JP3919911B2 - 方位姿勢基準装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は船舶、航空機、自動車等の航行体に装備し、航行体の方位及び姿勢角(ロール角及びピッチ角)を検出するためのストラップダウン型の方位姿勢基準装置に関し、より詳細には、アラインメントモードにおいてカルマンフィルタによって誤差を推定するように構成された方位姿勢基準装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空機には方位及び姿勢角を検出するための方位姿勢基準装置又はAHRS(Attitude Heading Reference System )が搭載されている。AHRSによって得られた方位及び姿勢信号等はオートパイロット装置に供給され、それによってオートパイロット装置は航空機を自動操縦する。こうして、AHRS及びオートパイロット装置はパイロットの感覚を補って安全な飛行を可能にする。
【0003】
方位姿勢基準装置には、プラットホーム型とストラップダウン型が知られている。プラットホーム型は、ジャイロ等のセンサをプラットホームに取り付け、このプラットホームを水平に且つ南北方向に指向させる機構を有する。ストラップダウン型は、ジャイロ等のセンサを航行体に直接取り付け、機械的なプラットホームや方位ジンバルを備えない。コンピュータ上にて架空のプラットホームを想定し、この架空のプラットホームを水平に且つ南北方向に指向させるように構成されている。ストラップダウン型の方位姿勢基準装置ではこの架空のプラットホームを制御するために座標変換マトリックスが使用される。
【0004】
ストラップダウン型の方位姿勢基準装置では、方位及び姿勢角の初期値を求める初期化又はアラインメントという作業がなされる。これは航行体又は方位姿勢基準装置の方位及び姿勢角の初期値を求めることであるが、基本的には方位及び姿勢誤差及びジャイロ誤差等を予め求め、その補正を演算することである。この初期化又はアラインメントは通常航行体の出発前になされるが、後に説明するように航行中に適宜行われてもよい。従って方位姿勢基準装置は先ず、アラインメントモードにて作動され、アラインメントが終了した後に方位及び姿勢角等が出力される。
【0005】
図3は従来の方位姿勢基準装置の構成の概略を示すブロック図である。航空機、船舶等の航行体には、Xジャイロ1A、Yジャイロ1B及びZジャイロ1Cが取り付けられ、これらの3つのジャイロは航行体の主要3軸、即ちXYZ軸方向の入力軸線を有するように配置される。Xジャイロ1A、Yジャイロ1B及びZジャイロ1CはそれぞれX軸周りの回転角速度、Y軸周りの回転角速度及びZ軸周りの回転角速度を検出する。これらのジャイロは例えば、リングレーザジャイロ、光ファイバジャイロ等の非回転式のジャイロよりなる。
【0006】
航行体には、更にX加速度計2A、Y加速度計2B及びZ加速度計2Cが取り付けられ、これらの3つの加速度計は航行体の主要3軸、即ちXYZ軸方向の入力軸線を有するように配置されている。X加速度計2A、Y加速度計2B及びZ加速度計2Cはそれぞれ水平面に対するX軸、Y軸及びZ軸の傾斜角度及び運動加速度を検出する。尚、航行体には、更に航行体の主要軸線、例えば、船首軸線、機体軸線に沿って速度センサ3が取り付けられる。
【0007】
方位姿勢基準装置は信号変換部4と信号演算部5と信号出力部6とを有する。信号変換部4はXジャイロ1A、Yジャイロ1B及びZジャイロ1Cの出力信号XG、YG、ZGとX加速度計2A、Y加速度計2B及びZ加速度計2Cの出力信号XA、YA、ZAを入力する。
【0008】
これらの信号は信号変換部4を介して信号演算部5に供給される。信号演算部5は信号変換部4から供給されたこれらの信号と速度センサ3から供給された(基準)速度信号REW、RSNを入力して、XYZ方向の角速度、ロール角、ピッチ角、方位角、緯度及び経度等を演算する。これらの値は信号出力部6を経由して外部へ供給される。
