JP4411685B2 - 密封装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポンプ機能を発揮させるねじ突起あるいは粉体を掻き落とすための掻き落とし突起が設けられたシールリップを備えた密封装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の密封装置としては、たとえば図3に示すようなものがある。図3は従来技術に係る密封装置の使用状態を示す概略構成図である。
【0003】
すなわち、この密封装置100は、互いに同心的に相対回転自在に組み付けられるハウジング200とそのハウジング200内に挿入される回転軸300間の環状の隙間を密封するものである。
【0004】
この密封装置100は、ハウジング200の内周に嵌合される外周シール103と、回転軸300の外周面に摺動自在に密封接触する、たとえばゴム状弾性体製のシールリップ101とから構成されている。
【0005】
そして、シールリップ101の大気側摺動面に突起102を形成し、ねじポンプ機能として発揮させたり、あるいは、粉体を掻き落とすための掻き落とし機能として発揮させて、密封性能を高めていた。
【0006】
すなわち、密封装置100によって、図3中大気側Aと密封対象側Oとを遮断して、密封対象側Oを密封する訳であるが、密封対象が例えば油のような流体の場合には、突起102をねじポンプとして機能させて、密封対象側Oから大気側Aに漏れてくる流体を密封対象側Oに押し戻すことによって密封性能を高めるものである。
【0007】
また、密封対象側Oに粉体を含むような場合には、摺動面に粉体が付着すると密封機能が低下してしまうので、付着した粉体をいずれかの所定方向に掻き落とすために、突起102を設けて掻き落とし機能として発揮させることで密封性能を高めるものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来技術の場合には、下記のような問題が生じていた。
【0009】
上述した従来技術の構成の場合において、適正にねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能を発揮させるためには、シールリップが軸表面に対して適正な状態でなければならない。
【0010】
したがって、特に軸を組み込む場合に、シールリップが反転してしまうことを防止する必要がある。
【0011】
たとえば、上述の図3に示す構成の場合には、密封装置100に対して相対的に軸300を大気側Aから密封対象側Oに組み込む場合にはシールリップ101が反転するおそれは少ないが、相対的に密封対象側Oから大気側Aに組み込む場合にはシールリップ101が反転しやすい。
【0012】
ここで、そのような不具合を解消するためには、組み込み方向を決めてしまえば良いが、そうすると、組み込み作業者の負担が大きくなってしまい、また、他の装置等との関係によっては、反転しやすい方向に組み込まなければ作業がしづらい、あるいは、反転しやすい方向に組み込まざるを得ないような場合もある。
【0013】
そこで、反転しやすい方向に組み込む場合であっても、シールリップが反転しないようにするためには、様々な工夫をしなければならなかった。
【0014】
例えば、シールリップに、軸挿入用に形成する面取り部を大きくしたり、反転防止用キャップ等の治具を使用して組み込み作業を行う必要があった。
【0015】
更に、適正にねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能を発揮させるためには、突起の方向性が必要である。
【0016】
すなわち、上述の図3に示す構成において、密封装置100と軸300との関係において、軸300が相対的に図中U方向に回転する装置であったとすると、例えば、突起がねじとして機能する場合には、大気側Aから密封対象側Oにねじポンプ機能が発揮するような方向に突起が形成されていなければならない。
【0017】
仮に、図中U方向とは反対側に回転する装置に、密封装置を適用するような場合には、上記の密封装置とは突起の方向が対称となるように、突起が形成されていなければならない。
【0018】
従って、各種装置に密封装置を汎用させるためには、突起の形成方向が異なる2種類の密封装置を保有する必要があった。
【0019】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、組み立て作業性に優れ、利便性にも優れた密封装置を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
軸が挿入される孔と、
該孔に前記軸が挿入されるにつれて、該軸表面につられて撓み変形して、該軸表面に摺動可能に密着するシールリップと、を備えた密封装置であって、
前記シールリップの両面側に、それぞれねじ突起あるいは粉体を掻き落とす掻き落とし突起を設けることを特徴とする。
