JP4416839B2 - 二次性免疫不全症の治療法 - Google Patents
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Description
本発明は、改良された細胞性免疫不全症の治療方法に関する。
本発明の背景
近年、免疫系を調節してその応答を改善することが可能になってきており、この場合、その系の成分はその成分の機能を部分的または完全に回復するのに非機能性である。例えば、幹細胞を置換し、または欠けている幹細胞を与えるのに使用される骨髄移植がひどい複合免疫不全症を治癒することができる。別の例において、免疫細胞が癌患者から除去され、治療され、腫瘍退縮がある患者に戻される(Hwu及びRosenberg, 1994a; Hwu及びRosenberg, 1994b)。更に、γ−グロブリン及び静脈内免疫グロブリン(IVIG)の如き体液性免疫系の成分は広い治療用途があることが知られている(Desimoneら, 1990; Hall, 1993)。また、その他の免疫系成分が治療薬として使用されている(Hadden及びSmith, 1992; Hadden, 1993; Talmadge及びHadden, 1994)。
免疫調節薬は、免疫機能を調節し、または免疫系の活性に正または負の効果を有する化合物である。臨床医薬中の免疫調節薬の使用は免疫機能の再生(または免疫不全症の修正)及び正常または過度の免疫機能の抑制を含む。免疫調節薬の主要なクラスはサイトカインである。組換え技術により、サイトカインの多くが臨床上の使用に現在利用できる。しかしながら、免疫系は複雑であり、しかも種々の成分の相互作用が免疫機能を有効に調節するのにしばしば必要である。免疫機能を有効に調節する種々の成分及び相互作用を与える製剤を設計することが有益であろう。
サイトカインは、胸腺由来Tリンパ球(T細胞)、Bリンパ球及び単球/マクロファージを含む活性化免疫細胞により産生されるペプチド/タンパク質免疫調節薬である。サイトカインとして、インターロイキン(IL-1〜IL-15)、顆粒細胞および/またはマクロファージに関するコロニー刺激因子(CSF)(CSF-G、CSF-M、CSF-GM)、腫瘍壊死因子(TNFα&β)、及びインターフェロン(IFNα、β&γ)が挙げられる。
インターロイキン-2(IL-2)はT細胞成長因子として最初に記載されたリンホカインである(Morganら, 1976)。化学的には、IL-2は133アミノ酸、15,000ダルトン分子量の糖タンパク質である。それは正常な末梢血リンパ球、扁桃及び脾臓のT細胞、並びに大顆粒リンパ球により産生される。IL-2は抗原またはマイトジェン刺激T細胞の増殖を誘導し、支持する。Tリンパ球刺激機能に加えて、IL-2は免疫応答の開始、増大及び調節、γインターフェロン(IFNγ)の産生、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の誘導、細胞溶解T細胞の増殖、及びナチュラルキラー(NK)細胞のキラー活性の増強の如きプロセスに重要である。組換えIL-2(rIL-2)はヒトcDNA配列により生成される非グリコシル化タンパク質である。遺伝子操作されたIL-2はTaniguchiら(1983)及びDevos(1983)並びに米国特許第4,604,327号、同第4,569,790号及び同第4,518,584号明細書に記載されたようにして得られてもよい。
天然及び組換えの両方の種々の個々のサイトカインが癌及びその他の疾患の治療について調べられていた。例えば、組換えインターフェロンα2(rIFNα2)が有毛状細胞性白血病、カポジ肉腫、尖圭コンジローム、及び慢性肝炎の治療について米国食品薬剤管理局(FDA)により認可されている。白血球によりつくられた20種以上の混合物(アルフレオン▲R▼)としての天然IFNαが尖圭コンジロームについてライセンスされている。組換えIFN-γ(rIFN-γ)が慢性肉芽腫性疾患についてライセンスされている。rIL-2が腎臓細胞癌についてライセンスされている。これら及びその他のrIL及びrIFNが、癌の幾つかの形態を含む種々の疾患において活性評価中である。
更に、rIL-2癌治療が多くの診療所及び研究センターで研究されていた。Rosenberg及び同僚(Rosenbergら, 1985, 1987; Mule及びRosenberg, 1987;Chang及びRosenberg, 1989; Belldegrun及びRosenberg, 1989; Rosenberg, 1994)は腎臓細胞癌、及び悪性メラノーマの患者の免疫治療における全身投与されるrIL-2の使用を報告していた。Cortesinaら(1988, 1994)は頭部及び首の癌の患者における天然IL-2及びrIL-2のロコリージョナル(loco-regional)注射の効果を記載し、天然IL-2が腫瘍退縮を生じるのに更に有効であることを見出した。大投薬量のrIL-2を投与された患者は寿命を短くする毒性に苦しんでいた(Rose-nbergら, 1987)。
遺伝子操作された(組換え)免疫調節薬の開発及び商業上の利用可能性が癌臨床におけるこれらの薬剤の評価を加速した。高投薬量のrIL-2、rIFN-γ、γTNF-α、及びその他の単一治療薬と関連する制限された効力及びかなりの毒性は、治療戦略におけるサイトカインの天然組み合わせの再考を示唆する。更に、百より多い異なるサイトカイン活性が同定され、これが、組換えサイトカインを組み合わせることに基く免疫療法が近い将来の癌診療の成功の妥当な可能性を有することについてかなりの疑問を生じる。
例えば、IL-2はT細胞成長因子としてTリンパ球増殖を刺激することができるが、その他のインターロイキン及び胸腺ペプチドを含む幾つかのその他の因子が胸腺中で産生され、Tリンパ球発育及び機能に必要と考えられる(Hadden, 1992)。
