JP3822521B2 - 埋設管推進機先端装置の状態推定方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動ヘッド部と中折れ部を介して振動ヘッド部に連結された方向制御部からなる先端装置を有し、この先端装置と先端装置の後方に順次継ぎ足される埋設管とを、振動ヘッド部を地盤へ圧入させながら発進立坑の元押装置により推進させることにより管路を形成する埋設管推進機に係り、特に先端装置の運動特性を逐次推定したり、現在より先の挙動を予測したりすることの可能な状態推定方法および状態推定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、振動ヘッド部と中折れ部を介して振動ヘッド部に連結された方向制御部からなる先端装置を有し、この先端装置と先端装置の後方に順次継ぎ足される埋設管とを、振動ヘッド部を地盤へ圧入させながら発進立坑の元押装置により推進させることにより管路を形成する埋設管推進機が知られている。このような埋設管推進機では、先端装置に内蔵された光ファイバジャイロやピッチング計などの各種センサからの観測信号により求めた計画線からの変位量を地上に設置された操作盤上に表示して、この変位量に基づいてオペレータが振動ヘッドの方向修正量を決定して振動ヘッド傾動用油圧ジャッキを操作していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の埋設管推進機では、得られるセンサ情報のみでは埋設管推進機の正しい位置・姿勢を求めることができず、埋設管推進機の旋回特性把握や計画線との誤差を可能な限り小さく保つ方向修正操作はオペレータの経験と技術に大きく依存しているという問題点があった。
【0004】
本発明の目的は、オペレータの技術ヘの依存性を極力低減して、オペレータが熟練者か非熟練者かに関係なく、埋設管推進機の高精度な状態把握を可能にすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、地盤に圧入される振動ヘッド部(図1の103)と中折れ部(106)を介して前記振動ヘッド部に連結された方向制御部(104)からなる先端装置(101)と、この先端装置の後方に順次継ぎ足される埋設管(108)とを、発進立坑の元押装置(107)により所定の水平計画線の方向に推進させる埋設管推進機において、前記先端装置の水平位置・姿勢を推定する状態推定方法であって、前記先端装置の方向制御部の水平旋回曲率(ρH )を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との水平方向の相対角である水平方向修正量(ηH )を入力変数としたとき、単位推進長(Lp )毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した水平旋回曲率変化モデル式(式(8)、式(10))を予め設定する手順と、前記振動ヘッド部の先端の水平移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の水平移動方向が前記振動ヘッド部の水平移動方向から前記水平旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さ(Lh )を乗じた値を引いた方向と一致する水平推進方向モデル式(式(9))を予め設定する手順と、前記水平旋回曲率と前記先端装置の水平計画線に対する水平変位(XD )と前記水平方向修正量とを入力とし、前記水平旋回曲率変化モデル式と前記水平推進方向モデル式とに基づいて、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータ(θH[k],Xh[k])と前記ARXモデルのパラメータ(aH1,・・・,aHna ,bH1,・・・,bHnb )とを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する状態変数ベクトル推定手順とを実行するようにしたものである。このように本発明によれば、埋設管掘進機の先端装置の状態変化モデルを基にして各種観測信号からオンラインで状態推定を行うことにより、その時点の先端装置の水平計画線に対する位置・姿勢や周囲地盤の土質に見合った埋設管推進機の旋回特性をARXモデルとして逐次推定することが可能となる。
【0006】
また、本発明の埋設管推進機先端装置の状態推定方法の1構成例において、前記状態変数ベクトル推定手順は、前記先端装置に搭載された光ファイバジャイロ(図2の201)が出力する方位角(θg )の単位推進長毎の差分で与えられる前記水平旋回曲率と、前記先端装置に搭載された誘導磁界発生装置(301)の位置を検出して得られる前記水平変位と、前記水平方向修正量とを用いることにより、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記方位角のオフセット(δg )とを同時に推定するようにしたものである。これにより、光ファイバジャイロの角度出力に含まれる経時的なオフセットを推定することができる。
【0007】
また、本発明は、埋設管推進機において先端装置の垂直位置・姿勢を推定する状態推定方法であって、前記先端装置の方向制御部の垂直旋回曲率(ρV )を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との垂直方向の相対角である垂直方向修正量(ηV )を入力変数としたとき、単位推進長(Lp )毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した垂直旋回曲率変化モデル式(式(24)、式(26))を予め設定する手順と、前記振動ヘッド部の先端の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の垂直移動方向から前記垂直旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さ(Lh )を乗じた値を引いた方向と一致する垂直推進方向モデル式(式(25))を予め設定する手順と、前記垂直旋回曲率と前記先端装置の垂直計画線に対する垂直変位(YS )と前記垂直方向修正量とを入力とし、前記垂直旋回曲率変化モデル式と前記垂直推進方向モデル式とに基づいて、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータ(θV[k],Yh[k])と前記ARXモデルのパラメータ(aV1,・・・,aVna ,bV1,・・・,bVnb )とを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する状態変数ベクトル推定手順とを実行するようにしたものである。このように本発明によれば、埋設管掘進機の先端装置の状態変化モデルを基にして各種観測信号からオンラインで状態推定を行うことにより、その時点の先端装置の垂直計画線に対する位置・姿勢や周囲地盤の土質に見合った埋設管推進機の旋回特性をARXモデルとして逐次推定することが可能となる。
