JP2004212552A - 偏光光学素子及び回折光学素子及び光学素子ユニット並びに光ピックアップ装置及び光ディスクドライブ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】光の入射角度の違いによる回折効率の違いを無くすために、格子のデューティ比を限定することにより、光の入射角度が違っても回折効率がほぼ一定になるようにした偏光光学素子を提供する。
【解決手段】本発明は、入射する光の偏光方向により回折効率が異なる偏光光学素子において、凹凸形状の回折格子を有し、格子の周期Λに対する格子の凸部の幅Aの比率を格子のデューティー比(=A/Λ)と定義したときに、格子のデューティー比を0.4〜0.5とすることを特徴とする。すなわち、本発明の偏光光学素子では、格子のデューティー比を0.4〜0.5とすることにより、光の入射角度が違っても回折効率が等しく、かつ高効率になるようにすることができる。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明は、入射する光の偏光方向により回折効率が異なる偏光光学素子において、凹凸形状の回折格子を有し、格子の周期Λに対する格子の凸部の幅Aの比率を格子のデューティー比(=A/Λ)と定義したときに、格子のデューティー比を0.4〜0.5とすることを特徴とする。すなわち、本発明の偏光光学素子では、格子のデューティー比を0.4〜0.5とすることにより、光の入射角度が違っても回折効率が等しく、かつ高効率になるようにすることができる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光光学素子及び回折光学素子及び光学素子ユニット、並びにそれらを用いた光ピックアップ装置、及びその光ピックアップ装置を搭載した光ディスクドライブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクドライブ装置等に搭載され、光ディスク等の記録媒体に対して情報の記録や再生を行う光ピックアップ装置が知られている。近年、光ピックアップ装置の小型化、低コスト化を図るために、記録媒体からの情報信号を含んだ反射光を光源に戻すことなく効率よく光検出器へ導く手段として回折光学素子(ホログラム素子)を用い、記録媒体からの反射光を回折光学素子(ホログラム素子)で回折して光源からの出射光と分岐することが行われている。
【0003】
光ピックアップ装置に用いられる回折光学素子(ホログラム素子)とその製造方法については種々の提案がなされており、例えば特許文献1には、量産性を損うことなく高精度で所望のホログラム素子を製造するホログラム素子製造方法、及びその製造方法によって製造されたホログラム素子を提供することを目的として、「ホログラム素子のホログラムの各領域にホトリソグラフィー法で回折格子を形成するときに、各領域の回折格子の1次回折効率を測定して、各回折格子のデューティー比を算出し、このデューティー比に基づいて露光量を決定し、1次回折効率および露光量が所定の値になるようにホログラム素子を製造する」ことが記載されている。
【0004】
ここで、特許文献1には、ホログラムのデューティー(duty)比を確認しながら回折効率比を一定にするホログラム加工方法の例が開示されている。光ピックアップ装置におけるホログラムは、複数の領域に分割されているが、この複数の領域間で回折効率が異なると信号にオフセットが生じる(特にトラッキング信号におけるバランス特性が乱れる)。したがって、ホログラムの各領域の回折効率は等しくなるようにしなければならない。各領域間の回折効率が理想的に全く等しい場合は、回折効率比は1.0となるが、製造上の理由で領域ごとに回折効率はバラツクので、各領域間の回折効率比は0.9〜1.1の範囲に抑えるようにしている。この範囲に抑えるために、デューティー比を0.4〜0.6にしている。
【0005】
ところで、偏光性のホログラムは、レーザ光源からの光を高効率(約97%)で透過させ、光ディスクからの反射光を高効率(約38%)で回折させるので、光ディスクドライブ装置の記録および再生の高速化を図る上で重要な光学素子である。その反面、回折効率の高効率化のためにホログラムの溝を深く加工しなければならない。しかしながら、溝が深く、ピッチ(格子周期)の小さいホログラムは体積ホログラムの特性が表れる。光ピックアップ装置に使う上で問題になる体積ホログラムの特性とは、光の入射角度により回折効率が異なる角度依存性のことである。光ピックアップ装置において、ホログラムを光源とカップリングレンズの間に配置すると、収束光がホログラムに入るので光束の中心部と周辺部とでは光の入射角度が異なる。したがって体積ホログラムでは回折効率が異なることになり、信号にオフセットが生じてしまう。このため、本発明者らは、溝深さを浅くして、オフセットを最小限に抑えることを提案している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−258725号公報
【特許文献2】
特開平6−194523号公報
【特許文献3】
特許第2594548号公報
【特許文献4】
特開2000−75130号公報
【特許文献5】
特開平9−102138号公報
【非特許文献1】
光波電子光学、小山、西原共著、コロナ社、p116〜122
【非特許文献2】
光集積回路、西原、春名、栖原共著、オーム社、p167〜170
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は回折光学素子の回折効率を光の入射角によらず一定にするための発明である。図16にBK7ガラス上にピッチ(格子周期)が異なるホログラムを形成した時の格子の溝深さと回折効率の関係を示す。ピッチ(格子周期)が1.6〜2.0μmと異なる場合において、溝深さを変えていくとピッチごとに最大回折効率は異なるが、深さが0.6〜0.65μm近辺で回折効率は40%程度と最大になる。
仮に、ピッチ1.6μm、深さ0.65μmとすると、ホログラムの体積性を示すQ値:
Q=2πλT/n0Λ2
λ:波長(660nm)
T:格子溝深さ
n0:屈折率(1.25(1.5と1.0の平均))
Λ:格子ピッチ
は、0.84となる。この場合、Q値が1以下なのでこの場合は平面ホログラムとして扱うことができ、光の入射角によらずほぼ一定の回折効率が得られる。
【0008】
次に図17に液晶を用いてピッチ(格子周期)が異なる偏光ホログラムを形成した時の格子の溝深さと回折効率の関係を示す。ピッチが1.6〜2.0μmと異なる場合において、溝深さを変えていくとピッチごとに最大回折効率は異なるが、溝深さが1.7〜1.8μm近辺で回折効率は最大になる。仮に、ピッチ1.6μm、深さ1.8μmとすると、ホログラムの体積性を示すQ値:
Q=2πλT/n0Λ2
λ:波長(660nm)
T:格子溝深さ
n0:屈折率(1.6(1.7と1.5の平均))
Λ:格子ピッチ
は、1.82となる。この場合、Q値が1以上なので平面ホログラムとしては扱うことはできず、体積ホログラムの特性が表れてくる。ここで図18に偏光ホログラムのQ値を変えたときの回折効率の光束入射角依存性を示す。Q値が1以上で体積ホログラムの特性があると、図18に示すように光の入射角αにより回折効率が異なる(詳細については、非特許文献1参照)。このように偏光ホログラムでは通常の無偏光のホログラムに比べて、溝深さを深くしなければ高い回折効率が得られないので、溝深さTが大きくなる分、Q値が大きくなる。結果として体積ホログラムの特性が表れ、光の入射角により回折効率が異なることになる。入射角により回折効率が異なるとトラック信号にアンバランスが生じ、信号にオフセットが発生する。
【0009】
