JP4426119B2 - マイクロカプセル化した農薬 - Google Patents
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Description
本発明は、農薬のマイクロカプセル化技術に関し、さらに詳細には、固体農薬を芯材として含み、農薬成分放出の制御性、安全性、作業性等に優れたマイクロカプセル、それを含む組成物、その製造法及び施用方法に関する。
【0002】
従来より、農薬成分の放出を制御して薬効の持続性を高めるとともに、耐水性、耐候性及び安全性を改良すべく、種々のマイクロカプセル化農薬が提案されている。
【0003】
かかるマイクロカプセル化技術においては、液状の農薬を芯材とするマイクロカプセルが数種類存在する。このような液状芯材タイプのマイクロカプセルについては、乳化分散により農薬液滴を形成後、その液滴に所望の厚みをもって壁剤を被覆させ得る技術が開発され、困難を伴うことなく実用化されている。しかしながら、粉末状、粒状等の固体農薬については、その粒子サイズ及び形状を十分に且つ平滑表面を有するものに調製することが極めて困難であることが主要因となり、満足できる特性を有するマイクロカプセルが提供されるには至っていない。ところが、実用に供されている農薬には固体のものが多く、特に近年、極微量で著効を呈する固体農薬が種々製造販売されている。
【0004】
このような状況下、固体農薬を芯材としたマイクロカプセルとして、例えば、アミノ樹脂プレポリマーと水溶性カチオニック尿素樹脂とをアニオニック界面活性剤の存在下に縮合させてなる樹脂を膜材とする疎水性農薬のマイクロカプセル(特公平2−29642号、特開昭59−6813号公報等)が開示されている。しかしながら、これらの従来技術によるマイクロカプセル化農薬は、およそ10〜20日以内程度の短期間にその成分が溶出してしまうものであり、特に上述のように強力な固体農薬が内包された場合には強い薬害を生じる可能性があり、植物の播種直後の幼弱な時期に施用すると、その溶出成分によって甚大なダメージが引き起こされて損失を招きかねないものであった。また、かかる発明において、好ましい形状を有するマイクロカプセルを製造するには、製造作業従事者に対して悪影響を及ぼす可能性のある疎水性溶媒を使用することが必要である等、製造時の安全性や製造コストにおいて不利益をもたらし得るものであった。
【0005】
また、国際公開WO91/04661号には、浸出性の高い固形農薬の懸濁液に、液体に混和しうる、尿素、チオ尿素若しくはメラミン−ホルムアルデヒドプレポリマー又はその組合わせを添加し、これを硬化せしめて得られるマイクロカプセルに関する発明が開示されている。このマイクロカプセルは、雑草防除、目的の領域外への農薬成分浸出の低減、すなわち、土壌での残留性の向上、そして薬害の防止を目的として製造されたものであるが、その徐放性、特に散布後比較的初期の段階における徐放性の制御は不十分である。
【0006】
本発明における農薬には、殺菌剤(抵抗性増強のための賦活化剤(plant activator)を含む)、殺虫剤、除草剤、植物成長調整剤等が包含されるが、それぞれの薬効の発揮が望まれる時期は一致していない。例えばイネを栽培する場合には一般的に、苗箱への播種から発芽及び発根させる時期には比較的作用が穏やかな殺菌剤を施用してウイルスや微生物による害を妨げ、ついで茎及び歯の徒長を伴う緑化期には必要に応じて殺虫剤によって病害虫からの攻撃を退け、その後本田への移植の直前に殺虫・殺菌剤を施用し、移植してからは除草剤等を併用することで、収穫の向上が図られる。特に耕地面積の広い大規模な農家にあっては、栽培・生育工程における省力化のため、必要に応じてその都度目的の農薬を施用するのでなく、できる限り少ない施用回数でより狭い面積に対して、好ましくは苗箱での播種・潅水時、緑化期あるいは移植後に一度で、農薬施用が完了することが望ましい。そうすれば、移植後に広大な本田へ農薬を施用する労力を低減することができ、非常に好都合である。
【0007】
たとえ生育初期に強力な固体農薬を施用しても、その成分放出が十分に制御されたマイクロカプセルに封入したものであれば、植物の幼弱期における薬害の発現を回避できるだけでなく、薬効発揮が望まれる前に有効成分を流出させてしまう無駄を排除することが可能となる。更に、別々に施用する必要のある配合忌避関係の農薬を組合わせて用いても薬剤の分解を防止できるという効果が期待される。実際に、そのような組合わせは、農薬間の相互作用により、しばしば分解するものであるが、マイクロカプセルをかかる組合わせの少なくとも一成分について用いれば、異なる農薬を単一の通常の組成物に使用できず、別々に施用しなければならないような場合でも、薬剤の分解を防止することができる。
【0008】
従って、本発明はかかる現状に鑑み、好ましい溶出制御性を有して、作業性の向上をもたらし、しかも薬害の発現を低減することができる、固体農薬を内包するマイクロカプセルを提供することをその目的とする。
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、芯材が固体農薬であっても所望の特製を有するマイクロカプセルを提供するものである。本発明のマイクロカプセルは、ナフタレンスルホン酸及び/若しくはアルキルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である分散剤の存在下、所定の難水溶性を呈するメラミン・ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーを重縮合させることによって製造される。
【0010】
従って、本願第一発明は、固体農薬を芯材とし、ナフタレンスルホン酸及び/若しくはアルキルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である分散剤の存在下に、難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー(該難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー100g(固形重量分)に対する水の溶解量が25℃で2000g以下である)を重縮合させることにより形成される樹脂が壁材として被覆されることを特徴とするマイクロカプセルである。
【0011】
