JP4414622B2 - 免疫刺激性ミルク製品の製造法およびその使用 - Google Patents

免疫刺激性ミルク製品の製造法およびその使用 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、特に幼児食品用に適した免疫刺激性ミルク食品製造用のビフィドバクテリアの使用に関するものであり:該食品は液状または粉末化された形態であり得る。
【0002】
ビフィドバクテリウム属はアクチノマイセタケアエ科に属する;それは、フルクトース−6−ホスフェート・ホスホケトラーゼ経路により、厳密な嫌気性条件下にグルコースを発酵するグラム陽性菌と共に一群を形成する。それらが生育するのに至適なpHは6〜7の間であり、それらが生育するのに至適な温度は37〜40℃の間である。
【0003】
ビフィドバクテリアは正常なヒトの腸内細菌叢の一部であり、健康に良いいくつかの効果を有していることが認められている。母乳で育てられた離乳前の幼児は、ビフィドバクテリアが優勢な腸内細菌叢を有しており、感染に対してより抵抗力があり、特にミルク工業製品で育てられた離乳前の幼児よりも下痢のリスクが少ない。
【0004】
感染症に対するこの増強された抵抗力におけるビフィドバクテリアの役割は、まだ完全には明らかにされていない。種々の研究は、細菌壁に付随した、または嫌気性発酵の間に細菌によって分泌されたポリサッカライド物質が関与する免疫刺激力をビフィドバクテリアが有していることを示している。GOMEZら{FEMS Microbiol.Lett.,56,47−52,(1988)}は、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(adolescentis)により産生されるポリサッカライドが豊富な細胞外フラクションの免疫調整効果を記述している;Laboratoires OMの名前で第2652590号として公開されたフランス特許出願は、ビフィドバクテリウム・インファンティス・ロングム(infantis longum)により産生されるポリサッカライド性の免疫力を有するエキソポリマーを記述している;ホソノら[Biosci.Biotech.Biochem.,61,312−316 (1997)およびBioscience Microflora,17,97−104,(1998)]は、種々のビフィドバクテリウム菌株により産生される免疫賦活ポリサッカライドを記述している。ビフィドバクテリアの免疫調整作用は、腸内細菌叢の調整によって、特に病原性細菌株の発生をなくして、それ自体を証明してもいる。ROMONDら[Anaerobe,3,137−143,(1997)およびJ.Dairy Sci.,81,1229−1235,(1998)]は、嫌気性発酵条件下でビフィドバクテリウム・ブレヴェ(breve)により産生される、グリコプロテインが豊富なフラクションン、およびイン・ビボでの腸内細菌叢に対する調整効果の誘発を記述している。
【0005】
ビフィドバクテリアの発酵によって産生される多くの製品は、他の乳酸菌と任意に組み合わされて市場に存在し、それを摂取するとビフィドバクテリアおよびその発酵製品の免疫刺激効果を得ることができる。
【0006】
しかしながら、乳幼児の食物の場合、余りに酸っぱく、しかも粉末製品の場合には発酵中に生じる酸性度によるミルクプロテインの凝集のために再調製後に外観が不均一になるという不利がある。そのため、それらは子供や母親にしばしば受け入れられ難い。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、免疫刺激性を有する物質のビフィドバクテリアによる生産を、発酵によらないで、したがって最終製品の酸性化を伴わないで行い得ることを見出した。
【0008】
本発明の課題は、生物学的変換を、ミルク基質上で、ビフィドバクテリウム培養物の助けを借りて、ビフィドバクテリウムによる発酵に不利な条件下に、該基質と該培養物との接触を維持することにより行うことを特徴とする免疫刺激性ミルク製品の製造法である。
【0009】
「ビフィドバクテリウムによる発酵に不利な条件」という表現は、ビフィドバクテリウムによる培地の酸性化が、最初の1〜5×107CFU/ml接種について、8時間培養の間に0.5pH単位を超えないという条件を意味する。それらは、特に培地のエアレーション、その浸透圧および/または培養温度を変えて、培養の最初と最後のpHを測定することにより、簡単な試験で、当業者により容易に測定され得る。
