JP4423581B2 - 超電導ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流損失の低減を図ることができる超電導ケーブルとその電流分布解析方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超電導ケーブルに用いられる導体構造として、芯材上にテープ状超電導多芯線を同一ピッチで螺旋巻きして多層にした導体(単純多層導体)が知られている。このような導体では、内周の超電導層ほど電流密度が小さく、外周の超電導層ほど電流密度が大きいという偏流が顕著となるため、高温超電導ケーブルの交流損失低減対策が必要となる。例えば、特願2000−5107号(未公開)には、テープ状超電導多芯線のピッチを変えることで各層の電流を均流化する技術が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、10kA近くの大電流を通電する場合には、ピッチ調整だけで低損失を実現するのは難しい。ピッチ調整導体の交流損失は、通電時に各層のテープ状超電導多芯線に加わる磁場の大きさによって決まる。磁場は通電電流が大きくなるほど増大するので、10kAクラスの大電流導体の損失は、1kAクラスの導体よりもl桁以上大きくなる。損失が増大すると、その分だけ大きな冷却能力を持った冷凍機が必要となり、損失面での超電導ケーブルのメリットが薄れる。
【0004】
従って、本発明の主目的は、コンパクトかつ大容量(特に3kA以上)で、導体の交流損失を低減することができる超電導ケーブルと超電導ケーブルの電流分布解析方法とを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明超電導ケーブルは、▲1▼芯材の構成、テープ状超電導多芯線の構成および同多芯線の巻回の仕方に工夫を施したり、▲2▼テープ状超電導多芯線の厚さを限定することで、上記の目的を達成する。
【0006】
すなわち、第1の本発明に基づくケーブルは、芯材と、芯材上に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の導体層と、電気絶縁層と、絶縁層上に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の磁気遮蔽層とを具える超電導ケーブルである。そして、以下の▲1▼〜▲3▼の構成を具えることを特徴する。
【0007】
▲1▼導体層および磁気遮蔽層のうち、少なくとも1層の巻きピッチが他層とは異なる。
▲2▼テープ状超電導多芯線はマトリックス中に超電導フィラメントが埋め込まれた構成で、このフィラメントは螺旋状にツイストが施されている。
▲3▼芯材は絶縁された素線を撚り合わせて構成されている。
【0008】
さらには、▲4▼超電導フィラメントの外周に高抵抗バリア層が配されていることが好ましい。
【0009】
以下、前記▲1▼〜▲4▼の各構成ごとについて説明する。
(導体層および磁気遮蔽層のピッチ調整)
導体層および磁気遮蔽層のピッチを調整する具体的手法は、交流損失を低減できるようなテープ状超電導多芯線のピッチを選択できるものであればどのような手法でも構わないが、例えば特願2000-5106号に開示されている方法を用いることが好適である。この手法によれば、任意の芯材抵抗、任意の導体サイズ、任意の螺旋巻き方向、任意の螺旋巻きピッチを有する超電導ケーブルの電流分布、交流損失が詳細に解析でき、交流損失を極小化するテープ状超電導多芯線の巻回ピッチを決定することができる。この手法の詳細については後述する。
【0010】
(ツイスト線の使用)
マトリックス中に超電導フィラメントが埋め込まれた構成で、このフィラメントが螺旋状に構成されたツイスト線自体については、特開平7-105753号に記載されている。
【0011】
螺旋状のフィラメントを持つ超電導線材では、マトリクスとフィラメント間に流れる誘導電流がツイストピッチごとに分断され、小ループとなって流れるため、電流の大きさも制限される。その結果、交流損を小さく抑えることができる。
【0012】
マトリクス材料としては、銀または銀合金が好適である。銀合金には、Ag-Au合金、Ag-Mg合金、Ag-Sb合金、Ag-Mn合金が好ましい。フィラメントを構成する超電導体はイットリウム系、ビスマス系、タリウム系などの酸化物超電導体が好ましい。
【0013】
このようなツイスト線は、パウダーインチューブ法などにより製造する。例えば次の工程により得ることができる。超電導体の原料粉末または超電導体の粉末を第1パイプ中に充填し、これを伸線加工して単心超電導線とする。単心超電導線を複数本用意し、これらを第2パイプに挿入して再度伸線加工し、多芯超電導線とする。多芯超電導線に所要のピッチで捻り加工を施し、さらに軽く伸線加工を施してから、圧延加工してテープ状とする。通常は、このテープ線に1回目の焼結を行った後、もう一度圧延加工を施して、2回目の焼結を行ってテープ状超電導多芯線を得る。超電導体の原料粉末の一例としては、Bi−2212相を主相とする前駆体(最終焼結後にBi−2223相が形成される)が挙げられる。第1・第2パイプには、銀パイプなどを利用すれば良い。
