JP2004508412A - 抗新生物薬および免疫刺激薬としてのチオニン - Google Patents

抗新生物薬および免疫刺激薬としてのチオニン Download PDF

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Abstract

本発明は、比較的低濃度のチオニン(例えば、ピルラリア(Pyrularia)チオニン)に対する細胞応答および生物学的応答を含む。これらの応答は、細胞に及ぼす高濃度チオニンの直接的な細胞傷害作用とは異なる。チオニンに対する免疫細胞の、これらの2つの異なる生物学的応答は、免疫細胞上に2つの異なるかつ別個の結合部位(抗腫瘍防御をもたらすように免疫細胞を刺激する低濃度チオニンと反応する高親和性結合部位、および細胞に対するチオニンの直接的な毒性の原因となる低親和性部位)が存在することに関連している。本発明は、ある特定の態様において、免疫系を刺激するために、チオニンを単独でまたはインターロイキンと組み合わせて使用する方法を提供する。特定の態様は、腫瘍形成および/もしくは腫瘍転移を阻害する方法、ナチュラルキラー細胞を刺激する方法、T細胞リンパ球の分化および増殖を刺激する方法、ならびに/または様々な免疫細胞によるサイトカイン産生を刺激する方法を提供する。新形成を治療および/または予防するために、ウイルス感染症を治療するために、(例えば、疾患または加齢によって引き起こされる)免疫不全を治療するために、チオニン(例えば、ピルラリアチオニン)を含む組成物も提供される。本発明の他の態様は、非常に安定なチオニン分子と結合または他の様式で複合体化された生物学的に活性な化合物(例えば、βME−チオニン結合体)、ならびに免疫刺激のためにこのような化合物および/または結合体を使用する方法を提供する。

Description

【0001】
分野
本発明は、抗新生物特性および/または免疫刺激特性を有する化合物または化合物の組み合わせ、特に、IL−2およびチオニン(例えば、ピルラリア(Pyrularia)チオニン)の組み合わせに関する。
【0002】
背景
植物および植物抽出物は医薬品として何世紀にもわたって用いられており、バイオプロスペクティングが現代において続いている。個々の治療特性および原因化合物の特定および特徴付けは資源集約的で予測不可能なやり方であるが、疾患および有害な健康状態を改善する治療剤の現在進行中の探索においてきわめて重要である。
【0003】
チオニンは、一般的に、植物により産生され、複数の(通常、3個または4個の)ジスルフィド架橋を含み、非常に塩基性であり、かなりの配列相同性を有することを特徴とする小さく非常に安定なタンパク質のクラスである。ヨーロッパヤドリギ(European mistletoe)ビスコトキシンの他に、他のチオニンとして、アメリカヤドリギ(American mistletoe)から単離されたホロトキシン;コムギから単離されたピューロチオニン;オオムギから単離されたホルドチオニン;ライムギから単離されたベノチオニン;およびキャベツから単離されたクランビンが挙げられる。
【0004】
チオニンは植物間で広範囲に分布し、高度に保存されたアミノ酸配列および構造を有するので、植物において重要な目的を有している可能性がある。種子から単離されたチオニンは、貯蔵タンパク質または昆虫、細菌もしくは菌類の侵入から種子を保護する毒素としての役割を果たしていると推測されている。葉から単離されたチオニンもまた毒素として働くと推測されている。オオムギの葉細胞から単離されたチオニンは、ある菌類に対して毒性であることが知られており、このような菌類の胞子に暴露されたオオムギ植物は葉特異的チオニン転写レベルの急速な増加を示す。
【0005】
ピルラリアチオニン(PT)は、寄生植物ピルラリア・プベラ(Pyrularia pubera)によって産生される小さな強塩基性の47アミノ酸ペプチドである。PTの4個のジスルフィド架橋およびアミノ酸配列によってPTはチオニンタンパク質ファミリーに位置づけられる(図1を参照のこと)。ピルラリアチオニン、他のチオニン、および関連ペプチドのアミノ酸配列を図1に示す。ピルラリアチオニンの生物学的特性の特徴付けは数年にもわたって行われており、このタンパク質の毒性が報告されている(例えば、ベルノン(Vernon)ら,Arch.Biochem.Biophys.238:18−29,1985;エベット(Evett)ら,Toxicon 24:622−625,1986;およびガサノフ(Gasanov)ら,Cancer.Immunol.Immnunother.41:122−128,1995を参照のこと)。
【0006】
概要
本明細書で説明される発明は、低濃度チオニン(例えば、ピューロチオニン、ホルドチオニン、ベノチオニン、クランビン、ホロトキシン、ビスコトキシン、およびピルラリアチオニン(PT))の独特のかつ以前では知られていなかった免疫刺激特性の発見である。この免疫刺激はマクロファージおよびナチュラルキラー細胞の活性化を含み、脾細胞懸濁液中のマクロファージによるインターロイキン−1(IL−1)およびインターロイキン−12(IL−12)の産生を刺激する。一般的に、低用量チオニンの投与は免疫系も刺激し、脾臓および胸腺におけるT細胞数の増加につながる。これは、成熟したマクロファージおよびナチュラルキラー細胞の活性化とは異なる作用である、胸腺におけるT細胞発達の刺激を反映している。チオニンを介した免疫刺激は腫瘍形成(例えば、黒色腫形成)を防御する。チオニンはまた、ウイルス感染症を治療するのに、または(例えば、疾患もしくは加齢によって引き起こされる)免疫不全を改善するのに使用することができる。
【0007】
ピルラリアチオニンを単独で、または他の免疫刺激薬と共に用いて観察される免疫刺激は免疫系の細胞の刺激に由来し、低濃度チオニンで生じる。低チオニン濃度でのこれらの作用は、細胞の膜構造の著しい変化に由来する高チオニン濃度で観察される細胞作用とは異なり、このような変化は細胞機能に影響を及ぼす。これらの異なる応答は脾臓細胞上の2つの別個のチオニン結合部位に関連し、本明細書に記載の有益な効果(例えば、免疫刺激活性および抗腫瘍活性)は高親和性結合部位に由来している。
【0008】
インビボでのピルラリアチオニンの安定性は、ピルラリアチオニンが、有益な薬物がチオニンに結合された(例えば、化学的に結合された)時に、このような薬物を被検体の活発な部位に送達する有用な機能を果たすのを可能にし、従って、薬物の有効性を高める。
【0009】
従って、本発明の態様は免疫を刺激する方法を含み、前記方法は、免疫刺激有効量の薬剤を、免疫の刺激を必要とする被検体(例えば、免疫抑制された被検体または免疫抑制量の化学療法剤もしくは電離放射線を受けたことのある被検体)に投与する段階を含む。このような投与薬剤は、例えば、チオニン、チオニン−化合物結合体、またはこのような化合物の免疫刺激性変異体、断片、模倣物、もしくは類似体でもよい。代表的なチオニンとして、例えば、ピューロチオニン、ホルドチオニン、ベノチオニン、クランビン、ホロトキシン、ビスコトキシン、およびピルラリアチオニンが挙げられる。本発明はまた、治療に十分な量の非チオニン免疫刺激化合物(例えば、サイトカイン(例えば、IL−2などのインターロイキンまたはコロニー刺激因子))あるいはさらなる免疫刺激薬(例えば、GM−CSF、G−CSF、サポニン誘導体QS−23、または標的腫瘍細胞抗原であるタンパク質もしくはペプチド)も同じ被検体に投与される方法を含む。
【0010】
開示されたある特定の態様において、チオニンは、免疫刺激性であるが、実質的に細胞傷害性でない用量(例えば、約500μg/Kg体重以下の用量または約50〜約250μg/Kg体重の用量)で被検体に投与される。
【0011】
これらの態様のいくつかにおいて、免疫の刺激は、被検体における腫瘍(例えば、黒色腫または線維肉腫)の発達を阻害または予防すること(例えば、腫瘍の発達を予防もしくは緩慢にすること、既存の腫瘍のさらなる発達を緩慢にすること、または転移を阻害すること)を含む。そのための方法は、免疫刺激剤を、腫瘍(例えば、黒色腫または線維肉腫腫瘍)を有する被検体または腫瘍を発達させるリスクのある被検体に投与することを意図する。ある特定の態様において、このような免疫の刺激は、マクロファージの活性化、免疫細胞における有糸分裂の誘導、ナチュラルキラー細胞活性(例えば、抗腫瘍活性)の刺激、および/または、より一般的には被検体におけるT細胞の分化および増殖の刺激を含む。
【0012】
本発明はまた、生物学的に活性な化合物とチオニンを結合させて化合物−チオニン複合体(結合体)を作成することによって、被検体における生物学的に活性な化合物の寿命および/または有効性を延ばす方法を提供する。次いで、この結合体は被検体に投与することができる。このような化合物として、細胞傷害剤(例えば、アルキル化剤または代謝拮抗物質)などの化学療法剤を挙げることができる。さらに詳細に述べると、化学療法剤の例として、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カンプトテシン、ホモハリングトニン、エトポシド、テニポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、タキソール、シスプラチン、カルボプラチン、アムサルクリン、ダカルバジン(dacarbizine)(DTIC)、ハイドレア、ミトキサントロン、プロカルバジン、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、メトトレキセート、プリネソール、チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、シタラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、スパルフォセート(PALA)、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ストレプトゾシン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、ミトーテン(o,p’−DDD)、アミノグルテチミド、プレドニゾン、プロゲスチン、エストロゲン、タモキシフェン、アンドロゲン、およびその生物学的に活性な類似体、誘導体、模倣物、または断片、ならびにその薬学的に許容される塩が挙げられる。これらの態様のいくつかにおいて、チオニン結合体複合体を被検体のある特定の細胞に標的化することができる。
【0013】
本発明はまた、このような化合物−チオニン結合体/複合体を含む。
【0014】
さらなる態様は、1種類の非チオニン免疫刺激薬または非チオニン免疫刺激薬の混合物の免疫刺激特性を増大させる方法である。この方法は、1つまたは複数の非チオニン免疫刺激薬と共に、有効量のチオニン(例えば、ピルラリアチオニン)またはその生物学的に活性な誘導体、模倣物、断片、もしくは類似体を同時投与することを含む。このような非チオニン免疫刺激薬として、GM−CSF、G−CSF、サポニン誘導体QS−23、および標的腫瘍細胞抗原であるタンパク質もしくはペプチドが挙げられるが、これに限定されない。特定の態様において、前記方法は、非チオニン免疫刺激薬およびチオニンと共に、抗原性ペプチドまたはタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニンまたはその抗原性断片もしくは変異体)を同時投与する段階をさらに含む。
【0015】
免疫刺激有効量のチオニンおよび免疫刺激有効量のIL−2を含む治療用組成物も本発明に含まれる。
【0016】
本発明のさらなる態様は、被検体における免疫を刺激する方法である。前記方法は、免疫刺激性の治療有効量のPTを被検体に投与する段階を含む。このような量は、場合によっては、細胞に対して直接、細胞傷害性の用量より少ない量でもよい。
【0017】
本発明の前述のおよび他の特徴および利点は、いくつかの態様の以下の詳細な説明から明らかになると思われる。添付の図面を参照して説明を続ける。
【0018】
詳細な説明
I.略語および定義
略語
βME:β−メルカプトエタノール
IL−[]:インターロイキン−[](すなわち、IL−2はインターロイキン−2を示す)
KLH:キーホールリンペットヘモシアニン
G−CSF:顆粒球コロニー刺激因子
GM−CSF:顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子
NK:ナチュラルキラー細胞
PBL:末梢血リンパ球
PT:ピルラリアチオニン
【0019】
定義
以下の定義および方法は、本発明をより良く定義するために、および本発明の実施において当業者を案内するために示される。分子生物学における一般的な用語の定義はまた、リガー(Rieger)ら、遺伝学用語集:古典遺伝学および分子遺伝学(Glossary of Genetics:Classical and Molecular)第5版,Springer−Verlag:New York,1991;ならびにレビン(Lewin),遺伝子VII(Genes VII),Oxford University Press:New York,1999でも見られる。「a」および「the」という語は、特に文脈において定めのない限り、言及された物体の複数ならびに単数を含むことが理解される。
【0020】
類似体:親化合物とは化学構造が異なる分子。例えば、ホモログ(アルキル鎖の長さの差などの化学構造の増加分だけ異なる)、分子断片、1つもしくは複数の官能基だけ異なる構造、またはイオン化の変化。構造類似体は、多くの場合、レミングトン:薬理学の科学および実践(Remington:The Science and Practice of Pharmacology)第19版(1995),第28章において開示される技法などの技法と共に定量的構造活性相関(quantitative structure activity relationships:QSAR)を用いて見出される。誘導体は、基本構造から得られた生物学的に活性な分子である。模倣物は、別の生物学的に活性な分子の活性を模倣する生体分子である。生物学的に活性な分子は、本発明のチオニン分子の生物学的活性を模倣する、タンパク質実体の化学構造およびペプチドの両方を含んでもよい。
【0021】
動物:例えば、哺乳動物および鳥類を含むカテゴリーである、生きている多細胞脊椎動物生物。「哺乳動物」という用語はヒトおよび非ヒト哺乳動物を両方とも含む。同様に、「被検体」という用語はヒトおよび家畜の被検体を両方とも含む。
【0022】
癌:癌は、悪性腫瘍または新生物が、分化の喪失、増殖速度の増大、周囲組織の浸潤を伴う特徴的な退形成を受けており、転移が可能な生物学的状態である。
【0023】
一例として、これに限定するものではないが、「癌」という用語は、乳癌(例えば、小葉癌および腺管癌)、ならびに他の固形腫瘍、肉腫、ならびに肺癌(例えば、小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌、および腺癌)、肺中皮腫、結腸直腸腺癌、胃癌、前立腺腺癌、卵巣癌(例えば、漿液性嚢胞腺癌および粘液性嚢胞腺癌)、卵巣生殖細胞腫瘍、睾丸癌、および生殖細胞腫瘍、膵臓腺癌、胆管腺癌、肝細胞癌(heptacellular carcinoma)、膀胱癌(移行上皮癌、腺癌、および扁平上皮癌を含む)、腎細胞腺癌、子宮内膜癌(腺癌およびミューラー混合腫瘍(癌肉腫)を含む)、子宮頸内膜、子宮膣部、および膣の癌(例えば、腺癌および扁平上皮癌)、皮膚腫瘍(例えば、扁平上皮癌、基底細胞癌、黒色腫、および皮膚付属器腫瘍)、食道癌、鼻咽頭および口腔咽頭部の癌(扁平上皮癌および腺癌を含む)、唾液腺癌、脳および中枢神経系の腫瘍(グリア、ニューロン、および髄膜由来の腫瘍を含む)、末梢神経腫瘍、軟部組織肉腫、ならびに骨および軟骨の肉腫を含む。
【0024】
新生物増殖(腫瘍を含む)を治療するために使用することができる化学療法剤として、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カンプトテシン、ホモハリングトニン、エトポシド、テニポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、タキソール、シスプラチン、カルボプラチン、アムサルクリン、ダカルバジン(DTIC)、ハイドレア、ミトキサントロン、プロカルバジン、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、メトトレキセート、プリネソール、チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、シタラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、スパルフォセート(PALA)、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ストレプトゾシン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、ミトーテン(o,p’−DDD)、アミノグルテチミド、プレドニゾン、プロゲスチン、エストロゲン、タモキシフェン、アンドロゲン、およびその生物学的に活性な類似体、誘導体、模倣物または断片が挙げられるが、これに限定されない。