【0008】
また、本発明の埋設管推進機先端装置の状態推定方法の1構成例において、前記状態変数ベクトル推定手順は、前記先端装置に搭載されたピッチング計(図2の202)が出力する傾斜角の単位推進長毎の差分で与えられる前記垂直旋回曲率と、前記先端装置に搭載された深度計により得られる前記垂直変位と、前記垂直方向修正量とを用いることにより、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記傾斜角のオフセット(p0 )とを同時に推定するようにしたものである。これにより、ピッチング計出力に含まれる一定のオフセットを推定することができる。
また、本発明の埋設管推進機先端装置の状態推定方法の1構成例は、前記水平旋回曲率変化モデル式のARXモデルと前記垂直旋回曲率変化モデル式のARXモデルが同じ次数を持ち、水平方向のARXモデルのパラメータが垂直方向について推定されたARXモデルのパラメータで置き換えられるものである。
【0009】
また、本発明は、埋設管推進機において先端装置の水平位置・姿勢を推定する状態推定装置であって、前記先端装置の方向制御部の水平旋回曲率(ρH )を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との水平方向の相対角である水平方向修正量(ηH )を入力変数としたとき、単位推進長(Lp )毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した水平旋回曲率変化モデル(図3の404)と、前記振動ヘッド部の先端の水平移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の水平移動方向が前記振動ヘッド部の水平移動方向から前記水平旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さ(Lh )を乗じた値を引いた方向と一致する水平推進方向モデル(405)と、前記水平旋回曲率と前記先端装置の水平計画線に対する水平変位(XD )と前記水平方向修正量とを入力とし、前記水平旋回曲率変化モデルと前記水平推進方向モデルとに基づいて、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータ(θH[k],Xh[k])と前記ARXモデルのパラメータ(aH1,・・・,aHna ,bH1,・・・,bHnb )とを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する逐次状態変数ベクトル推定器(407)とを有するものである。
【0010】
また、本発明の埋設管推進機先端装置の状態推定装置の1構成例において、前記逐次状態変数ベクトル推定器は、前記先端装置に搭載された光ファイバジャイロ(201)が出力する方位角の単位推進長毎の差分で与えられる前記水平旋回曲率と、前記先端装置に搭載された誘導磁界発生装置(301)の位置を検出して得られる前記水平変位と、前記水平方向修正量とを用いることにより、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記方位角のオフセット(δg )とを同時に推定するものである。
【0011】
また、本発明は、埋設管推進機において先端装置の垂直位置・姿勢を推定する状態推定装置であって、前記先端装置の方向制御部の垂直旋回曲率(ρV )を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との垂直方向の相対角である垂直方向修正量(ηV )を入力変数としたとき、単位推進長(Lp )毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した垂直旋回曲率変化モデル(図6の504)と、前記振動ヘッド部の先端の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の垂直移動方向から前記垂直旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さ(Lh )を乗じた値を引いた方向と一致する垂直推進方向モデル(505)と、前記垂直旋回曲率と前記先端装置の垂直計画線に対する垂直変位(YS )と前記垂直方向修正量とを入力とし、前記垂直旋回曲率変化モデルと前記垂直推進方向モデルとに基づいて、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータ(θV[k],Yh[k])と前記ARXモデルのパラメータ(aV1,・・・,aVna ,bV1,・・・,bVnb )とを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する逐次状態変数ベクトル推定器(507)とを有するものである。
【0012】
また、本発明の埋設管推進機先端装置の状態推定装置の1構成例において、前記逐次状態変数ベクトル推定器は、前記先端装置に搭載されたピッチング計(202)が出力する傾斜角の単位推進長毎の差分で与えられる前記垂直旋回曲率と、前記先端装置に搭載された深度計により得られる前記垂直変位と、前記垂直方向修正量とを用いることにより、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記傾斜角のオフセット(p0 )とを同時に推定するものである。
また、本発明の埋設管推進機先端装置の状態推定装置の1構成例は、前記水平旋回曲率変化モデル式のARXモデルと前記垂直旋回曲率変化モデルのARXモデルが同じ次数を持ち、水平方向のARXモデルのパラメータが垂直方向について推定されたARXモデルのパラメータで置き換えられるものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の状態推定装置の推定対象となる埋設管推進機の全体構成を示す側面図である。図1に示す埋設管推進機は、先端装置101の先端に設けられた振動ヘッド102を周囲の地盤109に圧入しながら元押装置107の推進力により前進し、一定長の埋設管108を順に継ぎ足していくことにより管路を形成するものである。