【0014】
フィラメントの数は、最終的なフィラメントの厚さ、テープ状超電導多芯線のサイズに応じて決定する。通常は、7〜127芯程度とする。
【0015】
フィラメントのツイストピッチは、一般に短ピッチの方が損失低減に有効である。現状のツイストピッチの下限は10mm程度である。ただし、極端に短ピッチのツイスト線を得ようとしても、フィラメントの断線などが生じやすく、長ピッチの方が加工が容易である。そのため、ツイストピッチは多芯超電導線の線径の5倍以上とすることが実用的である。
【0016】
多芯超電導線の最終伸線径は、テープ線の厚さおよびツイストピッチに応じて設定する。この最終伸線径はφ0.5mm〜φ3mm程度が一般的である。
【0017】
テープ状超電導多芯線とした場合の最終的な厚さは0.1〜0.4mm、アスペクト比(幅/厚さ)は10〜20程度が好ましい。
【0018】
(高抵抗バリア層)
高抵抗バリア層は、フィラメントの外周を被覆するように形成する。高抵抗バリア層の存在により、テープ状超電導多芯線のマトリックスを構成する金属が超電導体に拡散して臨界電流密度が低下することを防止できると共に、実質的にマトリックスを高抵抗化して交流損失の低減を図ることができる。高抵抗バリア層の材料は、▲1▼超電導体と反応しないこと、▲2▼伸線・圧延加工時に線材の加工性を阻害しないことを主な基準として選択する。より具体的には、Ca-Cu-O系酸化物、Bi2201相、Sr-V-O系酸化物などが最適である。
【0019】
高抵抗バリア層を有するテープ状超電導多芯線は、例えば次の工程により得ることができる。超電導体の原料粉末または超電導体の粉末を第1パイプ中に充填し、これを伸線加工して単心超電導線とする。単心超電導線を第2パイプに挿入し、第1の銀パイプと第2パイプとの間に高抵抗バリア層の材料を充填する。この第2パイプを伸線加工してバリア層付き単芯線とする。バリア層付き単芯線を複数本用意し、これらを第3パイプに挿入し、さらに伸線加工を施して多芯超電導線とする。多芯超電導線に所要のピッチで捻り加工を施し、さらに軽く伸線加工を施してから、圧延加工してテープ状超電導多芯線を得る。第1・第2・第3パイプには銀パイプなどを利用すればよい。
【0020】
(撚り合わせ構造の芯材)
従来、芯材には一般にパイプ材が利用されていたが、撚り線構造の芯材とすることで、交流損失の低減と過電流での温度上昇抑制という2つの問題を同時に解決する。
【0021】
超電導層の各層の巻きピッチが異なるピッチ調整型導体では導体軸方向の磁界が発生する。金属パイプを芯材として用いると、この軸方向磁場によって大きな渦電流損失が発生する。
【0022】
この渦電流損失を抑制するには、材料の抵抗を上げることが損失低減に有効であり、金属でない方が良いとも考えられる。しかし、超電導ケーブルに過電流が流れたときのケーブル温度上昇を抑制するためには、芯材が過電流を分担するようにする必要があり、そのためには、芯材の抵抗はなるべく低くする必要がある。その観点から、芯材を構成する材料は金属が好ましい。
【0023】
そこで構造面からみると、芯材材料として金属を前提にしたとき、芯材の断面を分割して、渦電流のパスを小さくすることが有効である。具体的には、素線絶縁の施された素線を撚り合わせて、芯材を構成すれば良い。
【0024】
芯材表面を平滑化することも好ましい。この平滑化により、ケーブルの曲げなどによる機械的な劣化を抑制することができる。単なる撚り線導体は、表面平滑性が悪く、この上に直接超電導線材を集合すると、ケーブル導体を曲げたときに超電導線材の座屈が多発することが判った。この問題の対策として、芯材表面を平滑化すれば導体曲げによる超電導線材の座屈を抑制できる。平滑化の程度は、金属線の撚り溝による凹凸を緩和できる程度とすれば良い。
【0025】
芯材表面の凹凸を平滑化する手段としては、芯線表面自体を円筒面状に成形する方法と、芯材表面に平滑化する層を別途設けることが挙げられる。
【0026】
前者としては、断面が円形状の金属線を撚り合わせた後、この撚り線をダイスに通して芯線表面を円筒面状に圧縮成形したり、円形状の金属線を撚り合わせた後、この撚り線表面を研磨して芯線表面を円筒面状に形成することが挙げられる。
【0027】
また、後者の具体例としては、次の手段が挙げられる。
【0028】
▲1▼撚り合わされた金属線の外周にテープ材を巻きつけたり、押出し被覆を形成する。その場合、絶縁性のテープ材、押出し被覆材を用いることが好ましい。テープ材、押出し被覆材自体の渦電流損失を回避することができるからである。また、テープ材を金属にすると、テープエッジで超電導線が座屈する恐れがあるためである。
【0029】
▲2▼芯材における金属線のうち、最外層に使用されている線材の径を内層側の線材の径よりも細径とする。特に、最外層の線材とその直下の線材の撚り方向を逆にする、もしくは両線材の撚りピッチを大きく変えることで、最外層の線材が直下の線材の撚り溝に落ち込まず、芯材表面の平滑化を効果的に実現できる。