【0025】
同時投与:この用語は、同じ治療の一部として2種類以上の化合物(例えば、治療用化合物)を同じ被検体(または細胞もしくは系)に投与することを意味する。同時投与される化合物は同時に混合物として適用することができるが、系に対して重複する活性を示すように、ある時間枠内で別々にまたは連続して投与することができる。
【0026】
分化:細胞が生物学的機能を果たすように特殊化するプロセス。分化は、悪性形質転換を受けた細胞では完全にまたは部分的に喪失している性質である。
【0027】
免疫刺激化合物:少なくとも1種類の免疫細胞または免疫細胞クラスに対して刺激作用を発揮する化合物。内因性免疫刺激化合物として、免疫刺激サイトカイン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−13、IL−14、IL−15、G−CSF、GM−CSF、エリスロポエチン、トロンボポイエチン、幹細胞因子、およびflk2/flt3リガンド)が挙げられる。
【0028】
薬学的組成物への[化合物の]組み込み:少なくとも1種類の活性成分を含む薬学的組成物を、選択した特定の投与方法に応じて適切な固体または液体の担体と共に処方することができる。本発明において有用な薬学的に許容される担体および賦形剤は従来からあるものである。例えば、非経口処方物は、通常、水、生理食塩水、他の平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される液体ビヒクルである注射可能な液体を含む。
【0029】
含めることが可能な賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿製剤などの他のタンパク質である。所望であれば、投与される薬学的組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタン)などの少量の無毒の補助物質を含んでもよい。
【0030】
他の医薬品および製薬(例えば、別の免疫刺激薬)も含めることができる。
【0031】
薬学的組成物の剤形は選択された投与方法によって決められる。例えば、注射可能な液体の他に、局所処方物および経口処方物を使用することができる。局所製剤として、点眼薬、軟膏、噴霧剤などを挙げることができる。経口処方物は液体(例えば、シロップ、溶液、または懸濁液)でもよく、固体(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル)でもよい。固体組成物の場合、従来の無毒の固体担体として、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。このような剤形を調製する実際の方法は当業者に周知であり、明らかであろう。
【0032】
注射可能な組成物:少なくとも1種類の活性成分を含むが、2種類以上の活性成分を組み合わせて含んでもよい、薬学的に許容される液体組成物。1つまたは複数の種類の活性成分は、通常、生理学的に許容される担体に溶解または懸濁され、組成物は、少量の1つまたは複数の種類の無毒の補助物質(例えば、乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など)をさらに含んでもよい。本発明との使用にとって有益な、このような注射可能な組成物は従来からあるものであり、適切な処方物は当技術分野において周知である。
【0033】
単離された:「単離された」生物学的成分(例えば、核酸分子、タンパク質、または細胞小器官)は、この成分が天然に存在している生物の細胞に含まれる他の生物学的成分(すなわち、他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、タンパク質および細胞小器官)から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸およびタンパク質として、標準的な精製法によって精製された核酸およびタンパク質が挙げられる。この用語はまた、宿主細胞において組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質ならびに化学合成された核酸を含む。
【0034】
リンカー:複数ドメインの融合タンパク質において2つのタンパク質ドメインを連結するように働くペプチド(通常、長さが2〜150アミノ酸残基であるが、必ずしもそうであるとは限らない)。特定のリンカーの例が、例えば、ヘネケ(Hennecke)ら(Protein Eng.11(5):405−10;1998)ならびに米国特許第5,767,260号および同第5,856,456号において見られる。
【0035】
連結されるドメインおよび融合タンパク質におけるその最終的な機能に応じて、リンカーは約2〜約150アミノ酸長でもよいが、これらの制限は一般的な指針としてしか設けられない。融合タンパク質が特異的および非特異的な多量体凝集物を形成する傾向はリンカーの長さに左右される(アルファサン(Alfthan)ら,Protein Eng.8(7):725−731,1998)。従って、短いリンカーは多量体化を促進する傾向があるのに対して、長いリンカーは単量体融合タンパク質の維持に有利である傾向がある。凝集はまた、米国特許第5,856,456号において証明されたように特定のリンカー配列の使用によって最小限にすることもできる。
【0036】
リンカーは反復しても反復しなくてもよい。単鎖Fv(SCFv)の作成において用いられる古典的な反復リンカーの1つが(Gly4Ser)(または(GGGGS)または(GS))リンカーである。つい最近、非反復リンカーが作成され、このようなリンカーをランダムに作成する方法が知られている(ヘネケら,Protein Eng.11:405−410,1998)。さらに、リンカーは、最終的な融合タンパク質において望ましいコンフォメーションに応じて、ある程度、二次的な特徴(例えば、らせんの特徴,米国特許第5,637,481号)を有するように選択することができる。リンカーが有する二次的な特徴が多ければ多いほど、最終的な融合タンパク質の構造が大幅に制約される。従って、二次構造が実質的に無い実質的に可撓性のリンカーを使用すると、融合タンパク質をリンカーにおいて湾曲させることができる。
【0037】
連結基:タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドと化合物(例えば、薬物または薬物誘導体)との「化学アーム(chemical arm)」。必要とされる化学構造を得るために、どの反応物も必要な反応基を含まなければならない。このような基の代表的な組み合わせは、アミド結合を形成するアミノとカルボキシル;エステル結合を形成するカルボキシとヒドロキシ、もしくはアルキルアミノ結合を形成するアミノとハロゲン化アルキル;ジスルフィドを形成するチオールとチオール;またはチオエーテルを形成するチオールとマレイミドもしくはハロゲン化アルキルである。ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、および他の官能基が存在しない場合、既知の方法によって導入することができる。
【0038】
様々な連結基を使用することができる。連結の構造は、関心対象の化合物をタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに結合するように形成される安定な共有結合であるべきである。共有結合は、リガンドおよび連結基がさらされる溶液条件(例えば、生理学的条件)に対して安定であるべきである。一般的に、好ましい連結基は、1〜約20個の炭素および約10個までのヘテロ原子(NH、O、S)であり、分枝鎖でも直鎖でもよい。前述を限定しないが、化学的に適合する原子の組み合わせが連結基に含まれる。化学的に適合する連結基として、例えば、炭素−炭素結合と組み合わせた、アミド、エステル、チオエーテル、チオールエステル、ケト、ヒドロキシル、カルボキシル、エーテル基が挙げられる。
【0039】
模倣物:医薬品の効果を模倣する生物学的化合物(例えば、ペプチド)。例えば、免疫細胞上の高親和性チオニン結合部位に結合することによってチオニンの効果を模倣するペプチド。
【0040】
新生物:新しく、かつ異常な成長。特に、組織または細胞の新しい成長。ここで、成長は制御されておらず、進行性である。腫瘍は新生物の一例である。
【0041】
核酸:一本鎖または二本鎖の形をしたデオキシリボヌクレオチド重合体またはリボヌクレオチド重合体であり、特に制限のない限り、天然に生じるヌクレオチドと同様に核酸にハイブリダイズする、天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む。
【0042】
機能的に連結された核酸:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関連して配置されている場合、第1の核酸配列は第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターはコード配列の転写または発現に影響を及ぼせば、コード配列に機能的に連結されている。一般的に、機能的に連結されたDNA配列は隣接しており、必要に応じて、同じリーディングフレームにおいて2つのタンパク質コード領域を連結するように隣接している。
【0043】
ORF(オープンリーディングフレーム):終結コドンが全くない、アミノ酸をコードするヌクレオチドトリプレット(コドン)の一続き。これらの配列は、通常、ペプチドに翻訳することができる。
【0044】
非経口:例えば、消化管を介さずに、腸の外側に投与されること。一般的に、非経口処方物は、経口摂取以外の任意の可能な方法によって投与される処方物である。この用語は、特に、注射(静脈内、クモ膜下腔、筋肉内、腹腔内、または皮下に投与されてもよい)および様々な表面適用(例えば、鼻腔内、皮内、および局所適用を含む)を意味する。
【0045】
ペプチド修飾:本発明は、本明細書に記載の活性タンパク質の特異的な生物学的作用を模倣する生物学的に活性な分子を含む。本発明は、本明細書に記載の天然に生じるタンパク質の合成態様、ならびに示された生物学的活性を有する、これらのタンパク質の類似体(非ペプチド有機分子)、誘導体(開示されたペプチド配列から出発して得られた、化学的に官能化されたタンパク質分子)、および変異体(ホモログ)の使用を含む。本発明の各タンパク質(またはペプチド)はアミノ酸の配列からなり、アミノ酸は、天然に生じるアミノ酸と天然に生じないアミノ酸であるL−アミノ酸および/またはD−アミノ酸でもよい。
【0046】
薬学的に許容される担体:本発明において有用な薬学的に許容される担体として、少なくとも従来の薬学的に許容される担体が挙げられる。レミングトンの薬学(Remington’s Pharmaceutical Sciences),E.W.マーティン(Martin),Mack Publishing Co.,Easton,PA,第15版(1975)は、本明細書で開示された免疫刺激薬の薬学的送達に適した組成物および処方物について述べている。
【0047】
一般的に、担体の種類は、使用される特定の投与方法によって決まる。例えば、非経口処方物は、通常、ビヒクルとして水、生理食塩水、平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどの薬学的におよび生理学的に許容される液体を含む注射可能な液体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセルの形態)の場合、従来の無毒の固体担体として、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。生物学的に中性の担体の他に、投与される薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタン)などの少量の無毒の補助物質を含んでもよい。
【0048】
医薬品または薬物:被検体に適切に投与された時に、所望の治療効果または予防効果を誘導することができる化合物または組成物。
【0049】
タンパク質精製:本発明のポリペプチドは、例えば、当業者に周知の、原料(例えば、植物原料)からの物理的精製法ならびに組換え発現およびその後の精製によって精製することができる。例えば、タンパク質精製入門書(Guide to Protein Purification),ドウチャー(Deutscher)編,Meth.Enzymol.185,Academic Press,San Diego,1990、およびスコペス(Scopes),タンパク質精製:原理と実践(Protein Purification:Principles and Practice),Springer Verlag,New York,1982を参照のこと。
【0050】
精製された均一な化合物:「精製された」という用語は完全に純粋であることを必要とせず、むしろ相対的な用語であると意図される。従って、例えば、精製されたタンパク質調製物は、特定のタンパク質が細胞内の天然環境または他の生産システムにあるタンパク質より濃縮されているものである。ポリペプチドは、天然でポリペプチドに付随している汚染物質(例えば、細胞成分(核酸、脂質、炭水化物、および他のポリペプチド))から実質的に分離されていれば「精製」されている。このようなポリペプチドはまた、「純粋な」もしくは「均一な」または「実質的に」純粋もしくは均一であると言うことができる。「精製された」は相対的な用語であると意図され、試料の少なくとも50〜90重量%がポリペプチドからなる時に、ポリペプチド(または他の特定の分子)は精製されている。ある特定の高度に精製された調製物において、本発明のポリペプチドは試料の少なくとも95%以上であり、さらに99%以上と大きい。タンパク質の純度または均一性は、例えば、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動、その後の、ポリアクリルアミドゲルの染色による1つのポリペプチドバンドの視覚化;高速液体クロマトグラフィー;または他の従来の方法によって示される。
【0051】
組換え核酸:組換え核酸は、天然に生じない配列または2つの異なる分離した配列セグメントの人工的な組み合わせにより作成された配列を有する核酸である。この人工的な組み合わせは、多くの場合、化学合成によって、またはより一般的には、単離された核酸セグメントの人為的操作(例えば、遺伝子操作法)によって達成される。
【0052】
組換えタンパク質:組換えタンパク質は、組換え核酸分子によってコードされるタンパク質である。
【0053】
特異的結合因子: 実質的に特定の標的にしか結合しない因子。本明細書で使用する「チオニン特異的結合因子」という用語は、抗チオニン抗体および実質的にチオニンタンパク質(例えば、ピルラリアチオニン)にしか結合しない他の因子を含む。抗体は、チオニンに特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体ならびにその免疫学的に有効な(例えば、特異的に結合する)部分(「断片」)でもよい。好ましくは、本発明において用いられる抗体はモノクローナル抗体(またはその免疫学的に有効な部分)であり、ヒト化モノクローナル抗体(またはその免疫学的に有効な部分)でもよい。抗チオニンペプチド抗体はまた、抗体,実験マニュアル(Antibody, A Laboratory Manual),ハーロー(Harlow)およびレーン(Lane),Cold Spring Harbor Laboratory(1988)を含む多くの教科書に記載の標準的な手順を用いて作成することができる。しかしながら、チオニンは十分な免疫原性がないように見え、従って、抗体または機能的な抗体断片を用いて分子を追跡することが望ましい場合に、遺伝子操作によってエピトープタグを分子に導入することが有利かもしれない。エピトープタグ(例えば、c−myc、HA(ヘマグルチニン)、およびFLAG)ならびにこのようなタグをタンパク質に導入する手順は当業者に周知である。
【0054】
特定の因子が実質的にチオニン(またはタグ化チオニン)にしか結合しないことは、日常的な手順を使用するか、または適合させることによって容易に確かめることができる。ある適切なインビトロアッセイはウエスタンブロッティング法を利用している(ハーローおよびレーンによる抗体,実験マニュアルを含む多くの標準的な教科書において述べられている)。ある特定の結合因子(例えば、モノクローナル抗体)が実質的にチオニン(またはタグ化チオニン)にしか結合しないこと確かめるために、ウエスタンブロッティングを使用することができる。
【0055】