【0014】
先端装置101は、振動ヘッド102と、先端に振動ヘッド102が取り付けられた振動ヘッド部103と、中折れ部106を介して振動ヘッド部103に連結された方向制御部104とから構成される。
【0015】
先端装置101と埋設管108とを前進させる推進力は、地盤109に垂直に形成された発進立抗110内の元押装置107によって生じる。また、埋設管推進機の推進方向は、振動ヘッド部103に内蔵された後述する方向修正ジャッキにより振動ヘッド部103を上下左右に傾動させることにより制御することができる。
【0016】
図2は水平方向に関する位置・姿勢を計測するための誘導磁界計測法や光ファイバジャイロによる水平位置検知システムと液圧差法やピッチング計による垂直位置検知システムを示している。方向制御部104に設置された光ファイバジャイロ201は、発進立抗110を基準点とする方向制御部104の方位角を計測する。
【0017】
また、方向制御部104に設置されたピッチング計202によって方向制御部104の垂直位置が求まり、ローリング計203によって方向制御部104の回転角度が求まる。また、前述のように、振動ヘッド部103には方向修正ジャッキ111が内蔵されている。
【0018】
さらに、水平方向に関しては、先端装置101に内蔵された誘導磁界発生装置301が生成する誘導磁界を地上に設置された誘導磁界検出装置302によって検知することにより、埋設管推進機の推進基準線(計画線)からの水平変位を求めることができる。
【0019】
そして、垂直方向に関しては、先端装置101に内蔵された圧力センサ303によって測定された液圧と地上に設置された基準液圧測定装置304で測定された基準液圧との差を検知することにより、埋設管推進機の深度を求めることができる。
【0020】
[第1の実施の形態]
以下、埋設管推進機の先端装置101の水平方向の位置・姿勢を推定する水平方向状態推定装置について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態となる水平方向状態推定装置の構成を示すブロック図である。図3の各構成要素の具体的構成法を述べるため、最初に埋設管推進機の水平方向修正量に対する先端装置101の水平旋回特性を表すマシン状態変化モデルの設計法について述べる。その後、光ファイバジャイロ201および誘導磁界検知法による埋設管推進機の水平旋回運動に関する状態変化モデルパラメータのオンライン推定法について説明する。
【0021】
図4は、埋設管推進機の水平方向の運動を表すための各部位の位置や角度の定義を示している。水平計画線からみた中折れ部106の水平変位をXh 、水平計画線からみた誘導磁界発生装置(電磁コイル)301の水平変位をXD とする。また、水平計画線に対する方向制御部104の傾斜角(ヨーイング角)をθH 、方向制御部104を基準としたときの振動ヘッド部103の傾斜角(ヘッド角)である水平方向修正量をηH とする。また、方向制御部104の長さをLf 、振動ヘッド102を含む振動ヘッド部103の長さをLh とする。
【0022】
図5は、元押装置107がdsだけ先端装置101を推進させたときの各部の移動ベクトルを示したものである。振動ヘッド102の先端cから前方の地盤109には元押装置107から伝わる推力が加わりヘッド102の振動と共に圧入されていく。このとき、振動ヘッド102の側面は地盤109に囲まれており、先端cの移動方向は振動ヘッド部103の長手方向バーhcに拘束されていると考えられる。
【0023】
一方、先端装置101及び埋設管108は地盤109に囲まれているため埋設管推進機全体の並進運動は生じないものと考えられる。この場合、先端装置101の推進は、バーhcと直角な方向に存在する回転中心Oの周りを旋回するような非ホロノミックな拘束状態にある運動としてモデル化できる。このとき、元押装置107をdsだけ推進させたときの先端cの移動ベクトルdsc =[dscx,dscz]T は次式で表される。
【0024】
【数1】
【0025】
また、旋回運動の曲率半径を1/ρH とすると次式が成り立つ。
【0026】
【数2】
【0027】
ただし、ρH は符号付の旋回曲率(進行方向右旋回を正)である。先端装置101の全長に比べ曲率半径1/ρH が十分に大きいとすれば、中折れ部106の移動ベクトルdsh =[dshx,dshz]T は‖dsh ‖=‖dsc ‖=dsであり、次のように表される.
【0028】
【数3】
【0029】
いま、先端装置101の水平方向修正量ηH は単位推進長Lp の間一定で旋回曲率ρH の変化も無視できるとすれば、式(2)及び式(3)は次のように離散化できる。
【0030】
【数4】
【0031】
【数5】
【0032】
【数6】
【0033】
埋設管推進機に与えられる計画線軌道は通常、直線と円弧の組み合わせで表される。交角の大きな円弧の場合、区分的に図5のz軸を円弧の接線方向に合わせたいくつかの座標系を定義すれば、その区間の計画線の曲率により決定される曲線にxh[k]を追従させることによって埋設管推進機の制御目的は達せられる。このとき、先端装置101のヨーイング角θH は区間内で十分小さく、また水平方向修正量ηH の最大値も小さいため、式(5)は次のように線形化することができる。
【0034】
【数7】
【0035】
式(4)、式(7)は、水平方向修正量ηH を一定とした単位推進長Lp 間の変化を表しているが、先端装置101の位置・姿勢は水平方向修正量ηH を変化させた直後にも地盤109からの反力による影響を受ける。いま、水平方向修正量ηH をΔηH だけ傾動させたときの先端cの移動距離LhΔηHのうち、地盤109に食い込む割合を1−keHと定義すれば、方向制御部104と埋設管108との連結部fを支点とした地盤反力によるθH とxh への影響は、それぞれ−LhΔηHkeH/(Lh+Lf)、−LfLhΔηHkeH/(Lh+Lf) と見積もられる。したがって、方向修正に伴う地盤反力をも考慮に入れた先端装置101の位置・姿勢の変化は次式で表される。
【0036】
【数8】
【0037】
【数9】
【0038】
一方、先端装置101の旋回運動は、元押装置107が発生する推進力と先端装置101が周囲地盤109より受ける反力によって大きく左右され、埋設管推進機の方向修正は、振動ヘッド部103と方向制御部104との相対角である方向修正量を制御して地盤109からの反力の影響を調整することにより実現される。
【0039】
