JP4425523B2 - 積層板の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリント配線板の材料、そのほかの構造材料として適した積層板乃至は金属箔張り積層板の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
積層板は、1枚以上のプリプレグ層の両側に金属箔又は離形フィルムを重ねた積層構成体(これが積層板1枚に相当する)の複数組をプレス熱盤一段間に積み重ねて投入し、各積層構成体を加熱加圧成形することにより製造される。積層構成体同士の間と複数組を積み重ねた積層構成体の最も上側と下側に金属型板を配置し、前記上側と下側の金属型板とプレス熱盤との間には、それぞれクッション材を介在させて加熱加圧成形を実施する。
【0003】
一回の加熱加圧成形で製造する積層板の枚数を多くしようとする場合、積層板のサイズを大きくするか、プレス熱盤一段間に投入する積層構成体の組数を多くすることが考えられる。
プレス熱盤一段間に投入する積層構成体の組数を多くする方法の一つとして、各積層構成体の間に配置する金属型板の厚みを薄くする方法がある。しかし、金属型板はその厚みを薄くするに伴ってその強度が低下するので、クッション材の表面性状が、金属型板を通して積層板の表面に転写される心配がある。また、プリプレグは、シート状繊維基材(ガラス繊維織布・不織布,有機繊維織布・不織布等)に樹脂を含浸し乾燥したものであるが、その表面に基材自体の表面性状(織り目等)や樹脂含浸の不均一さによる凹凸があると、当該プリプレグ表面の凹凸が、隣合って成形される積層板の表面に金属型板を通して転写される心配がある。表面に前記凹凸が転写された積層板は、プリント配線板の製造工程において表面のプリント配線形成のためにラミネートした感光性樹脂フィルムの密着不良や、部品実装不良等を招くおそれがあり、さらに表面平滑性が求められる用途への使用が制限されるといった問題がある。
【0004】
上記凹凸の転写を回避するには、プレス熱盤一段間に投入した複数組の積層構成体の最も上側と下側に、厚み1mm以上の厚い第2金属型板を配置して、クッション材の表面性状が積層板表面に転写されないようにすればよい。また、プリプレグ表面の凹凸の転写が懸念されるときには、プレス熱盤一段間に投入した複数組の積層構成体の適当な中間位置に、薄い金属型板に代えて厚み1mm以上の厚い第2金属型板を配置すればよい。しかし、積層構成体、厚みの薄い金属型板ならびに厚み1mm以上の厚い第2金属型板の三者の熱膨張率が異なると、成形された積層板に応力が内包されたままになることがある。応力を内包した積層板は、そりや変形等の不具合を生じる。
【0005】
通常、金属型板としては、厚み1.2mm程度のステンレス製型板を用いているが、材質上、厚みの薄い(0.8mm以下)ステンレス製型板を製造することは難しく、薄い金属型板は他の材質によるものを選択せざるを得ない。そうすると上記のそりや変形等の問題を生じるので、一回の加熱加圧成形で多数枚の積層板製造を可能にすることができない場合があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、積層板1枚に相当する積層構成体の多数組をプレス熱盤一段間に積み重ねて投入し、これらを加熱加圧成形して積層板を製造するに当り、積層構成体同士の間に配置する金属型板として厚み0.8mm以下のものを使用した場合にも、そりや変形等が起こりにくい積層板を製造することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る第1の製造法は、1枚以上のプリプレグを含み1枚の積層板に相当する積層構成体の複数組をプレス熱盤一段間に重ねて投入し、各積層構成体を加熱加圧成形により一体化する多数枚の積層板の製造において、積層構成体同士の間には、厚み0.8mm以下の第1金属型板を配置する。プレス熱盤一段間に重ねて投入した複数組の積層構成体の最上面と最下面には、前記第1金属型板とその外側に厚み1mm以上の第2金属型板を配置する。且つ、第2金属型板と第1金属型板との間に、第1金属型板と同じ材質の第3金属型板を1枚以上配置する。