より短い抗体断片もまた特異的結合因子として働くことができる。例えば、チオニンに結合するFAb、Fv、および単鎖Fv(SCFv)はチオニン特異的結合因子である。これらの抗体断片は以下のように定義される:(1)FAb,全抗体を酵素パパインで消化してインタクトな軽鎖および1本の重鎖の一部を生成することによって作成された、抗体分子の一価の抗原結合断片を含む断片;(2)FAb’,全抗体をペプシンで処理し、その後に還元を行ってインタクトな軽鎖および重鎖の一部を生成することによって得られた、抗体分子の断片;抗体1分子につき2つのFAb’断片が得られる;(3)(FAb’)2,全抗体を酵素ペプシンで処理し、その後に還元を行わないで得られた、抗体の断片;(4)F(Ab’)2,2つのジスルフィド結合によって結合された2つのFAb’断片の二量体;(5)Fv,2本の鎖として発現された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む、遺伝子操作された断片;ならびに(6)単鎖抗体(「SCA」),遺伝的に融合した単鎖分子として、適切なポリペプチドリンカーによって連結された軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む、遺伝子操作された分子。これらの断片を作成する方法は日常的な方法である(例えば、ベター(Better)およびホロビッツ(Horowitz),Methods.Enzymol.,178:476−496,1989を参照のこと)。
【0056】
配列同一性:2つの核酸配列間または2つのアミノ酸配列間の類似性は、これらの配列間の類似性によって表される(他に、配列同一性と呼ばれる)。配列同一性は、しばしば、パーセント同一性(または類似性または相同性)によって測定される。パーセントが高ければ高いほど、2つの配列間の類似性が高い。
【0057】
比較のために配列をアラインメントする方法は当技術分野において周知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが、スミス(Smith)およびウォーターマン(Waterman)Adv.Appl.Math.2:482,1981;ネーデルマン(Needleman)およびウンシュ(Wunsch),J.Mol.Biol.48:443,1970;ペアソン(Pearson)およびリップマン(Lipman),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444,1988;ヒギンス(Higgins)およびシャープ(Sharp),Gene,73:237−244,1988;ヒギンスおよびシャープ,CABIOS 5:151−153,1989;コルペット(Corpet)ら,Nuc.Acids Res.16,10881−90,1988;ファング(Huang)ら,Computer Appls.,Biosciences 8,155−65,1992;ならびにペアソンら,Meth.Mol.Bio.24,307−31,1994に記載されている。アルツシュル(Altschul)ら,J.Mol.Biol.215:403−410,1990)は配列アラインメント法および相同性計算の詳細な検討を示している。
【0058】
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(アルツシュルら,J.Mol.Biol.215:403−410,1990)は、配列解析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと共に使用するために、米国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI,Bethesda,MD)を含むいくつかの情報源から、およびインターネット上で入手可能である。
【0059】
2つの核酸分子が密接に関連していることの別のしるしは、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。ストリンジェントな条件は配列依存性であり、異なる環境パラメータで異なる。一般的に、ストリンジェントな条件は、特定のイオン強度およびpHで、特定の配列の熱融点(Tm)より約5℃〜20℃低くなるように選択される。Tは、標的配列の50%が、完全に一致するプローブまたは相補鎖にハイブリダイズされる(特定のイオン強度およびpHでの)温度である。核酸ハイブリダイゼーションの条件およびストリンジェンシーの計算は、サンブルック(Sambrook)ら(分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual),CSHL,New York,1989)およびティジセン(Tijssen)(生化学および分子生物学における実験テクニック−−核酸プローブとのハイブリダイゼーション(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology−−Hybridization with Nucleic Acid Probes)パートI,第2章,Elsevier,New York,1993)で見られる。チオニンコード配列(例えば、ピルラリアチオニンコード配列)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子は、一般的に、50℃で2×SSCの洗浄条件下で、全チオニンコード配列またはコード配列の選択された部分に基づくプローブにハイブリダイズする。
【0060】
高度の同一性を示さない核酸配列が、それにもかかわらず、遺伝暗号の縮重のために類似したアミノ酸配列をコードすることがある。全て実質的に同じタンパク質をコードする複数の核酸分子を生成するように、この縮重を用いて核酸配列に変化を加えることができることが理解される。
【0061】
治療剤:本明細書で使用するこの用語は、治療剤、予防剤、および代用剤を含む。
【0062】
(物質の)治療有効量:治療を受けている被検体において望ましい効果(例えば、免疫刺激効果)を達成するのに十分な、活性化合物(または活性化合物の混合物)の量。
【0063】
本発明において開示されるタンパク質(およびタンパク質の組み合わせ)の免疫刺激用途は、医学および獣医学の場において等しい用途を有する。従って、全ての動物には免疫系があり、従って、免疫刺激薬を用いた治療によって利益を得る可能性があるので、「被検体」および「治療を受けている被検体」という一般的な用語は、全ての動物(一例として、ヒトまたは他の類人猿、イヌ、ネコ、ウマ、およびウシが挙げられる)を含むことが理解される。
【0064】
チオニン:チオニンは、一般的に、植物により産生され、複数の(通常、3個または4個の)ジスルフィド架橋を含み、非常に塩基性であり、かなりの配列相同性を有することを特徴とする小さな毒素タンパク質のクラスである。チオニンとして、コムギから単離されたピューロチオニン;オオムギから単離されたホルドチオニン;ライムギから単離されたベノチオニン;およびキャベツから単離されたクランビンが挙げられる。ピルラリアチオニン、他のチオニン、および関連ペプチドのアミノ酸配列を図1に示す。
【0065】
ピルラリアチオニン(PT)はチオニンの具体例である。PTは、ピルラリア種、特に、ビャクダン目(Santalales)の寄生植物であるP.プベラ(pubera)から単離される。
【0066】
腫瘍:悪性でも良性でもよく、固形腫瘍および非固形腫瘍(例えば、血液悪性腫瘍)を含む新生物。「同じ組織タイプの腫瘍」は、特定の器官(例えば、乳房、前立腺、膀胱、または肺)において生じた原発腫瘍を意味する。同じ組織タイプの腫瘍は異なるサブタイプの腫瘍に分類することができる(典型的な例は、腺癌、小細胞腫瘍、扁平上皮腫瘍、または大細胞腫瘍であり得る気管支原性癌(肺腫瘍)である)。乳癌は、組織学的に、硬性癌、浸潤癌、乳頭状癌、腺管癌、髄様癌、および小葉癌に分類することができる。
【0067】
変異体チオニンおよびチオニン関連ペプチド:1つもしくは複数のアミノ酸置換、1つもしくは複数のアミノ酸欠失、および/または1つもしくは複数のアミノ酸挿入を有するチオニン関連ペプチド(分子を、インビトロ試験系において低濃度(例えば、約0.003〜約0.1μg/ml)で適用した時に、または約3μgを20gのマウスに適用した時に、免疫系を刺激する特性を保持する場合に限る)。生物学的に活性な変異体チオニンまたは生物学的に活性なチオニン関連ペプチドでも見られる、チオニンの特異的な免疫刺激効果は本明細書で述べられる。ペプチドが免疫刺激活性(例えば、本明細書で開示されるようにマイトジェンアッセイ、ナチュラルキラーアッセイ、または腫瘍もしくは転移の阻害アッセイによって容易に測定される)を保持する限り、保存的アミノ酸置換を少なくとも1つの位置(例えば、2、3、4、5、さらに10の位置)において行うことができる。
【0068】
別途定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者に周知の用語として定義される。本明細書に記載のものと同様または等価な方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、適切な方法および材料を以下で説明する。本明細書で述べた全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全てが参照として組み入れられる。矛盾が生じた場合は、定義を含む本明細書が統制する。さらに、材料、方法、および実施例は例示にしかすぎず、限定を意図するものではない。
【0069】
II.チオニン
A.生物活性
本明細書で説明される発明は、低濃度チオニン(例えば、ピルラリアチオニン(PT))の独特のかつ以前では知られていなかった免疫刺激特性の発見である。この免疫刺激は、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞の活性化を含み、脾細胞懸濁液中のマクロファージによるインターロイキン−1(IL−1)およびインターロイキン−12(IL−12)の産生を刺激する。より一般的には、いくらか高い用量のチオニンの投与も免疫系を刺激し、脾臓および胸腺におけるT細胞数の増加につながる。これは、成熟したマクロファージおよびナチュラルキラー細胞の活性化とは異なる作用である、胸腺におけるT細胞発達の刺激を反映している。チオニンを介した免疫刺激は腫瘍形成(例えば、黒色腫形成)を防御する。チオニンはまた、ウイルス感染症を治療するのに、または(例えば、疾患もしくは加齢によって引き起こされる)免疫不全を改善するのに使用することができる。
【0070】
これらの免疫刺激効果は、驚くほど低い濃度のチオニン(例えば、約0.003〜約0.1μg/mlの範囲)で感じられる。細胞は、低濃度と高濃度のチオニン(例えば、ピルラリアチオニン)適用に対して別個のかつ異なる応答を示す。これは、免疫細胞上に2種類のチオニン結合要素が存在するという発見を表している。本明細書で報告する活性は高親和性部位(解離定数0.065μM)に関連し、この部位は、低チオニン濃度で抗腫瘍防御をもたらすように免疫細胞の刺激を媒介する。低親和性結合部位は、高PT濃度での膜破壊、次いで細胞死(直接的な毒性)につながる、PTと膜内のホスファチジルセリン(PS)または他の基本リン脂質との結合に関与している。
【0071】
マウスへのPT投与の免疫刺激効果の一例は、脾臓および胸腺において観察されたT細胞数の増加である。この効果は、10μgのPTがスイスウェブスター(Swiss Webster)マウスに腹腔内注射された時に起こる。これは、成熟したマクロファージおよびナチュラルキラー細胞の活性化とは異なる効果である、胸腺におけるT細胞発達の刺激を反映している。
【0072】
チオニンの免疫刺激活性は、インターロイキン(例えば、インターロイキン−2(IL−2))と共に適用された時に増大する。IL−2およびPTを用いた併用療法は腫瘍の発達を予防または緩和し、確立した腫瘍の増殖を緩慢にする。これらの結果はナチュラルキラー細胞の活性化と一致している。この治療はまた転移(例えば、黒色腫腫瘍の転移)を阻害し、線維肉腫を含む他の癌を防御する。
【0073】
インビトロ実験において、マウス脾臓細胞は、チオニンPTの適用に対して一貫した応答(マイトジェン活性およびナチュラルキラー細胞活性の刺激)を示す。さらに、PTの注射は腫瘍の形成および転移を防御する。チオニンと他の免疫刺激化合物(例えば、IL−2または顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))との同時投与は、観察された特異的かつ全般的な免疫刺激応答を協力作用的に増大させる。
【0074】
1つの機構に拘束されることを意図しないが、チオニンの抗腫瘍活性は、(少なくとも部分的に)NK細胞の活性化によって媒介されるように見える。NK細胞が関与するという大きな表れは、免疫刺激薬IL−2が同時投与された時に観察される協力作用刺激であるかもしれない。同様に、チオニンの抗腫瘍活性は、プロスタグランジンA2形成の阻害剤であるインドメタシンの存在下で増大する。プロスタグランジンA2はNK活性を阻害することが知られている。
【0075】
これらのインビトロ免疫刺激効果は、PTに対する細胞傷害性細胞応答を刺激するのに必要であると以前に述べられた濃度(2〜30μg/ml)より非常に低い、比較的低濃度のチオニン(例えば、約0.003〜約0.1μg/mlのピルラリアチオニンの範囲)で観察された。低濃度および高濃度のPTに対する別個のかつ異なる細胞応答は、免疫細胞上に2種類のPT応答結合要素が存在するという驚くべき発見を表している。本明細書で報告する免疫刺激活性は高親和性部位(解離定数約0.065μM)に関連している。
【0076】
対照的に、低親和性部位(解離定数約1.6μM)は、高濃度のPTが細胞に適用された時にPTにより引き起こされる細胞傷害作用を担っている。高濃度のPTは、細胞のリン脂質二重層内のホスファチジルセリンまたは他のリン脂質に結合し、これは、細胞膜の混乱、カルシウムチャンネルの開口、内因性ホスホリパーゼA2の活性化、膜の小疱形成(membrane blebbing)、および最終的な細胞死につながる。
【0077】
B.配列変異体
チオニンタンパク質の脂質結合特性および免疫刺激活性は正確なアミノ酸配列に完全に依存しないが、DNA配列によってコードされるアミノ酸配列に固有のタンパク質の3次元構造および結果として生じる表面特性に少なくとも部分的に依存している。3次元構造を再現することによって(必ずしも、正確なアミノ酸配列を再現するとは限らない)、本発明のこれらの任意のペプチド、タンパク質、またはタンパク質ドメインの物理的特性を再現することが可能である。これは、3次元構造をコードするが、例えば、遺伝暗号の縮重によって異なる核酸配列を設計することによって達成することができる。同様に、機能的な結合ペプチドを生じながらも、DNA配列を変えることができる。
【0078】
変異体チオニン関連ペプチドとして、開示された配列(図1を参照のこと)とはアミノ酸配列が異なるが、示されたタンパク質のどれとも構造的にかなりの配列相同性を有するものが挙げられる。このような変異体のいくつかは、チオニン様生物学的活性(例えば、本明細書に記載のような高親和性免疫刺激活性)を有することによって特徴付けられる。
【0079】
【表1】
Figure 2004508412
【0080】
表1に示したものより保存的でないアミノ酸置換を選択することによって、タンパク質構造に大幅な変化を加えることができる。このような変化は、置換に近いポリペプチドバックボーン構造(例えば、シートまたはヘリックスコンフォメーション)、標的部位での分子の電荷もしくは疎水性、または特定の側鎖のバルクの維持に及ぼす影響がかなり異なる残基を変えることを含む。以下の置換は、一般的に、タンパク質の特性に最も大きな変化をもたらすと予想される:(a)疎水性残基(例えば、ロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリル、もしくはアラニル)を親水性残基(例えば、セリルもしくはスレオニル)で置換するか、または親水性残基を疎水性残基で置換する;(b)他の任意の残基をシステインもしくはプロリンで置換するか、またはシステインもしくはプロリンを他の任意の残基で置換する;(c)負電荷を有する残基(例えば、グルタミルもしくはアスパルチル)を正電荷を有する側鎖を有する残基(例えば、リジル、アルギニル、もしくはヒスタジル)で置換するか、または正電荷を有する側鎖を有する残基を負電荷を有する残基で置換する;あるいは(d)側鎖の無い残基(例えば、グリシン)をバルキーな側鎖(例えば、フェニルアラニン)を有する残基で置換するか、またはバルキーな側鎖を有する残基を側鎖の無い残基で置換する。これらの大幅な変化が加えられても、結果として得られる変異体は特許請求の範囲に含まれ得る。このような大幅に変化した変異体は、例えば、本明細書に記載のアッセイを用いて、保存的変異体と同様にチオニン様生物活性についてアッセイすることができる。
【0081】
チオニン化合物のアミノ酸位置9〜14は最も高度に保存されている(図1)。これは、この領域がチオニン化合物の生物学的活性を特に担っていることを示しているかもしれない。従って、チオニン機能(例えば、免疫刺激活性)を維持することが必須のチオニン変異体では、結果として得られるチオニン変異体の生物活性を保持することが重要な場合、理想的には、アミノ酸位置9〜14での置換を避ける。同様に、安定性および/または二次構造を維持することが必須のある特定のチオニン変異体では、チオニン内にジスルフィド架橋を形成するシステイン残基での置換を避ける。
【0082】