また、埋設管推進機の構造から明らかなように先端装置101の急旋回は不可能であり、水平計画線に対する傾斜角を変化させるには方向修正の後ある程度の推進距離を必要とする。ある一定の方向修正量を与えて推進を続けたとき地盤の性質が一定とすれば先端装置101は理想的にはある一定の曲率で旋回しようとする。
【0040】
そこで、先端装置101の水平旋回曲率ρH を出力変数、水平方向修正量ηH を入力変数として、単位推進長Lp 毎にサンプリングされる時系列データに関して次式のようなARX(Auto-Regressive eXogenous )モデルを導入することにより埋設管推進機の旋回運動モデルを記述することを考える。
【0041】
【数10】
【0042】
ARXモデルについては、例えば文献「I.D.Landau,“System Identification and Control Design”,PrenticeHall(1990)」、文献「足立修一,“ユーザのためのシステム同定理論”,計測自動制御学会(1993)」に記載されている。
【0043】
式(1)において、kはマシンデータのサンプリング回数、aHi(i=1,・・・,p),bHj(j=1,・・・,q)は周囲の地盤の性質によって変化する埋設管推進機の旋回特性に関するパラメータ、w[k] は上記ダイナミクスに作用するシステムノイズを意味している。
【0044】
結局、先端装置101の水平旋回モデルは式(8)、式(9)及び式(10)から次のような状態方程式で表される。
【0045】
【数11】
【0046】
ただし、XH[k]、AH、BHは次式のようになる。
【0047】
【数12】
【0048】
【数13】
【0049】
【数14】
【0050】
Ip ,Op,q ,op はそれぞれp次元単位行列、p行q列の零行列、p次元零ベクトルである。ここで、対象としている先端装置101は光ファイバジャイロ201を搭載しているが、この光ファイバジャイロ201の角度出力θg には経時的なオフセットδg が存在するため、方位角θg を直接ヨーイング角θH とすることは困難である。
【0051】
ただし、オフセットの変化が緩やかであれば、光ファイバジャイロ201から出力される方位角θg の連続する2点間の差分をとることにより、水平旋回曲率ρH を求めることは可能である。水平計画線からみた水平変位XD は、先端装置内蔵の誘導磁界発生装置301の生成する磁界を地上の誘導磁界検出装置302で数メートル間隔で検出して求めることができる。これらのセンシング情報から式(8)、式(9)、式(10)の旋回運動モデルに基づいて、先端装置101の位置・姿勢とモデルに含まれる未知パラメータをカルマンフィルタにより推定することを考える。
【0052】
これにより、その後の運動を予測するための状態方程式表現やこれに基づく方向修正制御のためのフィードバック制御則が導出可能となる。以下、この場合のカルマンフィルタを用いた逐次状態変数ベクトル推定器407の構成法について述べる。
【0053】
まず、以下のように推定すべき状態変数ベクトルXH ∈R(3+p+q+2)×1 を定義する。
【0054】
【数15】
【0055】
このとき、式(8)、式(9)、式(10)は光ファイバジャイロオフセットモデルδg[k+1]=δg[k]+ε[k] (εは白色ノイズ)と合わせて次の状態方程式により表すことができる。
【0056】
【数16】
【0057】
ωH[k]はE(ωH)=0,E(ωH[k]ωTH[k'])=ΣωHδkk' のシステムノイズを表している。ここで、E(・)は期待値、δkk' はクロネッカのδを意味している。また、FH[k]中のρH[k]は光ファイバジャイロ出力θg による近似値(ρH[k]=(θg[k+1]−θg[k])/Lp) を用いればよい。ただし、サンプリングkの時点ではθg[k+1]は得られないので、kにおけるXH[k]の推定値のρH[k]を利用することができる。
【0058】
一方、誘導磁界発生装置301の水平位置xD は、中折れ部106と誘導磁界発生装置301間の長さをLD とすれば、中折れ部水平変位xh とヨーイング角θH を用いて次のように表される。
【0059】
【数17】
【0060】
誘導磁界発生装置301の水平位置xD が計測されたとき、式(17)と水平旋回曲率ρH 、光ファイバジャイロ出力角θg に関して次の観測方程式が与えられる。
【0061】
【数18】
【0062】
υH[k]はE(υH)=0,E(υH[k]υTH[k'])=ΣυHδkk' の観測ノイズを表している。一方、水平位置xD が計測されないときは、水平旋回曲率データρH とこれに対応した観測行列HH による推定を行う。いま、E(ωH[k]υTH[k'])=O(3+p+q+2)×3 と仮定すると、以下のようなカルマンフィルタが構成され、未知変数ベクトルXH[k]の推定値ハットXH[k]を求めることが可能になる。以下、同様に文字上に付した「∧」をハットと呼ぶ。
【0063】
【数19】
【0064】
【数20】
【0065】
【数21】
【0066】
【数22】
【0067】
【数23】
【0068】
式(19)、式(20)はフィルタ方程式、式(21)はカルマンゲイン、式(22)、式(23)は誤差の共分散行列方程式である。
【0069】
次に、図3に示した水平方向状態推定装置402の構成について説明する。水平方向状態推定装置402は、マシン状態方程式生成部403と、逐次状態変数ベクトル推定器407とから構成される。マシン状態方程式生成部403は、先端装置水平旋回曲率モデル404と、先端装置水平推進方向モデル405とを有する。
【0070】
なお、先端装置101と埋設管108とを水平方向修正量ηH に基づいて水平計画線の方向に推進させる方向制御装置は、以上の水平方向状態推定装置402と図示しない水平方向制御器とから構成される。
【0071】
水平計画線の方向を示す水平計画線情報は、オペレータによって設定され、水平方向状態推定装置402と図示しない水平方向制御器に入力される。埋設管推進機に設けられた光ファイバジャイロ201は、発進立抗110を基準点とする方向制御部104の方位角θg を示す観測信号を出力する。地上に設置された誘導磁界検出装置302は、埋設管推進機に設けられた誘導磁界発生装置301の水平計画線に対する水平変位XD を示す観測信号を出力する。
【0072】
水平方向状態推定装置402は、光ファイバジャイロ201から出力された方位角θg を示す観測信号と、水平変位XD を示す観測信号と、水平方向制御器から出力された現時点での水平方向修正量ηH と、前記水平計画線情報とを入力信号とする。
