JP4407421B2 - 光学素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光ピックアップ装置用の光学素子及び光ピックアップ装置に関する。
近年、光ピックアップ装置においては、複数種類の光ディスク(例えばDVD(デジタルバーサタイルディスク)とCD(コンパクトディスク))間での互換性が要求されている。
また、光ピックアップ装置用のレーザ光源の短波長化が進み、例えば、青紫色半導体レーザや、第2高調波発生を利用して赤外半導体レーザの波長変換を行う青紫色SHGレーザ等の波長405nmのレーザ光源が実用化されつつある。
これら青紫色レーザ光源を使用すると、DVD(デジタルバーサタイルディスク)と同じ開口数(NA)の対物レンズを使用する場合で、直径12cmの光ディスクに対して、15〜20GBの情報の記録が可能となり、対物レンズのNAを0.85にまで高めた場合には、直径12cmの光ディスクに対して、23〜25GBの情報の記録が可能となる。以下、本明細書では、青紫色レーザ光源を使用する光ディスク及び光磁気ディスクを総称して「高密度光ディスク」という。
そして、記録密度が互いに異なる高密度光ディスク、DVD及びCDの3種類、あるいは任意の2種類の光ディスク間で互換性を達成するために用いる光学素子として、特許文献1には、レンズ表面に複数段の階段形状を有する鋸歯形状の凹凸を同心円状に形成してなるホログラム光学素子を用い、ホログラム光学素子を通過する波長が異なる2つの光ビームのうち、一方の光ビームには位相差を付与することにより回折させ、他方の光ビームには実質的に位相差を与えず通過させるといういわゆる波長選択性を利用して、2種類の光ディスク間での互換性を達成する技術が開示されている。
また、特許文献2及び3には、波長選択性を得るための上記ホログラム構造とは目的が異なり、従来よりレンズの加工性の観点から用いられている、回折構造としての鋸歯形状を階段形状で近似させる技術、いわゆるキノフォームの階段近似に関する技術に関して、階段形状の幅等を工夫することで回折効率を高める技術が開示されている。
また、特許文献4には、回折面部の幅を小さくした幅狭部と幅を大きくした幅広部とからなり、幅狭部の階段格子の段数を幅広部の階段格子の段数より少なくした回折光学格子を設けた、波長選択性を有するフレネルレンズに関する技術が開示されている。
特開平9−306018号公報 特開平5−150107号公報 特開平7−113906号公報 特開2004−77722号公報
上述のように、記録密度が互いに異なる複数種類の光ディスク間で互換性を達成するためには、特許文献1のような波長選択性を得られるような回折構造を光学素子に設けることが好ましいことから、このような回折構造の加工性を高め、また、光束の回折効率を高めるための技術が求められているが、上記特許文献2及び3で想定されている回折構造は波長選択性も持つものではないため、特許文献2及び3に開示された技術をそのままは長選択性を持つ回折構造の設計手法として用いることは困難である。
また、上記特許文献1には、波長選択性を持つ回折構造の加工性や回折効率を高めるための技術は開示されていない。
また、特許文献4に開示された技術は、光軸から離れた加工が困難な領域に形成される幅狭部の形状に関するものであるため、当該領域における回折効率の低下は防止できるものの、光軸に近い領域における回折効率の向上については考慮されておらず、レンズ全体での光量確保は難しいという問題がある。
本発明の課題は、上述の問題を考慮したものであり、少なくとも2種類の光ディスクに対する情報の再生及び/又は記録に用いられる光学素子であって、加工性及び回折効率を向上させることが可能な光学素子及び光ピックアップ装置を提供することである。
本明細書においては、情報の記録/再生用の光源として、青紫色半導体レーザや青紫色SHGレーザを使用する光ディスクを総称して「高密度光ディスク」といい、NA0.85の対物光学系により情報の記録/再生を行い、保護層の厚さが0.1mm程度である規格の光ディスク(例えば、ブルーレイディスク)の他に、NA0.65乃至0.67の対物光学系により情報の記録/再生を行い、保護層の厚さが0.6mm程度である規格の光ディスク(例えば、HD DVD)も含むものとする。また、このような保護層をその情報記録面上に有する光ディスクの他に、情報記録面上に数〜数十nm程度の厚さの保護膜を有する光ディスクや、保護層或いは保護膜の厚さが0の光ディスクも含むものとする。また、本明細書においては、高密度光ディスクには、情報の記録/再生用の光源として、青紫色半導体レーザや青紫色SHGレーザを使用する光磁気ディスクも含まれるものとする。