【0030】
芯材は、絶縁被覆された金属線を同心撚りした構造であることが望ましい。先述した超電導線材の座屈は、芯材表面の凹凸に起因して発生する。金属線を撚りあわせた構造の芯材では多かれ少なかれ必ず表面に凹凸が見られる。撚り合わせ構造のうち、最も凹凸を抑制できるのは同心撚り構造である。
【0031】
第2の本発明に基づく超電導ケーブルは、芯材と、芯材上に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の導体層と、電気絶縁層と、絶縁層上に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の磁気遮蔽層とを具える超電導ケーブルである。そして、前記テープ状超電導多芯線の厚さを0.15mm以下とすることを特徴とする。
【0032】
従来のテープ状超電導多芯線では、Jcの面から厚さ0.2mm以上のものを用いて巻回ピッチの最適化が図られていた。交流損失低減の面から試算を行ったところ、テープ状超電導多芯線の厚みが薄いほど、交流損失を低減できることがわかった。そのためにフィラメントサイズは変えずにフィラメント数を低減し、これによってフィラメント束の厚さを低減する。この線を用いることで、Jcはそのままで、交流損失の小さな超電導ケーブルを得ることができる。より好ましいテープ状超電導多芯線の厚さは0.1mm以下である。この厚さは交流損失低減の面からは薄い方が好ましいが、機械的強度や取り扱いの容易性の面から0.01mm以上であることが望ましい。
【0033】
もちろん、第1の本発明の構成と第2の本発明の構成とを組み合わせてもよい。
【0034】
次に、本発明超電導ケーブルのテープ状超電導多芯線のピッチを決定するのに最適な方法は、芯材と、芯材の外周に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の導体層と、電気絶縁層と、絶縁層の外周に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の磁気遮蔽層とを具える超電導ケーブルの電流分布解析方法であって、下記の▲1▼〜▲4▼のプロセスを具えることを特徴とする。
【0035】
▲1▼ 前記芯材、導体層および磁気遮蔽層を少なくとも誘導リアクタンスで構成される回路にモデル化するプロセス。
▲2▼ 芯材サイズと比抵抗を含む芯材の諸元、臨界電流とサイズならびにテープ状超電導多芯線に埋め込まれたフィラメントのツイストピッチを含むテープ状超電導多芯線の諸元、導体層および磁気遮蔽層の螺旋巻きの方向とピッチ、導体層と磁気遮蔽層の厚さと外径、導体層と磁気遮蔽層の層数を含む導体層と磁気遮蔽層の諸元、ならびに周波数と通電電流を含む必要なパラメータを入力するプロセス。
▲3▼ 入力したパラメータを用いて回路中のインダクタンスと実効抵抗を算出するプロセス。
▲4▼ 前記モデルに基づいた回路方程式を作成し、各層の電流分布を算出するプロセス。
【0036】
ここで、後述する「モデル化」に対応させる必要上、導体層および磁気遮蔽層中にあるテープ状超電導多芯線の各層同士は電気的に絶縁されていることが好ましい。超電導体の各層のインピーダンス調節を考える場合、層間の乗り移り抵抗等の影響を完全に除外した層間絶縁導体の方が、層間絶縁のない導体よりもモデル化が容易である。また、この構造は導体中の渦電流損失低減に対しても効果がある。
【0037】
モデル化するプロセスとしては、芯材、導体層および磁気遮蔽層を誘導リアクタンスのみで構成される回路にモデル化しても構わないが、抵抗と誘導リアクタンスとで構成される回路にモデル化することが好ましい。従来、抵抗を考慮して電流分布の解析を行うことは極めて煩雑で難しいと考えられていた。本発明における「モデル化の仕方」および後述する「モデル化した回路中の誘導リアクタンスと実効抵抗を算出する手法」を用いることで、抵抗を考慮して正確な電流分布を解析することができ、さらに解析結果を元に交流損失特性を解析することができる。
【0038】
モデル化するプロセスをより具体的に説明する。まず、芯材ならびに導体層を誘導リアクタンスと抵抗とが直列に配置された集中定数回路とみなす。また、磁気遮蔽層を端末部の接続抵抗を介してつながった閉回路ループとみなす。そして、導体層とそれにとりつけた電源が形成する回路を1次回路、磁気遮蔽層とその端末部の接続抵抗とで形成する回路を2次回路とした相互誘導回路とみなすことが好ましい。
【0039】
モデル化した等価回路を元に電流分布を求めるには、インダクタンスおよび実効抵抗の算出を行うために、モデル化した等価回路に対して必要なパラメータを設定する必要がある。パラメータとしては、テープ状超電導多芯線の諸元(幅、厚さ、Ic)、芯材諸元(比抵抗、外径、厚さ)、導体層・磁気遮蔽層諸元(各層の巻き線方向、ピッチ、各層の外径、各層の厚さ、各層でのIc維持率)、通電条件(通電電流、周波数)が挙げられる。また、各層のIcが異なる場合には、テープ状超電導多芯線の臨界電流ならびにサイズを各層ごとに設定すれば良い。
【0040】
