JP4421027B2 - 推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置、計測方法、推進軌跡管理装置及び推進軌跡管理方法 - Google Patents

推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置、計測方法、推進軌跡管理装置及び推進軌跡管理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置等に関する。
【0002】
【従来の技術】
地中に上下水道管等を敷設する場合、掘進機によって地中を掘削しながら上記掘進機に接続した埋設管を推し進めて敷設する推進シールド工法が採用されることが多い。上記推進シールド工法において、埋設管を計画位置に正確に埋設するには、地中を掘削する掘進機の推進軌跡及び推進姿勢を管理する必要がある。
【0003】
特に、人が直接推進軌跡や推進姿勢を計測できない小径の管路を敷設する場合、掘進機の推進軌跡及び推進姿勢をリアルタイムに把握できないと、計画した経路に沿って管路を設けることができない。
【0004】
上記問題を解決するために、たとえば、特開平8338721号公報に記載されているもののように、シールド掘進機の後方に接続した複数の誘導管に、各誘導管の間の折れ角を検出するストロークセンサと、掘進機の推進高さを検出する液圧差検出システムと、掘進機のローリング及びピッチングを検出する傾斜計と、掘進機の起点からの累積推進距離を検出する距離計と、上記各センサ等で検出された出力から掘進機の姿勢を演算するコンピュータシステムとを備えて構成される掘進機の姿勢計測装置が提案されている。
【0005】
上記姿勢計測装置からの計測結果に基づいて、掘進機の姿勢を制御し、計画した推進軌跡に沿うように管路を敷設する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報に記載されている姿勢計測装置においては、掘進機の姿勢を計測することにより掘進機の方向制御を行うが、推進軌跡の全体を把握して掘進機の制御を行うことができない。また、掘進機に接続された各シールド管の位置、姿勢等をリアルタイムに把握することも困難である。このため、掘進機を的確に制御して操作を行うことができない。
【0007】
また、計画軌跡に対するずれ(偏位量)を定量的に把握できないため、ずれに対する修正動作を掘進機に的確に指示することも困難である。
【0008】
さらに、掘進機の姿勢は、掘進機自体に設けたセンサのみによって計測が行われる。ところが、上記掘進機には推進にともなう大きな振動が生じているばかりでなく、推進力の作用の仕方によっては、掘進機自体が進行方向に向かって傾斜した状態で推進作業が行われている場合も考えられる。このため、掘進機に設けたセンサ出力から得られる推進姿勢情報のみから掘進機を制御すると、精度の高い推進軌跡を形成することができない。
【0009】
本願発明は、上述の事情のもとで考え出されたものであって、上記従来の問題を解決し、シールド掘進機の推進軌跡の全体を把握しつつ推進作業を行うことができるとともに、シールド掘進機の姿勢を精度高く計測し、掘進機の制御操作を行うことができる、推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置、計測方法、掘進機の軌跡管理装置及び軌跡管理方法を提供することをその課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記改題を解決するため、本願発明では次の技術的手段を講じている。
【0011】
本願の請求項1に記載した発明は、シールド掘進機の後方にシールド管を接続して、掘削しながら管路を敷設する推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置であって、上記シールド掘進機に設けられ、推進にともなって変化する3次元の角度変位を測定できる角度センサと、上記掘進機の推進起点からの推進距離を測定する距離センサと、上記シールド掘進機と上記シールド管列との間に設けられ、上記角度センサをそれぞれ備える1又は2以上の計測管と、上記シールド掘進機のセンサ出力及び上記計測管からのセンサ出力によって、上記推進軌跡及び上記推進姿勢を求める演算手段を設けた演算装置と、上記演算装置から出力される推進軌跡情報及び推進姿勢情報を表示し及び/又は出力する装置とを備えて構成される。
【0012】