【0010】
多数のビフィドバクテリウム菌株について、そのような条件は、特に:
−例えば攪拌して通気条件下に保つことにより;
−培地を0.93〜0.97の水分活性に相当する浸透圧に保つことにより、
−40℃〜48℃の温度に保つことにより;
ならびにこれら種々の条件の組合せによって得られる。
【0011】
ミルク基質とビフィドバクテリウムとをミルク基質のml当たり1×107〜1×109 CFUの割合で接触させ、生物学的変換反応の最後におけるビフィドバクテリウムの最終濃度は生成物のml当たり1×105〜1×109 CFUである。
【0012】
バクテリアと接触させる間のミルク基質のpHは、好ましくは6.3〜7であり、生物学的変換反応の最後における生成物のpHは、好ましくは6〜7である。
採用される条件によるが、ミルク基質とバクテリアとの接触時間は6〜24時間である。
【0013】
ミルク基質はミルク、またはミルクをベースとした媒体であり;これは例えば濃縮ミルク、幼児ミルク食品用のベース、ヨーグルト用のベースなどであり得る。
【0014】
即席の製品を製造するのに必要な、摂取するのが望ましい材料を、ミルクをベースとした媒体に加えることができる。もし、例えば、離乳前の乳幼児にとってミルク食品をとるのが望ましいならば、ラクトース、マルトデキストリン、ミネラル類、ビタミン類、脂肪、および母乳の組成を再構成できる材料が加えられるだろう。所望により、脂肪が加えられ、次いで安定なエマルジョンが得られるように溶液と均質化される。
【0015】
本発明を実施するのに特に適したビフィドバクテリウム・ブレヴェ菌株は、ブダペスト条約に従って、1999年5月31日に、I−2219という番号で、パリのパスツール研究所(25 rue du Docteur Roux)に保有されているCNCM(Collection Nationale de Cultures de Microorganismes)に寄託された。
【0016】
この菌株は次の特性を有している:
形態学:稀にYおよびV形を有する短い桿菌
代謝:嫌気生活;L‐(+)−乳酸および酢酸の産生
糖の発酵:グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、スクロース、ラクトース、エスクリン、リボース、マンニトール、ソルビトール、D‐ラフィノース、メリビオース。
【0017】
本発明の課題は、本発明の方法を用いて得られることを特徴とする液状のミルク製品でもある。
この製品は、好ましくは生物学的変換反応の最後において6〜7のpHを有する。
比較として、ビフィドバクテリウムの発酵により得られる先行技術の製品は、発酵の最後の段階で4〜4.6のpHを有する。
【0018】
この製品は、そのまま消費され得るし、あるいは摂取するのが望ましい即席製品に従ってその性質が変わる種々の処理に付され得る。例えば、繊維化剤、香辛料、ビタミンもしくはミネラル補強剤、脂肪などが、もしこれらがもとの媒体に加えられていなければ、補充され得る。それは濃縮されても、希釈されてもよい。
【0019】
本発明によるミルク製品は、新鮮なミルク食品を製造するためのベースとして役立つ。
それはまた、滅菌および/または乾燥により、長期保存食品の製造にも使用され得る。事実、それは、生菌がなくても、例えば乾燥およびUHT滅菌の後でも、免疫刺激性を維持している。
本発明は、本発明によるミルク製品から得られる、新鮮な、滅菌されたまたは乾燥されたミルク食品をもカバーする。
それは、本発明による乾燥されたミルク食品に水を加えて得られる再構成されたミルク食品をもカバーする。
本発明による(新鮮な、滅菌されたまたは再構成された)ミルク食品は、一般に6〜7.5のpH、好ましくは6.5〜6.9のpHを有する。
【0020】
従来技術として知られていたビフィドバクテリウムの発酵により得られる食品と違って、本発明によるミルク食品は、酸性でなく、凝集しないで溶解しているミルクプロテインを含んでいる。本発明による乾燥ミルク食品に水を加えると、沈殿とか相分離のない均質な製品を得ることができる。本発明によるミルク食品は、味が変わるとか製品の外観が変わるとかいった不都合を伴わないで、それらの免疫刺激効果により、従来技術で知られていたビフィドバクテリウムの発酵により得られる食品に匹敵するほどの、細菌およびビールスに対する保護をもたらす。
【0021】
