JP4423390B2 - 斜面保護擁壁の施工法 - Google Patents

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Description

この発明は、斜面保護擁壁の施工法に係り、地山等の斜面に保護擁壁を築造する技術に関する。
一般に、地山などの斜面に対して保護擁壁を築造する場合、重力式、逆T型、L型、モタレ式といった工法が採用されているが、これらは、既存の斜面を急斜面に切土する必要があるので、その切土後の状態から保護擁壁を築造するまでの間、斜面崩壊の危険性が高い状態となってしまう。このようなことから、特に急傾斜地となる場合には対策工事としての指針が出されているのが現状である。
そこで、従来より、斜面崩壊の危険性を回避できるようにするため、例えば、地山斜面の上部のみを最初切土したとき、そこにアンカーピン等でプレキャスト板を並列状態に仮止めしてしておき、次いで、各プレキャスト板の取付孔から装着面側に削孔し、該削孔部に取付孔から鉄筋等の棒状の補強材を挿入した後、モルタルを注入すると共に、切土面とプレキャスト板の裏側間隙にモルタルを注入する一方、取付孔から突出している補強材の端部に螺着されたナットを固着する作業を、斜面上部から下方に至るに従い段階的に切土される度に順次行うことで保護擁壁を形成する、いわゆる逆巻き工法が採用されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開平06−57756号公報(第2−3頁、図1−図11) 特開平11−61840号公報(第2−3頁、図1−図8)
このように、逆巻き工法を用いると、斜面を一度に切土することが不要になるので、斜面崩壊の危険性を回避することができる。
しかしながら、上記従来の逆巻き工法においては、プレキャスト板を仮止めした後、その取付孔から補強材を挿入するために切土法面を削孔し、その削孔した孔にプレキャスト板及び補強材をモルタルなどで固着するので、これらの補強作業を斜面の上端から下まで順次行うと、プレキャスト板を取り付けるのにかなりの工数を要し、またモルタルの定着養生を段階的に行わなければならないことから工期が長くなる。その上、補強材を設置する専用重機が必要となる結果、上述した擁壁工法に比べてコストの高騰を招くという問題があった。
この問題を解決するため、既存の斜面から一度に急斜面を形成する重力式、逆T型、L型、モタレ式といった施工法を行わなければならないが、これらの施工法では、斜面崩壊の危険性があり、短い工期でかつ安価にできる施工法が望まれていた。
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、保護擁壁を築造するに際して斜面を切土する場合、斜面崩壊に対する安全性を高めることができるのは勿論、短工期で低廉化を図ることができる斜面保護擁壁の施工法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、地山等の斜面に保護擁壁を築造する斜面保護擁壁の施工法であって、A.斜面に対し、側面視において略鉛直方向に沿い法尻部に達する三角状溝を幅方向に間欠的にそれぞれ掘削し、B.前記それぞれの三角状溝の奥部に、予定法面の高さまで延在する親杭を各々立設し、C.斜面において前記親杭の上端部側を幅方向に切土して、前記各親杭の上端部間に一段目の矢板を幅方向に介装した後、D.斜面における前記一段目の矢板の下部側を切土すると共に、該切土面に前記一段目の矢板を前記各親杭に沿って落とし込み、E、次いで、前記各親杭の上端部間に新たな矢板を幅方向に介装して、該矢板を前記一段目の矢板に当接させ、F.以下、上記Dと上記Eとを、前記一段目の矢板が法尻部に達するまで繰り返して、前記各矢板で斜面の保護擁壁を築造することを特徴とする。
これにより、斜面に設けられた三角状溝に親杭を幅方向に沿ってそれぞれ打設し、次いで、それぞれの親杭の上端部間に一段目の矢板を介装させ、その矢板の下部を該矢板の分だけ切土することで、矢板をその高さ分落とし込んだ後、親杭の上端部間に新たな矢板を介装することを繰り返すことで、切土面をカバーする矢板によって山留め躯体としての保護擁壁を築造することができる。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の斜面保護擁壁の施工法において、前記矢板は、プレキャストコンクリート板又は木材からなることを特徴とする。