本明細書においては、DVDとは、DVD−ROM、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等のDVD系列の光ディスクの総称であり、CDとは、CD−ROM、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等のCD系列の光ディスクの総称である。
以上の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、光ピックアップ装置に使用される光学素子であって、
前記光ピックアップ装置使用時に、少なくとも波長λ1の第1光束と波長λ2の第2光束とが入射する回折構造を有し、
前記回折構造は、光軸を中心とする複数の輪帯より形成されると共に光軸を含む平面における断面形状が階段形状である回折周期が、光軸を中心とした輪帯状に複数形成され、
前記回折構造の1つの回折周期内に存在する複数の前記輪帯のうち、通過する前記光束に対して最も大きい光路長を付与する輪帯以外の各輪帯の光軸に垂直な方向の幅が、2種類以上の異なる幅で構成されている回折周期Aが存在し、
前記回折構造の1つの回折周期内に存在する前記輪帯の数が、前記回折周期Aと異なる回折周期を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、十分な光量の確保と収差補正性能を有した互換用光ピックアップ装置を得られる。
また、回折構造の1つの回折周期内に存在する輪帯の数を、回折周期に応じて異なるものとするので、全ての回折周期において輪帯数を同一とする場合と比較して、輪帯幅を選択することができ、加工上の制約から製作不可であった機能を有する光学素子も加工可能となる。
請求項記載の発明は、請求項に記載の光学素子において、
1つの前記回折周期内において、通過する前記光束に対して最も大きい光路長を付与する輪帯の光軸に垂直な方向の幅をΔL1、他の輪帯の光軸に垂直な方向の幅をΔL´と規
定した場合に、ΔL1<ΔL´を満たすような輪帯が存在することを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の光学素子において、
前記階段形状が光軸に対して同じ向きである前記回折周期が複数形成されたことを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記回折周期A内に存在する各輪帯の光軸に垂直な方向の幅を、光軸に近い側より順にT1、T2、T3・・・Tiと規定した場合に、T1>T2>T3>・・・>Tiであることを特徴とする。
但し、iは自然数。
請求項記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記回折周期Aは、前記回折構造の複数の回折周期のうち最も光軸に近いものであることを特徴とする。
回折構造は、この構造により透過波面に付加される光路差で表されるものであり、この光路差は、h(mm)を光軸に垂直な方向の高さ、C2iを光路差関数係数とするとき、光路差関数φ=ΣC2i2iで表される(iは自然数)。また、位相関数p=2π/λ×φの関係が成立する。
そして、回折構造を構成する複数の回折周期のうち光軸に近い回折周期については、上記位相関数pはp≒C22、つまりhの2次関数で近似することができる。
図4中の線L1は、p≒C22とした場合の位相関数を表すグラフであり、線L2は光軸に近い回折周期(輪帯数5つ)によって光束に付与される位相差を表すものである。グラフの縦軸は位相差、横軸はhを表しており、符号Tは輪帯の光軸垂直方向の幅、符号Pはピッチを表している。
図4に示すように、各輪帯で付与される実際の位相差が位相関数と一致している場合には、この回折構造を通過する光束の回折効率を高くすることができる。
請求項7のように、回折周期A内に存在する各輪帯の光軸に垂直な方向の幅を、光軸に近い側より順にT1、T2、T3・・・Tiと規定した場合に、T1>T2>T3>・・・>Tiとしたり、あるいは、請求項8のように、回折周期A内に存在する各輪帯の光軸に垂直な方向の幅Tiが各輪帯の光軸からの高さをhとして、Ti∝[d(ΣC2i2i)/dh]-1とすることにより、近軸に近い回折周期において、各輪帯の幅がhに反比例して小さくなり、各輪帯の幅を全て等しく設定する場合と比較して回折効率を高めることができる。