さらに液晶を用いた偏光ホログラムにおいて、格子のデューティー比(格子の凸部の幅A/ピッチΛ)を変えた場合について検討した。格子のデューティー比を0.1〜0.9まで変えて、波長403nmの光が垂直入射した場合に最大回折効率が得られる深さの格子に対して、光の入射角度を−20〜20°まで変えた時の回折効率の変化を図3に示す。格子のデューティー比が0.1〜0.3と小さい場合は入射角度依存性があり、光の入射角により回折効率が異なることがわかる。このように偏光ホログラムでは、溝深さTが大きく、Q値が大きい場合のほかに、デューティー比が小さい場合も回折効率の角度依存性が顕著になることがわかってきた。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、偏光ホログラムで生じる体積ホログラムの特性、すなわち回折効率の入射角度依存性を抑制する方法を提案するものである。そして、本発明の目的は、光の入射角度の違いによる回折効率の違いを無くすために、格子のデューティを限定することにより、光の入射角度が違っても回折効率がほぼ一定になるようにした偏光光学素子及び回折光学素子を提供することである。また、本発明では、その偏光光学素子または回折光学素子を光源、光検出器と一体に構成した光学素子ユニットを提供することを目的とする。さらに本発明では、回折効率がほぼ一定になるようにした偏光光学素子または回折光学素子を光学系に用いて信号のオフセットを小さくし、信頼性を向上した光ピックアップ装置を提供することを目的し、さらには、その光ピックアップ装置を搭載することにより安定した信号検出が可能な光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段として、請求項1に係る発明は、光ピックアップ装置に用いられる偏光光学素子であって、入射する光の偏光方向により回折効率が異なる回折格子(ホログラム)を有し、格子の周期に対する格子の凸部の幅の比率を格子のデューティー(duty)比と定義したときに、格子のデューティー比を0.4〜0.5とすることを特徴とする。すなわち、請求項1記載の偏光光学素子では、格子のデューティー比を0.4〜0.5(より好ましくは略0.45)とすることにより、光の入射角度が違っても回折効率が等しく、かつ高効率になるようにするものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の偏光光学素子において、前記回折格子は、光学的異方性材料に凹凸形状を設け、少なくともその凹部に等方性物質を充填してなることを特徴とする。すなわち、請求項2記載の偏光光学素子では、光学的異方性材料に凹凸形状を設け、少なくともその凹部に等方性物質を充填した構成として、格子のデューティー比を0.4〜0.5になるように精度良く加工することにより、光の入射角度が違っても回折効率が等しくなるようにすると同時に低コスト化を図るものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、光ピックアップ装置に用いられる回折光学素子であって、請求項1または2記載の偏光光学素子を、第1光学部材と第2光学部材で挟んだ構造としたことを特徴とする。すなわち、請求項3記載の回折光学素子では、請求項1または2記載の偏光光学素子を2つの光学部材で挟むことにより、平面性が高く、熱や湿度に対して安定になるようにするものである。また、空気→ガラス→偏光光学素子の順に光が入ってくるので、空気から直接偏光光学素子に光が入る場合に比べて、偏光光学素子に入る光の入射角度が小さくなり、入射角度依存性の許容値を大きく確保できるようになる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の回折光学素子において、前記第1光学部材と前記第2光学部材の基板厚が異なることを特徴とする。すなわち、請求項4記載の回折光学素子は、2つの光学部材の厚さを異ならせることにより、偏光光学素子を光検出器から遠ざけて、格子のピッチを大きくすることにより、Q値を小さくして回折効率の入射角度依存性を緩和するものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項3または4記載の回折光学素子において、前記第1光学部材と前記第2光学部材の屈折率が異なることを特徴とする。すなわち、請求項5記載の回折光学素子は、2つの光学部材のうち一方の部材の屈折率が他方の部材の屈折率よりも大きくすることにより、偏光光学素子に入る光の入射角度をより小さくして、入射角度依存性の許容値をさらに大きく確保できるようにするものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項3または4または5記載の回折光学素子において、前記第1光学部材と前記第2光学部材のいずれか一方の表面に回折格子を形成したことを特徴とする。すなわち、請求項6記載の回折光学素子は、2つの光学部材のうち、一方の部材に回折格子(グレーティング)を設けることにより、3つのビームを使った信号検出ができるようにし、光軸ずれに対して安定な信号検出ができるようにするものである。
【0017】
請求項7に係る発明は、光源と光検出器を一体化したユニットに、請求項1または2記載の偏光光学素子あるいは請求項3〜6のいずれか一つに記載の回折光学素子を一体化したことを特徴とする。すなわち、請求項7記載の光学素子ユニットは、光源と光検出器を一体化したユニットに、偏光光学素子や回折光学素子を一体化することにより、経時変化に安定な信号検出ができるようにするものである。
【0018】
請求項8に係る発明は、光源からの光を集光レンズで記録媒体に集光して記録または再生を行う光ピックアップ装置において、光路中に回折光学素子を配置して記録媒体からの反射光を回折光学素子により分岐し、光検出器で受光する光学系を備え、前記光路中に配置する回折光学素子が、請求項1または2記載の偏光光学素子、あるいは請求項3〜6のいずれか一つに記載の回折光学素子であることを特徴とする。また、請求項9に係る発明は、請求項8記載の光ピックアップ装置において、請求項7記載の光学素子ユニットを用いることを特徴とする。すなわち、請求項8,9記載の光ピックアップ装置は、光の入射角度が違っても回折効率が等しい偏光光学素子または回折光学素子を使うことにより、信号のオフセットを小さくして光ピックアップ装置の信頼性向上を図るものである。
【0019】
請求項10に係る発明は、記録媒体に対して光ピックアップ装置を用いて情報の記録または再生を行う光ディスクドライブ装置において、前記光ピックアップ装置として、請求項8または9に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする。すなわち、請求項10記載の光ディスクドライブ装置は、請求項8または9記載の光ピックアップ装置を搭載することにより、安定した信号検出が可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
まず、図1〜図4を参照して本発明の第1の実施例を説明する。図1は偏光光学素子の一例を示す、偏光ホログラムの概略要部断面図である。この偏光ホログラム1Aは、複屈折性を有する光学的異方性材料(複屈折性材料と言う)2に凹凸形状の回折格子(ホログラム)を形成したものである。図1に示すように、波長λ(403nm)の光が偏光ホログラム1Aに垂直入射(0°入射)すると透過光(0次光)と回折光(ここでは±1次光だけ示す)を生じる。ここで偏光ホログラム1Aのピッチ(格子周期)は1μmで、波長403nmの光が垂直に入射した時の回折効率が最大になるような溝深さになっているものとする。このように設定された偏光ホログラム1Aにおいて、格子のデューティー(duty)比(duty比=格子の凸部の幅A/格子の周期Λ)を0.1〜0.9まで変化させたサンプルを用意し、図2に示すように光を−20°から+20°まで入射角を変化させてホログラムに入射させて+1次光の回折効率を測定する。格子のデューティー比が0.1〜0.9の各サンプルの場合の+1次光の回折効率の結果を図3に示す。
