JP4418180B2 - 炭素系複合材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、炭素系複合材料に関し、特に、耐酸化性に優れる炭素系複合材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
炭素や炭化ケイ素などの炭素系材料は耐熱性に優れるため、耐熱性部材の基材として用いられてきている。また、炭素系材料はその酸化を防止する必要がある。このため、緻密な酸化物層をその表面に付与して、酸素や水蒸気などの腐食種が炭素系材料の内方向へ拡散するのを防止することが行われている。例えば、炭素材料の表面にケイ素層を介して、炭化ケイ素層を形成し、その上に二酸化ケイ素とムライトとを被覆したものがある(非特許文献1)。また、炭素材料の表面に炭化ケイ素、YSix、YSiOの順に被覆したものなどがある(非特許文献2)。いずれも、多層被覆構造を採るが、酸化物層が緻密でないために十分な耐酸化性を得ることができなかった。
【0003】
緻密な酸化層を得るため、炭素材料の表面にSiCやMoSi等のセラミックスフィラーを含むガラスを溶融して被覆する方法がある(特許文献1)。しかし、次世代ガスタービンに予定される使用環境である1500℃超の温度下では、ガラスが再溶融し、結果として、ガラス融液中を腐食種が高速拡散するために十分な耐酸化性を得ることができなかった。
【0004】
さらに、耐酸化性を付与するのに用いられるSi系化合物は、水蒸気酸化によって生成したガスの平衡蒸気圧が高く、揮発により被覆層が減容してしまう。
【0005】
一方、ケイ素化合物以外の被覆層も検討されている。例えば、ケイ素系材料の表面に、Taを被覆する方法が開示されている(特許文献2)。この方法では、Taが低温型(β)から高温型(α)に相変態する際に著しく体積収縮するため、この相変態を抑制するべく、Alなどの酸化物を添加して、高温でも低温型を存在させるよう相変態制御することにより耐熱性を確保している。しかしながら、この開示に低温型を利用することしか記載されていない。
以上のように、1100℃を超える高温環境で炭素系材料に良好な耐食性を付与する技術は存在していなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−167860号公報
【特許文献2】
米国特許出願公開第2002/0136835
【非特許文献1】
フリッツ他8名、「ジャーナルオブヨーロピアンセラミックソサエティ」(Journal of European Ceramic Society)(英国), 1998, p.2351-2364
【非特許文献2】
近藤雅之他3名、日本金属学会誌, 1999, 63, p.851-858
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、炭素系材料に優れた耐酸化性を付与することを一つの目的とする。また、本発明は、優れた耐酸化性を備える耐熱部材を提供することを、他の一つの目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題に鑑み、耐酸化層である酸化物層が高温においてイオン導電性を発現することにより酸素イオンなどの腐食種イオンが内方拡散してしまうことに着目し、これらの腐食種イオンの移動を内層にてブロックすることにより耐食性を向上させる手法を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【0009】
本発明の炭素系複合材料は、炭素系基体と、当該炭素系基体表面に付与された電子伝導性層と、この電子伝導性層表面に付与された酸化物層、とを備えている。この材料によれば、腐食種イオンの材料の内方向への拡散が電子伝導性層表面にてブロックされるため、炭素系基体の酸化が抑制される。なお、このイオンブロッキング作用による耐酸化性は、以下のように説明することができる。すなわち、腐食種である酸素分子等は前記酸化物層の表面に吸着すると、酸素イオン等となり、それが前記酸化物層内の酸素濃度勾配に従い内方向に拡散する。前記酸化物層と前記電子伝導性層の界面に到達した酸素イオン等は、前記電子伝導性層中を移動できないため、炭素系基体の酸化を防止することができる。
【0010】
この炭素系複合材料において、前記電子伝導性層は、非酸化物を主体とし、前記複合材料の使用時温度において、当該非酸化物の酸化反応が進行する際の平衡酸素分圧が、炭素が酸化する際の平衡酸素分圧よりも大きいことが好ましい。当該形態によれば、有効に炭素系基体の酸化を防止することができる。また、前記電子伝導性層は炭化タンタルを主体とすることができる。さらに、前記酸化物層は、前記複合材料の使用時温度でイオン伝導性を発現する形態とすることができる。さらに、これらの酸化物層として、スカンジウム、クロム、鉄、ガリウム、及びスズからなる群から選択される1種あるいは2種以上の金属の酸化物を含む酸化タンタル(α型)を主体とすることができる。第1の炭素系複合材料の好ましい形態は、前記電子伝導性層は炭化タンタルを主体とし、前記酸化物層は、スカンジウム、クロム、鉄、ガリウム、及びスズからなる群から選択される1種あるいは2種以上の金属の酸化物を含む酸化タンタル(α型)を主体とするものである。なお、このような複合材料の前記炭素系基体及び/又は電子伝導性層に電子を充填することにより、前記酸化物層と前記電子伝導性層の界面近傍に到達した酸素イオン等は、前記電子伝導性層に対して電気的に反発する(電気的反発作用)。その結果として、前記電子伝導性層への酸素イオン等の吸着が抑制されるため、高温酸化雰囲気下に長期間曝しても、前記電子伝導性層の酸化を抑制することができる。
