてあげることができる。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ化合物、シアネートエステル類を例として挙げることができる。上記熱可塑性樹脂や硬化性樹脂は官能化化合物で変性されたものでもよい。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルを製造する際、目的に応じ適当な添加剤を添加しても良い。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシ、パーオキシカーボネート、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタール等が挙げられる。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルは、変性率が5%以上であることが好ましく、より好ましくは30%以上である。ここで変性率とは、(A)ポリフェニレンエーテルの分子鎖末端フェノール性水酸基のうち、エポキシ変性された水酸基の割合であり、例えば(A)ポリフェニレンエーテルの1分子あたり平均の分子鎖末端フェノール性水酸基数(Np(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖))と(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルの1分子あたり平均の分子鎖末端フェノール性水酸基数(Nq(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖))とから、下記数式で求めることができる。
(変性率)=[(Np−Nq)/Np]×100(%)
Np及び、Nqは高分子論文集,vol.51,No.7(1994)、480頁記載の方法に従い、(A)ポリフェニレンエーテルが0.2g/Lとなるよう調整した塩化メチレン溶液と(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルが0.2g/Lとなるよう調整した塩化メチレン溶液に、10wt%テトラメチルアンモニウムハイドロオキシド溶液を加えたときの318nmにおける吸光度変化を紫外可視吸光光度計で測定した値、及び、(A)ポリフェニレンエーテルの数平均分子量の値から算出することができる
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルはプリント基板製造工程で使用される汎用溶剤に対し高い溶解性を示す。ここでいう汎用溶剤とは、MEK、アセトン、これらの混合溶剤である。また、必要に応じて、これら汎用溶剤にトルエン等を加えても良い。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルは他の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂との組成物に用いることができる。熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、塩化ビニル、アクリロニトリル、無水マレイン酸、酢酸ビニル等のビニル化合物の単独重合体や2種以上のビニル化合物の共重合体、あるいは、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレングリコール等を例としてあげることができるが、これらに限定されるものではない。硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネートエステル類を例として挙げることができるが、これらに限定されるものではない。上記熱可塑性樹脂や硬化性樹脂は官能化化合物で変性されたものでもよい。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルは目的に応じ適当な添加剤を添加しても良い。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、UV吸収剤、界面活性剤、滑剤、充填剤、ポリマー添加剤、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシ、パーオキシカーボネート、ヒドロパーオキサイド、パーオキシケタール等が挙げられる。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルをMEKに溶解して得られる溶液はプリント基板製造時に用いられるワニスに好適に用いることができる。このワニスには必要に応じてエポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル類等の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、硬化触媒、難燃剤、シリカ等の無機充填剤を加えることもできる。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルは分子鎖両末端にエポキシ基を有するものが含まれていると、電子材料用硬化物の架橋性、硬化性の観点から好ましい。
本発明の(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルはエポキシ樹脂用硬化剤または硬化促進剤、硬化触媒と反応することで電子材料として有用な硬化物を形成する。
次に実施例により本発明を更に詳細に説明する。
1.ポリフェニレンエーテルの分子量測定
クロロホルムを溶剤としたGPC測定を行い、予め作成したポリスチレンの分子量と溶出量の関係を表すグラフから数平均分子量を算出した。
2.分子鎖末端フェノール性水酸基数の定量
高分子論文集,vol.51,No.7(1994)、480頁記載の方法に従い、ポリマーの塩化メチレン溶液にテトラメチルアンモニウムハイドロオキシド溶液を加えたときの318nmにおける吸光度変化を紫外可視吸光光度計で測定した値、及び数平均分子量の値から算出し、(C)エポキシ変性ポリフェニレンエーテルの分子鎖末端フェノール性水酸基数(Nq(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖))及び(A)ポリフェニレンエーテルの分子鎖末端フェノール性水酸基数(Np(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖))を定量した。その値をもとに、下記数式から変性率を算出した。
(変性率)=[(Np−Nq)/Np]×100(%)
3.メチルエチルケトン(MEK)溶解テスト
ポリマー2.5gとMEK7.5gを混合し、室温で4時間攪拌した後の状態と、その後24時間、室温で放置した後の状態を目視で観察した。不溶分が無く透明なときは○、沈殿物が見られたときは×、濁っているときは△とした。
4.ポリフェニレンエーテルの含有揮発成分の定量
170℃、10N/mの条件で5時間減圧乾燥させたポリフェニレンエーテルパウダーの重量を、乾燥前のポリフェニレンエーテルパウダーの重量から減算することで、含有揮発成分を定量した。
実施例及び比較例で用いた各成分は以下のものである。
(A)ポリフェニレンエーテル
<(A)ポリフェニレンエーテルの製造方法>
特開2003−261674号公報記載の方法に従い合成した。反応器底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた1.5リットルのジャケット付き反応器に、0.2512gの塩化第二銅2水和物、1.1062gの35%塩酸、3.6179gのジ−n−ブチルアミン、9.5937gのN,N,N‘,N’−テトラメチルプロパンジアミン、106gのメタノール及び600gのn−ブタノール、5モル%の2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを含む2,6−ジメチルフェノール180.0gを入れた。使用した溶媒の組成重量比はn−ブタノール:メタノール=85:15である。次いで激しく攪拌しながら反応器へ180ml/minの速度で酸素をスパージャーより導入を始めると同時に、重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒を通して調節した。重合液は次第にスラリーの様態を呈した。ポリフェニレンエーテルが所望の数平均分子量に達した時、酸素含有ガスの通気をやめ、得られた重合混合物を50℃に温めた。次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで、50℃での保温を続けた。次いで6.5wt%の36%塩酸を含むメタノール溶液720gを添加し、濾過して更にメタノールで繰り返し洗浄し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。次いで、100℃で真空乾燥した。揮発成分含有量は乾燥時間を制御して、下記の揮発成分含有量の乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
