JP6724305B2 - プリプレグ - Google Patents

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Description

本発明は、プリプレグに関する。特に、プリプレグを構成する基材に関する。
近年、情報通信において用いられるデータ通信の高速化及び大容量化が急激に進められている。したがって、上記の電子機器において、高性能データ処理を実現するための高い周波数特性(高性能化)を実現するための配線多層化を両立したプリント配線基板が要求されている。
情報通信に用いられるプリント配線基板には、信号の伝搬遅延の短縮及び伝送損失の低減を実現するために、低誘電率(低Dk)及び低誘電正接(低Df)が要求される。これらの要求を実現するために、プリント配線基板において多層化された配線間の絶縁層として、ポリフェニレンエーテルを含有する樹脂材料が用いられている。ポリフェニレンエーテルは、電気特性(低誘電率・低誘電正接)に優れ、伝送速度の高速化や伝送損失の低減に効果が期待される化合物である。プリント配線基板の高性能化及び多層化のために、このポリフェニレンエーテルを用いたプリプレグの積層体をプリント配線基板に適用する試みがなされている。
また、プリント配線基板の高性能化及び多層化に伴い、プリント配線基板に用いられる積層板用材料は薄型化及び高い剛性が要求される。これらの要求を満たすために、例えば特許文献1及び特許文献2では、基材としてガラスクロスを用いたプリプレグが用いられている。
特表2006−516297号公報 国際公開第2009/041137号
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の特性値において、基材に含まれるガラスクロスに起因して低Dk化及び低Df化が制限されることが判っている。
本発明は、そのような課題に鑑みてなされたものであり、低Dk及び低Dfを実現可能なプリプレグを提供することを目的とする。
本発明の一実施形態に係るプリプレグは、ポリフェニレンエーテル及び架橋型硬化剤を含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、有機基材と、を含み、ポリフェニレンエーテルは一般式(1)
Figure 0006724305

によって表され、且つ数平均分子量が1000〜7000であり、一般式(1)において、Xはアリール基を示し、(Y)はポリフェニレンエーテル部分を示し、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、mは1〜100の整数を示し、nは1〜6の整数を示し、qは1〜4の整数を示す。
また、有機基材は、液晶ポリエステル基材、フッ素樹脂基材、及びポリイミド基材のうち少なくとも1以上を含んでもよい。
本発明の一実施形態に係るプリプレグは、数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するハロゲン原子を含有しないエポキシ化合物、数平均分子量5000以下のポリフェニレンエーテル、シアン酸エステル化合物、エポキシ化合物及びポリフェニレンエーテルと硬化剤であるシアン酸エステル化合物との反応を促進させる硬化触媒、及びハロゲン系難燃剤を含有する樹脂ワニスを有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、有機基材と、を含む。
また、有機基材は、液晶ポリエステル基材、フッ素樹脂基材、及びポリイミド基材のうち少なくとも1以上を含んでもよい。
本発明によると、低Dk及び低Dfを実現可能なプリプレグを提供することができる。
〈実施形態1〉
以下、本発明に係るプリプレグについて詳細に説明する。但し、本発明のプリプレグは、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
[プリプレグの構成]
本発明の実施形態1に係るプリプレグは、ポリフェニレンエーテル及び架橋型硬化剤を含む樹脂組成物と、有機基材と、を含む。
(ポリフェニレンエーテル)
本発明樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテルは上記の一般式(1)で表され、数平均分子量が1000以上7000以下のものを用いることができる。
上記の一般式(1)において、Xはアリール基を示し、(Y)はポリフェニレンエーテル部分を示し、R〜Rはそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基を示す。一般式(1)において、nは1以上6以下の整数であり、qは1以上4以下の整数である。ここで、好ましくは、nは1以上4以下の整数であるとよく、さらに好ましくは、nは1又は2であるとよく、理想的にはnは1であるとよい。また、好ましくは、qは1以上3以下の整数であるとよく、さらに好ましくは、qは1又は2であるとよく、理想的にはqは1であるとよい。
(アリール基)
一般式(1)におけるアリール基としては、芳香族炭化水素基を用いることができる。具体的には、アリール基として、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、及びナフチル基を用いることができ、好ましくはアリール基を用いるとよい。ここで、アリール基は、上記のアリール基が酸素原子で結合されているジフェニルエーテル基等や、カルボニル基で結合されたベンゾフェノン基等、アルキレン基により結合された2,2−ジフェニルプロパン基等を含んでもよい。また、アリール基は、アルキル基(好適にはC−Cアルキル基、特にメチル基)、アルケニル基、アルキニル基やハロゲン原子など、一般的な置換基によって置換されていてもよい。但し、当該「アリール基」は、酸素原子を介してポリフェニレンエーテル部分に置換されているので、一般的置換基の数の限界は、ポリフェニレンエーテル部分の数に依存する。
(ポリフェニレンエーテル部分)
一般式(1)におけるポリフェニレンエーテル部分は以下の一般式(2)で表され、フェニルオキシ繰返し単位からなる。ここで、フェニル基は、一般的な置換基によって置換されていてもよい。
Figure 0006724305