上記推進シールド工法の具体的手法は特に限定されることはなく、先端部に掘進機を設けてこれにシールド管を接続し、上記シールド管列の最後尾を押圧しながら地中等に配管を敷設する工法に広く適用できる。
【0013】
上記角度センサは、3次元の回転角度変位を検出できるものであればよく、種々の方式の角度センサを採用できる。たとえば、変位量を電気抵抗変化量に変換する一般的なポテンショメータを採用できる。また、ステータに直交する2組のコイルを設けるとともにロータに巻かれた1組のコイルに交流信号を励磁させ、上記2組のコイルに軸角度θをパラメータとした2つの誘起出力信号を発生させ、RD変換器でデジタル信号を出力するように構成したレゾルバ形式の角度センサ等を採用できる。
【0014】
また、各方向に対する計測手法も特に限定されることはなく、たとえば、水平面に沿う2軸及び鉛直軸の直交する3軸に対する角度変位をそれぞれ計測する複数の角度センサを組み合わせたものを採用できる。
【0015】
上記距離センサは、基準点から推進させた掘進機の累積長さを測定できるものあればよく、一般的な距離計を採用できる。たとえば、ロータリーエンコーダ等を利用して、距離変位を回転変位に変換して計測することもできる。
【0016】
推進シールド工法においては、先端部の上記掘進機が土中を掘削しながら、計画された軌跡にできるだけ沿うように推進作業が行われる。ところが、掘進機には振動や衝撃が作用しやすく、その姿勢が不安定になりやすい。このため、掘進機に設けたセンサからの出力のみで掘進機を制御操作すると、精度の高い推進軌跡を形成することが困難な場合がある。
【0017】
本願発明では、上記掘進機に計測管を接続し、上記計測管にも角度センサを設けて推進軌跡を求めることができるように構成している。
【0018】
上記計測管の数は特に限定されることはなく、掘進機の後に1の計測管を接続してもよいし、高い精度が要求される場合には推進軌跡の全範囲に対応する計測管を接続してもよい。上記計測管は、上記掘進機に続いて推進軌跡を通過するとともに、振動等が少なくまた姿勢も安定しているため、高い精度で推進軌跡を計測することができる。
【0019】
また、上記計測管からのセンサ出力に基づいて掘進機自体の位置及び姿勢を精度高く求めることができる。すなわち、後続の計測管の位置情報及び姿勢情報と掘進機の角度情報を組み合わせることにより、掘進機の姿勢を精度高く求めることができる。これにより、掘進機の制御操作の精度を向上させて、精度の高い推進軌跡を形成することが可能となる。しかも、推進作業を行う先端部分の推進軌跡及び推進姿勢を精度高く計測できるため、掘進作業に異常等が生じた場合にも、迅速に検出することができる。
【0020】
さらに、複数の計測管を基準にして求めた掘進機の姿勢情報を平均化することにより、掘進機の先端部分の位置及び掘進機の姿勢をこれまでにない精度で求めることもできる。
【0021】
さらにまた、複数の計測管を接続することにより、一部の計測管のセンサが故障した場合にも、他の計測管のセンサを用いて推進軌跡及び掘進機の姿勢を求めることが可能となり、不測の事態が生じるのを未然に防止し、作業を確実に行うことができる。
【0022】
上記演算装置は、推進にともなって変化する上記角度センサからの各角度変位に基づいて上記距離センサからの距離変位を積分することにより、推進軌跡を演算するように構成される。これにより、連続的に推進軌跡を演算することができる。
【0023】
一方、上記掘進機の前端部と後端部の位置を求めることにより、掘進機の姿勢、すなわち、掘進機の中心軸の方向が求まる。上記掘進機は一定の長さを備えるため、上記前後端部の位置は角度センサ設置位置の座標が求まれば容易に求めることができる。そして、上記掘進機の姿勢に基づいて、計画軌跡に近づくように掘進機の推進方向を制御することにより、推進作業が行われる。
【0024】
上記演算を行う上記演算装置の種類も限定されることはなく、汎用のコンピュータや専用の集積回路を採用することができる。これら演算装置に、上記演算を行う演算手段としてのプログラムを書き込んで上記の演算を行う。
【0025】
さらに、本願発明では、上記掘進機の制御操作を容易に行えるように、上記演算装置から出力される推進軌跡情報及び推進姿勢情報を表示し、出力する装置を備える。上記表示装置として、汎用コンピュータのディスプレイ装置を採用できる。また、上記出力装置として、プリンタ装置を採用できる。リアルタイムに計測を行うとともに、掘進機の制御操作を行うにはディスプレイ装置を採用するのが望ましい。
