JP4409130B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プリンタ、コピア、ファクシミリなどにおいて画像を出力するインクジェット記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録装置は、高速記録可能で、いわゆる普通紙に特別の定着処理を要せずに記録でき、記録時の騒音発生が無視できる程度に小さい点で、オフィス用等として注目されている。従来から種々の方式が提案され、又は既に製品化されて実用されている。このようなインクジェット記録装置は、インク液室と、それに連通したノズルが形成されたインクジェットヘッドを有し、画像情報に応じて、インク液室のインク滴をノズルから飛翔させ、用紙やフィルムなどの被記録体に付着させて画像を形成する。また、インクジェットヘッドの構成の違いからシリアル型インクジェットプリンタとライン型インクジェットプリンタがある。シリアル型インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドを紙の幅方向(主走査方向)に走査しながら画像を形成し、1回または複数回の走査が終了した後に、用紙を搬送し次の記録ラインに画像を記録していくものである。一方ライン型インクジェットプリンタは、ノズルがほぼ用紙の幅方向全域に形成され、用紙の幅方向への走査は行なわずに、用紙を搬送しながら記録していくものである。後者は、幅方向の1ラインを一度に形成していくので記録速度が速いという長所がある一方で、ヘッドそのものが大きくなるためプリンタ全体の大きさが大きくなってしまうこと、高解像度の記録を行なうには、ノズルそのものの配列を高密度にする必要があり、ヘッドの製造コストが高くなるという問題がある。それに比べて、前者は比較的小さなヘッドで画像を形成していくため、装置のコストが安いという長所があり、現在のインクジェットプリンタのほとんどが、基本的にはシリアル型インクジェットプリンタである。
【0003】
このシリアル型インクジェットプリンタの記録画像は、図12に示すように、インクジェットヘッドの主走査方向と平行な直線群52と、この直線群52と直行する副走査方向と平行な直線群51とで形成される格子点を基本記録位置として、この基本記録位置に着弾するようインク滴を吐出してドット50の集合による画像を記録している。
【0004】
この平行なラインの格子点を基本記録位置としてドットを形成する従来の記録方法は、プリントする画像が特定の大きさの文字や、罫線や表などのように単純な縦線や横線が主体の場合に利点があった。したがって、このような記録ドットパターンで記録されている文字を紙面状にプリントする場合に正方形の方眼状の位置を基本としてインクを記録することが合理的であった。
【0005】
しかし、従来の基本記録位置で、用紙の記録面を色材を含むインクで隙間なく塗りつぶすためには、図13に示すように理論上、概円形のインクで記録されるドット50の直径Dを、主走査方向の記録ドットピッチp又は副走査方向の記録ドットピッチqの約1.4倍以上にする必要がある。従って面を塗りつぶした場合にドット50の重なり部分が非常に大きくなり、その重なり率は面積率で約57%にもなる。そのため、1ページに多くの文字やグラフィックス、イメージ画像がある場合など、用紙上のインクが過剰になり、その結果、コックリングといわれるインクが用紙に過剰に浸透することによって用紙に波うちが発生し、用紙がインクジェットヘッドや他の部材と接触し、印字面が汚れたり、インクジェットヘッドと用紙との距離が変化してしまうために、噴射ドットの着弾位置がずれたりするという問題が生じてしまう。また、インクの重なりによりにじみが発生し画像品位を低下させたり、また、インクの乾燥に時間がかかり実質的に記録スピードが低下したりするという問題が生じてしまう。このような問題は、近年の記録速度の向上、塗りつぶし画像パターンの増加、2色以上のインクを重ね打ちするカラー記録の普及によりさらに重大な問題として顕在化しつつある。
【0006】
この問題を解決する方法として、特開平8−2003号公報に記載された技術がある。これは、互いに120度づつの角度をなす3つの平行線群53,54,55で、平行線の間隔が等しく、かつ、それぞれの平行線群53,54,55を成す3方向の直線が1箇所で交わる格子点を基本記録位置とするようにしたプリント装置である(図14参照)。このようなドット配置で記録することにより、ドッドの重なり率を低下させ、かつ用紙上に隙間なくドットを配置できる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般的に記録画像の密度は、縦×横が300dpi×300dpi、360dpi×360dpi、600dpi×600dpi、720dpi×720dpiなど、従来からある互いに直交する2つの平行線群で構成される格子点(ここでは、直交格子と呼ぶ)を基本記録位置とするものが多く、さまざまなアプリケーションソフト(フォトショップ、ワープロソフトなど)でも、通常直交格子をピクセル単位として用いられている。また、文字や罫線、表などをドットで表すときには直交格子を基本とした方がきれいな直線が描ける。画像密度としては、他に720dpi×1440dpiなどのように縦と横の解像度が違う画像もあるが、これも、画像の記録位置は直交格子を基本記録位置としている。そのため、PC(パーソナルコンピュータ)がプリンタに対して送る画像データは、直交格子を基本とした方が、ホストコンピュータ側で特別な処理を行なう必要がなく、記録ドットに対応したデータにラスタライズする時の処理速度が遅くなることがない。