上記の一般式(2)において、R〜Rはそれぞれ水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基又はアルケニルカルボニル基を示す。一般式(2)において、mは1〜100の整数を示す。ここで、mの値は一般式(1)のポリフェニレンエーテルの数平均分子量が1000以上7000以下となるように調整される。つまり、mは固定値ではなく、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物に含まれるポリフェニレンエーテル全体の数平均分子量が1000以上7000以下となるような、ある一定の範囲内の変数であってもよい。
ここで、ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が7000を超えると、成形時の流動性が低下して多層成形が困難になってしまう。一方、ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が1000未満だと、ポリフェニレンエーテル樹脂の本来の優れた誘電特性と耐熱性が得られない可能性がある。より優れた流動性、耐熱性、及び誘電特性を得るためには、ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が1200以上5000以下であるとよい。より好ましくは、ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が1500以上4500以下であるとよい。
また、上記の数平均分子量のポリフェニレンエーテルは、架橋型硬化剤とブレンドしたときの相溶性が非常に良好である。換言すると、ポリフェニレンエーテルは数平均分子量が小さいほど混合物との相溶性が高くなる。したがって、相分離に起因した粘度上昇が起きにくく、低分子量である架橋型硬化剤の揮発が抑制される。その結果、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のビアホール等への埋め込み性を向上させることができる。
一般式(2)におけるアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、下記で説明する一般式(1)のアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基と同様のものを用いることが可能である。ポリフェニレンエーテル部分のアルケニルカルボニル基としては、上記のアルケニル基により置換されたカルボニル基を用いることができる。具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基を用いることができる。
ここで、一般式(2)におけるポリフェニレンエーテル部分は、置換基R〜Rとしてビニル基、2−プロピレン基(アリル基)、メタクリロイル基、アクリロイル基、2−プロピン基(プロパルギル基)などの不飽和炭化水素含有基を有していてもよい。ポリフェニレンエーテル部分の置換基R〜Rに上記の不飽和炭化水素含有基が備えられていることで、架橋型硬化剤のより顕著な効果を得ることができる。
上記の基を末端に有するポリフェニレンエーテルは、架橋型硬化剤との相互作用が良好である。したがって、比較的少量の架橋型硬化剤を添加するだけで耐熱性を向上させることができ、低誘電率化を実現することができる。
(アルキル基)
一般式(1)及び一般式(2)におけるアルキル基としては、飽和炭化水素基を用いることができる。上記のアルキル基としては、C−C10アルキル基を用いるとよい。好ましくは、上記のアルキル基としてC−Cアルキル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルキル基としてC−Cアルキル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルキル基としてC−Cアルキル基を用いるとよい。具体的には、アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を用いることができる。
(アルケニル基)
一般式(1)及び一般式(2)におけるアルケニル基としては、構造中に少なくとも一つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和炭化水素基を用いることができる。上記のアルケニル基としては、C−C10アルケニル基を用いるとよい。好ましくは、上記のアルケニル基としてC−Cアルケニル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルケニル基としてC−Cアルケニル基を用いるとよい。具体的には、アルケニル基として、エチレン基、1−プロピレン基、2−プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基を用いることができる。
(アルキニル基)
一般式(1)及び一般式(2)におけるアルキニル基としては、構造中に少なくとも一つの炭素−炭素三重結合を有する不飽和炭化水素基を用いることができる。上記のアルキニル基としては、C−C10アルキニル基を用いるとよい。好ましくは、上記のアルキニル基としてC−Cアルキニル基を用いるとよい。さらに好ましくは、上記のアルキニル基としてC−Cアルキニル基を用いるとよい。具体的には、アルキニル基として、エチン基、1−プロピン基、2−プロピン基、イソプロピン基、ブチン基、イソブチン基、ペンチン基、ヘキシン基を用いることができる。
(架橋型硬化剤)
本樹脂組成物に含まれる架橋型硬化剤は、ポリフェニレンエーテルを3次元架橋する硬化剤を用いることができる。具体的には、架橋型硬化剤として、多官能ビニル化合物、ビニルベンジルエーテル系化合物、アリルエーテル系化合物、又はトリアルケニルイソシアヌレートを用いることができる。多官能ビニル化合物は、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルビフェニルを含む。ビニルベンジルエーテル系化合物は、フェノール及びビニルベンジルクロライドの反応によって合成される。アリルエーテル系化合物は、スチレンモノマー、フェノール、及びアリルクロライドの反応によって合成される。トリアルケニルイソシアヌレートは相溶性が良好であり、トリアリルイソシアヌレート(以下TAIC)又はトリアリルシアヌレート(以下TAC)を用いることができる。