【0009】
図4を参照してカルマンフィルタを用いた方位姿勢基準装置のアラインメントを説明する。この例は、本願出願人と同一の出願人によって平成9年6月23日付けにて出願された特願平9−165794号に開示されたものであり、詳細は同出願を参照されたい。図4は方位姿勢基準装置の信号演算部5の構成例を示す。信号演算部5は図示のように、CTM演算部(座標変換マトリックス演算部)21、加速度水平成分演算部22、速度水平成分演算部23及び方位姿勢誤差演算部24を有する。
【0010】
CTM演算部(座標変換マトリックス演算部)21は信号変換部4より供給されたX、Y、Zジャイロ信号XG、YG、ZGを入力し、航行体座標を局地水平面上の局地水平座標系に変換するための座標変換マトリックス(CTM)を演算する。この座標変換マトリックスは方位姿勢誤差演算部24からの修正トルク信号によって時々刻々誤差修正される。
【0011】
CTM演算部21は座標変換マトリックスによって局地水平座標系の角速度ω1 、ω2 、ω3 を演算し、それを時々刻々積分する。それによって方位角及び姿勢角が求められる。一方、X、Y、Zジャイロ信号XG、YG、ZGはXレート、Yレート及びZレートとして信号出力部6に供給される。
【0012】
加速度水平成分演算部22は信号変換部4より供給されたX、Y、Z加速度計信号XA、YA、ZAと、CTM演算部21より供給されたCTM信号、即ち、座標変換マトリックスを入力して、東西方向の加速度の水平成分AEWと南北方向の加速度の水平成分ASNを演算する。
【0013】
速度水平成分演算部23は加速度水平成分演算部22より供給され東西方向及び南北方向の加速度の水平成分AEW、ASNを入力し、それを積分して東西方向及び南北方向の速度の水平成分VEW、VSNを演算する。速度の水平成分信号VEW、VSNは、方位姿勢誤差演算部24に供給される。
【0014】
方位姿勢誤差演算部24は、速度の水平成分信号VEW、VSNと速度センサ3から供給された(基準)速度信号REW、RSNを入力して両者の偏差δEW、δSNを演算し、この偏差δEW、δSNに基づいて方位及び姿勢角の誤差を推定演算する。この方位及び姿勢角の誤差の推定値は修正トルク信号としてCTM演算部21の供給される。方位姿勢誤差演算部24におけるこの推定演算はカルマンフィルタを用いてなされる。
【0015】
ここで方位姿勢誤差演算部24の主要機能であるカルマンフィルタの概要を簡単に説明する。システムは1次の微分方程式によって記述されることができるものとする。
【0016】
【数1】
d〔x〕/dt=〔A〕〔x〕+〔η〕
【0017】
この式の各項は次のようなものである。
〔x〕:最適推定値の状態ベクトル(n次ベクトル)
〔A〕:システム行列(n×n行列)
〔η〕:システム外乱ベクトル(n次のベクトル)
この式を遷移行列法によって離散形に変形すると次のようになる。
【0018】
【数2】
〔x(t+Δt)〕=〔Φ〕〔x(t)〕+〔G〕〔η〕
【0019】
尚、Φ及びGは次の式によって表される。
【0020】
【数3】
Φ=I+AΔt+(Δt2 /2)・A2
G=ΦΔt〔I−(Δt/2)・A〕
【0021】
Iは単位行列である。観測系は次の式によって表される。
【0022】
【数4】
〔y〕=〔H〕〔x〕+〔v〕
【0023】
この式の各項は次のようなものである。
〔y〕:観測値の状態ベクトル(m次ベクトル)
〔H〕:観測行列(m×n行列)
〔v〕:観測外乱ベクトル(n×n行列)
システムが数1の式〜数4の式によって記述されることができる場合には、システムの状態ベクトル、即ち、最適推定値x(t+Δt,t+Δt)は次の式によって求められる。
【0024】
【数5】
P(t+Δt,t)=Φ・P(t,t)ΦT +G(Q/Δt)GT
K(t+Δt,t)=P(t+Δt,t)HT 〔H・P(t+Δt,t)HT +R〕-1
x(t+Δt,t)=Φ・x(t,t)