本発明解析方法では、テープ状超電導多芯線のフィラメントにツイストが施されたものを用いる。その場合、パラメータの設定として各層毎にツイストピッチを設定する。ツイストが施されたテープ状超電導多芯線とは、酸化物超電導体のフィラメントがマトリクス中に埋め込まれた線材で、線材の長手方向に沿ってフィラメントが螺旋状にねじられた構成のものを言う(例えば特開平7-105753号参照)。フィラメントのツイストピッチをパラメータとした具体的な回路方程式については後に詳しく説明する。
【0041】
また、実効抵抗の算出に際して、前記集中定数回路中の抵抗は、導体層を流れる電流によって変化することとして扱うことが好適である。高温超電導導体の特徴の一つに、超電導状態から常伝導状態への転位が緩やかということがある。直流通電特性を例にとると、高温超電導導体の電流−電圧曲線はV〜In(n〜10)の様になり、理想的な超電導体のようにI=Icでステップ状(不連続的)に有限の電圧が発生するわけではない。
【0042】
このような、非線形の電流−電圧特性を持つ高温超電導ケーブルを常伝導導体のような電流に依存しない抵抗を持つとして取り扱うことや、理想的なテープ状超電導多芯線のようにIc以下で抵抗がゼロとして取り扱うことは、モデルと実際のケーブルとの間に誤差を生じさせる元となる。
【0043】
そこで、電流によって変化する抵抗を考えることで、より厳密に超電導ケーブルの交流損失を取り扱えるようになる。
【0044】
さらに、高温超電導ケーブルの最も重要な特徴の一つは、臨界電流(Ic)を越える電流を流したとき、従来の金属系超電導素線の様なクエンチ現象を生じることなく、安定にIcを越える通電ができることである。また、同じ容量のピッチ調整導体とピッチ無調整導体の交流損失を比較すると、両者に最も差が生じるのは導体Ic近傍であることが理論的に予測できる。
【0045】
このように高温超電導ケーブル解析のためには、導体のIc以上ならびにIc近傍の交流損失特性予測も重要となる。これらの効果は、モデル化したときの集中定数回路中の抵抗が電流によって変化すると考えることで、はじめてモデルの中に取り入れることができる。
【0046】
より具体的には、テープ状超電導多芯線の実効抵抗Reffを、各層の交流損失量Wlayerと通電電流Iを用いて、Reff=Wlayer/I2とし、Reffを前記集中定数回路中の抵抗とみなせばよい。そして、この損失量Wlayerをテープ状超電導多芯線の交流電流−損失特性をもとに計算することが好適である。例えば、交流損失量Wlayerはノリスの式から求めれば良い。そして、I>Icにおける交流損失量Wlayerを求める式がI<Icにおける交流損失量Wlayerを求める式と連続するようにすればよい。
【0047】
続いて、モデルに対応した回路方程式を作成し、各層の電流分布を算出する。その際、パラメータを入力するプロセスにおいて、各層の電流値として適宜な初期値を与え、この初期値をもとに各層の電流分布を演算する。次に、演算により得られた電流値を用いて再度パラメータの入力プロセス▲2▼から電流分布の算出プロセス▲4▼までを繰り返す。そして、この繰り返しを、演算の前後における各層の電流値の差が所望の範囲に収束するまで実行すればよい。
【0048】
演算結果を収束させるための所定の範囲とは、10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。演算の前後における各層の電流値の差が10%を超えると解析結果の正確性が低下する。また、演算の前後における電流値の差を1%程度の差に収束できれば、それ以上の演算を繰り返しても時間がかかるだけであり、解析結果の精度向上にほどんど寄与しないからである。
【0049】
そして、算出された電流分布から磁場分布を求めて、さらに交流損失量を算出するプロセスを具えることが好適である。
【0050】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
導体層の外径が24mmで、導体の容量が8.4kApの超電導ケーブル用導体を設計した。このケーブル用導体は、中心から順に芯材、導体層、絶縁層、磁気遮蔽層を具える。
【0051】
芯材は、導体軸方向磁場による渦電流損失を抑制するために、素線絶縁を施した銅線を同心撚りしたものを用いた。用いた銅線は直径1mm、本数250本である。
【0052】
導体層は、芯材の上に所定のピッチでテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻回して積層構造に形成する。テープ状超電導多芯線の各層間には薄い絶縁層(層間絶縁)を配置することが渦電流損失低減の面で有効である。各素線には、エナメルやUVコート等の絶縁コーティングがなされていればさらに良い。
【0053】