前記分散剤は、重量平均分子量500〜8000のナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物であることが望ましい(本願第二発明)。かような分散剤を用いることにより、前記難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー同士の凝集が起こることなく、芯材の固体農薬と、プレポリマーの重縮合に伴って生成するマイクロカプセルの双方を、反応液中にて好ましい状態で単分散させることができる。
【0012】
芯材としての前記固体農薬は、20℃以上の融点を有するものが好適に用いられる(本願第三発明)。
【0013】
上記マイクロカプセルは、イネの生育用に好適に用いられる(本願第四発明)。このマイクロカプセルは望ましい除放性を有しているので、イネの生育期、特に薬害により甚大な損傷を受けやすい播種直後から移植前までのイネの薬害に対する感受性がもっとも強い幼弱期、に施用しても悪影響を及ぼすことなく、マイクロカプセル化した農薬成分を施用することができる。
【0014】
そして、20℃以上の融点を有する固体農薬であるアシベンゾラルSメチルが、本発明のマイクロカプセルの芯材に好適に使用される(本願第五発明)。かかる固体農薬を芯材としてマイクロカプセルは、その除放性からイネに対する施用にも好ましいものである。
【0015】
本願第六発明は、マイクロカプセルの製造方法であって、水にナフタレンスルホン酸及び/若しくはアルキルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である分散剤を溶解し、得られた溶液に攪拌しながら、難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー(該難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー100g(固形分重量)に対する水の溶解量が25℃で2000g以下である)を添加した後、固体農薬を添加し酸性下に該プレポリマーの重縮合反応を行う工程を含むことを特徴とする方法である。かかる工程を含む製造方法によって、目的とするマイクロカプセルを提供することが可能となる。
【0016】
前記製造方法において、重縮合反応の混合液総重量に対し、固体農薬が1〜50重量%、分散剤が1〜20重量%、及び難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーが1〜60重量%の量で用いられるとよい(本願第七発明)。このような反応液を用いることにより、個々の固体農薬が単分散し、各々の粒子を均質に樹脂で被覆するように、プレポリマーを重縮合させることができる。
【0017】
前記分散剤としては、重量平均分子量500〜8000のナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物を用いるのが好ましく(本願第八発明)、前記固体農薬は、20℃以上の融点を有するものである(本願第九発明)ことが好ましい。そして前記製造方法によって、イネの生育用のマイクロカプセルとして所望の特性を具備したものを製造することができる(本願第十発明)。かような製造方法において用いられる固体農薬として特に、20℃以上の融点を有する固体農薬であるアシベンゾラルSメチルが好ましい(本願第十一発明)ことが明らかになっている。
【0018】
さらに、本願第十二発明は、上記本願第六乃至第十一発明の製造方法によって製造されたことを特徴とするマイクロカプセルを企図する。
【0019】
また、如上のマイクロカプセルは、その重量に対して100倍重量以上の水との接触により農薬成分の放出が開始されるものであることが好ましい(本願第十三発明)。このような存在環境(水による希釈率)に応じて放出性が発現されるようにすれば、イネの育成において、高濃度のマイクロカプセルを含有する水性懸濁液や固形状マイクロカプセルを播種時から移植前までの時期に併用しても苗箱中ではその成分が放出しないので薬害を引起こすことなく、緑化後に本田に移植して水に富んだ環境に置かれた所で始めて成分が放出し、目的の薬効を発揮させることができるので好都合である。
【0020】
そして本願第十四発明は、如上のマイクロカプセルを、2重量%以上含む水性懸濁液組成物である。上記マイクロカプセルは、縮重合による調製後、適宜の処理を施し、液状又は固体状の組成物として流通させることができるが、施用時の作業容易性に鑑みれば水性懸濁液組成物とすることが好ましい。
【0021】
本願第十五発明は、上記マイクロカプセルを植物の生育土壌に散布することを特徴とするマイクロカプセルの施用方法を企図し、本願第十六発明は、植物の播種時又は成長期に植物生育土壌に散布することを特徴とする、マイクロカプセルの施用方法である。マイクロカプセルからの固体農薬成分の放出を十分に制御することが可能となったので、たとえ植物の幼弱期に施用しても重篤な薬害を起こさず、目的の薬効を望ましい時期に発現させることができる。
【0022】
本願第十七発明は、上記マイクロカプセルを、イネの播種時から本田への移植時までの期間に生育土壌に散布することを特徴とする施用方法である。この方法により、広大な水田へ農薬を施用する労力が削減でき、しかも薬害の発生を抑制して所望の薬効を適切な時期に発現させることが可能となる。また、上記マイクロカプセルを、イネの苗が本田に移植された後、本田へ直接散布してもよい(本願第十八発明)。
【0023】
本発明において、難水溶性メラミン・ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーは、マイクロカプセルの皮膜形成材料、すなわち壁材となるものであって、メラミン樹脂とホルムアルデヒドとの重合反応により得られる樹脂の初期縮合物である。そして本発明における初期縮合物とは、完全に樹脂化したものでなく、常温で液状を示すものをいう。
【0024】
このメラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーは、例えば次のようにして製造される。すなわち、(a)メラミン粉末と(b)ホルマリン(37重量%ホルムアルデヒド水溶液)とを、モル比でa:b=1.5〜6.0程度の比率にて混合し、弱アルカリ性下に約60℃以上で加熱する。これにより、難水溶性のものから水溶性の高いものまで、幅広い特性を備えたメラミン−ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーを製造することができる。上記プレポリマーにおいてメラミン粉末(a)の割合が高いほど、最終的に得られる皮膜の透過性が低減し、除放性を高めることができる。