架橋型硬化剤として、上記の材料の他にも、(メタ)アクリレート化合物(メタクリレート化合物及びアクリレート化合物)を用いることができる。特に、3以上5以下の官能の(メタ)アクリレート化合物を、樹脂組成物全量に対して3質量%以上20質量%以下含有させるとよい。3以上5以下の官能のメタクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)等を用いることができ、一方、3以上5以下の官能のアクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート等を用いることができる。上記の架橋型硬化剤を用いることで、樹脂組成物の耐熱性をさらに向上させることができる。
(メタ)アクリレート化合物の官能が3未満又は5を超えると、官能が3以上5以下の(メタ)アクリレート化合物に比べて耐熱性が低下してしまう。また、官能が3以上5以下の(メタ)アクリレート化合物であっても、含有量が本樹脂組成物全量に対して3質量%未満であると、本樹脂組成物の耐熱性向上の効果を十分に得ることができない。一方で、20質量%を超えると、誘電特性や耐湿性が低下してしまう。
本樹脂組成物におけるポリフェニレンエーテルと架橋型硬化剤との含有比率は、30/70以上90/10以下とするとよい。好ましくは、上記の含有比率は50/50以上90/10以下とするとよい。さらに好ましくは、上記の含有比率は60/40以上90/10以下とするとよい。
ここで、ポリフェニレンエーテルの含有比率が下限よりも小さくなると、樹脂組成物全体の剛性が低くなってしまう。その影響で、樹脂組成物全体の多層化が困難になってしまう。一方、ポリフェニレンエーテルの含有比率が上限よりも大きくなると、樹脂組成物全体の耐熱性が低下してしまう。ポリフェニレンエーテルと架橋型硬化剤との含有比率を上記の範囲に調整することで、良好な樹脂組成物の流動性及び相溶性を得ることができる。したがって、樹脂組成物のビアホール等への埋め込み性を向上させることができる。
(有機基材)
本発明のプリプレグに含まれる有機基材として、液晶ポリエステル基材、フッ素樹脂基材、及びポリイミド基材のうち少なくとも1以上を含んでもよい。ここで、有機基材とは、少なくとも基材を構成する原材料が有機物である基材を意味する。
(その他の添加剤)
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、未修飾のポリフェニレンエーテル、無機材料又は有機材料の充填材、難燃剤、及び反応開始剤から選択される1以上の添加剤を添加することができる。また、さらにプリント配線基板などの電子機器の製造に用いられる樹脂組成物の一般的な添加成分を添加してもよい。
(未修飾のポリフェニレンエーテル)
本発明の樹脂組成物は、上記のポリフェニレンエーテルに加え、数平均分子量が9000以上18000以下の未修飾のポリフェニレンエーテルを添加することができる。未修飾のポリフェニレンエーテルを添加することで、樹脂組成物の流動性の制御や耐熱性の向上を実現することができる。また、樹脂組成物中において、充填材などの添加成分の沈殿を抑制することができる。ここで、未修飾のポリフェニレンエーテルとは、分子中に炭素−炭素の不飽和基を有さないポリフェニレンエーテルのことであり、その添加量は、ポリフェニレンエーテルと架橋型硬化剤の合計質量100質量部に対して3質量部以上70質量部以下が好ましい。
さらに、耐熱性、接着性、寸法安定性を改良するために、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー、スチレン・イソプレンブロックコポリマー、1,2−ポリブタジエン、1,4−ポリブタジエン、マレイン酸変性ポリブタジエン、アクリル酸変性ポリブタジエン、及びエポキシ変性ポリブタジエンから選択される1以上の相溶化剤を用いることができる。
(充填材)
本樹脂組成物に無機材料の充填材(以降、無機充填材という)を添加することで、本樹脂組成物を用いたプリプレグの熱膨張係数の低減や剛性を向上させることができる。無機充填材としては、シリカ、窒化ホウ素、ワラストナイト、タルク、カオリン、クレー、マイカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の金属酸化物、窒化物、珪化物、硼化物等を用いることができる。特に、シリカや窒化ホウ素のような低誘電率充填材を添加することで、樹脂組成物の低誘電率化させることができる。
本樹脂組成物に有機材料の充填材(以降、有機充填材という)を添加することで、本樹脂組成物を用いたプリプレグの誘電率を低減させることができる。有機充填材としては、フッ素系、ポリスチレン系、ジビニルベンゼン系、ポリイミド系等を用いることができる。フッ素系充填材(フッ素含有化合物の充填材)としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリパーフルオロアルコキシ樹脂、ポリフッ化エチレンプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン−ポリエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン樹脂等を用いることができる。これらは、単独で用いることもでき、複数を組み合わせて用いることもできる。
また、有機充填材としては、中空高分子微粒子を用いることができる。特に、中空体のシェルの材質がジビニルベンゼンやジビニルビフェニル等の低誘電率の材質である中空体を用いることで、プリプレグの低誘電率化を実現することができる。
無機充填材又は有機充填材としては、平均粒径が10μm以下の微粒子を用いることができる。ここでいう平均粒径とは、添加する充填材のカタログ等の資料に記載された値であってもよく、ランダムに抽出された複数の充填材の平均値又は中央値であってもよい。充填材の平均粒径を上記の条件とすることで、平滑性及び信頼性が高いプリプレグを得ることができる。
(難燃剤)