【0011】
本発明の炭素系複合材料としては、前記酸化物層が前記複合材料の使用時温度でn型半導体としての電子伝導性を発現することも他の一つの好ましい形態である。かかる炭素系複合材料にあっては、カソード防食作用による耐酸化性を発現することができる。なお、カソード防食作用による耐酸化性は次のように説明することができる。すなわち、使用時温度においてn型半導体としての電子伝導性を発現した酸化物層表面に電磁波が照射されると、その表面には電子と正孔とが生成し、電子は酸化物層内を通過して電子伝導性層や炭素系基体を卑として、酸素イオンあるいは水酸化イオンによる電子伝導性層や炭素系基体の酸化を抑制する。一方、酸化物層の表面に生成した正孔は高温下においては水蒸気と反応して酸素を生成するが、過剰の正孔が生じる場合には、水蒸気との反応でも正孔が残留し表面が正に分極することとなり、酸素分子のイオン化吸着も抑制される。
【0012】
この電子伝導性層は、非酸化物を主体とし、当該非酸化物の酸化反応が進行する際の平衡酸素分圧が、炭素が酸化する際の平衡酸素分圧よりも大きいことが好ましい。また、前記酸化物は、タンタルと、スカンジウム、クロム、鉄、ガリウム、及びスズからなる群から選択される1種あるいは2種以上との金属の複合酸化物であることも好ましい。さらに、前記電子伝導性層は炭化タンタルを主体とし、前記酸化物層は、タンタルと、スカンジウム、クロム、鉄、ガリウム、及びスズからなる群から選択される1種あるいは2種以上の金属との複合酸化物を主体とすることも好ましい形態である。
【0013】
本発明の炭素系複合材料としては、前記酸化物層の表面には、以下の電子導電性:σ・tA−el<σ・tB−el(ただし、σ及びσは、それぞれ前記酸化物層と被覆層の全伝導率であり、tA−el及びtB−elは、それぞれ前記酸化物層と被覆層との電子的輸率である。)、を有する被覆層を備えることもさらに他の好ましい形態である。このような被覆層を有する場合、酸素ポンプ作用による耐酸化性を容易に発現させることができる。
【0014】
上記したいずれかの炭素系複合材料においては、使用時温度は1100℃以上2000℃以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の耐熱部材は、炭素系基体と、当該基体表面に付与された電子伝導性層と、この電子伝導性層表面に付与された酸化物層、とを備える炭素系複合材料からなる基材を有する、部材である。かかる耐熱部材によれば、少なくともイオンブロッキング作用により耐酸化性に優れた耐熱部材が提供される。また、前記酸化物層は、前記耐熱部材の使用時温度でイオン伝導性を発現し、前記炭素系基体及び/又は前記電子伝導性層は、電子を充填可能とする直流電圧源に接続されている耐熱部材とすることもできる。この耐熱部材によれば、イオンブロッキング作用に加えて電気的反発作用による耐酸化性に優れた耐熱部材が提供される。
【0016】
また、前記酸化物層は前記耐熱部材の使用時温度でイオン伝導性を発現し、前記酸化物層表面には、以下の電子導電性:
σ・tA−el<σ・tB−el(ただし、σ及びσは、それぞれ前記酸化物層と被覆層の全伝導率であり、tA−el及びtB−elは、それぞれ前記酸化物層と被覆層との電子的輸率である。)
を有する被覆層を備え、前記被覆層を正極とし前記炭素系基体及び/又は前記電子伝導性層を負極側とする電位差を付与するように直流電圧源に接続されている、耐熱部材も提供される。かかる耐熱部材によれば、酸素ポンプ作用によって耐酸化性に優れた耐熱部材が提供される。なお、この被覆層は、電子伝導性粒子を含む酸化物層とすることができる。
【0017】
さらに、前記酸化物層は、前記複合材料の使用時温度でn型半導体としての電子伝導性を発現する、耐熱部材も提供される。この耐熱部材によれば、カソード防食による耐酸化性に優れた耐熱部材が提供される。上記したいずれかの耐熱部材は、使用時温度は1100℃以上2000℃以下であることが好ましい形態である。また、これらのいずれかの耐熱部材は、ガスタービン部材であることが好ましい形態である。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の炭素系複合材料は、炭素系基体と、当該基体表面に付与された電子伝導性層と、この電子伝導性層表面に付与された酸化物層、とを備えている。また、本発明の耐熱部材は、この炭素系複合材料からなる基材を備えている。
以下、これらの発明の実施の形態について、図1〜図7を参照しつつ説明する。
【0019】
(炭素系複合材料)
本発明の炭素系複合材料2は、炭素系基体4を備えている。本発明において炭素系基体4は、炭素系材料で形成されている。炭素系材料は、炭素元素を含有して構成される全ての材料を包含するものとする。かかる材料としては、例えば、炭素、等方性黒鉛、炭化ケイ素等を挙げることができる。炭素系複合材料には、これらは1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。炭素と炭化ケイ素のいずれか又は双方を繊維材料として含むことができるし、同様に炭素と炭化ケイ素のいずれか又は双方を粉末として含むことができる。典型的には、炭素系基体としては、炭素繊維と炭素マトリックスとを有する複合材料、炭素繊維とSiCマトリックスとを有する複合材料、SiC繊維とSiCマトリックスとを有する複合材料を挙げることができる。なかでも、炭素繊維と炭素マトリックスとを有する複合材料を好ましく用いることができる。