x(t+Δt,t+Δt)=x(t+Δt,t)+K(t+Δt,t)〔y−H・x(t+Δt,t)〕
P(t+Δt,t+Δt)=〔I−K(t+Δt,t)・H〕P(t+Δt,t)
【0025】
Kはカルマンゲイン、Pはシステムの状態ベクトルの誤差共分散行列、Qはシステム外乱ベクトルの誤差共分散行列、Rは観測外乱ベクトルの誤差共分散行列であり、それぞれ次のように表される。尚、右辺のEは期待値を表す。
【0026】
【数6】
P=E〔x,xT 〕
Q=E〔η,ηT 〕
R=E〔v,vT 〕
【0027】
数4の式の各項は次のような意味を有する。P(t,t)は現時刻tにおける誤差共分散行列、P(t+Δt,t)は現時刻tにて予測した時刻t+Δtの誤差共分散行列の予測値であり、現時刻tにおけるシステム誤差の統計量がΔt後に如何なる値に変化するのかを予想した期待値である。
【0028】
K(t+Δt,t)は現時刻tにて時刻t+Δtにおけるシステム誤差を推定するためのカルマンゲインである。x(t+Δt,t)は現時刻tにて予測した時刻t+Δtにおけるシステム誤差の最適予測値であり、現時刻tの誤差x(t,t)に係数Φを乗じて得られる。
【0029】
x(t+Δt,t+Δt)は時刻t+Δtにて推定した時刻t+Δtのシステム誤差の最適推定値である。この最適推定値は、現時刻tにおけるシステム誤差の予測値x(t+Δt,t)を、観測値と最適予測値の偏差〔y−H・x(t+Δt,t)〕にカルマンゲインKを乗じた値で修正することによって求められる。最適推定値によってシステム誤差が修正される。
【0030】
P(t+Δt,t+Δt)は時刻t+Δtにて推定した時刻t+Δtの誤差共分散行列の最適推定値である。この推定値は、誤差共分散行列の予測値P(t+Δt,t)をカルマンゲインKを用いて修正することによって得られる。
【0031】
カルマンフィルタによって位置及び姿勢角を推定する場合に、観測値として複数のパラメータを選択することができる。これらのパラメータに対して重み付けをすることができる。推定の重み付けに寄与するのはカルマンゲインKである。カルマンゲインKは、どの観測値からどの状態ベクトルをどの程度に推定するかを表す。
【0032】
カルマンゲインKは上述の誤差共分散行列P,Q,Rによって変化する。従って、設計値として、状態ベクトルの誤差共分散行列Pの初期値PI 、システム外乱ベクトルの誤差共分散行列Q、観測外乱ベクトルの誤差共分散行列Rの値を設定すればよい。
【0033】
図5は方位姿勢誤差演算部24の構成例を示す。本例の方位姿勢誤差演算部24は、数5の第1式の演算によって状態ベクトルの誤差共分散行列P(t+Δt,t)を求める誤差共分散行列演算部301と数5の第2式の演算によってカルマンゲインK(t+Δt,t)を求めるカルマンゲイン演算部302と数5の第3式の演算によってシステム誤差の最適予測値x(t+Δt,t)を求める最適予測値演算部303と数5の第5式の演算によって誤差共分散行列の推定値P(t+Δt,t+Δt)を求める誤差共分散行列修正演算部304と数5の第4式の演算によってシステム誤差の最適推定値x(t+Δt,t+Δt)を求める最適推定値演算部305とを有する。
【0034】
最適推定値演算部305によって求められたシステム誤差の最適推定値x(t+Δt,t+Δt)は修正トルク信号として座標変換マトリックス演算部21に供給される。それによって座標変換マトリックス演算部21は座標変換マトリックスの誤差修正を行う。その結果は誤差共分散行列演算部301及び誤差共分散行列修正演算部304の出力として現れる。最適予測値演算部303は、誤差共分散行列演算部301及び誤差共分散行列修正演算部304の出力を入力して、それを状態変数に影響させるための演算を行う。
【0035】
【発明が解決しようとする課題】