天然インターロイキン製剤(NI)と称される特性決定されていない製剤が本件出願人によりTリンパ球発育を促進するのに有効であることが示された。この特性決定されていない混合製剤(また、バフィコートインターロイキン、BC-ILと称される)が前胸腺細胞、未熟胸腺細胞及び成熟胸腺細胞の増殖を均等濃度のrIL-2よりもin vitroで更に有効に刺激した(Haddenら, 1989)。このNI製剤は新生児マウスのTリンパ球発育を増進したが、rIL-2は不活性であった(Haddenら, 1989)。更に、このNI製剤はヒドロコルチゾン処理された老化マウスのTリンパ球発育及び機能を増進したが、均等投薬量のrIL-2は不活性であった(Haddenら, 1992)。更に、低投薬量の特性決定されていないNI混合物は悪性メラノーマを有するマウスの寿命を延ばした。均等投薬量のrIL-2は不活性であった(Kamedaら, 1992)。これらの知見は、天然インターロイキン混合物がIL-2により与えられない活性を有することを示す。
Tリンパ球欠陥を修正しようとする試みが老化、癌、エイズ、及びその他の免疫不全症で生じるTリンパ球枯渇(リンパ球減少症)及びTリンパ球不全(アネルギー)を含む種々のセッティングにおいて実験で試みられた。例えば、rIL-2及び胸腺ペプチドが種々の結果でエイズ(HIV)ウイルス感染症に使用された(Hadden,1991)。連続注入による高投薬量のrIL-2はHIV感染症の患者の血液中でTリンパ球カウントを一時的に増加することが示されたが、かなりの毒性を有していた(Lane及びFauci, 1986)。百万〜3百万単位のペギル化(pegylated)rIL-2は毒性を殆ど生じなかったが、HIV感染症のヒトのリンパ球カウントにごくわずかの作用を生じた(Merigan, 1993)。NI製剤は毒性なしにリンパ球減少癌患者のTリンパ球カウントをかなり高めた(Haddenら, 1994)。これらの知見は、天然インターロイキンがヒト中で低投薬量で作用して毒性を生じないでT細胞を増加すること及びrIL-2が高投薬量で活性ではあるものの医療用途にはあまりに毒性であることを示す。また、これらの知見はマウスデータからヒトへの外挿を支持する。
上記の知見は、他の因子と混合された天然に産生されたサイトカイン製剤の使用が、免疫系においてより有効であり、より毒性が少ないことを示唆している。しかし、最近得られた製剤についてその特性はよく研究されておらず、生産するのは困難である。免疫系を、再現性よく調節するためには、容易に産生することができ、再現性のある低毒性投与量を確立することが可能なサイトカイン製剤の特性をよく研究することが有用である。発明者による以前の研究(Hadden et al., 1992a)および出願中の特許出願には、このような天然のサイトカイン製剤(NI, NIM or NCM)が記載されており、この内容は全てここに引用する。
ヒトにおける細胞免疫性欠損症はまた、様々な胸腺のホルモン/ペプチド製剤(例えば、チモスチムリン、チモシンフラクションIV、チモシンα1、ジンク−チムリン、チモポエチン、チモペンチン、および胸腺体液性因子(Shuloff, 1985))により治療されてきた。これらの製剤のうち幾つかは、ヨーロッパ、特にイタリーおよびドイツにおいて臨床使用の許可を受けている。
チモシンα1(T−α1)は、始めウシ胸腺から得られ、後に合成されるようになった、28アミノ酸ペプチドである(Goldstein et al., 1977; US Patents 4,079,127, 4,148,788, 4,293,455, 4,504,415)。チモシンα1は、実験的にマウスおよびヒトにおける細胞性免疫不全症および癌の治療に使用された(Goldstein, 1993)。免疫化を改良するためにインフルエンザワクチンと共に使用することが、イタリーで許可されており、慢性肝炎および胸部および肺癌における治験中であり、有望な結果が期待される。
免疫薬理学に基づき、チモシンα1は、Tリンパ球機能を促進するが、チモシンα1を含む胸腺ペプチドのいずれも、胸腺退行を逆転させ、およびTリンパ球数を増加することが、明白に示されたものはない。
チモシンα1のアナログおよびフラグメントは、米国特許番号4,116,951, 4,353,821, 4,466,918, 4,470,926, 4,612,365, 4,910,296に記載されるように、免疫系における効果を示す。プロチモシンおよびチモシンα11はまた、チモシンα1の作用をミミックし、かつマクロファージによるその生産を誘導する(Maric et al., 1991; Frillingos et al., 1992; U.S. Patent Nos. 4,659,694, 4,716,148 1および4,614,731)。
出願人は、35のペプチドを過剰に有する粗胸腺抽出物であるチモシンフラクションVは、それ自身では、ヒドロコルチゾン処理を行った老齢マウスにおける、胸腺の重さ、リンパ球の含有量、または機能に影響しない。しかし、チモシンフラクションVは、脾細胞および胸腺細胞の分裂促進因子およびインターロイキンに対する応答における天然インターロイキン製剤の効果を増強した(Hadden et al., 1992b)。
そのため、チモシンのような胸腺ペプチドと天然サイトカイン製剤を混合することは有効であり、該混合物は、細胞性免疫不全症のようなTリンパ球の機能、発達および数の減少を含む疾病および他の症状の治療において、治療的に使用することができる。
本発明の概要及び利点
本発明により、細胞免疫不全症の存在を測定し、かつ細胞免疫不全症の患者に、チモシンα1等の胸腺ペプチドの効果的な量と天然のサイトカイン製剤の効果的な量とを共に投与する工程により、細胞免疫不全症の動物又は患者を治療する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
本発明の他の利点は、添付の図面と共に考えた場合に以下の詳細な説明を参照することで理解が深まるとき容易に認められる。
図1は、チモシンα1の投与量を変化させて(0.2〜20μg/動物/日)in vivoで処理後の、インターロイキン(rIL−1、rIL−2及びNCM)及びマイトジェン(PHA及びConA)に対する、in vitroでの胸腺細胞のプールした応答(pooled responses)のグラフである;インターロイキン(−−●−−),マイトジェン(−−△−−)。