【0020】
炭素系基体4は多孔質体であっても緻密質体であってもよいが、電子伝導性層8との一体性を考慮すると、少なくとも被覆すべき表層側は多孔質であることが好ましい。なお、炭素系基体4の形状は、用途に応じて各種形態を採ることができる。
【0021】
(電子伝導性層)
電子伝導性層8は、電子伝導体を含み、電子伝導性を発現するように構成されている。電子伝導性を備えることにより、炭素系基体4側に拡散しようとする腐食種イオン(酸素イオン、水酸基イオン等(陰イオン))を電子伝導性層8の界面で阻止することができる。また、この層8を直流電圧の負極に接続することにより、電子を充填することができ、上記腐食種イオンの拡散を電気的反発力により電子伝導性層8表面で阻止することができる。
【0022】
電子伝導性材料としては、使用する炭素系基体4や酸化物層10の材料と反応しないかあるいはしにくい範囲で、従来公知の各種の電子伝導体を使用することができる。好ましくは、複合材料の使用時温度において、電子導電性を主として発揮する材料である。電子導電特性と1100℃以上の高温での使用を考慮すると、金属炭化物、金属窒化物、金属ホウ化物などを用いることが好ましい。かかる化合物としては、例えば、TaC、TiC、ZrC、TiN、ZrN、TaB、TiB、ZrBを挙げることができる。なかでも、TaC、TiC、ZrCを用いることが好ましい。さらに好ましくは、TaCを用いる。
【0023】
電子伝導性層8が非酸化物を主体として構成される場合、この非酸化物は、その酸化反応が進行する際の平衡酸素分圧が、炭素が酸化する際の平衡酸素分圧よりも大きいことが好ましい。かかる非酸化物を主体とする場合、炭素系基体の耐酸化性を向上させることができる。このような非酸化物としては、TaC(1100℃以上)、TiC(1300℃以上)、SiC(1550℃以上)、ZrC(1650℃以上)等を挙げることができる。TaCは、複合材料の使用時温度範囲(1100℃−2000℃)の観点からも好ましい電子伝導性材料である。
【0024】
電子伝導性層8の厚みは特に限定しないが、0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。0.1μm未満では、緻密質の電子伝導性層を得ることが困難となり、その結果として、炭素系基体4中のカーボンが容易に外方向に拡散し、酸化物層10が還元され、多量のCOガスが発生するため、酸化物層10と電子伝導層8間の密着性が著しく低下する。50μmを超えると、炭素系基体4および酸化物層10と電子伝導層間の熱膨張係数差によって誘起される界面歪を緩和することが困難となり密着性の低下をもたらす。より好ましくは、1μm以上10μm以下である。
【0025】
(酸化物層)
酸化物層10は、特に限定しないで各種酸化物を用いて構成することができる。使用時温度においては、イオン伝導性であっても電子伝導性であってもよい。双方の導電性を示す場合、導電率に寄与の大きい方の導電性を利用して耐食性を付与することができる。なお、電子伝導性の場合、n型半導体である必要がある。
【0026】
使用時温度は、特に限定しないが、炭素系基体4の耐熱特性を考慮すれば、約1100℃以上であることが好ましい、より好ましくは約1400℃以上、さらに好ましくは、約1500℃以上である。また、使用時温度の上限は、約2000℃以下であることが好ましく、約1800℃以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、約1700℃以下である。例えば、無冷却ガスタービンシステムに用いられる耐熱部材には、約1500℃以上約1700℃以下の使用時温度とすることができる。
【0027】
イオン伝導性を示す酸化物材料としては、例えば、Ta、LaAlO、Y添加ZrO等を使用することができる。なかでも、Taは、電子伝導性層8としてTaCを用いた場合において良好な密着性を得ることができるため好ましい。なお、イオン伝導性は、高温において発現されれば足りる。したがって、室温付近でイオン伝導性を示さない酸化物であっても高温でイオン伝導性を示すものであれば使用することができる。同時に、室温付近でも高温でもイオン伝導性を示す酸化物材料も使用できる。
【0028】
かかる酸化物材料として、Taなど温度により相変態を生じ、大きな体積変化を生じうる材料を使用する場合には、その相を予め高温相(α型)に維持しておき、低温型(β型)への相変態を抑制しておくことが好ましい。Taの場合、スカンジウム、クロム、鉄、ガリウム、及びスズの酸化物を添加して相変態を抑制することができる。これらの金属酸化物は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
酸化物層10としてTa、電子伝導性層8としてTaCを用いた場合において、高温相(α型)を安定化させる添加剤には、使用時温度において、複合材料表面では耐酸化性に優れ、TaCとの界面では耐還元性に優れることが要求される。酸化スカンジウム(Sc)は使用時温度において耐酸化性と耐還元性の両方に優れるため、添加剤として好ましい。
【0029】
このような添加剤の濃度は、相変態を抑制しようとする金属酸化物材料との総量のうち2モル%以上5モル%以下であることが好ましい。2モル%未満であると低温型(β型)が共存し、5モル%を超えると添加剤とTaとの複合酸化物が共存するからである。なお、高温型の金属酸化物材料を得るには、予め、上記添加剤を加えて相変態温度を超える温度で焼成することによって得ることができる。粉砕、プレス成形、焼成の一連の工程を2回以上繰り返すことにより、均質な高温相材料を得ることができる。
