JP4414031B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カール防止性に優れた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
支持体上に機能性を持った樹脂層を設け、機能性を有する積層体とすることは従来より行われているが、支持体と樹脂層との伸縮率の違いなどを原因とするカールの発生が問題視されている。
【0003】
特に、支持体としてプラスチックフィルムなどの吸放湿性に乏しいもの、樹脂層として水溶性樹脂などの吸放湿性に富んだものを組み合わせて使用した場合には、支持体と樹脂層の伸縮率の差が顕著となり、カールが大きくなり積層体の取り扱いに支障をきたしてしまう。即ち、空気中の水分の影響により、低湿時には樹脂層が収縮して樹脂層側が凹形状になるようにカールし、多湿時には樹脂層が膨張して樹脂層側が凸形状となるようにカールを引き起こしてしまう。
【0004】
このような顕著な伸縮率の差から生じるカールの発生を防止するため、上記例示した組み合わせからなる積層体においては、支持体の水溶性樹脂からなる層を設けた面とは反対側の面に、同じく水溶性樹脂からなる層を設けることが一般的に行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、近年の技術進歩の下においては、機能性を有する積層体に求められる性能が複雑化し、これを満足させるため機能の異なる樹脂層を二層構造とすることがよくあり、この二層構造のものとして、第一樹脂層が非水溶性樹脂からなる層、第二樹脂層が水溶性樹脂からなる層である場合にカールの発生を防止するのに問題があった。
【0006】
まず、理由は明らかでなかったが、支持体の第一樹脂層および第二樹脂層とは反対側の面に、これらの層と同一組成からなる非水溶性樹脂からなる層、若しくは水溶性樹脂からなる層のみを設けたものはカールの発生を有効に防止することができるものではなかった。
【0007】
一方、支持体の第一樹脂層および第二樹脂層とは反対側の面に、これらの層と同一組成からなる各層を順次積層すればカールの発生を防止することができる。しかし、カール防止層として複数の層を設けるにはコストや時間がかかり、また、カール防止層に耐水性が求められる場合には、耐水性に劣る水溶性樹脂を最外層とする前記構成からなる積層体は使用に耐えないものであった。例えば、積層体が製図用フィルムのように机に広げて使用するようなものである場合、机が汚れているからといって水ぶきした直後に使用すると、カール防止層が机に貼りついてしまうなどの問題を生じてしまう。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、水溶性樹脂からなる第二樹脂層だけでなく、非水溶性樹脂からなる第一樹脂層もカールの発生に寄与していることを見出し、カール防止層を特定構成のものとすることにより、カール防止層が単層でありながら、十分なカール防止性、耐水性を兼ね備えた積層体を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明の積層体は、プラスチックフィルム又は合成紙から選ばれる支持体上に、非水溶性樹脂を主成分とする第一樹脂層、水溶性樹脂を主成分とする第二樹脂層を順次有する積層体であって、前記非水溶性樹脂は、スチレンマレイン酸共重合物、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、酢酸プロピオン酸セルロースから選ばれる樹脂であり、前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メラミン樹脂、アクリルアミド共重合体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、キチン、キトサンから選ばれる樹脂であり、かつ、前記支持体の第一樹脂層および第二樹脂層とは反対側の面のみに、親水基を含む変性ポリエステル樹脂を主成分とするカール防止層を有することを特徴とするものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の積層体は、プラスチックフィルム又は合成紙から選ばれる支持体上に、非水溶性樹脂を主成分とする第一樹脂層、水溶性樹脂を主成分とする第二樹脂層を順次有する積層体であって、前記非水溶性樹脂は、スチレンマレイン酸共重合物、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、酢酸プロピオン酸セルロースから選ばれる樹脂であり、前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メラミン樹脂、アクリルアミド共重合体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、キチン、キトサンから選ばれる樹脂であり、かつ、前記支持体の第一樹脂層および第二樹脂層とは反対側の面のみに、親水基を含む変性ポリエステル樹脂を主成分とするカール防止層を有することを特徴とするものである。以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0011】