本樹脂組成物に難燃剤を添加することで、本樹脂組成物を用いたプリプレグの耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性、及びガラス転移点を向上させることができる。難燃剤としては、臭素化有機化合物、例えば芳香族臭素化合物を用いることができる。具体的には、デカブロモジフェニルエタン、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド等を用いることができる。好ましくは、臭素の含有量が樹脂組成物全量に対して8質量%以上20質量%以下となる量の臭素化有機化合物を含有するとよい。
臭素の含有量が下限よりも小さくなると、プリプレグの難燃性が低下し、UL規格94V−0レベルの難燃性を維持することができなくなってしまう。一方、臭素の含有量が上限よりも大きくなると、プリプレグの加熱時に臭素が解離しやすくなり、プリプレグの耐熱性が低下してしまう。
(反応開始剤)
本樹脂組成物に反応開始剤を添加することで、架橋型硬化剤のより顕著な効果を得ることができる。反応開始剤としては、適度な温度及び時間で樹脂組成物の硬化を促進することによって、樹脂組成物の耐熱性等の特性を向上できるものであれば一般的な材料を用いることができる。具体的には、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、過酸化ベンゾイル、3,3’,5,5’−テトラメチル−1,4−ジフェノキノン、クロラニル、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシル、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル等の酸化剤を用いることができる。ここで、必要に応じてカルボン酸金属塩などを添加して、硬化反応をさらに促進させてもよい。
以上のように、本発明の実施形態1に係るプリプレグによると、基材として有機基材を用いることで、低Dk及び低Dfを実現することができる。
[プリプレグの製造方法]
本発明によるプリプレグにおいて、基材としては液晶ポリエステル基材、フッ素樹脂基材、及びポリイミド基材のうち少なくとも1以上を含む有機基材を用いることができる。ここで、有機基材と樹脂組成物との密着性を向上させるために、ワニスを含浸させる前に基材をプラズマ処理、コロナ処理、低紫外線処理、薬液処理、サンドブラスト処理などの処理をしてもよい。また、有機基材と樹脂組成物との密着性を向上させるために、本樹脂組成物にカップリング剤を添加してもよい。
基材へのワニスの含浸量は、プリプレグ中の樹脂固形分の質量比率が35質量%以上になるようにするのが好ましい。基材の誘電率は樹脂の誘電率よりも大きいため、このプリプレグを用いて得られたプリント配線基板の誘電率を小さくするには、プリプレグ中の樹脂固形分の含有量を上記の質量比率より多くすると良い。ワニスを含浸させた基材は、80℃以上150℃以下の温度で1分以上10分以下の時間加熱することができる。ただし、ワニスを含浸させた基材の加熱条件は、上記の条件に限定されない。
[プリント配線基板(積層体)の製造方法]
ここでは、上記のようにして作製したプリプレグを用いた積層体の製造方法について説明する。まず、プリプレグを一枚または複数枚重ね、さらにその上下の両面又は片面に銅箔等の金属箔を重ねて、その積層体を加熱加圧成形する。この成形によって、両面又は片面に金属箔を有する積層体を作製することができる。この積層体の金属箔をパターニング及びエッチング加工して回路形成することでプリント配線基板を得ることができる。また、回路が形成された金属箔を間に挟んで複数枚のプリプレグを重ねて加熱加圧成形することで、多層化されたプリント配線基板を作製することができる。
加熱加圧成形条件は、本発明に係る樹脂組成物の原料の含有比率により異なるが、一般的には170℃以上230℃以下、圧力1.0MPa以上6.0MPa以下(10kg/cm以上60kg/cm以下)の条件で適切な時間、加熱加圧するのが好ましい。
上記の積層体をに用いられる金属箔としては、表面粗さ(十点平均粗さ:Rz)が2μm以下であり、プリプレグによって樹脂層が形成される側の表面(プリプレグと接触する側の表面)が、防錆や樹脂層との密着性向上のために亜鉛又は亜鉛合金にて処理され、さらにビニル基含有シランカップリング剤などによるカップリング処理がなされた銅箔を用いることができる。このような銅箔は樹脂層(絶縁層)との密着がよく、高周波特性に優れたプリント配線基板が得られる。なお、銅箔を亜鉛又は亜鉛合金にて処理する場合、銅箔の表面に亜鉛や亜鉛合金をめっき法により形成することができる。
このようにして得られた積層体やプリント配線基板は、低Dk及び低Dfを実現することができる。また、成形性、耐水性、耐湿性、吸湿耐熱性、及びガラス転移点が高い積層体やプリント配線基板を得ることができる。
〈実施形態2〉
以下、本発明に係るプリプレグについて詳細に説明する。但し、本発明のプリプレグは、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
[プリプレグの構成]
本発明の実施形態2に係るプリプレグは、エポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、シアン酸エステル化合物、硬化触媒、及びハロゲン系難燃剤を有する樹脂ワニスからなる樹脂組成物と、有機基材と、を含む。ここで、エポキシ化合物は、数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するハロゲン原子を含有しない。また、ポリフェニレンエーテルは数平均分子量が5000以下である。また、硬化触媒は、エポキシ化合物及びポリフェニレンエーテルと硬化剤であるシアン酸エステル化合物との反応を促進させる。
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物等を用いることができる。これらは、単独で用いることもでき、複数を組み合わせて用いることもできる。上記のうち、特にジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物がポリフェニレンエーテルとの相溶性が良好であるため好ましい。なお、本樹脂組成物には、ハロゲン化エポキシ化合物を含有しないことが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて添加してもよい。