【0030】
また、n型半導体としての電子伝導性を示す酸化物材料としては、TiO、InTaO4、ScTaO等を挙げることができる。中でも、ScTaOを好ましく用いることができる。ScTaOは、使用時温度において耐酸化性と耐還元性の両方に優れるとともに、電子伝導性層8としてTaCを用いた場合に密着性にも優れるからである。
【0031】
さらに、図2に示すように、本複合材料2は、酸化物層10の表面に、特定の電子伝導性を有する被覆層12を備えることもできる。この被覆層12は、σ・tA−el<σ・tB−el(ただし、σ及びσは、それぞれ前記酸化物層10と被覆層12の全伝導率であり、tA−el及びtB−elは、それぞれ前記酸化物層10と被覆層12との電子的輸率である。)という導電特性を有する。かかる導電特性を有することにより、酸化物層10をはさんで電子伝導性層8及び/又は炭素系基体4との間で酸素ポンプを容易に構成することができるようになる。
【0032】
なお、上記導電特性を得るには、酸化物層10と被覆層12との全伝導率と電子的輸率とを知る必要がある。これらの数値は、常法によって求めることができるが、例えば、全伝導率は直流4端子法によって求めることができる。本方法による具体的試験方法を以下に例示する。
(全伝導率の測定:直流4端子法)
酸化物層10と被覆層12と同一材料を用いて得ようとする複合材料2におけるこれらの層と同等の加工体を調製し、25mm×3mm×3mmのサイズに加工して試験片とする。この試験片に、直径0.3mmのPt線にて電極を取り付け、これをAgペーストにて固定した。測定にはガルバノスタット(SOLARTRON、型式:1286 electrochemical interface)を使用し、一定電流を流したときに発生する電位差を測定した。測定結果および試験片サイズより次式を用いて抵抗率ρ(Ω・cm)を算出した。
【0033】
【数1】
Figure 0004418180
【0034】
ここで、
I:試料を流れる電流 (A)
ΔE:電圧プローブ間の電位差 (V)
l:電圧プローブ間の電極長さ (cm)
S:試料の断面積 (cm2)
である。なお、試験片付近の温度測定にはPt-Rh線を使用した。
全伝導率sTは抵抗率の逆数(1/ρ)となる。
【0035】
(電子的輸率の測定:emf法)
また、電子的輸率は、例えば、Wagnerにより提案されたemf法によりイオン輸率tionを測定し、これにより電子的輸率tel(=1−tion)を決定することができる。なお、emf法は、JME 材料科学 “金属酸化物のノンストイキオメトリーと電気伝導”,斉藤安俊,斉藤一弥 編訳,内田老鶴圃 発行,pp. 106-108 (1992)にも記載されており、セラミックス材料の分野においてはよく知られている。
ここに、気体が通過しないように緻密化した試験片を用いて、直流スパッタ法により多孔質Pt電極をつけて構成した酸素濃淡電池を図3に示す。これに電流を流さない状態(すなわち開回路状態)で、その電圧を測定する。Wagnerによると開回路起電力Emは次式で表せる。
【0036】
【数2】
Figure 0004418180
【0037】
また、純イオン導電体ではtion=1であり、そのときの起電力Eは次式で与えられる。
【0038】
【数3】
Figure 0004418180
【0039】
ionは次式で表せる。
【0040】
【数4】
Figure 0004418180
【0041】
以上より、既知の酸素分圧(領域Iにおける酸素分圧と領域IIにおける酸素分圧)と実測したEを用いて、tionを求めることができる。そして、このtionを用いて、電子的輸率tel(=1−tion)を求めることができる。
【0042】
被覆層12が最表層を構成することを考慮すれば、被覆層12は酸化物層であることが好ましい。したがって、被覆層12は、電子伝導性粒子を含む酸化物材料で構成することができる。被覆層12に用いる酸化物材料としては、上記酸化物層10において使用時温度においてイオン伝導性を示す酸化物材料を用いることができる。これらの酸化物材料に対して、上記導電特性を確保できるようにPtなどの電子導電体粒子を含めることができる。好ましくは、酸化物層10と同一の酸化物材料を用いて、電子伝導体を添加することにより、上記導電特性を充足させる。具体的には、上記酸化物層10において、Taを用いた場合には、被覆層12においてもTaを用い、Ptなどの金属を添加することができる。より好ましくは、この酸化物材料は、いずれの層においてもScの添加により高温型(α型)で安定化されている。
【0043】
このような複合材料は、従来公知のセラミックス系材料の成形、焼成などを利用した積層技術を用いて容易に製造することができる。すなわち、炭素系基体4に対して、電子導電性層8及び酸化物層10を順次積層していくことにより得ることができ、積層にあたっては、溶射、浸漬後に焼成、蒸着、あるいは型内で原料粉末等を充填した上でプレス成形など、各種の方法を採用することができる。
【0044】
例えば、イオンブロッキング作用や電気的反発作用による耐酸化性を備える炭素系複合材料は、
(a)イオン伝導性を発現する酸化物粉末を合成する工程、
(b)炭素系基体の表面に、電子伝導性層を付与する工程、
(c)前記電子伝導性層の表面に前記(a)工程で得た酸化物層を付与する工程、とを備える方法によって得ることができる。なお、炭素系基体の表面に前記(a)工程で得た酸化物層を付与することで、(b)工程を実施することなく、炭素系基体と前記酸化物層の界面に電子伝導性層を、その場生成させることも可能である。