使用するテープ状超電導多芯線は次のようにした得た。まずBi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3およびCuOを用いて、Bi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.81:0.40:1.98:2.21:3.03の組成比になるように配合した。この粉末を大気中において750℃で12時間、800℃で8時間、さらに減圧雰囲気133.3Pa(1Torr)において760℃で8時間の順に熱処理を行った。これら各熱処理後には粉砕を行う。この熱処理と粉砕とを経て得られた粉末をさらにボールミルにより粉砕し、サブミクロンの粉末とした。この粉末を800℃で2時間熱処理した後、外径12mm,内径9mmの銀パイプ中に充填した。
【0054】
次に、この銀パイプを直径1mmまで伸線加工して単芯超電導線を得た。単芯超電導線を外径12mm,内径9mmの銀パイプ中に37本はめ込み、これを直径1mmにまで伸線加工して多芯超電導線とした。この多芯超電導線を圧延加工し、850℃で50時間の熱処理を施し、所定の厚さのテープ状超電導多芯線を得た。本例では、厚さが0.24mm(比較例)と0.15mm(実施例)の2通りのテープ状超電導多芯線を用いた。いずれの厚さのテープ状超電導多芯線もツイストピッチは施されていない。
【0055】
絶縁層は、導体層の上にPPLP(ポリプロピレンフィルムにクラフト紙を貼り合わせた複合テープ)、クラフト紙、ポリエチレン、ゴムなどを配置して形成する。ここではPPLPを用いた。
【0056】
磁気遮蔽層は、絶縁層上に前述のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻回して積層構造に形成したものである。テープ状超電導多芯線には層間絶縁や素線絶縁を施しておくことが好ましいのは導体層と同様である。
【0057】
以上の超電導導体でケーブル1相分(1芯)となる。実際には、3芯を撚り合わせたものを断熱管に入れて使用する。断熱管は二重のアルミコルゲートパイプ内にスーパーインシュレーションなどの断熱材を配置すると共に真空引きした構成である。断熱管の外径は、管路布設に対応させるために、130mm以下とすることが好ましい。 上記構造のケーブル用導体において、導体層および磁気遮蔽層における電流均一化のための最適巻きピッチの計算は、例えば特願2000−5107号に開示されたシミュレーションコードで可能である。
【0058】
上記のシュミレーションコードに基づいて求めたピッチおよび導体パラメータを表1に示す。表1において、「導体層ピッチ」と「遮蔽層ピッチ」は、それぞれ内層側から外周側に向かっての値を順に記載している。
【0059】
【表1】
【0060】
以上の導体構造について、特願2000−5107号に開示された手法で交流損失を計算した結果、同一の導体サイズ、同一の導体Icであっても、通常の厚さの素線(厚さ0.2〜0.3mm使用)を用いた場合よりも、素線サイズの薄い方が交流損失が小さくなることを確認した。
【0061】
この計算結果に基づいて、容量が1/4の縮小モデル導体を製作した。使用した素線サイズおよび導体構造は表1と同一である。導体Icは2500Aで、2100Ap(77K、50Hz)を導体−磁気遮蔽層に往復通電したときの導体部の損失は、素線厚さ0.24mmの場合が1W/m、素線厚さ0.15mmの場合が0.5W/mと厚さが薄い方が小さいことを実験的に確認した。同様に、素線厚さ0.10mmの場合も試算したところ、より一層損失の小さいことが判った。
【0062】
(実施例2)
実施例1のように、テープ状超電導多芯線の厚さを薄くすることによって交流損失が低減することは確認した。しかし、8.4kAp通電時には、薄い線を使用した場合にも、全損失は12W/mとなる。実用化のためには、冷却システムの制約によって、全損失は1W/mレベルとする必要があると言われている。ピッチ調整導体の交流損失は、素線レベルの磁化損失の総和であり、導体損失低減のためには、素線レベルの磁化損失低減が有効である。そこで、超電導フィラメントがツイストされたテープ状超電導多芯線を用いて交流損失の試算を行った。
【0063】
このときの計算方法を以下に示す。交流損失を求める手順は、超電導ケーブルを等価回路にモデル化し、インダクタンスの導出・実効抵抗の導出を行い、モデルに対応した回路方程式を作成し、電流分布の算出を行う。導体層と遮蔽層の各層の電流分布を均一化するピッチを設定した後に、その条件のもとでフィラメントのツイストピッチを設定して電流分布から磁場分布を求め、交流損失を演算するようにした。
【0064】
(モデル化)
芯材、導体層(コア)および磁気遮蔽層(シールド)と端末を含む超電導ケーブルを図1のような等価回路とみなした。すなわち、芯材ならびに導体層を誘導リアクタンスと抵抗とが直列に配置された集中定数回路とみなしている。導体層には外部電源よりIallが供給され、各導体層間には絶縁が施されているとした。
【0065】
また、磁気遮蔽層はテープ状超電導多芯線が端部にて接続抵抗rjで接続され、図1のようなループを形成するものとした。図中のi0、i1…は各層に流れる電流、Lco、Lc1…は各層の周方向磁場によるインダクタンス、Lao、Lal…は各層の軸方向磁場によるインダクタンス、r0、r1…は各層の実効抵抗、rjは端末のインダクタンスならびに抵抗、Vc、V1はそれぞれ導体層側、磁気遮蔽層側の電圧である。添え字の0は芯材を表し、導体層または磁気遮蔽層は内層より1、2、3…のように表記した。このモデルでは、導体層4層、磁気遮蔽層2層として検討している。