本実施形態のプリプレグにおけるエポキシ化合物の含有割合は、エポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、及びシアン酸エステル化合物の成分の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、エポキシ化合物の含有割合は30質量%以上50質量%以下であるとよい。エポキシ化合物の含有割合を上記の範囲とすることで、充分な耐熱性と優れた機械的特性及び電気特性を維持することができる。
(ポリフェニレンエーテル)
ポリフェニレンエーテルとしては、数平均分子量は5000以下であり、好ましくは2000以上4000以下である。
ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が5000を超えると、流動性が悪くなり、またエポキシ基との反応性も低下してしまう。そのため、硬化反応に長い時間がかかってしまい、硬化系に取り込まれず未反応のものが増加してガラス転移温度が低下し、十分な耐熱性の改善が得られなくなる。
本実施形態のプリプレグにおけるポリフェニレンエーテルの含有割合は、エポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、及びシアン酸エステル化合物の成分の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、ポリフェニレンエーテルの含有割合は20質量%以上40質量%以下であるとよい。ポリフェニレンエーテルの含有割合が上記の範囲であることで、優れた誘電特性を得ることができる。
(シアン酸エステル化合物)
シアン酸エステル化合物としては、1分子中に2個以上のシアネート基を有する化合物を用いることができる。具体的には、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナートフェニル)メタン、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)エタン等、又はこれらの誘導体等の芳香族系シアン酸エステル化合物等を用いることができる。これらは、単独で用いることもでき、複数を組み合わせて用いることもできる。
シアン酸エステル化合物は、エポキシ樹脂を形成するためのエポキシ化合物の硬化剤として作用し、剛直な骨格を形成する成分である。したがって、高いガラス転移点(Tg)を得ることができる。また、低粘度であるために得られる樹脂ワニスの高流動性を維持することができる。
本実施形態のプリプレグにおけるシアン酸エステル化合物の含有割合は、エポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、及びシアン酸エステル化合物の成分の合計量に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、シアン酸エステル化合物の含有割合は20質量%以上40質量%以下であるとよい。シアン酸エステル化合物の含有割合が上記の範囲であることで、十分な耐熱性を得ることができ、基材に対する含浸性に優れ、樹脂ワニス中でも結晶が析出しにくくすることができる。
(硬化触媒)
硬化触媒としては、オクタン酸、ステアリン酸、アセチルアセトネート、ナフテン酸、サリチル酸等の有機酸のZn,Cu,Fe等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン、2−エチル−4−イミダゾール、4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類等を用いることができる。これらは、単独で用いることもでき、複数を組み合わせて用いることもできる。上記のうち、有機金属塩、特にオクタン酸亜鉛がより高い耐熱性が得られるため好ましい。
本実施形態のプリプレグにおける硬化触媒の含有割合は、例えば有機金属塩を用いる場合には、エポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、及びシアン酸エステル化合物の成分の合計量(100質量部)に対して0.005質量部以上5質量部以下とすることができる。また、例えばイミダゾール類を用いる場合には、硬化触媒の含有割合はエポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、及びシアン酸エステル化合物の成分の合計量(100質量部)に対して0.01質量部以上5質量部以下とすることができる。
(ハロゲン系難燃剤)
ハロゲン系難燃剤としては、トルエン等の溶媒により調整されるワニス中で溶解しないハロゲン系難燃剤を用いることができる。具体的には、ハロゲン系難燃剤としては、エチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン等を用いることができる。上記のうち、特にエチレンジペンタブロモベンゼン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼンは、融点が300℃以上で耐熱性が高いため、プリプレグの耐熱性を向上させることができる。融点が300℃以上の耐熱性が高いハロゲン系難燃剤を用いると、高温時におけるハロゲンの脱離を抑制することができるため、硬化物の分解による耐熱性の低下を抑制することができる。
ハロゲン系難燃剤の分散状態における平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下、より好ましくは1μm以上10μm以下であることが耐熱性及び層間の絶縁性を充分に維持できる。なお、上記の平均粒子径は、(株)島津製作所製の粒度分布計(SALD−2100)等により測定することができる。
本実施形態のプリプレグにおけるハロゲン系難燃剤の含有割合は、得られる硬化物中の樹脂成分(すなわち、無機成分を除いた成分)全量中にハロゲン濃度が5質量%以上30質量%以下になるような割合で含有させることが好ましい。
(有機基材)
本発明のプリプレグに含まれる有機基材として、液晶ポリエステル基材、フッ素樹脂基材、及びポリイミド基材のうち少なくとも1以上を含んでもよい。
(充填材)