【0045】
また、酸素ポンプ作用による耐酸化性を備える炭素系複合材料は、(d)前記(c)工程で得た積層体に、被覆層を付与する工程を備える方法により得ることができる。
さらに、カソード防食作用による耐酸化性を備える炭素系複合材料は、(e)n型半導体としての電子伝導性を発現する複合酸化物粉末を合成する工程、
(f)炭素系基体の表面に、電子伝導性層を付与する工程、
(g)前記電子伝導性層の表面に前記(e)工程で得た酸化物層を付与する工程、とを備える方法によって得ることができる。なお、炭素系基体の表面に前記(e)工程で得た酸化物層を付与することで、(f)工程を実施することなく炭素系基体と前記酸化物層の界面に電子伝導性層を、その場生成させることも可能である。
【0046】
(耐熱部材)
次に、本複合材料の耐熱部材への適用について、図4〜図7を参照しながら説明する。
(イオンブロッキング作用)
本複合材料2は、イオンブロッキング作用により、外部からの腐食種イオンの内方拡散を抑制することができる。図4に示すように、高温では、酸化物層10において大量の酸素欠陥が発生し、イオン伝導性を示しうるようになる。使用時温度においてイオン伝導性を示す酸化物層10にあっては、酸化物層10の表面に吸着した酸素分子や水分子は、酸化物層10から電子を受け取って酸素イオンや水酸基イオンとなって内方向に拡散するが、これらの腐食種イオンは電子伝導性層8を通過できず、この結果、電子伝導性層8と酸化物層10との界面において腐食種イオンの移動がブロック(阻止)される。この結果、電子伝導性層8や炭素系基体4の酸化が抑制される。したがって、本複合材料2を用いた耐熱部材は、酸化物層10がイオン導電性を示すようになっても高い耐酸化性を発揮することができる。
【0047】
(電気的反発作用)
本複合材料2は、電気的反発作用により、外部からの腐食種イオンの内方拡散を抑制することができる。本作用により耐酸化性を発現させようとするときは、図5に示すように、電子伝導性層8及び/又は炭素系基体4を直流電圧の負極側に接続された状態とする。かかる状態においては、図4における場合と同様に腐食種イオンが内方向に拡散しようとする。ここで電子伝導性層8及び/又は炭素系基体4が直流電圧源の負極側に接続され、必要に応じてアースされることにより、電子伝導性層8及び炭素系基体4には電子が充填されることになる。この結果、腐食種イオン(陰イオン)は、電子が充填された電子伝導性層8の界面において静電的に反発し、結果として、電子伝導性層8への腐食種イオンの吸着が抑制され、電子伝導性層8及び炭素系基体の酸化が抑制される。したがって、本複合材料2を用いた耐熱部材は、酸化物層10がイオン伝導性を示すようになっても高い耐酸化性を発揮することができる。なお、本複合材料2を高温酸化雰囲気下に長期間曝すと、酸化物層10と電子伝導性層8の界面に到達した酸素イオン等の濃度が増大し、その結果として、電子伝導性層8の酸化が進行し、イオンブロッキング作用が低下するが、電気的反発作用を発現させることにより、かかる高温酸化雰囲気化でも有効に耐酸化性を発揮させることができる。
【0048】
(酸素ポンプ作用)
本複合材料2は、酸素ポンプ作用により外部からの腐食種イオンの内方拡散を抑制することができる。すなわち、図6に示すように、使用時においてイオン伝導性を発現した酸化物層10の表面とこの酸化物層10と電子伝導性層8との界面には酸素分圧差が発生する。この結果、酸化物層10の表面に吸着した酸素分子等は酸素イオンとなって内方向に拡散し、起電力が発生する。すなわち、酸化物層10の表面側を負極とし、界面側を正極とした電位差が生じる。酸素ポンプ作用は、逆にこの起電力に対して反対の電圧を印加することで、酸素イオンの内方向拡散を抑制するものである。
【0049】
図6において、複合材料2の設置されている雰囲気の酸素分圧をPIとし、電子伝導性層8の平衡酸素分圧をPIIとすると、酸化物層10−被覆層12界面と酸化物層10−電子伝導性層8界面との間には、Nernstの式に対応した起電力が発生する。そこで、この起電力を打ち消す方向で(換言すれば、被覆層12を正極とし電子伝導性層8あるいは炭素系基体4を負極とする電位差が発生する方向で)、電圧を印加することで、本来的な起電力に基づく酸素イオンなどの腐食種イオンの内方向拡散を抑制できる。さらに、本来的な起電力を打ち消す大きさの電圧を印加することで、電子伝導性層8側から被覆層12側へと腐食種イオンを輸送させることができる。その結果として、電子伝導性層8側の酸素分圧を、電子伝導性層8の酸化反応が進行する際の平衡酸素分圧以下に抑制することができ、炭素系基体4や電子伝導性層8の酸化を抑制できる。したがって、本複合材料2を用いた耐熱部材は、酸化物層10がイオン伝導性を有していても高い耐酸化性を発揮することができる。
【0050】
(カソード防食作用)
本複合材料2は、カソード防食作用により外部からの腐食種の吸着を抑制することができる。すなわち、図7に示すように、使用時においてn型半導体としての電子伝導性を発現した酸化物層10表面に電磁波が照射されると、その表面には電子と正孔とが生成し、電子は酸化物層10内を通過して電子伝導性層8や炭素系基体4を卑として、酸素イオンあるいは水酸化イオンによる電子伝導性層8や炭素系基体4の酸化が抑制される。一方、酸化物層10の表面に精製した正孔は高温下においては水蒸気と反応して酸素を生成するが、過剰の正孔が生じる場合には、水蒸気との反応でも正孔が残留し表面が正に分極することとなり、酸素分子のイオン化吸着も抑制される。特にこのような耐酸化作用によれば、温度が上昇するほど、酸化物のバンドギャップが減少するため、大きな波長の電磁波(可視光域)が利用できるというメリットがある。さらに、温度上昇に伴い、酸化物層10の電子伝導率が指数関数的に上昇するため、生成した電子が正孔と再結合する確率が大幅に減少する。これらのことから、本作用は温度上昇に伴い耐酸化作用が上昇するものとなっている。したがって、本複合材料2を用いた耐熱部材は、酸化物層10がn型半導体としての電子伝導性を示すことで高い耐酸化性を発揮することができる。