【0008】
積層板のそりの原因となる内包応力は、積層板と金属型板の熱膨張率の差によって生じる。特に、材質の異なる金属型板を併用するときには、その異なる金属型板の間の熱膨張率の違いが大きく影響する。上記の第3金属型板は、クッション材の表面性状が積層板表面に転写されることを防ぐための第2金属型板と積層板に直接当接する第1金属型板との間にあって、両者の熱膨張率差の影響を軽減する。
【0009】
本発明に係る第2の製造法は、第1の製造法と同様に、プレス熱盤一段間に重ねて投入した複数組の積層構成体の最上面と最下面には、前記第1金属型板とその外側に厚み1mm以上の第2金属型板を配置するが、この第1金属型板と第2金属型板との間に1枚以上配置する第3金属型板として、第1金属型板と第2金属型板の中間の熱膨張率を有する材質を選択する。
この中間の熱膨張率を有する第3金属型板は、第1金属型板と第2金属型板の熱膨張率差を緩衝する。
【0010】
なお、従来の製造法は、1枚以上のプリプレグを含み1枚の積層板に相当する積層構成体の複数組をプレス熱盤一段間に重ねて投入し、各積層構成体を加熱加圧成形により一体化する多数枚の積層板の製造において、積層構成体同士の間には厚み0.8mm以下の第1金属型板を配置する。プレス熱盤一段間に重ねて投入した複数組の積層構成体の最上面と最下面には前記第1金属型板と同材質で厚み1mm以上の第4金属型板を配置する。
このとき、クッション材の表面性状が積層板表面に転写されることを防ぐための第4金属型板を、その厚みを厚くし、かつ、第1金属型板と同材質とすることにより、第1金属型板と第4金属型板の熱膨張率差をなくし、積層板内包応力を少なくすることができる。
【0011】
参考例の製造法は、積層構成体同士の間には厚み0.8mm以下の第1金属型板を配置し、プレス熱盤一段間に重ねて投入した複数組の積層構成体の最上面と最下面には厚み1mm以上の第2金属型板を配置して加熱加圧成形を行なう。加熱加圧成形後に直ちに脱圧して、積層板温度が100℃以下になるまで放冷する。又は、加熱加圧成形後に加圧したまま冷却してから積層板をプレス熱盤より取出し、150℃以上で30分間以上の再加熱をする。
参考例の製造法では、加熱加圧成形後の状態では、積層板に内包応力が存在しているが、加熱加圧成形後の上記高温における脱圧放冷又は取出し後の再加熱が積層板の内包応力を解放する。
【0012】
さらに、上記本発明に係る第1〜2の製造法において、加熱加圧成形後に直ちに脱圧して、積層板温度が100℃以下になるまで放冷することは、積層板の内包応力をより少なくする上で好ましい方法である。また、加熱加圧成形後に加圧したまま冷却してから積層板をプレス熱盤より取出し、150℃以上で30分間以上の再加熱をすることも、積層板の内包応力をより少なくする上で好ましい方法である。
【0013】
【実施例】
本発明に係る製造法において、一組の積層構成体とは、1枚の積層板に相当する積層材料である。例えば、金属箔張り積層板を成形するための積層構成体は、1枚以上のプリプレグの層とその片側又は両側に配置した金属箔である。金属箔を省略する場合は、1枚以上のプリプレグの層とその両側に配置した離型フィルムが積層構成体である。積層板の厚みによっても異なるが、前記積層構成体を、プレス熱盤一段間に15〜40組重ねて投入する。
【0014】
本発明に係る製造法において使用する金属型板は、ステンレス板、アルミニウム板、アルミニウム合金板、銅板、鉄板等を適宜選択する。プリプレグに起因する凹凸が、隣合って成形される積層板の表面に金属型板を通して転写されない程度に、金属型板の引っ張り強さ、耐力を選定し、厚みについても上記限定した厚みの範囲内で適宜選定する。
【0015】
実施例1(第1の製造法)
0.2mm厚のガラス繊維織布基材エポキシ樹脂プリプレグ層の両側に18μm厚の銅箔を配置して積層構成体とし、プレス熱盤一段間に前記積層構成体を40組投入し加熱加圧成形を経て0.2mm厚両面銅張り積層板を得た。製品サイズは、500mm×330mmとした。
