JP4425596B2 - コンデンサ用セパレータ - Google Patents
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Description
しかしながら、前記特許文献1や特許文献2のセパレータでは、セパレータを構成する樹脂が高価であることから、汎用的に使用されていないのが実状であり、これらのセパレータに代わる、より汎用性の高い、しかも熱的寸法安定性の優れた、60μm以下の薄膜化に対応可能なコンデンサ用セパレータの要求が高まっている。
このような要求を満たすセパレータとして、コンデンサ用セパレータではないものの、本出願人は、先に、特許文献3に開示されるような、汎用性の高いポリオレフィン系樹脂を用いた非水電解液電池用セパレータを提案した。このセパレータは、ポリオレフィン系樹脂と無機質粉体及び可塑剤を含む原料混合物を加熱溶融・混練しながら押出成形して得たシート状物に対して、延伸処理を含む薄肉化処理を施して厚さ10〜200μmの薄膜に形成し、前記可塑剤を抽出除去した後、前記ポリオレフィン系樹脂の融点以上の温度下で熱処理を施すようにすることで、熱的寸法安定性が向上したセパレータとすることができたものである。
つまり、特許文献3に開示のセパレータでは、薄膜のセパレータを得るために、薄肉化処理として延伸処理を行うようにしているが、図2に示すように、前記延伸処理がなされると、ポリオレフィン系樹脂の三次元網目状ネットワーク構造も引き伸ばされ、該ネットワーク内に保持されていた無機質粉体すなわち無機質二次粒子同士も引き離されるようになるため、前記セパレータが高温に曝され前記ポリオレフィン系樹脂の流動開始温度に達した場合には、延伸処理により引き離され隣接する二次粒子同士の接触状態を失った前記無機質二次粒子は個々の二次粒子が比較的自由に移動し易い状態にあることから、流動温度に達した前記ポリオレフィン系樹脂の流動を食い止める力に乏しく、前記ポリオレフィン系樹脂は流動し易くなるため、結果として、熱的寸法安定性を十分に確保できないという問題がある。
また、特許文献3のセパレータでは、熱的寸法安定性の向上を図るため、ポリオレフィン系樹脂の融点以上での高温熱処理工程を別途必要とするので、工程が複雑化し、高温熱処理装置が新たに必要になる可能性があるとともに、エネルギ消費も増え、結果として、製造コストが高くなるという問題もある。
そこで、本発明は、安価で汎用性に優れる熱可塑性樹脂からなるセパレータであって、熱収縮率が小さく、熱的寸法安定性、電解液保持性に優れ、低電気抵抗で、容易かつ安価に製造が可能なコンデンサ用セパレータを提供することを目的とする。
また、請求項2記載のコンデンサ用セパレータは、請求項1記載のコンデンサ用セパレータにおいて、前記セパレータは、前記熱可塑性樹脂の融点よりも50℃高い温度における熱収縮率が5%以下であることを特徴とする。
また、請求項3記載のコンデンサ用セパレータは、請求項1または2記載のコンデンサ用セパレータにおいて、前記無機質粉体の含有量が50〜80質量%であることを特徴とする。
また、請求項4記載のコンデンサ用セパレータは、請求項1乃至3の何れか1項に記載のコンデンサ用セパレータにおいて、前記熱可塑性樹脂の溶融粘度指数が0.01g/10分以下であることを特徴とする。
また、請求項5記載のコンデンサ用セパレータは、請求項1乃至4の何れか1項に記載のコンデンサ用セパレータにおいて、前記熱可塑性樹脂は重量平均分子量が50万以上のポリエチレンであり、前記無機質粉体は二酸化ケイ素であることを特徴とする。
また、前記熱可塑性樹脂として溶融粘度指数が0.01g/10分以下である熱可塑性樹脂を用いるようにすれば、前記セパレータが高温に曝され前記熱可塑性樹脂の流動開始温度に達した場合にも、上記の前記無機質粉体すなわち無機質二次粒子による前記熱可塑性樹脂の流動を食い止める効果に加え、該熱可塑性樹脂自体の流動性が改善される効果が付加されることになるので、該熱可塑性樹脂はさらに流動し難くなり、熱的寸法安定性がさらに増したコンデンサ用セパレータとすることができる。
また、本発明のコンデンサ用セパレータは、無機質一次粒子が凝集して塊状の集合体を形成し無機質二次粒子となったものである前記無機質粉体を多量に含有しているので、該無機質粉体が有する複雑な微細構造により、高い電解液親和性と電解液保持性をもたらし、また、電気抵抗を抑制できる。