また、通常、最も近軸に近い回折周期の幅が、他の回折周期と比較して大きく、この回折周期を通過する光が全体の光に対して寄与度が大きい。そこで、請求項9のように、回折周期Aを複数の回折周期のうち最も光軸に近い回折周期とすることで、各輪帯の幅の分布を最もT∝1/hに近づけることが可能となり、実際に付与される位相差と位相関数とのずれを小さくすることができる。
請求項記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子において、
620nm≦λ1≦690nm
750nm≦λ2≦820nm
を満たことを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項に記載の光学素子において、
前記光ピックアップ装置使用時に、前記回折構造には更に波長λ3の第3光束が入射し、
620nm≦λ3≦690nm
を満たすことを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記光学素子が、d線でのアッベ数が40〜60の範囲内の材料から形成されていることを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記回折構造において、波長λ1の光束の入射方向に対する、隣り合う輪帯の光学面を継ぐ面角度αは、
0°≦α≦10°
を満たすことを特徴とする。
回折効率は回折構造に入射する光束の入射角に依存する。隣合う輪帯の光学面を継ぐ面は光線の入射方向に平行であることが望ましい。しかしながら、回折構造に収束光や発散光が入射した場合、光軸からの高さに従って入射方向が異なり、全ての輪帯において平行であるためには輪帯毎に輪帯の光学面を継ぐ面の角度を変える必要がある。そこで、加工性の観点からは全輪帯において輪帯の光学面を継ぐ面の角度が一定であっても回折効率が低下しない形状として、請求項27記載の発明のように、波長λ1の光束の入射方向に対する、隣合う輪帯の光学面を継ぐ面角度α(図3(b)を参照)を上記範囲内とすることが望ましい。
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記光学素子が対物レンズであることを特徴とする。
請求項11記載の発明は、請求項10に記載の光学素子において、
前記対物レンズに入射する光束のうち最も波長が短い光束に対する焦点距離をf2としたとき、
0.8mm≦f2≦4.0mm
を満たすことを特徴とする。
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記回折構造が、前記光学素子の光源側の光学面に形成されることを特徴とする。
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学素子において、
前記回折構造の各回折周期内において、隣り合う2つの輪帯の光学面同士の光軸方向の深さdが以下の(1)式で与えられることを特徴とする。
0.96×m1×λ1/(n1−1)≦d≦1.04×m1×λ1/(n1−1) (1)
ただし、m1は正の整数であり、n1は、波長λ1の第1光束に対する光学素子の屈折率を表す。
請求項14記載の発明は、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学素子を備えることを特徴とする。
本発明によれば、少なくとも2種類の光ディスクに対する情報の再生及び/又は記録に用いられる光学素子であって、回折構造が波長選択性を持ち、加工性及び回折効率を向上させることが可能な光学素子及び光ピックアップ装置を得られる。
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
図1は、AOD(第1光ディスク)とDVD(第2光ディスク)とCD(第3光ディスク)との何れに対しても適切に情報の記録/再生を行える光ピックアップ装置PUの構成を概略的に示す図である。AODの光学的仕様は、波長λ1=407nm、保護層(保護基板)PL1の厚さt1=0.6mm、開口数NA1=0.65であり、DVDの光学的仕様は、波長λ2=655nm、保護層PL2の厚さt2=0.6mm、開口数NA2=0.65であり、CDの光学的仕様は、波長λ3=785nm、保護層PL3の厚さt3=1.2mm、開口数NA3=0.51である。