結合ペプチドまたはペプチドコード配列の変異体は、標準的なDNA変異誘発法(例えば、M13プライマー変異誘発)によって作成することができる。これらの技法の詳細は、サンブルックら(分子クローニング:実験マニュアル,Cold Spring Harbor,New York,1989))Ch.15に示されている。このような技法を使用することによって、開示されたpoloボックスペプチドコード配列とはわずかな点で異なる変異体を作成することができる。本明細書で詳細に開示されたペプチド配列の誘導体であるが、(高親和性または低親和性の)特定の部位への結合についてネイティブなチオニンと競合するペプチドまたはタンパク質をコードしながらも、アミノ酸の欠失、付加、または置換によって、開示されたペプチド配列とは異なり、それによって、細胞または無細胞系においてチオニンを介した活性(例えば、免疫刺激活性、特に、本明細書に記載のような低チオニン濃度で生じる活性)が調節されたペプチド配列が本発明に含まれる。
【0083】
または、ヌクレオチド配列は実質的に変わっているが、それにもかかわらず、開示された融合配列に実質的に類似したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするように、遺伝暗号の縮重を利用してコード配列を変えることによってコード領域を変えることができる。遺伝暗号の縮重に基づいて、前記のような標準的なDNA変異誘発法を用いて、またはDNA配列合成によって、変異体DNA分子を本明細書で開示されたコード配列から得ることができる。従って、本発明はまた、poloボックス関連ペプチドをコードするが、遺伝暗号の縮重によって開示された配列とは異なる核酸配列を含む。
【0084】
C.ペプチド修飾
本発明は、本発明のチオニンおよびチオニン結合体の作用を模倣する、特に、特定の細胞部位(例えば、本明細書で定義される高親和性部位)での結合についてチオニンと競合する、生物学的に活性な分子を含む。本発明のタンパク質およびペプチドとして、本明細書に記載の天然に生じるタンパク質の合成態様、ならびに、結合(例えば、ネックフラメント(neck filament)または他の細胞質分裂構造の要素への結合)についてネイティブなpolo様キナーゼと特異的に競合する、これらのタンパク質の類似体(非ペプチド有機分子)、誘導体(開示されたペプチド配列から出発して得られた、化学的に官能化されたタンパク質分子)、および変異体(ホモログ)が挙げられる。本発明のそれぞれのタンパク質またはペプチドはアミノ酸配列からなり、アミノ酸は、天然に生じるアミノ酸と天然に生じないアミノ酸であるL−アミノ酸および/またはD−アミノ酸でもよい。
【0085】
タンパク質およびペプチドは、非修飾タンパク質と本質的に同じ活性を有し、選択的に、他の望ましい特性を有する誘導体を作成するように様々な化学的技法によって修飾することができる。例えば、タンパク質のカルボン酸基は、それがカルボキシ末端でも側鎖でも、薬学的に許容されるカチオンの塩の形で提供されてもよく、C−C16エステルを形成するようにエステル化されてもよく、式NRのアミドに変換されてもよく(式中、RおよびRはそれぞれ独立してHまたはC−C16アルキルである)、複素環(例えば、5員環または6員環)を形成するように結合されてもよい。タンパク質のアミノ基は、それがアミノ末端でも側鎖でも、薬学的に許容される酸添加塩(例えば、HCl塩、HBr塩、酢酸塩、安息香酸塩、トルエンスルホン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、および他の有機塩)の形でもよく、C−C16アルキルまたはジアルキルアミノに修飾されてもよく、アミドにさらに変換されてもよい。
【0086】
タンパク質側鎖のヒドロキシル基は、十分に認められた技法を用いてC−C16アルコキシまたはC−C16エステルに変換することができる。タンパク質側鎖のフェニルおよびフェノール環を、1つまたは複数のハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、もしくはヨウ素)、またはC−C16アルキル、C−C16アルコキシ、カルボン酸およびそのエステル、またはこのようなカルボン酸のアミドで置換することができる。タンパク質側鎖のメチレン基を同族のC−Cアルキレンに拡大することができる。チオールを、多数の十分に認められた保護基(例えば、アセトアミド基)のいずれか1つを用いて保護することができる。当業者はまた、コンフォメーション上の制約を選択し、安定性の向上をもたらす構造に設けるために、環式構造を本発明のタンパク質に導入する方法を理解するだろう。
【0087】
ペプチド模倣物および有機模倣物の態様もまた本発明の範囲内にある。ここで、このようなペプチド模倣物および有機模倣物の化学構成要素の3次元配置は、二重特異性中和融合タンパク質におけるタンパク質バックボーンおよび構成アミノ酸の側鎖の3次元配置を模倣し、これにより、測定可能なまたは増大した中和能力を有する、本発明のタンパク質のこのようなペプチド模倣物および有機模倣物が得られる。コンピュータモデリングを適用する場合、ファーマコフォアが、生物学的活性に必要とされる構造条件の理想的な3次元定義である。ペプチド模倣物および有機模倣物は、(コンピュータ支援薬物設計(computer assisted drug design:CADD)を用いて)最新のコンピュータモデリングソフトウェアによって各ファーマコフォアに合うように設計するとができる。CADDにおいて用いられる技法の説明については、ワルターズ(Walters)「コンピュータ支援薬物モデリング(Computer−Assisted Modeling of Drugs)」クレゲルマン(Klegerman)およびグローブス(Groves)編,1993,Pharmaceutical Biotechnology,Interpharm Press:Buffalo Grove,IL,165−174頁ならびに薬理学の原理(Principles of Pharmacology)マンソン(Munson)(編)1995,Ch.102を参照のこと。中和融合タンパク質を生成する、このような技法を用いて調製された模倣物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
【0088】
D.チオニンまたはチオニン誘導体のアッセイ
開示されたチオニンの化学的活性、物理的活性、および生物学的活性(特に、免疫刺激活性)は、本明細書に開示されたアッセイ(例えば、実施例1〜4のアッセイ)を用いて容易に評価することができる。中でも、タンパク質機能の機能アッセイは、治療用途において有効な各タンパク質の投与量の最適化、チオニンから得られた分子(例えば、保存的または非保存的アミノ酸置換を含む分子)の設計(長さを含む)、および他のチオニンと例として本明細書に記載されたピルラリアチオニン活性との比較を可能にする。これらのアッセイはまた、既知のチオニンタンパク質ならびに新たに同定されたチオニンもしくは推定チオニンまたはチオニン変異体および模倣物を免疫刺激生物活性について試験するのに使用することができる。実施例2〜4のアッセイの1つまたは複数での後の選択および試験のために、最初に、候補薬剤を、例えば、マイトジェンアッセイにおいてスクリーニングすることができる。
【0089】
チオニン免疫刺激活性は、あるタンパク質が免疫細胞、免疫系、および/またはより一般的には動物において免疫応答を刺激する能力である。より詳細に述べると、低投与量チオニンに関連する免疫刺激は、チオニンを、2μg/ml未満の投薬量、より詳細には1μg/ml未満の投薬量(例えば、約0.1μg/mlから0.003μg/ml以下と少ない投薬量)を用いてインビトロ系に適用した時に見られる効果を含む。インビボ系では、これらの効果は、20gマウスにおいて約1μg〜約5μgまたは約50〜約250μg/Kg体重の適用濃度で見られる。関与し得る特異的な免疫刺激効果として、T細胞生成の刺激、インターロイキン産生(例えば、マクロファージによるIL−Iおよび/またはIL−12の産生)の刺激、ならびにナチュラルキラー細胞および/またはマクロファージの活性化が挙げられる。これらの免疫刺激効果の多くは、例えば、免疫刺激インターロイキン(例えば、IL−2)およびコロニー刺激因子(例えば、GM−CSF)を含む1つまたは複数のさらなる免疫刺激薬の同時投与によって協力作用的に増大することができる。
【0090】
チオニンを介した免疫刺激を調べる方法として、1つまたは複数の免疫細胞タイプの活性化もしくは増殖または増大したインターロイキン産生(例えば、IL−1もしくはIL−12)の直接的な測定などの本明細書に開示される方法が挙げられる。免疫刺激の二次効果もまた、本明細書に記載のように、例えば、腫瘍形成、腫瘍増殖の相対速度、もしくは腫瘍転移を調べることによって、または試験化合物で治療された生物のウイルス感染症もしくは他の感染症に対する耐性によって測定することができる。対照分子を各アッセイに含めることができる。対照分子として、例えば、1つまたは複数のジスルフィド架橋の形成を担うアミノ酸、チオニン分子の翻訳後修飾(例えば、グリコシル化もしくはリン酸化)を担うアミノ酸、または本明細書に記載の機能の1つに必要なアミノ酸が置換されているチオニン関連ペプチドを挙げることができる。チオニン結合体の場合、対照分子は結合系の任意の一部を含んでもよい(例えば、チオニン−βME結合体について述べた以下の実施例に記載のもの。このような対照はチオニンおよびβMEを含む)。
【0091】
III.安定化担体タンパク質としてのチオニン
その独特の構造のために、ピルラリアチオニンは非常に小さく極端に安定な分子である。ピルラリアチオニンと細胞膜との相互作用は、ピルラリアチオニンを70℃の温度に暴露しても影響を受けない。この極端な安定性は、タンパク質の8つのシステイン残基間で形成する4個のジスルフィド結合によるものである。この密な構造はまた、このタンパク質を、血液中に見出される一般的なプロテアーゼに対して耐性にする。重要なことに、その密な構造および一般的なプロテアーゼの作用に対する耐性のために、PTは免疫原性でない。ひとまとめにして考えると、極端な安定性および免疫原性の欠如というこれらの特性は、PTを、薬物を体内の作用部位に送達するための優れたビヒクルにする。
【0092】
従って、PT、より一般的にチオニンは、薬物または他の治療用化合物を被検体の細胞に送達するための優れたビヒクルである。この機能は、少なくともある程度、タンパク質の3次元形態を制約する複数のジスルフィド架橋による、チオニンの極端な安定性の結果である。一例として、PTを、関心対象の化合物に(例えば、化学結合によって、または化合物がタンパク質である場合、コード配列との遺伝子融合によって)結合させ、結合体を被検体に送達することができる。この系はパッセンジャー化合物(例えば、リンパ球の免疫応答の既知の刺激物質であるβME)の安定性を高め、パッセンジャー化合物を細胞に送達するのを容易にする。
【0093】
安定化担体タンパク質としてのチオニンの使用は、PTを、リンパ球の免疫応答の既知の刺激物質であるβ−メルカプトエタノール(βME)に結合させることによって証明される(以下を参照のこと)。PT−βME結合体はPTのみと比較して著しく大きな活性を示す。強塩基性PTへのこのような結合に影響を及ぼすことの容易さは、PTをインビボで他の薬物および刺激剤を送達するための理想的な候補にする。
【0094】
他の可能性のあるパッセンジャー化合物として、一例にすぎないが、化学療法剤(例えば、アドリアマイシン、メトトレキセート、または細胞膜に結合し、影響を及ぼす他の薬剤)および腫瘍細胞抗原であるペプチドが挙げられる。
【0095】
パッセンジャー化合物をチオニンに結合させる方法として、化学的連結(例えば、本明細書に記載のような特異的架橋)および遺伝子(組換え)融合が挙げられる。融合タンパク質を作成する方法は当技術分野において十分にあり、例えば、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,022,535号および同第6,066,318号に見出される。
【0096】
IV.チオニンまたは関連タンパク質の発現および精製
A.チオニンまたはその誘導体もしくは融合の発現
当業者は、後で精製できるように組換えタンパク質(例えば、本明細書に記載のような、チオニン、チオニン変異体、またはチオニン組換え融合)を発現するために無数の方法があることを認識していると思われる。一般的に、望ましいタンパク質をコードする核酸配列を有する発現ベクターを、発現用微生物に形質転換によって導入する。このような微生物は原核生物(細菌)でも真核生物(例えば、酵母)でもよい。使用することができる細菌種の一例は大腸菌(E.coli)であり、大腸菌は実験用発現系として広範囲にわたって用いられている。真核生物発現系を使用することができる。この場合、関心対象のタンパク質は、真核生物特異的な翻訳後修飾(例えば、グリコシル化、リン酸化)または複雑な二次構造もしくは三次構造(これは1つもしくは複数のシャペロンもしくは他の補助タンパク質の活性によって調節され得る)を必要とする。同様に、タンパク質は、ウイルス(例えば、ワクシニア)に基づく発現系を用いて発現させることができる。
【0097】
タンパク質は動物細胞組織培養において発現させることもでき、このような系は、動物特異的タンパク質修飾が組換えタンパク質において望ましいか、または必要とされる場合に使用することができる。同様に、植物組織培養が使用可能であり、望ましい、または必要とされるタンパク質の植物特異的タンパク質修飾(例えば、翻訳後修飾)が存在する場合に推奨される。
【0098】
培養可能な細胞の安定な形質転換に適したベクターも周知である。一般的に、このようなベクターは、5’および3’調節配列の転写制御下になるように、クローニングされた核酸分子を挿入するのに適したマルチクローニングサイトを含む。さらに、形質転換ベクターは1つまたは複数の選択マーカーを含む。細菌形質転換の場合、これは、抗生物質耐性遺伝子であることが多い。このような形質転換ベクターはまた、一般的に、プロモーター調節領域(例えば、誘導性発現または構成的発現を制御する調節領域)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、および転写終結部位も含み、それぞれが、マルチクローニングサイトに対して機能的に配置されている。多量の組換えタンパク質の産生のために、誘導性プロモーターを使用することができる。これは、組換えタンパク質の選択的な産生を可能にし、構成的プロモーターより高レベルの産生を可能にし、構成的に発現された場合に発現細胞にとって有毒な可能性のある組換えタンパク質の産生を可能にする。
【0099】
一般的な指針に加えて、タンパク質発現/精製キットが市販されている。例えば、QIAexpress(商標)発現系(キアゲン(QIAGEN)(Chatsworth,CA))およびインビトロゲン(INVITROGEN)(Carlsbad,CA)により提供される様々な発現系を参照のこと。製品によって提供される詳細に応じて、このようなキットを、開示されたチオニン、チオニン関連ペプチドおよびタンパク質、ならびにチオニン融合の産生および精製のために使用することができる。
【0100】
B.精製
当業者は、組換えポリペプチドを精製するために無数の方法があり、このような一般的なタンパク質精製法を、開示された治療用チオニンおよび関連タンパク質を精製するのに使用できることを認識していると思われる。このような方法として、例えば、タンパク質クロマトグラフィー法(イオン交換、ゲル濾過、HPLC、モノクローナル抗体アフィニティクロマトグラフィーを含む)および過剰産生後の不溶性タンパク質封入体の単離が挙げられる。さらに、精製親和性タグ(例えば、6ヒスチジン配列)を組換えによってタンパク質に融合させ、ポリペプチド精製を容易にするのに使用することができる。精製後のタグの除去を容易にするために、ある特定のタンパク質分解部位(例えば、トロンビン特異的消化部位)をタグと融合それ自体との間でタンパク質に導入することができる。
【0101】
市販のタンパク質発現/精製キットは、各系を用いて作成されたタンパク質の精製のための特化されたプロトコールを提供する。例えば、QIAexpress(商標)発現系(キアゲン(Chatsworth,CA))およびインビトロゲン(Carlsbad,CA)により提供される様々な発現系を参照のこと。二重特異的融合タンパク質を生産するために市販キットを使用する場合、製造業者の精製プロトコールは、そのタンパク質を精製するための詳細に開示されたプロトコールである。例えば、アミノ末端6hisタグと共に発現したタンパク質は、ニッケル−ニトリロ三酢酸(Ni−NTA)金属アフィニティクロマトグラフィーマトリックスによって精製することができる(The QIAexpressionist,キアゲン,1997)。
【0102】
チオニンまたはチオニン関連ペプチドが分泌型で産生される(例えば、トランスジェニック動物の乳に分泌される)場合、分泌された液体から精製を行う。または、タンパク質を分泌された液体(例えば、乳)の状態で被検体に直接適用することができる場合、精製は不要な場合がある。
【0103】
V.薬学的組成物への組み込み