また、上記のような微細構造を有し優れた熱的寸法安定性をもたらすことのできる本発明のコンデンサ用セパレータは、例えば、前記熱可塑性樹脂と前記無機質粉体と可塑剤とを混合し加熱溶融・混練しながら押し出したシート状物に対して、延伸処理を行うことなしに薄肉化処理を行った後、前記可塑剤を抽出除去する方法により製造が可能であるので、従来の熱可塑性樹脂の融点以上での高温熱処理工程を別途必要した方法のように、製造工程を複雑化させたり、高温熱処理装置のような製造装置を新たに必要としたり、また、エネルギ消費を増やしたりすることなしに、セパレータの熱的寸法安定性の向上を図ることができ、製造を容易とし製造コストを低く抑えることが可能となる。
このため、本発明によれば、安価で汎用性に優れる熱可塑性樹脂からなるセパレータであって、熱収縮率が小さく、熱的寸法安定性、電解液保持性に優れ、低電気抵抗で、容易かつ安価に製造が可能なコンデンサ用セパレータを提供することができる。
これにより、前記セパレータの場合は、前記無機質粉体すなわち前記無機質二次粒子の隣接する二次粒子同士が互いに接触状態にあり、該無機質二次粒子は個々の二次粒子が容易に移動しづらい状態にあることから、前記セパレータが高温に曝され前記熱可塑性樹脂の流動開始温度に達した場合でも、前記無機質二次粒子が、流動温度に達した前記熱可塑性樹脂の流動を食い止める能力を発揮するようになるので、前記熱可塑性樹脂は容易には流動できなくなり、結果的として、優れた熱的寸法安定性をもたらすことができる。具体的には、前記熱可塑性樹脂の融点よりも50℃高い温度における熱収縮率が5%以下となる。
前記熱可塑性樹脂は、ASTM−D−1238による溶融粘度指数が0.01g/10分以下であるものが好ましい。溶融粘度指数が0.01g/10分以下であれば、前記汎用的な熱可塑性樹脂の1種を単独で用いることもでき、前記熱可塑性樹脂を2種以上混合使用することも可能である。溶融粘度指数が0.01g/10分以下であれば、前記セパレータが高温に曝され前記熱可塑性樹脂の流動開始温度に達した場合にも、上記の前記無機質粉体すなわち無機質二次粒子による流動食い止め効果に加え、該熱可塑性樹脂自体の流動性改善効果が加わることになるので、該熱可塑性樹脂はさらに流動し難くなり、セパレータの熱的寸法安定性がさらに増す。
機械的強度の優れたセパレータを得るためには、前記熱可塑性樹脂は、重量平均分子量が50万以上であることが好ましい。特に、重量平均分子量が100万以上の高密度超高分子量ポリエチレンは、耐薬品性、機械的強度が非常に優れ、信頼性が高いセパレータを得ることができるので好ましい。尚、前記熱可塑性樹脂は、重量平均分子量の異なる2種以上を混合して、重量平均分子量を100万以上とするようにしても良い。尚、前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量が50万未満であると、セパレータの耐熱性や機械的強度が不足するため好ましくない。また、重量平均分子量が500万を超えると、セパレータ製造時の押出性、成形性が著しく低下するため好ましくない。
尚、前記無機質粉体は、前記のように、無機質一次粒子が凝集して塊状の集合体を形成し無機質二次粒子となったものであるため、複雑な微細構造を有しており、セパレータに、高い電解液親和性と電解液保持性を与えることができ、また、電気抵抗の抑制にも寄与する。
前記可塑剤としては、飽和炭化水素からなる工業用潤滑油に代表される鉱物オイル、あるいは、フタル酸−ジ−2−エチルヘキシルに代表される樹脂用可塑剤が使用できる。
また、前記抽出溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の飽和炭化水素系の有機溶剤や、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系の有機溶剤が使用できる。
(実施例1)