【0021】
従って、シールリップの両面のうちのいずれの面であっても軸表面に密着して密封機能が発揮され、かつ、ねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能が発揮される。
【0022】
装置本体が前記軸に対して所定の方向に相対的に回転する場合には、前記シールリップのいずれの面が密着する場合であっても、前記ねじ突起あるいは掻き落とし突起によって、同一の方向にねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能を発揮するとよい。
【0023】
これにより、軸の挿入方向によって、シールリップの密着する面が変わったとしても、必要な方向に、ねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能が発揮される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係る密封装置について説明する。
【0026】
図1は本発明の実施の形態に係る密封装置の概略構成図であり、(B)はその一部破断断面図であり、(A)は(B)の図中P方向から見た一部平面図であり、(C)は(B)の図中Q方向から見た一部底面図である。
【0027】
また、図2は本発明の実施の形態に係る密封装置の使用状態を示す説明図である。
【0028】
密封装置1は、互いに同心的に相対回転自在に組み付けられたハウジング50とハウジング50内に挿入される軸60間の環状の隙間を密封するものであり、密封対象側Oと大気側Aとを遮断して、密封対象の漏れ等を防ぐものである。
【0029】
密封装置1は、概略、補強環10と、この補強環10に焼き付けあるいは一体的に成形されるシール20と、から構成される。
【0030】
補強環10は、概略、軸60と同心的となる円筒部11と、フランジ部12で形成される断面略L字状の環状部材であり、金属等で形成されるものである。
【0031】
シール20は、外周シール部21と、シールリップ22と、を備えており、例えば、ゴム状弾性体で形成されるものである。
【0032】
外周シール部21は、補強環10の円筒部11の外周側に設けられて、ハウジング50の内周に密着してシールするものである。
【0033】
また、図1に示すように、シール20の中心部には孔23が設けられており、その周囲をシールリップ22として機能させる構成となっている。
【0034】
すなわち、孔23の孔径は軸60の軸径よりも小さく設定されており、軸60を孔23に挿入すれば、孔23の周囲の部分、すなわちシールリップ22の部分が、軸60の表面につられて撓み変形して、軸60の表面に対して密着してシールするものである。
【0035】
ここで、シールリップ22の表裏面のいずれの面も、軸60の表面に対して摺動可能に密着してシールできるように構成されている。
【0036】
つまり、軸60を前述の孔23に挿入する場合には、図2(A)に示すT方向と図2(B)に示すS方向の2通りがある。
【0037】
この場合にいずれの方向に挿入した場合であっても、シールリップ22は軸の挿入方向に撓み変形して、軸60の表面に密着してシールすることができ、軸60が相対的に回転した場合は、シールリップ22と軸60表面との間で摺動しつつシールできるようになっている。
【0038】
また、シールリップ22の両面側に、それぞれねじ突起22aおよびねじ突起22bが設けられている。
【0039】
詳しくは、図1(A),(B)に示すように、シールリップの一方の面側には複数のねじ突起22aが設けられ、他方の面側には複数のねじ突起22bが設けられている。
【0040】
そして、これらねじ突起22a,22bはシールリップ22のいずれの面が、軸60の表面に摺動可能に密着した場合であっても、同一の方向へポンプ機能が発揮されるように形成されている。
【0041】
この点について、図2を参照して詳しく説明する。
【0042】
ハウジング50および密封装置1に対して軸60が相対的に図中U方向に回転する装置に、密封装置1を適用するものとする。
【0043】
この場合に、まず、図2(A)のように軸60を図中矢印T方向に挿入する場合には、シールリップ22も同方向に撓むため、ねじ突起22bが設けられた側の面が軸60の表面に密着することになる。
【0044】
そして、軸60をU方向に相対的に回転させると、ねじ突起22bによって大気側Aから密封対象側Oにポンプ機能が発揮するように、ねじ突起22bは形成されている(図1(A)参照)。
【0045】
一方、図2(B)のように軸60を図中矢印S方向に挿入する場合には、シールリップ22も同方向に撓むため、ねじ突起22aが設けられた側の面が軸60の表面に密着することになる。
【0046】
そして、軸60をU方向に相対的に回転させると、上述の図2(A)の場合と同様に、ねじ突起22aによって大気側Aから密封対象側Oにポンプ機能が発揮するように、ねじ突起22aは形成されている(図1(C)参照)。