【0026】
上記推進軌跡情報として、上記計測結果から演算される推進軌跡や推進姿勢のみならず、計画された計画推進軌跡や計画姿勢をディスプレイ装置の画面に同時に表示することもできる。これにより、掘進機のそれまでに掘削した推進軌跡全体を考慮して、掘進機の制御操作を行うことが可能となる。
【0027】
本願の請求項2に記載した発明は、上記演算装置及び上記表示装置が、計画された計画推進軌跡又は/及び計画推進姿勢と、これら計画値に対する計測推進軌跡及び/又は計測推進姿勢のずれ(偏位量)を演算して表示するように構成されているものである。
【0028】
従来の計測装置は、実際の推進軌跡が計画された推進軌跡からどの程度ずれているかをリアルタイムに認識できず、掘進機の姿勢情報のみから掘進機の制御操作を行うことが多かった。このため、推進作業を精度高く管理することが困難であった。
【0029】
本願発明では、計画推進軌跡及び/又は計画推進姿勢をリアルタイムに認識しながら、掘進機の制御操作等を行えるため、精度の高い推進作業を行えるとともに、掘進機の制御操作が容易になる。
【0030】
本願の請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2のいずれかに記載した計測装置と、上記計測装置によって得られる情報に基づいて上記掘進機の制御操作情報を演算して出力し及び/又は表示する手段を備えて推進軌跡管理装置を構成したものである。
【0031】
従来の推進シールド工法においては、掘進機の操作を行う者が、掘進機の姿勢情報に基づいて掘進機が計画軌跡に近接するように、掘進機の制御操作を行っていた。また、上記制御操作も、掘進機の方向を変更するだけであり制御量等を指示することはなかった。このため、作業者の感に頼ることも多く、操作を行うのに熟練を要した。
【0032】
本願発明では、上記掘進機の制御操作情報を演算して出力し及び/又は表示する手段を設けているため、掘進機の操作が極めて容易になり、制御操作に熟練を要することもない。また、掘進機の操作を自動化することも可能となる。
【0033】
たとえば、請求項4に記載した発明のように、請求項2に記載したずれに対する補正操作を出力し及び/又は表示するように上記手段を構成することができる。これにより、作業者の感に頼ることなく、精度の高い推進作業を行うことができる。
【0034】
本願の請求項5から請求項8に係る発明は、上記請求項1から請求項4に記載した装置を用いて行われる推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測方法に係るものである。
【0035】
本願の請求項5に記載した発明は、シールド掘進機の後方にシールド管列を接続して、掘削しながら管路を敷設する推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測方法であって、上記シールド掘進機と上記シールド管列の間に1又は2以上の計測管を接続するとともに、シールド掘進機に設けた3次元角度センサからの角度出力と、上記掘進機の推進起点からの推進距離を出力する距離センサからの距離出力と、上記各計測管に設けた3次元角度センサからの角度出力とに基づいて、上記推進軌跡及び推進姿勢を求める、ものである。
【0036】
本願の請求項6に記載した発明は、上記計測方法によって得られる上記推進軌跡及び上記推進姿勢の計画推進軌跡及び計画推進姿勢に対するずれを演算して表示する計測方法に関する。
【0037】
本願の請求項7に記載した発明は、上記シールド掘進機の後方に位置する計測管から得られる位置情報及び姿勢情報を基準として、上記シールド掘進機の位置及び姿勢を演算して求めるものである。
【0038】
計測管の位置及び姿勢を基準にして掘進機の位置及び姿勢を演算により求めることにより、計測精度が高まる。さらに、請求項8に記載した発明のように、上記シールド掘進機の位置及び姿勢を、複数の計測管の位置情報及び姿勢情報から求めることができる。
【0039】
複数の計測管を基準にして掘進機の位置及び姿勢を求める方法として、たとえば、複数の演算結果を平均化することができる。また、各計測管で取得した角度情報を平均化した上で、掘進機の位置及び姿勢を演算してもよい。
【0040】
上記方法を採用することにより、従来にない精度で掘進機を制御操作することが可能となり、推進軌跡の精度も大幅に高まる。なお、上記基準となる計測管の数は特に限定されることはなく、要求される精度及び掘進機の特性等に応じて決定することができる。
