JP4415208B2 - 塗膜の耐ハジキ性改良方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塗膜の耐ハジキ性改良方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
塗料塗装時の塗膜のハジキは、重大な塗膜欠陥の一つであり、塗料業界における課題となっている。
【0003】
塗膜のハジキは、液状塗料を被塗物に塗装した時に、被塗物上の塗膜表面に円形状のくぼみが形成されたり、ひどいときには、被塗物の素地が見えるほどの穴を生じたりする現象である。該ハジキは、様々な要因から発生するが、一般には、塗装直後のウエット塗膜からの局部的な溶剤の急蒸発、塗料に含まれる残留モノマー、塗料用添加剤等の影響、雰囲気中からのダストのコンタミ、被塗物上の油汚れ等によって、塗膜表面に低表面張力のトリガー部位が生じ、これが拡張することによって起こると考えられている。
【0004】
塗膜のハジキ性に関して、従来、色材協会誌, Vol.47, No.9, P19-26(1974)には、塗料のハジキ発生傾向は塗料の流動特性に依存すること、スプレー塗装した場合、残留粘度が小さく、降伏値が大きい塗料ほどハジキが発生しやすいことが、記載されている。
【0005】
また、塗料の研究, No.136, Apr., P9-16(2001)には、貯蔵弾性率G'の大きい連続表面膜は、ハジキ抑制効果があること、レベリング剤等の塗料用添加剤を塗料に加えることにより貯蔵弾性率G'が増加することが記載されている。
【0006】
更に、塗料の研究, No.127, Oct., P2-9(1996)には、塗料における貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値が、塗膜のハジキ性に関連すること、この値が大きいほどハジキ抵抗性が大きいことが記載されている。
【0007】
しかしながら、液状塗料の種類に関係なく、塗膜の耐ハジキ性を有効に改良できる方法については、これまで知られていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、樹脂種、顔料種などが異なる種々の液状塗料について、塗膜の耐ハジキ性を改良できる新規な方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、液状塗料の粘性及び弾性が、塗膜のハジキの発生程度に及ぼす影響について種々検討を行なった結果、被塗物に塗装直後のウエット塗膜における、特定の粘度及び貯蔵弾性率と損失弾性率との比の両者を、それぞれ特定の範囲内になるように、制御することによって、塗膜の耐ハジキ性を改良できることを見出した。本発明は、かかる新知見に基づき、完成されたものである。
【0010】
本発明は、以下の塗膜の耐ハジキ性改良方法を提供するものである。
【0011】
1.被塗物に、液状塗料を塗装した直後のウエット塗膜において、20℃におけるズリ速度5秒-1での定常流測定による粘度を0.2〜1.0Pa・sの範囲内に、かつ20℃における角周波数10rad/秒での振動測定による貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')を0.1〜0.25の範囲内になるように、制御することにより、塗膜の耐ハジキ性を改良する方法。
【0012】
2.塗装直後のウエット塗膜が、塗装後0.5〜3分程度の範囲のウエット塗膜である上記項1に記載の塗膜の耐ハジキ性改良方法。
【0013】
3.上記粘度及び上記貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の制御を、塗装前の液状塗料の調整、塗装方法の変更及び塗装条件の変更からなる群から選ばれる少なくとも一種の方法により行う上記項1に記載の塗膜の耐ハジキ性改良方法。
【0014】
4.塗装直後のウエット塗膜において、上記粘度を0.4〜1.0Pa・sの範囲内とし、かつ上記貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')を0.12〜0.22の範囲内に制御する上記項1に記載の塗膜の耐ハジキ性改良方法。
【0015】
5.塗装前の液状塗料の調整を、流動性調整剤の添加、溶剤の添加及び塗料の顔料濃度の調整から選ばれる少なくとも一つの処方により、行う上記項3に記載の塗膜の耐ハジキ性改良方法。
【0016】
6.塗装方法の変更が、スプレー塗装への変更である上記項3に記載の塗膜の耐ハジキ性改良方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明方法における被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板、ブリキ板などの金属基材;上記金属表面にリン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施された表面処理金属基材;プラスチック基材;ガラス、セメント、スレート、モルタル、コンクリート、瓦などの無機窯業基材等;紙など;これらの基材に塗膜が施された塗装基材;及びこれらの基材を加工した物品などを挙げることができる。上記亜鉛合金メッキ鋼板としては、例えば、鉄−亜鉛、ニッケル−亜鉛、アルミニウム−亜鉛などの合金メッキを施した鋼板が挙げられる。