【0066】
(インダクタンス導出)
各超電導層のインダクタンスについては、層間の相互インダクタンスも考慮して、周方向成分を数式1と定義し、軸方向成分を数式2と定義した。
【0067】
【数1】
【0068】
【数2】
ここで、式中のanはn層目の半径Pnはn層目のピッチである。
kはn層が、Z撚りのとき1、S撚りのとき2とする。
【0069】
(抵抗成分導出)
各層の抵抗成分は、導体層を構成する素線のACロス理論値Wnorris(ノリスの式)から導くこととした。このとき、素線一本あたりの実効抵抗rwireは、素線に流れる電流Iwireを用いて数式3のように定義する。
【0070】
【数3】
【0071】
ここで、素線の損失Wnorrisは、z=Iwire/Icとすればz<1(臨界電流値未満)のとき、ノリスの式より数式4のようになる。
【0072】
【数4】
【0073】
そして、z>1のとき、フラックススロー損失は数式5のようになる。
【0074】
【数5】
【0075】
ここで、nは、電圧が電流Iのn乗に比例するとした場合のIc近傍でのn値であり、数式5はz=1で数式4と連続するようにしている。これら数式4、5は実験結果と良く一致する。
【0076】
なお、ジョイント抵抗については、試験で求めた端末の抵抗値(3×10-6Ω/ケーブル長)を採用した。
【0077】
(回路方程式)
このモデルでは、回路方程式は下式のようになる。
【0078】
【数6】
【0079】
上式で、初期条件として各層のピッチ、Lc、La、r1、Iallを与えれば、i0〜i6、Vc、Vsに関する9元連立方程式となり、計算によって各層の電流分布を求めることができる。
【0080】
(電流分布の算出)
計算は、まず全通電電流(Iall)に対して初期電流分布(各層の電流値)を適当に与え、そのときの各超電導層の抵抗値を先述の抵抗成分導出プロセスにしたがって求める。すると数式6の回路方程式中のiiとVc、Vsを除く全数値が既知の値となるために、数式6を解いてio〜i6、Vc、Vsを求めることができる。この電流値をもとに再度各超電導層の抵抗値を求めた後、数式6からio〜i6を求める。この作業を、演算前後の計算結果の差が一定値以下となるまで繰り返す。今回は前後の計算結果の差が1%以下となったときに、計算が終了したとみなした。
【0081】
数式6の回路方程式を解けば電流分布が求まるはずであるが、実際は回路中の抵抗成分が電流によって変化する効果を取り入れる必要があるので、答えを解析的に見出すことはできない。「演算前後の計算結果の差が一定値以下となるまで繰り返す」という手法を取り入れることによって、はじめて任意の巻きピッチ条件の超電導ケーブルの電流分布を計算によって推測できるようになった。以上のプロセスを経た時点で電流分布が求められるため、その結果を元にして以下のプロセスにより交流損失量を求める。
【0082】
(磁場の計算)
このモデルでは、導体層は複数のテープ状超電導多芯線が螺旋状に巻かれた構造であり、通電時の磁場は、図2に示すように、周方向磁場成分と導体軸方向磁場成分に分けて考えることができる。
【0083】
このときのn層目に加わる周方向磁界成分Hcn(単位はA/m)は数式7で表される。
【0084】
【数7】
【0085】
また、n層目に加わる軸方向磁界成分Han(単位はA/m)は数式8で表される。
【0086】
【数8】
【0087】
(交流損失の計算)
導体の交流損失は、導体を図3に示すような隣接したn個の無限平面にモデル化して計算した。このようなモデル化は、例えば「H.ISHII(ISS’97プロシーディングス)」等から報告があり、円筒導体の磁界分布を表すモデルとしては簡便である。
【0088】
導体の磁化損失は、各層の磁化損失の総和とする。ツイスト素線を用いた導体の磁化損失は、各層のフィラメント1本あたりの磁化損失と、素線1本あたりの結合損失を計算し、これをもとにして導体の交流損失を計算する。
【0089】
フィラメント1本あたりの磁化損失Wf(単位はW/m3)は、ビーンモデルを前提にして公式(数式9、10)で表す。
【0090】
【数9】
【0091】
【数10】
【0092】
ここで、数式9は磁場がフィラメント全域に侵入してない場合、数式18は磁場がフィラメントの全域に侵入している場合である。fは周波数(Hz)、Jcは超電導フィラメントの臨界電流密度(A/m2)、Hmは外部磁界のピーク値(A/m)、tはフィラメントの厚さ(m)である。
【0093】
Hopnはn層以外に流れる電流がn層部に作る磁場(n層部にとっての外部磁場)の大きさでありn層の周方向磁界成分Hcnと軸方向磁界成分Hanを用いて、Hopnは数式11で表される。
【0094】
【数11】
【0095】