【0022】
回折効率は、光の入射角度に関わらず一定で、かつ高効率であることが望ましいが、図3からわかるように、格子のデューティー比が0.1〜0.35では光の入射角度により回折効率は大きく変化している。また、デューティー比が0.7〜0.9では入射角度により回折効率も変化する上、回折効率自体が低い値になっている。デューティー比が0.1〜0.35の場合のように回折効率が入射角度で変化すると、図4に示すように偏光ホログラム1Aに収束光が入った場合、入射角度により回折効率が大きく違うので、回折光の強度分布は左右対称ではなくなってしまう。すなわち+の角度で入った光の回折効率は低く、−の角度で入った光の回折効率は高いので強度分布は対称ではなくなってしまう。このような偏光ホログラムを光ピックアップ装置の光学系に用いると、信号にアンバランスを生じて、オフセットが発生してしまう。一方、デューティー比が0.7〜0.9の場合では回折効率自体が低いので、このような偏光ホログラムを光ピックアップ装置の光学系に用いると検出光量が小さく、高速な記録・再生に適さなくなる。
【0023】
以上の結果から、格子のデューティー比は0.4〜0.6が好ましい範囲と考えられる。但し、デューティー比が0.55〜0.6では入射角度により回折効率は変化せずに良好な角度特性である反面、回折効率がデューティー比0.4〜0.5の場合に比べて約10%も低くなるので、高速な記録・再生を目指す上では好ましくない。したがって、角度依存性の少なさと回折効率の高さを満たす観点から、デューティー比は0.4〜0.5が望ましく、デューティー比0.4では回折効率の角度依存性が少しあり、デューティー比0.5では回折効率が低いので、デューティー比は0.45が最適と言える。
格子のデューティー比が0.4〜0.5の場合、入射角が+10°より大きくなると回折効率が低下しているが、通常の光ピックアップ装置ではコリメートレンズの開口数(NA)やレーザ光源の放射角度の制限から、偏光ホログラムに入射する角度はほとんどの場合、±10°以下であるので実用上は問題ないレベルである。
【0024】
(実施例2)
実施例1では偏光ホログラム1Aのデューティー比は0.4〜0.5が適していると述べたが、逆にデューティー比のバラツキを0.4〜0.5に抑えなけばならない。
偏光ホログラムの作り方としては幾つかの方法があるが、LiNbO3結晶を用いてプロトン交換により偏光ホログラムを製造する方法が知られている(特許文献2参照)。また、プロトン交換の方法については、非特許文献2に記載されている。プロトン交換では、水素イオンが結晶中に浸透することを利用するので、矩形でデューティー比を精度良く作ることは難しい。したがって、格子のデューティー比を0.4〜0.5に制御して偏光ホログラムを作るには、機械的、化学的に溝加工を行うことが望ましい。具体的には図5に示す偏光ホログラム1Bのように、光学的異方性材料(複屈折性材料)2にエッチングにより凹凸形状の格子を形成し、少なくともその凹部を、光学的異方性材料の屈折率no、neの一方と同じ屈折率の等方性材料3で充填する方法が適している(特許文献3参照)。
【0025】
ここで、図5に示すような構成の偏光ホログラム1Bにおいて、本実施例では光学的異方性材料2として有機延伸膜を使うことを提案する。特許文献3では、光学的異方性材料としてカルサイトが示されているが、有機延伸膜はカルサイトに比べて大面積化が容易で、膜厚が薄く、安価に入手できると言うメリットを持っている。格子のデューティー比を0.4〜0.5になるように加工するためには、フォトリソグラフィー工程において、デューティー比が0.4〜0.5になるようにマスクを形成すれば良い。有機膜延伸膜の具体例としては、ポリイミドやポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の高分子フィルムを延伸により分子鎖を一軸方向に配向させ、面内複屈折を発生させる方法がある。図6は有機延伸膜の作製方法の一例を示しており、ガラス基板上にポリアミド酸膜を形成し、これを基板から剥離した後、延伸により分子鎖を一軸方向に配向させてポリイミド複屈折膜を作製した例である。この方法では、延伸の時の温度や加える力により複屈折Δnを変えることができ、安価で量産可能な方法である。尚、本出願人は、有機延伸膜をホログラムに用いることを既に提案している(特許文献4参照)。
【0026】
さらに有機延伸膜以外の材料として液晶を用いることも可能である。液晶は、電圧印加の有無により配向方向が変わり、配向方向の違いが屈折率の違いとなる。ここで、図7に液晶を用いた偏光ホログラムの作製工程を示す。図7(a)に示すように、2つの基板5a,5bの間に液晶4を設け、図7(b)に示すように、液晶の両面に電極を設けて電圧印加させて配向させた状態で、格子パターンを形成したマスク6を通して露光し、液晶4を硬化させる。次に図7(c)に示すように、液晶の硬化した所だけを残して、その他の部分は上側の基板5bとともに除去し、図7(d)に示すように、液晶4の屈折率no、neの一方と同じ屈折率の等方性材料3を凹部に充填すれば偏光ホログラム1Cを形成できる。この工程ではエッチング工程が不要なので、工程が簡素化され、高価なエッチング装置が不要なので設備投資が安く、低コスト化も図れる。
【0027】
また、液晶を使って偏光ホログラムを作る別の方法としては、図8に示すような方法もある。まず図8(a),(b)に示すように、等方性基板5aにフォトリソグラフィ工程とエッチング工程を行って凹凸加工した後、図8(c)に示すように、もう1枚の基板5bと貼り合わせ、図8(d)に示すように、基板間に液晶4を充填して、偏光ホログラム1Dを作製する。この方法は、例えば特許文献5に開示されている。この方法では、ガラス基板等をエッチングするので、デューティー比を0.4〜0.5に管理して加工しやすいというメリットを有する。
【0028】
(実施例3)
次に実施例1,2に示した偏光光学素子(偏光ホログラム)を2つの光学部材(例えば透明な平面基板)で挟んだ構成の回折光学素子について説明する。図9にその構成例を示す。この回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eは、図5に示した偏光光学素子(偏光ホログラム)1Bを、第1光学部材7と第2光学部材8とで挟んだ構成になっている。このような構成にすると光学部材(具体的にはガラスもしくはプラスチック部材からなる透明な平面基板)7,8により偏光光学素子1Bが覆われるので、平面性が高く、熱や湿度に対して安定になる。また、直接ホログラム面に触れることがないので、偏光ホログラムが傷ついたり、汚れたりすることがない。このように光学部材7,8で偏光光学素子1Bを覆った構成とすれば、その光学部材の表面であれば汚れた場合でも拭くことができる。
【0029】
さらに偏光光学素子1Bが光学部材7,8で覆われている場合は、図10(a)に示すように空気→光学部材7→偏光光学素子1Bの順に光が入ってくるので、図10(b)に示すように空気から直接偏光光学素子1Bに光が入る場合に比べて、偏光光学素子1Bに入る光の入射角度が小さくなる。また、光の入射角がθ0の時、図10(b)に示すように、光学部材がない場合は、光は偏光光学素子1Bに入射角θ0で入射するが、図10(a)のように光学部材7があると、スネルの法則により、
sinθ0=n1・sinθ1