【0025】
本発明においては、変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーを使用することもできる。かかる変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーは、上記のようにして得られるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂プレポリマーに対して、微量の酸性物質の存在下にメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール又はブチルアルコール等のアルキルアルコールでアルキル化反応をさせたり、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類で架橋変性することによって調製することができる。特に、グリコール変性したものは、水の溶解量を適宜に制御することが容易となるため好ましい。
【0026】
上述のように、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーとしては、メラミン樹脂とホルムアルデヒドとの反応モル比を変化させたり、アルコール変性を行うこと等によって各種のものを製造することができる。本発明で使用されるメラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーは、上記変性物も含め、難水溶性を示すものである。ここで難水溶性とは、水のプレポリマーそれ自体に対する溶解量が低いことをいい、本発明において具体的には、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー100g(固形重量分)に対して25℃での水の溶解量が2000g以下であることをいう。これは、水の量が2000g以上の場合はプレポリマーが沈殿してしまうことを意味する。かかる溶解量は、好ましくはメラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー100gに対して25℃の水が100〜1400gである。この溶解量が2000gを越えると、水溶性が強すぎるため目的とするマイクロカプセルにおける芯材の除放性が得られない。このような、本発明における使用に好適な難水溶性メラミン・ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーとして、例えば、グリコール変性メラミン・ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー(リケンゾールPHW−35(商品名)三木理研工業社製、溶解量:25℃でプレポリマー100g(固形重量)に対して水1000g〜1400g)を挙げることができる。尚、如上のプレポリマーは通常、50〜80重量%の水溶液として使用される。
【0027】
次に、本発明において用いられる分散剤は、ナフタレンスルホン酸及び/若しくはアルキルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である。公知の分散剤・乳化剤として通常よく用いられるポリオキシアルキレンモノエーテル型界面活性剤や、アルキルフェニルスルホン酸塩等を本発明のプレポリマーの重合における分散剤として用いると、プレポリマーが自己凝集してしまい、水に対する溶解性が不良となる。
【0028】
かかるナフタレンスルホン酸及び/若しくはアルキルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩において、ナフタレンスルホン酸及び/又はアルキルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとのモル比は、好ましい分子量の範囲に合致するよう適宜選択される。
【0029】
縮合物は、ナフタレン、アルキルナフタレン(例えば、メチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン、ジメチルナフタレン等、アルキル基の数は1〜2が好ましく置換部位は特に限定されない。)又はこれらの混合物を、先ず硫酸を用いてスルホン化し、次いで水とホルマリンを添加し、酸性下に縮合することによって調製される。次に、必要に応じ、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属イオン、アンモニア又はアミン類を用いて塩を形成させてもよい。これらの塩のうち、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩や、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。本発明で使用するのに好適な分散剤は、ナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物であって、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって得られる重量平均分子量が500〜8000のものが特に好ましい。そのような特に好ましいナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物の例としては、ラベリンFH−L(商品名、第一工業製薬株式会社製)を挙げることができる。このような分散剤を用いることによって、重縮合に伴い生成するマイクロカプセルと芯材の双方の分散性が向上し、所望のマイクロカプセルを製造することができる。尚、ここでいうGPCの測定条件は以下の通りである。
【0030】
カラム:東洋ソーダ社製TSK−GEL G−3000SW、
同G−4000SW及びプレカラム
溶離液:アセトニトリル/0.05M酢酸ナトリウム水溶液=40/60容量
pH6.88
流速: 0.85ml/分
検出波長:254nm
標準物質:ポリスチレンスルホン酸ナトリウム