ここで、n層を流れる電流が作る磁場Iopn(n層部にとっての自己磁場)はHopnと比較して十分小さいものとした。この値をもとに、n層目の単位長さあたりの磁化損失Wfnは数式12で求めた。
【0096】
【数12】
【0097】
xnは素線中のフィラメント数、ynはn層目の素線数、Sfはフィラメント1本の断面積である。
【0098】
n層目の素線1本あたりの結合損失Wc(W/m3)は、数式13で表わされる。
【0099】
【数13】
【0100】
ここでλは、超電導線材内の超電導体占有率、σiは超電導束内の等価電導率、lpは線材のツイストピッチである。
【0101】
この値をもとに、n層目の単位長さあたりの結合損失Wcnは数式14で求めた。
【0102】
【数14】
【0103】
ただし、ωγ>1となる場合には、ツイストによる交流損失低減効果は小さいとして、線材のオーバーオールJc=Jc、フィラメントの厚さ=テープ状超電導多芯線の厚さ、フィラメント数=1、結合損失=0で損失Wfn、Wcnを計算するようにした。
【0104】
なお、周波数50Hz、透磁率4π×10− 7、比抵抗=純銀の77Kの比抵抗であれば、ツイストピッチは12mm以下でωγ<1となる。
【0105】
導体全体の損失W(W/m)は数式15で表される。
【0106】
【数15】
【0107】
以上のような考えにしたがって、導体の磁場分布と交流損失量を算出してシステムを解析するシミュレーションコードを作成して、コンピューター内に組み込み、解析装置とした。
【0108】
本コードでの計算の流れを図4に示す。「電流分布計算」のステップから「各層のピッチを設定」のステップに戻るのは、演算前後の計算結果の差が一定値以下となるまで繰り返すことを示している。「交流損失計算」のステップから「各層のツイストピッチを設定」のステップにリターンしているのは、あるツイストピッチで交流損失計算を行い、損失が所定値以下となるまでツイストピッチを変えて損失計算を繰り返すことを示している。この所定値は、冷却システムの制約によって、全損失で1W/m程度とすることが好ましい。
【0109】
上記のコードでは、各層の巻きピッチとフィラメントのツイストピッチを異なるステップで独立に入力する方法にしたが、巻きピッチとフィラメントのツイストピッチを同時に入力することも可能である。その場合には、素線のフィラメントレベルでインピーダンスを調整することが可能である。
【0110】
以上の解析装置を用いて、ケーブル導体の交流損失とツイストピッチの関係を調べた。ケーブル導体構造は、テープ状超電導多芯線のフィラメントにツイストが施されている点およびマトリックスをAg−Au合金とした点を除いて実施例1で説明したケーブルと同様である。本例で用いたテープ状超電導多芯線は、多芯超電導線を得た後、これに所要のピッチで捻り加工を施し、さらに軽く伸線加工を施してから、テープ状に圧延加工して得た。得られたテープ状超電導多芯線は、図5に示すように、Ag−Au合金のマトリックス中に超電導体のフィラメントが埋設され、このフィラメントが螺旋状に形成されている。フィラメントのツイストピッチは、短い方が交流損失低減に有効なため、極力短いツイストピッチとして10mmを選択した。テープ状超電導多芯線の諸元を表2に示す。表2の「母材比抵抗」とはAg−Au合金の比抵抗を、「外被厚さ」とはマトリックス(ここではAg−Au合金)の厚さを、「フィラメント体積率」とはテープ状超電導多芯線の単位体積当たりに占めるフィラメントの体積率を、「Ic/wire」はテープ状超電導多芯線1本当たりの臨界電流値を示している。
【0111】
【表2】
【0112】
計算の結果、導体交流損失は0.7W/mとなり、厚さが0.24mmのテープ状超電導多芯線でも実用レベルの交流損失が実現可能であることが判った。すなわち、遮蔽層を含むケーブル導体外径が40mm以下のコンパクトな導体でも、8.4kApという大電流を通電したときの交流損失を1W/m以下とすることができる。
【0113】
(実施例3)
実施例2のように、ツイストが施されたテープ状超電導多芯線を用いることで超電導フィラメント間の電磁気的な結合が解消され、かつマトリックスの比抵抗が銀の約100倍の1×10− 7Ωmの素線を用いれば、損失が1W/m以下のコンパクト・大容量導体が実現できることが判った。
【0114】
しかし、実際には、銀以外の金属とはすぐに化学反応しやすい高温超電導体では、マトリックスの高抵抗化は非常に難しい技術である。また、超電導フィラメントがセラミックスであるテープ状の高温超電導線では、加工性の問題からフィラメント同士がつながってネットワーク状の電流パスを形成するブリッジングが存在し、短ピッチの理想的なツイストを施すのは困難である。そこで、これらの
問題点を克服する導体として、以下の導体構造を検討した。
【0115】
▲1▼芯材
・軸方向の渦電流損失に対応した、絶縁素線を用いた撚り線構造。
▲2▼導体層・磁気遮蔽層用のテープ状超電導多芯線
・素線中のフィラメントにツイストが施された線材を使用。
・超電導フィラメントに高抵抗バリア層が施された線材を使用。
・素線各層のピッチは、各素線の電流が均一になるように調整する。
【0116】
