JP5297609B2 - ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、プリプレグ、及び積層体 - Google Patents

ポリフェニレンエーテル樹脂組成物、プリプレグ、及び積層体 Download PDF

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Description

本発明は、プリント配線板等の絶縁材料として用いられるポリフェニレンエーテル樹脂組成物、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の成分として使用しうる変性低分子量ポリフェニレンエーテル、その製造方法、前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いたプリプレグ、及び前記プリプレグを用いた積層体に関する。
近年、各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、多層化技術が急速に進展している。各種電子機器において用いられるプリント配線板等の絶縁材料には、信号の伝達速度を高めるために、誘電率が低く、さらに、信号伝送時の損失を低減させるために、誘電正接が低いことが求められる。
ポリフェニレンエーテル(PPE)は、高周波領域における誘電率や誘電正接等の誘電特性が優れているので、高周波数帯を利用する電子機器のプリント配線板等の絶縁材料として好適である。一方、PPEは、耐熱性や寸法安定性が充分ではなく、また、一般的に融点が高いため、PPEを用いて通常の多層プリント配線板を製造するために使用されるプリプレグを形成すると、プリプレグの溶融粘度が高くなり、樹脂の流動性が充分ではない。このような流動性が不充分な樹脂を含むプリプレグを用いて多層板を製造すると、多層成形時にボイドが発生する等の成形不良が発生し、信頼性の高いものが得られないという問題が生じていた。
そこで、PPEを低分子量化することによって、樹脂の粘度を低くして、流動性を高めたり、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等を含有させることによって、耐熱性や寸法安定性を高めること等が行われる。具体的には、誘電特性及び耐熱性に優れているプリント配線板等の絶縁材料として、例えば、25℃での極限粘度が2.0以下のPPEと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の硬化剤であるフェノール化合物からなる樹脂組成物が開示されている(特許文献1参照)。
特許第2653608号公報
PPEを含む樹脂組成物の流動性を高めるためには、特許文献1のように、PPEを低分子量化して、PPEの粘度を低下させることが有効である。一方、PPEを低分子量化すると、耐熱性や寸法安定性が低下する。この耐熱性等の低下を防ぐために、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含有させ、その含有量を高めることが考えられる。しかしながら、エポキシ樹脂の含有量を高めると、誘電特性の優れるPPEの含有比率が低下するので、誘電特性を維持したまま、流動性及び耐熱性等を向上させることは困難である。
本発明は、かかる従来の問題点を解消するためになされたものであり、誘電特性を維持したまま、流動性、耐熱性及び寸法安定性の優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、末端に水酸基を有する、数平均分子量が1000〜4000の低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、エポキシ基及び/又はイソシアネート基と不飽和二重結合基とを分子中に有するビニル系化合物(B)、及び不飽和二重結合基を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤(C)を含むことを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂組成物である。
数平均分子量が1000〜4000の低分子量ポリフェニレンエーテル(A)は、高周波領域における誘電特性に優れ、粘度が低く、樹脂の流動性に優れる。
また、ビニル系化合物(B)は、エポキシ基及び/又はイソシアネート基が低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端水酸基と反応することによって、硬化時に低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基が導入される。
架橋型硬化剤(C)は、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に導入された不飽和二重結合基と反応することによって、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)を架橋して硬化する。従って、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基が導入される反応と、不飽和二重結合基が導入された低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の架橋反応とが、硬化時に同時に起こり、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の分子量が低くても、架橋が好適に進行し、耐熱性や寸法安定性を維持できる。
以上より、上記構成によれば、誘電特性を維持したまま、流動性、耐熱性及び寸法安定性の優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる。