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填材を添加することができる。無機充填材は加熱時の寸法安定性の向上及び難燃性の向上の効果を得ることができる。無機充填材としては、具体的に球状シリカ等のシリカ、アルミナ、タルク、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、マイカ、ホウ酸アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。また、無機充填材として、エポキシシランタイプ又はアミノシランタイプのシランカップリング剤で表面処理されたものを用いることができる。シランカップリング剤で表面処理された無機充填材を含有することで、吸湿時における耐熱性の向上及び層間の密着性を向上させることができる。
本実施形態のプリプレグにおける無機充填材の含有割合は、エポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、及びシアン酸エステル化合物の成分の合計量(100質量部)に対して、10質量部以上100質量部以下になるような割合で含有させるとよい。好ましくは、無機充填材の含有割合を20質量部以上70質量部以下になるような割合で含有させるとよい。より好ましくは、無機充填材の含有割合を20質量部以上50質量部以下になるような割合で含有させるとよい。無機充填材の含有割合を上記の範囲とすることで、流動性や金属箔との密着性を低下させずに寸法安定性を向上させることができる。
本発明の樹脂組成物は、上記の無機充填材以外にも、プリント配線基板などの電子機器の製造に用いられる樹脂組成物の一般的な添加成分を添加してもよい。例えば、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、染料や顔料、滑剤等を添加してもよい。
[プリプレグの製造方法]
本発明の実施形態2に係るプリプレグの本樹脂組成物は、エポキシ化合物、ポリフェニレンエーテル、及びシアン酸エステル化合物の成分は何れも樹脂ワニス中で溶解されたものであり、無機充填材の成分は、前記樹脂ワニス中で溶解されず、分散されているものである。このような樹脂ワニスは、例えば、以下のようにして調製される。
まずは、ポリフェニレンエーテルの樹脂溶液にエポキシ化合物及びシアン酸エステル化合物を所定量溶解させる。この溶解は室温で行われてもよく、加熱しながら行われてもよい。エポキシ化合物及びシアン酸エステル化合物としては、室温でトルエン等の溶媒に溶解する材料を用いることで、樹脂ワニス中で析出物の生成を抑制することができる。
ここで、添加剤として無機充填材を添加する場合、充填材を添加した後にボールミル、ビーズミル、プラネタリーミキサー、ロールミル等を用いて、所定の分散状態になるまで分散させることにより、樹脂ワニスが調製される。
上記のようにして得られた樹脂ワニスを、実施形態1と同様の製造方法で基材に含浸、乾燥させることでプリプレグを得ることができる。また、実施形態1と同様の製造方法でプリント配線基板(積層体)を得ることができる。
以下に、本発明の実施形態1及び実施形態2に係るプリプレグを作製し、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の特性値を評価した結果について具体的に説明する。以下に示す実施例1乃至実施例3は実施形態1の実施例に相当し、実施例4乃至実施例7は実施形態2の実施例に相当する。
まず、実施例1乃至実施例3、及び比較例1に用いたポリフェニレンエーテルについて説明する。
(ポリフェニレンエーテル(1))
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12リットルの縦長反応器にCuBr 3.88g(17.4mmol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン 0.75g(4.4mmol)、n−ブチルジメチルアミン 28.04g(277.6mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’、3,3’、5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェノール)−4,4’−ジオール 129.3g(0.48mol)、2,6−ジメチルフェノール233.7g(1.92mol)、2,3,6−トリメチルフェノール 64.9g(0.48mol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン 0.51g(2.9mmol)、n−ブチルジメチルアミン 10.90g(108.0mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2リットル/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。
滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム 19.89g(52.3mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレータで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「A」)のトルエン溶液を836.5g得た。樹脂「A」の数平均分子量は986、重量平均分子量は1530、水酸基当量が471であった。
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「A」のトルエン溶液 836.5g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS−P;セイミケミカル(株)製) 162.6g、塩化メチレン 1600g、ベンジルジメチルアミン 12.95g、純水 420g、30.5wt% NaOH水溶液 178.0gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレータで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥して「ポリフェニレンエーテル(1)」503.5gを得た。「ポリフェニレンエーテル(1)」の数平均分子量は1187、重量平均分子量は1675、ビニル基当量は590g/ビニル基であった。