但し、波長、保護層の厚さ、及び開口数の組合せはこれに限られない。また、第1光ディスクとして、保護層PL1の厚さt1が0.1mm程度の高密度光ディスクを用いても良い。
光ピックアップ装置PUは、AODに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され407nmのレーザ光束(第1光束)を射出する青紫色半導体レーザLD1(第1光源)、第1光束用の光検出器PD1、DVDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され655nmのレーザ光束(第2光束)を射出する赤色半導体レーザLD2(第2光源)とCDに対して情報の記録/再生を行う場合に発光され785nmのレーザ光束(第3光束)を射出する赤外半導体レーザLD3(第3光源)とが一体化された光源ユニットLU23、第2光束及び第3光束共通の光検出器PD23、第1光束のみが通過する第1コリメータL1、第2光束及び第3光束が通過する第2コリメータL2(本発明の光学素子)、各レーザ光束を情報記録面RL1、RL2、RL3上に集光させる機能を有する対物光学素子OBJ、第1ビームスプリッターBS1、第2ビームスプリッターBS2、第3ビームスプリッターBS3、絞りSTO、センサーレンズSEN1及びSEN2等から構成されている。
なお、詳しい説明は後述するが、第2コリメータL2の光学面上には、第2光束と第3光束のうち、第2光束には実質的に位相差を付与せず、第3光束には実質的に位相差を付与することで回折作用を与える回折構造が形成されている。また、対物光学素子OBJの光学面には回折構造が形成されておらず、光学面が屈折面で構成されている。
光ピックアップ装置PUにおいて、AODに対して情報の記録/再生を行う場合には、図1において実線でその光線経路を描いたように、まず、青紫色半導体レーザLD1を発光させる。青紫色半導体レーザLD1から射出された発散光束は、第1ビームスプリッターBS1を通過し、第1コリメータL1に至る。
そして、第1コリメータL1を透過する際に第1光束は平行光束に変換され、第2ビームスプリッターBS2を通過して、対物光学素子OBJに至る。
そして、対物光学素子OBJの屈折面で屈折作用を与え、第1光束をAODの保護層PL1を介して情報記録面RL1上に集光させることでスポットを形成する。
そして、対物光学素子OBJは、その周辺に配置された2軸アクチュエータAC(図示せず)によってフォーカシングやトラッキングを行う。情報記録面RL1で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物光学素子OBJ、第2ビームスプリッターBS2、第1コリメータL1を通過し、第1ビームスプリッターBS1で分岐され、センサーレンズSEN1により非点収差が与えられて、光検出器PD1の受光面上に収束する。そして、光検出器PD1の出力信号を用いてAODに記録された情報を読み取ることができる。
また、DVDに対して情報の記録/再生を行う場合には、図1において一点鎖線でその光線経路を描いたように、まず、赤色半導体レーザLD2を発光させる。赤色半導体レーザLD2から射出された発散光束は、第3ビームスプリッターBS3を通過し、第2コリメータL2に至る。
そして、第2コリメータL2を透過する際に平行光束に変換され、第2ビームスプリッターBS2で反射して、対物光学素子OBJに至る。
そして、対物光学素子OBJの屈折面で屈折作用を与え、第2光束をDVDの保護層PL2を介して情報記録面RL2上に集光させることでスポットを形成する。
そして、対物光学素子OBJは、その周辺に配置された2軸アクチュエータACによってフォーカシングやトラッキングを行う。情報記録面RL2で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物光学素子OBJ、第2ビームスプリッターBS2、第2コリメータL2を通過し、第3ビームスプリッターBS3で分岐され、光検出器PD23の受光面上に収束する。そして、光検出器PD23の出力信号を用いてDVDに記録された情報を読み取ることができる。
また、CDに対して情報の記録/再生を行う場合には、図1において点線でその光線経路を描いたように、まず、赤外半導体レーザLD3を発光させる。赤外半導体レーザLD3から射出された発散光束は、第3ビームスプリッターBS3を通過して、第2コリメータL2に至る。