【0073】
そして、水平方向状態推定装置402の逐次状態変数ベクトル推定器407は、方向制御部104の水平旋回曲率ρH を出力変数とし水平方向修正量ηH を入力変数としたとき、単位推進長Lp 毎に得られる入力変数と出力変数との関係をARXモデルとして記述した先端装置水平旋回曲率変化モデル404(式(8)、式(10))と、振動ヘッド部103の先端の水平移動方向が振動ヘッド部103の長手方向と一致し、かつ中折れ部106の水平移動方向が振動ヘッド部103の水平移動方向から水平旋回曲率ρH に振動ヘッド部103の長さLh を乗じた値を引いた方向と一致する先端装置水平推進方向モデル405(式(9))と、前記入力信号とに基づいて、水平計画線に対する先端装置の水平位置・姿勢パラメータθH[k],Xh[k]とARXモデルのパラメータaH1,・・・,aHna ,bH1,・・・,bHnb とをオンライン推定(すなわち、埋設管推進機の推進と同時に推定)する。
【0074】
図示しない水平方向制御器は、逐次状態変数ベクトル推定器407によって推定された水平方向状態変数ベクトル推定値に基づいて次の水平方向修正量ηH を計算する。水平方向制御器で計算された水平方向修正量ηH は、埋設管推進機に入力され、この水平方向修正量ηH に基づいて方向修正ジャッキ111が駆動される。こうして、先端装置101が水平計画線の方向に前進するよう方向制御が行われる。
【0075】
なお、水平方向状態推定装置402は、演算装置、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータでは、マシン状態方程式生成部403は記憶装置に格納される。以上のようにして、オペレータの熟練度に依存せず、均質で高精度な埋設管推進機の状態推定や現在より先の予測情報を提供できる。
【0076】
[第2の実施の形態]
次に、埋設管推進機の先端装置101の垂直方向の位置・姿勢を推定する垂直方向状態推定装置について説明する。本実施の形態においても埋設管推進機の構成は第1の実施の形態と同じであるので、図1、図2の符号を用いて説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態となる垂直方向状態推定装置の構成を示すブロック図である。
【0077】
図6の各構成要素の具体的構成法を述べるため、最初に埋設管推進機の垂直方向修正量に対する先端装置101の旋回特性を表すマシン状態変化モデルの設計法について述べる。その後、埋設管推進機の垂直方向に関する状態変化モデルパラメータのオンライン推定法について説明する。
【0078】
図7は、先端装置101の垂直方向の運動を表すための各部位の位置や角度の定義を示している。基準水平線から見た中折れ部106の垂直変位をYh 、基準水平線から見た深度計(圧力センサ303)の変位をyS とする。また、垂直計画線に対する方向制御部104の傾斜角(ピッチング角)をθV 、方向制御部104を基準としたときの振動ヘッド部103の傾斜角(ヘッド角)である垂直方向修正量をηV とする。
【0079】
先端装置101の垂直方向の旋回運動に関しても前述の水平旋回時の挙動がそのまま当てはまり、式(8)、式(9)、式(10)に対応して次のようにモデル化できる。
【0080】
【数24】
【0081】
【数25】
【0082】
【数26】
【0083】
1−keVは垂直方向修正量ηV をΔηV だけ変化させたときに振動ヘッド部103の先端が地盤に食い込む割合、aVi(i=1,・・・,na),bVj(j=1,・・・,nb)は周囲の地盤の性質によって変化する埋設管推進機の旋回特性に関するパラメータ、wV[k] は上記ダイナミクスに作用する白色システムノイズを意味している。
【0084】
先端装置101にはピッチング計202が内蔵されており,ピッチング計出力θp の単位推進長Lp 毎の差分を求めることにより垂直方向の旋回曲率ρV が算出できる。ただし、ピッチング計出力θp には一定のオフセットp0 が存在することがあり、ピッチング計出力θp を直接には埋設管推進機の垂直傾斜角とできない場合がある。
【0085】
しかし、垂直変位YS を表す深度計データと上記の垂直旋回運動モデルにカルマンフィルタを適用すればp0 ,θV の推定は可能である。以下、この場合のカルマンフィルタを用いた逐次状態変数ベクトル推定器507の構成法について述べる。
【0086】
まず、以下のように推定すべき状態変数ベクトルXV ∈R(3+p+q+2)×1 を定義する。
【0087】
【数27】
【0088】
XV を推定ベクトルとした場合、式(24)、式(25)、式(26)は、次の状態方程式により表すことができる。
【0089】
【数28】
【0090】
ωV[k]はE(ωV)=0,E(ωV[k]ωTV[k'])=ΣωVδkk' のシステムノイズを表している。ここで、E(・)は期待値、δkk' はクロネッカのδを意味している。また、FV[k]中のρV[k]はピッチング計出力θp による近似値(ρV[k]=(θp[k+1]−θp[k])/Lp) を用いればよい。ただし、サンプリングkの時点ではθp[k+1]は得られないので、kにおけるXV[k]の推定値のρV[k]を利用することができる。
【0091】
一方、深度計位置yS は中折れ部106と圧力センサ303間の長さをLS とすれば、中折れ部垂直変位yh と先端装置101の垂直傾斜角θV を用いて次のように表される。
【0092】
【数29】
【0093】
式(29)とピッチング計出力θp(=θV+p0) 及び垂直旋回曲率データを合わせれば、次の観測方程式が導かれる。
【0094】
【数30】
【0095】
υV[k]はE(υV)=0,E(υV[k]υTV[k'])=ΣυVδkk' の観測ノイズを表している。いま、E(ωV[k]υTV[k'])=O(3+p+q+2)×3 と仮定すると、以下のようなカルマンフィルタが構成され、未知変数ベクトルXV[k]の推定値ハットXV[k]を求めることが可能になる。
【0096】
【数31】
【0097】
【数32】
【0098】
【数33】
【0099】
【数34】
【0100】
【数35】
【0101】
式(31)、式(32)はフィルタ方程式、式(33)はカルマンゲイン、式(34)、式(35)は誤差の共分散行列方程式である。
【0102】
次に、図6に示した垂直方向状態推定装置502の構成について説明する。垂直方向状態推定装置502は、マシン状態方程式生成部503と、逐次状態変数ベクトル推定器507とから構成される。マシン状態方程式生成部503は、先端装置垂直旋回曲率モデル504と、先端装置垂直推進方向モデル505とを有する。