となり、光は偏光光学素子1Bに入射角θ1で入射する。仮にθ0=10°、光学部材7の屈折率n1がn1=1.5とすると、θ1=6.65°となり、光学部材7があると偏光光学素子1Bへの入射角度が小さくなることがわかる。前述の図3で示したように、回折効率は入射角度により変動するので、入射する光の角度の範囲が狭ければ、利用できるデューティー比の範囲を広げることができ、加工バラツキの許容値が大きくなり、歩留りが向上する。
【0030】
(実施例4)
次に実施例3で示した回折光学素子を光学素子ユニットに一体化した場合の第1光学部材7と第2光学部材8の関係を説明する。まず、本発明の回折光学素子1Eを光学素子ユニット11に搭載した場合の構成例を図11に示す。この光学素子ユニット11は、図11(a)に示すように、半導体レーザからなる光源9と光検出器(受光素子)10を一体に収納したユニット11aの光出・入射用の開口部に、実施例3で示した回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eを固定して一体化した構成のホログラム光源ユニットである。
ここで回折光学素子1Eの偏光ホログラム1Bの格子ピッチは、ホログラム面と、光検出器10の受光素子面の間隔で決まる。偏光ホログラム1Bの格子ピッチはできるだけ大きい方が加工が容易で、Q値も大きくなるので望ましい。偏光ホログラム1Bの格子ピッチを大きくするためには、ホログラム面と、光検出器10の受光素子面を、光軸方向(図11のZ軸方向)に遠ざければよい。したがって、図11(b)に示すように、第2光学部材8を厚くすればホログラム面を光検出器10の受光素子面から遠ざけることができる。
【0031】
しかしながら、第2光学部材8を厚くした分、第1光学部材7も厚くすると回折光学素子全体が厚くなるので、ダイシングで切るときに切りにくくなる。ダイシングはダイサーという刃を回転させて切るので、厚いものを切る時は切削速度を遅くしなければならず、加工時間が長くなる。したがって生産性が低下する。ダイシングのことを考慮すると、回折光学素子全体の厚さとしては、せいぜい3.5mm以下程度にしなければいけないので、図11(b)に示すように、第2光学部材8を厚くした分、第1光学部材7は薄くした方が望ましい。
以上のように、第2光学部材8を厚くしたことにより、偏光ホログラム1Bの格子ピッチを大きくでき、偏光ホログラム1Bの加工が容易になる。さらに第1光学部材7は薄くしたことにより、回折光学素子全体の厚さを厚くならないようにでき、ダイシング加工にかかる時間を長くしないため、生産性の低下を防ぐことができる。
【0032】
(実施例5)
次に実施例4で示した光学素子ユニット11の回折光学素子1Eの第1光学部材7と第2光学部材8の関係をさらに説明する。第1光学部材7の屈折率n1は、実施例3で説明したように、
sinθ0=n1・sinθ1
となるので、屈折率n1が大きいほど偏光ホログラム1Bへの入射角度θ1が小さくなり、角度依存性の影響を緩和するのに効果がある。したがって、第1光学部材7は屈折率が1.7くらいの高屈折率ガラスを用いることが望ましい。その一方、第2光学部材8は実施例4で示したように基板厚さを厚くすることが望ましい。基板厚さを厚くしてもコストが高くなったり、ダイシングで切りにくくなったりしないように、安価で加工が容易な材料であることが望ましい。具体的には、BK7や石英ガラスや樹脂などである。このように第1光学部材7と第2光学部材8は別の光学材料としたほうが、角度依存性の緩和、偏光ホログラムの加工性の観点から有利である。
【0033】
(実施例6)
光ピックアップ装置では、3ビーム法やDPP法など3つの光ビームを光ディスクに照射してトラック信号を検知する方法が良く知られている。3つの光ビームを使うことにより1つの光ビームを照射する方法に比べてトラックオフセットの影響を受けにくくなる。3つの光ビームを生成するためには回折格子(グレーティング)が必要であるが、図12に示すように、3つの光ビームを生成するためのグレーティング12を、第2光学部材8の1面に形成することができる。グレーティング12で生成させる3つの光ビームを、メインビーム(0次光)、サブビーム(±1次光)と分けると、メインビーム(0次光)は光ディスクから反射されて回折光学素子1Eに垂直に入射するが、サブビーム(±1次光)は回折光学素子1Eに垂直ではなく、プラスとマイナスの逆の所定の傾きを持って入射する。従って偏光光学素子1Bに角度依存性があると、サブビームのうち、+1次光は回折効率が高く、−1次光は回折効率が低いといった現象が生じてしまい、正確なトラック検出ができなくなってしまう。したがって、本発明のように格子のデューティー比を0.4〜0.5に限定し、角度依存性を抑制した構成の偏光光学素子1B(または回折光学素子1E)を光ピックアップ装置に用いることは、3ビーム法やDPP法など、3つの光ビームを光ディスクに照射してトラック信号を検知する方法に対しても、正確な信号検出ができる有効な手段となる。
【0034】
(実施例7)
次に光ピックアップ装置の実施例を説明する。図13は本発明の一実施例を示す光ピックアップ装置の概略構成図である。図13において、符号11は光学素子ユニット(ホログラム光源ユニット)、13はカップリングレンズ、14は立上げミラー、15は1/4波長板、16は集光レンズである対物レンズ、17は記録媒体である光ディスクである。図13に示す光ピックアップ装置の光学素子ユニット11のユニット内には、図11または図12に示したように、光源9及び光検出器(受光素子)10が一体に配設されており、そのユニットの光出・入射用の開口部に回折光学素子1Eが一体に設置されている。尚、図13に示す構成は一例であり、本発明に係る光ピックアップ装置はこの構成に限定されるものではない。
【0035】
図13において、光学素子ユニット11内の光源(例えば半導体レーザ)9から出射された直線偏光の光は、回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eを透過し、カップリングレンズ13で略平行光になり、立上げミラー14で光路を略直角方向に偏向され、1/4波長板15を透過して円偏光となり、対物レンズ16で集光されて光ディスク17の記録面に微小なスポット光として照射される。そして、光ディスク17の記録面上の信号を読み取った光は、記録面で反射されて往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ16で略平行光とされ、1/4波長板15を透過して往路とは直交した直線偏光となり、立上げミラー14で光路を偏向され、カップリングレンズ13に戻り、回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eの偏光ホログラム1Bで回折されて分岐され、分岐された光は光検出器(受光素子)10で受光され、情報信号、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号等の信号が検出される。
【0036】
図13に示すような構成の光ピックアップ装置に、実施例1〜6に示した偏光光学素子や回折光学素子を用いれば、以下のような利点がある。
(1)入射角度によらず回折効率が均一なので、信号出力にアンバランスが無く正確なトラッキング誤差信号の検出ができる。
(2)回折効率が均一で、かつ回折効率自体も高いので、高速記録・再生に対応できる。
(3)回折光学素子1Eの光学部材7により偏光ホログラム1Bに入射する光の入射角度の範囲を狭い範囲に抑えられるので、利用できるデューティー比の範囲を広げることができ、加工バラツキの許容値が大きくなり、歩留りが向上する。
また、このような回折光学素子を、図11または図12に示すように、光源9と光検出器10が一体となった光学素子ユニット11に一体化することにより、経時変化に安定な信号検出ができる。
【0037】
(実施例8)