また、前記ビニル系化合物(B)が、ビニル基含有モノエポキシド、ビニル基含有イソシアネート、エポキシメタクリレート、及びエポキシアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この構成によれば、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端水酸基とより好適に反応でき、よって、前記架橋型架橋剤(C)による架橋がより好適に進行する。
また、前記架橋型硬化剤(C)が、ビニルベンジル基を分子中に2個以上有するビニルベンジル化合物、及び/又はトリアルケニルイソシアヌレート化合物であることが好ましい。この構成によれば、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の架橋反応をより好適に進行させることができる。
また、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有割合が、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)と架橋型硬化剤(C)との総量に対して、40〜70質量%であることが好ましい。この構成によれば、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有割合が高く、誘電特性を高く維持できる。
また、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)が、数平均分子量が10000〜30000の高分子量ポリフェニレンエーテルと、フェノール系化合物と、過酸化物との分解反応により得られたものであることが好ましい。この構成によれば、一般的なポリフェニルエーテルである数平均分子量が10000〜30000の高分子量ポリフェニルエーテルを用いて、容易に分子量を調整でき、好適な分子量の低分子量ポリフェニレンエーテル(A)を得ることができる。
また、本発明の変性低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法は、末端に水酸基を有する、数平均分子量が1000〜4000の低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と、エポキシ基及び/又はイソシアネート基と不飽和二重結合基とを分子中に有するビニル系化合物(B)とを反応させて、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基を導入することを特徴とする変性低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法である。
この構成によれば、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基を導入された変性低分子量ポリフェニレンエーテルを容易に得ることができ、この変性低分子量ポリフェニレンエーテルを用いると、誘電特性を維持したまま、流動性、耐熱性及び寸法安定性の優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる。
また、前記ビニル系化合物(B)が、ビニル基含有モノエポキシド、ビニル基含有イソシアネート、エポキシメタクリレート、及びエポキシアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。この構成によれば、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端水酸基とより好適に反応できる。
また、本発明の変性低分子量ポリフェニレンエーテルは、前記変性低分子量ポリフェニレンエーテルの製造方法により得られた変性低分子量ポリフェニレンエーテルである。このような変性低分子量ポリフェニレンエーテルを用いると、誘電特性を維持したまま、流動性、耐熱性及び寸法安定性の優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる。
また、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、前記変性低分子量ポリフェニレンエーテル、及び不飽和二重結合基を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤(C)を含むことを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂組成物である。この構成によれば、変性低分子量ポリフェニレンエーテルは、末端に導入された不飽和二重結合基が、架橋型硬化剤(C)と反応することによって架橋される。従って、変性低分子量ポリフェニレンエーテルの分子量が低くても、架橋が好適に進行し、耐熱性や寸法安定性を維持できる。よって、誘電特性を維持したまま、流動性、耐熱性及び寸法安定性の優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物が得られる。
また、前記架橋型硬化剤(C)が、ビニルベンジル基を分子中に2個以上有するビニルベンジル化合物、及び/又はトリアルケニルイソシアヌレート化合物であることが好ましい。この構成によれば、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の架橋反応をより好適に進行させることができる。
また、本発明のプリプレグは、前記ポリフェニレンエーテル樹脂組成物を基材に含浸させて形成されるプリプレグである。このようなプリプレグは、誘電特性、耐熱性及び寸法安定性が優れた積層体を製造するのに好適に用いられるものであり、さらに、樹脂の流動性が高いので、積層体を製造する際の成形不良の発生を抑制できる信頼性に優れたものである。
また、本発明の積層体は、前記プリプレグを金属箔及び/又は内層回路基板と積層して形成される積層体である。このような積層体は、誘電特性、耐熱性及び寸法安定性が優れ、成形不良の発生が抑制された信頼性に優れたものである。