そして、第2コリメータL2を透過する際に回折構造から回折作用を受けることにより生じる第3光束の所定次数の回折光は、入射時点の発散角度よりも小さい発散角度に変換され、第2コリメータL2から出射される。
第2コリメータL2から発散光として出射された第3光束は、第2ビームスプリッターBS2で反射して、対物光学素子OBJに至る。
そして、対物光学素子OBJの屈折面で屈折作用を与え、第3光束をCDの保護層PL3を介して情報記録面RL3上に集光させることでスポットを形成する。この第3集光スポットは、色収差が情報の再生及び又は記録に必要な範囲内に抑えられている。
そして、対物光学素子OBJは、その周辺に配置された2軸アクチュエータACによってフォーカシングやトラッキングを行う。情報記録面RL3で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物光学素子OBJ、第2ビームスプリッターBS2、第2コリメータL2を通過し、第3ビームスプリッターBS3で分岐され、光検出器PD23の受光面上に収束する。そして、光検出器PD23の出力信号を用いてCDに記録された情報を読み取ることができる。
次に、第2コリメータL2の入射面S1に形成する回折構造(以下、「回折構造HOE」という)について説明する。
回折構造HOEは、図2に示すように、光軸を中心とする同心円状の輪帯Rを各回折周期(G1〜G6)中に複数配置した構成となっており、光軸を含む平面における断面が階段形状となっている。
各回折周期G1〜G6内において、隣合う2つの輪帯Rの光学面F同士の光軸方向の深さd(回折周期G1を表す図3(a)の拡大図を参照)は以下の(1)式で与えられる。
0.96×m2×λ2/(n2−1)≦d≦1.04×m2×λ2/(n2−1)・(1)
m2:正の整数、n2:波長λ2の第2光束に対する光学素子の屈折率
但し、λ2は赤色半導体レーザLD2から射出されるレーザ光束の波長をミクロン単位で表したものである(ここでは、λ2=0.655μm)。
また、1つの回折周期内に存在する輪帯Rの数は回折周期に応じて異なるようになっている。換言すれば、1つの回折周期内に存在する複数の輪帯Rのうち、通過する第2光束に対して最も大きい光路長を付与する輪帯を第1輪帯R1(図3(a)を参照)としたとき、隣合う2つの回折周期(例えば、G1とG2)内に存在する各第1輪帯同士の間に存在する輪帯Rの数が、回折周期に応じて異なっている(例えば、図2において回折周期G1とG2では各第1輪帯同士の間に存在する輪帯の数は4であり、回折周期G2とG3では各第1輪帯同士の間に存在する輪帯の数は5である。)。
また、回折周期G1(回折周期A)の第1輪帯R1以外の各輪帯の光軸に垂直な方向の幅は2種類以上の異なる幅で構成されている。
この回折構造HOEに対して、波長λ2のレーザ光束が入射した場合、隣接する輪帯R間ではほぼm×λ2(μm)の光路差が発生し、波長λ2のレーザ光束は実質的に位相差が与えられないので回折されずにそのまま透過する。尚、本明細書では、回折構造HOEにより実質的に位相差が与えられずにそのまま透過する光束を0次回折光という。
例えばm=5の場合、この回折構造HOEに対して、赤外半導体レーザLD3から射出される波長λ3(ここでは、λ3=0.785μm)のレーザ光束が入射した場合、隣接する輪帯間ではd×(n3−1)−2λ3=0.38μmの光路差が生じることになり、1つの回折周期内の輪帯2つ分では、0.38×2=0.76μmと波長λ3の1波長分の光路差が生じるので、1つの回折周期内を透過した波面がそれぞれ1波長ずれて重なり合うことになる。即ち、この回折構造HOEにより波長λ3の光束は1次方向に回折される回折光となる。尚、n3は第2コリメータL2の波長λ3に対する屈折率である(ここでは、n3=1.503)。このときの波長λ3のレーザ光束の1次回折光の回折効率は、40.3%となるが、DVDに対する情報の記録/再生には十分な光量である。
なお、以上は、回折構造HOEの1つの回折周期内に存在する輪帯Rの数が2の場合における回折構造HOEの波長選択性について説明したが、輪帯Rの数が5以外であっても、隣合う2つの輪帯Rの光学面F同士の光軸方向の深さdが上記(1)式の範囲内であれば、当該回折周期内においても、波長λ2の光束には回折作用を与えず、波長λ3の光束には回折作用を与えることができる。そして、このような回折構造HOEの波長選択性を利用することで、通過光束の回折効率を高くすることができる。
