JP4423491B2 - 粘土系充填材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、粘土系充填材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
粘土系充填材料は、特に土木建築分野において、開削・非開削を問わず、地下構造物を構築する際に地山と鋼材等との間に生じる隙間に充填する用途に用いられている。
【0003】
上記の用途では、粘土系充填材料には、施工容易な程度の流動性が要求されるとともに、施工後の充填材料の強度として、後続施工における鋼材推進の支障とならない程度、即ち周囲の地山と同程度の強度が求められる。
【0004】
具体的には、粘土系充填材料の流動性としては、内径8cm・高さ8cmのシリンダーに粘土系充填材料を入れ、引き抜き後、充填材料の底面の直径が150mm以上であることが求められる。この流動性(フロー値)測定方法は、日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHSA 313−1992)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠している。
【0005】
また、施工後の充填材料の強度としては、充填材料からφ5×10cmの供試体を作製し、材齢1日後脱型し、ラップに包み20℃恒温室養生した際の28日後の一軸圧縮強度が50〜200kN/m2の範囲内であることが求められる。この一軸圧縮試験は、地盤工学会基準「一軸圧縮試験(JIS A1216)」に準拠している。
【0006】
従来、粘土系充填材料としては、粘土系主材にセメント及び水を混合してなる材料が知られている。そして粘土系充填材料が材料分離を生じない範囲で上記所定の流動性及び施工後の強度を発揮するためには、多量の粘土系主材が必要とされている。しかし、多量の粘土系主材を用いることは、充填材料がコスト高となり好ましくない。従って、所定の流動性及び施工後の強度を発揮することを前提として、粘土系主材の使用量を低減することが望まれている。
【0007】
粘土系主材を低減する方法としては、ベントナイト等の膨潤力を有する粘土系主材を用いることが考えられる。この場合には、膨潤力を利用することにより材料分離を抑制できるため、主材の使用量を低減できる。しかし、粘土系主材の膨潤性を利用して主材の使用量を低減することを重視すると、流動性及び施工後の強度が所定範囲となるものが得られたとしても、固形分濃度が極端に小さいものとなる。このような材料は水の逸失による地盤沈下等の発生が懸念されるため、地盤の充填には好ましくない。
【0008】
なお、膨潤力を有する粘土系主材を含む材料として、例えば、特許文献1にはセメントミルクと膨潤力5〜15ml/2gのベントナイトを使用したベントナイトミルクとを撹拌混合して形成される可塑性注入材が開示されている。但し、特許文献1は可塑性注入材を開示するものであり、流動性を有する充填材料を開示するものではない。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−303052号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、地盤への充填に適した固形分濃度を確保しつつ、従来品よりも粘土系主材の使用量が低減されており、しかも良好な流動性及び施工後の強度を発揮する粘土系充填材料を提供することを主な目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、粘土系主材として特定の膨潤力を有するベントナイト系粘土を用いて、かつ構成成分の配合割合を特定範囲に制御してなる材料が上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の粘土系充填材料に係る。
1.膨潤力が7〜25ml/2gであるベントナイト系粘土、セメント、消石灰及び水を含む粘土系充填材料であって、
(1)粘土に対するセメントの重量比が0.05〜0.5であり、
(2)粘土とセメントの合算重量に対する水の重量比が1.8〜5.5であり、
(3)粘土系充填材料中のNaに対するCaの重量比が5.5以上15以下
であることを特徴とする粘土系充填材料(但し、前記消石灰の添加量が、15kg/m 以上である場合を除く)
【0013】
【発明の実施の形態】
粘土系充填材料
本発明の粘土系充填材料は、膨潤力が7〜25ml/2gであるベントナイト系粘土、セメント及び水を含み、
(1)粘土に対するセメントの重量比が0.05〜0.5であり、
(2)粘土とセメントの合算重量に対する水の重量比が1.8〜5.5であり、
(3)粘土系充填材料中のNaに対するCaの重量比が5.5以上
であることを特徴とする。
【0014】
ベントナイト系粘土としては、膨潤力が7〜25ml/2gであれば特に限定されないが、その中でも、13〜25ml/2gのものが好ましく、16〜25ml/2gのものがより好ましい。このようなベントナイト系粘土としては、ベントナイトを好適に使用できる。所定の膨潤力を発揮する限りにおいて、ベントナイトと他の粘土鉱物との混合物を用いてもよい。
