JP4407861B2 - 合成樹脂用防曇剤組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂などの合成樹脂に添加することによって優れた防曇性、透明性及び滑り性を付与できる合成樹脂用防曇剤組成物、及びそれを用いた防曇性、透明性及び滑り性に優れた包装用合成樹脂フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
合成樹脂は、その優れた性質のため、現在幅広い分野で使用されている。しかし、元来合成樹脂表面は疎水性であるため、成形された製品を使用するとき、温度や湿度等の条件によっては、吸着もしくは凝集した水分が微細な水滴として表面を覆い、曇りを生ずるため種々の不都合をきたしている。
【0003】
これらの欠点を防止する方法として、合成樹脂製品を成形する際に、防曇剤を配合する方法等があり、防曇剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル(特公昭43-8605号)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(特公昭39-21112号) などの多価アルコール高級脂肪酸エステルが用いられている。
【0004】
また、特開平6-107874号には(メタ)アクリル酸含量2〜20重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体またはその低イオン化アイオノマーに、ポリグリセリン脂肪酸エステルと、グリセリン脂肪酸エステル及び/又はポリエチレングリコール脂肪酸エステルとを特定割合で混合した防曇剤を配合した包装用フィルムが開示されている。
【0005】
しかし、これらの防曇剤は、防曇レベル(低温防曇性、初期防曇性)と防曇持続性の両立が困難であり、十分満足できる防曇性能が得られていない。また、防曇剤を配合したフィルムの滑り性が十分でなく、トレー等を機械包装する際にフィルムの破れやトレーの壊れ等の問題を有していた。
【0006】
本発明の課題は、優れた防曇性及び透明性を有し、しかも良好な滑り性を有する合成樹脂用防曇剤組成物及び包装用合成樹脂フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(A)成分及び(B)成分を重量比で、(A)/(B)=50/50〜95/5の割合で含有してなる合成樹脂用防曇剤組成物、及びこの防曇剤組成物を、ポリオレフィン系合成樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部配合してなる包装用合成樹脂フィルムである。
【0008】
(A)成分:平均縮合度1.5〜12のポリグリセリンと、炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸とのエステルで、融点が20℃以下であるポリグリセリン脂肪酸エステル
(B)成分:平均分子量200〜1000、アルキレン基の炭素数2〜3のポリアルキレングリコールと、炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸とのエステルで、融点が20℃以下であるポリアルキレングリコール脂肪酸エステル
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルは、良好な防曇性、透明性及び滑り性を得る観点から、融点が20℃以下であり、10℃以下が好ましい。またこのポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンの平均縮合度は1.5〜12であり、1.5〜4が好ましく、構成脂肪酸は、炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸である。炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等が挙げられ、これらの脂肪酸は1種以上を使用することができる。これらの構成脂肪酸は、全構成脂肪酸中の炭素数8〜12の脂肪酸の割合が95重量%以上であることが好ましく、特に、炭素数8の脂肪酸の割合が10〜40重量%、炭素数10の脂肪酸の割合が10〜70重量%、炭素数12の脂肪酸の割合が10〜70重量%である混合脂肪酸が好ましい。また、(A)成分のポリグリセリン脂肪酸エステルの下記式(1)で定義される平均エステル化率は25〜50%が好ましく、30〜40%が更に好ましい。これらの(A)成分は1種以上を使用することができる。
【0010】
【数1】
Figure 0004407861
【0011】
本発明の(B)成分のポリアルキレングリコール脂肪酸エステルは、良好な防曇性、透明性及び滑り性を得る観点から、融点が20℃以下であり、15℃以下が好ましい。またこのポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを構成するポリアルキレングリコールの平均分子量は200〜1000であり、300〜800が好ましく、アルキレン基の炭素数は2〜3であり、2が好ましい。また構成脂肪酸は炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸で、具体的には(A)成分で例示した脂肪酸が挙げられ、1種以上を使用することができる。また、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルの下記式(2)で定義される平均エステル化度は0.8〜1.8が好ましく、1が更に好ましい。これらの(B)成分は1種以上を使用することができる。