【0051】
なお、これらの耐熱部材への適用において、炭素系基体4及び/又は電子伝導性層8を直流電圧電源に接続する形態を採用しているが、電源への接続は特に困難でなく、これらの層自体が電子伝導性を有しているため適宜導線を接続することにより簡易に構成することができる。
【0052】
本発明の耐熱部材は、特に限定しないが、1100℃以上、好ましくは1400℃以上の高温環境下で使用される部材として使用できる。また、上限温度は、2000℃以下であることが好ましく、より好ましくは1800℃以下であり、さらに好ましくは1700℃以下である。例えば、無冷却ガスタービンを用いる発電システムなどのタービンを始めとするガスに直接に接触する部材あるいはその周辺部材に適している。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明をその要旨を超えない限りこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
(実施例1:イオンブロッキングによる耐酸化性)
カーボン粉末(三菱化学製、#2700B)を直径φ10mmの大きさにプレス成形(20MPa)した。次に、このカーボン成型体の周りにTaC粉末(高純度化学製、TAO−01PB)を充填し20MPaでプレス成形した後、Ar中、2180℃で1時間、40MPaでホットプレス焼成し、電子伝導体(TaC)層を形成した。更に、この多層構造体の周囲に4mol%Sc添加Ta粉末(高温相:α型)を充填し、20MPaでプレス成形した後、Ar中、1400℃で1時間、40MPaでホットプレス焼成し、酸化物層を形成した。
【0055】
その後、酸化物層を緻密化するために、Ar中、1650℃で1時間、常圧焼成した。得られた多層構造体の試験片は、図8に示すように、炭素系基体/電子伝導性層/酸化物層(C/TaC/4mol%Sc−Ta)から構成されていた。炭素系基体(カーボン層)が直径φ10mm×5であり、その周囲にそれぞれ厚さ1mmの電子伝導性層(TaC層)と、その外側に酸化物層(4mol%Sc−Ta層)が形成されていた。
【0056】
なお、形成された酸化物層は、緻密質であった。従来、酸化物とカーボンを接合してAr雰囲気中で焼成すると、酸化物の炭素による還元反応が進行し、その際に多量のCOが生成するために緻密質の酸化物層を形成できなかったが、カーボン層と酸化物層との間に、酸化反応時における平衡酸素分圧が炭素のそれよりも高い電子伝導性層を介在させることにより、酸化物層とカーボン層との直接の接触と反応とが阻止されたため、緻密質な酸化物層が形成された。
【0057】
4mol%Sc添加Ta(高温相:α型)粉末の調製方法は以下の通りである。Ta粉末(高純度化学製、TAO−01PB)に4mol%のSc粉末(第一稀元素化学工業製)をボールミル混合(24hrs)後、プレス成形(5MPa)を経て、空気中、1400℃で5時間仮焼を行った。特に、原料の均質化を図るため、粉砕→プレス成形→仮焼(加熱処理)を3回繰り返すことにより、4mol%Sc−Ta(高温相:α型)粉末を得た。
【0058】
上記試験片を電気炉内に設置し、1600℃の酸素気流中(100ml/min)にて1時間処理した。酸化試験による試験片の質量変化率(ΔW、wt%)は次式で算出した。
【0059】
【数5】
Figure 0004418180
【0060】
ここで、Wは試験前質量、Wは所定時間保持後の質量である。
【0061】
試験後の質量変化率はΔW=+1.17%となり、僅かながら質量増加した。この質量変化が電子伝導性層のTaCの酸化によるものと仮定すると、電子伝導性層の反応率は16モル%となる。この質量増加は、4mol%Sc−Ta層中を内方向拡散してきた酸素イオンが、4mol%Sc−Ta層とTaC層の界面において蓄積し、その結果として、TaCの酸化反応が進行する平衡酸素分圧よりも大となったからであると推察される。なお、試験後の試験片断面を観察した結果、TaC層と炭素系基体の界面が密に接合しており、しかも、炭素系基体の酸化により消失した箇所(COガスが発生)も認められなかったことから、この質量変化が、炭素系基体に由来するとは考えにくかった。この結果から、電子伝導性層を形成することにより、イオン導電性を有する酸化物層中を拡散した腐食種イオンをブロックし、電子伝導性層界面において腐食種の拡散を防止できることがわかった。
【0062】
(実施例2:電気的反発力による耐食性)
実施例1で作製した試験片を用いて、直径12mmの面の一方に直径2mmの穴を電子伝導性層(TaC層)にまで貫通させ、この穴に外径2mmのアルミナ管を導入し、管内にPt線を入れてPtペーストを充填した。さらに、アルミナ管とその周囲にアルミナペーストを塗布した後、常圧焼成(1650℃×1時間、Ar中)した。この結果、図9に示すように、外界から遮断された電子伝導性層(TaC層)にPt線が導入された多層構造体の試験片が得られた。この多層構造体に取り付けたPt線を電気炉外に取り出し、直流電圧の負極側に接続することで電子伝導体(TaC)層及びカーボン層に電子を充填した。