本実施例においては、図1に示すように、各積層構成体10の間には第1金属型板1(JIS5182アルミニウム合金製,0.4mm厚)を配置し、プレス熱盤20一段間に積み重ねた40組の積層構成体の最上面と最下面には、第1金属型板1とその外側に第2金属型板2(ステンレス製,1.2mm厚)とクッション材30を配置する。さらに、第2金属型板2と第1金属型板1との間に第3金属型板3(JIS5182アルミニウム合金製,0.4mm厚)を1枚配置した。また、成形後の積層板の取出しは、プレス熱盤間で加圧したまま冷却を実施した後に行なった。
【0016】
実施例2(第1の製造法)
実施例1において、成形後の積層板の取出しは、成形完了後に直ちに成形圧力を解放してプレス熱盤間で100℃まで放冷してから実施した。
【0017】
実施例3(第2の製造法)
実施例1において、第3金属型板3として、2.0mm厚黄銅板を採用した。そのほかは実施例1と同様とした。
【0018】
実施例4(第2の製造法)
実施例3において、成形後の積層板の取出しは、成形完了後に直ちに成形圧力を解放してプレス熱盤間で100℃まで放冷してから実施した。
【0019】
従来例1
厚み0.2mmのガラス繊維織布基材エポキシ樹脂プリプレグ層の両側に18μm厚の銅箔を配置して積層構成体とし、プレス熱盤一段間に前記積層構成体を40組投入し加熱加圧成形を経て0.2mm厚両面銅張り積層板を得た。製品サイズは、500mm×330mmとした。
本従来例においては、図2に示すように、各積層構成体10の間には第1金属型板1(JIS5182アルミニウム合金製,0.4mm厚)を配置し、プレス熱盤20一段間に積み重ねた40組の積層構成体の最上面と最下面には、第4金属型板4(JIS7025アルミニウム合金製,2.0mm厚)とクッション材30を配置した。また、成形後の積層板の取出しは、プレス熱盤間で加圧したまま冷却を実施した後に行なった。
【0020】
参考例1
従来例1において、成形後の積層板の取出しは、成形完了後に直ちに成形圧力を解放してプレス熱盤間で100℃まで放冷してから実施した。
【0021】
参考例2
厚み0.2mmのガラス繊維織布基材エポキシ樹脂プリプレグ層の両側に18μm厚の銅箔を配置して積層構成体とし、プレス熱盤一段間に前記積層構成体を40組投入し加熱加圧成形を経て0.2mm厚両面銅張り積層板を得た。製品サイズは、500mm×330mmとした。
本参考例においては、図3に示すように、各積層構成体10の間には第1金属型板1(JIS5182アルミニウム合金製,0.4mm厚)を配置し、プレス熱盤20一段間に積み重ねた40組の積層構成体の最上面と最下面には、第2金属型板2(ステンレス製,1.2mm厚)とクッション材30を配置した。また、成形後の積層板の取出しは、成形完了後に直ちに成形圧力を解放してプレス熱盤間で100℃まで放冷してから実施した。
【0022】
参考例3
参考例2において、成形後の積層板の取出しは、プレス熱盤間で加圧したまま冷却を実施した後に行なった。そして、当該積層板に対して、150℃の温度条件下で30分間の再加熱処理を実施した。
【0023】
比較例1
実施例1において、第3金属型板3として、1.2mm厚ステンレス板を採用した。そのほかは実施例1と同様とした。
【0024】
比較例2
実施例1において、第3金属型板3として、1.6mm厚銅張り積層板(ANSIグレード FR−4相当)を採用した。そのほかは実施例1と同様とした。
【0025】
比較例3
参考例3において、プレス熱盤から取出した積層板に対して、再加熱処理を実施しなかった。
【0026】
従来例2
厚み0.2mmのガラス繊維織布基材エポキシ樹脂プリプレグ層の両側に18μm厚の銅箔を配置して積層構成体とし、プレス熱盤一段間に前記積層構成体を14組投入し加熱加圧成形を経て0.2mm厚両面銅張り積層板を得た。製品サイズは、500mm×330mmとした。
本従来例においては、各積層構成体10の間には第1金属型板の間に第2金属型板(ステンレス製,1.2mm厚)を配置し、プレス熱盤一段間に積み重ねた14組の積層構成体の最上面と最下面にも第2金属型板(ステンレス製,1.2mm厚)を配置し、クッション材30を重ねた。また、成形後の積層板の取出しは、プレス熱盤間で加圧したまま冷却を実施した後に行なった。