芯材である固体農薬は、常温にて粉末状、粒状等の固体を形成している農薬成分を称し、融点が20℃以上を有するとよい。カプセル化直前の固体農薬の粒径は0.5〜90μm、好ましくは0.5〜60μmの範囲であるとよい。粒径が小さすぎる微細粒子であると、壁材を被覆すべき表面積が非常に大きくなってしまう。また粒径が大きすぎると、これにより製造したマイクロカプセルの施用時に例えば水性懸濁液としてジョウロなどの潅水機を用いる場合、目詰まりの原因となり支障をきたすことがある。
【0031】
本発明において使用される上記のような固体農薬には、水田イネに用いられる固体除草剤、固体殺菌剤及び固体殺虫剤が含まれる。
【0032】
水田イネ用の固体除草剤の例としては、例えば、(R,S)2−(2,4−ジクロロ−3−メチルフェノキシ)プリピオンアニリド(クロメプロップ;25℃の水に対する溶解度:0.032ppm )、メチル−5−(2,4−ジクロロフェノキシ)−2−ニトロベンゾエート(ビフェノックス;溶解度:0.35ppm )、2−〔4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イル−オキシ〕アセトフェノン(ピラゾキシフェン;20℃における溶解度:0.9ppm )、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イル−トルエン−4−スルホネート(ピラゾレート;25℃における溶解度:0.056ppm )、S−1−メチル−1−フェニルエチルピペリジン−1−カルボチオレート(ジメピペレート;溶解度:20ppm )、3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−1−〔(2−メトキシカルボニルベンジル)スルホニル〕尿素(ベンスルフロンメチル;25℃、pH5における溶解度:2.9ppm )、4−(2,4−ジクロロベンゾイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イル−トルエン−4−スルホネート(ピラゾスルフロンエチル;20℃における溶解度:14.5ppm )、2−(2−ナフチルオキシ)プロピオンアニリド(ナプロアニリド;27℃における溶解度:0.74ppm )、2−ブロモ−3,3−ジメチル−N−(1−メチル−1−フェニルエチル)ブチルアミド(ブロモブチド;25℃における溶解度:3.54ppm )、2−ベンゾチアゾール−2−イルオキシ−N−メチルアセトアニリド(メフェナセット;溶解度:4ppm )、N−(2−クロロイミダゾール〔1,2−a〕ピリジン−3−イルスルホニル)−N’−(4,5−ジメトキシ−2−ピリミジル)尿素(イマゾスルフロン;pH6における溶解度:67ppm )、1−(α,α−ジメチルベンジル)−3−(p−トリル)尿素(ダイムロン;20℃における溶解度:1.7ppm )、3−イソプロピル−2,1,3−ベンゾチアジアジノン−(4)−2,2−ジオキシド(ベンタゾン;20℃における溶解度:500ppm )、2,4−ビス(エチルアミノ)−6−メチルチオ−1,3,5−トリアジン(シメトリン;溶解度:450ppm )、2’,3’−ジクロロ−4−エトキシメトキシベンツアニリド(エトベンザニド;20℃における溶解度:1.2ppm )、ブチル(R)−2−〔4,4−(シアノ−2−フルオロフェノキシ)フェノキシ〕プロピオネート(チハロホップブチル;20℃、pH7における溶解度:0.7ppm )、1−(ジエチルカルバモイル)−3−(2,4,6−トリメチル)フェニルスルホニル−1,2,4−トリアゾール(カフェンストロール;20℃における溶解度:2.5ppm )、3−(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)−1−〔(1−メチル−4−(2−メチル−2H−テトラゾール−5−イル)ピラゾール−5−イル−スルホニル)尿素(アジムスルフロン;pH5における溶解度:72.3ppm )、メチル−2−〔(4,6−ジメトキシピリミジン−2−イル)オキシ〕−6−〔1−(メトキシイミノ)エチル〕ベンゾエート(ピリミノバックメチル;20.4℃における溶解度:1ppm )、2−〔4−(2,4−ジクロロ−m−トルオイル)−1,3−ジメチルピラゾール−5−イルオキシ〕−4’−メチルアセトフェノン(ベンゾフェナップ;20℃における溶解度:0.11ppm )、o−3−tert−ブチルフェニル−N−(6−メトキシ−3−ピリジル)−N−メチル(チオカルバメート)(ピリブチカルブ;溶解度:0.32ppm )、2−クロロ−N−(3−メトキシ−2−チエニル)メチル−1,2’,6’−ジメチルアセトアニリド(テニルクロール;溶解度:11ppm )、4−(4−クロロ−o−トルイルオキシ)酪酸(MCPB;溶解度:44ppm )、3−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−1−〔2−(2−メトキシエトキシ)フェニルスルホニル〕尿素(シノスルフロン;20℃、pH5における溶解度:82ppm )等を挙げることができる。
【0033】
水田イネ用の固体殺菌剤の例としては、例えば、ベンゾ〔1,2,3〕チアジアゾール−7−カルボチオ酸S−メチルエステル(アシベンゾラルSメチル;25℃における溶解度:7.7ppm )、ジイソプロピル−1,3−ジチオラン−2−イリデン−マロネート(イソプロチオラン;溶解度:50ppm )、1RS,2SR,5RS)(1RS,2SR,5SR)−2−(4−クロロベンジル)−5−イソプロピル−1−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イルメチル)シクロペンタノール(イプコナゾール;6.74ppm )、3−(3,5−ジクロロフェニル)−N−イソプロピル−2,4−ジオキソイミダゾリジン−1−カルボキサミド(イプロジオン;溶解度:13ppm )、5−エチル−5,8−ジヒドロ−8−オキソ〔1,3〕ジオキソロ〔4,5−g〕キノリン−7−カルボン酸(オキソリニック酸;溶解度:3.2ppm )、カスガマイシン塩酸塩(カスガマイシン;溶解度:125000ppm )、2,2−ジクロロ−N−〔1−(4−クロロフェニル)エチル〕−1−エチル−3−メチルシクロプロパンカルボクサミド(カルプロパミド;20℃、pH7における溶解度:1.7mg/リットル水)、N−トリクロロメチルチオテトラヒドロフタルイミド(キャプタン;溶解度:3.3ppm )、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール(チアベンダゾール;25℃、pH2.0において10000ppm 