実施例7に示した光ピックアップ装置は、回折効率が高く、均一な回折効率の偏光ホログラムを用いるので、光利用効率が高く、信頼性の高い信号が得られる。また、回折効率が高いと信号検出系の光集積回路(OPIC)のゲインを小さくでき、OPICの高速応答化に貢献できる。また、入射角度により回折効率が変わらなければオフセットの小さい信号が得られる。したがって光ディスクドライブ装置の記録・再生速度の高速化と安定したサーボ制御を達成することができる。
さらに、本発明に係る光ピックアップ装置は、偏光分離に偏光ホログラム1Bを用いた回折光学素子1Eを用い、光源1と光検出器(受光素子)10を配設した光学素子ユニット11と一体化しているので、光ピックアップ装置の小型化、薄型化が可能であり、図14に示すようなノート型パーソナルコンピュータ19に搭載される光ディスクドライブ装置20の光ピックアップ装置として好適に用いることができる。
【0038】
次に光ディスクドライブ装置の構成例を図15に示す。図15は光ディスクドライブ装置の概略構成の一例を示すブロック図である。この光ディスクドライブ装置20は、情報記録媒体としての光ディスク17を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、レーザコントロール回路24、エンコーダ25、モータドライバ27、再生信号処理回路28、サーボコントローラ33、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、リード・オンリー・メモリ(ROM)39、中央演算処理装置(CPU)40、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)41などを備えている。尚、図11における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表わすものではない。また、光ディスク17としては、CD(コンパクト・ディスク)系の光ディスク(CD,CD−R,CD−RW)や、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)系の光ディスク(DVD,DVD−R,DVD−RW)等があり、光ピックアップ装置23内に波長の異なる光源を複数備えることにより、互換性を持たせることができる。
【0039】
光ピックアップ装置23は、光ディスク17のスパイラル状または同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射すると共に、記録面からの反射光を受光し、情報の記録または再生を行うための装置であり、例えば実施例7で説明した図13のような構成となっている。
再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号である電流信号を電圧信号に変換し、該電圧信号に基づいてウォブル信号、再生情報を含むRF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号)などを検出する。そして、再生信号処理回路28では、ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号等を抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25に出力される。さらに、再生信号処理回路28では、RF信号に対して誤り訂正処理等を行なった後、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、サーボ信号は再生信号処理回路28からサーボコントローラ33に出力される。サーボコントローラ33では、サーボ信号に基づいて光ピックアップ装置23を制御する制御信号を生成し、モータドライバ27に出力する。
【0040】
前記バッファマネージャ37では、バッファRAM34へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になると、CPU40に通知する。前記モータドライバ27では、サーボコントローラ33からの制御信号及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23及びスピンドルモータ22を制御する。前記エンコーダ25では、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されているデータをバッファマネージャ37を介して取り出し、エラー訂正コードの付加などを行い、光ディスク17への書き込みデータを作成するとともに、再生信号処理回路28からの同期信号に同期して、書き込みデータをレーザコントロール回路24に出力する。前記レーザコントロール回路24では、エンコーダ25からの書き込みデータに基づいて、光ピックアップ装置23からのレーザ光出力を制御する。
【0041】
前記インターフェース38は、ホスト(例えば、パーソナルコンピュータ)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
前記ROM39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された制御用のプログラム等が格納されている。CPU40は、ROM39に格納されている前記プログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM41に保持する。
【0042】
以上、光ディスクドライブ装置の一構成例を説明したが、本発明では光ピックアップ装置23として、実施例1〜6で説明した光学素子(偏光光学素子、回折光学素子)を用いた光ピックアップ装置(例えば図13の構成)を搭載しているので、光利用効率が高く、信頼性の高い信号が得られ、かつ記録・再生速度の高速化を達成することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の偏光光学素子では、格子のデューティー比を0.4〜0.5(より好ましくは略0.45)と限定することにより、回折効率の入射角度依存性を抑制でき、光の入射角度が違っても回折効率が等しく、かつ高効率になるようにすることができるので、信号にアンバランスが出ることなく高い回折効率を得ることができる。
請求項2記載の偏光光学素子では、光学的異方性材料に凹凸形状を設け、少なくともその凹部に等方性物質を充填した構成としたので、格子のデューティー比を0.4〜0.5になるように精度良く加工することができ、光の入射角度が違っても回折効率が等しくなるようにすると同時に、低コスト化を図ることができる。
【0044】
請求項3記載の回折光学素子では、請求項1または2記載の偏光光学素子を2つの光学部材で挟むことにより、偏光光学素子が光学部材で覆われるので平面性が高く、熱や湿度に対して安定になる。また、直接ホログラム面に触れないので、偏光光学素子が傷ついたり、汚れたりすることがない。さらに、偏光光学素子への光の入射角度を小さくできるので、入射角度依存性の許容値を大きく確保できるようになり、回折効率の変動を小さくできる。
請求項4記載の回折光学素子では、2つの光学部材の厚さを異ならせることにより、素子全体の厚さを変えることなく、偏光光学素子を光検出器から遠ざけて、格子のピッチを大きくすることができ、Q値を小さくして回折効率の入射角度依存性を緩和することができる。また、偏光光学素子の格子ピッチを大きくすることができるので加工しやすくなる。
【0045】
請求項5記載の回折光学素子では、2つの光学部材のうち一方の部材の屈折率を他方の部材の屈折率よりも大きくすることにより、偏光光学素子に入る光の入射角度をより小さくして、入射角度依存性の許容値をさらに大きく確保できるようにすることができ、コストアップすることなく加工性に優れた回折光学素子を提供することができる。