(A−1)
数平均分子量が2600、Np=1.66(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖)、含有揮発成分が1.0重量%のポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル。
(A−2)
数平均分子量が1500、Np=1.44(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖)、含有揮発成分が0.6重量%のポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル。
(A−3)
数平均分子量が2900、Np=1.82(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖)、含有揮発成分が1.6重量%のポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル。
(A−4)
数平均分子量が2600、Np=1.66(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖))、含有揮発成分が0.01重量%のポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル。
(A−5)
数平均分子量が2900、Np=1.82(個/ポリフェニレンエーテル1分子鎖)、含有揮発成分が0.005重量%のポリ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル。
(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物
(B−1)
大日本インキ(株)製、商品名EPICLON N−660
[実施例1]
フラスコにクレゾール−ノボラック型エポキシ化合物(B−1)70gを仕込み、オイルバスで190℃に加熱する。ここに(A−1)30gを5分間、攪拌しながら少しずつ加えていく。(A−1)の添加を終了して3分後にフラスコ内を観察すると、(A−1)は完全に溶解し、褐色透明な溶液であった。(A−1)の添加を開始した時点から20分間加熱、攪拌を継続した後、溶液をアルミ製バットに移し変え、冷却、固化し、反応生成物(C−1)を得た。(C−1)の1gを10mlのトルエンに溶解した後、大過剰のメタノールを加えてポリマーを沈殿させた。沈殿したポリマーをろ過して分離した後、80℃、0.1mmHgの条件で1時間、減圧乾燥させ、反応物中に残存する未反応のエポキシ樹脂成分を除去し、生成物(C−2)を得た。(C−2)のプロトンNMR測定を行った結果、2.6〜3.2ppmにかけてエポキシ基に起因するピークが観察され、ポリフェニレンエーテルはエポキシ変性されていることが確認された。さらに上記方法に従って変性率を算出した結果、47.0%であった。(C−1)のMEK溶解テスト結果を表1に示す。
[実施例2]
(A−1)の添加を開始した時点からの加熱、攪拌の時間を12分とした他は実施例1と同様に行った。変性率は33.7%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表1に示す。
[実施例3]
(A−1)の添加を開始した時点からの加熱、攪拌の時間を30分とした他は実施例1と同様に行った。変性率は53.5%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表1に示す。
[実施例4]
(A−1)を(A−2)とした他は実施例1と同様に行った。変性率は37.5%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表1に示す。
[実施例5]
(A−1)を(A−2)とした他は実施例2と同様に行った。変性率は16.8%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表1に示す。
[実施例6]
(A−1)を(A−3)とした他は実施例1と同様に行った。変性率は45.7%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表1に示す。
[実施例7]
(A−1)を(A−3)とした他は実施例2と同様に行った。変性率は28.0%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表1に示す。
[実施例8]
(B−1)を55g、(A−1)を45gとした他は実施例1と同様に行った。変性率は51.0%であった。
[実施例9]
(B−1)を55g、(A−3)を45gとした他は実施例1と同様に行った。変性率は47.1%であった。
[比較例1]
(A−1)の代わりに(A−4)を用いた他は実施例2と同様に行った。変性率は38.3%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表2に示す。
[比較例2]
(A−1)の代わりに(A−5)を用いた他は実施例1と同様に行った。変性率は39.6%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表2に示す。
[比較例3]
(A−1)の代わりに(A−5)を用いた他は実施例2と同様に行った。変性率は44.4%であった。反応生成物のMEK溶解テスト結果を表2に示す。
[比較例4]
(A−1)0.75gと(B−1)1.75gをMEK7.5gに加え、溶解テストを実施した。結果を表2に示す。
[比較例5]
(A−2)0.75gと(B−1)1.75gをMEK7.5gに加え、溶解テストを実施した。結果を表2に示す。
[比較例6]
(A−3)0.75gと(B−1)1.75gをMEK7.5gに加え、溶解テストを実施した。結果を表2に示す。
Figure 0004426332
Figure 0004426332
本発明の製造方法は、プリント配線板や半導体封止材等の電気電子材料に好適に利用できる。

Claims (4)

  1. (A)ポリフェニレンエーテルと(B)クレゾール−ノボラック型エポキシ化合物とを混合、反応させるエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法において、(A)ポリフェニレンエーテルが0.1〜5.0重量%の揮発成分を含むことを特徴とするエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
  2. (A)ポリフェニレンエーテルが0.5〜2.0重量%の揮発成分を含むことを特徴とする請求項1に記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
  3. (A)ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が10,000以下であることを特徴とする請求項1または2記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
  4. (A)ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5,000以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のエポキシ変性ポリフェニレンエーテルの製造方法。
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