【0041】
本願の請求項9に記載した発明は、請求項5から請求項8に記載した計測方法によって得られた計測情報に基づいて上記掘進機の推進方向を指示する制御情報を演算し、この制御情報を表示し及び/又は上記掘進機に出力して掘進機の制御を行う推進シールド工法における掘進機の軌跡管理方法に関する。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて具体的に説明する。
【0043】
図1に、本願発明に係る計測方法が適用される推進シールド工法に係る装置の全体構成を示す。
【0044】
地中Eには、シールド掘進機1を先頭にして、5本の計測管2,3,4,5,6が列状に接続され、さらに、上記計測管2,3,4,5,6の後にシールド管7,7……が接続される。上記シールド掘進機1及び上記シールド管7は、従来から使用されている種々の掘進機及びシールド管を採用することができる。
【0045】
上記掘進機1には、先端にモータ8によって駆動される掘削ヘッド9が設けられており、上記掘削ヘッド9によって掘削された土砂は、地表から注入パイプを介して注入される滑材と混合されて泥水となり、排泥管10及び泥水ポンプ11を介して外部に設けた泥水処理装置12に導かれて処理される。
【0046】
なお、符号13を付した装置は滑材注入装置である。また、符号14を付した装置は掘進機1、計測管及びシールド管を推進するための圧力を発生させる油圧ユニットである。また、符号15を付した装置は、泥水の量を測定する電磁流量計である。これら装置は、従来の推進シールド工法に用いられるものを採用することができる。
【0047】
本実施の形態では、上記シールド掘進機1及び計測管2,3,4,5,6の内部に、推進にともなって変化する水平方向推進角度及び上下方向角度を測定する角度センサS1 ,S2 ,S3 ,S4 ,S5 ,S6 を設置し、これらからの出力信号を配線Lを介して地表に設置した自動計測装置16に伝送できるように構成している。上記自動計測装置16は、上記各センサ出力から、上記推進軌跡及び上記推進姿勢を算出する演算装置及び上記演算装置から出力される推進軌跡情報及び推進姿勢情報を表示するディスプレイ装置とを備えて構成されている。
【0048】
上記掘進機1及び各計測管2,3,4,5,6に搭載される角度センサは、推進にともなって変化する3次元の角度変位(直交するX、Y、Z軸に対する角度変位)を測定できるように構成されており、通常3つの角度センサを組み合わせて構成される。
【0049】
上記各角度センサとして既知の種々のセンサを採用できる。本実施の形態では、ステータに直交する2組のコイルを設けるとともに、さらに同一のステータ上に1組の一次コイルを設置し、強磁性体のロータを2組のコイルに軸角度θをパラメータとした2つの誘起出力を発生させ、これら出力を変換してデジタル信号を出力する形式の角度センサを3つ組み合わせることにより、3次元の角度変位を測定できるように構成している。なお、詳細に説明はしないが、上記センサからの出力を座標変換によって、水平方向角度変位及び鉛直方向角度変位に変換して3次元の角度変位を得るように構成している。
【0050】
なお、採用されるセンサは、上記のものに限定されることはなく、角度変位量を電気抵抗値変化量に変換できるいわゆるポテンシオメータ等の角度変位(回転変位)を計測できるセンサを組み合わせて構成することができる。
【0051】
一方、上記掘進機、これに続く計測管及びシールド管を送り出す油圧押出装置18は、縦穴19内に設けられており、上記油圧ユニット14で発生した油圧によって作動させられる油圧シリンダ装置20を備えて構成される。上記油圧シリンダ装置20には、押出積算距離を計測できる距離センサ17が設けられている。
【0052】
上記距離センサ17として、種々の距離センサを採用できる。実施の形態では、上記シリンダ装置の変位量を電気抵抗値変化量に変換して距離を測定するリニア型のポテンシオメータを採用している。この距離センサ17によって、上記掘進機1の推進距離をリアルタイムに測定することができる。なお、距離センサも実施の形態に限定されることはなく、種々の形式のものを採用できる。
【0053】
以下、本願発明に係る推進軌跡及び推進姿勢の計測方法の原理を図に基づいて説明する。
【0054】
図2に示すように、掘進機1、計測管及びシールド管を土中に送り込んだ状態を表す平面図である。この図に示すように、掘進機1を先頭とした管列は、曲線状の軌跡を描いて推進させられており、隣接する各掘進機、計測管及びシールド管の間に角度変位が生じているのがわかる。