請求項6記載の回折光学素子では、2つの光学部材のうち、一方の部材に回折格子(グレーティング)を設けることにより、3つのビームを記録媒体に照射して信号検出ができ、光軸ずれに対して安定なトラック信号検出ができるようになる。また、サブビームがある角度を持って偏光光学素子に入射しても、格子のデューティー比を0.4〜0.5と限定して回折効率の入射角度依存性を抑制しているので、サブビーム信号にアンバランスが出ることなく高い回折効率を得ることができる。
請求項7記載の光学素子ユニットでは、光源と光検出器を一体化したユニットに、偏光光学素子または回折光学素子を一体化することにより、経時変化に安定な信号検出ができるようになる。
【0046】
請求項8,9記載の光ピックアップ装置では、光の入射角度が違っても回折効率が等しい偏光光学素子または回折光学素子を使うことにより、信号出力にアンバランスが無く、正確なトラッキング信号検出ができるうえに高速記録が可能となる。
請求項10記載の光ディスクドライブ装置では、請求項8または9記載の光ピックアップ装置を搭載することにより、安定した信号検出ができ、記録・再生速度の高速化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】偏光光学素子の一例を示す偏光ホログラムの概略要部断面図である。
【図2】図1に示す偏光ホログラムに入射角度を変えて光を入射させ、1次光の回折効率を測定する方法の説明図である。
【図3】(a)はデューティー比が0.1〜0.9の偏光ホログラムのサンプルを用い、光の入射角度を−20°から+20°まで変化させて+1次光の回折効率を測定した結果を示す図、(b)は偏光ホログラムの格子のデューティー比の説明図である。
【図4】偏光ホログラムに収束光が入射した場合の回折光の強度分布の説明図である。
【図5】本発明の一実施例を示す偏光光学素子の概略要部断面図である。
【図6】有機延伸膜の作製方法の一例を示す図である。
【図7】液晶を用いた偏光光学素子の作製工程の一例を示す図である。
【図8】液晶を用いた偏光光学素子の作製工程の別の例を示す図である。
【図9】本発明の一実施例を示す回折光学素子の概略要部断面図である。
【図10】図9に示す回折光学素子の作用効果の説明図である。
【図11】図9に示す回折光学素子を一体化した光学素子ユニットの構成説明図である。
【図12】光学部材の1面にグレーティングを設けた回折光学素子を用いた光学素子ユニットの構成説明図である。
【図13】本発明の一実施例を示す光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図14】ノート型パーソナルコンピュータとそれに搭載される光ディスクドライブ装置の一例を示す外観斜視図である。
【図15】光ディスクドライブ装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図16】BK7ガラス上にピッチの異なる凹凸形状のホログラムを形成した時の、格子の溝深さと回折効率の関係を示す図である。
【図17】液晶を用いてピッチの異なる偏光ホログラムを形成した時の、格子の溝深さと回折効率の関係を示す図である。
【図18】偏光ホログラムのQ値を変えたときの回折効率の光束入射角依存性を示す図である。
【符号の説明】
1A,1B,1C,1D:偏光ホログラム(偏光光学素子)
1E:回折光学素子
2:光学的異方性材料(複屈折性材料)
3:光学的等方性材料
4:液晶
5a,5b:基板
6:マスク
7:第1光学部材
8:第2光学部材
9:光源
10:光検出器(受光素子)
11:光学素子ユニット
12:グレーティング(回折格子)
13:カップリングレンズ
14:立上げミラー
15:1/4波長板
16:対物レンズ
17:光ディスク(記録媒体)
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光光学素子及び回折光学素子及び光学素子ユニット、並びにそれらを用いた光ピックアップ装置、及びその光ピックアップ装置を搭載した光ディスクドライブ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクドライブ装置等に搭載され、光ディスク等の記録媒体に対して情報の記録や再生を行う光ピックアップ装置が知られている。近年、光ピックアップ装置の小型化、低コスト化を図るために、記録媒体からの情報信号を含んだ反射光を光源に戻すことなく効率よく光検出器へ導く手段として回折光学素子(ホログラム素子)を用い、記録媒体からの反射光を回折光学素子(ホログラム素子)で回折して光源からの出射光と分岐することが行われている。
【0003】
光ピックアップ装置に用いられる回折光学素子(ホログラム素子)とその製造方法については種々の提案がなされており、例えば特許文献1には、量産性を損うことなく高精度で所望のホログラム素子を製造するホログラム素子製造方法、及びその製造方法によって製造されたホログラム素子を提供することを目的として、「ホログラム素子のホログラムの各領域にホトリソグラフィー法で回折格子を形成するときに、各領域の回折格子の1次回折効率を測定して、各回折格子のデューティー比を算出し、このデューティー比に基づいて露光量を決定し、1次回折効率および露光量が所定の値になるようにホログラム素子を製造する」ことが記載されている。
【0004】
ここで、特許文献1には、ホログラムのデューティー(duty)比を確認しながら回折効率比を一定にするホログラム加工方法の例が開示されている。光ピックアップ装置におけるホログラムは、複数の領域に分割されているが、この複数の領域間で回折効率が異なると信号にオフセットが生じる(特にトラッキング信号におけるバランス特性が乱れる)。したがって、ホログラムの各領域の回折効率は等しくなるようにしなければならない。各領域間の回折効率が理想的に全く等しい場合は、回折効率比は1.0となるが、製造上の理由で領域ごとに回折効率はバラツクので、各領域間の回折効率比は0.9〜1.1の範囲に抑えるようにしている。この範囲に抑えるために、デューティー比を0.4〜0.6にしている。
【0005】
ところで、偏光性のホログラムは、レーザ光源からの光を高効率(約97%)で透過させ、光ディスクからの反射光を高効率(約38%)で回折させるので、光ディスクドライブ装置の記録および再生の高速化を図る上で重要な光学素子である。その反面、回折効率の高効率化のためにホログラムの溝を深く加工しなければならない。しかしながら、溝が深く、ピッチ(格子周期)の小さいホログラムは体積ホログラムの特性が表れる。光ピックアップ装置に使う上で問題になる体積ホログラムの特性とは、光の入射角度により回折効率が異なる角度依存性のことである。光ピックアップ装置において、ホログラムを光源とカップリングレンズの間に配置すると、収束光がホログラムに入るので光束の中心部と周辺部とでは光の入射角度が異なる。したがって体積ホログラムでは回折効率が異なることになり、信号にオフセットが生じてしまう。このため、本発明者らは、溝深さを浅くして、オフセットを最小限に抑えることを提案している。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−258725号公報
【特許文献2】
特開平6−194523号公報
【特許文献3】
特許第2594548号公報
【特許文献4】
特開2000−75130号公報
【特許文献5】
特開平9−102138号公報
【非特許文献1】
光波電子光学、小山、西原共著、コロナ社、p116〜122
【非特許文献2】
光集積回路、西原、春名、栖原共著、オーム社、p167〜170