図2は、図1のように、チモシンα1の投与量を変化させてin vivoで処理後の、インターロイキン(rIL−1、rIL−2及びNCM)及びマイトジェン(PHA及びConA)に対する、in vitroでの脾臓細胞のプールした応答のグラフである;インターロイキン(−−●−−),マイトジェン(−−△−−)。
図3は、食塩水、チモシンα1(5μg/動物/日)、NCM(50ユニットIL−2当量)及びチモシンα1(5μg/動物/日)+NCM(50ユニットIL−2当量)によりin vivoで処理後の、培地(白抜き)、rIL−1(クローズドバー)、rIL−2(斜交)及びNCM(斜線)に対する、in vitroでの胸腺細胞の応答の棒グラフである。
図4は、図3のように、食塩水、チモシンα1、NCM及びチモシンα1+NCMによりin vivoで処理後の、培地(白抜き)、rIL−1(クローズドバー)、rIL−2(斜交)及びNCM(斜線)に対する、in vitroでの脾臓細胞の応答の棒グラフである。
図5は、図3のように、食塩水、チモシンα1、NCM及びチモシンα1+NCMによりin vivoで処理後の、PHA(白抜き)及びConA(クローズドバー)、に対する、in vitroでの胸腺細胞の応答の棒グラフである。
図6は、図5のように、食塩水、チモシンα1、NCM及びチモシンα1+NCMによりin vivoで処理後の、PHA(白抜き)及びConA(クローズドバー)、に対する、in vitroでの脾臓細胞の応答の棒グラフである。
図7は、食塩水処理したコントロールに対する比として表した、チモシンα1(5μg/マウス/日)及びチモシンフラクションV(TF5、100μg/マウス/日)in vivoで処理後の、rIL−1(白抜き)、rIL−2(クローズドバー)、NCM(斜交)及びConA(斜線)に対する、in vitroでの胸腺細胞の応答の棒グラフである。
図8は、図7のように、チモシンα1(5μg/マウス)及びチモシンフラクションV(TF5、100μg/マウス)in vivoで処理後の、rIL−1(白抜き)、rIL−2(クローズドバー)、NCM(斜交)及びConA(斜線)に対する、in vitroでの脾臓細胞の応答の棒グラフである。
図9は、食塩水処理したコントロールと比較した、NCM、NCM+チモシンフラクションV(100μg/マウス)及びNCM+チモシンα1(5μg/マウス)でin vivoで処理後の、rIL−1(白抜き)、rIL−2(クローズドバー)、NCM(斜交)及びConA(斜線)に対する、in vitroでの胸腺細胞の応答の棒グラフである。
図10は、食塩水処理したコントロールと比較した、NCM、NCM+チモシンフラクションV(100μg/マウス)及びNCM+チモシンα1(5μg/マウス)でin vivoで処理後の、rIL−1(白抜き)、rIL−2(クローズドバー)、NCM(斜交)及びConA(斜線)に対する、in vitroでの脾臓細胞の応答の棒グラフである。
好ましい実施の態様
本発明は、免疫調節物質としての天然サイトカイン製剤を、チモシンα1のような胸腺ペプチドとともに投与することによって、細胞免疫不全を治療する方法を提供する。免疫調節物質は、免疫機能を調節し又は免疫系の活性に対して正又は負の効果を有し、かつサイトカインを含む化合物である。
好ましい態様においては、免疫調節性天然サイトカイン製剤は、同一の発明者による出願であって、本発明の譲り受け人に譲渡され、本発明と同一の日に出願された継続出願(参照によってここに導入し、以下の実施例で記載する)において説明されている天然サイトカイン混合物(NCM)である。簡単にのべれば、NCMは、4−アミノキノロン抗生物質の連続的存在の下でかつマイトジェン(有糸分裂促進物質、好ましい態様では、PHAである)の連続的存在下で調製される。
しかしながら、本発明は、4−アミノキノロン抗生物質の連続的存在下で、但し、パルス的な、PHAのようなマイトジェンの存在下で、製造される天然インターロイキン混合物(NIM)でも実施することができる。他の免疫調節性天然サイトカイン製剤、例えば、NI製剤は、本発明でも使用することができる。種々の製剤は、IL−2含量によって比較され、その投与量は、IL−2当量で表示される。
胸腺ペプチドは、本発明において、免疫調節物質−サイトカイン製剤とともに投与する。チモシンα1(T−α1)又はその類縁体及びフラグメントが、本発明の好ましい態様で使用される。更に、チモシンα11及びプロチモシンのような他の胸腺ペプチド及びその類縁体を使用することができる。チモシンα1配列を有する胸腺ペプチド、類縁体及びフラグメントも使用することができる。
類縁体は、機能的に関連する部分において、少なくとも70%の相同性を通常有する。更に好ましい態様では、相同性は、胸腺ペプチド、特に、チモシンα1配列に対して、少なくとも80%であり、95%まで上げることができる。類縁体のアミノ酸配列は、少なくとも1つの残基が欠失、挿入又は置換される場合には、胸腺ペプチドのアミノ酸配列と異なり得る。グリコシル化の相違によって類縁体が形成され得る。米国特許第4,116,951号、同4,353,821号、同4,466,918号、同4,470,926号、同4,612,365号、同4,910,296号明細書に示されている類縁体は、このような類縁体の例示であり、本発明において使用することができる。
加齢、ガン、HIV感染、及びその他の急性及び慢性感染に関連する細胞免疫不全は、本発明で治療することができる。この急性及び慢性感染には、結核、サルモネラ及びハンセン病が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の方法は、本発明のプロトコールに従った、天然サイトカイン製剤の有効量及びチモシンα1(例えば体表面積1m2あたり0.6〜9.6mg)の哺乳動物宿主、好ましくはヒトへの副投与(coadministering)を必要とする。好ましい態様におけるNCMは特定のサイトカインプロフィールを有し、一般にIL−2(IL−2相当物)の投与量当たり200〜500単位を有する。
治療を受けるべき患者は、細胞性免疫不全症と診断されたか、又は細胞性免疫不全と他の病的状態とが複合した患者である。患者のT細胞機能、発達及び総数は、当業界に知られたように評価され、もし正常より低ければ、細胞性免疫不全を有することで、特にT細胞異常の治療するために設計された本発明を用いた治療のための候補者になるだろう。