活性成分として本明細書に記載の少なくとも1つのチオニンタンパク質を含む薬学的組成物または活性成分としてチオニンおよびインターロイキン(例えば、IL−2)の両方を含む薬学的組成物を、選択された特定の投与方法に応じて適切な固体または液体の担体と共に処方することができる。本発明において有用な薬学的に許容される担体および賦形剤は従来からあるものである。例えば、非経口処方物は、通常、水、生理食塩水、他の平衡塩溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される液体ビヒクルである注射可能な液体を含む。含めることが可能な賦形剤は、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿製剤などの他のタンパク質である。所望であれば、投与される薬学的組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤(例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタン)などの少量の無毒の補助物質を含んでもよい。
【0104】
他の医薬品および製薬(例えば、別の免疫刺激薬)も含めることができる。免疫刺激薬として、例えば、COX−2阻害剤、IL−12、サポニン(例えば、QS−23)、およびN−アセチル−システインが挙げられる。
【0105】
薬学的組成物の剤形は選択された投与方法によって決められる。例えば、注射可能な液体の他に、局所処方物および経口処方物を使用することができる。局所製剤として、点眼薬、軟膏、噴霧剤などを挙げることができる。経口処方物は液体(例えば、シロップ、溶液、または懸濁液)でもよく、固体(例えば、散剤、丸剤、錠剤、またはカプセル)でもよい。固体組成物の場合、従来の無毒の固体担体として、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。このような剤形を調製する実際の方法は当業者に周知であり、明らかであろう。
【0106】
チオニンを含む薬学的組成物またはチオニンおよびインターロイキン(例えば、IL−2)を含む薬学的組成物は、本発明のある態様では、正確な投与量を1回1回投与するのに適した単位剤形で処方される。考えられる1つの単位投薬量は、約1.5mgのチオニンを、約50,000単位のIL−2(10Kgの体重に最適な量)と共にまたは伴わずに含む。投与される1またはそれ以上の活性化合物の量は、治療を受けている被検体、疾患の重篤度、および投与方法によって決まり、処方をした医師の判断に任せるのが最善である。これらの制限内で、投与される処方物は、治療を受けている被検体において望ましい効果を達成するのに有効な量の1つまたは複数の活性成分を含む。
【0107】
VI.治療用途
低用量のチオニン(例えば、ピルラリアチオニン)は、免疫系に関与する状態または疾患(例えば、免疫系を阻害(または抑制する)状態(臨床治療を含む))の治療に有効である。この効果は、1つまたは複数のさらなる免疫刺激薬(例えば、IL−2またはGM−CSF)とチオニンを同時投与することによって高めることができる。免疫調節化合物の治療用途についての概略は周知であり、例えば、米国特許第5,632,983号、同第5,726,156号、および同第5,861,483号において見られる。
【0108】
A.感受性のある疾患/状態
免疫不全症、免疫抑制性治療、急性感染症および/または慢性感染症、ならびに老化に関連した免疫不全(例えば、1つもしくは複数の免疫細胞タイプまたは1つもしくは複数の免疫学的要因の不全)は、本明細書に記載の方法および組成物を用いて治療することができる。免疫抑制の状態および疾患の概要は、ハリソン(Harrisons)「内科の原理(Principles of Internal Medicine)」第14版,McGraw−Hill,1998、特に、第86章(癌治療の原理)、第88章(黒色腫および他の皮膚癌)、第307章(原発性免疫不全症)、および第308章(ヒト免疫不全症ウイルス疾患)に見られる。
【0109】
免疫抑制性治療:
多くの治療が免疫系を傷つけることがある。例えば、コルチコステロイドは細胞性免疫を低下させることがある。癌治療(例えば、化学療法および放射線療法)に関連した主要な毒性は、免疫系および血液系の維持を担う増殖細胞(例えば、造血細胞)の破壊である。同様に、免疫抑制および免疫系の除去は骨髄移植に必要とされ、骨髄移植において免疫細胞は除去され、その後に移植細胞と取り替えられる。ある特定の既知の免疫刺激薬(例えば、エリスロポエチンおよびコロニー刺激因子(例えば、G−CSF(時々、「ニューポゲン(Neupogen)」(米国特許第5,536,495号)の名前で販売されている))は、免疫細胞の再生を刺激することによって、これらの状態のいくつかを治療するのに以前に用いられている。本発明の免疫刺激化合物および混合物は、治療または医原性の免疫抑制に苦しんでいる患者(骨髄移植、化学療法、および/または放射線療法を受けた患者を含む)の免疫系を刺激するのに使用することができる。
【0110】
急性感染症および/または慢性感染症
脾臓T細胞の生成を促進するチオニンの能力は、チオニンが、慢性および急性両方の様々な疾患に対して免疫系を活性化するための全般的な免疫刺激薬として使用できることを示している。このような感染症として、細菌感染症およびウイルス感染症ならびに真核生物の病原体および寄生生物によって引き起こされる外寄生が挙げられる。
【0111】
さらに詳細に述べると、免疫刺激チオニン治療はHIV疾患の治療において使用することができる。チオニンタンパク質がマクロファージおよび細胞傷害性T細胞を刺激する能力は、HIV感染細胞を破壊するのを助けるのに有益である。さらに、細胞膜のある特定の脂質に対するチオニンタンパク質の親和性(例えば、ホスファチジルセリンに対するPTの親和性)は、ウイルス膜と細胞膜との融合を阻害する可能性がある。
【0112】
老化に関連した免疫不全
(さらなる免疫刺激薬を伴う、または伴わない)チオニン治療による(T細胞生成の刺激を介した)免疫系の活性化はまた、免疫機能が多くの場合、損なわれている老齢の被検体において有益であると考えられる。
【0113】
他の一般的な状態
治療および感染症によって引き起こされる免疫抑制に加えて、開示された方法および組成物は、遺伝的および生化学的な免疫不全を治療するのに使用することができる。
【0114】
免疫系が損なわれている、または抑制されている他の状態が知られている。これらの状態はいずれも、本明細書に開示される方法および説明された組成物の適用から利益を得る。一般的に、本発明の方法または組成物の1つを用いて治療する必要性は、試験被検体の免疫状態を調べ、この免疫状態と対照または平均免疫状態(仮想「正常」被検体)を比較することによって決定することができる。例えば、免疫機能を評価するために、骨髄生検材料または末梢血リンパ球を採取することができる。免疫機能の低下を示すものとして、白血球減少(例えば、好中球減少もしくはリンパ球減少)または白血球機能低下の証拠が挙げられる。試験被検体の免疫状態が低下している場合(例えば、末梢白血球数が正常値以下に減少している、例えば、正常値より25%少ない場合)、本発明の免疫刺激方法および/または組成物を、免疫抑制状態を改善するための治療として考慮すべきである。
【0115】
B.治療形態
本発明の化合物およびペプチド(またはその混合物)は、ヒト、または、その細胞に対して本発明の化合物およびペプチド(またはその混合物)が有効な他の動物に、様々なやり方で(例えば、局所、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、皮内、クモ膜下腔、および皮下に)投与することができる。症例の詳細(例えば、被検体、疾患、関与する疾患状態、および治療が予防であるかどうか)を考慮して、特定の投与方法および投与計画が主治医によって選択される。治療は、数日から数ヶ月、さらに数年の期間にわたって、1日量または複数日の用量の1つまたは複数の化合物および/またはペプチドを伴ってもよい。
【0116】
チオニン(例えば、ピルラリアチオニン)またはチオニンおよびIL−2の組み合わせの治療有効量は、被検体の免疫系を刺激するのに必要なチオニン(およびIL−2)の量であり得る(チオニンの免疫刺激有効量とも呼ばれる)。チオニン(例えば、ピルラリアチオニン)およびチオニンとIL−2との組み合わせによって引き起こすことができる特異的な免疫刺激効果が本明細書で説明される。ある態様では、チオニンの免疫刺激量は、実質的な細胞傷害作用を引き起こすことなく(例えば、試料中の10%を超える細胞を殺傷することなく)、免疫応答(例えば、本明細書に記載の任意の刺激応答)を刺激するのに十分な量である。
【0117】
有効量のチオニン(またはチオニン/IL−2)は、1回の用量または数回の用量で、例えば、治療経過中に毎日、投与することができる。しかしながら、1つまたは複数の活性タンパク質の有効量は、適用される特定のチオニンおよび/または1つもしくは複数のインターロイキンタンパク質、治療を受けている被検体、疾患の重篤度およびタイプ、ならびに1つまたは複数の治療用タンパク質の投与方法によって決まる。例えば、ピルラリアチオニンの治療有効量は、約0.05mg/Kg体重〜約0.5mg/Kg体重で異なってもよく、その一方で、チオニンと併用されるIL−2の治療有効量は、約1,000単位/Kg体重〜約25,000単位/Kg体重で異なってもよい。さらなる特徴として、インターロイキンは単位で測定され、1単位は、インターロイキン依存性細胞傷害性T細胞リンパ球へのトリチウム化チミジンの最大半分の取り込みを誘導する量である。従って、IL−2の単位は、IL−2依存性細胞傷害性T細胞リンパ腫へのトリチウム化チミジンの最大半分の取り込み誘導するIL−2の量に合わせられる。一例として、本明細書に記載の研究に用いられたIL−2製剤はシグマケミカル(Sigma Chemical Co.),St Louis,MOから購入し、1単位は0.18ng/mlに等しかった。
【0118】
開示された化合物の部位特異的投与は、例えば、チオニン製剤を前癌領域、新生物が除去された組織の領域、または新生物が発達しやすいと考えられる領域に適用することによって使用することができる。
【0119】
治療が、チオニン(もしくは関連ペプチド)または別のタンパク質とのチオニン遺伝子融合を発現する細胞を被検体に直接投与することによるものである場合、このような細胞(例えば、トランスジェニック多能性幹細胞もしくは造血幹細胞またはB細胞)は、例えば、1回または数回にわたって約10〜1010細胞の用量で投与することができる。細胞数は、患者ならびに結合ペプチドおよびタンパク質を発現するように選択された細胞によって決まる。
【0120】
遺伝子をドナー細胞に導入するための一般的なストラテジーが、参照として組み入れられる米国特許第5,529,774号に開示されている。一般的に、治療上望ましい効果を有するタンパク質またはペプチドをコードする遺伝子がウイルス発現ベクターにクローニングされ、次いで、そのベクターが標的生物に導入される。ウイルスは細胞に感染し、インビボでタンパク質配列を産生し、そこで望ましい治療効果を生じる。例えば、ザブナー(Zabner)ら,Cell 75:207−216,1993を参照のこと。poloボックス(または関連ペプチド)、結合ペプチド、または相同タンパクをコードする配列をウイルスDNAに付加することの代替として、周知の方法(サンブルックら,分子クローニング:実験マニュアル,Cold Spring Harbor,New York,1989)によって、このような遺伝子を感染細胞または非感染細胞の体細胞DNAに導入することも可能である。これらの方法は、細胞増殖の長期阻害をもたらすために、本明細書で開示されたペプチドをコードする核酸をヒト細胞に導入するのに使用することができる。例えば、新生物に局在する細胞または新生物に近い細胞、幹細胞部位に局在する細胞または幹細胞の近い細胞などでペプチドを分泌させるために、遺伝子療法を使用することができる。
【0121】
C.組み合わせ
本発明はまた、チオニンと、免疫に関連した障害、状態、または疾患(例えば、疾患または治療によって引き起こされる免疫抑制)の治療において有用な1つまたは複数の他の薬剤との組み合わせを含む。例えば、本発明の化合物および/またはペプチドは、有効量の他の免疫刺激薬、抗癌剤、抗炎症剤、抗感染剤、および/またはワクチンと組み合わせて投与することができる。「組み合わせて投与」または「同時投与」という用語は、活性薬剤の同時投与および連続投与の両方を意味する。
【0122】
ワクチン中のPTと免疫刺激薬の同時投与もまた、免疫系に影響を及ぼす疾患に対する予防および/または防御において有用である。
【0123】
本発明の化合物および/またはペプチドと併用することができる免疫調節剤の例は、AS−101(ウェイスアイエルストラボ(Wyeth−Ayerst Labs.))、ブロピリミン(アップジョン(Upjohn))、γインターフェロン(ジェネンテック(Genentech))、GM−CSF(ジェネティクスインスティチュート(Genetics Institute))、IL−2(セタス(Cetus)またはホフマンラロシュ(Hoffman−LaRoche))、ヒト免疫グロブリン(カッターバイオロジカル(Cutter Biological))、IMREG(イムレッグオブニューオリンズ(Imreg of New Orleans),Louisiana)、SKおよびF106528、ならびにTNF(ジェネンテック)である。本明細書に記載のように、チオニンと免疫刺激化合物(例えば、インターロイキン(例えば、IL−2)またはコロニー刺激因子(例えば、G−CSF)を同時投与することが特に有益であることが発見された。これらの化合物の同時投与は免疫系を協力作用的に刺激し、これにより、より少ない用量の薬剤を用いて同じ応答が可能になるか、または同じ投与量を用いて大きな応答が可能になる。
【0124】
もちろん、併用療法は実施例に示された表に限定されず、免疫障害(例えば、免疫抑制障害)を治療するための任意の組成物を含む。
【0125】
D.治療のタイミング
被検体が抗増殖治療もしくは他の細胞傷害治療を受けた後に(または被検体が抗増殖治療もしくは他の細胞傷害治療を受けている間に)、本発明の免疫刺激組成物を使用した被検体の治療を指示することができる。抗増殖化合物の例として以下が挙げられる:イホスファミド、シスプラチン、メトトレキセート、サイトキサン、プロカリジン、エトポシド、BCNU、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シクロホスファミド、ゲンシタビン、5−フルロウラシル、パクリタキセル、およびドキソルビシン。
【0126】
本発明のある態様において、被検体は細胞傷害治療を受け、次いで、治療が免疫抑制作用につながるかどうかを確かめるために、ある期間(通常、数日〜数週間の範囲)にわたってモニターされる。このようなモニタリングは、末梢血を白血球減少もしくは汎血球減少についてモニターすること、および/またはT細胞機能をモニターすることを含んでもよい。免疫抑制を示す被検体は、開示された本発明の化合物(例えば、チオニンまたはチオニンとインターロイキン)および治療方法を使用した治療を受ける候補である。
【0127】
VII.キット
本明細書で開示されたチオニン、チオニン誘導体、およびチオニン/インターロイキンの組み合わせは、免疫系の刺激において使用するために、または障害、状態、もしくは疾患(例えば、免疫無防備状態)を予防および/もしくは治療するために、単位剤形またはキットの形で供給することができる。このようなキットにおいて、臨床的に有効な量の1つまたは複数の化合物またはペプチド(例えば、チオニンまたはチオニンとインターロイキン)が1つまたは複数の容器に入れられる。化合物またはペプチドは、例えば、水溶液に懸濁されて提供されてもよく、フリーズドライもしくは凍結乾燥された粉末として提供されてもよい。ある態様において、化合物またはペプチドは薬学的組成物の形で提供される。
【0128】
本発明に係るキットはまた、チオニン、チオニン誘導体、およびチオニン/インターロイキンの組み合わせを用いた障害、状態、または疾患(例えば、免疫無防備状態)の治療において使用者を助けるために、説明書(通常、文書)を備えてもよい。このような説明書は、選択的に、印刷物以外の形式(例えば、コンピュータで読み取り可能な媒体)で提供されてもよい。
【0129】
1つまたは複数の化合物および/またはタンパク質が供給される1つまたは複数の容器は、供給された形を保持することができる任意の従来の容器(例えば、マイクロフュージチューブ、アンプル、または瓶)でよい。ある用途では、治療用化合物またはペプチドは、予め測定された1回使用量が、一般的に使い捨て可能なチューブまたは等価な容器に1つ1つ入った状態で提供することができる。
【0130】
キットにおいて供給される活性化合物または複合体または組み合わせの量は、例えば、製品の照準が合わせられた市場に応じて、任意の適切な量でよい。例えば、キットが研究用または臨床用に合わせられた場合、提供されるそれぞれのチオニン、チオニン誘導体、またはチオニン/インターロイキンの組み合わせの量は、数回の治療に十分な量である可能性が高い。
【0131】
