JP4407567B2 - 鉄道車両用車輪 - Google Patents

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本発明は、鉄道車両用車輪、特に高速で走行する鉄道車両、あるいは重積載で走行する鉄道車両に用いられる車輪に関する。
鉄道車両用車輪は、車軸に連結するボス部と、レールに接するリム部およびそれらの間の板部とから構成され、リム部は、フランジ部および踏面部を備えているが、本発明は、リム部、特に、その踏面部の改良に関する。
鉄道輸送を高効率化するため、積載重量の増加、車両の高速化が進められている。これに伴い車輪の使用条件が厳しくなっている。
そのため、近年、レールとの転がり接触に起因して踏面部の転動疲労損傷が問題となってきている。特に車輪は、レールに比べて転がり接触による繰返し負荷を受ける頻度が高いため、受ける疲労損傷度も大きくなり、さらには摩耗量も大きくなる傾向にある。したがって、車輪に要求される耐転動疲労特性、あるいは耐摩耗性は非常に厳しいものとなる。
車輪の転動疲労損傷には2種類あり、1つはシェリング、1つはフラットはく離と呼ばれている。ここに、「シェリング」とは、転がり接触の繰返しにより表面に微小き裂が発生し、それが進展してはく離に至る損傷のことである。シェリングは、材料の硬さと相関があり、硬さを上げることで耐シェリング性が向上することが知られている。一方、「フラットはく離」とは、白色層と呼ばれる焼入れままマルテンサイト層を起点として生じるはく離のことである。
白色層は、車輪の滑走に伴い表面が急速加熱・急速冷却されたときに生成されるが、硬くて脆い焼入れままマルテンサイト組織であるため、早期にき裂が発生し、はく離に至りやすい。白色層からのき裂の発生を抑制するためには、白色層の硬さを下げる必要があるが、白色層すなわち焼入れままマルテンサイトの硬さはC量で一義的に決まるため、C量を低くすることが、耐フラットはく離性の向上に有効である。
ところで、従来から車輪の材料には、耐摩耗性に優れていることから高炭素鋼が使用され、踏面部はパーライト組織となるように熱処理されている。例えば、特許文献1には、耐摩耗性と耐シェリング性のバランスを考慮して、C量と踏面部およびフランジ部の硬さとを規定したパーライト組織を有する鉄道車両用車輪が開示されている。しかしながら、この車輪はパーライト組織であるためC量が高く、耐フラットはく離性については従来の車輪と同程度の性能しか得られない。
しかしながら、耐フラットはく離性を向上させるために、単純にC量を低くしただけでは、今度は、耐摩耗性や耐シェリング性が低下してしまう。
特開2000−345295号公報
このように従来技術の車輪では、耐シェリング性と耐フラットはく離性を同時に向上させることができないため、耐転動疲労損傷性が低下してしまい、近年の鉄道車両の高速化、重積載化に適切に対応できない。
ここに、本発明は、耐シェリング性と耐フラットはく離性とを同時に向上させながら、耐摩耗性についても従来技術の車輪と同等の性能を保つことで、鉄道車両の高速化、重積載化に対応できる寿命の長い鉄道車両用車輪を提供する。
上述したように、耐シェリング性は硬さと相関があり、硬さを上げることで耐シェリング性を向上させることが可能となる。一方、耐フラットはく離性はC量と相関があり、C量を低下させて白色層の硬さを下げることにより、耐フラットはく離性を向上させることが可能となる。
したがって、本発明者らは、耐シェリング性と耐フラットはく離性を同時に向上させるためには、従来より低いC量で材料の硬さを上げることが有効であることに着目した。
そこで、従来技術の車輪は高炭素鋼のパーライト組織であるが、本発明者らはベイナイトあるいは焼もどしマルテンサイト組織とすることで、パーライト組織より低いC量で硬さを上げることが可能となることを見出した。ただし、C量を低くし過ぎると、十分な硬さが得られない、耐摩耗性が著しく低下する、といった問題が発生し、反対に、C量の低下が十分でなければ耐フラットはく離性が向上しない。
本発明者らは、耐シェリング性および耐フラットはく離性を同時に向上させながらも耐摩耗性は従来技術の車輪と同等となるベイナイトあるいは焼もどしマルテンサイト組織を得ることを目的に、小型試験片による熱処理、摩耗試験、疲労試験を種々の条件で行い、以下のような新しい知見を得た。
(a)ベイナイトあるいは焼もどしマルテンサイト組織を用いることで、従来のパーライト組織よりも低いC量で硬さを上げることが可能となり、耐シェリング性を向上させることができる。