、pH5〜12において50ppm 未満)、ビス(ジメチルチオカルバモイル)ジスルフィド(チウラム;溶解度:30ppm )、1,2−ビス(3−メトキシカルボニル−2−チオウレイド)ベンゼン(チオファネートメチル;溶解度:難溶性)、ビス(キノリン−8−オレート−O,N)銅(オキシン−銅;不活性)、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ〔3,4−b〕ベンゾチアゾール(トリシクラゾール;溶解度:700ppm )、(E)−4−クロロ−α,α,α−トリフルオロ−N−(1−イミダゾール−1−イル−2−プロポキシエチリデン)−o−トルイジン(トリフルミゾール;pH5.9において12.5ppm )、バリダマイシンA(バリダマイシン;溶解度:易溶性)、3−ヒドロキシ−5−メチルイソオキサゾール(ヒドロキシイソキサゾール;溶解度:90000ppm )、メチル(E)−2−{2−〔6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ〕フェニル}−3−メトキシアクリレート(アゾキシストルビン;20℃において6mg/リットル水)、1,2,5,6−テトラヒドロピロロ(3,2,1−ij)キノリン−4−オン(ピロキロン;溶解度:4000ppm )、4−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル)ピロール−3−カルボニトリル(フルジオキソニル;溶解度:25℃において1.8ppm )、N−プロピル−N−〔2−(2,4,6−トリクロロフェノキシ)エチル〕イミダゾール−1−カルボキサミド(プロクロラズ;25℃における溶解度:55ppm )、3−アリルオキシ−1,2−ベンゾイソチアゾール−1,1−ジオキシド(プロベナゾール;溶解度:150ppm )、メチル−1−(ブチルカルバモイル)−2−ベンツイミダゾールカーバメート(ベノミル;溶解度:pH3−10において4ppm )、S−(4−メチルスルフォニルオキシフェニル)−N−メチルチオカルバマート(メタスルホカルブ;溶解度:480ppm )、テトラクロロイソフタロニトリル(クロロタロニル;溶解度:0.6ppm )などが挙げられる。
【0034】
水田イネ用殺虫剤の例としては、例えば、ジイソプロピル−1,3−ジチオラン−2−イリデン−マロネート(イソプロチオラン;溶解度:50ppm )、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−イミダゾリジン−2−イリデンアミン(イミダクロプリッド;溶解度:510ppm )、2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル−3フェノキシベンジルエーテル(エトフェンプロックス;溶解度:0.001ppm 未満)、1,3−ビス(カルバモイルチオ)−2−(N,N−ジメチルアミノ)プロパン塩酸塩(カルタップ;25℃における溶解度:200000ppm )、3−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−5−メチル−〔1,3,5〕オキサジアジナン−4−イリデン−N−ニトロアミン(チアメトクサム;溶解度:3265ppm )、5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩(チオシクラム;23℃における溶解度:84000ppm )、S,S’−2−ジメチルアミノトリメチレン−ジ(ベンゼンチオスルフォネート)(ベンスルタップ;溶解度:0.7〜0.8ppm )、2,2−ジメチル−1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチルカルバメート(ベンダイオカルブ;25℃における溶解度:40ppm )、3−(ジメトキシフォスフォニルオキシ)−N−メチル−cis−クロトンアミド(モノクロトフォス;溶解度:1000000ppm )、2−イソプロポキシフェニル−N−メチルカルバメート(プロポクスール(PHC);溶解度:2000ppm )等が挙げられる。
【0035】
言うまでもなく、これらの例は本発明を限定するものではなく、本発明を説明するために例示したものに過ぎない。本発明は、知られている他の各種固体農薬に対しても適用可能である。
【0036】
これらの農薬有効成分として、例えばアシベンゾラルSメチル(ベンゾ〔1,2,3〕チアジアゾール−7−カルボチオ酸S−メチルエステル、融点:約133℃)、フルジオキソニル(4−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル)ピロール−3−カルボニトリル、融点:約200℃)、ピロキロン(1,2,5,6−テトラヒドロピロロ(3,2,1−ij)キノリン−4−オン、融点:約112℃)などの殺菌剤、チアメトキサム(3−(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)−5−メチル〔1,3,5〕オキサジアジナン−4−イリデン−N−ニトロアミン、融点:約139℃)、チオシクラム(5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩、融点、約126℃)、ピメトロジン((E)−4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3−(2H)−オン−、融点:約217℃)、及びシノスルフロン(1−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−〔2−(2−メトキシエトキシ)フェニルスルホニル〕尿素、融点:約141℃)などの除草剤(いずれも、ノバルティスアグロ株式会社製)が好適に用いられ得る。特に、アシベンゾラルSメチルが、本発明のマイクロカプセルの芯材として好ましい。
【0037】
以上説明した配合成分から本発明のマイクロカプセルを製造するため、先ず、水にナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキル化ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物及びこれらの組合わせより選択される分散剤を溶解し、その溶液に対して攪拌しながら難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーを添加し、次いで固体農薬を添加した後、混液をpH調整剤により酸性として、プレポリマーの重縮合を行う。