(ポリフェニレンエーテル(2))
攪拌装置、温度計、空気導入管、じゃま板のついた12リットルの縦長反応器にCuBr 9.36g(42.1mmol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン 1.81g(10.5mmol)、n−ブチルジメチルアミン 67.77g(671.0mmol)、トルエン 2600gを仕込み、反応温度40℃にて攪拌を行い、あらかじめ2300gのメタノールに溶解させた2,2’、3,3’、5,5’−ヘキサメチル−(1,1’−ビフェノール)−4,4’−ジオール 129.32g(0.48mol)、2,6−ジメチルフェノール 878.4g(7.2mol)、N,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン 1.22g(7.2mmol)、n−ブチルジメチルアミン 26.35g(260.9mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8%に調整した混合ガスを5.2リットル/minの流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、攪拌を行った。
滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム 48.06g(126.4mmol)を溶解した水1500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレータで50wt%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「B」)のトルエン溶液を1981g得た。樹脂「B」の数平均分子量は1975、重量平均分子量は3514、水酸基当量が990であった。
攪拌装置、温度計、還流管を備えた反応器に樹脂「B」のトルエン溶液 833.4g、ビニルベンジルクロライド(商品名CMS−P;セイミケミカル(株)製) 76.7g、塩化メチレン 1600g、ベンジルジメチルアミン 6.2g、純水 199.5g、30.5wt% NaOH水溶液 83.6gを仕込み、反応温度40℃で攪拌を行った。24時間攪拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレータで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥して「ポリフェニレンエーテル(2)」450.1gを得た。ビニル「ポリフェニレンエーテル(2)」の数平均分子量は2250、重量平均分子量は3920、ビニル基当量は1189g/ビニル基であった。
次に、実施例1乃至実施例3、及び比較例1のプリプレグ及び誘電率、誘電正接の評価サンプルの製造方法について説明する。
[実施例1]
上記のポリフェニレンエーテル(1)を70質量部準備し、溶媒としてトルエンを100質量部加えて80℃にて30分混合、攪拌して完全に溶解した。このようにして得られたポリフェニレンエーテル溶液に対して、架橋型硬化剤として日本化成株式会社製「TAIC」を30質量部、難燃剤として臭素化有機化合物であるエチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール日本株式会社製「SAYTEX8010(商品名)」)を20質量部、及び無機充填材として球状合成シリカ(株式会社アドマテックス社製「SC2050(商品名)」)を14質量部を配合した。これらを溶媒であるトルエン中で混合、分散、溶解して樹脂組成物のワニスを得た。上記の難燃剤が、ポリフェニレンエーテル及びTAICに非反応の臭素化有機化合物であるので、樹脂組成物であるワニス中で、難燃剤はトルエンには溶解せずに分散していた。
次に、上記のワニスを有機基材である液晶ポリエステル基材(液晶ポリマーフィルム)(株式会社クラレ社製「ベクスター CT−Z(商品名)」)に含浸させた後、温度120℃、3分間の条件で加熱乾燥し、溶媒を除去して樹脂含有量55質量%のプリプレグを得た。有機基材として用いた液晶ポリエステル基材の厚みは50μmである。このようにして得られたプリプレグを7枚重ね、その上下両側に厚さ35μmの銅箔を重ねた。温度200℃、圧力3.0MPa(30kg/cm)、180分間の成形条件で加熱加圧し、プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。次に、得られた両面銅張積層板を86mm×86mmにカットして誘電率、誘電正接測定用のパターンを形成した。なお、誘電率、誘電正接の評価はJIS法(C6481)に基づいて求めた。
[実施例2]
実施例2では、実施例1で用いたポリフェニレンエーテル(1)に代えて、ポリフェニレンエーテル(2)を用いてワニスを作製した。実施例2のワニスの作製方法は実施例1と同様の方法で行った。また、実施例2のワニスを含浸させる有機基材として、液晶ポリエステル基材(液晶ポリマー織布)(旭化成イーマテリアルズ株式会社製「116XC(商品名)」(KBセーレン製繊維、ゼクシオンを織布化したもの))を用いた。
[実施例3]
実施例3では、実施例1で用いたポリフェニレンエーテル(1)を用いてワニスを作製した。実施例3のワニスの作製方法は実施例1と同様の方法で行った。また、実施例3のワニスを含浸させる有機基材として、フッ素樹脂基材(日本ピラー工業株式会社製「NPC−F220A(商品名)」)を用いた。有機基材として用いたフッ素樹脂基材の厚みは130μmである。
[比較例1]
上記の実施例1乃至実施例3の比較例である比較例1では、実施例1のワニスを有機基材の代わりに従来のEガラスクロス(日東紡績株式会社製「NEA2116(商品名)」)を用いた。
表1に実施例1乃至実施例3、比較例1の構成及び評価結果を示す。
Figure 0006724305
表2に示すように、基材にガラスクロスを用いた比較例1に比べて、基材に有機基材を用いた実施例1乃至実施例3では、より小さいDk値及びDf値を得られることが確認された。
続いて、実施例4乃至実施例7、及び比較例2に用いたポリフェニレンエーテル、及びエポキシ化合物について説明する。
(ポリフェニレンエーテル(3))