(b)パーライト組織よりC量を低くしたベイナイトあるいは焼もどしマルテンサイト組織では、白色層の硬さが下がるため、耐フラットはく離性が向上する。
(c)ベイナイトあるいは焼もどしマルテンサイト組織において、同じ硬さであれば、C量が多いほど耐摩耗性は向上する。
本発明は、かかる知見をもとになされたものである
本発明は、質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.40〜0.80%、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.20〜0.60%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Sol.Al:0.005〜0.10%、N:0.02%以下をそれぞれ含有し、残部が鉄および不純物の鋼組成を有する鋼から構成される、ボス部、板部およびリム部から構成され、該リム部がフランジ部および踏面部を備えた鉄道車両用車輪であって、前記踏面部がビッカース硬さ360以上のベイナイト組織、焼もどしマルテンサイト組織、あるいはベイナイトと焼もどしマルテンサイトの混合組織のいずれかからなることを特徴とする鉄道車両用車輪である。
本発明の好適態様では、上記鋼組成が、質量%で、(i)V:0.005〜0.30%、Nb:0.005〜0.30%、Ti:0.005〜0.30%の1種または2種以上、および/または(ii)Ni:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%の1種または2種をさらに含有してもよい。
本発明による鉄道車両用車輪は、耐シェリング性、耐フラットはく離性に優れ、且つ耐摩耗性は従来の車輪と同等の性能を有しているため、鉄道車両における高速化、重積載化に適応でき、長期間の使用が可能となる。
本発明にかかる車輪は、耐シェリング性、耐フラットはく離性に優れ、さらに耐摩耗性も従来技術の車輪と同等の性能を発揮できるため、従来技術の車輪からは予想外の長期間使用することが可能となる。
本発明について、その実施の形態に関連させて詳細に説明する。なお、以下では化学成分の含有量はすべて質量%で示す。
図1は、鉄道車両用車輪の1/2の略式斜視図を示している。本発明にかかる車輪10は、ボス部12、板部14およびリム部16から構成されており、板部14はボス部12とリム部16との間に設けられており、リム部16は、フランジ部18および踏面部20を備えており、リム部16は板部14からボス部12を介して図示しない車軸に連結している。ここに、踏面部20とは、踏面表面22から任意の深さの領域のことである。具体的には踏面から深さ数mm程度の領域である。剥離が発生するのは通常踏面から深さ数mmのこの領域であるためである。この領域を目標とする組織、硬さ、およびC含有量とする。剥離寿命をより確実に向上させるには後述のように少なくとも踏面から10mmの深さまでの組織を目標とする組織としておくことが望ましい。また、車輪の摩耗を考慮すれば、踏面から深さ40mmの位置まで目標とする組織としておくことがさらに望ましい。
本発明の車輪は、踏面部のビッカース硬さが360以上で組織がベイナイト、焼もどしマルテンサイト、あるいはベイナイトと焼もどしマルテンサイトの混合のいずれかからなり、Cの含有量を0.35〜0.55%としている。
図2は、後述する実施例1の本発明例1〜3、比較例3についてビッカース硬さとシェリングによる寿命との関係をプロットして得たグラフである。本発明においても表面硬さと耐シェリング性とは相関することが分かる。
ビッカース硬さが360以上のベイナイト、焼もどしマルテンサイト、あるいはベイナイトと焼もどしマルテンサイトの混合組織としたのは、図2に示すように、ビッカース硬さ360以上のときシェリングによる寿命が大きく向上するためである。
さらに十分な耐シェリング性を確保するためには、ビッカース硬さを390以上とすることが好ましい。ただし、あまり硬さを上げすぎると靱性が低下したり、加工が困難となることから、ビッカース硬さを550以下とするのが好ましい。
また組織については、より靱性に優れている、あるいは焼もどし脆性が起こらないことから均一なベイナイトにすることが好ましい。なお、ここでの焼もどしマルテンサイトとは、水冷や油冷によって焼入れたままのマルテンサイトを200〜700℃程度の範囲で焼もどししたものすべてを総称している。