【0038】
芯材としての固体農薬は、上記重縮合の反応混液中1〜50重量%を用いるとよい。この配合量が少なすぎると経済効果の点で好ましくなく、逆に多すぎると安定したマイクロカプセル分散液が得られなくなるからである。
【0039】
難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーの配合は、上記芯材の固体農薬の個々の表面全体をそれぞれ被覆するにたる量とすればよく、重縮合の反応混液中、1〜60重量%の範囲に設定することが好ましい。この配合量が少なすぎると固体農薬の1粒1粒をマイクロカプセル化し難くなり、また多すぎると過剰なプレポリマーが凝集して芯材としての固体農薬を含んでいない樹脂ビーズが形成されてしまうからである。
【0040】
そして、分散剤は、固体農薬及び形成されるマイクロカプセルの双方が十分に分散する量、例えば、重縮合の反応混液中、1〜20重量%の範囲に設定することが好ましい。この配合量が1重量%未満と少なすぎる場合、分散効果に劣る傾向が見られ、逆に20重量%を越えて配合しても更なる分散性の向上効果が見られず、高コストになる傾向にあるからである。
【0041】
これら各成分を上記の手順で配合し、pH調整剤例えば、クエン酸、リン酸、ホウ酸、塩酸等の酸によって酸性、好ましくは3〜7のpHの範囲に調整する。この際用いられるpH調製剤としては、生体に対する安全性に鑑みればクエン酸が好ましい。こうして調製された混合液を、10〜80℃、好ましくは50〜70℃にて5〜6時間、攪拌しながら重縮合反応させることによって、本発明のマイクロカプセルを製造する。
【0042】
マイクロカプセルの粒子径は1〜100μm、好ましくは1〜80μmとし、壁剤による皮膜の厚みは目的により任意に設定するとよい。粒子径が大きすぎると、前記したように施用時に潅水機に目詰まりなどを起こす原因となることがあり、粒子径が小さすぎると、製造が困難になることがある。
【0043】
以上のようにして製造されたマイクロカプセルは、その有効成分の放出性を十分に制御することができるので、例えば前記マイクロカプセルの重量に対し、100倍重量以上、好ましくは100〜20万倍重量の水との接触により農薬成分の放出が開始されるように調整することが可能となり、特にイネの栽培において好都合である。
【0044】
こうして水分酸液として得られたマイクロカプセルは、固形農薬を内包したマイクロカプセルを2重量%以上、好ましくは2〜90重量%含む水性懸濁液組成物に調製するとよい。この組成物には、本発明の方法に従って製造されたマイクロカプセルを複数種配合しても、また他の有効成分、例えば、他の殺菌剤等の非マイクロカプセル化農薬や、栄養剤、安定化剤等を適宜添加してもよい。配合忌避の関係にある固体農薬であっても、本発明に従ってマイクロカプセル化したものであれば水性懸濁液中に共存させ、流通可能な形態とすることができる。
【0045】
なお、上記製造方法により得られたマイクロカプセル分散液は、水分を除去して固体として回収し、適宜粒剤や、水和剤、粉剤、栽培用土に混ぜ込んだ形態とすることもできる。
【0046】
このマイクロカプセル水分散液中から水分を分離してマイクロカプセルを得る方法としては、特に限定するものでなく、従来公知の方法、例えば遠心分離法、加圧濾過法、スプレードライ法等が挙げられる。
【0047】
以下、本発明のマイクロカプセルの施用方法について記載する。
【0048】
本発明のマイクロカプセルの適用対象は種々の植物全般を包含し、何ら限定されることはない。植物に対する施用時期も特段には限定されないが、幼弱期にも適用可能であるので、固体農薬を内包するマイクロカプセルを1種以上含む組成物とし、播種・潅水時に施用すれば、最も省力化できるので好都合である。
【0049】
マイクロカプセルのイネへの施用は、本発明の好ましい実施態様の一つである。好ましい実施態様には、(1)播種時処理:苗箱に充填する床土への施用、又は播種と同時若しくは播種直後の潅水時における施用、(2)緑化期処理:苗箱への播種、覆土後、発芽してからの緑化期における施用、(3)移植直前処理:育苗後、本田に移植する直前での施用、及び/又は(4)本田への直接処理が含まれる。ここで固形状にしたマイクロカプセルも使用できるが、前記のごとくマイクロカプセルを含む水性懸濁液組成物を調製し、播種機、散布機、潅水機等を用いて苗箱に処理すれば、容易に施用を完遂することができる。
【0050】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はもとより、これら実施例によって限定的に解釈されるべきではない。
【0051】
実施例1:処方
(1)固体農薬:平均粒径60μmのアシベンゾラルSメチル(水稲用殺菌剤
、ノバルティスアグロ株式会社製)10g
(2)難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー:グリコール
変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー(リケンゾールP
HW−35(商品名)三木理研工業社製、溶解量:25℃でプレポリマ
ー100g(固形分重量)に対して水1000g〜1400g)50重
量%水溶液5g
(3)分散剤:ナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物(
ラベリンFH−L(商品名)50重量%水溶液、第一工業株式会社製、
GPCによる重量平均分子量:5240)10g
(4)20%クエン酸水溶液1.0g
(5)水74g
製造方法
ナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物(3)を50℃の水(5)に溶解して水溶液を調製し、この水溶液中に、回転数300rpm の攪拌下、グリコール変性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー(2)を添加し、続いて固体農薬(1)を配合して乳化分散を行った。
【0052】
次いで上記分散液を、クエン酸(4)にてpH4.0となるように調整した。
【0053】