「ポリフェニレンエーテル(3)」として、ポリフェニレンエーテルの末端が水酸基であるポリフェニレンエーテル(SABICイノベーティブプラスチックス社製のSA90)を用いた。「ポリフェニレンエーテル(3)」の重量平均分子量は1700である。
(エポキシ化合物(1))
エポキシ化合物としては、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物(大日本インキ化学工業株式会社製「エピクロンHP7200(商品名)」)を用いた。エピクロンHP7200の数平均分子量は550である。
(エポキシ化合物(2))
エポキシ化合物としては、ナフタレン骨格変性エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「エピクロンHP4032D(商品名)」)を用いた。エピクロンHP4032Dの数平均分子量は280である。
次に、実施例4乃至実施例7、及び比較例2のプリプレグ及び誘電率、誘電正接の評価サンプルの製造方法について説明する。
[実施例4]
上記のポリフェニレンエーテル(3)を30質量部準備し、溶媒としてトルエンを加えて、混合、攪拌して完全に溶解した。このようにして得られたポリフェニレンエーテル溶液に対して、上記のエポキシ化合物(1)を45質量部、及びシアン酸エステル化合物として、2,2−ビス(4−シアナートフェニル)プロパン(三菱ガス化学株式会社製「CA210(商品名)」)を25質量部添加させた後、30分間撹拌して完全に溶解させた。さらに、難燃剤として上記の「SAYTEX8010」を25質量部、及び無機充填材として上記の「SC2050」を24質量部添加して、ボールミルで分散させることにより樹脂ワニスを得た。なお、上記の難燃剤は溶解せず、樹脂ワニス中で1μm以上10μm以下の平均粒子径で分散していた。
次に、上記のワニスを有機基材である液晶ポリエステル基材(液晶ポリマーフィルム)「ベクスター CT−Z」に塗布させた後、温度120℃、3分間の条件で加熱乾燥し、厚さ0.1mmのプリプレグを得た。有機基材として用いた液晶ポリエステル基材の厚みは50μmである。このようにして得られたプリプレグを8枚重ね、その上下両側に厚さ35μmの銅箔を重ねた。温度200℃、圧力3.0MPa(30kg/cm)、180分間の成形条件で加熱加圧し、プリント配線板用の両面銅張積層板を得た。次に、得られた厚さ0.8mmの銅張積層板の銅箔を除去した試験片を使用し、空洞共振器摂動法(Agilent 8722ES、アジレントテクノロジー製)にて10GHzの誘電率、誘電正接を測定した。
[実施例5]
実施例5では、実施例4で用いたエポキシ化合物(1)に代えて、エポキシ化合物(2)を用いてワニスを作製した。実施例5のワニスの作製方法は実施例4と同様の方法で行った。また、実施例5のワニスを含浸させる有機基材として、液晶ポリエステル基材(液晶ポリマー織布)「116XC」を用いた。
[実施例6]
実施例6では、実施例4と比較して、ポリフェニレンエーテル(3)が少なく(20質量部)、エポキシ化合物(1)が多い(55質量部)含有比率でワニスを作製した。実施例6のワニスの配合方法以外の作製方法は実施例4と同様の方法で行った。また、実施例6のワニスを含浸させる有機基材として、フッ素樹脂基材「NPC−F220A」を用いた。フッ素樹脂基材の厚みは130μmである。
[実施例7]
実施例7では、実施例5と比較して、ポリフェニレンエーテル(3)が少なく(20質量部)、エポキシ化合物(2)が多い(55質量部)含有比率でワニスを作製した。実施例7のワニスの配合方法以外の作製方法は実施例5と同様の方法で行った。また、実施例7のワニスを含浸させる有機基材として、フッ素樹脂基材「NPC−F220A」を用いた。フッ素樹脂基材の厚みは130μmである。
[比較例2]
上記の実施例4乃至実施例7の比較例として、比較例2では、実施例4のワニスを有機基材の代わりに従来のEガラスクロス「NEA2116」を用いた。
表2に実施例4乃至実施例7、比較例2の構成及び評価結果を示す。
Figure 0006724305
表2に示すように、基材にガラスクロスを用いた比較例2に比べて、基材に有機基材を用いた実施例4乃至実施例7では、より小さいDk値及びDf値を得られることが確認された。
以上のように、本発明の実施例1乃至実施例7に係るプリプレグによると、基材として有機基材を用いることで、低Dk及び低Dfを実現することができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。

Claims (2)

  1. ポリフェニレンエーテル及び架橋型硬化剤を含むポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、
    高周波用のフッ素樹脂多層板(日本ピラー工業株式会社製「NPC−F220A」)と、を含み、
    前記ポリフェニレンエーテルは一般式(1)
    Figure 0006724305
    によって表され、且つ数平均分子量が1000〜7000であり、
    前記一般式(1)において、Xはアリール基を示し、(Y)mはポリフェニレンエーテル部分を示し、R1、R2、R3はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を示し、mは1〜100の整数を示し、nは1〜6の整数を示し、qは1〜4の整数を示すことを特徴とするプリプレグ。
  2. 数平均分子量が1000以下で、一分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有し、ハロゲン原子を含有しないエポキシ化合物、数平均分子量5000以下のポリフェニレンエーテル、シアン酸エステル化合物、前記エポキシ化合物及び前記ポリフェニレンエーテルと硬化剤である前記シアン酸エステル化合物との反応を促進させる硬化触媒、及びハロゲン系難燃剤を含有する樹脂ワニスを有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物と、
    高周波用のフッ素樹脂多層板(日本ピラー工業株式会社製「NPC−F220A」)と、を含むことを特徴とするプリプレグ。
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