本発明に係るある特定のキットはまた、免疫系の刺激または腫瘍の阻害(例えば、過増殖の治療)において有用な1つまたは複数の他の薬剤を含む。例えば、このようなキットは、1つまたは複数の有効用量の他の抗増殖剤もしくは抗癌剤または免疫刺激薬(例えば、GM−CSF)を含んでもよい。
【0132】
VIII.チオニン遺伝子療法
被検体の新形成および腫瘍(例えば、黒色腫)と闘うための遺伝子療法アプローチが今や本発明によって実現可能である。
【0133】
レトロウイルスは、高い感染効率ならびに安定した組み込みおよび発現によって、遺伝子療法での実験に好ましいベクターとみなされてきた(オーキン(Orkin)ら,Prog.Med.Genet.7:130−142,1988)。完全長チオニン遺伝子またはcDNAをレトロウイルスベクターにクローニングし、その内因性プロモーターまたはレトロウイルスLTR(長末端反復配列)から駆動させることができる。この種のアプローチのために、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)(マクローリン(McLaughlin)ら,J.Virol.62:1963−1973,1988)、ワクシニアウイルス(モス(Moss)ら,Annu.Rev.Immunol.5:305−324,1987)、ウシパピローマウイルス(ラスムセン(Rasmussen)ら,Methods Enzymol.139:642−654,1987)、またはエプスタインバーウイルス(マルゴルスキー(Margolskee)ら,Mol.Cell.Biol.8:2837−2847,1988)などのヘルペスウイルス群のメンバーを含む他のウイルストランスフェクション系も利用することができる。
【0134】
毒性なく免疫刺激をもたらすのに十分な低い濃度でチオニンを発現させるために、比較的低レベルのプロモーターを遺伝子療法構築物において使用することができる。
【0135】
遺伝子療法技法の最近の進展として、コールストラウス(Cole−Strauss)ら(Science 273:1386−1389,1996)により述べられたような、RNA−DNAハイブリッドオリゴヌクレオチドの使用が挙げられる。この技法はクローニングされた配列の部位特異的組込みを可能にし、それによって正確に標的化された遺伝子置換が可能になる。
【0136】
ある態様では、遺伝子療法ベクターは、増殖(例えば、新生)細胞に優先的に標的化される。このような増殖細胞に偏った遺伝子療法に使用することができる方法およびウイルス株は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第6,045,789号で述べられている。
【0137】
ウイルスベクターを用いてチオニンをコードする配列を(インターロイキンをコードする配列と共に、または伴わずに)細胞に送達することに加えて、核酸送達の非感染方法を用いることが可能である。例えば、最近、脂質およびリポソームを介した遺伝子送達が、様々な遺伝子を用いたトランスフェクションに首尾よく用いられている(概要については、テムプレトン(Templeton)およびレイジック(Lasic),Mol.Biotechnol.11:175−180,1999;リー(Lee)およびファング(Huang),Crit.Rev.Ther.Drug.Carrier Syst.14:173−206;ならびにクーパー(Cooper),Semin.Oncol.23:172−187,1996を参照のこと)。例えば、カチオン性リポソームが、単球性白血病細胞をトランスフェクトする能力について分析されており、ウイルスベクターを使用する実行可能な代案であることが示されている(デリマ(de Lima)ら,Mol.Membr.Biol.16:103−109,1999)。このようなカチオン性リポソームはまた、例えば、モノクローナル抗体または他の適切な標的リガンドを含めることによって特定の細胞に標的化することもできる(カオ(Kao)ら,Cancer Gene Ther.3:250−256,1996)。
【0138】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【0139】
実施例
実施例1:マイトジェンアッセイ
本実施例は、チオニンまたは関連薬剤が白血球に対して分裂促進作用を有するかどうかを確かめるための簡単なアッセイを示す。この分裂促進作用は、薬剤が免疫機能を刺激することを示すものである。
【0140】
マイトジェンアッセイにおいて使用するために、マウス脾臓細胞またはヒト末梢血リンパ球(PBL)を本明細書に記載のように無菌的に入手した。マウス脾細胞を使用した場合、まず最初に、赤血球溶解緩衝液(0.17M Tris,0.144 NHCl,pH7.2)で処理し、RPMI−10(10%胎仔ウシ血清を添加した標準的なRPMI増殖培地(シグマケミカル,St.Louis,MO))で洗浄し、生細胞をトリパンブルー排除を用いて計数した。ヒトPBLは、フィコール溶液およびジアトリゾア酸ナトリウムの溶液であるHistopaque−1077(シグマケミカル,St.Louis,MO)を使用し、その後に、血小板を除去するためにRPMI−5(5%胎仔ウシ血清を添加したRPMI)で洗浄して血液から単離した。単離されたリンパ球をRPMI−10に再懸濁し、生細胞の収量をトリパンブルー排除によって求めた。
【0141】
薬物および既知の分裂促進対照を96ウェル平底マイクロプレートに3回繰り返して無菌的に添加した。培地はRPMI−10であった。脾細胞またはヒトリンパ球を3〜4×10細胞/ウェルの濃度で添加し、最終体積200μl/ウェルにした。アッセイプレートを5%CO加湿インキュベーター内で37℃でインキュベートした。48〜50時間で、H−チミジンを添加し(1μCi/ウェル)、約16〜18時間後にプレートを採取した。
【0142】
マイトジェンアッセイマイクロプレートを、Inotechプレートハーベスター(イノテックバイオシステムズインターナショナル(Inotech Biosystems International,Inc.),Rockville,MD)を用いて採取した。1ウェル当たりのカウント毎分(cpm)を、Berthold−Inotech Trace 96プレートリーダー(イノテックAT(Inotech AT),Wohlen,Switzerland)および/またはシンチレーションカウンター(Packard Tri−carb 2100TR,パッカードインスツルメント(Packard Instrument Co.),Meriden,CT)を用いて測定した。cpmレベルと対照を比較することによって分裂促進活性を直接求めた。
【0143】
実施例2:ナチュラルキラーアッセイ
本実施例は、チオニンまたは関連薬剤が白血球に対して分裂促進作用を有するかどうかを確かめるための、さらなるアッセイを示す。ナチュラルキラー細胞の活性化は、薬剤が免疫機能を刺激することを示すものである。
【0144】
マウス脾臓細胞およびヒト末梢血リンパ球(PBL)を、マイトジェンアッセイの手順に記載のように入手した。
【0145】
薬物および対照物質を、無菌法を用いて、培地としてRPMI−10を用いて24ウェルプレートのウェルに添加した。最後に、脾臓細胞またはヒトリンパ球を4×10細胞/2mlウェル総体積の濃度でウェルに添加した。脾細胞インキュベーションは通常3日(65〜70時間)であったが、ヒトリンパ球刺激は4〜5日まで延長してもよい。細胞を5%CO加湿インキュベーター内で37℃でインキュベートした。
【0146】
採取日に、10個の標的細胞を150μCiの51Cr(クロム酸ナトリウム)で標識した。使用した標的細胞はYAC−1(マウスリンパ腫)またはK562(ヒト慢性骨髄性白血病)であった。
【0147】
細胞をRPMI−10で2×10細胞/mlまで調節し、150μCiの51Crを標的細胞懸濁液500μl(10個の総細胞)に添加し、5%CO加湿インキュベーター内で1.5時間インキュベートした。標識細胞をRPMI−10 10mlで3回洗浄し、次いで、5ml(2×10細胞/ml)に再懸濁した。標識細胞の洗浄液から上清を単離し、鉛の遮蔽の中に入れた。
【0148】
刺激されたエフェクター細胞を十分に混合し、24ウェルプレートの個々のウェルから取り出し、200×gで遠心分離するためにチューブに移した。上清をデカンテーションし、ペレット化した細胞をRPMI−10 2mlで1回洗浄した。最後に、細胞を、約8×10細胞/ml(総体積500μl)でRPMI−10に再懸濁した。
【0149】
エフェクター細胞懸濁液100マイクロリットル(8×10細胞)を、96ウェルV底マイクロプレートに3回繰り返して添加した。標的細胞の自然放出および総放出用に指定されたウェルにはRPMI−10を添加した。総体積200μlの場合、標的細胞懸濁液100マイクロリットル(1×10細胞/ウェル)をウェルに添加した。「総放出」ウェルは、9%Triton X−100 15μl、RPMI−10 85μl、および標的細胞100μlを含んでいた。
【0150】
エフェクター細胞と標的細胞を穏やかに接触させるために、96ウェルプレートを150×gで4分間遠心分離した。次いで、プレートを5%CO加湿インキュベーター内でインキュベートした。4時間後、アッセイプレートを250×gで5分間、再遠心分離した。上清100マイクロリットルを各ウェルから注意深く取り出し、ガンマカウンターでカウントするために12mm×75mmガラス管に入れた。以下の式を用いて%放出を計算した。
Figure 2004508412
【0151】
実施例3:非放射性ナチュラルキラーアッセイ
本実施例は、ナチュラルキラー細胞活性を評価するために用いられた代替の非放射性アッセイであるPromega Cytotox 96非放射性アッセイ(プロメガ(Promega),Madison,WI)を示す。この方法は、細胞溶解の際に放出されるラクターゼデヒドロゲナーゼ(LDH)を定量的に測定し、それによってナチュラルキラー細胞の活性を測定する比色代替法を伴う。
【0152】
51Cr放出ナチュラルキラー細胞アッセイ(前記)を以下のように変更した:
1.エフェクター細胞の洗浄および再懸濁ならびに標的細胞の洗浄のために、RPMI−0(ウシ胎仔血清を添加していないRPMI)を使用した。
2.アッセイ用に標的細胞をプレートするために、RPMI−5を使用した。FBS(胎仔ウシ血清)の最終濃度はウェル中で2.5%であった(FBSが低濃度のLDHを含む可能性があるので、FBS濃度を低く保つことが有利である)。
3.各試験には、3つのウェルではなく5つのウェルを用意した。2つはエフェクター細胞の自然放出対照ウェルであり、標的細胞を含まず、ウェルにRPMI−5を用いて総量200μlにした。
4.溶解対照および培地バックグラウンド対照もあった。
【0153】
(製造業者からの説明書に示されるように)Promega Cytotox 96法に従って、37℃で4時間のインキュベーション期間後にLDH放出を測定した。各試料ウェルからの上清50マイクロリットルを96ウェル平底プレートに移した。基質溶液(50μl)を添加し、プレートを室温で30分間インキュベートし、ホイルで覆いをした。次いで、停止溶液50マイクロリットルを添加した。正確な読み取りを確実なものにするために、490nmで酵素アッセイプレートの吸光度を読み取る前に気泡を全て取り除いた。
【0154】
放出されたLDHの%計算値は標的細胞の死と正比例した。式は以下の通りであった:
Figure 2004508412
【0155】
実施例4:脾臓細胞の調製
本実施例は、チオニン、またはチオニン誘導体、類似体、模倣物、もしくは断片の免疫刺激効果をアッセイするために、脾臓細胞を容易に調製することができる方法を示す。
【0156】
選択したマウスをCO室(暴露時間、約2分)で安楽死させた。マウスを解剖用トレーの右側にのせて固定し、70%エタノールを噴霧した。外側皮膚を剥がし、脾臓の上の腹膜を小さく切った。脾臓を無菌的に取り出し、RPMI−10 5mlを含む滅菌ペトリ皿に入れた。
【0157】
脾臓を、5ml注射器に取り付けた2本の20ゲージ針を用いて細かく切り離した。脾臓を非常に小さな小片に切り刻んだ後、1本の注射器の尖っていない先端を使用して、より多くの細胞を遊離させるために大きな組織片を穏やかにつぶした。1本の注射器を用いて、細胞懸濁液を滅菌チューブに移した。破片を数分間沈殿させ、次いで、細胞懸濁液を15mlの滅菌した円錐形の遠心チューブに移した。
【0158】
細胞懸濁液を200×gで10分間遠心分離し、上清をデカンテーションし、ペレット化した細胞を赤血球溶解緩衝液(0.017M Tris,0.144M NHCl,pH7.2)3mlで37℃で5分間処理した。次いで、細胞懸濁液を10分間遠心分離し、上清をデカンテーションし、細胞をRPMI−10 10mlに再懸濁した。200×gでもう1回遠心分離した後、細胞ペレットをRPMI−10 5mlに再懸濁し、細胞懸濁液50μlを0.4%トリパンブルーで1:4に希釈することで生細胞数を得た。生細胞を血球計を用いて計数した。細胞を4℃で保存し、2時間以内に調べた。この期間内で、生存能力はほとんど失われなかった。
【0159】
実施例5:PTのインビボ免疫刺激活性
本実施例は、代表的なチオニンであるピルラリアチオニンの免疫刺激活性を測定した、いくつかの実験からの結果について説明する。
【0160】
C57BL/6NCr雌マウス(20g)(約50日齢)の腹部の毛を剃り、識別のために耳に切れ込みを付け、腫瘍細胞を与える2日または3日前に、記載の免疫刺激薬を皮下に前注射した。
【0161】
「0日目」に、10%FBSを含むαMEM培地中で培養したB16F10黒色腫腫瘍細胞を、26ゲージ1/2インチ針を用いてマウス腹部中央に皮内注射した(0.1ml中に10細胞)。4〜5時間後、(指定された)薬物処置を、腫瘍注射部位とは異なる腹部の部位に皮内注射した。
【0162】
(指定された)免疫刺激薬を用いた皮内処置は、1日おきに、または月曜日−水曜日−金曜日の注射スケジュールで続いた。対照腫瘍(免疫刺激薬を与えなかったマウスの腫瘍)は通常、7〜10日以内に形成した。腫瘍を目視検査によって調べ、測定し(長さ×幅)、結果として生じた全ての病変の面積を5日ごとにmmとして記録した。
【0163】
腫瘍が500 mmを超えた場合、マウスをCO吸入によって安楽死させた。実験の中には、対照群のマウスが全て死んだ場合に早めに終了したものもあるが、実験は少なくとも20日あった。通常の実験期間は約30日であった。
【0164】
PT投与によるB16f10黒色腫のインビボ阻害
ピルラリアチオニンは単独およびIL−2との併用の両方で、黒色腫腫瘍を生じるB16F10細胞の注射前にC57BL/6NCrマウスが前処置された場合に、黒色腫腫瘍の発達の予防または遅延に効果があった。B16黒色腫細胞注射の5日前および2日前、その後に週3回の、C57マウスへの100ml体積でPT 3μgの皮下注射は、食塩水を注射したマウスと比較して腫瘍の発達を緩慢にした。注射のための100単位のマウスインターロイキン−2(IL−2)とPTの同時投与はさらにより効果があり、マウスのほぼ半分が腫瘍を発達しなかった。これらの結果から、処置によってマクロファージまたはナチュラルキラー細胞が活性化されて、注射された腫瘍細胞を腫瘍の確立前に溶解することが分かった。
【0165】
この抗新生物効果を証明したデータを表2に示す。最も重要なデータは、PTおよびIL−2を用いた処置に関与する実験に関連している。これらの実験について、24匹の処置マウスのうち11匹が腫瘍を発達しなかった。CS53線維肉腫腫瘍細胞およびC3H雌マウスを用いた実験は同様の応答を示し、PTおよびIL−2で処置されたマウスでは腫瘍の発達は少なく、腫瘍の体積は小さかった。
【0166】
【表2】PTおよびIL−2はC57マウスにおけるB16黒色腫腫瘍の発達を阻害する
Figure 2004508412
この表は3種類の実験のデータを含んでいる:0.01Mリン酸緩衝食塩水を与えたが薬物を注射しなかった対照マウス;IL−2を注射したマウス;PTを注射したマウス;および両方の化合物を注射したマウス。各カテゴリーの実験回数を示す。実験手順は前述している。薬物は皮下投与した:3μg PT、100単位IL−2。
【0167】
表2のデータに含まれない5μg PT+100単位IL−2を皮下注射した2回の実験について、注射された黒色腫細胞に対する防御はあまり大きくなかった。わずか1μgのPTおよび100単位IL−2で処置した4匹のマウスを用いた別の実験では、マウスは目に見える腫瘍を発達しなかった。同様の実験からのデータを図2に示す。図2は、3μg PTについて表2で報告した典型的な応答を示す。この実験について、薬物を注射した試験群には4匹のマウス、食塩水を注射した対照群には5匹のマウスがいた。1μg PTおよび100単位IL−2を注射した4匹のマウスのうち1匹のマウスだけが腫瘍を発達した。一般的に、IL−2と共に注射されたPTに対する最良の応答は3μg PTで観察されたが、いくらか少ない量および多い量で良い結果を得ることができる。マウス1匹につき5μgの用量を超えるPT(とIL−2)では防御はほとんどない。これは、マウスの免疫細胞に直接及ぼすPTの細胞傷害作用が現れ始めていることを示している可能性が高い。