この混液を50℃で5時間、回転数300rpm にて攪拌し続けることにより、上記メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーを、芯材となる固体農薬の表面上でin situ重縮合反応させ、この縮合物による皮膜を形成することにより、アシベンゾラルSメチルを内包したマイクロカプセル分散液を製造した。
【0054】
得られたマイクロカプセルの粒径は、レーザー回折式粒度分布測定器(島津製作所、SALD−2000)により測定した結果、約70μmであった。
【0055】
実施例2
20%クエン酸水溶液を、2.0g用い、全量を水で調整したことを除いては実施例1と同様にして、マイクロカプセル分散液を製造した。
【0056】
得られたマイクロカプセルの粒径を実施例1と同様に測定したところ、90μmであった。
【0057】
比較例1
分散剤として、ナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物に替えてポリオキシエチレンラウリルエーテル5gを用いたことを除いては実施例1と同様にしてマイクロカプセルの製造を試みた。
【0058】
しかしながら、乳化分散の段階で団子状の樹脂塊が形成されてしまい、マイクロカプセルを製造することができなかった。
【0059】
比較例2
実施例1のマイクロカプセルの製造において、難水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー(2)に替えて、水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂プレポリマー(リケンゾールMA−31(商品名)三木理研工業社製、溶解量:プレポリマー100g(固形分重量)に対して水2100g以上)を5g用いた以外は同様の配合及び手順により、マイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルの粒径を実施例1と同様に測定したところ、65μmであった。
【0060】
以上の実施例及び比較例2により製造されたマイクロカプセルを10重量%含有する水性懸濁液を調製し、以下の試験に供した。
【0061】
試験例1:溶出試験
実施例1,2及び比較例2で製造したマイクロカプセルの懸濁液について、水中における経時的な農薬成分の溶出を調べるための試験を実施した。本試験においては、それぞれ50mgのマイクロカプセル懸濁液を用いた。尚、参考例として、市販のアシベンゾラルSメチル粒剤(ノバルティスアグロ株式会社製、バイオン粒剤2)250mgについても同様の実験を行った。この粒剤は、2%のアシベンゾラルSメチルを含有し、ポリマーによる被覆処理が施されたものであって、イネの田植え前箱処理として登録が取得されている。
【0062】
先ず、容量1Lの共栓付き三角フラスコに脱イオン水1Lを入れたものを各試料用に準備し、それぞれに上記試料を投入した。室温に放置して所定日数経過後に、試験液を攪拌した後、試験液面と底面との中間でフラスコ壁から10mm離間した位置から、10mlの溶出試験液を50ml容量の遠沈管に採取し、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した。これに、内部標準として安息香酸メチル(和光純薬社製)0.01mgを含むアセトニトリル溶液2.5mlを添加した。
【0063】
こうして調製した溶出試験液を高速液体クロマトグラフィーに付し、アシベンゾラルSメチルの溶出量を定量した。定量は、ヌクレオシル5−CS カラム(φ4.6mm×250mm)を装備した高速液体マトグラフ(島津製作所製、LC−6A)で、溶離液としてアセトニトリル/0.1%リン酸水溶液の40/60容量の混合液を用い、カラム温度50℃にて1ml/分の流速として、50μlの試料を注入して行った。クロマトグラフィーの結果は、紫外線検出器(島津社製SPD−6A)で254nmにおける溶出パターンを検出し、島津社製クロマトパックCR4Aでピーク面積を計算して数値化した。標準物質としてアシベンゾラルSメチルの純粋薬品を用いた同様のクロマトグラフィーの結果に基き、各試料中に含まれるアシベンゾラルSメチル量を求め、内部標準物質の理論値で補正して、投入した成分量に対する溶出率を算出した。
【0064】
その結果を表1に示す。表1から、実施例1及び2のマイクロカプセルにおける溶出率は、7日目まででは2〜3%と低値に抑えられており、2週間でようやく14%程度まで上昇することが分かった。一方、比較例2の水溶性メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーを用いて製造したマイクロカプセルでは、試験開始後8日で約6.1%の成分が溶出し、その後も急速に溶出が進行して42日目で約86%もの溶出が認められた。また、参考例である既存のバイオン粒剤2によれば、7日目での溶出率が約6.2%と高く、その後の溶出率の上昇は比較的緩徐であった。
【0065】
【表1】
【0066】
試験例2:イネへの施用における有効性試験
実施例1及び比較例2のマイクロカプセルを含む水性懸濁液を、イネ生育の播種時及び緑化期に、床土をいれた苗箱に対し上記マイクロカプセルが1g原体重量%の量で散布されるようにジョウロにて施用した。イネの品種はコシヒカリを使用し、播種後覆土に次ぎ30℃、多湿下にて3日間保存し、1〜2日の緑化工程を経て播種約30日後に、本田への移植を想定したポットへの移植を行った。そして、移植した後45日目に、いもち病による葉部病変数(罹病数)を観察した。
【0067】
対照は、何れの時期にも農薬処理を施さずに同様の生育工程を経たものとし、また参考例として前記バイオン粒剤2についても同様に試験を行った。バイオン粒剤2は、現状の登録上の施用法、すなわち、ポットへの移植直前に施用した。観察された葉部病変数からそれぞれの防除価を求めた。
【0068】
こうして得られた結果を表2に示す。
【0069】
この結果、いもち病に対する判発明のマイクロカプセルの有効性は、参考例のバイオン粒剤2と同等に発現されており、マイクロカプセルからの有効成分の適度な徐放性を確認することができた。
【0070】
【表2】
【0071】
試験例3:イネへの施用における薬害試験
実施例1及び比較例2のマイクロカプセルを含む水性懸濁液を、苗箱に対し上記マイクロカプセルが1g原体重量%の量で散布されるようにジョウロにて施用し、その薬害について検証した。農薬を施用しない対照と、参考例としてのバイオン粒剤2も同様の試験に供した。但し、参考例のバイオン粒剤2は、移植直前に施用した。
【0072】