高抵抗バリア層を有するテープ状超電導多芯線はパウダーインチューブ法により製造することが好適である。この製法の一例は次の通りである。
【0117】
実施例1と同様に、Bi2O3、PbO、SrCO3、CaCO3およびCuOを所定の組成比に配合し、この粉末に熱処理、粉砕を繰り返してサブミクロンの粉末を得る。この粉末を800℃で2時間熱処理した後、外径25mm,内径22mmの第1銀パイプ中に充填して、第1銀パイプを直径20mmまで伸線加工する。
【0118】
次に、外径23mm、内径22mmの第2銀パイプを用意し、粉末を充填した第1銀パイプを第2銀パイプ内に挿入して、両パイプの間に高抵抗バリア層となるSr−V−O酸化物を充填する。この第2銀パイプを直径1.44mmまで伸線加工し、単芯超電導線を得る。単芯超電導線を外径14mm,内径13mmの第3銀パイプ中に37本はめ込み、これを直径1.25mmにまで伸線加工して多芯超電導線とした。この多芯超電導線に所要のピッチで捻り加工を施し、さらに軽く伸線加工を施してから圧延加工し、840℃で50時間の熱処理を施して、厚さが0.24mmのテープ状超電導多芯線を得た。
【0119】
このテープ状超電導多芯線の断面は、図6に示すように、マトリックス1中に複数のフィラメント2が配置され、そのフィラメント2の外周を高抵抗バリア層3が覆った構造になっている。
【0120】
以上のテープ状超電導多芯線を用いて、実施例1と同様の構造のケーブル用導体を試作し、交流損失を試算した。その結果、導体交流損失は0.2W/mであった。高抵抗バリア層を有するテープ状超電導多芯線を用いることで、遮蔽層を含む導体外径が40mm以下のコンパクトな導体に8.4kApという大電流を通電したときにも、交流損失が1W/m以下の導体を実現できる。
【0121】
高抵抗バリアを配置すると、実効的な母材の比抵抗がアップする。前述の数式13-C中の超電導束内の等価導電率σiは母材の導電率をσOとすれば数式16のように表される。
【0122】
【数16】
【0123】
一方、導電率σmの高抵抗バリア層が配置された場合、超電導束内の等価導電率σiは数式17のように近似できる。
【0124】
【数17】
【0125】
よって、銀よりも2桁程度抵抗が高い高抵抗バリア材料を配置すれば、等価導電率も約2桁程度高くなり、先述のSr−V−0等の高抵抗バリア材料は、十分この条件を満足する(多芯線と導体 住吉文夫、船木和夫共著 産業図書)。このとき、ωτ∝σi・lp 2の関係があるので、ツイストが有効となるツイストピッチの上限は1桁程度大きくなる。
【0126】
これまでは、母材の比抵抗の制約から、短ピッチのツイストでしか、ツイストによる損失低減の効果は出ないと考えられていた。しかし、高抵抗バリア層を配置することによって、加工が容易な長ピッチのツイストでも、導体の交流損失低減に有効な、ツイスト条件が実現できるようになった。
【0127】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明超電導ケーブルによれば、導体層の電流を均流化し、交流損失を大幅に低減することができる。特に、超電導フィラメントに高抵抗バリア層を施した素線を利用すれば、更に一層の交流損失低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】超電導ケーブルの等価回路へのモデル化手法を示す説明図である。
【図2】超電導ケーブルにおける通電時の磁場成分の説明図である。
【図3】円筒導体を無限平面にモデル化する手法の説明図である。
【図4】超電導ケーブルの交流損失を評価する手順のフローチャートである。
【図5】ツイスト線の概略透視斜視図である。
【図6】高抵抗バリア層を有するテープ状超電導多芯線の横断面図である。
【符号の説明】
1 マトリックス
2 フィラメント
3 高抵抗バリア層
Claims (3)
- 芯材と、芯材の外周に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の導体層と、電気絶縁層と、絶縁層の外周に複数のテープ状超電導多芯線を螺旋状に巻き付けてなる積層構造の磁気遮蔽層とを具える超電導ケーブルであって、以下の(1)〜(3)の構成を具えることを特徴する超電導ケーブル。
(1)導体層および磁気遮蔽層のうち、少なくとも1層の巻きピッチが他層とは異なる。
(2)テープ状超電導多芯線はマトリックス中に超電導フィラメントが埋め込まれた構成で、このフィラメントは螺旋状にツイストが施されている。
(3)芯材は絶縁された素線を撚り合わせて構成されている。 - 超電導フィラメントの外周に高抵抗バリア層が配されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブル。
- テープ状超電導多芯線の厚さが0.15mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の超電導ケーブル。
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