JP4408541B2 - 吸引式ガス検知器用フィルタ - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸引式ガス検知器用フィルタ(以下単にフィルタと称する)に関し、たとえば、ガス検知素子を設け、検出ガスを外部空間からガス検知素子へ導くガス誘導路を設けてある吸引式ガス検知器における、前記ガス誘導路を形成する通気口に、前記外部空間から前記ガス検知素子を隔離して設けられるフィルタに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、前記吸引式ガス検知器は、前記ガス検知素子に水滴が付着すると、故障その他の不調の原因になりやすいという事情から、前記フィルタとして水滴を除去するための撥水性通気性樹脂フィルムを設けた構成のものが知られている。
【0003】
また近年、建築材料としてシリコーンパテ、シリコーンゴム、シリコーンオイル等種々のシリコーン材料を多用されるようになってきている。このようなシリコーン材料には低重合度で比較的揮発性の高い有機シリコーンが含有されており、有機シリコーンガスが、ガス検知素子に悪影響を与えるという問題点が指摘されている。
つまり、ガス検知素子のガス検知感度が低下したり、選択的に検出すべきガス以外のガスに対してガス検知感度が上昇して、誤作動したりしやすくなることがあった。これは、検出ガス中に含まれる有機シリコーンガスが、ガス検知素子にまで達して、前記ガス検知素子に前記有機シリコーン又はその分解物等のシリコーン成分が付着しやすく、前記ガス検知素子のガス検知特性を変化させてしまうのものと考えられる。
【0004】
具体的には、例えば、酸化スズ半導体式のメタン用のガス検知素子の場合、前記ガス検知素子に前記シリコーン成分が付着すると、アルコールに対する感度が高くなり、アルコールに対するメタン選択性が低下するという問題が生じる。また、接触燃焼式の炭化水素ガス用のガス検知素子の場合、前記ガス検知素子に前記シリコーン成分が付着すると、炭化水素ガス自体の検出感度が低下して前記炭化水素を検出できなくなるという問題が生じる。
【0005】
そこで、検出ガスを外部空間からガス検知素子へ導くガス誘導路を設けて、そのガス誘導路に形成される空間に、ガス吸着剤の粉末を充填保持して通気可能に設け、フィルタ層を形成することが考えられている。
また、前記ガス検知素子に悪影響を与える夾雑ガス一般についても、同様の対策が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなフィルタやフィルタ層は、それぞれ、水滴の除去、夾雑ガスの除去の単一の機能しか有さず、双方の機能を前記吸引式ガス検知器に付与しようとすると、それぞれを一つの前記吸引式ガス検知器のガス誘導路にともに介装させておく必要があり、前記吸引式ガス検知器の装置構成が複雑になるとともに、部材数の増加から取り扱い困難になるという問題点があった。
【0007】
また、これらのフィルタやフィルタ層の機能を併せ持ったフィルタの開発が望まれているが、現在のところこのようなフィルタは、知られていない現状にある。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記欠点に鑑み、取り扱い容易で、かつ、確実に夾雑ガスや水滴からガス検知素子を保護可能なフィルタを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明の吸引式ガス検知器用フィルタの特徴構成は、請求項1に記載のように、撥水性通気性材料から形成される撥水層と、通気性のガス吸着剤を層状に形成した吸着層とを設け、前記吸着層をリング状の支持部材の中に嵌合保持させた状態で、前記撥水層を前記支持部材に接着してある点にある。また、本発明の吸引式ガス検知器用フィルタの別の特徴構成は、請求項2に記載のように、撥水性通気性材料からなるシート状体の撥水層と、通気性を有する粉末状のガス吸着剤を加圧一体成形してあるシート状体の吸着層とを設け、前記撥水層と前記吸着層とを周縁部において接着してある点にある。さらに本発明の吸引式ガス検知器用フィルタの別の特徴構成は、請求項3に記載のように、撥水性通気性材料からなるシート状体の撥水層と、通気性を有する繊維状のガス吸着剤を布状に成形してあるシート状体の吸着層とを設け、前記撥水層と前記吸着層とを周縁部において接着してある点にある。