本発明によれば、誘電特性を維持したまま、流動性、耐熱性及び寸法安定性の優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を提供することができる。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、末端に水酸基を有する、数平均分子量が1000〜4000の低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、エポキシ基及び/又はイソシアネート基と不飽和二重結合基とを分子中に有するビニル系化合物(B)、及び不飽和二重結合基を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤(C)を含むことを特徴とする。
本発明で用いられる低分子量ポリフェニレンエーテル(A)は、末端に水酸基を有し、数平均分子量が1000〜4000であれば、特に制限されず、高分子量ポリフェニレンエーテルを、後述する分子量低減方法により分子量を低減されて得られるものであってもよい。また、数平均分子量が1000未満であると、充分な耐熱性を得ることができず、4000を超えると、溶融粘度が高くなり、充分な流動性が得られず、成形不良を抑制できない。よって、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)は、広い周波数領域において誘電特性が良好であるだけではなく、成形不良を抑制できる充分な流動性を有する。
前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等が挙げられる。
前記分子量低減方法としては、公知の分子量を低減させる方法、具体的には、例えば、高分子量ポリフェニレンエーテルに、フェノール化合物を反応させることにより分子量を低減させる「The Journal of Organic Chemistry,34,297-303(1969)」に記載の方法及びその改良された公知の方法等を用いることができる。
前記方法の具体例としては、例えば、高分子量ポリフェニレンエーテルを、フェノール化合物、過酸化物及び必要に応じて分解反応を促進するナフテン酸コバルト等の脂肪酸金属塩とともに溶剤中で反応させることにより、所定の分子量にまで分解させる方法等が挙げられる。
前記高分子量ポリフェニレンエーテルとしては、特には制限されないが、数平均分子量が10000〜30000の一般的なポリフェニレンエーテルを用いることができる。高分子量ポリフェニレンエーテルの具体例としては、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の具体例と同様、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキサイド)等が挙げられる。
前記フェノール化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、2,6−ジメチルフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
また、前記過酸化物としては、例えば、ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’−テトラメチル−1,4−ジフェノキノンクロラニル、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシル、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、及びアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
また、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有割合は、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と後述のビニル系化合物(B)と後述の架橋型硬化剤(C)との総量に対して、40〜70質量%であることが好ましい。低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有割合が低すぎると、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の有する優れた誘電特性を発揮することができず、また、高すぎると、ビニル系化合物(B)や架橋型硬化剤(C)によって、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)を架橋しても充分な耐熱性や寸法安定性を発揮することができない。
本発明で用いられるビニル系化合物(B)としては、エポキシ基及び/又はイソシアネート基と不飽和二重結合基とを分子中に有する化合物であれば、特に制限されない。不飽和二重結合基の具体例としては、例えば、ビニル基等が挙げられる。ビニル系化合物(B)の具体例としては、例えば、ビニル基含有モノエポキシド、ビニル基含有イソシアネート、エポキシメタクリレート、及びエポキシアクリレート等が挙げられる。
また、ビニル系化合物(B)の含有量は、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の水酸(OH)基に対して、当量比で、0.8〜2.0であることが好ましい。この含有量が少なすぎると、ビニル系化合物(B)によって、流動性を維持したまま、耐熱性を高めるという効果を発揮しにくくなるという傾向があり、多すぎると、エポキシ基やイソシアネート基が系中に残り、電気特性(誘電特性)や耐熱性が低下するという傾向がある。