【0168】
PT/IL−2の注射による腫瘍細胞の転移の阻害
表2および図2からのデータから、PT単独およびPTとIL−2の組み合わせは確立した腫瘍の寛解を引き起こさなかったことが分かる。これは、その作用が、確立した腫瘍における腫瘍細胞に対する細胞傷害作用ではなかったことを示している。むしろ、チオニンまたはチオニン/IL−2は、注射された腫瘍細胞が腫瘍に発達するのを阻害するように間接的に作用した。このことは、注射された腫瘍細胞の殺傷に免疫系が関与していることを示している。注射された腫瘍細胞の腫瘍発達への阻害(予防を含む)におけるこの作用機構は、この処置を転移(原発腫瘍部位以外の身体部分への悪性細胞の拡大)を予防するのに使用できることも示している。
【0169】
表3に転移阻害の証拠をさらに示す。これは、(前記のように)放射性51Crで標識された5×10 B16細胞をC57マウスの尾静脈に静脈内注射することによって得られたデータを含んでいる。放射性51Crの身体器官への移動は、標識B16細胞の注射の26時間後に器官内の放射能を測定することによってアッセイされた。免疫系を活性化するために−5日目および−2日目に(すなわち、B16細胞注射の5日前および2日前に)、マウスにPT(3μg)およびIL−2(100単位)を2回注射した。活性化ナチュラルキラー細胞の働きによって溶解された51Cr標識細胞は51Crを放出し、この51Crは大部分が腎臓によって排出され、このために、PTおよびIL−2の注射によってナチュラルキラー細胞が活性化されたマウス器官では放射能停留が低下する。
【0170】
【表3】PT/IL−2の注射による腫瘍細胞の転移の阻害
Figure 2004508412
51Crで標識された5×10 B16黒色腫細胞の注射の5日前、次に再度3日前に3μg PTおよび100単位IL2で処置した2匹のマウスの尾静脈に、51Cr標識B16細胞を注射した。数値は、列挙した器官および血液において検出された放射能(cpm)を示し、各実験に含められた2匹のマウスの平均である。
【0171】
PTおよびIL−2をC57マウスに注射すると免疫系が刺激され、細胞器官へのB16腫瘍細胞の転移能が阻害される。表3に示すように、PTおよびIL−2で前処置されたマウスは、対照マウスと比較して、試験した全組織で平均して停留放射能量の12%しか示さなかった。肺および脾臓などの特定の組織は51Cr停留のさらに大きな低下を示した。
【0172】
転移能を測定するように設計された別の実験において、5×10 B16黒色腫細胞をC57雌マウスの尾静脈に静脈内注射した。6匹のマウスを対照群に使用し、6匹のマウスに、B16細胞の注射の3日前に3μg PTおよび100単位IL−2を皮下注射した。この処置はナチュラルキラー細胞を活性化した。2、3、4、5、7、および8週目の終わりに、各群のマウス1匹を屠殺し、肺、脾臓、および胸腺において発達した腫瘍について顕微鏡で調べた。顕微鏡で、対照群において合計4つの腫瘍が見られた(2、4、5、および8週目の後に屠殺されたマウス1匹につき1つ)。処置群について、8週目に屠殺されたマウスにおいて非常に小さな腫瘍1つしかなかった。これらのデータは、PTおよびIL−2で処置されたマウスにおける非常に遅い転移腫瘍の発達を示している。
【0173】
PTは脾細胞およびhPBLにおいてマイトジェン活性を刺激する
PTがマイトジェン活性を刺激するかどうかを試験するために、脾細胞を、IL−2(50単位/ml)またはKLH(20μg/ml)と表示された濃度のPTと共に2日間インキュベートした。これらの実験の結果からのデータを表4に示す。図は、RPMIに含まれるトリチウム化チミジンとインキュベートされた細胞の後の20時間のインキュベーション期間に取り込まれた、トリチウム化チミジンの放射能カウントを示す。
【0174】
【表4】PT存在下でのマウス脾細胞(Balb C)および非付着性ヒトPBLの分裂促進活性の刺激
Figure 2004508412
PT濃度を表に示す。存在する場合、IL−2は50単位/mlであり、KLHは20μg/mlであった。脾細胞をこれらの薬物と2日間インキュベートした。数値は、細胞とRPMIに含まれるトリチウム化チミジンとのそれに続く20時間のインキュベーション期間に取り込まれた、トリチウム化チミジンの放射能カウント(CPM)である。実験を3回繰り返して行い、SEMSを含めた。
【0175】
PTは、マウス脾細胞およびヒト末梢血リンパ球(hPBL)の両方の分裂促進活性を増大させた。分裂促進活性は、T細胞を刺激するIL−2の添加によって、および抗原性タンパク質キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)によってさらに増大した。全ての場合において、インキュベーション混合物にPTが存在する時に、最大活性が観察された。
【0176】
ナチュラルキラー細胞の刺激
B16黒色腫腫瘍細胞を注射する前に、C57マウスに皮下注射したPTおよびIL−2に対する応答(表3を参照のこと)は、PTならびにPTおよびIL−2の組み合わせの防御効果が、注射された薬物による、殺腫瘍性になるマクロファージ活性化、またはナチュラルキラー(NK)細胞活性化のいずれかによるものであることを示している。NK細胞による腫瘍細胞の殺傷は免疫系細胞による特異的な腫瘍抗原の認識を必要としないが、その代わりに、NK細胞によって認識され、細胞殺傷につながる腫瘍細胞膜の独特の特性に関連していると考えられる。
【0177】
PTの添加は、腫瘍細胞を溶解によって殺傷するようにマウス脾細胞およびヒトPBLを刺激する。この作用はIL−2の存在下で高められる。実験的に、YAC−1腫瘍細胞株がマウスNK細胞の標的細胞として日常的に用いられ、K562細胞株がヒトPBLの標的細胞として用いられている。ヒト前立腺細胞株DU145もこの試験に含めた。表5に示したデータは、PTおよびIL−2によるマウスおよびヒト両方のNK細胞の活性化を示す。これらの実験のために、薬物PTおよびIL−2を細胞懸濁液に含め、48時間インキュベートした。この期間の後、脾細胞懸濁液と、51Crで4時間標識されているYAC−1標的細胞を混合した。ヒトPBLは、同様に標識されているK562またはDU−145細胞懸濁液に添加した。30分間のインキュベーションの後、上清液中の放射能を、NK活性を反映する標的細胞溶解の尺度としてカウントした。存在する場合、PTは0.01μg/mlまたは0.05μg/mlであり、IL−2は50U/mlであった。
【0178】
【表5】PTおよびIL−2によるナチュラルキラー細胞の刺激
Figure 2004508412
存在する場合、PTは0.01μg/mlまたは0.05μg/mlであり、IL−2は50 U/mlであった。51Crで標識された標的細胞は、マウスエフェクター細胞の場合YAC−1であり、ヒト非付着性PBLエフェクター細胞の場合K562またはDU−145細胞であった。エフェクター細胞(脾臓またはヒトPBL)と標的細胞(YAC−1、K562、またはDU−145)との比は一般的に80であり、ほとんど変化しなかった。
【0179】
表5のデータは、注射されたPTおよびIL−2について観察された抗腫瘍効果から予想されるように、PTおよびIL−2によるマウスおよびヒト両方のNK細胞の活性化を示す。
【0180】
GM−CSF分裂促進活性の刺激
PTは単独で、マウス脾細胞による分裂促進活性およびナチュラルキラー細胞活性の明確なかつ一定した刺激を示す。黒色腫腫瘍に対するC57マウスの防御は明確かつ一定している。両方の場合のPTの応答は、IL−2を系に添加することで高められる。これは、PTおよび別の免疫刺激薬の同時投与が、癌、および免疫系によって制御または影響される可能性のある他の疾患の治療の向上をもたらすことを示している。このような治療は疾患の直接的な治療を含んでもよく、またはワクチン中のPTと適切な抗原および/または他の免疫調節剤との使用を含んでもよい。
【0181】
免疫応答刺激におけるPTの効力はまた、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の同時投与を用いて試験された。表6に示すように、PTをGM−CSFに添加すると、マウス(BALB C)脾臓細胞を用いた標準的なマイトジェンアッセイにおいて免疫刺激が増大する。また、この協力作用効果を生じるのに必要なPT濃度は、他の免疫刺激薬の添加なしでマイトジェンアッセイの刺激を示し、インビトロで研究された反応においてIL−2と協力して活性を示した濃度であった。同様の協力作用効果が黒色腫腫瘍のインビボ抗腫瘍実験において見られるだろう。
【0182】
【表6】PTはGM−CSFの分裂促進活性を刺激する
Figure 2004508412
顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のマイトジェン活性は、免疫系を刺激する濃度のPTの存在下で増大する。示されたデータは、前記の標準的なマイトジェンアッセイにおけるカウント/分である。
【0183】
本明細書に記載のデータは、低用量のチオニン(例えば、ピルラリアチオニン)が、癌および免疫系に関与する他の疾患の治療に有効な薬剤であることを示している。1つまたは複数の免疫調節補因子(例えば、IL−2およびGM−CSF)とチオニンの同時投与は、このような治療の効力を高める。
【0184】
実施例6:チオニン結合体(PT−βME)の調製
本実施例は、β−メルカプトエタノールなどの免疫刺激剤と結合したチオニンが、増大した腫瘍形成活性を有することを示す。
【0185】
PT(40mg)を、窒素ガスでガス抜きした0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)400μlに溶解した。2:1のモル比(SPDP:PT)を生じるのに十分なN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP) (4.7mg)をエタノール200μlに溶解した。2種類の溶液を氷で冷やし、混合し、4℃で2時間反応させた。PTのSPDP誘導体をSavant Speed Vac Concentrator(サーベント(Savant),Holbrook,NY)で乾燥させ、次いで、HPLCで精製した。主ピークを再度乾燥させ、秤量した。
【0186】
PT/SPDP誘導体をβ−メルカプトエタノールと20:1モル比(β−ME:PT/SPDP)で、0.01Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)1ml中で室温で45分間反応させ、次いで、氷の中に入れた。
【0187】
3500MWカットオフ透析チューブを用いて、PT誘導体を1mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に対して4℃で透析し、次いで、凍結乾燥した。
【0188】
PTと結合された薬物はβ−メルカプトエタノール(βME)である。この化合物は、マイトジェンアッセイおよびナチュラルキラー細胞アッセイ(例えば、実施例1および2を参照のこと)において約1〜50μMの範囲で添加された時、マウス脾細胞の分裂促進活性および細胞傷害活性を両方とも刺激する。(方法の項で説明した)結合試薬SPDPを使用してPTのリジンのアミノ基と反応させ、次いで、この誘導体とβMEをジスルフィド結合を介して結合させると、PT 1分子につき2分子のβMEを含むPT誘導体が調製され、その活性をPTそれ自体の活性と比較した。表7は、マウス脾細胞を用いたマイトジェンアッセイ(実施例1)においてPTおよびβME誘導体を用いて得られたデータを示す。全ての場合において、βME誘導体の活性は親PTの活性より高かった。0.1μg/mlの濃度で、PTの濃度は20nMであり、PT−βME誘導体におけるβMEの対応する濃度は40nMであることに留意すべきである。予想通り、この濃度でのPTによるマイトジェン反応の刺激はあまり大きくなかった。PT−βME誘導体によって、より大きな刺激が観察された。βME単独は活性がなく、この濃度で刺激を生じなかった。
【0189】
【表7】PT−βMEのマイトジェン活性
Figure 2004508412
PT存在下でのBalb/C脾細胞のマイトジェン活性(トリチウム化チミジンのcpm)を同じ濃度のβME−PT誘導体と比較した。PT誘導体は、PT 1分子につき2分子のβMEを含む。RPMIは、培養細胞の標準的な増殖培地であるRoswell Park Memorial Institute増殖培地を表す。
【0190】
βMEに結合した時の同様のPT活性増加が、放射性元素で標識されたYAC−1細胞からの51Cr放出を測定することで細胞傷害性ナチュラルキラーアッセイにおいて観察された。0.01、0.03、および0.1μg/mlの濃度範囲のPTおよびPT−βMEについてのデータを表8に示す。PT−βMEの活性はPTの活性より高く、0.03μg/mlで6倍高く、他の濃度では3倍高かった。
【0191】
【表8】ナチュラルキラー活性についてのPTおよびPT−βME誘導体の比較
Figure 2004508412
PTおよび同じ濃度のβME−誘導体の存在下でのBalb/C脾細胞のナチュラルキラー細胞活性。βME−誘導体はPT 1分子につき2分子のβMEを含む。標的細胞は、標準的なナチュラルキラーアッセイ(実施例2を参照のこと)用の51Cr標識YAC−1細胞であった。実験を3回繰り返して行った。平均および標準偏差を示す。
【0192】
実施例7:ELISAアッセイ−マウスIL−1β、IL−2、IL−12を含む
本実施例は、チオニンまたは関連薬剤に免疫刺激効果があるかどうかを確かめるための間接的なアッセイを示す。ある特定の免疫刺激インターロイキンの産生の増大は、薬剤が免疫機能を刺激することを示すものである。さらに、この方法は、免疫刺激チオニン関連化合物を選択するためのハイスループットアッセイを提供する。
【0193】
イムノアッセイおよびマイトジェンアッセイ用に同一のプレートを用意した。マウス脾細胞および免疫刺激薬を、前記のように、96ウェルマイクロプレートのデュプリケートウェル(イムノアッセイ)およびトリプリケートウェル(マイトジェンアッセイ)にプレートした。5%CO加湿チャンバー内で37℃のインキュベーションは3〜5日の間で異なってもよい。活性化/増殖期間の終わりに、2つ同一のプレートをサイトカイン用のイムノアッセイとして採取するか、またはマイトジェンアッセイ(これには約16〜18時間前にH−チミジンが添加されている)
として採取した。
【0194】
IL−1β、IL−2、およびIL−12を検出するのに使用したイムノアッセイキットは、アールアンドディーシステムズ(R&D Systems)(Minneapolis,MN)によって製造されたマウスQuantikine M(商標)キットであった。一般的な手順は全てのインターロイキンサイトカインについて同じであり、製造業者によって提供された説明書に記載されている。全ての試薬を室温で使用し、キットの説明書に従って調製した。
【0195】
全ての細胞をペレット化するためにイムノアッセイプレートを200×gで遠心分離した。まず最初に、アッセイ希釈液の50μlアリコートを、キットに付いている、特殊な酵素でコーティングされた各ウェルの中心に添加した。次に、標準、対照、またはイムノアッセイインキュベーションプレートからの上清の試験試料50μlを各ウェルに添加した。これを室温で2時間インキュベートした。
【0196】
液体をウェルから吸引し、ウェルを、蒸留水で1:25に希釈した界面活性剤で5回洗浄した。結合体の100μlアリコートを各ウェルに添加し、室温で2時間インキュベートした。ウェルを再吸引し、各ウェルを5回洗浄した。
【0197】
基質溶液100マイクロリットルを各ウェルに添加し、室温で30分間インキュベートした。次いで、停止溶液(100μl)を各ウェルに添加した。色の変化は淡青色から黄色(活性)であった。プレートの450nmでの吸光度およびバックラウンド測定値のために540nmでの吸光度を読み取った。
【0198】
結果を計算するために、標準、対照、および試験試料の各対の2回の測定値を平均し、平均バックグランド光学密度測定値を差し引いた。X軸の濃度に対して各標準についての平均吸光度をy軸にプロットし、最も良くフィットした曲線を引くことで、サイトカイン標準曲線を作成した。サイトカインのピコグラムを標準曲線から求めた。H−チミジンのcpmから求めた分裂促進活性と、対応するイムノアッセイにおける実験試料中のサイトカインの濃度を比較した。
【0199】
これらの結果は、PTがマウスおよびヒトのマクロファージを活性化したことを示している。マクロファージ活性化の尺度の1つはサイトカインであるインターロイキン−1(IL−1)の産生であり、インターロイキン−12(IL−12)の産生も尺度である。3×10 BalbCマウス脾細胞と0.05μg/ml PTのインキュベーションを48時間行った。上清液を、IL−1およびIL−12用の市販のELISAキットを用いてアッセイした。表9に示したデータは、PTによるマウス脾細胞の処理がこれらの2種類のサイトカインの産生を刺激することを示している。IL−2量も測定したが、結果はこのサイトカイン産生の刺激の決定に役立たなかった。IL−2産生が少ない実験もあれば、多い実験もあった。これは、実験マウスにおける免疫系の状態を反映している可能性が高い。効果的な抗原であるKLHの添加はIL−1産生およびIL−12産生を両方とも増大させ、PTとKLHの添加は、これらのサイトカインの産生をさらに増大させた。