NCMの初期投与は、チモシンα1と同時に投与するか、他の薬物に続いて、一般には、そして好ましくは同じ日に薬物を投与することができる。効果が失われ毒性が増加するような高い濃度(1000単位/投与量)を使用しないことが重要であるため、IL−2相当物の低濃度(200〜500単位)でNCMが投与される。
NCM及びチモシンα1の好ましい組み合わせ(以下、組み合わせ療法(combination therapeutic)という)、それぞれの個々の療法又は免疫調節天然サイトカイン製剤及びチモシンα1及びその類似体等の胸腺ペプチドは、良好な医療行為により投与及び投薬され、個々の患者の臨床状態、投与部位及び方法、投与計画、及び医師に知られるその他の要因が考慮される。従って、本明細書における目的のための「有効量」は、当業界で知られているこのような考慮によって決定される。その量は、細胞性免疫機能のin vitro測定、in vivoの増大されたTリンパ球レベル、再生抗原またはNCMに対する改善された皮膚試験応答、改善された生存率、一層迅速な回復、または症候の改善もしくは排除並びに腫瘍塊の癌減少における改善された応答を含む(しかし、これらに限定されない)、治療患者の25%の免疫機能の改善を示すように有効である必要がある。NCMはその他の治療とともに使用されて免疫機能を改善し、癌を治療し得る。NCMまたはNIMの臨床上の使用の例が頭部及び首の癌においてHaddenら(1994)により例示される。
本発明の方法において、複合治療薬、またはその成分を様々なルートで投与することができる。複合治療薬は、化合物単独で、または薬学的に許容される担体とのコンビネーションで投与することができる。それは皮下投与でき、または静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、外リンパ投与、リンパ内投与及び鼻内投与を含む、非経口投与し得る。アジュバント効果が判るように、もし可能な場合には、ガン患部への投与などの部位特異的投与が好ましい(Pulley et al, 1986; Hadden, 1994)。化合物の移植または注入がまた有益である。ガイダンスがHaddenら(1985)及びHaddenら(1992)により与えられる。
ヒトにおける非経口投与について、複合治療薬またはその成分は、一般に単位投薬注射形態で製剤化され、好ましくは医薬上許されるキャリヤー媒体中で製剤化される。また、好適なキャリヤー媒体として、食塩水、スクアレン、デキストロース溶液、通常の血清アルブミン、リンゲル液、x-vivo 10等が挙げられるが、これらに限定されない。必要により、少量の添加剤、例えば、安定剤、防腐剤または緩衝剤がこのようなビヒクル中に含まれてもよい。このような製剤は非経口投与のために水性注射液中の再生に適している。上述したNCMを含む複合治療薬は典型的には約50〜500単位のIL-2(当量)/ml、好ましくは約150〜350単位のIL-2(当量)/mlの濃度でキャリヤー媒体中で製剤化されるであろう。複合治療薬は上述したようにNCMを含み、また0.6〜9.6mg/m2(体表面積)のチモシン−α1を含み、または他の態様において、NCMはチモシンα1と共投与される。さらにNCMは他のサイトカインとプロフィールが一致する。
PHAがマイトジェンとして使用される好ましい実施態様において、NCMのサイトカインプロフィールは以下のプロフィールを有する。
サイトカイン 量
IL-1 10-2000pg/ml
IL-2 100-500単位/ml
IL-6 250-10,000pg/ml
IL-8 12,000-100,000pg/ml
IL-12 100-10,000pg/ml
IFN-γ 50-15,000pg/ml
TNF-α 50-15,000pg/ml
CSF-G 50-1500pg/ml
CSF-GM 10-1500pg/ml
IL-3/IL-4/IL-7 痕跡量
必要により、複合治療薬またはその成分は無菌の安定な凍結乾燥製剤にされ、その中で活性成分が水溶性キャリヤー、及び必要により、安定剤または無毒性防腐剤と混合される。抗菌性防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、及び緩衝剤を含む組成物の安定性、無菌性、及び等張性を増強するこれらの種々の添加剤が使用し得る。微生物の作用の防止はシプロフロキサシンの存在及び種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等により確実にし得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を含むことが望ましいであろう。注射可能な医薬形態の延長された吸収は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によりもたらされる。しかしながら、本発明によれば、使用されるあらゆるビヒクル、希釈剤、または添加剤もしくは送出ビヒクルはNCMと適合性にされる必要があり、また本発明の生物活性を変化しないであろう。
投薬量及び投薬レジメは主として治療される個々の患者(哺乳類ホスト)、患者の履歴、患者に対する生物学的損傷の型及び大きさ、複合治療薬が単独で投与されるか、混合物で投与されるか、治療の長さ及び治療のプロトコルに依存するであろう。投薬は数日の期間にわたって単一投薬または多投薬であってもよい。最も好ましい投薬量は、癌の場合の疾患の最大の退縮またはその他の症状における症候の最大の減少を得る投薬量である。ヒトは本明細書に例示されたマウスよりも一般に長く治療され、その治療は疾患プロセスの長さ及び薬剤有効性に比例する長さを有することが注目される。
NIMを使用する、ヒトにおける二種類の処置プロトコールが研究中である。一つは、頭部および首または胸部癌の除去前に、NEMを使用する10日処置プロトコールである(200ユニットのIL−2当量/日)。他のプロトコールは21日サイクルの処置の一部として7日またはより長い10日処置を行うものである。これらの両プロトコールはHadden et a l.,(1994)により示されている。チモシンα1とのコンビネーション投与も同様に使用することができる。