【0015】
ここで、ベントナイト系粘土の膨潤力は、日本ベントナイト工業会試験法(JBAS−104)に規定されるベントナイト膨潤力試験法に準拠して求めたものであり、蒸留水又は純水中にベントナイト系粘土を徐々に落としたときの水中で示す見掛け容積で表示されるものである。具体的には、純水又は蒸留水100ml中にベントナイト系粘土試料2gを落とし、落下後24時間放置して容器内に堆積した試料の見掛け容積を読み取るものである。従って、膨潤力の単位は、ml/2gである。
【0016】
セメントとしては特に限定されず、従来、充填材料の成分として知られているものが好適に使用できる。例えば、普通、早強、超早強、白色、耐硫酸塩、中庸熱、低熱等の各種ポルトランドセメント;ポルトランドセメントの少なくとも1種と、高炉スラグ及びフライアッシュの少なくとも1種とを混合した混合セメント;ジェットセメント、アルミナセメント等の特殊セメント;並びにセメント系固化材等が挙げられる。
【0017】
粘土に対するセメントの重量比は0.05〜0.5であればよいが、その中でも0.1〜0.4程度が好ましく、0.1〜0.3程度がより好ましい。
【0018】
水としては、水道水が使用できる。粘土とセメントの合算重量に対する水の重量比は1.8〜5.5であればよいが、その中でも2〜4程度が好ましく、3〜4程度がより好ましい。
【0019】
粘土系充填材料中のNa成分に対するCa成分の重量比は、その値が高くなるほど流動性が向上し、Naに対するCaの重量比が5.5以上であればよい。当該Naに対するCaの重量比(Ca/Na)は、例えば、粘土系充填材料を焼成後、含まれるNa酸化物及びCa酸化物からNaとCaの量を換算し、その重量比を求めることにより算出できる。重量比の上限としては特に限定されないが、7程度を超える値としても、それ以上の流動性の向上は期待できず、通常15程度である。
【0020】
粘土系充填材料では、Na成分は主にベントナイト系粘土に含まれているが、ベントナイト系粘土は、原鉱採取地、膨潤性の改質工程等の違いから、ロット間においてNa成分の含有率が異なる。ここで、粘土系充填材料中のNaに対するCaの重量比が5.5未満の場合には、ベントナイト系粘土の膨潤力が大きくなりすぎて良好な流動性が得られない場合がある。
【0021】
従って、本発明の粘土系充填材料では、Na成分及びCa成分の含有割合を、Ca及びNaの重量比がCa/Na≧5.5となるように規定している。重量比の調整には、必要に応じて、Ca含量調整材を使用できる。Ca含量調整材は、Caを含む材料であって、充填材料の要求性能に悪影響を与えないものであればよい。例えば、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム等が使用できる。工業的には、水酸化カルシウム源として消石灰が好適に使用される。
【0022】
このような特徴を有する本発明の粘土系充填材料は、施工容易な流動性を有するとともに、施工後の強度が後続施工において鋼材推進の支障とならない程度、即ち一般的な周囲の地山と同程度である。
【0023】
具体的には、流動性としては、日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHSA 313−1992)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠して、内径8cm・高さ8cmのシリンダーに粘土系充填材料を入れ、引き抜き後、充填材料の底面直径を測定した結果が150mm以上である。流動性が上記範囲であれば、施工が容易である。フロー値の上限は特に限定されず、材料分離が生じない範囲内で適宜設定できる。
【0024】
施工後の充填材料の強度としては、地盤工学会基準「一軸圧縮試験(JIS A1216)」に準拠して、充填材料からφ5×10cmの供試体を作製し、材齢1日後脱型し、ラップに包み20℃恒温室養生した際の28日後の一軸圧縮強度を測定した結果が50〜200kN/m2の範囲内である。施工後の強度が上記範囲であれば、一般的な周囲の地山の強度と同程度であり、後続施工において鋼材推進の支障とならない。
【0025】
粘土系充填材料の製造方法
粘土系充填材料の製造方法としては特に限定されず、膨潤力が7〜25ml/2gであるベントナイト系粘土、セメント及び水を含み、所定の(1)〜(3)の条件を満たすものが得られる製造方法であればよい。
【0026】
その中でも、膨潤力が7〜25ml/2gであるベントナイト系粘土、セメント及び水を含み、
(1)粘土に対するセメントの重量比が0.05〜0.5であり、
(2)粘土とセメントの合算重量に対する水の重量比が1.8〜5.5であり、
(3)粘土系充填材料中のNaに対するCaの重量比が5.5以上
である粘土系充填材料の製造方法であって、セメント単独又はセメントとCa含量調整材との混合物に水を混合後、膨潤力7〜25ml/2gであるベントナイト系粘土を混合する製造方法(本発明製造方法)が好適である。以下、本製造方法について説明する。
【0027】