また、上記構成において、請求項4に記載のように、前記撥水層が、第一撥水層と第二撥水層とからなり、前記第一撥水層と前記第二撥水層との間に前記吸着層を配置してあるもの、請求項に記載のように、前記撥水性通気性材料として、多孔質フッ素樹脂から選ばれる少なくとも一種を主成分とするもの、請求項に記載のように、前記ガス吸着剤として、活性炭、シリカゲル、セラミック系フィルタ材から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものが好適に用いられる。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、撥水性通気性材料から形成される撥水層を設けてあれば、この撥水層を通過させられるガス中に含まれる水分は、ガス等に比べて前記撥水層ではじかれて通過しにくいために、容易に除去され、前記撥水層の下流側に流通させられる気体中に水滴が含まれない状態を作ることが出来、たとえば、ガス検知素子を設け、検出ガスを外部空間からガス検知素子へ導くガス誘導路を設けてある吸引式ガス検知器においては、前記ガス誘導路を形成する通気口に、前記外部空間から前記ガス検知素子を隔離して配置することにより、前記ガス検知素子に水滴が達してしまうのを効果的に防止することが出来る。
この構成に加えて、通気性のガス吸着剤を層状に形成した吸着層を設け設けてあるから、この吸着層を構成するガス吸着剤が、たとえば、シリコーンガス等の夾雑ガスを吸着除去する。従って、前記ガス検知素子が、そのガス検知素子を劣化させる原因となるような夾雑ガスに晒されるのを有効に防止することが出来る。尚、まず水滴を防ぎ、次に夾雑ガスを防ぐから前記吸着剤が水滴により機能しなくなるような不都合はおきにくい。
また、この吸着層はガス吸着剤を層状に形成したものであるから、粉粒体からなるガス吸着剤をそのまま夾雑ガスの吸着除去に供する場合に比べて、取り扱い容易であるとともに、取り扱い作業者によってその充填密度が異なってガス吸着容量が異なったり、寿命が一定しなかったりする不都合を回避しやすい。
さらに、これらの層をこの順に通気容易に一体成形してあるから、両層の機能を一つのフィルタとして併せ持たせることができ、全体として取り扱い容易となり、たとえば、ガス検知素子を設け、検出ガスを外部空間からガス検知素子へ導くガス誘導路を設けてある吸引式ガス検知器においては、前記前記ガス誘導路を形成する通気口に、2つのフィルタを設けるのに比べて簡単に両層を配設できるとともに、一方の層を形成すべきフィルタを配設し忘れるなどの人為的問題も発生しにくくなる。
【0011】
さらに、撥水性通気性材料から形成される第一撥水層と、通気性のガス吸着剤からなる吸着層とを設けて上述の構成を実現した上に、撥水性通気性材料から形成される第二撥水層を設けてあれば、上記構成に加えて、前記通気口に配設する際の方向性をなくすことが出来るので、より一層取り扱い容易にすることが出来るとともに、加えて、これらの層をこの順に通気容易に一体成形してあれば、より確実に各層の機能を発揮させられる構成を実現できる。
尚、前記撥水性通気性材料として、多孔質フッ素樹脂から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものを選択することにより、高い水滴除去機能を発揮させられ、前記ガス吸着剤として、活性炭、シリカゲル、セラミック系フィルタ材から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものを選択することにより、種々の妨害ガス(検知対象ガス中に含まれる被検知ガス以外のガスで、前記被検知ガス同様に出力を示すもの)を、高精度に吸着除去することが可能になる。
さらに、前記吸着層が、粉末状のガス吸着剤を加圧一体成形してあるシート状体であると、フィルタを成型する際の作業取り扱い性が高く、特に請求項1記載の構成のように、2層構造になっているような場合には、各層の部分的な剥離が生じたときに一体性を失い易くなるおそれがあるのに対して、一体性を失いにくくなるという利点がある。
前記吸着層が、繊維状のガス吸着剤を布状に成形してあるシート状体であると、前記フィルタの撓み変形等によっても、前記吸着層が崩れるなどの不都合が起きにくく、屈曲変形によく追従するので、取り扱い上より好ましい。
さらに、前記撥水層を形成するシート状体と、前記吸着層を形成するシート状体とが、周縁部において接着してあると、その接着部分は、前記撥水層と前記吸着層との間の通気を阻害する要因にならないために、好ましい。尚、このような接着には、樹脂による融着が好ましく、このようにすると、接着剤から発生する他のガスの悪影響を受けにくく、特にポリカーボネートを用いて融着する場合には、前記撥水性樹脂との融着性が高く、好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、ガス検知装置は、ガス検知素子Aを設け、被検知ガスを外部空間Bからガス検知素子Aへ導くガス誘導路を設け、前記外部空間Bから前記ガス検知素子Aを隔離する吸引式ガス検知器用フィルタ(以下ガスフィルタと称する)Cを、前記ガス誘導路を形成する通気口D1に設けてある。ガスフィルタCは、後述の吸着層C3を、第一、第二撥水層C1、C2との間に一体保持してあるガスフィルタを、通気口D1に設けられる空間に充填したものである。