【0103】
なお、先端装置101と埋設管108とを垂直方向修正量ηV に基づいて垂直計画線の方向に推進させる方向制御装置は、以上の垂直方向状態推定装置502と図示しない垂直方向制御器とから構成される。
【0104】
垂直計画線の方向を示す垂直計画線情報は、オペレータによって設定され、垂直方向状態推定装置502と図示しない垂直方向制御器に入力される。埋設管推進機に設けられた圧力センサ303は、地上の基準液圧測定装置304で測定された基準液圧と自センサで測定した液圧との差に基づいて、自センサの基準水平線に対する垂直変位Ys を示す観測信号を出力する。
【0105】
垂直方向状態推定装置502は、基準水平線に対する垂直変位Ys を示す観測信号と、埋設管推進機のピッチング計202から出力された、垂直計画線に対する方向制御部104の傾斜角(ピッチング角)θp (=θV+p0)を示すピッチング角信号と、垂直方向制御器から出力された現時点での垂直方向修正量ηv と、前記垂直計画線情報とを入力信号とする。
【0106】
そして、垂直方向状態推定装置502の逐次状態変数ベクトル推定器507は、方向制御部104の垂直旋回曲率ρV を出力変数とし垂直方向修正量ηV を入力変数としたとき、単位推進長Lp 毎に得られる入力変数と出力変数との関係をARXモデルとして記述した先端装置垂直旋回曲率変化モデル504(式(24)、式(26))と、振動ヘッド部103の先端の垂直移動方向が振動ヘッド部103の長手方向と一致し、かつ中折れ部106の垂直移動方向が振動ヘッド部103の垂直移動方向から垂直旋回曲率ρV に振動ヘッド部103の長さLh を乗じた値を引いた方向と一致する先端装置垂直推進方向モデル505(式(25))と、前記入力信号とに基づいて、垂直計画線に対する先端装置101の垂直位置・姿勢パラメータθV[k],Yh[k]とARXモデルのパラメータaV1,・・・,aVna ,bV1,・・・,bVnb とをオンライン推定する。
【0107】
図示しない垂直方向制御器は、逐次状態変数ベクトル推定器507によって推定された垂直方向状態変数ベクトル推定値に基づいて次の垂直方向修正量ηV を計算する。垂直方向制御器で計算された垂直方向修正量ηV は、埋設管推進機に入力され、この垂直方向修正量ηV に基づいて方向修正ジャッキ111が駆動される。こうして、先端装置101が垂直計画線の方向に前進するよう方向制御が行われる。
【0108】
なお、垂直方向状態推定装置502は、演算装置、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータでは、マシン状態方程式生成部503は記憶装置に格納される。以上のようにして、オペレータの熟練度に依存せず、均質で高精度な埋設管推進機の状態推定を実現できる。
【0109】
[第3の実施の形態]
次に、垂直方向で推定されたパラメータを水平方向で流用することを考える。埋設管推進機の水平及び垂直方向における地盤との相互作用の仕方がほぼ同一であると仮定すると、同じ次数で定義した旋回運動特性に関するARXモデルの各パラメータも同一と見なせる。垂直方向の状態推定はセンシング情報の質からみて水平方向に比べて有利であるため、垂直方向で推定されたパラメータを水平方向で流用することを考える。このとき、式(15)、式(16)の状態変数ベクトルと状態方程式の代わりに次式を用いればよい。
【0110】
【数36】
【0111】
【数37】
【0112】
ただし、ハットaVi,ハットbVj,ハットkeVはそれぞれ垂直方向の状態推定において推定されたARXパラメータと地盤への食込み係数の推定値である。また、この場合の観測方程式は次のように与えられる。
【0113】
【数38】
【0114】
【発明の効果】
本発明によれば、先端装置の方向制御部の水平旋回曲率を出力変数とし、振動ヘッド部と方向制御部との水平方向の相対角である水平方向修正量を入力変数としたとき、単位推進長毎に得られる入力変数と出力変数との関係をARXモデルとして記述した水平旋回曲率変化モデル式を予め設定し、振動ヘッド部の先端の水平移動方向が振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ中折れ部の水平移動方向が振動ヘッド部の水平移動方向から水平旋回曲率に振動ヘッド部の長さを乗じた値を引いた方向と一致する水平推進方向モデル式を予め設定し、水平旋回曲率と先端装置の水平計画線に対する水平変位と水平方向修正量とを入力とし、水平旋回曲率変化モデル式と水平推進方向モデル式とに基づいて、水平計画線に対する先端装置の水平位置・姿勢パラメータとARXモデルのパラメータとを埋設管推進機の推進と同時に推定するようにしたことにより、埋設管掘進機の先端装置の状態変化モデルを基にして各種観測信号からオンラインで状態推定を行うようにしたので、その時点の先端装置の水平計画線に対する位置・姿勢や周囲地盤の土質に見合った埋設管推進機の旋回特性をARXモデルとして逐次推定することが可能となり、オペレータが熟練者か非熟練者かに関係なく、埋設管推進機の均質で高精度な状態推定を行うことができ、現在より先の予測情報を提供することができる。
【0115】
また、先端装置に搭載された光ファイバジャイロが出力する方位角の単位推進長毎の差分で与えられる水平旋回曲率と、先端装置に搭載された誘導磁界発生装置の位置を検出して得られる水平変位と、水平方向修正量とを用いることにより、水平計画線に対する先端装置の水平位置・姿勢パラメータとARXモデルのパラメータと光ファイバジャイロから出力された方位角のオフセットとを同時に推定することができる。
【0116】
また、先端装置の方向制御部の垂直旋回曲率を出力変数とし、振動ヘッド部と方向制御部との垂直方向の相対角である垂直方向修正量を入力変数としたとき、単位推進長毎に得られる入力変数と出力変数との関係をARXモデルとして記述した垂直旋回曲率変化モデル式を予め設定し、振動ヘッド部の先端の垂直移動方向が振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ中折れ部の垂直移動方向が振動ヘッド部の垂直移動方向から垂直旋回曲率に振動ヘッド部の長さを乗じた値を引いた方向と一致する垂直推進方向モデル式を予め設定し、垂直旋回曲率と先端装置の垂直計画線に対する垂直変位と垂直方向修正量とを入力とし、垂直旋回曲率変化モデル式と垂直推進方向モデル式とに基づいて、垂直計画線に対する先端装置の垂直位置・姿勢パラメータとARXモデルのパラメータとを埋設管推進機の推進と同時に推定するようにしたことにより、埋設管掘進機の先端装置の状態変化モデルを基にして各種観測信号からオンラインで状態推定を行うようにしたので、その時点の先端装置の垂直計画線に対する位置・姿勢や周囲地盤の土質に見合った埋設管推進機の旋回特性をARXモデルとして逐次推定することが可能となり、オペレータが熟練者か非熟練者かに関係なく、埋設管推進機の均質で高精度な状態推定を行うことができ、現在より先の予測情報を提供することができる。