ストラップダウン方式の方位姿勢基準装置では、航行体座標系又は方位姿勢基準装置座標系を局地水平座標系に変換するための座標変換マトリックス(CTM)を使用する。従って、方位及び姿勢角に関する情報は座標変換マトリックス(CTM)に取り込まれ、方位及び姿勢角(ロール角及びピッチ角)はマトリックス化されている。これは各座標系の間における変数変換には必ず所定の定義されたロジックが存在し、このロジックを無視すると変数変換の際に予期しない誤差が発生する結果となる。
【0036】
図6を参照して説明する。例えば、航行体座標系から局地水平座標系への変換が、方位角⇒ピッチ角⇒ロール角の順に定義付けられている場合、局地水平座標系から航行体座標系への逆変換は、ロール角⇒ピッチ角⇒方位角の順にしなければ元の航行体座標系に戻らない。以下に簡単な例を挙げて説明する。航行体座標系から局地水平座標系への座標変換をピッチ角β⇒ロール角αの順に行い、局地水平座標系から航行体座標系への座標変換をピッチ角β⇒ロール角αの順に行うと、得られた航行体座標系は元の航行体座標系に戻らず、角度γの方位角誤差が生ずる。
【0037】
図6Aにて、先ず航行体座標系をピッチ軸P−P周りに回転角度βだけ回転する。それによってロール軸R−Rは傾斜してO−R’となる。次に、この座標系を、傾斜したロール軸O−R’周りに回転角度αだけ回転する。それによってピッチ軸P−Pは傾斜してO−P’となり局地水平座標系P’−O−R’が得られる。
【0038】
次に、この局地水平座標系を、傾斜したピッチ軸O−P’周りに回転角度βだけ反対方向に回転すると、破線にて示すようにロール軸はO−R”となる。この座標系をこのロール軸O−R”周りに回転角度αだけ反対方向に回転すると、航行体座標系が得られる。しかしながらこの航行体座標系にて、ロール軸及びピッチ軸は元の平面上に戻っているが、ロール軸O−R”は元のロール軸O−Rに一致しない。
【0039】
図6Bに示すように、座標変換前のロール軸O−Rと座標変換を2度行った後のロール軸O−R”との間の角度γは次の式によって求められる。
【0040】
【数7】
tanγ=tanα・sinβ
γ=tan-1(tanα・sinβ)
【0041】
このような方位誤差γは座標変換マトリックス(CTM)を使用するストラップダウン型の方位姿勢基準装置のアラインメントにおいて、時々刻々CTM修正する場合には必ず生ずる誤差である。即ち、時々刻々CTM修正を行うと、座標変換の定義を無視することになり、当然、無理に座標軸が水平になるような演算をすれば方位誤差が生ずる欠点がある。
【0042】
カルマンフィルタを用いたアラインメントは、起立系及び指北系を適用したアラインメントに比べて高速且つ未知変数の推定及び修正が可能である長所を有する。しかしながら、姿勢角誤差と方位角誤差を同時に推定し、座標変換マトリックス(CTM)の姿勢角修正及び方位角修正を行う場合、方位角誤差の推定には姿勢角誤差の推定に比べて、長時間を要する欠点がある。
【0043】
また、カルマンフィルタを用いたアラインメントにて時々刻々CTM修正を行う場合、方位角修正を行わずに姿勢角修正だけを行う状態が起きる。これは座標変換において方位軸周りの誤差修正を行わずにピッチ軸周り及びロール軸周りの誤差修正だけを行うこととなり、座標変換誤差を生ずる。
【0044】
本発明は斯かる点に鑑み、座標変換マトリックス(CTM)を使用するストラップダウン型の方位姿勢基準装置において、座標変換誤差が生ずることがないアラインメントを迅速に実行することができるようにすることを目的とする。
【0045】
本発明は斯かる点に鑑み、座標変換マトリックス(CTM)を使用するストラップダウン型の方位姿勢基準装置において、カルマンフィルタを用いたアラインメントを実行する場合、座標変換誤差が生ずることがなく迅速にアラインメント実行することができるようにすることを目的とする。
【0046】
【課題を解決するための手段】