【0200】
【表9】BalbCマウス脾細胞によるサイトカイン産生のPT刺激
Figure 2004508412
IL−1およびIL−12の産生は、特異的モノクローナル抗体を用いたELISA法によって測定された。脾細胞を表示した薬物と48時間インキュベートした。実験を3回繰り返して行った。
【0201】
実施例8:FITC Thy−1.2染色手順
本実施例は、チオニンまたは関連薬剤の分裂促進作用を調べるためのさらなるアッセイを示す。この分裂促進作用は、薬剤が免疫機能を刺激することを示すものである。
【0202】
滅菌法を用いて、脾臓または胸腺を、COガスで安楽死させたマウスから取り出した。器官を、それぞれ脾細胞または胸腺細胞を収集するために細かく切り離した。赤血球を除去するために細胞を赤血球溶解緩衝液で37℃で処理し、次いで、RPMI−10培地で数回洗浄した。(前記で説明したように)生細胞の収量を求めるために、トリパンブルー排除を用いて細胞を計数し、PBS/1%BSA/0.1%アジ化ナトリウム緩衝液(pH7.2)に2×10細胞/mlで再懸濁した。
【0203】
氷の中に入れたマイクロフュージチューブに、細胞懸濁液100μl(2×10細胞/ml)を添加した。PBS/BSA/アジ化物緩衝液で50μg/mlに希釈したFcγR Block(CD16/CD32 Block;ファーミンゲン(Pharmingen),San Diego,CA)5マイクロリットルを添加した。チューブを穏やかに混合し、3分間、氷上に放置した。
【0204】
Thy1.2FITC染料(10μg/ml)100マイクロリットルを添加し、チューブを穏やかにボルテックスした。細胞を4℃で30分間染色し、その後に、マイクロフュージ遠心機において4500rpmで3分間、遠心分離した。細胞を氷冷PBS/BSA/アジ化物緩衝液500μlで2回洗浄し、穏やかにボルテックスすることで毎回、再懸濁した。
【0205】
(PBSに溶解した)1%パラホルムアルデヒド100マイクロリットルを細胞ペレットに添加し、細胞を十分に混合し、次いで、4℃で20分間インキュベートした。次いで、細胞を2.19%グリシン500μlで1回洗浄し、滅菌PBS 500μlに再懸濁した。
【0206】
染色された細胞懸濁液15マイクロリットルを、2つの重複しないスポットとして、エタノールできれいにした1mm厚のガラススライド上に置いた。細胞小滴を、広げることもカバーガラスを使用することもなく乾燥させた。スライドをフード内で風乾させ、(光退色を防ぐために)光が入らないようにアルミニウムホイルで覆いをした。スライドを予めきれいにし、正しく乾燥させていれば、小滴は約10mmの直径まで自然に乾燥する。1週間以内にスライドを読み取らなければならない。
【0207】
細胞を、Zeiss油浸顕微鏡(UVランプ,フィルター番号47;カールツァイス(Carl Zeiss Inc.),Thornwood,NY)を用いて評価した。染色されなかった細胞は、黒地にミディアムブラウンの色で現れた。完全に染色された細胞には蛍光緑色の環があった。部分的な環を有する部分的に染色された細胞を、分けて計数した。染色されなかった細胞、部分的に染色された細胞、および完全に染色された細胞のパーセントを求めた。スライド1個につき少なくとも200個の細胞をスコア付けしたが、通常、約300〜400個の細胞を計数した。
【0208】
表4に示し、前記で説明したデータは、PTがインビトロでマウス脾細胞によるマイトジェン活性を刺激することを示している。これは、IL−1産生およびT細胞への抗原提示による、T細胞に対する活性化マクロファージの作用によって生じた可能性がある。表10は、5μgまたは10μgのPTを様々な年齢のスイスウェブスターマウスに腹腔内注射した後の、脾臓および胸腺におけるT細胞のパーセントを示す。T細胞は、全T細胞に対する一般的な抗体である蛍光標識(FITC)Thy1.2モノクローナル抗体によって検出された。細胞を蛍光顕微鏡で手作業で計数し、データを、染色(蛍光)のない細胞、部分な染色(中程度の蛍光)のある細胞、および強い染色(強い蛍光)のある細胞に分けた。マウスに、表示した量のPTを腹腔内注射し、脾臓および胸腺を得るために3日後に動物を屠殺した。
【0209】
【表10】ピルラリアチオニンの注射はスイスウェブスターマウスにおけるマウスT細胞の発達を刺激する
Figure 2004508412
実験を3回繰り返して行い、SEM値を示す。
【0210】
実施例9:PTとマウス脾細胞との結合
本実施例はチオニンPTが脾細胞の表面に結合することを証明し、2種類の明らかな結合部位の相対親和性を示す。
【0211】
(本明細書に記載のように)脾細胞を、選択したマウスの脾臓から単離し、赤血球を除去するように処理し、洗浄後にPBSに再懸濁し、トリパンブルー排除を用いて計数した。1つの脾臓からの脾臓細胞(脾細胞)の平均収量は1〜1.5×10細胞である。結合アッセイにおけるサンプルチューブ1個当たりの望ましい細胞濃度は、5×10細胞/mlを超える濃度である。
【0212】
結合アッセイのプロトコールは以前に説明されている(ベルノンおよびロジャーズ(Rogers),Toxicon 30:711−721,1992)。反応は、各微量遠心管の中で、総体積400μl(様々な濃度の125I標識PTを含むPBS 160μlと脾細胞懸濁液240μl)で行った。
【0213】
合計10個の脾細胞を、それぞれの反応マイクロフュージチューブに入れ、室温で5分間、平衡状態に保った。各チューブに、0.1〜20μg/mlの量の放射性標識チオニン(例えば、125I−PT)を添加した。実験で使用した放射性標識PTは、PT 1μgにつき約10カウント/分(0.3μCi)を含んでいた。懸濁液を室温で10分間インキュベートし、次いで、さらに10分間、氷上に置いた。次いで、細胞をペレット化するためにチューブを遠心分離した。
【0214】
上清液中の放射能を、チューブから取り出したアリコートから測定した。アリコートを移すのに使用したプラスチックピペットチップもバイアルに入れ、上清液の移したアリコートと共にγ線カウンターでカウントした。なぜなら、このチップは、移す間にアリコートからPTを吸収している可能性があるからである。測定された放射能量は、細胞に結合しなかった「遊離」PTを表している。
【0215】
上清全部を除去した後に、沈殿した細胞をPBSで2回洗浄し、放射能カウントのために、最後の洗浄した細胞懸濁液全部をバイアルに移した。上清中の放射能の測定と同様に、プラスチックチップに結合した可能性のある全てのPTを含めるために、細胞試料を移すのに使用したピペットチップをバイアルに添加した。これは全「結合」PTを測定する。
【0216】
非特異的結合を、100倍過剰の非放射性ヨウ素化PTの存在下で測定した。報告した結合データは、全結合から非特異的結合を差し引くことによって得られた。使用した各濃度のPTについて3回のアッセイを行った。
【0217】
この研究において観察されたPTによる免疫反応であるインビトロマイトジェン活性およびナチュラルキラー活性の刺激は0.003〜0.05μg/mlのPTの濃度で生じた。日常的に使用する量は0.01μg/mlである。IL−2によるさらなる刺激は、免疫系の細胞に及ぼす、これらの濃度のPTの作用を示している。これは、約1μg/mlで始まり20μg/mlまでおよび20μg/mlを超えて続く、文献において広範囲に報告されている細胞の膜構造またはリン脂質小胞の変化を誘導するのに必要とされるPTの濃度とは全く対照をなすものである。序論の項において前記で説明したように、低濃度が免疫細胞の応答を刺激するが、高濃度は細胞に対して毒性である。低濃度のPTと高濃度のPTのこの違いはまた、表2に示したインビボ抗腫瘍実験でも見られる。(IL−2と共に)防御効果を誘発するために皮下注射したPTの量は3μgであった。この投与量は免疫系を刺激する。インビボでマウスにおいてPTの毒性作用を誘発するためには、それよりかなり高い濃度が必要とされる。20グラムマウスのLD50はPT 30μgであり、最大防御(免疫刺激)効果を示す濃度より10倍高い。
【0218】
PTに対する2つの異なる細胞応答を裏付ける証拠は、PTとマウス脾細胞の結合の程度を測定することによって得られた。図3は、放射性標識(121I標識)PTと単離されたマウス脾細胞の結合についてのデータを示す。2つの結合方法がはっきりと見られる。高親和性結合部位は、グラフの最初の4つのデータ点に示される1μg/mlまでのPT濃度について示される。この高親和性部位に対する結合の解離定数は0.065μMである。
【0219】
さらに、低親和性結合部位は20μg/mlまでのPT濃度について示され、解離定数は1.6μMである。脾細胞および高PT濃度を用いて観察された、この低親和性結合部位は、文献において報告されたような、PTおよび他のチオニンのこの濃度範囲での膜変化特性について以前に得られたデータに関連している。
【0220】
予想の通り、高親和性部位の細胞1個当たりの部位数は1.4×10と少なく(これは膜タンパク質への結合を示している)、低親和性部位の数は1×10である(これは細胞膜のリン脂質との多数の結合部位を反映している)。
【0221】
本発明は、低濃度のチオニンを単独でまたはインターロイキン−2と組み合わせて使用した免疫刺激方法を提供する。これらの方法および記載の培地の正確な詳細は、本発明の精神から逸脱することなく修正または変更できることが明らかであると思われる。本発明者らは、以下の特許請求の範囲および精神に含まれる全てのこのような変更および変形を特許請求する。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピルラリアチオニンならびに数種類のビスコトキシン、他のチオニン、および関連ペプチドのアミノ酸配列を示すアラインメントである。
【図2】腫瘍形成に対するチオニンおよびチオニン/IL−2の阻害効果を示すグラフである。代表的な実験の結果を示し、一方の軸に、腫瘍面積をプロットし、他方の軸に、B16黒色腫細胞注射後の日数をプロットした。
【図3】PTとマウスBalb/C脾細胞との結合の強さを示すグラフである。PTは放射性ヨウ素(125I)で標識され、様々な標識PT濃度での結合の程度を測定し、細胞1個あたりの結合したチオニン分子を計算した。

Claims (38)

  1. 免疫の刺激を必要とする被検体に、以下からなる群より選択される免疫刺激有効量の薬剤を投与する段階を含む、免疫を刺激する方法:
    (a)チオニン;
    (b)チオニン−化合物結合体;ならびに
    (c)(a)および/または(b)の免疫刺激性変異体、断片、模倣物、または類似体。
  2. 薬剤が、チオニン、またはその変異体、断片、模倣物、もしくは類似体である、請求項1記載の方法。
  3. チオニンが、ピューロチオニン、ホルドチオニン、ベノチオニン、クランビン、ホロトキシン、ビスコトキシン、またはピルラリアチオニンである、請求項2記載の方法。
  4. チオニンがピルラリアチオニンである、請求項1記載の方法。
  5. 被検体に、治療に十分な量の非チオニン免疫刺激化合物を投与することもさらに含む、請求項1記載の方法。
  6. 非チオニン免疫刺激化合物がサイトカインである、請求項5記載の方法。
  7. サイトカインがインターロイキンまたはコロニー刺激因子である、請求項6記載の方法。
  8. サイトカインがIL−2である、請求項7記載の方法。
  9. チオニンが、免疫刺激性であるが実質的に細胞傷害性でない用量で投与される、請求項1記載の方法。
  10. チオニンが約50μg/Kg体重〜約250μg/Kg体重の用量で投与される、請求項9記載の方法。
  11. チオニンが、薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物の形で投与される、請求項1記載の方法。
  12. 免疫の刺激が、被検体における腫瘍の発達を阻害することを含み、薬剤を、腫瘍を有する被検体または腫瘍を発達させるリスクのある被検体に投与することを含む、請求項1記載の方法。
  13. 予防しようとする腫瘍の発達が、黒色腫または線維肉腫腫瘍の発達である、請求項1記載の方法。
  14. 腫瘍の発達の阻害が、腫瘍の発達を予防もしくは緩慢にすること、または既存の腫瘍のさらなる発達を緩慢にすることを含む、請求項12記載の方法。
  15. 腫瘍の発達の阻害が、腫瘍転移を阻害することを含む、請求項12記載の方法。
  16. 免疫の刺激が、マクロファージを活性化することを含む、請求項1記載の方法。
  17. 免疫の刺激が、被検体における免疫細胞の有糸分裂を誘導することを含む、請求項1記載の方法。
  18. 免疫の刺激が、ナチュラルキラー細胞活性を刺激することを含む、請求項1記載の方法。
  19. 刺激されたナチュラルキラー細胞活性が腫瘍細胞に対して有効である、請求項18記載の方法。
  20. 免疫の刺激が、被検体におけるT細胞の分化および増殖を刺激することを含む、請求項17記載の方法。
  21. 請求項1記載の薬剤以外のさらなる免疫刺激薬を投与することもさらに含む、請求項1記載の方法。
  22. さらなる免疫刺激薬が、GM−CSF、G−CSF、サポニン誘導体QS−23、または標的腫瘍細胞抗原であるタンパク質もしくはペプチドを含む、請求項21記載の方法。
  23. 以下の段階を含む、被検体における生物学的に活性な化合物の寿命および/または有効性を延ばす方法:
    化合物とチオニンを結合させて化合物−チオニン複合体を作成する段階;および
    該複合体を被検体に投与する段階。
  24. 請求項23記載の化合物−チオニン複合体。
  25. 化合物が化学療法剤である、請求項23記載の方法。
  26. 化学療法剤が、請求項1記載の薬剤以外の細胞傷害剤を含む、請求項24記載の方法。
  27. 細胞傷害剤がアルキル化剤または代謝拮抗物質である、請求項26記載の方法。
  28. 化学療法剤が、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、カンプトテシン、ホモハリングトニン、エトポシド、テニポシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、アスパラギナーゼ、タキソール、シスプラチン、カルボプラチン、アムサルクリン、ダカルバジン(DTIC)、ハイドレア、ミトキサントロン、プロカルバジン、メクロレタミン、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、イホスファミド、ブスルファン、チオテパ、ヘキサメチルメラミン、メトトレキセート、プリネソール、チオグアニン、リン酸フルダラビン、ペントスタチン、クラドリビン、シタラビン、フルオロウラシル、フロクスウリジン、スパルフォセート (PALA)、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル−CCNU)、ストレプトゾシン、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、ヒドロキシウレア、ミトーテン(o,p’−DDD)、アミノグルテチミド、プレドニゾン、プロゲスチン、エストロゲン、タモキシフェン、アンドロゲン、またはその生物学的に活性な類似体、誘導体、模倣物、もしくは断片、またはその薬学的に許容される塩を含む、請求項26記載の方法。
  29. 化合物が被検体のある特定の細胞に標的化される、請求項23記載の方法。
  30. 以下の段階を含む、1種類の非チオニン免疫刺激薬または非チオニン免疫刺激薬の混合物の免疫刺激特性を増大させる方法:
    1つまたは複数の非チオニン免疫刺激薬と共に、有効量のチオニンまたはその生物学的に活性な誘導体、模倣物、断片、もしくは類似体を同時投与する段階。
  31. チオニンがピルラリアチオニンである、請求項29記載の方法。
  32. 既知の免疫刺激薬が、GM−CSF、G−CSF、サポニン誘導体QS−23、または標的腫瘍細胞抗原であるタンパク質もしくはペプチドからなる群より選択される、請求項29記載の方法。
  33. 抗原性ペプチドまたはタンパク質を同時投与する段階をさらに含む、請求項29記載の方法。
  34. 抗原性タンパク質が、キーホールリンペットヘモシアニンまたはその抗原性断片もしくは変異体である、請求項33記載の方法。
  35. 免疫刺激有効量のチオニンおよび免疫刺激有効量のIL−2を含む、治療用組成物。
  36. 請求項1記載の方法であって、薬剤を
    (a)免疫抑制量の化学療法剤もしくは電離放射線の後に;または
    (b)免疫抑制された被検体に
    投与することを含む方法。
  37. 免疫刺激性の治療有効量のPTを被検体に投与する段階を含む、被検体における免疫を刺激する方法。
  38. 投与されるPTの量が、細胞に対して直接的に細胞傷害性である用量より少ない、請求項37記載の方法。
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