【0012】
【数2】
Figure 0004407861
【0013】
本発明の防曇剤組成物中の(A)成分と(B)成分の配合割合は、良好な防曇性、透明性及び滑り性を得る観点から、(A)/(B)(重量比)=50/50〜95/5であり、60/40〜90/10が好ましい。
【0014】
本発明の防曇剤組成物を使用することのできる合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系合成樹脂が挙げられる。
【0015】
本発明の合成樹脂フィルムは、上記のような本発明に係わる防曇剤組成物を、合成樹脂に添加して混合又は混練し、Tダイ法、プレス成形法等の方法で製膜することにより得られる。また、防曇剤組成物は予め合成樹脂の一部に混練して防曇剤マスターバッチを調製しておき、製膜時にこのマスターバッチを添加してフィルムを成形することもできる。
【0016】
本発明の防曇剤組成物の合成樹脂への添加量は、合成樹脂100重量部に対し、良好な防曇性、透明性及び滑り性を得る観点から0.1重量部以上が好ましく、又、防曇剤の過剰のブリードアウト、表面のべたつき、ブルーミング現象を防止する観点から5重量部以下が好ましく、特に0.5〜4重量部が好ましい。
【0017】
本発明の合成樹脂フィルムには、本発明の防曇剤組成物以外に、必要に応じて可塑剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤等を添加しても差し支えない。
【0018】
本発明の合成樹脂フィルムは、食品包装や、その他一般の包装の分野において好ましく用いられる。
【0019】
【実施例】
実施例1〜10及び比較例1〜5
表1に示す(A)成分及び(B)成分を、表1に示す割合で配合して本発明の防曇剤組成物を調製した。また、表1に示すポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルを、表1に示す割合で配合して比較の防曇剤組成物を調製した。
【0020】
尚、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、水酸化ナトリウムの存在下でのグリセリンの脱水縮合により得られたもの、あるいは市販のジグリセリン(鹿島ケミカル(株)製K−COL−II)を使用した。ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルを構成するポリアルキレングリコールは、和光純薬(株)製の試薬PEG200、PEG400、PEG600、PEG1000、PPG400等をブレンドして使用した。またこれらの脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、花王(株)製Lunacシリーズ、即ち、LunacOA(主成分:オレイン酸)、LunacO−LL(主成分:オレイン酸)、LunacL−50(ヤシ油系脂肪酸 主成分:ラウリン酸)、LunacL−55(ヤシ油系脂肪酸 主成分:ラウリン酸)、LunacS−40(牛脂系脂肪酸 主成分:ステアリン酸)を用いるか、あるいはLunac8−98(主成分:カプリル酸)、Lunac10−98(主成分:カプリン酸)、LunacL−98(主成分:ラウリン酸)の混合脂肪酸(C8/C10/C12混合脂肪酸)を使用した。またこれらの脂肪酸エステルは、多価アルコールと脂肪酸を、水酸化ナトリウムの存在下でエステル化反応を行うことにより得た。
【0021】
得られた防曇剤組成物を用い、下記方法によりフィルムを製造し、このフィルムについて、下記方法で防曇性、透明性及び滑り性を評価した。結果を表2に示す。
【0022】
<フィルムの成形法>
下記組成のうちまず、2軸混練機で5重量%の防曇剤マスターバッチを作成し、かかる後に下記組成になるようにマスターバッチとEVAのバージンペレットを混合したものを用い、Tダイ単軸押出機で40μmの厚さのフィルムを成形し、防曇性、透明性の試験用フィルムとした。また、滑り性に関しては、下記の配合でEVAと防曇剤組成物をロール混練した後に、プレス成形を行い、0.6mmの厚さのシートを成形し、試験用フィルムとした。
【0023】
組成:
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA) 100重量部
(日本ユニカー(株)製 NUC3753)
本発明の合成樹脂用防曇剤組成物 2重量部
<防曇性の評価法>
成形したフィルムを、25℃、65%RHの恒温調湿室に1週間保存した後、下記に示す方法で初期防曇性、低温防曇性及び防曇持続性を観察し、下記基準で評価した。
【0024】
・評価ランク
5:完全に透明で水滴が見えず、曇りがない
4:ほとんど透明であるが、大きな水滴が僅かに付着している
3:大きな水滴が付着するが、かなり透明感はある
2:全体的に大きな水滴が付着し、不透明である
1:細かい水滴が全体的に付着し、不透明である
なお例えば、評価点が「4−5」とは、4と5の間のレベルにあり、4に近いことを意味し、「5−4」とは、5と4の間のレベルにあり、5に近いことを意味する。