【0018】
本発明方法において使用される液状塗料としては、樹脂又は樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型塗料又は水性塗料が、挙げられる。
【0019】
上記塗料に含まれる樹脂種としては、塗料用樹脂としてそれ自体既知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、代表例としてアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、シリコンポリエステル樹脂、シリコンアクリル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、これらの樹脂の変性樹脂などを挙げることができ、これらは1種で又は2種以上組合せて使用することができる。また、上記塗料用樹脂は、硬化剤と組合せて使用することができ、硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂などのアミノ樹脂、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物などを挙げることができる。また、エポキシ基含有アクリル樹脂とカルボキシル基含有アクリル樹脂との組合せなども挙げることができる。
【0020】
上記塗料は、クリヤ塗料であっても、着色顔料及び/又は光輝性顔料などを含有する着色塗料であってもよい。また、必要に応じて、体質顔料等のその他の顔料を含んでいても良い。
【0021】
着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料;フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、ペリレンレッド、フタロシアニングリーン等の有機顔料等を挙げることができる。また、光輝性顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、マイカフレーク等を挙げることができる。更に、体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、クレー等を挙げることができる。
【0022】
上記液状塗料が有機溶剤型塗料である場合の有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、エタノール、ブタノール、シクロヘキサノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を挙げることができる。有機溶剤型塗料の固形分濃度としては、通常、20〜70重量%程度とするのが適当である。
【0023】
また、塗料が水性塗料である場合の溶剤としては、水又は水と水性有機溶剤との混合溶剤が使用できる。この水性有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、ブタノール、イソプロパノール等を挙げることができる。水性塗料の固形分濃度としては、通常、20〜70重量%程度とするのが適当である。
【0024】
本発明方法において、被塗物に、液状塗料を塗装する塗装方法としては、エアスプレー塗装、回転型霧化スプレー塗装、エアレススプレー塗装、ロール塗装、刷毛塗り、カーテン塗装、浸漬塗装などを挙げることができる。これらの塗装方法のなかでも、エアスプレー塗装、回転型霧化スプレー塗装及びエアレススプレー塗装等のスプレー塗装が好適である。これらのスプレー塗装は静電印加されていてもよい。
【0025】
また、スプレー塗装する場合の液状塗料の粘度は、例えば、フォードカップNo.4粘度計において20℃で15〜40秒程度の粘度となるように、前記溶剤を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0026】
また、被塗物に塗装される液状塗料の塗装量としては、20〜70g/m2程度、好ましくは30〜50g/m2程度とするのが適当である。
【0027】
本発明方法においては、被塗物上に塗装直後のウエット塗膜において、20℃におけるズリ速度5秒-1での定常流測定による粘度を0.2〜1.0Pa・sの範囲内になり、かつ20℃における角周波数10rad/秒での振動測定による貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')を0.1〜0.25の範囲内になるように、所定の方法により制御することにより、塗膜のハジキを有効に防止できる。
【0028】
上記粘度が0.2Pa・s未満では、ハジキの拡張を十分に抑制できず耐ハジキ性が十分ではなく、一方、1.0Pa・sを超えると、塗膜の凹凸が大きくなり平滑性が低下する傾向にある。また、上記貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値が0.1未満となると、ハジキの拡張を十分に抑制できず耐ハジキ性が十分ではなく、一方、0.25を超えると、塗膜の凹凸が大きくなり平滑性が低下する傾向にある。