支持体としては、プラスチックフィルム、合成紙などがあげられる。これらは、寸法安定性、耐久性などに優れ、積層体の支持体として好適であるものの、吸放湿性に乏しいことから、該支持体上に吸放湿性に富む水溶性樹脂を主成分とする樹脂層を設けた場合に支持体と樹脂層の伸縮率の違いから生じるカールの発生が問題となるものである。これら支持体の原料としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどがあげられる。支持体の厚さは特に限定されるものではないが、取り扱い性に優れる75〜125μmの厚さのものが好適に使用される。
【0012】
第一樹脂層は支持体の一方の面上に設けられ、非水溶性樹脂を主成分とするものである。非水溶性樹脂としては、スチレンマレイン酸共重合物、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、酢酸プロピオン酸セルロースなどがあげられる。
【0013】
第二樹脂層は第一樹脂層上に設けられ、水溶性樹脂を主成分とするものである。水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メラミン樹脂、アクリルアミド共重合体などの合成樹脂やゼラチン、カゼイン、でんぷん、キチン、キトサンなどの天然樹脂があげられる。これら水溶性樹脂は、外気中の水分を吸放湿することから、支持体との伸縮率に顕著な差を生じ、カール発生の大きな原因となるものである。
【0014】
このように、本発明の積層体は、支持体上に第一樹脂層、第二樹脂層を順次有する構成を採用することから、複雑な機能を備えた積層体とすることができる。例えば、第一樹脂層が第二樹脂層に鉛筆筆記性を発現させるためのマット層で第二樹脂層がインクジェットインク吸収可能な層である場合には、インクジェット記録できるだけでなく鉛筆筆記することができる積層体を得ることができる。
【0015】
カール防止層は、支持体の第一樹脂層及び第二樹脂層とは反対側の面に設けられるものであり、積層体にカールが発生するのを防止する役割を有するものである。かかるカール防止層によりカールの発生を防止するには、水溶性樹脂からなる第二樹脂層の吸放湿性だけでなく、非水溶性樹脂からなる第一樹脂層の影響をも考慮する必要があるところ、本発明においては、カール防止層として親水基を含む変性ポリエステル樹脂を主成分とするものを採用することにより、カール防止層が単層でありながら、十分にカールの発生を防止することを可能とした。この原因は必ずしも明らかでないが、変性ポリエステル樹脂の親水基部分の吸放湿作用によるカール防止層の伸縮が、水溶性樹脂の吸放湿作用による第二樹脂層の伸縮を打ち消し、変性ポリエステル樹脂の主鎖の剛直部分が、非水溶性樹脂からなる第一樹脂層のカール発生原因を打ち消しているものと考えられる。また、カール防止層の主成分である親水基を有する変性ポリエステル樹脂は、本来非水溶性であるポリエステル樹脂に親水基を導入しているに過ぎないものであることから耐水性も備えるものである。従って、水に濡れた机の上などで積層体を使用しても、カール防止層が机に貼りついたりしてしまうことがない。
【0016】
変性ポリエステル樹脂に含まれる親水基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、スルホニル基、エーテル基などがあげられる。変性ポリエステル樹脂に含まれる親水基の量は、導入する親水基の種類によって異なる。即ち、本来非水溶性であるポリエステル樹脂に適度な吸放湿性を与えつつ耐水性を維持する必要があることから、スルホニル基などの強親水性の基であれば比較的少量となり、水酸基などのあまり親水性の強くない基であれば中程度の量となり、エーテル基などの親水性の小さい基であれば比較的多い量となる。
【0017】
カール防止層の厚さは、変性ポリエステル樹脂中の親水基の導入率や第一樹脂層及び第二樹脂層の厚さにより左右されることから一概には言えないが、十分なカール防止効果を発揮すべく、第一樹脂層と第二樹脂層の厚さを合計した程度にすることが望ましい。
【0018】
なお、上記各層には、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、マット剤、硬化剤などの添加剤を添加することができる。マット剤を添加すれば、上記各層に筆記性を付与することができる。
【0019】
上述した積層体は、上記樹脂および必要により添加される添加剤とを適当な溶媒に溶解又は分散させて塗工液を調製し、当該塗工液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法などの公知の方法により支持体上に塗布・乾燥させる方法により作製することができる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0021】
[実施例1]
厚さ100μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、下記の組成からなる第一樹脂層用塗工液、および第二樹脂層用塗工液をそれぞれ乾燥膜厚5μm、10μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して第一樹脂層および第二樹脂層を形成した。
【0022】
<第一樹脂層用塗工液>
・酢酸プロピオン酸セルロース 10部