本発明で用いられる架橋型硬化剤(C)としては、不飽和二重結合基を分子中に2個以上有すればよく、特に制限されない。架橋型硬化剤(C)の具体例として、例えば、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、及びビニルベンジル基を分子中に2個以上有するビニルベンジル化合物等が挙げられる。また、前記ビニルベンジル化合物としては、ビニルベンジル基を分子中に2個以上有していれば、ビニルベンジルモノマーであっても、ビニルベンジル樹脂であってもよい。また、架橋型硬化剤(C)は、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と相溶性の高いことが、不飽和二重結合基が導入された低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の架橋反応をより好適に進行できる点で好ましい。
また、架橋型硬化剤(C)の含有量は、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)と架橋型硬化剤(C)との総量に対して、20〜60質量%であることが好ましく、30〜60質量%であることがより好ましい。架橋型硬化剤(C)の含有量が少なすぎると、充分に架橋反応が進行せず、耐熱性や寸法安定性が低下する傾向があり、さらに、流動性が著しく低下する傾向がある。すなわち、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)は、数平均分子量が1000〜4000と低分子量であっても、融点が250℃と高いため、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)単独では流動せず、低分子(モノマー)である架橋型硬化剤(C)を添加することで、融点を下げることができ、この融点の低下によって、流動性が向上する。つまり、流動性は、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の分子量だけではなく、架橋型硬化剤(C)の含有量にも依存する。また、架橋型硬化剤(C)の含有量が多すぎると、電気特性(誘電特性)が低下するという傾向がある。
また、本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、ビニル系化合物(B)、及び架橋型硬化剤(C)のほか、数平均分子量が4000を超えたポリフェニレンエーテル、触媒、反応開始剤(過酸化物)、充填材、難燃剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、染料や顔料、滑剤等を配合してもよい。
前記触媒は、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)との反応を促進させる成分であり、添加しなくても、高温にすれば、反応は進み得るが、プロセス条件によっては高温にすることができない場合があるので、触媒を添加することが好ましい。前記触媒の具体例としては、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。
前記反応開始剤は、ビニル系化合物(B)によって不飽和二重結合基が導入された低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と、架橋型硬化剤(C)との架橋反応(硬化反応)を促進させる成分であり、添加しなくても、高温にすれば、架橋反応は進み得るが、プロセス条件によっては効果が進行するまで高温にすることができない場合があるので、反応開始剤を添加することが好ましい。前記反応開始剤の具体例としては、例えば、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’−テトラメチル−1,4−ジフェノキノンクロラニル、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシル、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の過酸化物が挙げられる。
前記充填材の具体例としては、例えば、球状シリカ等のシリカ、アルミナ、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、カオリン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、雲母、ガラスビーズ等の無機系充填材やアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維、フェノール樹脂繊維等の有機系の充填材等が挙げられる。
また、前記難燃剤の具体例としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモジフェニルエタン、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマーあるいはそのビスフェノールとの共重合物、臭素化エポキシ化合物(例えば臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物)、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールAシアヌルおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリスチレン、架橋臭素化ポリα−メチルスチレン等のハロゲン化されたポリマーやオリゴマー等の芳香族臭素化合物が挙げられる。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物はプリプレグを製造する際には、プリプレグを形成するための基材に含浸する目的でワニスに調製して用いられる。
前記ワニスは、例えば、加熱した有機溶媒に、上記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、ビニル系化合物(B)、及び架橋型硬化剤(C)を溶解し、さらに反応開始剤等その他の成分を添加し、攪拌混合して得られる樹脂ワニスを調製して冷却した後、充填材、難燃剤、その他の添加剤を添加して攪拌・混合することにより得られる。