これにより、矢板を隣り合う親杭間に差し込むだけで介装できるので、矢板の取り付けを簡単に行うことができる。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の斜面保護擁壁の施工法において、前記親杭は、略三角状溝の奥部に立設される主柱部と、これに交差方向に設けられたベース部とを有し、前記主柱部の中途部に前記ベース部が設けられることにより略T字状をなして形成されていることを特徴とする。
これにより、三角状溝の奥部に親杭の主柱部を確実に立設できると共に、ベース部を法尻部に設置するので、安定した状態で親杭を立設させておくことができる。
請求項1に係る発明によれば、斜面に幅方向に掘削された三角状溝に打設される親杭と、各親杭間に介装される矢板によって山留め躯体としての保護擁壁を築造するように構成したので、保護擁壁を簡単に築造することができる結果、斜面崩壊に対する安全性を高めることができるのは勿論、短工期で低廉化を図ることができる効果が得られる。
請求項2に係る発明によれば、矢板の取り付けを簡単に行うことができるという効果が得られる。
請求項3に係る発明によれば、安定した状態で親杭を立設させておくことができるという効果が得られる。
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。図1及び図2はこの発明の一実施の形態に係る斜面保護擁壁の施工法を示す図であって、図1は親杭間に一段目の横矢板を介装した状態を示す説明用斜視図、図2は親杭を示す斜視図である。
この実施の形態の施工法は、図1に示すように、複数の親杭1と、これら各親杭1間に介装される横矢板5とを用いることで行われる。
親杭1は、例えばH形鋼からなっており、図2に示すように、主柱部2とこれに交差方向に延在して設けられたベース部3とを有して略T字状に形成されている。図2において、符号4は方杖である。
横矢板5は、適宜の長さを有する平板であって、例えばプレキャストコンクリート板若しくは木材からなっており、H形鋼に嵌め込むことができる程度の厚みをなしている。これら複数の親杭1と、複数の横矢板5とを用いることで、山留め躯体としての保護擁壁が築造されるようになっている。
次に、この実施形態の施工法について、図1、及び図3〜図8を用いて以下に説明する。
まず、地山等の斜面10に対し、図3に示すように、三角状溝11を幅方向に沿って間欠的にそれぞれ掘削する。この三角状溝11は、図4に示すように、側面視において略鉛直方向から法尻部に達する形状をなしており、例えばバックホーなどで掘削される。
次いで、図5に示すように、それぞれの三角状溝11に親杭1を各々打設する。この場合、親杭1の主柱部2を三角状溝11の奥部に当接させながら打ち込むと共に、ベース部3が法尻部の位置に突き当たるように行うことで、主柱部2を予定法面の頂部まで延在させる。
このようにして親杭1をそれぞれの三角状溝11に各々打設した後、斜面10において図6に示すように、親杭1の上端部側の部分を幅方向にそれぞれ切土して切土面12を施すと共に、該それぞれの切土面12において、図1に示すように、各親杭1の上端部間に横矢板5を幅方向にそれぞれ介装する。この場合、隣り合う親杭1の上端部間に横矢板5を差し込むことで、横矢板5を介装することができる。以下は、説明の便宜上、この最初の横矢板5を「一段目の横矢板5A」と称す。
その後、図示していないが、斜面10において、上記一段目の横矢板5Aの下部を、その横矢板5Aに相当する部分だけ切土することにより、一段目の横矢板5を各親杭1に沿って新たな切土面に落とし込む(図7参照)。
次に、各親杭1の上端部間に、図7に示すように、新たな横矢板5を幅方向に介装することにより、新たな横矢板5を一段目の横矢板5Aに当接させる。この場合も、隣り合う親杭1の上端部間に横矢板5を差し込むことで、横矢板5を介装することができる。
以下、斜面11において、一段目の横矢板5Aの下部を切土すると共に、該切土面に一段目の横矢板5Aを更に落とし込むことと、新たな横矢板5を親杭1の上端部間に介装することとを、一段目の横矢板5Aが法尻部に達するまで繰り返すことで、図8に示すように、全ての横矢板5、5Aにより斜面の保護擁壁20が仮設的に築造されることとなる。
その後、法尻部となる親杭1の下部に埋戻土13を施すことで、親杭1を安定した状態に立設させておくことができ、また外観上の美麗性を保つことができる。