播種、育苗は試験例2におけると同様の工程に従い、薬害を検証するため、移植後14,25及び34日に草勢を目視観察し、対照の未処理区における草勢を100%として評価した。
【0073】
この結果を、表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
この結果、実施例1のマイクロカプセルによれば、播種時及び緑化期のいずれに使用した場合にあっても薬害発現の程度が低く、実用に許容される範囲であることが分かった。そして、いもち病に対する有効性もバイオン粒剤2と同等に発現されており、マイクロカプセルからの適度な徐放性を確認することができた。
【0076】
以上説明したように、本発明によって、農薬成分の放出性が十分に制御された、固形農薬を内包するマイクロカプセルが提供される。
【0077】
このマイクロカプセルを長期間にわたる徐放性を呈することから、特に植物の幼弱期における薬害の発現を回避でき、高価な場合もある農薬を薬効発揮が望まれる前に流出させてしまう無駄を排除することが可能となる。また、別々に施用する必要のあった配合忌避の農薬同士を組合わせて用いたり、これらを配合した組成物を調製しても、薬剤の分解を防止できる。このように、本発明のマイクロカプセルによって農薬施用の作業性が格段に向上し、省力化に貢献するものである。また、このマイクロカプセルが万一ヒトの体内に入っても比較的安全であり、保管に際しても従来の毒劇物に対する管理体制を緩和することができる。
【0078】
本発明のマイクロカプセルの製造方法によれば、従来困難であった固形農薬のマイクロカプセル化が可能となり、樹脂プレポリマーの自己凝集に起因したビーズを形成することなく、徐放性を有するマイクロカプセルを製造することができる。
Claims (18)
- 固体農薬を芯材とし、ナフタレンスルホン酸及び/若しくはアルキルナフタレンスルホンとホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である分散剤の存在下に、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー(該メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー100g(固形分重量)に対する水の溶解量が25℃で2000g以下である)を重縮合させることにより形成される樹脂が壁材として被覆されることを特徴とするマイクロカプセル。
- 前記分散剤が、重量平均分子量500〜8000のナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物である請求項1に記載のマイクロカプセル。
- 前記固体農薬が、20℃以上の融点を有する請求項1又は2記載のマイクロカプセル。
- 前記マイクロカプセルが、イネの生育用である請求項1乃至3の何れかに記載のマイクロカプセル。
- 前記固体農薬がアシベンゾラルSメチルである請求項3又は4記載のマイクロカプセル。
- マイクロカプセルの製造方法であって、水にナフタレンスルホン酸及び/若しくはアルキルナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である分散剤を溶解し、得られた溶液に攪拌しながら、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー(該メラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマー100g(固形分重量)に対する水の溶解量が25℃2000g以下である)を添加した後、固体農薬を添加し、酸性下に該プレポリマーの重縮合反応工程を含むことを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
- 前記製造方法において、重縮合反応の混合液総重量に対し、固体農薬が1〜50重量%、分散剤が1〜20重量%、及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂系プレポリマーが1〜60重量%の量で用いられる請求項6記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 前記分散剤が、重量平均分子量500〜8000のナフタレンスルホン酸ナトリウム−ホルムアルデヒド縮合物である請求項6又は7に記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 前記固体農薬が、20℃以上の融点を有する農薬である請求項6乃至8の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 前記マイクロカプセルが、イネの生育用である請求項6乃至9の何れかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 前記固体農薬がアシベンゾラルSメチルである請求項9又は10記載のマイクロカプセルの製造方法。
- 請求項6乃至11の何れかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とするマイクロカプセル。
- 前記マイクロカプセルの重量に対し、100倍重量以上の水との接触により農薬成分の放出が開始される、請求項1乃至5の何れか又は請求項12に記載のマイクロカプセル。
- 請求項1乃至5の何れか又は請求項12若しくは13に記載のマイクロカプセルを、2重量%以上含む水性懸濁液組成物。
- 請求項1乃至3何れか又は請求項5,12若しくは13に記載のマイクロカプセルを、植物の生育土壌に散布することを特徴とする前記マイクロカプセルの施用方法。
- 請求項1乃至3の何れか又は請求項5,12若しくは13に記載のマイクロカプセルを、植物の播種時又は成長期に植物生育土壌に散布することを特徴とする前記マイクロカプセルの施用方法。
- 請求項4,5,12又は13に記載のマイクロカプセルを、イネの播種時から本田への移植時までの期間に生育土壌に散布することを特徴とする前記マイクロカプセルの施用方法。
- 請求項4,5,12、または13に記載のマイクロカプセルを、イネの苗が本田に移植された後、本田へ直接散布することを特徴とする前記マイクロカプセルの施用方法。
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