【0055】
図3に上記状態の管列を模式的に示す。なお、この図では、理解を容易にするため、水平面に沿う直交座標軸X,Yを基準にして表してある。実際には、鉛直方向の角度変位を考慮して、掘進機1及び計測管の位置及び姿勢が求められる。
【0056】
図に示すように、角度センサS1 ,S2 ,S3 ,S4 ,S5 ,S6 から、X軸に対する偏位角度R1 ,R2 ,R3 ,R4 ,R5 ,R6 が出力される。上記各センサは、掘進機1及び各計測管2,3,4,5,6の中央に設けられているため、上記偏位角度と上記掘進機ないし上記計測管の軸方向長さから、上記掘進機1及び各計測管2,3,4,5,6の相対位置及び姿勢を算出することができる。
【0057】
一方、起点Kから各センサまでの推進距離は上記距離センサ17によって計測されているため、上記掘進機1及び各計測管2,3,4,5,6の座標位置及び姿勢(方向)が求められる。
【0058】
ただし、上記掘進機1と各計測管との間には、曲線状の推進軌跡に沿う角度偏位Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 ,Q5 が生じるため、上記各センサから得られる相対角度差から上記角度偏位Q1 ,Q2 ,Q3 ,Q4 ,Q5 を求めて、掘進機1及び各計測管の位置及び姿勢に補正がなされている。
【0059】
もし、最後尾の計測管6の後端部が起点K(座標原点)にある場合、上記演算を行うことにより、掘進機1及び全ての計測管の位置及び姿勢が一義的に決定される。したがって、精度の高い推進軌跡を形成する必要がある場合には、推進軌跡の全長に渡って計測管を推進させるとともに、これら計測管をシールド管に置き換える。
【0060】
上記最後尾の計測管6にシールド管7が接続されて計測管6の後端部が起点Kから離れた後は、それまでに求めた推進軌跡と、掘進機1及び計測管の角度センサから出力される情報に基づいて推進軌跡及び姿勢を求めなければならない。
【0061】
最先端にある掘進機1は、掘削作業を行いながら進行するため、掘進機の軸方向に進行するとは限らない。このため、掘進機1の位置及び姿勢を掘進機1のセンサのみから算出すると、計画推進軌跡からずれる恐れがある。
【0062】
本願発明では、掘削機1に計測管を接続しているため、この計測管を基準として、すなわち、計測管の位置及び姿勢を基準として、上記掘削機1の位置及び姿勢を算出する。
【0063】
たとえば、計測管6の現在位置が正確であると仮定するとともに、計測管6の角度変位R6 及び前方を推進する計測管5との角度変位Q5 から計測管5の位置及び姿勢が算出される。また、この計測管5の位置及び姿勢の演算結果から上記と同様の演算を行い、計測管4の位置及び姿勢、計測管3の位置及び姿勢、計測管2の位置及び姿勢、掘進機1の位置及び姿勢を求めるのである。
【0064】
上記掘進機1及び上記計測管列の相対位置及び姿勢は、各センサ出力から比較的精度高く計測できる。また、最後尾の計測管は、推進姿勢が安定しており、距離センサによる測定精度が高い。このため、上記計測管を基準として掘削機1の姿勢を算出することにより、従来にない精度で掘削機の位置及び姿勢を計測することができる。
【0065】
本実施の形態では、複数の計測管を基準として上記掘進機1の位置及び姿勢を求める。たとえば、計測管5及び計測管6の位置情報を基準として、それより前方にある計測管及び掘進機1の位置及び姿勢を演算する。そして、これにより得られた2つの結果を平均することにより、さらに精度の高い計測を行うことができる。
【0066】
なお、上記図3における計測は、理解を容易にするため2次元座標を求める場合について説明したが、実際は3次元座標を求める必要があり、3つの軸に対する角度から各座標を算出するように構成される。
【0067】
さらに、本実施の形態では、図4及び図5に示すように、上記計測によって得られた推進軌跡T1と予め設定された計画軌跡T2とを対比して、上記自動計測装置16のディスプレイに表示できるように構成している。
【0068】
図4では、計測された上記推進軌跡T1と上記計画軌跡T2の水平面に沿う全体形状及び現在における推進位置を表示する一方、図5では、推進累積距離Dに対する上記推進軌跡T1の計測推進軌跡を表示している。これら表示から、推進作業が目標点に対してどの程度まで進行しているかを一目で理解することができる。また、実際の推進軌跡と計画軌跡のずれ(偏位量)を直観的に判断することができる。これに基づいて、掘進機を制御操作することにより、より計画軌跡に沿った推進軌跡を形成することができる。