【0029】
上記塗装直後のウエット塗膜において、好ましくは、20℃におけるズリ速度5秒-1での定常流測定による粘度を0.4〜1.0Pa・sの範囲内に、かつ20℃における角周波数10rad/秒での振動測定による貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')を0.12〜0.22の範囲内に、制御する。
【0030】
被塗物上に塗装直後のウエット塗膜の上記粘度及び貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''は、該ウエット塗膜を掻きとって得た塗料を用いて、容易に測定することができる。ここで、本発明方法における塗装直後とは、用いる液状塗料の溶剤、樹脂等の成分内容に応じて適宜決定されるが、通常、塗装後0.5〜3分程度の範囲、好ましくは1〜1.5分程度の範囲であればよい。
【0031】
ズリ速度5秒-1での定常流測定による粘度及び角周波数10rad/秒での振動測定による貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値は、公知の各種測定機器を用いて測定できる。該機器としては、例えばHAAKE社製の粘弾性測定器「レオメータRS150」を挙げることができる。
【0032】
塗装直後のウエット塗膜の上記の粘度及び貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比を本発明特定の範囲内に制御する方法としては、塗装前の塗料を調整する方法、塗装方法を変更する方法又は塗装条件を変更する方法によることができる。
【0033】
被塗物上に塗装直後のウエット塗膜の上記粘度及び上記(G'/G'')の値が本発明特定の範囲内となるように、塗料を調整する方法としては、流動性調整剤の添加、溶剤の添加及び塗料の顔料濃度の調整などを挙げることができ、これら処方のうちの1種の処方を又はこれらの処方の2種以上を組合せて調整することが好適である。
【0034】
上記流動性調整剤としては、例えば、シリカ系微粉末、ベントナイト系調整剤、硫酸バリウム微粒化粉末、ポリアミド系調整剤、有機樹脂微粒子、ジウレア系調整剤等を挙げることができ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて使用できる。これらの内、有機樹脂微粒子、ジウレア系流動性調整剤を好適に使用できる。
【0035】
上記有機樹脂微粒子としては、平均粒子径1nm〜1μm程度、好ましくは50〜500nm程度のものを好適に使用できる。また、有機樹脂微粒子の樹脂種としては、例えば、ナイロン11、ナイロン12等のナイロン;カルボン酸変性ポリエチレンなどの変性ポリエチレン;マレイン化ポリプロピレンなどの変性ポリプロピレン;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ四弗化エチレン、シリコンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。有機樹脂微粒子の使用量は、通常、塗料中の不揮発分100重量部に対して、2重量部以下程度とするのが適当である。
【0036】
上記アクリル樹脂微粒子の代表例として、例えば、アリル基などの重合性不飽和基を有する反応性乳化剤の存在下で、重合開始剤として水溶性アゾアミド化合物などの水溶性重合開始剤を使用して、多官能モノマーを含有する重合性不飽和モノマー成分を乳化重合することによって得られる内部架橋されたものを挙げることができる。上記多官能モノマーとしては、重合性不飽和基を2個以上含有するモノマー、例えば、ジビニルベンゼン、1,6−ヘキサンジオールジ(メタクリレート)などを挙げることができる。
【0037】
また、上記ジウレア系流動性調整剤としては、モノ1級アミンとジイソシアネートとの反応生成物などが好ましい。ジウレア系流動性調整剤の使用量は、通常、塗料中の不揮発分100重量部に対して、2重量部以下程度とするのが適当である。
【0038】
これらの流動性調整剤を添加することによって、塗装直後のウエット塗膜において、上記粘度を上昇させることができ、かつ上記の貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値を増大させることができる。
【0039】
上記塗料の調整に用いることができる溶剤としては、従来、塗料に使用されるそれ自体既知の有機溶剤、水を挙げることができる。
【0040】
溶剤添加による調整としては、塗装直後のウエット塗膜の上記粘度が0.2Pa・s未満で、かつ上記の貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値が0.1未満であるときには、塗装する液状塗料により揮発速度の速い溶剤を添加して、液状塗料の溶剤組成をより揮発速度の速い溶剤組成に修正することによって、上記の粘度及び(G'/G'')の値を上昇させることができる。逆に、塗装直後のウエット塗膜において、上記粘度が1.0Pa・sを越え、かつ上記(G'/G'')の値が0.25を越えるときには、塗装する液状塗料により揮発速度の遅い溶剤を添加して、液状塗料の溶剤組成をより揮発速度の遅い溶剤組成に修正することによって、上記粘度及び(G'/G'')の値を低下させることができる。
