JP4419240B2 - 溶融亜鉛メッキ処理用ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は溶融亜鉛メッキ処理用ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、鋼板を亜鉛メッキ処理して亜鉛メッキ鋼板を得る工程で図7に示すようなロールが用いられている。
同図において10は鋼板、12はメッキ槽、14は亜鉛浴、16はその亜鉛浴14中に浸漬されたシンクロール(溶融亜鉛メッキ処理用ロール)、18はメッキ処理された亜鉛メッキ鋼板を引上げ支持するサポートロール(溶融亜鉛メッキ処理用ロール)である。
【0003】
従来にあっては、上記シンクロール16としてオーステナイト系ステンレス鋼から成るものとマルテンサイト系ステンレス鋼から成るものが用いられていた。またサポートロール18として、オーステナイト系ステンレス鋼から成るもの,マルテンサイト系ステンレス鋼から成るもの及び純鉄から成るものが用いられていた。
【0004】
またこれらシンクロール16,サポートロール18は何れもロール本体と、軸受によって回転可能に支持される両端部の軸部とが一体構造物として構成されていた。
即ち、シンクロール16についてはロール本体と軸部とが例えば鋳造によって一体に成形され、またサポートロール18については鍛造によってロール本体と軸部とが一体に成形されていた。
【0005】
ところで、従来の溶融亜鉛メッキ処理においては通常の場合にZn−0.2重量%Alから成る溶融亜鉛浴が使用されて来たが、近年になって亜鉛メッキ層の高級化、即ち耐食性のより一層の向上のために溶融亜鉛浴中のAl添加量を多くする(例えば溶融亜鉛浴中に5〜55重量%Al及びその他の元素を添加する)傾向があり、上記シンクロール16,サポートロール18は厳しい腐食環境、摩耗し易い条件下で使用される。
【0006】
そこで例えばシンクロール16にあっては、ロール本体の表面に溶融亜鉛に対し高い耐食性を有する粉体を溶射した状態で使用するようにしている。
但しシンクロール16,サポートロール18何れも軸部についてはそのままであり、而してそれら軸部については、別途溶射又はプラズマアーク溶接によって高硬度高耐食材の層を表面に形成処理したスリーブを外側に嵌め合せて軸部に溶接接合し、そのスリーブを介して軸部を軸受により回転可能に支持するようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで上記スリーブとしては通例オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316等)から成るものが用いられており、従ってマルテンサイト系ステンレス鋼から成るシンクロール或いはサポートロールの場合、このようなスリーブを軸部の外側に嵌め合せた状態で、溶接によりそれらを一体的に接合すると、マルテンサイト系ステンレス鋼から成る軸部が部分的に焼きが入った状態となって、軸部の材質が部分的に劣化してしまう(低延性となる)。
また溶接による劣化を可及的に防ぐべく、溶接に際して予熱と後熱とを行うことが必要となり、この場合溶接が大変面倒となる。
【0008】
更にまた、上記シンクロール16,サポートロール18は亜鉛メッキ操業を続けるうちに軸部が腐食して来るため、その腐食箇所を溶接補修することが行われるが、この場合においても上記と同様に軸部が部分的に劣化してしまい、また溶接に際して予熱,後熱が必要となって、現場での溶接補修が困難であるといった問題があった。
【0009】
この他、軸部とスリーブとで材質が異なっているため、それらが加熱されたとき、例えばシンクロール16を高温の亜鉛浴(亜鉛浴は約470℃程度の高温である)14中に浸漬する際などに軸部及びスリーブが加熱されると、それら軸部とスリーブとで材質の違いにより熱膨張係数が異なって来るために、それらの熱膨張差によって応力が発生し、これがロールの振れの原因になる恐れがある等の不都合が生じていた。
以上シンクロール,サポートロールを中心として説明したが、溶融亜鉛メッキ処理用の他のロールにおいても同様の問題が生じ得る。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の溶融亜鉛メッキ処理用ロールはこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1のものは、鋼板を亜鉛浴に浸漬して亜鉛メッキ処理する際に用いる、マルテンサイト系ステンレス鋼にて構成されたロール本体と、両端部の軸部と、該軸部の外側に嵌め合せたオーステナイト系ステンレス鋼から成るスリーブとを有する溶融亜鉛メッキ処理用ロールであって、前記軸部をオーステナイト系ステンレス鋼にて前記ロール本体と別体に構成した上、該軸部を該ロール本体の嵌合孔に差込嵌合し、一体的に組み付けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記軸部を前記嵌合孔に差込嵌合した後、溶接接合して該ロール本体に一体的に組み付けたことを特徴とする。
【0012】
【作用及び発明の効果】
上記のように本発明では、軸部をロール本体と別体に構成し、そしてその軸部をロール本体の嵌合孔に差込嵌合し、一体的に組み付けるようになすとともに、そのロール本体についてはマルテンサイト系ステンレス鋼にて、また軸部についてはこれとは別材質のオーステナイト系ステンレス鋼にて構成しており、この場合軸部の材質がその外側に嵌め合わされるスリーブと同材質のオーステナイト系ステンレス鋼であるため、軸部とスリーブとを溶接する際に軸部が溶接により部分的に劣化するのを防ぐことができ、軸部とスリーブとの溶接を容易に行い得るようになる。
更にまた、腐食に伴って軸部を溶接補修する際においても予熱及び後熱が不要となり、現場での溶接補修を容易に行い得るようになる。
【0013】
また軸部とスリーブとの熱膨張係数を同じとなし得るため、使用中に熱膨張差によって応力が発生するといったことを防止でき、従ってその応力に起因するロールの振れ等の不都合も解消することができる。
【0014】