また、回折構造HOEの1つの回折周期内に存在する輪帯Rの数を、回折周期に応じて異なるものとするので、全ての回折周期において輪帯数を同一(例えば5つ)とする場合と比較して、輪帯数を減らすことができ、光量の低下を抑制できると共に回折構造HOEを有する第2コリメータL2の加工性を向上できる。
また、回折構造HOEを第2コリメータL2に形成することにより、波長λ2と波長λ3の光束に対する対物光学素子OBJの光学系倍率を異ならしめることで、DVDとCDの保護層PL2とPL3の厚さの違いに起因する球面収差を補正することができる。
なお、本実施の形態においては、第1コリメータL1には第1光束のみが通過するので、上述したような回折構造HOEの波長選択性を利用する必要は無いが、例えば、第1コリメータL1を、第2ビームスプリッターBS2と対物光学素子OBJの間に配置する場合には、第1コリメータL1には第1〜第3光束が通過することになる。この場合には、第1コリメータL1に回折構造HOEを形成し、回折構造HOEの波長選択性を利用して、第1コリメータでは第2光束に対してのみ回折作用を与え、第1光束及び第3光束には回折作用を与えない構成にすることができる。
以上のように、本実施の形態に示した光ピックアップ装置PUでは、回折構造HOEが、第2光束に対して回折作用を与えず、第3光束に対して回折作用を与える波長選択性を持つ構成としたことで、対物光学素子OBJに回折構造を設けない構成であっても、十分な光量の確保と収差補正性能を有した高密度光ディスク/DVD/CDの互換用光ピックアップ装置を得られる。
また、第2光源LD2と第3光源LD3とがパッケージ化された光源ユニットLU23を用いることで、光ピックアップ装置PUの光学系を構成する光学素子を第2光束と第3光束とで共通化でき、光ピックアップ装置PUの小型化や部品点数の削減を実現できる。
なお、本実施の形態においては第2コリメータL2が波長λ2の光束を平行光として出射し、波長λ3の光束を発散光として出射するものとしたが、これに限らず、第2コリメータL2が波長λ2とλ3の光束を共に発散光として出射する構成や、波長λ2の光束を収束光として出射し、波長λ3の光束を発散光として出射する構成であってもよい。
また、第1コリメータL1が波長λ1の光束を収束光として出射する構成であってもよい。
また、本実施の形態のように、回折構造HOEが、1つの回折周期内に存在する輪帯Rの数がA1(例えば5つ)の場合とA2(A2≠A1、例えば4つ)の場合の少なくとも2種類を、周期的に混在させた形状、例えば、輪帯数が5の回折周期の次に輪帯数が4の回折周期が続くような組み合わせを、第2コリメータL2の光軸から離れる方向に繰り返す構成とすることで、第2光束と第3光束それぞれの最大の回折効率となる回折次数を適宜調整することが可能となり、レンズ設計の自由度が増大する。
また、図3(a)に示すように、回折構造のHOE複数の回折周期のうち、光軸に垂直な方向の周期幅が最も小さい回折周期の周期幅をL、当該回折周期内に存在する複数の輪帯Rのうち、通過する光束に対して最も大きい光路長を付与する輪帯を第1輪帯、第1輪帯の光軸に垂直な方向の幅をΔL、当該回折周期内に存在する前記輪帯の数をKとしたとき、以下の(3)式を満たすように回折構造を設計することが好ましい。
1/K<ΔL/L≦1/(K−1)・・・(3)
これによれば、上記第1輪帯R1の光軸に垂直な方向の幅ΔLが、他の輪帯(R2〜R5)の光軸に垂直な方向の幅と比較して大きくなる。
通常、回折構造HOEを有する第2コリメータの成形用金型を製作する際には、金型を彫るための平型切削工具の幅を各輪帯の幅以上に設計し、まず金型の第5輪帯R5に対応する箇所において平型切削工具を光軸方向に移動させ、所定量彫り込んだ時点で第4輪帯側にスライド移動させることで第5輪帯R5の光学面に対応する箇所を成形する。次に、第4輪帯R4に対応する箇所まで平型切削工具を移動させた後、光軸方向に移動させ、所定量彫り込んだ時点で第3輪帯側にスライド移動させることで第4輪帯の光学面に対応する箇所を成形する。このような工程を第3、2輪帯で繰り返し、最後に第1輪帯に対応する箇所を彫り込む。しかし、光学素子によっては、要求される性能を満足させるために、回折周期内の全ての輪帯幅を平型切削工具の幅より大きくすることができない場合がある。ここで、上述のように、第1輪帯R1の光軸に垂直な方向の幅ΔLを他の輪帯の幅と比較して大きくすることにより、平型切削工具を第1輪帯に対応する箇所において光軸方向に移動させ、所定量彫り込んだ時点で第1輪帯の光学面に対応する箇所を成形するためにスライド移動させるためのスペースを確保することができ、金型製造作業の作業性を向上することができる。また、金型製造作業の作業性を向上させるために、1つの回折周期内に形成する輪帯の数を減らす場合と比較して、光量の低下を抑制することができる。