さらに上記の硬さと組織を確保する領域は、摩耗することを考えて踏面表面22から深さ40mmの位置までとするのが最も好ましく、少なくとも深さ10mm位置までの領域について確保することが好ましい。
Cの含有量を0.35〜0.55%としたのは、Cは一定の硬さを得るための必須元素であるとともに、耐摩耗性に大きく影響する元素であるが、0.35%より少ないと十分な耐摩耗性が得られず、0.55%より多いと白色層の硬さを十分に下げることができず、耐フラットはく離性が向上しない。したがって、本発明では、踏面部でのC含有量を0.35〜0.55%と規定する。
図3は、後述する実施例3の結果を示す表9のデータに基づいて、摩耗試験により得られた摩耗量とC量の関係を示したものである。これよりCが0.35%以上で従来車輪と同等の耐摩耗性が得られることが分かる。さらに十分な耐摩耗性を得るには、Cを0.40%以上とすることが好ましい。
このようにC量が多いほど耐摩耗性が向上する理由は、C量が多いほどマトリクス中に分散する炭化物の量が多くなり、摩耗し難くなるためである。したがって、踏面部の任意の断面における炭化物の面積率が多いほど、1つ1つの炭化物の大きさが大きいほど耐摩耗性は向上する。ただし、炭化物の面積率が多すぎたり、1つ1つの炭化物が大きすぎたりすると、靱性が低下してしまう。このため、炭化物の面積率は踏面部において、3.0〜20.0%であることが、1つ1つの炭化物の長さは踏面部において0.1〜3.0μmであることが好ましい。
図4は、後述する実施例2の結果を示す表6のデータに基づいて、耐フラットはく離性について、白色層のはく離寿命とC量の関係を示したものである。Cが0.55%より多いと白色層のはく離寿命が著しく低下することが分かる。また十分な耐フラットはく離性を確保するためには、Cを0.50%以下とすることが好ましい。
本発明においてフランジ部の組織は特に制限されず、例えば前述の踏面部の組織と同じであっても、あるいは従来のようにパーライト組織であってもよいが、製造の容易さからは踏面部と同じ組織とすることが好ましい。
さらに本発明の車輪では、その特性を十分に発揮させるために、C以外の化学成分について以下のように限定することが好ましい。
Si:0.10〜0.60%
Siは溶鋼の脱酸元素であり、0.10%より少ないと脱酸不足となり、ブローホールなどの欠陥を生じる。一方、0.60%より多いと製造時の表面疵、靱性の低下などの問題が生じる。またその特性を十分に活かすためには、0.20〜0.40%とすることが好ましい。
Mn:0.40〜0.80%
Mnは焼入れ性を高め硬さを上昇させる元素である。Mnが0.40%より少ないと硬さの上昇が十分ではなく、0.80%より多いと被削性が低下して車輪の加工が困難となる。さらにその効果を十分に発揮するには、0.50%〜0.70%とするのが好ましい。
Cr:0.50〜1.50%
Crは焼入れ性を高めるとともに、マトリクス中の炭化物を微細に分散させ強度を確保する重要な元素である。Crが0.50%より少ないと焼入れ性が不十分となり、フェライトやパーライトの混合した組織となってしまう。Crが1.50%より多いと炭化物の粗大化による靱性の低下が生じる。さらに、より安定して靱性の高いベイナイト・焼もどしマルテンサイト組織を得るためには、0.70〜1.20%とするのが好ましい。
Mo:0.20〜0.60%
Moは焼入れ性を高め、ベイナイト、焼もどしマルテンサイト組織を安定化させる元素である。Moが0.20%より少ないとその効果が十分ではなく、好ましくは0.30%以上とするのが良い.またMoは高価な合金であり、0.60%より多いとコスト高となる。
P:0.03%以下
Pは靱性を低下させることから、0.03%以下に限定し、好ましくは0.01%以下とするのが良い。
S:0.03%以下
Sは主に介在物として鋼中に存在するが、0.03%を超えると介在物量が増加し、靱性が低下するため、0.03%以下に限定し、さらに0.01%以下とするのがより好ましい。
Sol.Al:0.005〜0.10%
Al成分は脱酸剤として作用し、靱性向上効果を有する材料であるが、0.005%未満ではその効果が十分ではなく、0.10%を超えて含有してもその効果が飽和し、非金属介在物の増加により逆に靱性が低下する。好ましくは0.02%〜0.07%とするのが良い。
N:0.02%以下