本発明によると、方位姿勢基準装置は、航行体の主要3軸に沿った入力軸線を有し航行体に取り付けられた3個のジャイロと3個の加速度計および速度センサからの出力を信号演算に用いて方位姿勢角を出力するストラップダウン型の方位姿勢基準装置において、3個のジャイロの出力を入力して座標変換マトリックスを演算するCTM演算部と、CTM演算部から出力された座標変換マトリックスと3個の加速度計の出力を入力して加速度の水平成分を求める加速度水平成分演算部と、加速度水平成分演算部の出力を入力し速度の水平成分を求める速度水平成分演算部と、速度水平成分演算部の出力と速度センサの出力を入力し比較することで姿勢誤差を推定する姿勢誤差演算部と、方位角の設定値を出力する方位設定部と、上記姿勢誤差演算部によって推定された姿勢誤差が予め定められた値に基づく確度にて推定されてから上記姿勢誤差の推定値によって座標変換の定義に従って上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正し、上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正がなされてから上記方位角の設定値によって上記座標変換マトリックスの方位誤差修正するように、姿勢誤差演算部の上記確度推定の判定出力に基づいて姿勢誤差演算部の姿勢誤差出力と方位設定部の方位誤差出力のタイミングを制御するための修正信号制御部とを有するように構成されている。姿勢誤差演算部はカルマンフィルタによって姿勢誤差を推定演算する。
【0047】
本発明によると、方位姿勢基準装置において、姿勢誤差演算部の出力と方位設定部の出力のタイミングを制御するための修正信号制御部が設けられている。
【0048】
本発明によると、ストラップダウン型方位姿勢基準装置のアラインメント方法は、航行体の主要3軸に沿った入力軸線を有し航行体に取り付けられた3個のジャイロと3個の加速度計および速度センサからの出力を信号演算に用いて方位姿勢角を出力するストラップダウン型の方位姿勢基準装置のアライメント方法において、3個のジャイロの出力を入力してCTM演算部により座標変換マトリックスを演算するステップと、上記CTM演算部から出力された座標変換マトリックスと3個の加速度計の出力を入力して加速度水平成分演算部により加速度の水平成分を求めるステップと、上記加速度水平成分演算部の出力を入力し速度水平成分演算部により速度の水平成分を求めるステップと、上記速度水平成分演算部の出力と速度センサの出力を入力し比較することで姿勢誤差演算部により姿勢誤差を推定するステップと、方位角の設定値を方位設定部により出力するステップと、上記姿勢誤差演算部によって推定された姿勢誤差が予め定められた値に基づく確度にて推定されてから上記姿勢誤差の推定値によって座標変換の定義に従って上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正し、上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正がなされてから上記方位角の設定値によって上記座標変換マトリックスの方位誤差修正するように、上記姿勢誤差演算部の上記確度推定の判定出力に基づいて修正信号制御部により上記姿勢誤差演算部の姿勢誤差出力と上記方位設定部の方位誤差出力のタイミングを制御するステップとを含むことを特徴とする。更に、このアラインメント方法は航行体の航行中に実行されることを特徴とする。
【0049】
こうして本発明によると、ストラップダウン型方位姿勢基準装置のアラインメントにおいて、時々刻々CTM修正を行う場合、略完全に推定した姿勢角誤差と方位角の設定値を使用するから、3軸の座標変換を定義に従って行うことが可能となり、座標変換誤差が生じない。
【0050】
【発明の実施の形態】
図面を参照して説明する前に本発明の概念を説明する。本発明によるアラインメントは次のような内容及びステップを含む。
(1)先ず姿勢角誤差の推定のみを行う。姿勢角誤差の推定は、好ましくはカルマンフィルタを用いて行う。従来のように方位及び姿勢角誤差の両者を推定する場合に比べて、方位角推定を行わないから、姿勢角誤差の推定速度が向上し、短時間の推定が可能となる。また、状態変数マトリックスの次数を下げることができるから、推定演算の高速化及び処理演算の負荷を軽減することができる。