【0047】
このように、軸60の挿入方向にかかわらず、シールリップ22によって密封性能が発揮され、かつ、所望の方向にポンプ機能を発揮させることが可能となり、組み立て作業性に優れる。
【0048】
しかも、従来技術の場合のように、シールリップの反転を防止するための工夫を凝らす必要もなく、シールリップの反転防止用の治具なども必要ない。
【0049】
更に、本発明の実施の形態に係る密封装置1は、軸60の相対回転の回転方向にかかわらず利用することも可能である。
【0050】
すなわち、上述の説明では、軸60が図2中U方向に相対的に回転する場合に、密封装置1を適用する場合を説明したが、図2中U方向とは反対側に軸60が相対的に回転する装置に適用する場合には、密封装置1をハウジング50に対して図2に示す方向とは反対となるように取り付ければ(反転させて取り付ければ)良い。
【0051】
そのようにすれば、軸60の挿入方向にかかわらず、軸60がU方向とは反対側に相対的に回転すると、ねじ突起22aあるいはねじ突起22bによって、大気側Aから密封対象側Oにポンプ機能が発揮することは言うまでもない。
【0052】
このように、軸の相対的な回転方向がいずれの場合にも利用できるように、各種装置に密封装置を汎用させたい場合であっても、従来技術のように、形成する突起方向の異なる2種類の密封装置を保有する必要はなく、1種類のみで汎用できるので利便性に優れる。
【0053】
なお、上述の説明では、突起をねじポンプ機能を発揮させるためのねじ突起として利用する場合について説明したが、これに限らず、例えば、軸の表面に粉体が付着した場合に密封性能が低下してしまうのを防止するために、付着した粉体を掻き落とすための掻き落とし突起としても同様の効果を得られる。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、シールリップの両面のうちのいずれの面であっても軸表面に密着して密封機能が発揮され、かつ、ねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能を発揮されるので、軸をいずれの方向から挿入しても密封性能が発揮されることになり、組み立て作業性に優れる。
【0055】
また、軸に対して所定の方向に相対的に回転する場合には、シールリップのいずれの面が密着する場合であっても、ねじ突起あるいは掻き落とし突起によって、同一の方向にねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能を発揮するようにすることによって、軸の挿入方向によって、シールリップの密着する面が変わったとしても、必要な方向に、ねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能が発揮されるので、汎用性が良く、利便性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る密封装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る密封装置の使用状態を示す説明図である。
【図3】従来技術に係る密封装置の使用状態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
1 密封装置
10 補強環
11 円筒部
12 フランジ部
20 シール
21 外周シール部
22 シールリップ
22a,22b 突起
23 孔
50 ハウジング
60 軸

Claims (2)

  1. 軸が挿入される孔と、
    該孔に前記軸が挿入されるにつれて、該軸表面につられて撓み変形して、該軸表面に摺動可能に密着するシールリップと、を備えた密封装置であって、
    前記シールリップは、表裏面のいずれの面も軸の表面に対して摺動可能に密着してシールするように構成され、かつ前記軸の挿入方向に撓み変形することで、前記軸の表面に対して密着する面が異なるように構成されると共に、
    前記シールリップの両面側に、それぞれねじ突起あるいは粉体を掻き落とす掻き落とし突起を設けることを特徴とする密封装置。
  2. 軸が挿入される孔と、
    該孔に前記軸が挿入されるにつれて、該軸表面につられて撓み変形して、該軸表面に摺動可能に密着するシールリップと、を備えた密封装置であって、
    前記シールリップの両面側に、それぞれねじ突起あるいは粉体を掻き落とす掻き落とし突起を設けると共に、
    装置本体が前記軸に対して所定の方向に相対的に回転する場合には、前記シールリップのいずれの面が密着する場合であっても、前記ねじ突起あるいは掻き落とし突起によって、同一の方向にねじポンプ機能あるいは掻き落とし機能を発揮することを特徴とする密封装置。
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