有機溶媒としては、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、ビニル系化合物(B)、及び架橋型硬化剤(C)を溶解し、かつ硬化反応に悪影響を及ぼすものでなければ特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素等の適当な有機溶媒の1種あるいは2種以上を混合して用いられる。前記樹脂ワニスの樹脂固形分の濃度は、基材に含浸する作業に応じて適当に調整すればよく、例えば20〜80質量%が適当である。
次に、得られた前記樹脂ワニスに、充填材、難燃剤等を添加して攪拌・混合することにより樹脂組成物のワニスが得られる。
前記攪拌・混合する方法としては、前記成分を溶媒中に均一に溶解又は分散させる方法であれば特に限られないが、具体的には、プラネタリーミキサー、ボールミル又はビーズミル、ロールミル等を用いることが好ましい。
本発明のプリプレグは前記樹脂組成物のワニスを基材に含浸し、さらに加熱乾燥して有機溶媒を蒸発させるとともに基材中のポリフェニレンエーテル樹脂を半硬化させることにより得ることができる。
前記基材としては、ガラス繊維からなるガラスクロスや有機繊維の織布等を用いることができるが、寸法安定性に優れており、剛性が高い等性能のバランスに優れているためガラスクロスを用いることが好ましい。
基材への樹脂組成物のワニスの含浸量は、プリプレグ中の樹脂組成物の含有量が40〜95質量%になるようにするのが好ましい。前記割合が40質量%未満の場合には、成形時にボイド・カスレを生じる危険性があり、95質量%以上を得ることは困難なため、実質的な上限はこの値となる。
本発明のプリプレグを製造する方法としては、例えば、前記樹脂組成物のワニスを基材に含浸させた後乾燥する方法が挙げられる。含浸は浸漬(ディッピング)、塗布等によって行われる。含浸は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて含浸を繰り返し、最終的に所望の組成及び樹脂量に調整することも可能である。
前記樹脂組成物のワニスが含浸された基材は、所定の加熱条件、例えば、80〜150℃で1〜10分間加熱して乾燥し、有機溶媒を除去するとともに半硬化のBステージ状態にすることによって、プリプレグが得られる。
本発明の積層体は、前記プリプレグを用いて製造される。すなわち、前記プリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ね、これを、加熱加圧成形して積層一体化することによって、両面金属箔張り又は片面金属箔張りの積層体を作製することができるものである。なお、加熱加圧成形条件は、本発明に係るPPE樹脂組成物の原料の配合比率により異なり、特に限定するものでないが、一般的には温度170℃以上230℃以下、圧力1.0MPa以上6.0MPa以下(10kg/cm以上60kg/cm以下)の条件で適切な時間、加熱加圧するのが好ましい。また、190℃以上であることが、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)との反応、及び低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の硬化反応が、ともに良好に進行する点で好ましい。
そして、このようにして作製した積層体の表面の金属箔をエッチング加工等して回路形成をすることによって、積層体の表面に回路として導体パターンを設けたプリント配線板を得ることができるものである。このように得られるプリント配線板は、上記の積層体を用いて形成されているので、誘電特性に優れており、また、信頼性、特に絶縁信頼性が改良されたものである。
さらに、本発明の積層体を内層用のプリント配線板として用い、導体パターンの金属箔に表面処理を施した後、本発明のプリプレグを介して複数枚のプリント配線板を重ねると共に、その最外層に本発明のプリプレグを介して金属箔を重ね、これを加熱加圧成形して積層一体化することによって、プリント配線板等の絶縁材料として用いられる高周波領域における誘電特性、耐熱性、及び寸法安定性に優れた多層プリント配線板が得られる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)及び前記ビニル系化合物(B)の代わりに、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記ビニル系化合物(B)とを反応させて、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基を導入した変性低分子量ポリフェニレンエーテルを用いる以外、第1の実施形態と同様である。
本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を製造する際、上記第1の実施形態のように、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、ビニル系化合物(B)、及び架橋型硬化剤(C)を、有機溶媒に同時に添加して溶解させてもよいが、本実施形態のように、架橋型硬化剤(C)を添加する前に、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)とを反応させるプレリアクションを行ってもよい。
前記プレリアクションとしては、例えば、まず、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、ビニル系化合物(B)、及び必要に応じて前記触媒を、有機溶媒に溶解させて、加熱しながら攪拌して、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)とを反応させ、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基を導入させる。