(2)姿勢角誤差の推定値が所定の確度にて得られるようになったと判断されると、この姿勢角誤差の推定値によって座標変換の定義に従って座標変換マトリックス(CTM)の姿勢角誤差修正をする。即ち、姿勢角誤差が所定の確度によって推定されるまでは、座標変換マトリックス(CTM)の誤差修正は行わない。その理由は、発明が解決しようとする課題の欄にて説明したように、姿勢角誤差の推定値が正確でない場合に、それによって方位誤差γが増大し、方位誤差γに姿勢角誤差が累積的に蓄積されるメカニズムを除去するためである。
【0051】
(3)姿勢角誤差の推定値による座標変換マトリックス(CTM)の誤差修正が終了した後に、方位角の設定値によって座標変換マトリックス(CTM)を誤差修正する。方位角の設定値は、手動又は自動によって設定される。方位角の設定値を使用することによって、座標変換マトリックス(CTM)の方位誤差修正が迅速化される。
(4)こうして、アラインメントが短時間にて終了する。尚、座標変換マトリックス(CTM)の内容は、XYZジャイロの出力信号であるXレート、Yレート及びZレートによって刻々更新されており、航行体の運動によって誤差が生ずることはない。本例のアラインメントは航行体の出発前に実行してもよいが、短時間にて終了するため航行中に実行してもよい。例えば、本例のアラインメントを航空機に適用する場合、飛行前のアラインメントばかりでなく飛行中のアラインメント、即ち、インフライトアラインメントとして使用可能である。
【0052】
図1に本発明による方位姿勢基準装置の信号演算部5のアラインメント演算ブロックの詳細を示す。本例の信号演算部5は図示のように、CTM演算部(座標変換マトリックス演算部)21、加速度水平成分演算部22、速度水平成分演算部23、姿勢誤差演算部25、方位設定部26、修正信号制御部27及び2つのスイッチ部28、29を有する。
【0053】
本例の信号演算部5のアラインメント演算ブロックは図4に示した従来の信号演算部5のアラインメント演算ブロックと比較して、方位姿勢誤差演算部24の代わりに姿勢誤差演算部25、方位設定部26、修正信号制御部27及び2つのスイッチ部28、29が設けられている点が異なり、それ以外の部分、即ち、CTM演算部(座標変換マトリックス演算部)21、加速度水平成分演算部22及び速度水平成分演算部23は同様であってよい。
【0054】
姿勢誤差演算部25は速度水平成分演算部23より供給された速度の水平成分信号VEW、VSNと速度センサ3から供給された(基準)速度信号REW、RSNを入力して両者の偏差δEW、δSNを演算し、この偏差δEW、δSNに基づいて姿勢角の誤差を推定演算する。即ち、この偏差δEW、δSNをシステム誤差としてカルマンフィルタを用いて姿勢角誤差の最適推定値を演算する。
【0055】
本例の姿勢誤差演算部25はカルマンフィルタを用いて姿勢誤差の最適推定値を演算するが、方位誤差の推定演算しない。方位角の推定値は方位設定部26より出力される。方位設定部26は予め設定された方位角を保持している。修正信号制御部27は方位修正トルク信号と姿勢修正トルク信号の出力タイミングを制御する。
【0056】
上述のように、姿勢誤差が所定の確度にて推定されるようになったと判断されると姿勢誤差演算部25から修正信号制御部27へ判断信号が出力される。修正信号制御部27は姿勢誤差演算部25からの判断信号を入力すると、第1のスイッチ28に作動信号を供給する。それによってスイッチ28は開位置に変化し、姿勢誤差演算部25より出力された姿勢誤差の推定値は姿勢修正トルク信号として座標変換マトリックス演算部21に供給される。
【0057】