【0063】
電子伝導性層(TaC層)に電子を充填した試験片を電気炉内に設置し、1600℃の酸素気流中(100ml/min)にて1時間処理した。このときに印加する電位差は接地部に対して−5.0Vとした。試験後の質量変化率を上記式により算出したところ、ΔW=+0.50%となり、イオンブロッキング法のときの質量増加率よりも小さかった。この質量変化が、すべてTaCの酸化によるものと仮定すると、TaC層の反応率は6.8モル%となった。この結果から、電子伝導性層を形成することで、イオン導電性を有する酸化物層中を内方向拡散する腐食種陰イオンを、電子伝導性層(TaC層)に充填された電子による電気的反発力によって阻止することができることがわかった。また、イオンブロッキング法に比べてより有効に耐食性を発揮することがわかった。1100℃以上の超高温下での強力な酸化条件下において有効な耐酸化性を有することがわかった。
【0064】
(実施例3:酸素ポンプによる耐食性)
実施例1で作製した試験片を用いて、直径12mm面の一方に直径2mmの穴をTaC層にまで貫通させる。この穴に外径2mmのアルミナ管を導入し、管内にPt線を入れてPtペーストを充填した後、アルミナ管とその周囲にアルミナペーストを塗布した。次に、Ptペーストと実施例1と同様の方法で調製した4mol%Sc添加Ta(高温相)粉末を混練してスラリー状にしたペーストを、サンプル外表面全面に塗布してPt線を接続する。その後、常圧焼成(1650℃×1h、Ar中)した。この結果、図10に示すように、外界から遮断された状態の電子伝導性層(TaC層)にPt線が導入された多層構造体の試験片が得られた。
【0065】
多層構造体に取り付けたPt線を炉外に取り出し、多層構造体の表面側(高酸素分圧側となる)を正極、TaC層側(低酸素分圧側となる)を負極にして直流電圧を印加した。印加する電位差は以下の方法で算出した。
TaCの酸化反応(TaC+7/4O→1/2Ta+CO)が進行する際の平衡酸素分圧を熱力学平衡計算した結果(ただし、CO分圧=1atmとした。)、1600℃の平衡酸素分圧は1×10−7atmとなる。いま、4mol%Sc−Ta層の表面側の酸素分圧を1atm、1600℃における4mol%Sc−Ta層のイオン輸率を1.0とすると、Nernstの式より、4mol%Sc−Ta層間には1.1Vの電位差が発生することになる。そこで、この起電力を打ち消すよう、上記印加電圧を、1.1Vよりも大きい絶対値を有する電位差として−5.0Vを印加することとした。
【0066】
多層構造体に上記した態様で−5.0Vを印加しながら1600℃酸素気流中(100ml/min)で1時間処理した。その結果、試験後の質量変化率はΔW=+0.084%となり、実施例1(イオンブロッキング)や実施例2(電気的反発力)のときの質量増加率よりも低かった。この質量変化がTaCの酸化によるものと仮定すると、TaC層の反応率は1.2モル%と非常に僅かであった。以上のことから、酸素ポンプによる酸化防止効果が有効であることがわかった。特に、1100℃以上の超高温下での強力な酸化条件下における耐酸化性に優れることがわかった。
【0067】
(実施例4:電磁波カソードによる耐酸化性)
カーボン粉末(三菱化学製、#2700B)を直径φ10mmの大きさに、20MPaでプレス成形した。次に、このカーボン成型体の周りにTaC粉末(高純度化学製、TAO−01PB)を充填し、20MPaでプレス成形した後、Ar中、2180℃、40MPaで1時間ホットプレス焼成した。更に、この多層構造体の周囲にScTaO粉末を充填し、20MPaでプレス成形した後、1400℃×1h、Ar、40MPaでホットプレス焼成した。その後、ScTaO層を緻密化するために、Ar中、1650℃で1時間常圧焼成した。この結果、図11に示すように、C/TaC/ScTaO層からなる多層構造体の試験片が得られた。カーボン層は直径φ10mm、厚さ5mmであり、その周囲にそれぞれ厚さ1mmの電子伝導性層(TaC層)と、更にその外側にScTaO層(酸化物)層が形成されていた。
【0068】
なお、ScTaO粉末の調整方法は以下の通りである。Ta粉末(高純度化学製、TAO−01PB)とSc粉末(第一稀元素化学工業製)とを1:1のモル比にボールミルで24時間混合後、プレス成形(5MPa)を経て、空気中、1400℃で5時間仮焼を行った。原料の均質化を図るため、粉砕→プレス成形→加熱処理を3回繰返すことにより、ScTaO粉末を得た。
【0069】
上記多層構造体を電気炉内に設置し(保護管にサファイア管を使用)、多層構造体のφ12mmの上下面に、石英ガラス窓とサファイア管を通して500Wの超高圧水銀ランプ(ウシオ電機株式会社製、SX−UID501)を照射しながら、1600℃の酸素気流中(100ml/min)にて1時間処理した。比較として、超高圧水銀ランプを照射しない以外は同様の条件でも別途処理した。その結果、超高圧水銀ランプを照射したときの試験後の質量変化率はΔW=+0.1%となり、実施例1(イオンブロッキング)や実施例2(電気的反発力)のときの質量増加率よりも小となった。この質量変化がTaCの酸化によるものと仮定すると、TaC層の反応率は1.4モル%と低かった。一方、超高圧水銀ランプを照射しないときの試験後の質量変化率はΔW=+0.24%となり、照射したときよりも質量増加率が増大した。しかしながら、イオンブロッキング法や電気的反発力法のときの質量増加率よりも小であることから、可視光域でも酸化防止効果があることが確認された。ちなみに、このときのTaC層の反応率は3.2モル%であった。以上のことから、カソード防食が、導電性の非酸化物材料の高温下での耐酸化性の付与に有効であることがわかった。特に、1100℃以上の高温環境の強い酸化条件下においても有効であることがわかり、同時に、当該高温環境下においては可視光でも効果が得られることが明らかとなった。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な耐酸化性を有する炭素系複合材料及び耐熱部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の炭素系複合材料の一形態を模式的に示した図である。