【0027】
表1に、上記各実施例、参考例、比較例及び従来例において使用した金属型板の種別(板厚,材質及び熱膨張率)と積層板成形後の冷却方法を纏めて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
表2に、上記各例で製造した両面銅張り積層板のそり、寸法安定性の評価結果を示す。
そりは、両面銅張り積層板の銅箔を全面エッチングして除去し乾燥した積層板につていて測定したものである。積層板を平置きしたときの端縁浮き上がり量の最大値で示す。
寸法安定性は、両面銅張り積層板を回路加工した後における実際の回路位置の設計位置からのずれの最大値で示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表2から明らかなように、本発明に係る各実施例によれば、そりの抑制と寸法安定性が従来例2と遜色のない積層板を製造することができる。そして、一度の成形で製造できる積層板の枚数は、従来例2から飛躍的に増加する(プレス熱盤一段間で、14枚から40枚へ)。
第1乃至第2の製造法においては、加熱加圧成形後に直ちに脱圧して、積層板温度が100℃になるまで放冷するか、又は、加熱加圧成形後に加圧したまま冷却して積層板を取出し150℃以上で30分間以上再加熱をすることにより、さらに、そりを小さくし寸法安定性を向上させることができる。上記実施例2、4及び参考例1は、加熱加圧成形後に直ちに脱圧して、積層板温度が100℃になるまで放冷した後に積層板をプレス熱盤から取出す方法であるが、加熱加圧成形後に加圧したまま冷却して積層板を取出し150℃以上で30分間以上再加熱する方法も、前記脱圧放冷と同等の効果が得られる。
【0032】
【発明の効果】
上述のように本発明に係る方法によれば、そりが小さく寸法安定性のよい積層板を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る第1ならびに第2の製造法の説明図である。
【図2】 従来例1の製造法の説明図である。
【図3】 参考例2の製造法の説明図である。
【符号の説明】
1は第1金属型板
2は第2金属型板
3は第3金属型板
4は第4金属型板
10は積層構成体
20はプレス熱盤
30はクッション材
Claims (4)
- 1枚以上のプリプレグを含み1枚の積層板に相当する積層構成体の複数組をプレス熱盤一段間に重ねて投入し、各積層構成体を加熱加圧成形により一体化する多数枚の積層板の製造において、
積層構成体同士の間には厚み0.8mm以下の第1金属型板を配置し、プレス熱盤一段間に重ねて投入した複数組の積層構成体の最上面と最下面には前記第1金属型板とその外側に厚み1mm以上の第2金属型板を配置し、且つ、第2金属型板と第1金属型板との間に第3金属型板を1枚以上配置し、第3金属型板を第1金属型板と同じ材質とすることを特徴とする積層板の製造法。 - 1枚以上のプリプレグを含み1枚の積層板に相当する積層構成体の複数組をプレス熱盤一段間に重ねて投入し、各積層構成体を加熱加圧成形により一体化する多数枚の積層板の製造において、
積層構成体同士の間には厚み0.8mm以下の第1金属型板を配置し、プレス熱盤一段間に重ねて投入した複数組の積層構成体の最上面と最下面には前記第1金属型板とその外側に厚み1mm以上の第2金属型板を配置し、且つ、第2金属型板と第1金属型板との間に第3金属型板を1枚以上配置し、第3金属型板を、第1金属型板と第2金属型板の中間の熱膨張率を有する材質とすることを特徴とする積層板の製造法。 - 請求項1又は2のいずれかに記載の積層板の製造法において、
加熱加圧成形後に直ちに脱圧して、積層板温度が100℃以下になるまで放冷してから積層板をプレス熱盤より取出すことを特徴とする積層板の製造法。 - 請求項1又は2のいずれかに記載の積層板の製造法において、
加熱加圧成形後に加圧したまま冷却してから積層板をプレス熱盤より取出し、150℃以上で30分間以上の再加熱をすることを特徴とする積層板の製造法。
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