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は回折光学素子の回折効率を光の入射角によらず一定にするための発明である。図16にBK7ガラス上にピッチ(格子周期)が異なるホログラムを形成した時の格子の溝深さと回折効率の関係を示す。ピッチ(格子周期)が1.6〜2.0μmと異なる場合において、溝深さを変えていくとピッチごとに最大回折効率は異なるが、深さが0.6〜0.65μm近辺で回折効率は40%程度と最大になる。
仮に、ピッチ1.6μm、深さ0.65μmとすると、ホログラムの体積性を示すQ値:
Q=2πλT/n0Λ2
λ:波長(660nm)
T:格子溝深さ
n0:屈折率(1.25(1.5と1.0の平均))
Λ:格子ピッチ
は、0.84となる。この場合、Q値が1以下なのでこの場合は平面ホログラムとして扱うことができ、光の入射角によらずほぼ一定の回折効率が得られる。
【0008】
次に図17に液晶を用いてピッチ(格子周期)が異なる偏光ホログラムを形成した時の格子の溝深さと回折効率の関係を示す。ピッチが1.6〜2.0μmと異なる場合において、溝深さを変えていくとピッチごとに最大回折効率は異なるが、溝深さが1.7〜1.8μm近辺で回折効率は最大になる。仮に、ピッチ1.6μm、深さ1.8μmとすると、ホログラムの体積性を示すQ値:
Q=2πλT/n0Λ2
λ:波長(660nm)
T:格子溝深さ
n0:屈折率(1.6(1.7と1.5の平均))
Λ:格子ピッチ
は、1.82となる。この場合、Q値が1以上なので平面ホログラムとしては扱うことはできず、体積ホログラムの特性が表れてくる。ここで図18に偏光ホログラムのQ値を変えたときの回折効率の光束入射角依存性を示す。Q値が1以上で体積ホログラムの特性があると、図18に示すように光の入射角αにより回折効率が異なる(詳細については、非特許文献1参照)。このように偏光ホログラムでは通常の無偏光のホログラムに比べて、溝深さを深くしなければ高い回折効率が得られないので、溝深さTが大きくなる分、Q値が大きくなる。結果として体積ホログラムの特性が表れ、光の入射角により回折効率が異なることになる。入射角により回折効率が異なるとトラック信号にアンバランスが生じ、信号にオフセットが発生する。
【0009】
さらに液晶を用いた偏光ホログラムにおいて、格子のデューティー比(格子の凸部の幅A/ピッチΛ)を変えた場合について検討した。格子のデューティー比を0.1〜0.9まで変えて、波長403nmの光が垂直入射した場合に最大回折効率が得られる深さの格子に対して、光の入射角度を−20〜20°まで変えた時の回折効率の変化を図3に示す。格子のデューティー比が0.1〜0.3と小さい場合は入射角度依存性があり、光の入射角により回折効率が異なることがわかる。このように偏光ホログラムでは、溝深さTが大きく、Q値が大きい場合のほかに、デューティー比が小さい場合も回折効率の角度依存性が顕著になることがわかってきた。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであって、偏光ホログラムで生じる体積ホログラムの特性、すなわち回折効率の入射角度依存性を抑制する方法を提案するものである。そして、本発明の目的は、光の入射角度の違いによる回折効率の違いを無くすために、格子のデューティを限定することにより、光の入射角度が違っても回折効率がほぼ一定になるようにした偏光光学素子及び回折光学素子を提供することである。また、本発明では、その偏光光学素子または回折光学素子を光源、光検出器と一体に構成した光学素子ユニットを提供することを目的とする。さらに本発明では、回折効率がほぼ一定になるようにした偏光光学素子または回折光学素子を光学系に用いて信号のオフセットを小さくし、信頼性を向上した光ピックアップ装置を提供することを目的し、さらには、その光ピックアップ装置を搭載することにより安定した信号検出が可能な光ディスクドライブ装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための手段として、請求項1に係る発明は、光ピックアップ装置に用いられる偏光光学素子であって、入射する光の偏光方向により回折効率が異なる回折格子(ホログラム)を有し、格子の周期に対する格子の凸部の幅の比率を格子のデューティー(duty)比と定義したときに、格子のデューティー比を0.4〜0.5とすることを特徴とする。すなわち、請求項1記載の偏光光学素子では、格子のデューティー比を0.4〜0.5(より好ましくは略0.45)とすることにより、光の入射角度が違っても回折効率が等しく、かつ高効率になるようにするものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の偏光光学素子において、前記回折格子は、光学的異方性材料に凹凸形状を設け、少なくともその凹部に等方性物質を充填してなることを特徴とする。すなわち、請求項2記載の偏光光学素子では、光学的異方性材料に凹凸形状を設け、少なくともその凹部に等方性物質を充填した構成として、格子のデューティー比を0.4〜0.5になるように精度良く加工することにより、光の入射角度が違っても回折効率が等しくなるようにすると同時に低コスト化を図るものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、光ピックアップ装置に用いられる回折光学素子であって、請求項1または2記載の偏光光学素子を、第1光学部材と第2光学部材で挟んだ構造としたことを特徴とする。すなわち、請求項3記載の回折光学素子では、請求項1または2記載の偏光光学素子を2つの光学部材で挟むことにより、平面性が高く、熱や湿度に対して安定になるようにするものである。また、空気→ガラス→偏光光学素子の順に光が入ってくるので、空気から直接偏光光学素子に光が入る場合に比べて、偏光光学素子に入る光の入射角度が小さくなり、入射角度依存性の許容値を大きく確保できるようになる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の回折光学素子において、前記第1光学部材と前記第2光学部材の基板厚が異なることを特徴とする。すなわち、請求項4記載の回折光学素子は、2つの光学部材の厚さを異ならせることにより、偏光光学素子を光検出器から遠ざけて、格子のピッチを大きくすることにより、Q値を小さくして回折効率の入射角度依存性を緩和するものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項3または4記載の回折光学素子において、前記第1光学部材と前記第2光学部材の屈折率が異なることを特徴とする。すなわち、請求項5記載の回折光学素子は、2つの光学部材のうち一方の部材の屈折率が他方の部材の屈折率よりも大きくすることにより、偏光光学素子に入る光の入射角度をより小さくして、入射角度依存性の許容値をさらに大きく確保できるようにするものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項3または4または5記載の回折光学素子において、前記第1光学部材と前記第2光学部材のいずれか一方の表面に回折格子を形成したことを特徴とする。すなわち、請求項6記載の回折光学素子は、2つの光学部材のうち、一方の部材に回折格子(グレーティング)を設けることにより、3つのビームを使った信号検出ができるようにし、光軸ずれに対して安定な信号検出ができるようにするものである。
【0017】
請求項7に係る発明は、光源と光検出器を一体化したユニットに、請求項1または2記載の偏光光学素子あるいは請求項3〜6のいずれか一つに記載の回折光学素子を一体化したことを特徴とする。すなわち、請求項7記載の光学素子ユニットは、光源と光検出器を一体化したユニットに、偏光光学素子や回折光学素子を一体化することにより、経時変化に安定な信号検出ができるようにするものである。