【図2】 本発明の炭素系複合材料の他の形態を模式的に示した図である。
【図3】 イオン輸率及び電子的輸率を求めるための酸素濃淡電池の構成を示す図である。
【図4】 炭素系複合材料のイオンブロッキング作用による耐酸化作用を説明する図である。
【図5】 炭素系複合材料の電気的反発作用による耐酸化作用を説明する図である。
【図6】 炭素系複合材料の酸素ポンプ作用による耐酸化作用を説明する図である。
【図7】 炭素系複合材料のカソード防食作用による耐酸化作用を説明する図である。
【図8】 実施例1で作製した試験片の構造を示す図である。
【図9】 実施例2で作製した試験片の構造を示す図である。
【図10】 実施例3で作製した試験片の構造を示す図である。
【図11】 実施例4で作製した試験片の構造を示す図である。
【符号の説明】
2 炭素系複合材料、4 炭素系基体、8 電子伝導性層、 10 酸化物層、12 被覆層。

Claims (15)

  1. 炭素系複合材料であって、
    炭素系基体と、
    当該炭素系基体表面に付与された電子伝導性層と、
    この電子伝導性層表面に付与された酸化物層と、
    を備え、
    前記酸化物層は、スカンジウム、クロム、鉄、ガリウム、及びスズからなる群から選択される1種あるいは2種以上の金属の酸化物を含む酸化タンタル(α型)を主体とする、材料。
  2. 前記電子伝導性層は、非酸化物を主体とし、前記複合材料の使用時温度において、当該非酸化物の酸化反応が進行する際の平衡酸素分圧が、炭素が酸化する際の平衡酸素分圧よりも大きい、請求項1に記載の材料。
  3. 前記電子伝導性層は炭化タンタルを主体とする、請求項1又は2に記載の材料。
  4. 前記酸化物層の表面には、以下の電子導電性:
    σ・tA−el<σ・tB−el(ただし、σ及びσは、それぞれ前記酸化物層と被覆層の全伝導率であり、tA−el及びtB−elは、それぞれ前記酸化物層と被覆層との電子的輸率である。)、を有する被覆層を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の材料。
  5. 炭素系複合材料であって、
    炭素系基体と、
    当該炭素系基体表面に付与された電子伝導性層と、
    この電子伝導性層表面に付与された酸化物層と、
    を備え、
    前記酸化物層は、タンタルと、スカンジウム、クロム、鉄、ガリウム、及びスズからなる群から選択される1種あるいは2種以上との金属の複合酸化物を主体とする、材料。
  6. 前記酸化物層は、n型半導体としての電子伝導性を発現する、請求項5に記載の材料。
  7. 前記電子伝導性層は、非酸化物を主体とし、当該非酸化物の酸化反応が進行する際の平衡酸素分圧が、炭素が酸化する際の平衡酸素分圧よりも大きい、請求項5又は6記載の材料。
  8. 前記電子伝導性層は炭化タンタルを主体とする、請求項5〜7のいずれかに記載の材料。
  9. 使用時温度は1100℃以上2000℃以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の材料。
  10. 耐熱部材であって、
    請求項1〜9のいずれかの炭素系材料からなる基材を有する、部材。
  11. 炭素系基体と、当該基体表面に付与された電子伝導性層と、この電子伝導性層表面に付与された酸化物層、とを備える炭素系複合材料からなる基材を有し、
    前記酸化物層は、前記耐熱部材の使用時温度でイオン伝導性を発現し、
    前記炭素系基体及び/又は前記電子伝導性層は、電子を充填可能とする直流電圧源に接続されている、部材。
  12. 耐熱部材であって、
    炭素系基体と、当該基体表面に付与された電子伝導性層と、この電子伝導性層表面に付与された酸化物層、とを備える炭素系複合材料からなる基材を有し、
    前記酸化物層は前記耐熱部材の使用時温度でイオン伝導性を発現し、
    前記酸化物層表面には、以下の電子導電性:
    σ・tA−el<σ・tB−el(ただし、σ及びσは、それぞれ前記酸化物層と被覆層の全伝導率であり、tA−el及びtB−elは、それぞれ前記酸化物層と被覆層との電子的輸率である。)を有する被覆層を備え、
    前記被覆層を正極とし前記炭素系基体及び/又は前記電子伝導性層を負極側とする電位差を付与するように直流電圧源に接続されている、耐熱部材。
  13. 前記被覆層は、電子伝導性粒子を含む酸化物層である、請求項12に記載の部材。
  14. 使用時温度は1100℃以上2000℃以下である、請求項10〜13のいずれかに記載の部材。
  15. ガスタービン部材である、請求項10〜14のいずれかに記載の部材。
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