【0069】
さらに、上記掘進機1の制御操作を確実に行うため、図6及び図7に示すように、掘進機、計測管及びシールド管の推進姿勢と、これらの計画軌跡T2に対するずれ(偏位量)δを数値で表示できるように構成している。図6には、推進軌跡T2の曲率半径方向のずれをδとして表示するとともに、X軸及びY軸方向のずれδx ,δy に分解して表示している。また、掘進機1の現在の推進位置において、掘進機1の進行方向の計画軌跡方向からの角度のずれθXYを表示している。
【0070】
図7には、鉛直方向の推進軌跡及び推進姿勢のずれδz を推進距離に対して表示している。なお、上記表示の態様はこれら実施の形態に限定されることはなく、種々の表示形態を採用できる。
【0071】
上記表示から掘進機1の姿勢を正確に把握できるとともに、掘進機1の制御操作を的確に行うことが可能となる。また、ずれの程度を表示できるため、経験や感にたよることなく、掘進機1の制御操作を極めて容易に行うことができる。
【0072】
以下、図8に基づいて、本実施の形態に係るシールド推進工法における計測方法の手順を説明する。
【0073】
本願発明では、計測を連続的に行うこともできるし、間欠的に行うこともできる。たとえば、1本のシールド管の推進操作ごとに計測を行うこともできるし、1本のシールド管の推進させている間の推進軌跡及び姿勢をリアルタイムに計測することもできる。
【0074】
推進作業を始める場合、まず設計軌跡を読み込む(S102)。そして、自動計測装置16のディスプレイに設計軌跡を表示する(S105)。また、推進させる掘削機1ないし計測管のセンサ出力等の初期設定を行う。具体的には推進起点(0点)位置の各座標を読み込む。推進工程途中である場合には、保存データを読み込むことができる(S104)。
【0075】
次に、掘進機1の推進作業にともなうセンサ出力(角度及び推進距離)を取得して(S106)、掘進機ないし計測管の位置及び姿勢データを算出する(S107)。そして、最後端部の2ないし3本の計測管を基準として、掘削機1の位置及び姿勢を算出し、これらの値を平均して上記掘進機の位置及び姿勢を補正する(S108)。これにより、掘進機1の推進軌跡及び推進姿勢が精度高く求められる。
【0076】
上記推進軌跡及び推進姿勢を求めた後、計画軌跡からの偏位量(ずれ)を算出し(S109)、掘進機1を制御操作する方向及び制御量を計算する(S110)。そして、これらの値を上記ディスプレイに表示し、制御操作を行う者が上記の表示情報から掘進機1に制御信号を送り、掘進機の制御操作を行う。
【0077】
上記計測されたデータは各位置におけるデータとして保存され(S113)、目標点に到達するまで(S114)、上記計測が連続的に繰り返される(S106〜S113)。そして、掘進機あるいは計測管が目標点に到達することにより、最終データを保存し(S115)計測作業が終了する。
【0078】
本願発明は上述の実施の形態に限定されることはない。実施の形態では、5本の計測管を掘進機1の後部に接続したが、1本あるいは6本以上の計測管を接続することができる。また、精度の要求されない工事においては、掘進機のみからの情報に基づいて計測を行うこともできる。また、推進軌跡の全部に計測管を接続して精度の高い推進軌跡を形成することもできる。
【0079】
【発明の効果】
本願発明においては、推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢を、リアルタイムに精度高く計測することができる。また、掘進機の推進軌跡及び推進姿勢を表示しながら作業を行うことができる。さらに、計画軌跡に対する推進軌跡のずれを認識しながら操作を行えるとともに、掘進機の姿勢を制御する情報を得ることもできる。このため、掘進機の制御操作を極めて容易に行えるとともに、精度の高い推進軌跡を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る推進シールド工法を行うための装置構成の全体を示す断面図である。
【図2】図1に記載した装置の要部の平面図である。
【図3】本願発明の計測原理を示す説明図である。
【図4】計測された推進軌跡と計画軌跡とを水平面において比較した表示態様を示す図である。
【図5】計測された推進軌跡と計画軌跡とを鉛直面において比較した表示態様を示す図である。