【0008】
ところが、特開平8−2003号公報の技術では、互いに120度づつの角度をなす3つの平行線群で交わる格子点を基本記録位置としている。これは言い換えれると、全ての角度が60度の三角形(すなわち正三角形)の各頂点を記録位置とすることになる。したがって、一つの平行線を主走査方向と一致させたとき、主走査方向に記録ドットピッチpで記録した場合、副走査方向の記録ドットピッチqは、明細書中にあるように、q=p√3/2となり、これはおおよそq=0.87pとなる。すなわち、直交格子配置の画像がPCなどのホストコンピュータから送られてきた場合、この基本格子で印字すると主走査に対して副走査が縮小された、いわば偏平の画像となってしまうという不具合が生じる。
【0009】
本発明の目的は、ドットとドットの重なり部分の面積を大幅に少なくして用紙上に過剰なインクが付着することを原因とする汚れやにじみ、画像の乱れを防止し、インクの乾燥時間を短縮して印字の高速化を図り得るインクジェット記録装置を提供することである。
【0010】
本発明の目的は、従来の基本格子上に展開される記録ドットパターンを利用してシフトドットパターンを生成することにより、画像形成のための一般記なアプリケーションを利用できる一般的な画像として用いることのできるインクジェット記録装置を提供することである。
【0011】
本発明の目的は、インクジェットヘッドの走査回数を少なくして印字の高速化に寄与し得るインクジェット記録装置を提供することである。
【0012】
本発明の目的は、画像のエッジ部の凹凸を緩和し得るインクジェット記録装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明は、インクを吐出するためのノズルが形成されたインクジェットヘッドを有し、インクジェットヘッドにより、被記録体の上に複数のドットからなる画像を記録するインクジェット記録装置において、被記録体の搬送方向及びその搬送方向と直交する方向の一方を主走査方向とし他方を副走査方向としたときに、主走査方向の記録ドットピッチpと副走査方向の記録ドットピッチqとを等しく定め、等間隔で平行に配列された複数のラインを直交させた格子上にドットを配置した記録ドットパターンを基準にし、その記録ドットパターンにおいて副走査方向で隣接するライン間ではドットの位置を主走査方向にp/2だけずらしたシフトドットパターンを生成し、シフトドットパターンの生成の際に、主走査方向にドットをp/2ずらす位置に注目し、その注目位置における主走査方向の前又は後の少なくとも一方の隣接位置に、副走査方向で隣接するライン上で主走査方向の位置を同じくするドットと対応するドットが存在するときに、注目位置にドットを挿入してシフトドットパターンを生成するシフトドットパターン生成手段を具備し、シフトドットパターン生成手段は、データを主走査方向に伸張し、伸張したデータの副走査方向の1ドットおきの列に注目し、伸張によって生じた0データの位置に、周囲のドットに基づいてドットを挿入し、注目した列の元のドットデータを削除し、主走査方向に圧縮してデータ量を戻すことで、p/2ずれた位置にドットを形成することを特徴とする。
【0014】
したがって、従来の方法に比べてドットの重なり率を面積で半分以下にすることができる。これにより、被記録体に不必要な過剰なインクが付着することを防止することが可能となる。したがって、インクの乾燥速度が向上し記録の高速化が可能となると同時に、インクのにじみや流れによる画像品位の低下が防止できる。また、従来のドット構成(直交格子配置)を基にした画像でも、画像が偏平にならず主走査方向と副走査方向との画像の長さを等しくすることが可能となる。
【0031】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の実施の形態を図1ないし図10に基づいて説明する。図1は本発明に適用したシリアル型のインクジェット記録装置の機構的構成を示す斜視図、図2はインクジエット記録装置のインクジェットヘッドの先端部を示す断面図、図3はインクジェットヘッドのノズルプレートを示す正面図、図4は他のノズルプレートを示す正面図、図5はホストコンピュータにおける電気的構成の概略を示すブロック図、図6はインクジェット記録装置における電気的構成の概略を示すブロック図、図7は記録ドットパターンの一例を示す説明図、図8はシフトドットパターンのドット配列を示す説明図、図9はそのドット配列の一部を抽出した説明図、図10はシフトドットパターンの一例を示す説明図である。