NはAlと結合してAlNを形成し、結晶粒を微細化する作用を有しているため、必要に応じて含有させることが好ましい。しかし、その作用は0.02%で飽和するので、上限を0.02%とすることが好ましい。なお、より好ましい含有量は、0.004〜0.015%である。
V:0.005〜0.30%、Nb:0.005〜0.30%、Ti:0.005〜0.30%
これらの元素は少なくとも1種を添加するのが望ましい。
V、Nb、Tiはマトリクス中のCと結び付いて圧延後に析出するため、析出強化により硬さを上げることができる。また炭化物を形成しているため、車輪の滑走による急速加熱時にCの固溶量を減少させ、白色層の硬さを下げて耐フラットはく離性を向上させることができる。それぞれの含有量が上記範囲より少ないと効果が十分ではなく、多いとその効果が飽和するとともに炭化物の粗大化による靱性の低下を招く可能性がある。好ましくは、V、Nb、Tiのいずれも0.05〜0.25%とするのが良い。
Ni:0.05〜1.0%、Cu:0.05〜1.0%
これらの元素は少なくとも1種を添加するのが望ましい。
Ni、Cuはいずれもマトリックス中に固溶して焼入れ性を向上させ、硬さを上昇させることができる元素である。上記範囲より少ないとその効果が十分ではなく、多いと製造時の表面疵が発生しやすくなる。好ましくはNi、Cuのいずれも0.20〜0.60%とするのが良い。
本発明にかかる車輪を製造する際は、清浄度に優れていること、効率良く製造できることからRH法などの真空脱ガス処理や連続鋳造を適用することが好ましく、また強度や靱性に優れていることから鍛造、圧延して成型することが好ましい。
そしてその後、踏面部を熱処理して所望の組織とするのが好ましい。熱処理の方法としては、例えば、冷却水による踏面焼入れを適用することができる。
図5に、CCT図と焼入れ時の連続冷却曲線を模式的に示す。ここで、Bはベイナイト、Mはマルテンサイト、Fはフェライトを表す。
冷却曲線Iは、冷却水によりベイナイト変態領域まで焼入れし、Ms点直上で冷却水を止め、その後、室温まで放冷することで、均一なベイナイト組織を得ることができる熱処理である。場合によっては、この後、一定温度で焼もどしを行い、硬さを調整したり、靱性を向上させたりすることが可能である。
冷却曲線IIは、冷却曲線Iより冷却水の噴射量を大きくして、速い冷却速度で室温まで焼入れているため、ベイナイト変態領域を通過せずに完全なマルテンサイト組織となる。これを必要な硬さが得られるように焼もどしを行うと、均一な焼もどしマルテンサイト組織が得られる。
冷却曲線IIIは、冷却速度が曲線Iの場合と同じであるが、Ms点以下で冷却水を止めているため、一部がマルテンサイト組織となっている。これが復熱されると焼戻しと同じ温度履歴を受けたことになり、ベイナイトと焼もどしマルテンサイトの混合組織が得られる。室温まで放冷した後は、冷却曲線Iと同じように、一定温度での焼もどしにより、硬さの調整、靱性の向上が可能である。
一方、上記のような連続冷却ではなく、等温変態によってベイナイト組織を得ることも可能である。
図6に、TTT図と等温変態曲線を模式的に示す。ここで、Bはベイナイト、Mはマルテンサイト、Fはフェライト、Pはパーライトをそれぞれ表す。
変態曲線IVは、ベイナイト変態する温度域で変態が完了するまで保持されているので、均一なベイナイト組織を得ることができる。また、変態曲線IVより若干高い温度で保持すると、硬さがやや低下したベイナイト組織が得られ、若干低い温度で保持すると、硬さがやや上昇したベイナイト組織が得られる。
このような等温変態を行うには、車輪が1枚以上入る塩浴炉を用意し、オーステナイト化温度領域まで加熱した車輪を等温変態させる温度に加熱した塩浴炉に漬け、変態が完了するまでそのまま保持する、という方法がある。
このように熱処理によって得られる組織は一般には踏面部とフランジ部とは同一組織となるが、必要により例えば踏面部だけの局部熱処理を行い、踏面部だけを目的の組織とするようにし、フランジ部は従来のようにパーライト組織とするようにしてもよい。
次に、実施例によって本発明の作用効果をさらに具体的に説明する。
表1、表2に示す鋼組成および組織の車輪を鍛造・圧延により成型して製造した。熱処理は連続冷却(冷却曲線IまたはIII)により行った。得られた車輪から踏面を含む供試材を切り出した。耐シェリング性の評価に用いた供試材の化学成分、組織、ビッカース硬さを表1、2にそれぞれ示す。
Figure 0004407567