それらは乳幼児の食品として、特に離乳前の乳児の食品として使用するのに適しているが、あらゆる年齢層用の食品としても使用され得る。
本発明は、本発明のミルク製品の製造例を参照する以下の追加的な記載によって、よりはっきりと理解されるだろう。
【0022】
実施例1:免疫刺激活性を有する、離乳前の乳児用の栄養ミルク粉末製剤の製造
乾燥物100g当たりのgで表したときの組成が次のとおりであるミルク濃縮物が製造される:
ミルクプロテイン(80%カゼインおよび20%血清プロテイン) 13
食用脂肪 25.5
ラクトース 42.25
マルトデキストリン 16
ミネラル類 3
ビタミン類 0.25

【0023】
食用脂肪を牛のスキムミルクに加え、75℃に加熱する。同じ温度で、第1段階200kgs/cm2、第2段階50kgs/cm2の2段階で、ホモゲナイズする。次いで、予め水に溶解したラクトースおよびマルトデキストリンを加え、ビタミンとミネラルの溶液を加える。
最終的な混合物を115℃で滅菌し、次いで蒸発により濃縮して48%の濃縮物を得る。
【0024】
この濃縮物を37℃に冷やし、109バクテリア/mlを含むB.ブレヴェ I−2219培養物を5%の割合で接種する。最初のpHは6.15であり、浸透圧は0.96である。2時間ごとに10分間間欠的に攪拌して通気したタンク中で、37℃で8時間インキュベートした後、pHは6.1であり、B.ブレヴェの個体数は106バクテリア/mlである。ドルニック(Dornic)酸性度は48゜Dである。
濃縮物を噴霧乾燥する。粉末が得られ、これを水1リットル当たり140gの量で加えると、次の特性を有する再構成ミルクが得られる:pH6.6、ドルニック酸性度12゜D;凝固粒子のない液状のミルク外観。
【0025】
実施例2:免疫刺激活性を有する、即席の、UHT滅菌され、無菌包装された、離乳前の乳児用の栄養ミルク製剤の製造
組成(g/リットル)が次のとおりである混合物を調製した:
プロテイン 21
油脂 24
炭水化物 83
ミネラル類 5
ビタミン類 0.45
この混合物は次の材料(最終製品の100リットル当たり)から調製される:
−スキムミルク 58リットル
−脂肪 2.4kg
−ラクトース 4.7kg
−マルトデキストリン 0.7kg
−ビタミン類 0.3kg
−ミネラルコンプレックス 0.05kg
【0026】
UHTシステムを用いて、115〜120℃の温度でミルクを予め加熱処理する。
70℃に冷やされたミルクに脂肪を加え、第1段階200kgs/cm2、第2段階50kgs/cm2の2段階で、ホモゲナイズする。
混合物を37〜38℃に冷却し、1〜5×109バクテリア/mlを含むCNCM I−2219培養物を1.5%で接種する。
上記の実施例1と同じ条件下に、37℃で8時間培養した後、5℃に冷却する。
【0027】
製品のpHは6.3であり、B.ブレヴェの個体数は3×107バクテリア/mlである。ドルニック酸性度は23゜Dである。
材料の残りを約50リットルの水に溶解し、次いでインキュベーションの最終段階で得られた生成物に加える。
このようにして得られた混合物を、無菌包装する前に、140℃で6〜7秒間UHT処理に付す。
【0028】
実施例3:本発明のミルク製品の免疫刺激効果
本発明によるミルク製剤の免疫刺激効果を次のようにして試験した:
−ヒト細菌叢をもったマウスにおける糞便細菌叢の生育による
−クロストリジウム・パーフリンゲンスでの単宿主性マウスにおける移行現象の規制による。
【0029】
ヒト細菌叢をもったマウスにおける糞便細菌叢の生育試験:
マウスはヒト細菌叢をもった、成長したC3Hラインである。
−1群当たりのマウスの数:6
−試験の回数:製品当たり2
マウスは1週間同じケージで飼育された後、1ケージ6匹に分けられる。
マウスの週齢は試験の開始時に最小で8週齢、最大で11週齢である。
次の細菌が糞便細菌叢でモニターされる:
−ビフィドバクテリア
−バクテロイデス・フラギリス
−クロストリジアの胞子
−任意にCl.パーフリンゲンスの胞子
【0030】
生物学的テクニック
糞便試料を使用直前に集め、無菌的に秤量し、前還元のリンガー液(1/4に希釈し、0.3g/lの塩酸システインで補足)に溶解する。
前還元されたBEERENSおよびBBE媒体上のビフィドバクテリアおよびバクテロイデス・フラギリスの計数(enumeration)を直接接種し、嫌気性条件下で培養する。
クロストリジウム胞子に関する試験について:
−懸濁液を75℃で10分間加熱し、グルコース(5g/l)および塩酸システイン(0.3g/l)を加えたコロンビア寒天培地に接種し、5日間培養する。
−クロストリジウムのコロニーをそれらの形態およびカタラーゼ反応陰性により同定する。グラム染色3の後で細胞の形態を決定する。
得られた結果を、ファーメントCNCM I‐2219とともに接種し、直ちに処理された対照のミルク製剤とともに、次の表Iに示す。(接触時間=0)
【0031】
【表1】
Figure 0004414622
【0032】
結果はlogで表され、数字はマウス6匹についての結果の平均を表す;バクテロイデス・フラギリスおよびクロストリジアの顕著な増加、すなわち感染症のリスクが観察される。
接種後、CNCM I‐2219と37℃で8時間接触させて得られた、本発明のミルク製剤での結果を次の表IIに示す。
【0033】
【表2】
Figure 0004414622
nd:測定せず
【0034】
対照に比べて、ビフィドバクテリアにおける2.5 logの増加、ならびにバクテロイデスおよびクロストリジアにおける極めて大きな減少が、特に15日間処理後に観察される。
【0035】
クロストリジウム・パーフリンゲンスをもった一宿主性マウスでの試験
目的:種々の器官における腸内細菌の伝播に対する本発明の製品の影響を確認すること
試験条件:滅菌された隔離ユニット中で、照射により滅菌されたR03ベース上で、無菌飼育されたマウス(8週齢)
試験物質:
−オートクレーブにより滅菌された超純水
−本発明の製剤(PII)が水100ml当たり14g(粉末の重量)の割合で加えられ、オートクレーブにより滅菌された超純水
【0036】
これらの溶液を滅菌的手法で毎日調製し、マウスに6日間不断給餌する。期間の終わりに、C.パーフリンゲンス菌株LAB(ヒト腸内由来)をマウス当たり3.5〜4.5logCFUの割合で接種する。リンパ器官におけるクロストリジウム・パーフリンゲンスの移植および伝播を、接種後24時間、48時間、4日および7日に、グループ当たり2匹のマウスを殺して測定する。計数は、LS媒体中、3つのチューブを用いた最も普通の計数方法により行う(46℃で24〜48時間培養)。
結果を次の表IIIに示す:
【0037】
【表3】
Figure 0004414622
【0038】
表IIIの凡例:
0=低い移植/伝播
1=平均的な移植/伝播
2=高い移植/伝播
【0039】
次のことが観察される:
−本発明の製品投与後、C.パーフリンゲンス移植の24時間遅延
−本発明の製品(PII)を消費したマウスのリンパ器官における低い伝播
これらの結果は、本発明の製剤がリンパ器官におけるクロストリジウム・パーフリンゲンスの伝播を規制していることを示す。

Claims (9)

  1. 1999年5月31日に、番号I−2219の下に、CNCMに寄託されたビフィドバクテリウム・ブレヴェ株。
  2. ミルク基質の生物学的変換を、請求項1に記載のビフィドバクテリウム株の培養物を用いて、ビフィドバクテリウムによる培地の酸性化が、最初の1〜5×10 7 CFU/ml接種について8時間培養の間に0.5pH単位を超えないという条件下に、該基質と該培養物との接触を維持することにより行うことを特徴とする免疫刺激性ミルク製品の製造法。
  3. ミルク基質およびビフィドバクテリウムを、ミルク基質のml当たり1×107〜1×109CFUの割合で接触させ、生物学的変換反応の終わりの段階でビフィドバクテリウムの最終個体数が生成物のml当たり1×105〜1×109CFUであることを特徴とする請求項に記載の製造法。
  4. ビフィドバクテリウムと接触させる間のミルク基質のpHが6.3〜7であり、生物学的変換反応の終わりの段階で生成物のpHが6〜7であることを特徴とする請求項およびのいずれかに記載の製造法。
  5. ミルク基質とバクテリアとの接触時間が6〜24時間であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の製造法。
  6. 請求項〜5のいずれかに記載の製造法により得られることを特徴とするミルク製品。
  7. pHが6〜7であることを特徴とする請求項6に記載のミルク製品。
  8. 請求項7に記載の製品から得られるミルク食品。
  9. pHが6〜7.5であることを特徴とする請求項8に記載のミルク食品。
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