【0032】
図1に示すように、インクジェット記録装置(インクジェットプリンタ)Pは、フレーム1に横架したガイドレール2,3にキャリッジ4を移動可能に装着し、このキャリッジ4にインクジェットヘッド5を搭載して、後述するキャリッジモータによってキャリッジ4を矢示A方向に走査させるとともに、ガイド板6にセットされる被記録体である用紙7を矢印B方向に搬送させるために、後述もするプラテンモータの回転力をギヤ8,9を介して送りノブ10aを備えたプラテン10に伝達するように構成されている。このプラテン10周面にはプレッシャローラ11が圧接されている。
【0033】
そして、このインクジェット記録装置Pでは、キャリッジ4をインクジェットヘッド5とともに主走査方向(矢示A方向)に移動走査させながら、用紙7を副走査方向(矢示B方向)に搬送して、インクジェットヘッド5からインク滴を噴射させて用紙7に画像を印字する。
【0034】
ここで、インクジェットヘッド5は、図2及び図3に示すように、液室12を形成する液室形成部材13の前面に複数のノズル14が形成されたノズルプレート15を有し、液室12内のインクをノズル14からインク滴16として飛翔させる。この場合、インクジェットヘッド5の駆動原理は、ヒータに電圧を印加して液室12内のインク沸騰させるバブルジェット方式、圧電素子の歪み効果を利用するピエゾ方式、電極間に電圧を印加することにより発生する静電引力を利用する静電方式の何れであってもよい。何れの場合でも、各液室14毎にエネルギーを選択的に与えることにより、所望のノズル14からインクを吐出させることができる。
【0035】
ノズルプレート15は、図3に示すように主走査方向A(図1参照)と直交する方向に複数のノズル14を1列に配列してもよく、図4に示すように複数のノズル14を2列に配列してもよい。図4の例におけるノズル列は主走査方向Aに配列されている。何れの場合でも、副走査方向に並ぶノズル14間の配列ピッチ(ノズルピッチ)Pnは画像形成の記録ピッチ(記録ピッチM)の2倍(Pn=2M)になるように形成している。本実施の形態では、ノズルを64個配置した例を示す。
【0036】
本実施の形態のインクジェット記録装置Pでは装置内に画像の描画または文字のプリント命令を受けて実際に記録するドットパターンを発生する機能を持たない例を示す。即ち、ホストコンピュータで実行されるアプリケーションソフトなどからのプリント命令はホストコンピュータ内にソフトウェアとして組み込まれたプリントドライバで処理されて記録ドットパターンのデータにラスタライズされ、それがインクジェット記録装置Pに転送されてプリントされる。
【0037】
図5に示すように、ホストコンピュータHCは、CPUを有する制御部17の制御の基に、アプリケーションソフト18やオペレーティングシステムからの画像の描画または文字の記録命令(例えば記録する線の位置と太さと形などを記述したものや、記録する文字の書体と大きさと位置などを記述したもの)を描画データメモリ19に一時的に保存する。尚、これらの命令は、特定のプリント言語で記述されたものである。描画データメモリ19に記憶された命令は、ラスタライザ20によって解釈され、線の記録命令であれば、指定された位置や太さ等に応じた記録ドットパターンに変換され、また、文字の記録命令であればホストコンピュータHC内に保存されているフォントアウトラインデータ21から対応する文字の輪郭情報を呼び出し指定された位置や大きさに応じてた記録ドットパターンに変換される。このようにラスタライズされた記録ドットパターンはラスタデータメモリ22に記憶される。このとき、ホストコンピュータHCは、従来の直交格子を基本記録位置として、記録ドットパターンのデータにラスタライズする。このラスタデータメモリ22に記憶された記録ドットパターンがインターフェース23を経由してインクジェット記録装置Pに転送される。
【0038】
インクジェット記録装置Pは、図6に示すように、ホストコンピュータHCから転送される記録ドッドパターンを受信するデータ処理部24と印字処理部25とを接続し、この印字処理部25に、キャリッド4を移動させるためのキャリッジモータ26を駆動制御するキャリッジ駆動制御部27と、インクジェットヘッド5を駆動制御するヘッド駆動制御部28と、プラテン10を回転させるためのプラテンモータ29を駆動制御するラインフィード駆動制御部30とを接続することにより形成されている。
【0039】
ホストコンピュータHCからインクジェット記録装置Pに転送された印字データ(記録ドットパターン)は、図示しないラスタデータメモリに保存され、所定のデータを受け取った後に、データ処理部24を介してヘッド駆動制御部28に送られ、このヘッド駆動制御部28の出力によりインクジェットヘッド5の所望のノズル孔14からインク滴を吐出(噴射)させて用紙7上に記録させると共に、キャリッジ駆動制御部27によりキャリッジモータ26を制御してキャリッジ4の走査させ、ラインフィード駆動制御部30によりプラテンモータ29を駆動してプラテン10の回転させ、副走査方向の用紙7の搬送を制御する。
【0040】