【0013】
前記ガス検知素子Aは貴金属コイルに金属酸化物半導体を塗布焼結した、いわゆる熱線型半導体検知素子であり、円筒形状のハウジングDの内部に備えて構成してある。前記ガス検知素子Aには電源Eから電力が供給される。前記ガス検知素子Aは出力指示計Fと接続されており検知ガスの存在を定量的に検知することができる。前記ハウシングDの頂部部位には、外部空間BとハウジングDの内部との間でガスが流通可能なガス誘導路を形成する通気口D1を設けてある。そして、このハウジングD下部には検知対象ガスを吸引するためのポンプPが設けられている。ハウジングD自体は気密性の材料で構成されており、前記ガスフィルタCの、上面から下面に向かって、前記第一撥水層C1、吸着層C3、第二撥水層C2の順に外部空間Bから前記ハウジング内のガス検知素子Aの近傍へ検知対象ガスが流通する。
【0014】
本願発明に係るガス検知装置は、図2に示すように、ガス検知素子Aと、固定抵抗R1、R2、R3と、電源Eと、センサ出力電圧Vとからなるホィートストンブリッジ回路で構成されている。ガス検知素子Aに被検知ガスが接触することで、センサ出力電圧Vが変化し被検知ガスの存在を検知できるのである。
【0015】
前記ガスフィルタは図3に示すように、たとえば、多孔質フッ素樹脂から選ばれる少なくとも一種を主成分とする撥水性通気性材料から形成される第一撥水層C1と、たとえば、活性炭、シリカゲル、セラミック系フィルタ材から選ばれる少なくとも一種を主成分とする通気性の繊維状のガス吸着剤を布状に成形してある厚さ約5mmの吸着層C3と、前記第一撥水層と同様に形成される撥水性通気性材料から形成される第二撥水層C2を設け、各層を通気容易に一体成形してある。 各層の接着は、リング状のポリカーボネート製支持部材C4に嵌合保持させた状態で、その吸着層C3を支持体C4とともに、第一、第二撥水層C1、C2で被覆し、前記第一、第二撥水層C1、C2と、前記支持体C4とを溶融接着して行うことが出来る。
【0016】
尚、前記吸着層は、粉末状のガス吸着剤を加圧一体成形してあるシート状体であってもよく、布状、シート状、厚膜状、薄膜状等に形成される層状のものであればその形態はいずれのものであっても良い。
【0017】
〔別実施形態〕
以下に別実施形態を説明する。
前記ガスフィルタは、図3に示す上述の実施の形態において、撥水性通気性材料から形成される第一撥水層C1と、通気性のガス吸着剤を層状に形成してある吸着層C3とを設け、この順に通気容易に一体成形して、上述の実施形態における第二撥水層C2を省略することもできる(図4参照)。このように形成してあれば、前記フィルタに方向性があるために、配設方向に制約がでるが、より簡単な構成により同様の効果を奏することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係る吸引式ガス検知器を説明する図
【図2】ガス検知回路の説明図
【図3】本発明の吸引式ガス検知器用フィルタの斜視図
【図4】本発明の吸引式ガス検知器用フィルタの斜視図
【符号の説明】
A ガス検知素子
B 外部空間
C ガスフィルタ

Claims (6)

  1. 撥水性通気性材料から形成される撥水層と、通気性のガス吸着剤を層状に形成してある吸着層とを設け、前記吸着層をリング状の支持部材の中に嵌合保持させた状態で、前記撥水層を前記支持部材に接着してある吸引式ガス検知器用フィルタ。
  2. 撥水性通気性材料からなるシート状体の撥水層と、通気性を有する粉末状のガス吸着剤を加圧一体成形してあるシート状体の吸着層とを設け、前記撥水層と前記吸着層とを周縁部において接着してある吸引式ガス検知器用フィルタ。
  3. 撥水性通気性材料からなるシート状体の撥水層と、通気性を有する繊維状のガス吸着剤を布状に成形してあるシート状体の吸着層とを設け、前記撥水層と前記吸着層とを周縁部において接着してある吸引式ガス検知器用フィルタ。
  4. 前記撥水層が、第一撥水層と第二撥水層とからなり、前記第一撥水層と前記第二撥水層との間に前記吸着層を配置してある請求項1〜3のいずれかに記載の吸引式ガス検知器用フィルタ。
  5. 前記撥水性通気性材料が、多孔質フッ素樹脂を主成分とするものである請求項1〜4のいずれかに記載の吸引式ガス検知器用フィルタ。
  6. 前記ガス吸着剤が、活性炭、シリカゲル、セラミック系フィルタ材から選ばれる少なくとも一種を主成分とするものである請求項1〜のいずれかに記載の吸引式ガス検知器用フィルタ。
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