(CAP482-0.5:イーストマン ケミカル社)
・シリカ(平均粒径5.5μm) 8部
(サイリシア450:富士シリシア化学社)
・メチルエチルケトン 100部
・トルエン 100部
【0023】
<第二樹脂層用塗工液>
・ポリビニルピロリドン 10部
(PVP K60:ISP社)
・水 100部
・エタノール 100部
【0024】
次に、ポリエステルフィルムの第一樹脂層及び第二樹脂層とは反対側の面に、下記の組成からなるカール防止層用塗工液を乾燥膜厚15μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥してカール防止層を形成し、本発明の積層体を得た。
【0025】
<カール防止層用塗工液>
・親水基を含む変性ポリエステル樹脂 100部
(ペスレジンA513E:高松油脂社、30%水分散液)
【0026】
[比較例1]
実施例1のカール防止層用塗工液を実施例1の第一樹脂層用塗工液と同様のものとした以外は実施例1と同様に積層体を作製した。
【0027】
[比較例2]
実施例1のカール防止層用塗工液を実施例1の第二樹脂層用塗工液と同様のものとした以外は実施例1と同様に積層体を作製した。
【0028】
[比較例3]
カール防止層を形成しない以外は実施例1と同様に積層体を作製した。
【0029】
実施例及び比較例で得られた積層体につき、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示す。
【0030】
(1)カール曲率半径
積層体を150mm×150mmの大きさに切断したサンプルを作製し、温度20℃・湿度30%RHの環境条件、および温度20℃・湿度65%RHの環境条件下で24時間垂直につるした後のカール曲率半径を測定した。その結果、カール曲率半径が300mm以上のものを「○」、100mm以上300mm未満のものを「△」、100mm未満のものを「×」とした。
【0031】
(2)耐水性
ポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)および積層体を50mm×100mmの大きさに切断し、ポリエステルフィルムを霧吹きで濡らした後、積層体のカール防止層側と霧吹きによって表面を濡らしたポリエステルフィルムを重ね合わせ、50g/cm2の荷重がかかるように1時間保存した際に、カール防止層がポリエステルフィルムに貼りつかなかったものを「○」、ポリエステルフィルムに貼りついてしまったものを「×」とした。
【0032】
【表1】
Figure 0004414031
【0033】
実施例1のものは、カール防止層として変性ポリエステル樹脂を主成分としたものであることから、耐水性を満足するとともに、カール曲率半径が大きい、つまり、より平坦に近く良好なカール防止性を有するものであった。
【0034】
比較例1のものは、カール防止層として第一樹脂層と同一組成の非水溶性樹脂を主成分としたものである。従って、耐水性は備えるものの、第二樹脂層の主成分である水溶性樹脂の吸放湿性を起因とするカールの発生を抑制することができず、カール曲率半径が非常に小さい、つまり、カールの度合いがひどいものとなった。
【0035】
比較例2のものは、カール防止層として第二樹脂層と同一組成の水溶性樹脂を主成分としたものである。従って、耐水性に劣るとともに、非水溶性樹脂からなる第一樹脂層を起因とするカールの発生を抑制することができず、比較例1ほどではないがカール曲率半径が小さい、つまり、カールの度合いがひどいものとなった。
【0036】
比較例3のものは、カール防止層を設けなかったものである。従って、耐水性は備えるものの、第一樹脂層および第二樹脂層を起因とするカールの発生を抑制することができず、カール曲率半径が非常に小さい、つまり、カールの度合いがひどいものとなった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の積層体によれば、カール防止層として親水基を有する変性ポリエステル樹脂を主成分としたものであることから、支持体上に非水溶性樹脂を主成分とする第一樹脂層、水溶性樹脂を主成分とする第二樹脂層を順次有する積層体において、カール防止層が単層構造でありながらカールの発生を防止することができるとともに、カール防止層の耐水性をも満足させることができる。

Claims (1)

  1. プラスチックフィルム又は合成紙から選ばれる支持体上に、非水溶性樹脂を主成分とする第一樹脂層、水溶性樹脂を主成分とする第二樹脂層を順次有する積層体であって、前記非水溶性樹脂は、スチレンマレイン酸共重合物、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、酢酸プロピオン酸セルロースから選ばれる樹脂であり、前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、メラミン樹脂、アクリルアミド共重合体、ゼラチン、カゼイン、でんぷん、キチン、キトサンから選ばれる樹脂であり、かつ、前記支持体の第一樹脂層および第二樹脂層とは反対側の面のみに、親水基を含む変性ポリエステル樹脂を主成分とするカール防止層を有することを特徴とする積層体。
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