【0025】
・初期防曇性:
1000mlのビーカーにイオン交換水を800ml入れ、それを5℃の恒温室内で5℃に保った恒温槽に浸漬して24時間静置し、ビーカー内の水温を5℃にした。そのビーカーの口にフィルムを張り、30分後のフィルム内面の水滴の付着状態を観察し、下記の基準で評価した。
【0026】
◎:30分後に4を越えるレベルである
○:30分後に4のレベルである
△:30分後に3のレベルである
×:30分後に2のレベルである
××:30分後に1のレベルである
・低温防曇性
初期防曇性の評価と同様の室温及び水温で、同様にしてビーカーの口にフィルムを張った後、3時間後のフィルム内面の水滴の付着状態を観察し、上記評価ランクで評価した。
【0027】
・防曇持続性
初期防曇性の評価と同様の室温で、水温を20℃とする以外は同様にしてビーカーの口にフィルムを張った後、6時間後、24時間後及び48時間後のフィルム内面の水滴の付着状態を観察し、上記評価ランクで評価した。
【0028】
<透明性試験>
成形したフィルムを、25℃、65%RHの恒温調湿室に1週間保存した後、5℃の恒温室に静置し、フィルムの透明性、ブルーミングの有無を目視で観察し、下記基準で評価した。
【0029】
◎:透明性に優れる
○:ごく僅かにブルーミングが見られるが、透明性は良好
△:フィルムの白さが気になるレベルで問題あり
×:フィルムの白さが目立ち、透明性も損ねる
××:不透明である
<滑り性試験>
0.6mm厚に成形したシートを4cm幅にカットし、金属棒や市販の発泡ポリスチレントレーとの滑り性を評価した。金属棒は13mmφのものを使用し、テストシートと1/4周程度接触させ、テストシートの先端に113gのおもりを吊し、もう一方の端をクリップで糸とつなぎ、その糸を介して引張試験器と連結した。引張試験器で200mm/分の速度で引っ張り、ロードセルで検出される平均荷重から下記のランクで評価した。また、発泡ポリスチレントレーとの滑り性の場合、テストシートの一方の端をクリップで糸とつなぎ、その糸を介して引張試験器と連結したテストシートをトレーの上に置き、シートの上から、底面積4cm×4cm、質量200gのおもりを乗せて、トレーと水平方向に引っ張り試験器で200mm/分の速度で引っ張り、ロードセルで検出される平均荷重から下記のランクで評価した。
・滑り性ランク
◎:荷重150g未満
○:荷重150g以上200g未満
△:荷重200g以上300g未満
×:荷重300g以上400g未満
××:荷重400g以上
【0030】
【表1】
Figure 0004407861
【0031】
*1:C8/C10/C12混合脂肪酸(重量比)
*2:アルキレンオキサイドの炭素数
【0032】
【表2】
Figure 0004407861
【0033】
【発明の効果】
本発明の防曇剤組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等のポリオレフィン系合成樹脂に添加することによって、特に低温時の使用において防曇性、初期防曇性に優れ、かつ優れた防曇持続性を付与することができる。また低温下でも防曇剤のブルーミングを起こさず良好な透明性を有し、また合成樹脂フィルム表面に良好な滑り性を付与することができる。特に本発明の防曇剤を使用した包装用ポリオレフィン系樹脂フィルムは、低温防曇性、初期防曇性、防曇持続性及び透明性に優れ、また機械包装や原反からの繰り出しの際に良好な滑り性を有し、作業性にも優れる。

Claims (5)

  1. 下記(A)成分及び(B)成分を重量比で、(A)/(B)=50/50〜95/5の割合で含有してなる合成樹脂用防曇剤組成物(但し、アセチル化モノグリセライド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルの混合物を除く)
    (A)成分:平均縮合度1.5〜12のポリグリセリンと、炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸とのエステルで、融点が20℃以下であるポリグリセリン脂肪酸エステル
    (B)成分:平均分子量200〜1000、アルキレン基の炭素数2〜3のポリアルキレングリコールと、炭素数8〜22の飽和及び/又は不飽和脂肪酸とのエステルで、融点が20℃以下であるポリアルキレングリコール脂肪酸エステル
  2. ポリグリセリン脂肪酸エステルの平均エステル化率が25〜50%である請求項1記載の合成樹脂用防曇剤組成物。
  3. ポリグリセリン脂肪酸エステルが、平均縮合度1.5〜4のポリグリセリンと、炭素数8〜12の脂肪酸の割合が95重量%以上の脂肪酸とのエステルである、請求項1又は2記載の合成樹脂用防曇剤組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の防曇剤組成物を、ポリオレフィン系合成樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部配合してなる包装用合成樹脂フィルム。
  5. ポリオレフィン系合成樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂である請求項4記載の包装用合成樹脂フィルム。
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