熱可塑性樹脂として重量平均分子量200万の高密度超高分子量ポリエチレン樹脂粉体(溶融粘度指数0.01g/10分未満=測定不能)47部と、無機質粉体として比表面積が200m2/gで平均二次粒子径が7μmの二酸化ケイ素微粉53部と、可塑剤として鉱物オイル113部とを混合し、二軸押出機で加熱溶融・混練しながらシート状に押し出し、直ちに、該シート状物を、近接して連続多段に配置された圧延ロール間を連続的に通して薄肉化処理を行い、厚さ50μmのシートを得た。次いで、炭化水素系溶剤の一種であるデカンを用いて前記鉱物オイルを抽出除去し、更に、100℃で乾燥して、前記ポリエチレン樹脂47質量%と、前記二酸化ケイ素微粉53質量%とで構成される厚さ50μmのコンデンサ用セパレータを得た。尚、前記圧延ロール及び圧延装置は高精度な厚さ精度が出せるように特別に設計された非常に精密なものを使用した。
熱可塑性樹脂として重量平均分子量200万の高密度超高分子量ポリエチレン樹脂粉体(溶融粘度指数0.01g/10分未満=測定不能)33部と、無機質粉体として比表面積が200m2/gで平均二次粒子径が7μmの二酸化ケイ素微粉67部と、可塑剤として鉱物オイル122部とを混合し、二軸押出機で加熱溶融・混練しながらシート状に押し出し、直ちに、該シート状物を、近接して連続多段に配置された圧延ロール間を連続的に通して薄肉化処理を行い、厚さ50μmのシートを得た。次いで、炭化水素系溶剤の一種であるデカンを用いて前記鉱物オイルを抽出除去し、更に、100℃で乾燥して、前記ポリエチレン樹脂33質量%と、前記二酸化ケイ素微粉67質量%とで構成される厚さ50μmのコンデンサ用セパレータを得た。尚、前記圧延ロール及び圧延装置は高精度な厚さ精度が出せるように特別に設計された非常に精密なものを使用した。
熱可塑性樹脂として重量平均分子量200万の高密度超高分子量ポリエチレン樹脂粉体(溶融粘度指数0.01g/10分未満=測定不能)47部と、無機質粉体として比表面積が200m2/gで平均二次粒子径が7μmの二酸化ケイ素微粉53部と、可塑剤として鉱物オイル113部とを混合し、二軸押出機で加熱溶融・混練しながらシート状に押し出し、直ちに、該シート状物を、圧延ロール間を通して薄肉化処理を行い、厚さ110μmのシートを得た。次に、該シートを更に延伸機を用いて長さ方向に250%延伸して薄肉化処理を行い、厚さ50μmのシートを得た。次いで、炭化水素系溶剤の一種であるデカンを用いて前記鉱物オイルを抽出除去し、更に、100℃で乾燥して、前記ポリエチレン樹脂47質量%と、前記二酸化ケイ素微粉53質量%とで構成される厚さ50μmのコンデンサ用セパレータを得た。
熱可塑性樹脂として重量平均分子量10万の高密度ポリエチレン樹脂粉体(溶融粘度指数0.8g/10分)47部と、無機質粉体として比表面積が200m2/gで平均二次粒子径が7μmの二酸化ケイ素微粉53部と、可塑剤として鉱物オイル113部とを混合し、二軸押出機で加熱溶融・混練しながらシート状に押し出し、直ちに、該シート状物を、近接して連続多段に配置された圧延ロール間を連続的に通して薄肉化処理を行い、厚さ50μmのシートを得た。次いで、炭化水素系溶剤の一種であるデカンを用いて前記鉱物オイルを抽出除去し、更に、100℃で乾燥して、前記ポリエチレン樹脂47質量%と、前記二酸化ケイ素微粉53質量%とで構成される厚さ50μmのコンデンサ用セパレータを得た。尚、前記圧延ロール及び圧延装置は高精度な厚さ精度が出せるように特別に設計された非常に精密なものを使用した。
[熱収縮率]
所定寸法に裁断したセパレータ片の長側辺の寸法(L0)を測定した後、このセパレータ片を無緊張状態にて180℃の乾燥器内に60分間静置する。その後、セパレータ片を前記乾燥器より取り出し、15分間放置して室温まで冷却した後、セパレータ片の長側辺の寸法(LT)を測定し、(1)式により熱収縮率を算出する。尚、ポリエチレン樹脂の融点が128〜132℃(DSC法による)であることから、この融点より50℃高い180℃を評価条件に設定した。
(1)熱収縮率(%)=(L0 −LT )/(L0 )×100
[180℃加熱後の電気抵抗比]
加熱前のセパレータの電気抵抗測定値(R0)と、180℃で60分加熱後のセパレータの電気抵抗測定値(RT)とを測定し、(2)式に基づいて、加熱前のセパレータの電気抵抗を基準とした180℃加熱後のセパレータの電気抵抗比を算出した。尚、電気抵抗は、電池工業会規格SBA S 0402に基づき測定を行った。
(2)180℃加熱後の電気抵抗比(%)=(RT )/(R0 )×100