本実施の形態におけるデータ処理部24は、ホストコンピュータHCから転送される記録ドットパターンを基にして、インクジェットヘッド5を駆動するためのシフトドットパターンを生成するシフトドットパターン生成手段として機能する。
【0041】
ここで、図8を参照してべた印字データを出力する例でシフトドットパターンについて説明する。図中符号31で示される平行ライン群は、副走査方向(用紙搬送方向)にドットピッチqで等間隔で配列されて平行ライン群である。一方32で示される平行ライン群は、主走査方向(用紙の幅方向)にドットピッチp/2で並んだ等間隔の平行ライン群である。これらの31,32の平行ライン群は直交して格子を形成しており、その格子点が丸印で示したドット35の位置である。副走査方向に並んだ平行線群31の奇数列のライン31−oddに対しては、主走査方向に並んだ平行ライン群32の1つおきのライン32、すなわちドットピッチpとなる平行ライン群32との交点33を記録位置とし、また、副走査方向に並んだ平ライン線群31のうちの偶数列のライン31−evenに対しては、主走査方向の平行ライン群32のうち、副走査方向の奇数列のライン31−oddと記録位置となる交点を形成したライン32の間にあり、ドットピッチpで並んだ平行ライン群32との交点34を記録位置とする。したがって、副走査方向に並んだ横方向の平行ライン群31の奇数列と偶数列のライン31で見ると、記録位置となる交点33、34は、主走査方向にp/2ずれた位置で、それぞれドットピッチpで並んだ位置となる。このとき、p=qとすることにより主走査方向及び副走査方向のドット形成ピッチは、等しくなるため、従来の直交格子の記録位置で作成された記録ドットデータが転送されてきても、画像が副走査方向に偏平になることがなくなる。
【0042】
そのことを図9を参照して説明する。交点33、34を結んだ線は、互いがなす角をθ、θ、θとする二等辺三角形を形成する。θ、θ、θはそれぞれ、tanθ=2、tanθ=2、tan(θ/2)=1/2を満たす角度であり、おおよそ、θ=63.4度、θ=63.4度、θ=54.2度となる。言い換えれば、θ、θ、θからなる二等辺三角形の頂点が記録位置となる。この交点を中心として示す円が本発明によるドット35の基本記録位置である。
【0043】
次に、本発明における最適な記録ドットのドット径Dについて説明する。べた画像のように、ある領域を全て印字ドットで埋める場合、周囲のドットとの間に空白が生じないためには、前述の二等辺三角形の3つの頂点から等距離にある点で交わる円の直径以上のドット径Dであればよく、ドット35のドットピッチをp(=q)としたとき、
ドット径D=5p/4=1.25p
である。この設定によりべた画像を白抜けなく埋めることが可能となる。
【0044】
なお、図3に示すように、ノズル列が一列のインクジェットヘッド5により印字する場合には、インクジェットヘッド5を走査させる過程で、図8における奇数列のライン31−oddのドット35を印字し、用紙7をドットピッチq(Pn/2)分搬送した後にインクジェットヘッド5を走査させる過程で偶数列のライン31−evenのドット35を印字する。
【0045】
ここで、上記のように生成したシフトドットパターンを用いた印字例として、具体的な画像を印字する例を説明する。主走査方向、副走査方向のドット35の配列密度をそれぞれ300dpiとする。このときのドットピッチは、p=q=84.7μmである。さらに隣接する主走査軌跡上のドット35の位置をp/2だけずらしており、また、ドット35の用紙7上での平均直径Dをpの1.25倍の106μmとするようにインクの吐出量と吐出速度を設定している。このようにパラメータを規定することで、ドット35間の重なりを低下させて、かつ、隙間なくドット35を配置することができる。
【0046】
図7はホストコンピュータHCから転送された、ある画像の記録ドットパターンのイメージである。図中、31−1,31−3…は副走査方向における奇数列のライン31−odd、31−2,32−4…は偶数列のライン31−evenである。この記録ドットパターンを見ると、そのパターンのままインクジェット記録装置Pから出力する場合には、隣接する全てのドット35の中心が正方形の格子点に存在するため、ドット径Dを大きくしないと隣接するドット35間に空白が生ずることが分かる。この従来の方法、すなわち、ホストコンピュータHPから転送された記録ドットパターンをそのまま300dpi×300dpiの密度で出力する場合では、1ドットの用紙7上でのドット径Dを約120μmとする必要があり、大量のインクが用紙7に付着する。
【0047】