加熱温度は、成分や反応時間等によって異なるが、例えば、80〜150℃であることが好ましい。また、反応時間は、成分や加熱温度等によって異なるが、1〜10時間であることが好ましい。
有機溶媒としては、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、及びビニル系化合物(B)を溶解し、かつ上記反応に悪影響を及ぼすものでなければ特に限定されない。有機溶媒の具体例としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン類、ジブチルエーテル等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素等の適当な有機溶媒の1種あるいは2種以上を混合して用いられる。また、反応時、有機溶媒が揮発しないように、還流してもよく、有機溶媒の沸点が低い場合に特に有効である。
低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、及びビニル系化合物(B)等の固形分濃度は、40〜80質量%となるように、前記有機溶媒によって調整する。
また、反応の終点は、反応液のUV吸光度を経時的に測定して、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基を導入されたものの濃度が、40μmol/g以下となるまでとしてもよい。
また、プレリアクションした場合、前記反応後、反応液の温度を、例えば、30〜80℃まで降下させてから、架橋型硬化剤(C)や他の成分を添加して樹脂ワニスを作製することが好ましい。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。なお、本発明は、実施例になんら限定されるものではない。
[実施例A]
実施例Aでは、本発明の第1実施形態に係る実施例(プレリアクションを行わない場合)について説明する。
はじめに、本実施例で用いる各種成分について説明する。
PPE1:ポリフェニレンエーテル(日本ジーイープラスチックス(株)製の「SA120」、数平均分子量Mn3000)
PPE2:後述の方法で得られたポリフェニレンエーテル(数平均分子量Mn3000)
エポキシメタクリレート:和光純薬工業(株)製
セロキサイド2000:4−ビニルシクロへキセンオキサイド(ダイセル化学工業(株)製)
カレンズMOI:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2−イソシアトエチルメタクリレート)(昭和電工(株)製)
TAIC:トリアリルイソシアヌレート(日本化成(株)製)
ビニルベンジル化合物1:V7000X(昭和高分子(株)製)
ビニルベンジル化合物2:V1100X(昭和高分子(株)製)
イミダゾール類:2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業(株)製の「2E4MZ」)
過酸化物:ジ(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製の「パーブチルP(PBP)」)
シリカ:(株)アドマテックス製の「SO25R」
[PPE2の合成方法]
PPE2は、Mn25000のポリフェニレンエーテル(日本ジーイープラスチックス(株)製の「ノリル640」)を公知の分子量低減方法により分子量を低減させて得られた、Mn3000のポリフェニレンエーテルである。
具体的には、PPE2は、以下のようにして得られたポリフェニレンエーテルである。
トルエンを攪拌装置及び攪拌羽根を装備したフラスコに入れた。前記フラスコを内温90℃に制御しながら、Mn25000のポリフェニレンエーテル(「ノリル640」)90g、ビスフェノールA(和光純薬工業(株)製)7g、及び過酸化ベンゾイル(日本油脂(株)製)7gを入れ、2時間攪拌することにより、PPE2を調製した。そのときのPPE2の濃度が、35質量%であった。
このPPE2を多量のメタノールで再沈殿させ、不純物を除去して、減圧下80℃で3時間乾燥してトルエンを完全に除去した。
得られたPPE2の数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したところ、数平均分子量(Mn)が約3000であった。なお、前記数平均分子量は、GPCにより、TSK guard column HXL-4 G4000HXL 1本、G3000HXL 1本、G2000HXL 1本、 G1000HXL 2本のカラムを用い、THF溶媒で流量1ml/分、温度40℃の条件で測定した。
(樹脂組成物)
表1に示す配合割合(質量部)で、固形分濃度が50質量%となるように、各種成分をトルエンに投入し、90℃で、完全に溶解するまで攪拌して樹脂組成物のワニスを作製した。
(プリプレグ)
次に得られた樹脂組成物のワニスを、プリプレグ中の樹脂組成物の含有量が55〜60質量%になるように、基材(日東紡績(株)製のガラスクロス「WEA116E」)に含浸させた後、130℃で3〜5分間の条件で加熱乾燥することにより溶媒を除去しプリプレグを得た。
(積層体)
そして、得られたプリプレグを6枚重ね、その両面に18μm厚の銅箔(古河サーキットフォイル(株)製の「F2−WS」)を配して、温度220℃、圧力3MPa、2時間の成形条件で加熱加圧し、積層体(銅張積層板)を得た。
得られた樹脂組成物、プリプレグ、積層体は、以下の評価方法にしたがって評価した。
(プリプレグの流動性)
プリプレグの流動性(%)は、JIS C 6521に基づいて測定した。
(誘電率、誘電正接)
誘電特性(誘電率、誘電正接)は、JIS C 6481に基づいて両面銅張積層体の1MHzにおける誘電特性を測定した。
(オーブン耐熱性)
オーブン耐熱性は、得られた積層体を、種々の温度に設定したオーブンにそれぞれ1時間静置した後の状態を外観観察した。その際、膨れ等の外観異常が発生しない最も高い温度を、オーブン耐熱性(℃)とした。