Figure 0004407567
耐シェリング性の評価は、2円筒型の転動疲労試験により行った。試験は接触面圧1300MPa、すべり率0.5%の条件で水潤滑下で実施した。試験での耐シェリング性は試験片の表面にはく離が発生したときの寿命で評価した。表3に各材料のシェリングによる寿命を示す。
Figure 0004407567
表3より、本発明例はいずれもビッカース硬さが360以上のベイナイト、焼もどしマルテンサイト、あるいはベイナイトと焼もどしマルテンサイトの混合組織であるため、従来の車輪である比較例1、2に比べシェリングによる寿命が長くなっていることが分かる。一方、ビッカース硬さが360より低い比較例3は、本発明例に比べシェリングによる寿命がかなり短いことが分かる。
実施例1と同様にして供試材を得た。但し、熱処理は連続冷却(冷却曲線IまたはII)により行った。
表4、表5に、耐フラットはく離性の評価に用いた供試材の鋼組成、組織、母材のビッカース硬さをそれぞれ示す。
Figure 0004407567
Figure 0004407567
耐フラットはく離性は、予めYAGレーザ焼入れにより白色層を再現した試験片を用いて、2円筒型の転動疲労試験を実施して評価した。試験は接触面圧1300MPa、すべり率0.3%、無潤滑下で実施した。試験での耐フラットはく離性は、白色層にき裂が発生したときの寿命をはく離寿命として評価した。表6に供試材の白色層のはく離寿命と白色層の硬さを示す。
Figure 0004407567
表6より、C含有量を0.55%以下とした本発明例は、C含有量が0.7%の比較例に比べ白色層の硬さが低く、はく離寿命が大きく向上していることが分かる。
実施例1と同様にして供試材を得た。
表7、表8に、耐摩耗性の評価に用いた供試材の化学成分、組織、ビッカース硬さをそれぞれ示す。
Figure 0004407567
Figure 0004407567
耐摩耗性は、西原式摩耗試験により評価した。西原式摩耗試験は、2円筒型の転がり接触式で実施する試験であり、本試験では接触面圧2200MPa、すべり率3.0%、無潤滑化で実施した。表9に本発明例と比較例の結果を示す。摩耗量は繰返し数5×105回後の重量減少分で表している。
Figure 0004407567
表9より、本発明例はいずれもCが0.35%以上でビッカース硬さが360以上であるため、従来技術の車輪である比較例1、4とほぼ同等の摩耗量となっていることが分かる。
図1は、車輪の1/2を示す模式的斜視図である。 図2は、シェリングによるはく離寿命と硬さの関係を表すグラフである。 図3は、摩耗量とC量の関係を表すグラフである。 図4は、白色層のはく離寿命とC量の関係を表すグラフである。 図5は、本発明による車輪のCCT図と熱処理時の連続冷却曲線を模式的に表した説明図である。 図6は、本発明による車輪のTTT図と熱処理時の等温変態曲線を模式的に表した説明図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.35〜0.55%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.40〜0.80%、Cr:0.50〜1.50%、Mo:0.20〜0.60%、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Sol.Al:0.005〜0.10%、N:0.02%以下をそれぞれ含有し、残部が鉄および不純物の鋼組成を有する鋼から構成される、ボス部、板部およびリム部から構成され、該リム部がフランジ部および踏面部を備えた鉄道車両用車輪であって、前記踏面部がビッカース硬さ360以上のベイナイト組織、焼もどしマルテンサイト組織、あるいはベイナイトと焼もどしマルテンサイトの混合組織のいずれかからなることを特徴とする鉄道車両用車輪。
  2. 前記鋼組成が、質量%で、V:0.005〜0.30、Nb:0.005〜0.30%、Ti:0.005〜0.30の1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用車輪。
  3. 前記鋼組成が、質量%で、Ni:0.05〜1.0、Cu:0.05〜1.0の1種または2種をさらに含有することを特徴とする請求項1または2記載の鉄道車両用車輪。
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