これに対し、図7に示す記録ドットパターンを基にして、副走査方向で隣接するライン31間ではドット35の位置を主走査方向にp/2だけずらしてシフトドットパターンを生成した場合には、図10に示すように隣接するドット35間の空間を抑制することができる。ちなみに、例えば本発明の方法では、1ドットの用紙7上でのドット径Dを約106μmと約13%も小さくすることができた。また、従来の方法では円形のドットで塗りつぶしを行なうとドット35間の重なり合う部分が幾何学的に57%も発生し、インクが過剰になってしまったが、本発明ではドット35同士の重なり部分を約37%と大幅に少なくすることができた。このことは、同じ解像度で同じ画像を得るために必要なインクの量が少なくて良いことを意味している。その結果、インクの乾燥が早くなり高速記録が可能となり、かつ、用紙7の濡れによるシワも防止できる。また、インクの消費量も少なくて良いため、ランニングコストの低減が図れる。図10において、31−1,31−3…は副走査方向における奇数列のライン31−odd、31−2,32−4…は偶数列のライン31−evenである。
【0048】
さらに、従来の方法によると塗りつぶしや線の画像記録部においてインクが過剰になり流れ出したり、インク溜をつくって大きく画質を低下させることがあったが、本発明では過剰なインクが少なくでき、画質の低下を防止できる。特に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック色などのインクを重ねることで色表現を行なうカラー記録においては、インクがより過剰になりがちであり、本発明はカラー記録において非常に有効である。
【0049】
さらに、従来の方法で階調表現を行った際は、特に高濃度域で面積当りドット数を増やしてもドット35間の重なり率が大きいため、濃度があまり増加しない状態になってしまっていたが、本発明では、ドット数と濃度の関係がほぼ比例した関係にでき、階調表現能力が向上する。階調表現において用紙7の色に近い淡い階調を表現する場合は、ドット35をまばらに記録する方法がとられるが、この場合に1ドットのドット径Dが小さい方がドット35が目立たず、きめのこまかい良い印象が得られ、この点からも本発明は高品位な画像の記録が可能となる。
【0050】
一方、特開平8−2003号公報に記載の方法と比較すると、重なり率は若干多くなるが、図10に示すように、画像そのものの形状は偏平になることがなく、通常の直交格子配置のものと変わりがない画像が得られる。すなわち、本発明によって、従来のドット径D、ドット35の重なり率が大きいことに起因する諸問題を、画像の偏平などの問題を生じないで解決することができる。また、重なり率が若干多くなるということは、インク滴16の飛翔速度や、噴射曲がりなどで生じるドット位置精度のバラツキに対しては、より多くずれても隣接ドット35と繋がり、白抜けが生じないということから、本発明の方が有利であるといえる。
【0051】
さらに、本発明による印字方法として、1回の主走査で所望の解像度のノズル幅分(本実施例の場合、64ノズルの幅)の画像を作成することができる。これは、ドット35の重なり率が少なくなり、前述したようなコックリングや、滲みなどの問題が発生しにくくなるために実現できるものである。このような印字方法とすることにより、用紙7を副走査方向に搬送する回数が減り、1枚分の画像を出力する時間すなわちスループットが短くてよく、高速印字が可能となる。
【0052】
さらに、モード選択手段として、図示しないモード選択キーを設け、図10に示すシフトドットパターンを生成するモードと、図7に示す記録ドットパターンをそのまま印字出力するモードとを選択できるように構成してもよい。記録ドットパターンのまま印字出力するモードを選択した場合にはシフトドットパターンを生成する処理を必要としないので、処理の高速化が図れる。シフトドットパターンを生成して印字出力するときは、図10に示すように、元のデータ(図7の記録ドットパターン)に比べると、印字結果はジグザグ状に形成され、エッジ部で凹凸が生じるが、そのずれは、p/2であり、近年の高密度の画像に対しては、0.1mm以下のごくわずかな凹凸である。また、一般に用紙7に印字した場合には、インクは紙上で滲みが多少発生するので、わずかな凹凸は、滲みにより軽減され、ほとんど目立たなくなる。
【0053】
ところで、本発明の基本記録位置にドットを形成する手段としては、図8の副走査方向で奇数列のライン31−oddと偶数列のライン31−evenを印字する時の主走査方向の印字出力のタイミングをp/2分遅らせるように駆動波形のデータをデータ処理部24で生成することで、シフトドットパターンの生成を容易に実現することができる。これにより、特別な機構などを必要とせず、コストアップすることなくシフトドットパターン生成の実現が可能となる。
【0054】
次に、図4に示すようにノズル列を2列に配列した場合について説明する。各列のノズル14はノズルピッチPnで副走査方向に等間隔で複数個形成されている。これらのノズル列は主走査方向に一定距離Lをあけて配列されている。さらにこの2列のノズル列中のノズル14は、互いに千鳥状に位置する位置関係で配列されている。すなわち、列間では互いのノズル14の位置が副走査方向にPn/2ずれた位置に形成されている。このように2列のノズル列を具備するインクジェットヘッド5を用いて印字する場合、ノズル列間の距離Lをp/2の奇数倍に定め、一方のノズル列を図8における奇数列のライン31−oddのドット35を印字するノズル列とし、もう一方のノズル列を偶数列のライン31−evenのドット35を列を印字するノズル列とすることで、2列のノズル列を同時に駆動したときに、用紙7上には、ライン31−oddとライン31−enenのドット35がp/2ずれた位置関係で印字される。このように2列のノズル列を同時に駆動できるため、駆動に用いる駆動信号(駆動波形)を生成する回路が一つで良く、コストが高くなることがない。