この実施形態の施工法は、上述したように、斜面10に設けられた三角状溝11に親杭1を幅方向に沿ってそれぞれ打設し、次いで、それぞれの親杭1の上端部間に一段目の横矢板5Aを介装させ、その横矢板5Aの下部を該横矢板5Aの分だけ切土することで、横矢板5Aをその高さ分落とし込んだ後、親杭1の上端部間に新たな横矢板5を介装することを繰り返すことで、切土面をカバーする横矢板5A、5によって山留め躯体としての保護擁壁20を築造するので、保護擁壁20を簡単に築造することができる。
従って、この施工法によれば、斜面10に保護擁壁20を施工するとき、予定法面の上端部から法尻部に至るに従い切土を順に行うと共に、その切土面12を形成する度に横矢板5A、5、5…を順次敷設するので、重力式やモタレ式などによって擁壁を築造する場合と異なり、斜面を一度に切土することがなくなる結果、切土後から保護擁壁20を築造するまでの間に斜面崩壊を招くという危険を回避することができ、施工時の安全性を高めることができる。
また、斜面10の切土面12が上方から下方に順次切土される度に、その切土面12が横矢板5A、5によって上方から下方に順次カバーされるので、上方から下方にかけてプレキャスト板や補強部材をその都度硬化させる従来の逆巻き施工法と比較すると、工期を確実に大幅に短縮させることができると共に、それに伴い大幅な低廉化を図ることができる。しかも、従来のように補強部材等を設置する専用重機も不要となり、また施工工程の繰り返しが少ないため、より工期の短縮化を図ることが可能となる。
更に、仮設土留め工法を利用して足場を組むことが容易となるばかりでなく、作業床を確保できるので、作業者の墜落災害の防止もいっそう期待することができる。その結果、短工期と低廉化とを実現できる施工法を提供することができる。
加えて、以下の効果も奏することができる。
即ち、親杭1は、三角状溝11の奥部に立設される主柱部2と、これに交差方向に設けられたベース部3とを有する略T字状をなして形成され、三角状溝11の奥部に主柱部2を確実に立設できると共に、ベース部3を法尻部に設置するので、安定した状態で立設させておくことができる。また、横矢板5A、5は、プレキャストコンクリート板又は木材からなっていて、隣り合う親杭1間に差し込むだけで介装できるので、横矢板5A、5の取り付けを簡単に行うことができる。
更に、親杭1の下部に埋戻土13を施すことで、親杭1を安定した状態に立設させておくことができ、また外観上の美麗性を保つことができる。
なお、上記実施の形態において、親杭1の下部側に埋戻土13が施された例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示すように、親杭1の下部まで横矢板5Aを設けることで、横矢板5Aを法面の法尻部まで敷設するようにすることもできる。この場合、親杭1の主柱部2の長さをより長く形成しておき、その下部を地中深く打設することにより、土圧に抵抗するようにしてもよい。勿論、この場合も、ベース部3を覆うように埋戻土13を施してもよく、従って、上記実施形態に限定されるものではない。
また、法面が鉛直方向をなす場合を示したが、傾斜する法面にも適用することができる。この場合、親杭1の主柱部2とベース部3間の角度をその傾斜角度に対応させて構成するのは勿論である。
更に、上記実施の形態では、親杭1は、主柱部2とこれに交差方向に延在して設けられたベース部3とを有して略T字状に形成されているものを使用したが、図10に示すように、主柱部2とこれを斜めに支持するように設けられた方杖部3aとから構成されていてもよい。
本発明に係る斜面保護擁壁の施工法では、仮設的な保護擁壁の前面に本設の保護擁壁を築造する場合、本設の保護擁壁築造後に仮設的な保護擁壁を撤去してもよいが、撤去せずにそのまま埋め殺してもよい。図11は仮設的な保護擁壁を埋め殺す場合の施工法を示す縦断面図である。
先ず、複数の横矢板5からなる仮設的な保護擁壁20を切土面上に築造する(図11(a)参照)。次いで、仮設的な保護擁壁20に密接するように本設の保護擁壁30を築造する(図11(b)参照)。その際、方杖部3aが必要なくなる高さまで、本設の保護擁壁30が築造された段階で、方杖部3aは撤去する(図11(c)参照)。この施工法によれば、仮設的な保護擁壁20を埋め殺すので、工期を短縮することができる。
上記の実施形態では三角状溝を使った斜面保護擁壁の施工法について説明したが、次に、三角状溝を使わない斜面保護擁壁の施工法について、図12及び図13に基づき説明する。本施工法では、最終的に、親杭を埋め殺してモタレ式擁壁を築造してもよいし、親杭の前面に重力式擁壁を築造した後、親杭を撤去し空いた空間を埋め戻してもよい。