【0117】
また、先端装置に搭載されたピッチング計が出力する傾斜角の単位推進長毎の差分で与えられる垂直旋回曲率と、先端装置に搭載された深度計により得られる垂直変位と、垂直方向修正量とを用いることにより、垂直計画線に対する先端装置の垂直位置・姿勢パラメータとARXモデルのパラメータとピッチング計から出力された傾斜角のオフセットとを同時に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の状態推定装置の推定対象となる埋設管推進機の全体構成を示す側面図である。
【図2】 図1の埋設管推進機の位置検知システムの構成を示すブロック図である。
【図3】 本発明の第1の実施の形態となる水平方向状態推定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】 埋設管推進機の水平方向の状態変化モデルを記述するための座標系の定義法を示す説明図である。
【図5】 埋設管推進機の旋回運動に伴う各部の移動ベクトルの状態を示す図である。
【図6】 本発明の第2の実施の形態となる垂直方向状態推定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】 埋設管推進機の垂直方向の状態変化モデルを記述するための座標系の定義法を示す説明図である。
【符号の説明】
101…先端装置、102…振動ヘッド、103…振動ヘッド部、104…方向制御部、106…中折れ部、107…元押装置、108…埋設管、109…地盤、110…発進立抗、111…方向修正ジャッキ、201…光ファイバジャイロ、202…ピッチング計、203…ローリング計、301…誘導磁界発生装置、302…誘導磁界検出装置、303…圧力センサ、304…基準液圧測定装置、402…水平方向状態推定装置、403…マシン状態方程式生成部、404…先端装置水平旋回曲率モデル、405…先端装置水平推進方向モデル、407…逐次状態変数ベクトル推定器、502…垂直方向状態推定装置、503…マシン状態方程式生成部、504…先端装置垂直旋回曲率モデル、505…先端装置垂直推進方向モデル、507…逐次状態変数ベクトル推定器。
Claims (10)
- 地盤に圧入される振動ヘッド部と中折れ部を介して前記振動ヘッド部に連結された方向制御部からなる先端装置と、この先端装置の後方に順次継ぎ足される埋設管とを、発進立坑の元押装置により所定の水平計画線の方向に推進させる埋設管推進機において、前記先端装置の水平位置・姿勢を推定する状態推定方法であって、
前記先端装置の方向制御部の水平旋回曲率を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との水平方向の相対角である水平方向修正量を入力変数としたとき、単位推進長毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した水平旋回曲率変化モデル式を予め設定する手順と、
前記振動ヘッド部の先端の水平移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の水平移動方向が前記振動ヘッド部の水平移動方向から前記水平旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さを乗じた値を引いた方向と一致する水平推進方向モデル式を予め設定する手順と、
前記水平旋回曲率と前記先端装置の水平計画線に対する水平変位と前記水平方向修正量とを入力とし、前記水平旋回曲率変化モデル式と前記水平推進方向モデル式とに基づいて、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータとを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する状態変数ベクトル推定手順とを実行することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定方法。 - 請求項1記載の埋設管推進機先端装置の状態推定方法において、
前記状態変数ベクトル推定手順は、前記先端装置に搭載された光ファイバジャイロが出力する方位角の単位推進長毎の差分で与えられる前記水平旋回曲率と、前記先端装置に搭載された誘導磁界発生装置の位置を検出して得られる前記水平変位と、前記水平方向修正量とを用いることにより、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記方位角のオフセットとを同時に推定することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定方法。 - 地盤に圧入される振動ヘッド部と中折れ部を介して前記振動ヘッド部に連結された方向制御部からなる先端装置と、この先端装置の後方に順次継ぎ足される埋設管とを、発進立坑の元押装置により所定の垂直計画線の方向に推進させる埋設管推進機において、前記先端装置の垂直位置・姿勢を推定する状態推定方法であって、
前記先端装置の方向制御部の垂直旋回曲率を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との垂直方向の相対角である垂直方向修正量を入力変数としたとき、単位推進長毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した垂直旋回曲率変化モデル式を予め設定する手順と、
前記振動ヘッド部の先端の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の垂直移動方向から前記垂直旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さを乗じた値を引いた方向と一致する垂直推進方向モデル式を予め設定する手順と、