複合治療薬またはその成分の薬理学的製剤はあらゆる適合性キャリヤー、例えば、種々のビヒクル、アジュバント、添加剤、及び希釈剤を含む注射可能な製剤中で患者に投与でき、または本発明に使用される化合物が徐放性皮下移植体または標的送出系、例えば、注入ポンプ、ポリマーマトリックス、リポソーム、及び微小球体の形態で患者に非経口投与し得る。本発明における使用に適した移植体は、移植された後に徐々に溶解するペレットまたは当業者に公知の生体適合性送出モジュールの形態をとり得る。このような公知の投薬形態及びモジュールは、活性成分が数日〜数週間の期間にわたって徐々に放出されるように設計される。
例えば、注入送出系に関するこのような徐放性形態は、癌の付近の局所のリンパ節に本明細書に記載されたNCMを送出するように肺癌及び食道癌に使用されることが考えられるであろう。その他の癌は同様の局所送出技術を使用するであろう。
本発明に有益な公知の移植体及びモジュールの例として、米国特許第4,487,603号明細書(これは薬物を調節された速度で分配するための移植可能な超小型注入ポンプを開示している)、米国特許第4,486,194号明細書(これは薬物を皮膚中に投与するための治療装置を開示している)、米国特許第4,447,233号明細書(これは薬物を正確な注入速度で送出するための薬物注入ポンプを開示している)、米国特許第4,447,224号明細書(これは連続薬剤送出のための可変流量の移植可能な注入装置を開示している)、米国特許第4,439,196号明細書(これはマルチチャンバー区画を有する浸透圧薬剤送出系を開示している)、及び米国特許第4,475,196号明細書(これは浸透圧薬剤送出系を開示している)が挙げられる。これらの特許が参考として本明細書に含まれる。多くのその他のこのような移植体、送出系、及びモジュールが当業者に公知である。
本発明で使用する複合治療薬、又はその成分を、ヒトの癌に関連する免疫不全の処置に使用する場合には、NCMの投与レベルは通常150〜500単位/日のIL−2含量に相当するものとする。投与量が過剰であると、リンパ周辺及びリンパ内の経路が失われる可能性がある。複数回投与する場合には、投与の頻度は、受容者の種類及び癌の種類、投与の量及び連続性に依存することとなる。例えば、ある種の癌については連日投与することが有効である一方、他の癌については投与の間に休止期間を設ける必要がある場合がある。
免疫不全の処置の分野における通常の知識を有する医療従事者であれば、受容者及び免疫不全についての通常の検査を行うことにより、過剰な実験を行うことなく、任意の特定の場合について最も有効な休止期間、投与経路、投与の頻度及び期間を確定することが可能であると考えられる。
好ましい1つの態様においては、前記複合治療薬成分を、連日、ヒトである患者に対し、NCMを200単位/日のIL−2に相当する量で投与し、その際実質的に同時に、チモシンα1、チモシンα1の類縁体あるいはプロチモシン等の胸腺ペプチドを、体表面積について0.6〜9.6mg/m2の範囲の投与量(好ましい投与量は約1.2mg/m2)で投与する。
前記複合治療薬は、胸腺細胞の数及び機能を向上させること、及び2次免疫不全を後退させることに関して有効である。更に、該複合治療薬を、出産直後の期間に、あるいは重度の複合免疫不全症(SCID)又は白血病に対する放射線照射又は骨髄移植後に使用して、初期発生を促進することができる。あるいは、該複合治療薬は、これを抗ウイルス治療に使用して、新規なウイルスのないCD4+ Tリンパ球をHIVに感染した患者の体内に生成するのに有用であると考えられる。更に、本発明によるプロトコルは、免疫抑制又は免疫不全に関連する他の非腫瘍性疾病(例えば、症状及び老化に関連するものを含む)に関して、有益な結果を提供するものと考えられる。
本発明の方法は、入院患者並びに外来患者を処置するのに使用することができるが、後者の方が好ましい。
上記の記載から、NCM等の天然サイトカイン製剤及びチモシン−α1等の胸腺ペプチドの複合治療薬の利用についての事実による根拠が付与される。本発明について使用する方法及び本発明の有用性を、以下の実施例により示す。
実施例はマウス系における本発明の実用性を実証する。ヒト以外に、マウスが免疫系の構造及び機能に関して最も良く研究された種であり、またヒト応答を高度に予測するものとして当業者により認められているため、マウス系が選択された。今までのところ、わずかに微小の差異がマウスとヒトの間で観察されていた(Chirigos and Talmadgeら, 1985; Talmadgeら, 1985; Hadden et al, 1992a)。マウスが種々の病原体及び腫瘍に対しそれ自体を防御するメカニズムの殆どがヒトと実質的に同じである。マウスモデルがヒト用の免疫調節薬の評価に広範囲で使用されていた(Hadden et al, 1992a; Talmadgeら, 1985)。この従来技術のために、現行のマウス実験からの結果がヒト応答を予測する。
三つの例は免疫調節薬によるマウス系の予想の性質を実証する。マウス腫瘍モデルの広いスペクトルを使用して、インターフェロン(IFN)の抗腫瘍活性が示されており(Borden, 1979; Talmadgeら, 1985)、それに応じてヒトでは、IFNは多種の腫瘍に対して活性を示した(Goldstein及びLaslo, 1988)。
第二の例において、マウス腫瘍モデルを使用して、腫瘍に対して単独で使用されたレバミゾールの効果がなかったが、活性が化学療法後に見られた(Symoens及びRosenthal, 1977; Spreafico, 1980)。同様にヒトでは、レバミゾールは5フルオロウラシルとともに使用された時にヒト結腸癌に活性を示したが、単独では示さなかった(Mutch及びHutson, 1991)。