先ず、斜面40の上部40aを切土して斜面中間部40bになだらかな傾斜地を形成し、H形鋼からなる親杭31を水平方向に所定の離間間隔をおいて斜面中間部40bに打設する(図12および図13の(a)、(b)参照)。
親杭31を打設する方法としては、建柱車(図示省略)と呼ばれるブームの先端にアースオーガーを有する機械などを用いて斜面40を穿孔し、斜面40に形成された孔に親杭31を埋め込めばよい。この際、親杭31の先端部31aは地盤中に十分な深さまで根入れし、親杭31に作用する土圧に抵抗できるように留意する。
次いで、親杭31、31間に横矢板(図示省略)を介装しながら、親杭31の前面にある斜面40cを下方に向かって法尻部まで切土する(図12(c)参照)。
その後、親杭31の前面から斜面40の上部40aにかけて、コンクリートからなるモタレ式擁壁32を築造する(図12(d)参照)。
一方、最終的に親杭31を撤去する場合は、親杭31の前面にある斜面40cを法尻部まで切土した後(図13(c)参照)、所定の間隙34を空けて親杭31の前面にコンクリートからなる重力式擁壁33を築造する(図13(d)参照)。
その後、親杭31を撤去し、間隙34を埋め戻せばよい(図13(e)参照)。
なお、斜面40がある程度堅く締まっている場合には、親杭31を水平方向に密に打設し、親杭31、31間に介装する横矢板を省略してもよい。また、親杭31に代えて、鋼矢板(図示省略)を斜面40に水平方向に連続して打設してもよく、これにより、親杭31、31間に横矢板を介装する作業を省略することができ、より短工期で安全に保護擁壁を築造することができる。
この発明の一実施の形態に係る斜面保護擁壁の施工法を示す図であって、親杭間に一段目の横矢板を介装した状態を示す説明用斜視図である。 親杭を示す斜視図である。 地山の斜面に三角状溝を掘削した状態を示す説明図である。 図3における三角状溝を側面から見た縦断面図である。 三角状溝に親杭を打設した状態を示す説明用斜視図である。 斜面において親杭の上端部側を切土した状態を示す説明用斜視図である。 親杭間に新たな横矢板を介装した状態を示す説明用斜視図である。 親杭間に横矢板を全て介装し、保護擁壁を築造した状態を示す説明図である。 親杭間の下部に渡り横矢板を介装して保護擁壁を築造した状態を示す説明用縦断面図である。 他の親杭を示す斜視図である。 仮設的な保護擁壁を埋め殺す場合の施工法を示す縦断面図である。 本発明に係る斜面保護擁壁の施工法の他の実施形態を示す縦断面図である。 本発明に係る斜面保護擁壁の施工法の他の実施形態を示す縦断面図である。
符号の説明
1、31 親杭
2 主柱部
3 ベース部
5、5A 横矢板(矢板)
10、40 地山の斜面
11 三角状溝
12 切土面
13 埋戻土
20、30 保護擁壁
32 モタレ式擁壁(保護擁壁)
33 重力式擁壁(保護擁壁)

Claims (3)

  1. 地山等の斜面に保護擁壁を築造する斜面保護擁壁の施工法であって、
    A.斜面に対し、側面視において略鉛直方向に沿い法尻部に達する三角状溝を幅方向に間欠的にそれぞれ掘削し、
    B.前記それぞれの三角状溝の奥部に、予定法面の高さまで延在する親杭を各々立設し、
    C.斜面において前記親杭の上端部側を幅方向に切土して、前記各親杭の上端部間に一段目の矢板を幅方向に介装した後、
    D.斜面における前記一段目の矢板の下部側を切土すると共に、該切土面に前記一段目の矢板を前記各親杭に沿って落とし込み、
    E、次いで、前記各親杭の上端部間に新たな矢板を幅方向に介装して、該矢板を前記一段目の矢板に当接させ、
    F.以下、上記Dと上記Eとを、前記一段目の矢板が法尻部に達するまで繰り返して、前記各矢板で斜面の保護擁壁を築造することを特徴とする斜面保護擁壁の施工法。
  2. 請求項1記載の斜面保護擁壁の施工法において、
    前記矢板は、プレキャストコンクリート板又は木材からなることを特徴とする斜面保護擁壁の施工法。
  3. 請求項1又は2記載の斜面保護擁壁の施工法において、
    前記親杭は、略三角状溝の奥部に立設される主柱部と、これに交差方向に設けられたベース部とを有し、前記主柱部の中途部に前記ベース部が設けられることにより略T字状をなして形成されていることを特徴とする斜面保護擁壁の施工法。
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