【図6】掘進機及び計測管の姿勢及び計画軌跡からの水平面におけるずれの表示態様を示す図である。
【図7】掘進機及び計測管の姿勢及び計画軌跡からの鉛直面におけるずれの表示態様を示す図である。
【図8】本願発明に係る計測方法の手順を表すフローチャートである。
【符号の説明】
1シールド掘進機
7シールド管
S1 角度センサ
S2 角度センサ
S3 角度センサ
S4 角度センサ
S5 角度センサ
S6 角度センサ
17距離センサ
16自動計測装置(演算・表示装置)

Claims (9)

  1. シールド掘進機の後方にシールド管を接続して、掘削しながら管路を敷設する推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置であって、
    上記シールド掘進機に設けられ、推進にともなって変化する3次元の角度変位を測定できる角度センサと、
    上記掘進機の推進起点からの推進距離を測定する距離センサと、
    上記シールド掘進機と上記シールド管列との間に設けられ、上記角度センサをそれぞれ備える1又は2以上の計測管と、
    上記シールド掘進機のセンサ出力及び上記計測管からのセンサ出力によって、上記推進軌跡及び上記推進姿勢を求める演算手段を設けた演算装置と、
    上記演算装置から出力される推進軌跡情報及び推進姿勢情報を表示し及び/又は出力する装置とを備える、推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置。
  2. 上記演算装置及び上記表示装置が、計画された計画推進軌跡又は/及び計画推進姿勢と、これら計画値に対する計測推進軌跡及び/又は計測推進姿勢のずれを演算して表示するように構成されている、請求項1に記載の推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測装置。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれかに記載した計測装置と、上記計測装置によって得られる情報に基づいて上記掘進機の制御操作情報を演算して出力し及び/又は表示する手段を備える、推進軌跡管理装置。
  4. 上記手段が、請求項2に記載したずれに対する補正操作を出力し及び/又は表示する、請求項3に記載の推進軌跡管理装置。
  5. シールド掘進機の後方にシールド管列を接続して、掘削しながら管路を敷設する推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測方法であって、
    上記シールド掘進機と上記シールド管列の間に1又は2以上の計測管を接続するとともに、
    シールド掘進機に設けた3次元角度センサからの角度出力と、
    上記掘進機の推進起点からの推進距離を出力する距離センサからの距離出力と、
    上記各計測管に設けた3次元角度センサからの角度出力と、
    に基づいて、上記推進軌跡及び推進姿勢を求める、推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測方法。
  6. 上記計測方法によって得られる上記推進軌跡及び上記推進姿勢の計画推進軌跡及び計画推進姿勢に対するずれを演算して表示する、請求項5に記載の推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測方法。
  7. 上記シールド掘進機の後方に位置する計測管から得られる位置情報を基準として、上記シールド掘進機の位置及び姿勢を演算して求める、請求項5又は請求項6のいずれかに記載の推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測方法。
  8. 上記シールド掘進機の位置及び姿勢を、複数の計測管の位置情報及び姿勢情報から求める、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の推進シールド工法における推進軌跡及び推進姿勢の計測方法。
  9. 請求項5から請求項8のいずれか1項に記載した計測方法によって得られた計測情報に基づいて上記掘進機の推進方向を指示する制御情報を演算し、この制御情報を表示し及び/又は上記掘進機に出力して掘進機の制御を行う、推進シールド工法における掘進機の軌跡管理方法。
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