第三の例において、マウス腫瘍モデルを使用して、低投薬量のインターロイキン2(IL-2)は毒性を生じないで抗腫瘍活性を有することが示されたが、高投薬量のIL-2は特にリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞で活性を有していたが(Rosenbergら, 1985)、潜在的に致死性の毒性を有していた。また、ヒト研究は悪性メラノーマ及び腎臓細胞癌における高投薬量のIL-2±LAK細胞の有効性を示したが、大きな毒性があった(Rosenberg, 1994)。そうであっても、それは現在腎臓細胞癌についてFDAによりライセンスされている。最近の研究は毒性を生じないヒト癌における低投薬量のIL-2の有効性を示す(Cortesinaら, 1988及び1994)。これらのメカニズムはマウス系で見られた低投薬量の効果と同様である(Chirigos及びTalmadge, 1985)。
免疫調節薬の上記の三つの例は癌における臨床上の使用について現在認可されており、マウス腫瘍研究により良く予想された。
その他に、動物研究は組換えインターロイキン(rIL)により共有されない天然インターロイキン混合物(nIL)の効果を示した。rIL-2ではなく、nILは胸腺依存性免疫応答を回復し、促進するのに活性であり(Haddenら, 1992b)、シクロホスファミドとともに悪性メラノーマに対する耐性を促進するのに活性である(Kamedaら, 1992)。この同じパターンは、天然ILが組換えIL-2により共有されない方法でヒトの頭部及び首の癌に活性であった点でヒトで見られた(Cortesina, 1988, 1994; Haddenら, 1994; Mattijissenら, 1991)。
実施例
下記に述べる実施例において、天然インターロイキン製剤はIL−2と同濃度で使用される、同等の生物学的活性を与えるNCMおよび/またはNIMである。簡単にいうと、データはプールされ、以下NCMとして示される。
全般の方法
細胞培養に関する全ての工程を無菌条件下で行う。本明細書に記載されなかった細胞免疫学の全般の方法を、細胞免疫学技術に関する一般的な文献、例えば、Mishell及びShiigi(1981)に記載されたようにして、また当業界で知られているようにして行う。
物質
チモシンフラクションV(TF5)および精製したチモシン−α1は、A.Goldstei博士(George Washington School of Medicine(Washington D. C.))から得た。うしTF5は、チモシン−α1、チモポエチンおよびチムリンを含む多数の胸腺ペプチドを含むことが知られている。
組換えヒトインターロイキンβ1(rIL-1 β)はC.Reynolds博士(Biological Response Modifiers Program. NCI(Frederick, MD))からの贈答品であった。ヒトインターロイキン2(IL-2;比活性640U/ml)をファーマシアAB(Silver Spring, MD)から入手した。組換えIL-2はG.Caspritz(Hoescht Pharm., Frankfort, ドイツ)からの贈答品であった。シプロフロキサシンをマイルズ社(West Haven, CT)から購入し、オフロキサシンをマックネイル・ファーマシューティカル(Spring House, PA)から購入し、ノルフロキサシンをメルク社(West Point, PA)から購入した。ヒト血清アルブミン(HSA)をアーマー・ファーマシューティカルズ(Kankakee, IL)から入手した。X-vivo培地をホイットテーカー・バイオプロダクツから購入した。ヒドロコルチゾン21-ヘミスクシネート及びCon Aをシグマ・ケミカルズ(St.Lois, MO)から購入した。PHA(HA-16)をムレックス・ディアグノスチックス社(Dartford, U.K.)から入手した。OKT3をオルト・ファーマシューティカルズ(Raritan, NJ)から購入した。
天然サイトカイン混合物(NCM)の調製
多数のHIV陰性、肝炎ウイルス陰性のドナーからのヒト血液のバフィコート白血球を回収する。別の実施態様において、動物は獣医学上の使用のための細胞源であり得る。ドナーからの細胞を溜め、フィコールハイペーク勾配(Pharmacia)の上で層形成して好中球及び赤血球を含まないリンパ球を得る(米国特許第4,390,623号及び同第4,448,879号)。当業界で知られているような同じ出発リンパ球集団をもたらす別法が使用し得る。
NCM生産の好ましい態様において、リンパ球を洗浄し、フラスコ(MicroCELLectorTMT-25細胞培養フラスコ)中でX vivo-10培地(ホイットテーカー・バイオプロダクツ)中に分配し、そのフラスコ中に固定された刺激物質、即ち、マイトジェンがある。実験の一つの組において、X vivo-15及びX vivo-20培地を示されるように使用し、X vivo-15の方がX vivo-20培地の使用より好ましい。刺激物質に関する固定化方法は、フラスコ中のパンニング操作、即ち、細胞分離のための種々の物質を固定化することについて製造業者により記載されたとおりである。
細胞を37℃でCO2/空気インキュベーター中で80μg/mlのシプロフロキサシン(Miles Lab)を含むX vivo-10培地中で24〜48時間インキュベートする。また、最小必要培地(MEM)またはRPMI1640培地を使用することができた(Webbら, 1973)。インキュベーション後に、上澄みを注いで除き、回収する。ヒト血清アルブミン(HSA)を添加してインターロイキンを更に安定化することができる。一般にHSAを0.1〜0.5%(重量/容積)で使用する。上澄みを4℃〜-70℃で貯蔵する。
または、NIはHadden et al., 1989に従って、またはNIMは出願中の特許に記載されるように調製することができ、マイトジェンに対するパルス化暴露(pulsed exposure)が使用される。
上澄みの特性決定
サイトカイン含量をIL-2についてバイオアッセイにより、また残りのインターロイキンIL-1〜IL-15、CSF、TNF、及びIFNについてELISAにより測定することにより、溜めた上澄みを特性決定する。無菌性をチオグルコレートブロース中の培養により試験し、内毒素を当業界で知られているようにリムルス細胞分解産物アッセイにより測定する。
サイトカイン含量に関する上澄みの標準化
比較を行うことができるように、夫々の上澄みを投与された濃度または量により標準化する。特に、各上澄み液に対するIL−2当量が使用される。
上澄みに関する汚染物質の除去