【0055】
次に、図11を参照し、本発明の第二の実施の形態について説明する。画像データの作成方法について述べる。前記実施の形態と同一部分は同一符号を用い説明も省略する。図11はシフトドットパターンの一例を示す説明図である。図11において、31−1,31−3…は副走査方向における奇数列のライン31−odd、31−2,32−4…は偶数列のライン31−evenである。
【0056】
本実施の形態は、ホストコンピュータHCから送られた記録ドットパターンを基にして、データ処理部24が行うシフトドットパターンを生成する方法が前記実施の形態と異なる。すなわち、図7(a)に示す記録ドットパターンを基準にする例で説明すれば、ドット35の位置をp/2ずらすラインは副走査方向に沿う偶数列のライン31−2,31−4…である。ライン31−2においてドットをp/2ずらす位置(イ)に注目する。次に、その注目位置(イ)における主走査方向の前又は後の少なくとも一方の隣接位置(ロ)(ハ)に、副走査方向で隣接するライン31−1上で主走査方向の位置を同じくするドット35と対応するドット35が存在するかどうかを判断する。この例では両側の隣接位置(ロ)(ハ)にライン31−1上で主走査方向の位置を同じくするドット35が存在するので、注目位置(イ)にドット35を挿入する。他の複数列のライン31−4,31−6…についても同様にしてドット35を挿入する。図7(b)のパターンの場合も同様にしてドット35を挿入する。
【0057】
シフトドットパターン生成処理は概略上記の通りであるが、さらに詳しく説明する。図7の記録ドットパターンに基づく300dpi×300dpiの画像を考えるとき、まず、主走査方向のデータ2倍に伸長し、その伸張データを画像変換用のメモリ(図示せず)に保存する。データの伸張は、具体的には、主走査方向の1つ1つのドットデータの間に0データを挿入する。したがって、この段階で主走査方向のデータ長は2倍になる。次に、保存した伸長データの副走査方向の遇数列のライン31−2,31−4…に相当するデータ列に対し、ドット35をp/2ピッチずらす位置(イ)に注目し、その注目位置(イ)における主走査方向の前又は後のどちらか又は両方の隣接位置(ロ)(ハ)に、副走査方向で隣接するライン31−1上で主走査方向の位置を同じくするドット35に対応するドット35が存在するかどうかを判断する。この例では両側の隣接位置(ロ)(ハ)にライン31−1上で主走査方向の位置を同じくするドット35が存在するので、注目位置(イ)にドット35を挿入する。他の複数列のライン31−4,31−6…についても同様にしてドット35を挿入する。この作業を、1回のスキャン分実行した後、元のドットデータを削除(0に入れ替える)ことにより、p/2ずれた位置のデータのみが残る。この後、奇数列及び偶数列のドットデータ位置を残して、1/2にデータを圧縮することにより、データ量が元の記録ドットパターンと同じで、遇数列のデータがp/2ずれた位置のデータに変換されたシフトドットパターンが図11のように生成される。このようしてシフトドットパターンを生成することにより、p/2ずれた位置で、周囲のドット情報を参照してドット35の形成を行なうことができるので、最適なドット配置が実現できる。特に、ドットデータが階調情報を含んでいるような場合には、その階調情報を反映したドット形成を行なうことが可能となる。
【0058】
また、本実施例では、奇数列も2倍に伸長したが、奇数列に対しては変換処理しないので、奇数列のデータは伸長しないで、遇数列のみ伸長しても良い。また、本実施例では、遇数列に対してデータの変換処理を行なったが、奇数列に対して変換処理を行ない遇数列は変換処理を行なわない様にしても良い。
【0059】
このようにして生成されたシフトドットパターンは図11に示す通りである。図7と図11とを比較すれば分かるように、画像のバランスを保ち画像品質を向上させることが可能となる。特に、斜めの線を含む画像の場合には、その斜めの線の輪郭の凹凸を少なくすることができる。
【0060】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、主走査方向の記録ドットピッチpと副走査方向の記録ドットピッチqとを等しく定め、副走査方向で隣接するライン間ではドットの位置を主走査方向にp/2だけずらしたシフトドットパターンを生成し、そのシフトドットパターンに基づいて印字出力することにより、従来の方法に比べてドットの重なり率を面積で半分以下にすることができ、これにより、被記録体に不必要な過剰なインクが付着することを防止することができ、したがって、インクの乾燥速度が向上し記録の高速化が可能となると同時に、インクのにじみや流れによる画像品位の低下が防止できる。また、従来のドット構成(直交格子配置)を基にした画像でも、画像が偏平にならず主走査方向と副走査方向との画像の長さを等しくすることができる。さらに、カラー記録においては複数色のインクを重ねて記録した場合でも、従来のように過剰なインクによる問題の発生や画像品位の低下を招くことがなく、さらに、従来の方式に比較してドット直径を約小さくでき、特に、階調表現を含む画像の記録の際にきめの細かい、またムラの少ない画像を実現できる。