座標変換マトリックス演算部21にて座標変換マトリックスの姿勢誤差修正が終了したと判断されると姿勢誤差演算部25から修正信号制御部27へ終了信号が出力される。修正信号制御部27は姿勢誤差演算部25からの終了信号を入力すると、第2のスイッチ29に作動信号を供給する。それによってスイッチ29は開位置に変化し、方位設定部26より方位角の設定値が方位修正トルク信号として座標変換マトリックス演算部21に供給される。
【0058】
尚、図示の例にて、第1及び第2のスイッチ28、29は姿勢誤差演算部25及び方位設定部26とは別個に設けられているが、第1のスイッチ28を姿勢誤差演算部25に組み込み、第2のスイッチ29を方位設定部26に組み込んでもよい。
【0059】
図2を参照して本例による姿勢誤差演算部25の構成例を説明する。本例の姿勢誤差演算部25は図5に示した従来の方位姿勢誤差演算部24の構成と比較して、修正トルク信号出力制御部306が設けられている点が異なり、それ以外の構成は同様であってよい。
【0060】
最適推定値演算部305はカルマンフィルタによって姿勢角の誤差の最適推定値を演算するが、この姿勢角の誤差の最適推定値が高い確度にて得られるまでは出力しない。修正トルク信号出力制御部306は、姿勢角の誤差の最適推定値が確度が高い推定値であると判定すると、判定信号を生成し、修正信号制御部27に供給する。
【0061】
確度が高い推定値であるか否かは、例えば、最適推定値演算部305における推定演算の開始より経過した時間に基づいて判定してもよく、又は、カルマンフィルタ内の誤差共分散行列の値に基づいて判定してもよい。確度が高い推定値が得られてから姿勢角修正する理由は上述のように、逐次的に姿勢角誤差を修正することによって方位角誤差が累積的に生成するメカニズムを回避するためである。
【0062】
こうして、姿勢角誤差の推定値が高い確度で得られてから、この姿勢角誤差の推定値によって座標変換マトリックスの姿勢角修正を行う。修正トルク信号出力制御部306は、この姿勢角修正がなされたと判断すると、姿勢角修正終了信号を生成し、それを修正信号制御部27に供給する。
【0063】
こうして座標変換マトリックスの姿勢角誤差修正と方位角誤差修正を分離し、更に方位角誤差修正には方位角の設定値を使用することによってアラインメントの迅速化が達成される。
【0064】
以上本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されることなく特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更等が可能であることは当業者にとって理解されよう。
【0065】
【発明の効果】
本発明によると、座標変換マトリックスの姿勢角誤差修正と方位角誤差修正を分離し、更に方位角誤差修正には方位角の設定値を使用することによってアラインメントを短時間にて実行することができる利点がある。
【0066】
本発明によると、確度の高い姿勢角誤差の推定値と方位角の設定値を使用して3軸のアラインメントを行うから、3軸の座標変換を定義に従って行うことができ、座標変換誤差が生じない利点がある。
【0067】
本発明によると、アラインメントを短時間にて実行することができるから、航行体の出発時ばかりでなく航行中にもアラインメントを実施することができる利点がある。
【0068】
本発明によると、簡単な構成によってストラップダウン式の方位姿勢基準装置のアラインメントを短時間化することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による方位姿勢基準装置の信号演算部の構成例を示す図である。
【図2】本発明による方位姿勢基準装置の信号演算部の姿勢誤差演算部の構成例を示す図である。
【図3】従来の方位姿勢基準装置の構成例を示す図である。
【図4】従来の方位姿勢基準装置の信号演算部の例を説明するための説明図である。
【図5】従来の方位姿勢誤差演算部の信号演算部の方位姿勢誤差演算部の構成例を示す図である。