【0041】
塗装直後のウエット塗膜の上記粘度及び貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値を調整するための塗料の顔料濃度の調整は、塗料中に当該塗料の顔料組成と同組成の顔料ペーストを添加して樹脂分に対する顔料濃度を増大させることによって、該ウエット塗膜において、上記粘度を上昇させ、かつ上記(G'/G'')の値を上昇させることができる。また、塗料に顔料抜きのクリヤー塗料を添加して樹脂分に対する顔料濃度を減少させることによって、該ウエット塗膜において、上記粘度及び(G'/G'')の値を低下させることができる。
【0042】
塗装直後のウエット塗膜の上記粘度及び貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値を調整するための塗装方法の変更としては、例えば、スプレー塗装以外の塗装方法をスプレー塗装に変更することが挙げられる。スプレー塗装においては、微粒化された塗料粒子が被塗物表面に付着するまでの間に、かなりの溶剤が揮散するので、これ以外の塗装方法に比べると、塗装直後のウエット塗膜は、同じ塗料に基づいて、上記粘度を増大させる程度が大きく、かつ上記(G'/G'')の値を増大させる程度が大きいからである。
【0043】
塗装直後のウエット塗膜の上記粘度及び貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')の値を調整するための塗装条件の変更としては、例えば、エアスプレー塗装において、エアー圧を上げる等の手段により、塗装時における塗料の微粒化の程度を向上させることにより、塗装時の溶剤の揮発を速くし、塗装直後のウエット塗膜の上記粘度を増大させ、かつ上記(G'/G'')の値を増大させることができる。
【0044】
本発明に従って、上記粘度及び(G'/G'')の値が調整されたウエット塗膜は、乾燥又は加熱硬化されて、耐ハジキ性が顕著に改良された塗膜が得られる。
【0045】
【実施例】
以下、製造例及び実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。各例における部及び%は、いずれも重量基準である。
【0046】
製造例1
キナクリドンレッド顔料(商品名「ルビクロンレッド451R」、東ソー(株)製)が20部、樹脂酸価が約6mgKOH/gで水酸基価が約68mgKOH/gのアルキド系顔料分散樹脂が固形分で20部及びキシレンが57部の混合物を、直径1mmのガラスビーズを分散メジアとして用いて、ペイントシェーカーにて2時間分散し、固形分41%の赤顔料ペーストを得た。
【0047】
製造例2
フタロシアニンブルー顔料(商品名「シアニンブルー5240K」、大日精化(株)製)が20部、樹脂酸価が約6mgKOH/gで水酸基価が約68mgKOH/gのアルキド系顔料分散樹脂が固形分で20部及びキシレンが24部の混合物を、直径1mmのガラスビーズを分散メジアとして用いて、ペイントシェーカーにて2時間分散し、固形分62.5%の青顔料ペーストを得た。
【0048】
製造例3
樹脂酸価が約4mgKOH/gで、水酸基価が約130mgKOH/gのアルキド樹脂が固形分で70部、ブチルエーテル化メラミン樹脂が固形分で30部、キシレンが56部、n−ブタノールが35部及びメチルエチルケトンが9部からなる樹脂溶液に、アクリル樹脂系表面調整剤(商品名「ディスパロンLC955」、楠本化成社製)0.4部を混合し、固形分50%のアルキド樹脂クリヤ溶液を得た。
【0049】
実施例1
製造例3で得たアルキド樹脂クリヤ溶液200部に、製造例1で得た赤顔料ペーストを、それぞれ12部、24部、又は48部加え、それぞれを、フォードカップNo.4粘度計において20℃で23秒の粘度となるように、キシレンで希釈した。次に得られた各塗料250gを500ccビーカーに入れ、20℃の恒温室において、48時間マグネチックスターラを用いて撹拌中心が約10mm凹む程度に撹拌した。その後、撹拌中心のくぼみから80部の塗料を抜き取り、エアスプレーにて40cm×50cmのブリキ板3枚に塗装した。塗装量は35g/m2とした。
【0050】
上記塗装板の内1枚について、塗装後1分後に、ウエット塗膜をスクレパーで掻き取り、HAAKE社製「レオメータRS150」にて、角周波数10rad/秒での振動測定による貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比、ズリ速度5秒-1の定常流測定による粘度を測定した。また、他の2枚については、塗装後、140℃で20分間加熱硬化し、その硬化塗膜表面に生じたブリキ板2枚当たりのハジキ個数をカウントした。また、硬化塗膜における塗面の肌を評価した。塗面の肌は、目視により、塗面の凹凸が小さく、肌荒れがない場合を良好とした。
【0051】
表1に、赤顔料ペースト添加量、上記粘度、(G'/G'')の値、ハジキ個数及び塗面の肌を、示した。
【0052】
【表1】
【0053】
表1から明らかなように、アルキド樹脂クリヤ溶液200部に対して赤顔料ペーストを48部配合することによって、上記粘度が0.62Pa・s、上記(G'/G'')が0.20となり、ハジキの発生のない塗装板を得ることができた。