使用する場合、DNA及びウイルス排除は限外濾過、エタノール分別、ポリエチレングリコール/ベントナイト沈殿、および/または静脈内γグロブリン及びモノクローナル抗体に使用されたような溶媒/洗剤処理(例えば、IGIV News Updateパンフレット)の如き技術を使用するであろう。光化学的失活化、アルミニウムフタロシアニンまたはガンマ線照射を使用してもよい。
モデル
特に示されない限り、老化マウスにおけるヒドロコルチゾン誘導胸腺退縮のモデルを使用した(Haddenら, 1992)。
実験動物
胸腺が退縮し始めた雌BALB/c(Life Science, St.Petersburg, FL)老化した引退したブリーダーマウス(8-9ケ月)をin vivo試験に使用した。マウスを体重マッチングし、5匹のグループでランダムに溜めた。動物に随時飲用水とともに通常の実験食で給餌した。対照グループを除く、全てのマウスを連続2日間にわたってヒドロコルチゾン(0.9%の塩化ナトリウム0.1ml中5mg/マウス)で腹腔内(i.p.)処理して化学的胸腺除去及び脾臓重量の減少を誘導した。
ヒドロコルチゾン処理した成体マウスは2日で急性胸腺退縮(対照の30%未満)及び脾臓サイズの減少(対照の80%未満)、10日までに進行性回復を示す。このモデルは、ストレスおよび加齢が関係した胸腺退縮の性質を合わせたものである。
実験設計
夫々の処理グループは5匹の動物を有し、夫々の実験を2〜5回繰り返した。処理を3日目に腹腔内(i.p.)で開始し、合計5日間にわたって毎日1回続けた。処理グループに本明細書に示されたようにして下記のin vivo処理の一つを注射した。
1.発熱物質を含まない食塩水(対照);
2.チモシンフラクションアルファ1(TFα1; 投与量は明細書に示された通り);
3.チモシンフラクション5(TF5;100μg/マウス);
4.天然サイトカイン混合物(NCM;50単位IL-2 当量)
5.NCM+TF5(夫々、50単位および100μg)
6.NCM+チモシンα1(夫々、50単位および5mg)
8日目に、マウスを計量し、頸部脱臼により犠牲にし、それらの脾臓及び胸腺を除去し、計量した。臓器を細断し、塩化アンモニウムを使用して残留赤血球を溶解し(Mishell及びShiigi”Selected Methods in Cellular Immunology”, 1981)、細胞をカウントした。
次いで種々の物質に対する細胞の増殖応答を測定した。細胞のサンプルを、5%のウシ胎児血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml)及び2−メルカプトエタノール(2 x 10-5M)を含むRPMI 1640培地中37℃、5%のCO2での細胞培養のために調製した。細胞を4回の反復実験で0.2mlのミクロウェルプレートに1.5 x 106/mlの濃度で塗布し、本明細書に示されたようにして下記の一つとともに72時間インキュベートした。
1.対照希釈剤(完全RPMI 1640培地);
2.rIL-1(1ng/ml);
3.rIL-2(16単位/ml);
4.NCM(2単位/mlのIL-2当量)
5.コンカナバリンA(Con A; 1.5μg/ml)
6.植物性血球凝集素(PHA; 0.5μg/ml)
培養を終了して、トリチウム標識チミジン(3H-チミジン; New England Nuclear, Boston, MA; 比活性6.7Ci/mM)の18時間パルスでDNA合成、ひいては細胞増殖を測定し、多重自動サンプル回収装置で回収、液体シンチレーションカウンティングのために処理した。結果を夫々の動物について四つのサンプルからのcpmの算術平均として表した。異なる動物で得られたデータの代表を簡素化するために、異なる動物による結果を溜め、一緒に計算し、幾つかの場合にコントロール+標準偏差(SEM)に対する比として表した。
統計分析
スチューデントTテストを使用して適当にデータを分析した。
実施例1
一連の実験において、退縮した胸腺を持つマウスを、NCM、チモシンα1、チモシンフラクションV、これらのファクターの組合せ、及び生理食塩水すなわち培地コントロールによりインビボで処理した。脾臓と胸腺を取り出し、これらの細胞を、インターロイキン(IL1、IL2、NCM)又はマイトジェン(PHA;ConA)によるインビトロでの刺激に対する細胞増殖応答について試験した。
図1及び図2は、処理した動物から単離した胸腺細胞及び脾臓細胞の、インターロイキン(rIL−1、rIL−2、NCM)及びマイトジェン(PHA及びConA)に対する応答に及ぼす、インビボチモシンα1処理の投与量応答曲線を示している。このデータは、コントロールに対する比として表され;最良の効果は、5μg/マウスで観察された。この値は、他に明記しない限り、後の実験においても使用される。
図3〜6には、生理食塩水(コントロール)、チモシンα1(5μg/マウス)、NCM、及びNCM+チモシンα1の組合せでインビボで処理した結果が示されている。
図3及び図4には、培地(白抜きバー)、rIL−1(黒バー)、rIL−2(斜交)及びNCM(斜線)による刺激に対するインビトロの胸腺細胞(図3)及び脾臓細胞(図4)応答に及ぼすインビボ処理の結果が示されている。チモシンα及びNCM単独では、中枢リンパ器官の両者において多数の応答を増加させた。この組合せは、4種の応答のすべてにおいて劇的かつ大幅な増加をもたらした。これらのデータはインターロイキンシグナルに対するこれらの細胞の顕著な感作を示している。
図5及び図6には、マイトジェンPHA(白抜きバー)及びConA(黒バー)に対する胸腺細胞(図5)及び脾臓細胞(図6)応答に及ぼす図3及び図4に記載したインビボ処理の結果が示されている。チモシンα1及びNCM単独で、両者の応答を増加し、その組合せは、両者の応答を、顕著に大幅に増加した。これらの増加はある程度は、増加した成熟T細胞の数を反映するものかもしれないが、この増加の大きさは、細胞数の増加をはるかに上回るものであり(以下の表IV及びV参照)、これらの細胞の応答性が極めて上昇したことを示すものである。
さらに実験を行い、チモシンフラクションV又はチモシンα1単独で(図7及び図8)インビボ処理した場合と、NCMとチモシンフラクションV又はチモシンα1との組合せで(図9及び図10)インビボ処理した場合との応答の差異を測定した。