(1)本発明の実施例1〜2のコンデンサ用セパレータは、超高分子量ポリエチレンの溶融温度128〜132℃(DSC法)より50℃高い温度、すなわち、約180℃で、熱収縮率が2%であり、熱的寸法変化が小さく、耐熱性に優れていることが確認できた。また、180℃加熱後の電気抵抗比も比較例1〜2と比べて小さく、高性能化の要求を満たすことが可能であることが確認できた。
(2)この理由としては、図1に示すように、実施例1のコンデンサ用セパレータでは、超高分子量ポリエチレン樹脂が形成する三次元網目状ネットワーク内に、二酸化ケイ素二次粒子の隣接する二次粒子同士が接触状態をなして保持されているので、二酸化ケイ素二次粒子の個々の二次粒子は容易に移動できず、この二酸化ケイ素二次粒子が、180℃の高温下で溶融した前記超高分子量ポリエチレン樹脂の流動を抑制したことにより、熱収縮率が小さくなったものと推定される。尚、実施例2のセパレータについては、電子顕微鏡写真を掲載しなかったが、上記において解説したような、実施例1のセパレータに見られた状態(図1に見られる状態)と同じ状態が観察された。
(3)これに対し、比較例1〜2のコンデンサ用セパレータは、180℃における熱収縮率が7〜9%と大きく、熱的寸法変化が大きく、耐熱性が低くなっている。
(4)この理由としては、比較例1のコンデンサ用セパレータでは、二軸押出機でシート状に成形した後、一軸方向に延伸処理を行っているため、図2に示すように、超高分子量ポリエチレン樹脂が形成する三次元網目状ネットワーク自体が延伸方向に引き伸ばされ、これに伴って二酸化ケイ素二次粒子同士も引き離されて接触状態を失った状態になっており、二酸化ケイ素二次粒子の個々の二次粒子が容易に移動可能であるため、180℃の高温下で溶融した前記超高分子量ポリエチレン樹脂の流動を抑制しづらくなったことにより、熱収縮率が大きくなったものと推定される。
(5)また、比較例2のコンデンサ用セパレータでは、重量平均分子量が小さく溶融粘度指数が0.01g/10分を超えるポリエチレン樹脂を用いたため、180℃の温度下では該ポリエチレン樹脂自体の流動性が非常に高かったことから、実施例1〜2のセパレータの場合と同じく、隣接する二次粒子同士が接触状態を有した二酸化ケイ素二次粒子によるポリエチレン樹脂の流動阻止作用が働いていたにも拘わらず、ポリエチレン樹脂の流動を食い止めることができなかったことにより、熱収縮率が大きくなったものと推定される。
(6)また、比較例1〜2のコンデンサ用セパレータでは、180℃の温度下で収縮が大きく発生したことによる空隙率の低下と、180℃の温度下でポリエチレン樹脂が流動を起こしたことによる微細孔の閉塞が発生したことにより、180℃加熱後の電気抵抗比も大きくなり、高性能化の要求を満たすことができなかった。
Claims (5)
- 熱可塑性樹脂と無機質粉体を主体とした微多孔質膜からなるコンデンサ用セパレータにおいて、前記微多孔質膜が、前記熱可塑性樹脂と、前記無機質粉体と、可塑剤とを混合した原料混合物を加熱溶融・混練しながら押し出したシート状物に対して、延伸処理を行うことなしに、近接して連続多段に配置された圧延ロール間を連続的に通す薄肉化処理を行った後、前記可塑剤を抽出除去することによって得られる、前記熱可塑性樹脂の三次元網目状ネットワーク内に前記無機質粉体である無機質二次粒子を保持し、該無機質二次粒子の隣接する二次粒子同士が互いに接触状態にある形態をなした、厚さ60μm以下の微多孔質膜であることを特徴とするコンデンサ用セパレータ。
- 前記セパレータは、前記熱可塑性樹脂の融点よりも50℃高い温度における熱収縮率が5%以下であることを特徴とする請求項1記載のコンデンサ用セパレータ。
- 前記無機質粉体の含有量が50〜80質量%であることを特徴とする請求項1または2記載のコンデンサ用セパレータ。
- 前記熱可塑性樹脂の溶融粘度指数が0.01g/10分以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のコンデンサ用セパレータ。
- 前記熱可塑性樹脂は重量平均分子量が50万以上のポリエチレンであり、前記無機質粉体は二酸化ケイ素であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のコンデンサ用セパレータ
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