【図6】座標変換マトリックスに起因した方位誤差発生のメカニズムを説明するための説明図である。
【符号の説明】
1A,1B,1C ジャイロ、 2A,2B,2C 加速度計、 3 速度計、 4 信号入力部、 5 信号演算部、 6 信号出力部、 21 CTM演算部(座標変換マトリックス演算部、 22 加速度水平成分演算部、 23 速度水平成分演算部、 25 姿勢誤差演算部、 26 方位設定部、 27 修正信号制御部、 28,29 スイッチ部、
Claims (4)
- 航行体の主要3軸に沿った入力軸線を有し航行体に取り付けられた3個のジャイロと3個の加速度計および速度センサからの出力を信号演算に用いて方位姿勢角を出力するストラップダウン型の方位姿勢基準装置において、
3個のジャイロの出力を入力して座標変換マトリックスを演算するCTM演算部と、
上記CTM演算部から出力された座標変換マトリックスと3個の加速度計の出力を入力して加速度の水平成分を求める加速度水平成分演算部と、
上記加速度水平成分演算部の出力を入力し速度の水平成分を求める速度水平成分演算部と、
上記速度水平成分演算部の出力と速度センサの出力を入力し比較することで姿勢誤差を推定する姿勢誤差演算部と、
方位角の設定値を出力する方位設定部と、
上記姿勢誤差演算部によって推定された姿勢誤差が予め定められた値に基づく確度にて推定されてから上記姿勢誤差の推定値によって座標変換の定義に従って上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正し、上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正がなされてから上記方位角の設定値によって上記座標変換マトリックスの方位誤差修正するように、上記姿勢誤差演算部の上記確度推定の判定出力に基づいて上記姿勢誤差演算部の姿勢誤差出力と上記方位設定部の方位誤差出力のタイミングを制御するための修正信号制御部と、
を有するように構成された方位姿勢基準装置。 - 請求項1記載の方位姿勢基準装置において、
上記姿勢誤差演算部はカルマンフィルタによって上記姿勢誤差を推定演算することを特徴とする方位姿勢基準装置。 - 航行体の主要3軸に沿った入力軸線を有し航行体に取り付けられた3個のジャイロと3個の加速度計および速度センサからの出力を信号演算に用いて方位姿勢角を出力するストラップダウン型の方位姿勢基準装置のアライメント方法において、
3個のジャイロの出力を入力してCTM演算部により座標変換マトリックスを演算するステップと、
上記CTM演算部から出力された座標変換マトリックスと3個の加速度計の出力を入力して加速度水平成分演算部により加速度の水平成分を求めるステップと、
上記加速度水平成分演算部の出力を入力し速度水平成分演算部により速度の水平成分を求めるステップと、
上記速度水平成分演算部の出力と速度センサの出力を入力し比較することで姿勢誤差演算部により姿勢誤差を推定するステップと、
方位角の設定値を方位設定部により出力するステップと、
上記姿勢誤差演算部によって推定された姿勢誤差が予め定められた値に基づく確度にて推定されてから上記姿勢誤差の推定値によって座標変換の定義に従って上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正し、上記座標変換マトリックスの姿勢誤差修正がなされてから上記方位角の設定値によって上記座標変換マトリックスの方位誤差修正するように、上記姿勢誤差演算部の上記確度推定の判定出力に基づいて修正信号制御部により上記姿勢誤差演算部の姿勢誤差出力と上記方位設定部の方位誤差出力のタイミングを制御するステップと、
を含むように構成された方位姿勢基準装置のアライメント方法。 - 航行体の航行中に実行されることを特徴とする請求項3記載のストラップダウン型方位姿勢基準装置のアライメント方法。
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