【0061】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記シフトドットパターン生成手段は、記録ドットの最大直径Dを、
D≧5p/4またはD≧1.25p
として前記シフトドットパターンを生成するので、べた画像を白抜けなく埋めることができる。
【0062】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、シフトドットパターン生成手段は、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出させるタイミングを変えることを条件としてシフトドットパターンを生成するので、インクジェットヘッドの1回の走査中に、ノズルからインクを吐出させるタイミングを制御するだけの手段により、特別な機構などを必要とせずにシフトドットパターンを安価に生成することができる。
【0063】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、インクジェットヘッドは、列毎に副走査方向の前記ノズルの配列位置がp/2ずれた複数のノズル列を主走査方向に沿わせて具備するので、一方のノズル列のノズルからインクを吐出させたドットと、他方のノズル列のノズルからインクを吐出させたドットとは、主走査方向と副走査方向との位置が一つ置きに異なるため、副走査で隣接するライン間でドットを主走査方向にp/2だけずらしたシフトドットパターンを容易に生成することができ、また、複数列のノズル列から同一のタイミングでインクを吐出させることができるため、インクジェットヘッドを駆動する波形を生成する駆動波形生成部を共通に使用することができる。
【0064】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明において、シフトドットパターン生成手段は、インクジェットヘッドの1回の走査中にインクの吐出を対象とする全ノズルからインクを吐出させることを条件としてシフトドットパターンを生成するので、ドット位置を主走査方向にずらすデータとずらさないデータを含んだシフトドットパターンが一回の主走査で出力されるため、印字速度の高速化が図れる。
【0065】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明において、シフトドットパターン生成手段は、等間隔で平行に配列された複数のラインを直交させた格子上にドットを配置した記録ドットパターンを基準にし、その記録ドットパターンにおいて副走査方向で隣接するライン間ではドットの位置を主走査方向にp/2だけずらすことによりシフトドットパターンを生成するので、一般的に用いられている直交格子を画像の基本ドットとする記録ドットパターンを基にして、ホストピュータ或いはインクジェット記録装置側でデータ処理するだけで、本発明のシフトドットパターンを生成することができ、これにより、一般的なアプリケーションソフトへの対応性が図れる。また、そのソフトとほぼ同じ画像を得ることができる。
【0066】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明において、記録ドットパターンのドット位置をずらすことによりシフトドットパターンを生成するモードと、記録ドットパターンをそのまま印字出力するモードとを選択するモード選択手段を具備するので、印字する画像によって記録ドットパターンのまま印字出力するモードを選択することが可能となり、このモードを選択した場合にはシフトドットパターンを生成する処理を必要としないので、処理の高速化が図れる。
【0067】
請求項8記載の発明は、請求項6記載の発明において、シフトドットパターン生成手段は、記録ドットパターンを基準にして、被記録体の搬送方向と直交する方向にドットをp/2ずらす位置に注目し、その注目位置における主走査方向の前又は後の少なくとも一方の隣接位置に、副走査方向で隣接するライン上で主走査方向の位置を同じくするドットと対応するドットが存在するときに、注目位置にドットを挿入して前記シフトドットパターンを生成するので、画像のバランスを保ち画像品質を向上させることができ、特に、斜めの線を含む画像の場合には、その斜めの線の輪郭の凹凸を少なくすることができる。
【0068】
請求項9記載の発明は、請求項8記載の発明において、シフトドットパターン生成手段により生成されたシフトドットパターンを記憶する記憶手段を具備するので、ドット位置をずらしたシフトドットパターンを、基の記録ドットパターンと区別して記憶することができる。これにより、記録ドットパターンからシフトドットパターンへの正確な変換が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態におけるシリアル型のインクジェット記録装置の機構的構成を示す斜視図である。