本製造方法では、粘土系充填材料、セメント及び水としては、前記説明したものが使用できる。これらの配合割合としては、上記(1)及び(2)の条件を満たす範囲内で、施工態様も考慮して、適宜設定できる。
【0028】
本製造方法では、先ずセメント単独又はセメントとCa含量調整材との混合物に水を混合する。Ca含量調整材は、粘土系充填材料中のNa成分とCa成分との含有割合が、上記(3)の条件を満たすように、必要に応じて用いる。Ca含量調整材としては、前記説明したものが使用できる。
【0029】
次いで、膨潤力7〜25ml/2gであるベントナイト系粘土を混合する。このように、先にセメントミルクを調製して、セメント(又はCa含量調整材との混合物)由来のCa成分をセメントミルク中に溶出しておくことにより、後に加えるベントナイト系粘土に含まれるモンモリロナイトがカルシウムイオンと十分に交換反応できるため膨潤性を抑制できる。これにより、粘土系充填材料の固形分濃度を適性範囲に制御し、併せて流動性・施工後の強度も適性範囲に制御することが可能となる。
【0030】
これに対し、先にベントナイト系粘土と水とを混合する場合には、ベントナイト系粘土が過度に膨潤することにより、充填材料の要求性能(材料分離抵抗性)を確保するために必要な粘土量が極端に少量となる。従って、固形分濃度が小さくなりすぎて水の逸失により地盤沈下等の発生が懸念される。
【0031】
【発明の効果】
本発明の粘土系充填材料は、特定の膨潤力を有するベントナイト系粘土を主材に用いて、かつ構成成分の配合割合を特定範囲に制御することにより、ベントナイト系粘土以外の粘土を主材とした従来品よりも粘土系主材の使用量が低減されており、しかも良好な流動性及び施工後の強度を発揮する。
【0032】
本発明の粘土系充填材料の製造方法は、構成成分の配合順序を特定順序とするため、従来品よりも粘土系主材の使用量が低減された、しかも良好な流動性及び施工後の強度を発揮する粘土系充填材料の製造に適している。
【0033】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び参考例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0034】
実施例1〜7、比較例1〜5及び参考例1〜2
下記表1に示した配合割合及び添加順序に従って、14種類の粘土系充填材料サンプルを調製した。表1における「前添加」は、主材と水とを混合後、セメント単独又はセメントと消石灰との混合物を加えて混合する順序である。また「後添加」は、セメント単独又はセメントと消石灰との混合物に水を混合後、主材を加えて混合する順序である。
【0035】
主材のベントナイトとしては、赤城産ベントナイトを用いた。ロットAの膨潤力は、14ml/2gであった。またロットBの膨潤力は、18ml/2gであった。
【0036】
主材の乾燥粘土としては、ベントナイト系粘土以外の乾燥粘土(商品名「スミクレー」、栃木県産、住友大阪セメント株式会社製)を用いた。
【0037】
セメントとしては、普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)を用いた。
【0038】
フロー値は、前記説明した日本道路公団規格「エアモルタル及びエアミルクの試験方法(JHSA 313−1992)」のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠して測定した値である。
【0039】
強度は、前記説明した地盤工学会基準「一軸圧縮試験(JIS A1216)」に準拠して測定した一軸圧縮強度である。
【0040】
【表1】
Figure 0004423491
【0041】
主材、セメント及び水の量を所定範囲とし、かつCa/Na重量比を5.5以上に制御した実施例1〜7では、充填材料のフロー値及び強度はともに良好な値である。これに対し、Ca/Na重量比が5.5未満の比較例1〜3では、充填材料のフロー値が小さく、流動性が劣ることが分かる。主材に対するセメント配合量が多い比較例4及び5では、充填材料の強度が過度に高く、地盤への充填に不適であることが分かる。参考例1では、充填材料のフロー値及び強度は好適な範囲であるが、主材としてベントナイト系粘土以外の乾燥粘土を用いるため、主材使用量が過度に多く、コスト的に不利であることが分かる。主材であるベントナイトを前添加する参考例2では、ベントナイトの膨潤性が高く、固形分量が少なくなるため、後添加の方が好ましいことが分かる。

Claims (1)

  1. 膨潤力が7〜25ml/2gであるベントナイト系粘土、セメント、消石灰及び水を含む粘土系充填材料であって、
    (1)粘土に対するセメントの重量比が0.05〜0.5であり、
    (2)粘土とセメントの合算重量に対する水の重量比が1.8〜5.5であり、
    (3)粘土系充填材料中のNaに対するCaの重量比が5.5以上15以下
    であることを特徴とする粘土系充填材料(但し、前記消石灰の添加量が、15kg/m 以上である場合を除く)
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