なお、第1輪帯の光軸に垂直な方向の幅ΔLは、0.005mm≦ΔL≦0.015mmの範囲内とすることが好ましい。
また、本実施の形態においては、回折構造HOEを第2コリメータに設けたが、これに限らず、例えば対物レンズに設けても良い。
また、光ピックアップ装置PUが第1〜第3光束を利用して、AOD/DVD/CD間で互換性を有する構成としたが、これに限らず、2種類の光ディスク間で互換性を持つ構成としても良く、この場合、上記光ピックアップ装置PUの構成から、青紫色半導体レーザLD1、第1光束用の光検出器PD1、第1コリメータL1、第1ビームスプリッターBS1、センサーレンズSEN1及びSEN2を取り除けばよい。
次に、上記実施の形態で示した光学素子の実施例について説明する。
本実施例では、回折構造HOEを図1に示したようなコリメータに設け、このコリメータにDVD用の波長λ1とCD用の波長λ2の2種類の光束が入射する構成となっている。
表1〜表4に各光学素子のレンズデータを示す。
Figure 0004407421
Figure 0004407421
Figure 0004407421
Figure 0004407421
表1に示すように、本実施例のコリメータは、波長λ1=655nmのときの焦点距離f1=22.4mm、倍率m1=0に設定されており、波長λ2=785nmのときの焦点距離f2=29.2mm、倍率m2=−1/1.53に設定されている。
コリメータの入射面は光軸に対して垂直な平面形状で、光軸を中心とした高さhが0mm≦h≦1.85669mmの第5面と、1.85669mm<hの第5´面に区分されており、第5面に回折構造HOEが形成されている。
コリメータの出射面(第4面)は、次式(数1)に表1に示す係数を代入した数式で規定される、光軸Lの周りに軸対称な非球面に形成されている。
Figure 0004407421
ここで、X(h)は光軸方向の軸(光の進行方向を正とする)、κは円錐係数、A2iは非球面係数である。
また、回折構造HOEは、この構造により透過波面に付加される光路差で表される。かかる光路差は、h(mm)を光軸に垂直な方向の高さ、B2iを光路差関数係数、nを入射光束の回折光のうち最大の回折効率を有する回折光の回折次数、λ(nm)を回折構造に入射する光束の波長、λB(nm)を回折構造の製造波長とするとき、次の数2式に表1に示す係数を代入して定義される光路差関数φ(h)(mm)で表される。
Figure 0004407421
なお、B2i×n×λ/λB=C2iの関係が成立する。
表2〜表4は、回折構造HOEを構成する各輪帯の形状及び位置を表している。
回折構造HOEを図2及び図3(a)を参照して説明すると、表2中の、「周期No.1〜23」は回折周期の数を示しており、本実施例では回折周期がG1〜G23まで計23周期存在する。また、表2中の、「輪帯No.1〜6」は各回折周期内に存在する輪帯(最大でR1〜R6の6輪帯)の光学面の開始高さ(光軸に近い側の端部から光軸までの距離)を表す。同様に、表3中の、「輪帯No.1〜6」は各回折周期内に存在する輪帯(最大でR1〜R6の6輪帯)の光学面の終了高さ(光軸から遠い側の端部から光軸までの距離)を表す。また、表4は、第5面に対する各輪帯の光学面の光軸と平行な方向の深さ(光軸方向の位置)を、第5面から突出する方向を正として表している。
回折周期G1〜G10は、上記光路差関数に沿って位相差が付与されるようにその輪帯幅が設定されており、回折周期G11〜G15は、各輪帯幅が等しくなるように設定されており、回折周期G16〜G23は、最上段の輪帯(通過する光束に対して最も大きい光路長を付与する輪帯)のみが輪帯幅8μmに設定されており、他の輪帯は輪帯幅が等しくなるように設定されている。
光ピックアップ装置の構成を示す要部平面図である。 回折構造を示す平面図である。 回折構造を示す拡大図である。 位相関数と位相差との関係を示すグラフである。 位相関数と位相差との関係を示すグラフである。
符号の説明
R 輪帯
HOE 回折構造
L2 第2コリメータ