前記垂直旋回曲率と前記先端装置の垂直計画線に対する垂直変位と前記垂直方向修正量とを入力とし、前記垂直旋回曲率変化モデル式と前記垂直推進方向モデル式とに基づいて、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータとを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する状態変数ベクトル推定手順とを実行することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定方法。 - 請求項3記載の埋設管推進機先端装置の状態推定方法において、
前記状態変数ベクトル推定手順は、前記先端装置に搭載されたピッチング計が出力する傾斜角の単位推進長毎の差分で与えられる前記垂直旋回曲率と、前記先端装置に搭載された深度計により得られる前記垂直変位と、前記垂直方向修正量とを用いることにより、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記傾斜角のオフセットとを同時に推定することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定方法。 - 請求項1および3記載の埋設管推進機先端装置の状態推定方法において、
前記水平旋回曲率変化モデル式のARXモデルと前記垂直旋回曲率変化モデル式のARXモデルが同じ次数を持ち、水平方向のARXモデルのパラメータが垂直方向について推定されたARXモデルのパラメータで置き換えられることを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定方法。 - 地盤に圧入される振動ヘッド部と中折れ部を介して前記振動ヘッド部に連結された方向制御部からなる先端装置と、この先端装置の後方に順次継ぎ足される埋設管とを、発進立坑の元押装置により所定の水平計画線の方向に推進させる埋設管推進機において、前記先端装置の水平位置・姿勢を推定する状態推定装置であって、
前記先端装置の方向制御部の水平旋回曲率を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との水平方向の相対角である水平方向修正量を入力変数としたとき、単位推進長毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した水平旋回曲率変化モデルと、
前記振動ヘッド部の先端の水平移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の水平移動方向が前記振動ヘッド部の水平移動方向から前記水平旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さを乗じた値を引いた方向と一致する水平推進方向モデルと、
前記水平旋回曲率と前記先端装置の水平計画線に対する水平変位と前記水平方向修正量とを入力とし、前記水平旋回曲率変化モデルと前記水平推進方向モデルとに基づいて、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータとを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する逐次状態変数ベクトル推定器とを有することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定装置。 - 請求項6記載の埋設管推進機先端装置の状態推定装置において、
前記逐次状態変数ベクトル推定器は、前記先端装置に搭載された光ファイバジャイロが出力する方位角の単位推進長毎の差分で与えられる前記水平旋回曲率と、前記先端装置に搭載された誘導磁界発生装置の位置を検出して得られる前記水平変位と、前記水平方向修正量とを用いることにより、水平計画線に対する前記先端装置の水平位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記方位角のオフセットとを同時に推定することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定装置。 - 地盤に圧入される振動ヘッド部と中折れ部を介して前記振動ヘッド部に連結された方向制御部からなる先端装置と、この先端装置の後方に順次継ぎ足される埋設管とを、発進立坑の元押装置により所定の垂直計画線の方向に推進させる埋設管推進機において、前記先端装置の垂直位置・姿勢を推定する状態推定装置であって、
前記先端装置の方向制御部の垂直旋回曲率を出力変数とし、前記振動ヘッド部と前記方向制御部との垂直方向の相対角である垂直方向修正量を入力変数としたとき、単位推進長毎に得られる前記入力変数と前記出力変数との関係をARXモデルとして記述した垂直旋回曲率変化モデルと、
前記振動ヘッド部の先端の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の長手方向と一致し、かつ前記中折れ部の垂直移動方向が前記振動ヘッド部の垂直移動方向から前記垂直旋回曲率に前記振動ヘッド部の長さを乗じた値を引いた方向と一致する垂直推進方向モデルと、
前記垂直旋回曲率と前記先端装置の垂直計画線に対する垂直変位と前記垂直方向修正量とを入力とし、前記垂直旋回曲率変化モデルと前記垂直推進方向モデルとに基づいて、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータとを前記埋設管推進機の推進と同時に推定する逐次状態変数ベクトル推定器とを有することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定装置。 - 請求項8記載の埋設管推進機先端装置の状態推定装置において、
前記逐次状態変数ベクトル推定器は、前記先端装置に搭載されたピッチング計が出力する傾斜角の単位推進長毎の差分で与えられる前記垂直旋回曲率と、前記先端装置に搭載された深度計により得られる前記垂直変位と、前記垂直方向修正量とを用いることにより、垂直計画線に対する前記先端装置の垂直位置・姿勢パラメータと前記ARXモデルのパラメータと前記傾斜角のオフセットとを同時に推定することを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定装置。 - 請求項6および8記載の埋設管推進機先端装置の状態推定装置において、
前記水平旋回曲率変化モデル式のARXモデルと前記垂直旋回曲率変化モデルのARXモデルが同じ次数を持ち、水平方向のARXモデルのパラメータが垂直方向について推定されたARXモデルのパラメータで置き換えられることを特徴とする埋設管推進機先端装置の状態推定装置。
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