【0054】
実施例2
製造例3で得たアルキド樹脂クリヤ溶液200部に、製造例2で得た青顔料ペーストを、それぞれ32部、48部、又は64部加え、それぞれを、フォードカップNo.4粘度計において20℃で23秒の粘度となるように、キシレンで希釈した。得られた各塗料について、実施例1と同様に、上記貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比、上記粘度を測定し、ブリキ板2枚当たりのハジキ個数をカウントし、又塗面の肌を評価した。ハジキ個数は下記表2の通りであり、いずれにおいても多数のハジキの発生があった。
【0055】
表2に、青顔料ペースト添加量、上記粘度、(G'/G'')の値、ハジキ個数及び塗面の肌を、示した。
【0056】
【表2】
【0057】
そこで、製造例3で得たアルキド樹脂クリヤ溶液200部に、製造例2で得た青顔料ペーストを32部加えた上記青塗料232部に対して、ジウレア系流動性調整剤(モノ1級アミンとジイソシアネートとの付加物)を、有効成分で0部から2部まで0.5部間隔で添加した。次に、フォードカップNo.4粘度計において20℃で23秒の粘度となるように、キシレンで希釈した。得られた各塗料について、実施例1と同様に、上記の貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比、上記粘度を測定し、ハジキ個数をカウントし、又塗面の肌を評価した。その結果は、下記表3のとおりであった。
【0058】
【表3】
【0059】
表3から明らかなように、上記青塗料をキシレンで希釈した塗料(流動性添加剤0部のもの)は塗装板にハジキが多く発生したが、この青塗料232部に対してジウレア系流動性調整剤を有効成分量で2.0部添加することによって、希釈後の塗料の上記粘度が0.55Pa・s、上記(G'/G'')が0.20となり、ハジキの発生のない塗装板を得ることができた。
【0060】
実施例3
製造例3で得たアルキド樹脂クリヤ溶液200部に、製造例2で得た青顔料ペーストを32部配合した青塗料232部に対して、フォードカップNo.4粘度計において20℃で23秒の粘度となるように、希釈溶剤として(1)キシレン単独、(2)キシレン80部/アセトン20部の混合溶剤I、(3)キシレン50部/アセトン50部の混合溶剤IIの3種のものを用いて希釈した。得られた各塗料について、実施例1と同様に、上記の貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比、上記粘度を測定し、ハジキ個数をカウントし、又塗面の肌を評価した。その結果は、下記表4のとおりであった。
【0061】
【表4】
【0062】
表4から明らかなように、アルキド樹脂クリヤ溶液200部に対して青顔料ペーストを32部配合した青塗料を、キシレン単独を希釈溶剤として粘度調整して塗装すると、塗装板にハジキが多く発生したが、希釈溶剤としてキシレン80部/アセトン20部の混合溶剤を用いることによって、上記粘度が0.60Pa・s、上記(G'/G'')が0.21となり、ハジキの発生がなく、かつ塗面の肌も良好な塗装板を得ることができた。
【0063】
【発明の効果】
本発明方法によれば、被塗物上に塗装直後のウエット塗膜のズリ速度5秒-1での定常流測定による粘度及び20℃における角周波数10rad/秒での振動測定による貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比を、それぞれ特定の範囲内となるように制御するという簡便な方法によって、塗料の種類に関係なく、塗膜のハジキの発生のない塗装を行なうことができるという顕著な効果が得られる。
Claims (4)
- 被塗物に、フォードカップNo.4粘度計において20℃で15〜40秒の粘度に調整した液状塗料をスプレー塗装により塗装する方法であって、液状塗料を塗装した直後のウエット塗膜において、20℃におけるズリ速度5秒−1での定常流測定による粘度を0.2〜1.0Pa・sの範囲内に、かつ20℃における角周波数10rad/秒での振動測定による貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')を0.1〜0.25の範囲内になるように、塗装前の液状塗料の調整を、流動性調整剤の添加、溶剤の添加及び塗料の顔料濃度の調整から選ばれる少なくとも一つの処方により行うことにより、塗膜の耐ハジキ性を改良する方法。
- 塗装直後のウエット塗膜が、塗装後0.5〜3分の範囲のウエット塗膜である請求項1に記載の塗膜の耐ハジキ性改良方法。
- 塗装直後のウエット塗膜において、上記粘度を0.4〜1.0Pa・sの範囲内とし、かつ上記貯蔵弾性率G'と損失弾性率G''との比(G'/G'')を0.12〜0.22の範囲内に制御する請求項1に記載の塗膜の耐ハジキ性改良方法。
- 液状塗料が、ジウレア系流動性調整剤の添加によって調整されることを特徴とする請求項1に記載の塗料の耐ハジキ性改良方法。
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