(熱膨張係数)
得られた積層体の銅箔をエッチングして試験片を作製し、この試験片を用いて熱機械分析装置(TMA測定装置)(セイコーインスツルメント(株)製)を用いて、75〜120℃の昇温時における熱膨張係数(Z軸)(ppm/℃)を測定した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 0005297609
表1からわかるように、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、ビニル系化合物(B)、及び架橋型硬化剤(C)を含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物を用いて得られた実施例1〜7は、誘電率及び誘電正接等の誘電特性が劣ることなく、プリプレグ流動性が高く、オーブン耐熱性が高い。さらに、熱膨張係数が低く、寸法安定性も優れている。これに対して、ビニル系化合物(B)を含まない比較例1、ビニル系化合物(B)及び架橋型硬化剤(C)を含まない比較例2、及び架橋型硬化剤(C)を含まない比較例3は、オーブン耐熱性が低く、熱膨張係数が高かった。よって、耐熱性や寸法安定性が不充分であった。
[実施例B]
実施例Bでは、本発明の第2実施形態に係る実施例(プレリアクションを行う場合)について説明する。
本実施例は、実施例Aで使用した成分と同様の成分を用い、以下のように、樹脂組成物、プリプレグ、及び積層体を製造した。
(樹脂組成物)
まず、トルエンを攪拌装置及び攪拌羽根を装備したフラスコに入れた。表2に示す配合割合(質量部)で、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)とイミダゾール類とを、固形分濃度が70質量%となるように前記フラスコ内のトルエンに投入し、フラスコを内温115℃に制御し、還流しながら攪拌して、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)とを反応させた。
その際、反応液のUV吸光度を経時的に測定して、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)とが反応したものの濃度が、10μmol/g以下となるまで反応させた。このときの反応時間は、約10時間だった。
その後、フラスコの内温を80℃まで下げ、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、ビニル系化合物(B)、及びイミダゾール類以外の成分を、表2に示す配合割合(質量部)で、フラスコ内に投入し、さらに、固形分濃度が50質量%となるように、トルエンで調整し、樹脂組成物のワニスを作製した。
(プリプレグ、積層体)
プリプレグ、及び積層体は、樹脂組成物のワニスを代えた以外、実施例Aと同様の方法で作製した。
得られた樹脂組成物、プリプレグ、積層体は、実施例Aと同様の評価方法にしたがって評価した。
これらの結果を表2に示す。
Figure 0005297609
表2からわかるように、低分子量ポリフェニレンエーテル(A)とビニル系化合物(B)とを予め反応させた変性低分子量ポリフェニルエーテル、及び架橋型硬化剤(C)を含む樹脂組成物を用いて得られた実施例8〜15は、誘電率及び誘電正接等の誘電特性が劣ることなく、プリプレグ流動性が高く、オーブン耐熱性が高い。さらに、熱膨張係数が低く、寸法安定性も優れている。変性低分子量ポリフェニルエーテルを含まない比較例1,2は、オーブン耐熱性が低く、熱膨張係数が高かった。よって、耐熱性や寸法安定性が不充分であった。

Claims (7)

  1. 末端に水酸基を有する、数平均分子量が1000〜4000の低分子量ポリフェニレンエーテル(A)、エポキシ基及び/又はイソシアネート基と不飽和二重結合基とを分子中に有するビニル系化合物(B)とを反応させて、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の末端に不飽和二重結合基を導入した変性低分子量ポリフェニレンエーテル
    及び不飽和二重結合基を分子中に2個以上有する架橋型硬化剤(C)を含むことを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  2. 前記ビニル系化合物(B)が、ビニル基含有モノエポキシド、ビニル基含有イソシアネート、エポキシメタクリレート、及びエポキシアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  3. 前記架橋型硬化剤(C)が、ビニルベンジル基を分子中に2個以上有するビニルベンジル化合物、及び/又はトリアルケニルイソシアヌレート化合物である請求項1又は請求項2に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  4. 前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)の含有割合が、前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)と前記ビニル系化合物(B)と前記架橋型硬化剤(C)との総量に対して、40〜70質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  5. 前記低分子量ポリフェニレンエーテル(A)が、数平均分子量が10000〜30000の高分子量ポリフェニレンエーテルと、フェノール系化合物と、過酸化物との分解反応により得られたものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物を基材に含浸させて形成されるプリプレグ。
  7. 請求項に記載のプリプレグを金属箔及び/又は内層回路基板と積層して形成される積層体。
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