【図2】インクジエット記録装置のインクジェットヘッドの先端部を示す断面図である。
【図3】インクジェットヘッドのノズルプレートを示す正面図である。
【図4】他のノズルプレートを示す正面図である。
【図5】ホストコンピュータにおける電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図6】インクジェット記録装置における電気的構成の概略を示すブロック図である。
【図7】記録ドットパターンの一例を示す説明図である。
【図8】シフトドットパターンのドット配列を示す説明図である。
【図9】そのドット配列の一部を抽出した説明図である。
【図10】シフトドットパターンの一例を示す説明図である。
【図11】本発明の第二の実施の形態におけるシフトドットパターンの一例を示す説明図である。
【図12】従来の記録ドットパターンを示す説明図である。
【図13】従来の記録ドットパターンの一例を示す説明図である。
【図14】他の従来の記録ドットパターンの一例を示す説明図である。
【符号の説明】
P インクジェット記録装置
5 インクジェットヘッド
7 被記録体
14 ノズル
24 シフトドットパターン生成手段
p 主走査方向の記録ドットピッチ
q 副走査方向の記録ドットピッチ

Claims (7)

  1. インクを吐出するためのノズルが形成されたインクジェットヘッドを有し、前記インクジェットヘッドにより、被記録体の上に複数のドットからなる画像を記録するインクジェット記録装置において、
    前記被記録体の搬送方向及びその搬送方向と直交する方向の一方を主走査方向とし他方を副走査方向としたときに、前記主走査方向の記録ドットピッチpと前記副走査方向の記録ドットピッチqとを等しく定め、等間隔で平行に配列された複数のラインを直交させた格子上にドットを配置した記録ドットパターンを基準にし、その記録ドットパターンにおいて前記副走査方向で隣接するライン間ではドットの位置を前記主走査方向にp/2だけずらしたシフトドットパターンを生成し、前記シフトドットパターンの生成の際に、前記主走査方向にドットをp/2ずらす位置に注目し、その注目位置における主走査方向の前又は後の少なくとも一方の隣接位置に、副走査方向で隣接するライン上で主走査方向の位置を同じくするドットと対応するドットが存在するときに、前記注目位置にドットを挿入して前記シフトドットパターンを生成するシフトドットパターン生成手段を具備し、
    前記シフトドットパターン生成手段は、
    データを主走査方向に伸張し、伸張したデータの副走査方向の1ドットおきの列に注目し、伸張によって生じた0データの位置に、周囲のドットに基づいてドットを挿入し、注目した列の元のドットデータを削除し、主走査方向に圧縮してデータ量を戻すことで、p/2ずれた位置にドットを形成する
    ことを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記シフトドットパターン生成手段は、記録ドットの最大直径Dを、
    D≧5p/4またはD≧1.25p
    として前記シフトドットパターンを生成することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記シフトドットパターン生成手段は、前記インクジェットヘッドの前記ノズルからインクを吐出させるタイミングを変えることを条件として前記シフトドットパターンを生成することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記インクジェットヘッドは、列毎に副走査方向の前記ノズルの配列位置がp/2ずれた複数のノズル列を主走査方向に沿わせて具備することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記シフトドットパターン生成手段は、前記インクジェットヘッドの1回の走査中にインクの吐出を対象とする全ノズルからインクを吐出させることを条件として前記シフトドットパターンを生成することを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記記録ドットパターンのドット位置をずらすことにより前記シフトドットパターンを生成するモードと、前記記録ドットパターンをそのまま印字出力するモードとを選択するモード選択手段を具備することを特徴とする請求項記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記シフトドットパターン生成手段により生成された前記シフトドットパターンを記憶する記憶手段を具備することを特徴とする請求項記載のインクジェット記録装置。
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