本発明においては、軸部を嵌合孔に差込嵌合した後、溶接接合してロール本体に一体的に組み付けるようになすことができる(請求項2)。
このようにすることで、軸部とロール本体とをそれぞれ別体に構成しつつ、組付けによって強固に一体化することができ、またその溶接接合に際して、軸部がオーステナイト系ステンレス鋼から成っているため軸部を部分的に劣化させてしまうといった問題も回避することができる。
【0015】
【実施例】
次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、16はシンクロール(溶融亜鉛メッキ処理用ロール)で、18はサポートロール(溶融亜鉛メッキ処理用ロール)である。
ここでシンクロール16は直径が約φ500mm程度のものであり、また長さが2000mm程度の大型のものである。
一方サポートロール18は、直径が約φ250mm程度であり、長さが2000mm程度のものである。
【0016】
シンクロール16は、図2に示しているようにロール本体20と、図3にも示しているようにこれとは別体に構成された軸部22とを有している。
ロール本体20は内部が中空構造とされていて、図1にも示しているようにその内部から外部にかけて貫通する貫通孔23が形成されている。
【0017】
ロール本体20は、軸方向両端部に突出形態のボス部24を有している。これらボス部24には、その中心部に嵌合孔26が形成されており、そこに軸部22が差込嵌合された上、溶接接合されてロール本体20に一体的に組み付けられている。
【0018】
このシンクロール16は、軸部22においてその外側にスリーブ28が嵌め合わされて溶接接合され、そのスリーブ28を介して軸部22が軸受により回転可能に支持される。
本例において、ロール本体20はマルテンサイト系ステンレス鋼から成っており、また一方軸部22はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316又はSUS316L)から成っている。
【0019】
一方サポートロール18もまた、図4に示しているようにロール本体30と、図5にも示しているようにこれとは別体に構成された軸部32とを有している。
ロール本体30は軸方向両端部にボス部34を有しており、そのボス部34に形成された嵌合孔36に軸部32が差込嵌合された上、溶接接合によりロール本体30に一体的に組み付けられている。
このサポートロール18もまた、軸部32においてその外側にスリーブ28が嵌め合わされた上溶接接合され、そのスリーブ28を介して軸部32が軸受により回転可能に支持される。
【0020】
このサポートロール18もまた、ロール本体30がマルテンサイト系ステンレス鋼から成っており、また軸部32がオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316又はSUS316L)から成っている。
尚、図2におけるスリーブ28及び図4におけるスリーブ28もまた、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316)から成っている。
【0021】
本例によれば、軸部22,32とスリーブ28とを同材質のオーステナイト系ステンレス鋼としているため、軸部22,32とスリーブ28とを溶接する際に軸部22,32が溶接により部分的に劣化するのを防ぐことができ、軸部22,32とスリーブ28との溶接を容易に行うことができるとともに、腐食に伴って軸部22,32を溶接補修する際、予熱及び後熱が不要であり、現場での溶接補修を容易に行うことができる。
【0022】
また軸部22,32とスリーブ28との熱膨張係数を同じとなし得るため、熱膨張差によって応力が発生するといったことがなく、従ってその応力がシンクロール16,サポートロール18の振れの原因になる恐れがあるといった不都合を解消することができる。
【0023】
尚、上記実施例ではスリーブ28がフランジなしの円筒形状のものとして示してあるが、図6に示しているようにフランジ付きのスリーブ28を用いる場合もあり、この場合同図に示しているように、溶接部38においてそのフランジ裏面を溶接するようになすことができる。
【0024】
以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上記シンクロール,サポートロール以外の溶融亜鉛メッキ処理用ロールに対して適用することも可能であるなど、その主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるシンクロールとサポートロールとを示す図である。
【図2】図1のシンクロールを示す図である。
【図3】図1及び図2のシンクロールをロール本体と軸部とに分けた状態で示す図である。
【図4】図1のサポートロールを示す図である。
【図5】図1及び図4のサポートロールをロール本体と軸部とに分けた状態で示す図である。
【図6】スリーブがフランジ付きである場合の溶接構造の図である。
【図7】溶融亜鉛メッキ処理方法をシンクロール及びサポートロールとともに示す図である。
【符号の説明】
10 鋼板
14 亜鉛浴
16 シンクロール(溶融亜鉛メッキ処理用ロール)
18 サポートロール(溶融亜鉛メッキ処理用ロール)
20,30 ロール本体
22,32 軸部
26,36 嵌合孔
Claims (2)
- 鋼板を亜鉛浴に浸漬して亜鉛メッキ処理する際に用いる、マルテンサイト系ステンレス鋼にて構成されたロール本体と、両端部の軸部と、該軸部の外側に嵌め合せたオーステナイト系ステンレス鋼から成るスリーブとを有する溶融亜鉛メッキ処理用ロールであって、
前記軸部をオーステナイト系ステンレス鋼にて前記ロール本体と別体に構成した上、該軸部を該ロール本体の嵌合孔に差込嵌合し、一体的に組み付けたことを特徴とする溶融亜鉛メッキ処理用ロール。 - 請求項1において、前記軸部を前記嵌合孔に差込嵌合した後、溶接接合して該ロール本体に一体的に組み付けたことを特徴とする溶融亜鉛メッキ処理用ロール。
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