図7及び図8において、チモシンフラクションV(TF5)は単独で、ハデンら(Hadden et al.(1992))によって報告されているように、rIL−1(白抜きバー)、IL−2(詰まったバー)、NCM(斜交バー)またはConA(斜線)への脾細胞(図8)、及び胸腺細胞(図7)応答に対して効果を有しなかった。これに対し、チモシンα1(5μg/ml)は脾細胞及び胸腺細胞の両方において全ての反応を増大させた。
図9及び10において、胸腺細胞(図9)及び脾細胞(図10)のrIL−1(白抜きバー)、IL−2(詰まったバー)、NCM(斜交バー)又はConA(斜線)への応答に対するNCMの効果及びNCMとチモシンフラクションV(TF5)、又はNCMとチモシンα1を組み合わせた効果が示される。NCMとの組み合わせでのチモシンα1の効果は、チモシンフラクションVとの効果よりもずっと大きい。この予期しない知見は、チモシンα1が、胸腺ホルモン製剤(純粋なまたは抽出されたペプチド)に関して以前に記載されたことのない独特の免疫薬理学的な特徴を有することを示している。
これらの2種の中枢性リンパ性器官におけるTリンパ球応答の刺激へのチモシンα1とNCMとの組み合わせの予期しない、印象的な効果は、それらが、腹膜内注射が全システムをサイトカイン及びマイトジェンによる刺激に感作させたことを示唆しているように、独特である。多くの場合、NCMとチモシンα1の相互作用は付加的以上のものであり(即ち、相乗的であって)、これらの効果の大きさは従来技術に基づくと予期し得ないものであった。また予期しないことに、チモシンα1はそれ自身で活性があった。
実施例2
脾臓及び胸腺の両者の応答重量へのNCMとチモシンα1の効果が、表IVに示される。
動物、ヒドロコルチゾン処理、及び実験的な注射は、一般的な方法に示されるとおりであった。NCMは、マウス1匹に1日当たり50UのIL−2で注射した。チモシンα1(Tアルファ−1又はTα1)は、マウス1匹に1日当たり5又は20マイクログラムで注射した。これらの実験は同等であることが見出され、よってプールされた。
これらのデータは、NCMとチモシンα1との組み合わせには、胸腺の重さに有意な効果がないということを示す。胸腺の成熟T-細胞(CD4+及びCD8+)は、コントロールにおいて27±3.5%平均であり、NCMとチモシンα1とで処理したマウスにおいて32.5±平均である。脾臓における成熟T-細胞(CD4+及びCD8+)では、コントロールにおいて70±1%平均であり、NCMとチモシンα1とで処理したマウスにおいて76.5±5%平均である。胸腺及び脾臓における成熟T-細胞の割合の小さな増加は統計的に有意ではないが、NCMとチモシンα1とで処理した脾臓が有意な31%増加に対する関連を検討した場合、その処置が脾臓におけるT-細胞の絶対数で大きな増加を誘導したことは明らかである。
また、細胞増殖アッセイにおいて見られるような免疫系の刺激、又はダメージを受け或いは欠陥のある免疫系の一部機能の回復において求められる治療上の評価に治療を行う上で関連する、T-リンパ球の機能(IL応答)及び発達(マイトジェン応答)を、該組成物は潜在的に促進する。例えば、化学療法剤は、免疫応答におけるT-リンパ球を含む細胞にダメージを与えることがある。T-リンパ球の機能及び発達を刺激することにより、本発明は、ダメージを受けた場合に免疫系のこの特徴を、一部において又は全体的に回復させることができる。
この出願を通して、米国特許出願を含む多くの刊行物を引用又は通し番号により参照した。刊行物に関する完全な引用においては、以下にリストを挙げた。本発明に関連する先行技術の記載を完全に記述するために、本願明細書において、全体的なこれらの刊行物及び特許の開示は、引用文として本件出願に取り込まれている。
本発明は、実証的なやり方で記載されており、使用されている用語は、限定的ではなく、記述の用語の本来の意味となるよう意図されていると、理解すべきである。
明らかなことではあるが、本発明の改良及び変形は、前記の教示に照らし可能である。したがって、このような改良等は、添付されている請求項の範囲内にあると理解されるべきであり、本発明は具体的な記載と異なるように実施することができる。
Claims (6)
- 患者(ヒトを除く)における細胞性免疫不全症を治療する方法であって、該方法は、
チモシンα 1 である胸腺ペプチドを、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFNγおよびTNF−αを含む天然サイトカイン混合物(NCM)と共に、該患者に同時投与する工程、を含む上記治療方法。 - 該天然サイトカイン混合物が、IL−1を10−2000pg/ml、IL−2を100−500単位/ml、IL−6を250−10,000pg/ml、IL−8を12,000−100,000pg/ml、IFN−γを50−15,000pg/ml、およびTNF−αを50−15,000pg/mlを含むサイトカインプロフィールを有する請求項1に記載の方法。
- 治療される細胞性免疫不全症が、加齢、癌、HIV感染および他の急性および慢性感染により生じる細胞性免疫不全症群から選択される、請求項1および2のいずれか一に記載の方法。
- 患者における細胞性免疫不全症を治療するための医薬組成物であって、チモシンα 1 である胸腺ペプチドを、IL−1、IL−2、IL−6、IL−8、IFNγおよびTNF−αを含む天然サイトカイン混合物と共に含む上記医薬組成物。
- 該天然サイトカイン混合物が、IL−1を10−2000pg/ml、IL−2を100−500単位/ml、IL−6を250−10,000pg/ml、IL−8を12,000−100,000pg/ml、IFN−γを50−15,000pg/ml、およびTNF−αを50−15,000pg/mlを含むサイトカインプロフィールを含む請求項4に記載の組成物。
- 治療される細胞性免疫不全症が、加齢、癌、HIV感染および他の急性および慢性感染により生じる細胞性免疫不全症群から選択される、請求項4および5いずれか一項に記載の組成物。
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