OBJ 対物光学素子
PU 光ピックアップ装置

Claims (14)

  1. 光ピックアップ装置に使用される光学素子であって、
    前記光ピックアップ装置使用時に、少なくとも波長λ1の第1光束と波長λ2の第2光束とが入射する回折構造を有し、
    前記回折構造は、光軸を中心とする複数の輪帯より形成されると共に光軸を含む平面における断面形状が階段形状である回折周期が、光軸を中心とした輪帯状に複数形成され、
    前記回折構造の1つの回折周期内に存在する複数の前記輪帯のうち、通過する前記光束に対して最も大きい光路長を付与する輪帯以外の各輪帯の光軸に垂直な方向の幅が、2種類以上の異なる幅で構成されている回折周期Aが存在し、
    前記回折構造の1つの回折周期内に存在する前記輪帯の数が、前記回折周期Aと異なる回折周期を有することを特徴とする光学素子。
  2. 1つの前記回折周期内において、通過する前記光束に対して最も大きい光路長を付与する輪帯の光軸に垂直な方向の幅をΔL1、他の輪帯の光軸に垂直な方向の幅をΔL´と規定した場合に、ΔL1<ΔL´を満たすような輪帯が存在することを特徴とする請求項に記載の光学素子。
  3. 前記階段形状が光軸に対して同じ向きである前記回折周期が複数形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
  4. 前記回折周期A内に存在する各輪帯の光軸に垂直な方向の幅を、光軸に近い側より順にT1、T2、T3・・・Tiと規定した場合に、T1>T2>T3>・・・>Tiであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学素子。
    但し、iは自然数。
  5. 前記回折周期Aは、前記回折構造の複数の回折周期のうち最も光軸に近いものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学素子。
  6. 620nm≦λ1≦690nm
    750nm≦λ2≦820nm
    を満たことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学素子。
  7. 前記光ピックアップ装置使用時に、前記回折構造には更に波長λ3の第3光束が入射し、
    620nm≦λ3≦690nm
    を満たすことを特徴とする請求項に記載の光学素子。
  8. 前記光学素子が、d線でのアッベ数が40〜60の範囲内の材料から形成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学素子。
  9. 前記回折構造において、波長λ1の光束の入射方向に対する、隣り合う輪帯の光学面を継ぐ面角度αは、
    0°≦α≦10°
    を満たすことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学素子。
  10. 前記光学素子が対物レンズであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の光学素子。
  11. 前記対物レンズに入射する光束のうち最も波長が短い光束に対する焦点距離をf2としたとき、
    0.8mm≦f2≦4.0mm
    を満たすことを特徴とする請求項10に記載の光学素子。
  12. 前記回折構造が、前記光学素子の光源側の光学面に形成されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学素子。
  13. 前記回折構造の各回折周期内において、隣り合う2つの輪帯の光学面同士の光軸方向の深さdが以下の(1)式で与えられることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の光学素子。
    0.96×m1×λ1/(n1−1)≦d≦1.04×m1×λ1/(n1−1) (1)
    ただし、m1は正の整数であり、n1は、波長λ1の第1光束に対する光学素子の屈折率を表す。
  14. 請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学素子を備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
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