【0018】
請求項8に係る発明は、光源からの光を集光レンズで記録媒体に集光して記録または再生を行う光ピックアップ装置において、光路中に回折光学素子を配置して記録媒体からの反射光を回折光学素子により分岐し、光検出器で受光する光学系を備え、前記光路中に配置する回折光学素子が、請求項1または2記載の偏光光学素子、あるいは請求項3〜6のいずれか一つに記載の回折光学素子であることを特徴とする。また、請求項9に係る発明は、請求項8記載の光ピックアップ装置において、請求項7記載の光学素子ユニットを用いることを特徴とする。すなわち、請求項8,9記載の光ピックアップ装置は、光の入射角度が違っても回折効率が等しい偏光光学素子または回折光学素子を使うことにより、信号のオフセットを小さくして光ピックアップ装置の信頼性向上を図るものである。
【0019】
請求項10に係る発明は、記録媒体に対して光ピックアップ装置を用いて情報の記録または再生を行う光ディスクドライブ装置において、前記光ピックアップ装置として、請求項8または9に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする。すなわち、請求項10記載の光ディスクドライブ装置は、請求項8または9記載の光ピックアップ装置を搭載することにより、安定した信号検出が可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
まず、図1〜図4を参照して本発明の第1の実施例を説明する。図1は偏光光学素子の一例を示す、偏光ホログラムの概略要部断面図である。この偏光ホログラム1Aは、複屈折性を有する光学的異方性材料(複屈折性材料と言う)2に凹凸形状の回折格子(ホログラム)を形成したものである。図1に示すように、波長λ(403nm)の光が偏光ホログラム1Aに垂直入射(0°入射)すると透過光(0次光)と回折光(ここでは±1次光だけ示す)を生じる。ここで偏光ホログラム1Aのピッチ(格子周期)は1μmで、波長403nmの光が垂直に入射した時の回折効率が最大になるような溝深さになっているものとする。このように設定された偏光ホログラム1Aにおいて、格子のデューティー(duty)比(duty比=格子の凸部の幅A/格子の周期Λ)を0.1〜0.9まで変化させたサンプルを用意し、図2に示すように光を−20°から+20°まで入射角を変化させてホログラムに入射させて+1次光の回折効率を測定する。格子のデューティー比が0.1〜0.9の各サンプルの場合の+1次光の回折効率の結果を図3に示す。
【0022】
回折効率は、光の入射角度に関わらず一定で、かつ高効率であることが望ましいが、図3からわかるように、格子のデューティー比が0.1〜0.35では光の入射角度により回折効率は大きく変化している。また、デューティー比が0.7〜0.9では入射角度により回折効率も変化する上、回折効率自体が低い値になっている。デューティー比が0.1〜0.35の場合のように回折効率が入射角度で変化すると、図4に示すように偏光ホログラム1Aに収束光が入った場合、入射角度により回折効率が大きく違うので、回折光の強度分布は左右対称ではなくなってしまう。すなわち+の角度で入った光の回折効率は低く、−の角度で入った光の回折効率は高いので強度分布は対称ではなくなってしまう。このような偏光ホログラムを光ピックアップ装置の光学系に用いると、信号にアンバランスを生じて、オフセットが発生してしまう。一方、デューティー比が0.7〜0.9の場合では回折効率自体が低いので、このような偏光ホログラムを光ピックアップ装置の光学系に用いると検出光量が小さく、高速な記録・再生に適さなくなる。
【0023】
以上の結果から、格子のデューティー比は0.4〜0.6が好ましい範囲と考えられる。但し、デューティー比が0.55〜0.6では入射角度により回折効率は変化せずに良好な角度特性である反面、回折効率がデューティー比0.4〜0.5の場合に比べて約10%も低くなるので、高速な記録・再生を目指す上では好ましくない。したがって、角度依存性の少なさと回折効率の高さを満たす観点から、デューティー比は0.4〜0.5が望ましく、デューティー比0.4では回折効率の角度依存性が少しあり、デューティー比0.5では回折効率が低いので、デューティー比は0.45が最適と言える。
格子のデューティー比が0.4〜0.5の場合、入射角が+10°より大きくなると回折効率が低下しているが、通常の光ピックアップ装置ではコリメートレンズの開口数(NA)やレーザ光源の放射角度の制限から、偏光ホログラムに入射する角度はほとんどの場合、±10°以下であるので実用上は問題ないレベルである。
【0024】
(実施例2)
実施例1では偏光ホログラム1Aのデューティー比は0.4〜0.5が適していると述べたが、逆にデューティー比のバラツキを0.4〜0.5に抑えなけばならない。
偏光ホログラムの作り方としては幾つかの方法があるが、LiNbO3結晶を用いてプロトン交換により偏光ホログラムを製造する方法が知られている(特許文献2参照)。また、プロトン交換の方法については、非特許文献2に記載されている。プロトン交換では、水素イオンが結晶中に浸透することを利用するので、矩形でデューティー比を精度良く作ることは難しい。したがって、格子のデューティー比を0.4〜0.5に制御して偏光ホログラムを作るには、機械的、化学的に溝加工を行うことが望ましい。具体的には図5に示す偏光ホログラム1Bのように、光学的異方性材料(複屈折性材料)2にエッチングにより凹凸形状の格子を形成し、少なくともその凹部を、光学的異方性材料の屈折率no、neの一方と同じ屈折率の等方性材料3で充填する方法が適している(特許文献3参照)。
【0025】
ここで、図5に示すような構成の偏光ホログラム1Bにおいて、本実施例では光学的異方性材料2として有機延伸膜を使うことを提案する。特許文献3では、光学的異方性材料としてカルサイトが示されているが、有機延伸膜はカルサイトに比べて大面積化が容易で、膜厚が薄く、安価に入手できると言うメリットを持っている。格子のデューティー比を0.4〜0.5になるように加工するためには、フォトリソグラフィー工程において、デューティー比が0.4〜0.5になるようにマスクを形成すれば良い。有機膜延伸膜の具体例としては、ポリイミドやポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の高分子フィルムを延伸により分子鎖を一軸方向に配向させ、面内複屈折を発生させる方法がある。図6は有機延伸膜の作製方法の一例を示しており、ガラス基板上にポリアミド酸膜を形成し、これを基板から剥離した後、延伸により分子鎖を一軸方向に配向させてポリイミド複屈折膜を作製した例である。この方法では、延伸の時の温度や加える力により複屈折Δnを変えることができ、安価で量産可能な方法である。尚、本出願人は、有機延伸膜をホログラムに用いることを既に提案している(特許文献4参照)。
【0026】
さらに有機延伸膜以外の材料として液晶を用いることも可能である。液晶は、電圧印加の有無により配向方向が変わり、配向方向の違いが屈折率の違いとなる。ここで、図7に液晶を用いた偏光ホログラムの作製工程を示す。図7(a)に示すように、2つの基板5a,5bの間に液晶4を設け、図7(b)に示すように、液晶の両面に電極を設けて電圧印加させて配向させた状態で、格子パターンを形成したマスク6を通して露光し、液晶4を硬化させる。次に図7(c)に示すように、液晶の硬化した所だけを残して、その他の部分は上側の基板5bとともに除去し、図7(d)に示すように、液晶4の屈折率no、neの一方と同じ屈折率の等方性材料3を凹部に充填すれば偏光ホログラム1Cを形成できる。この工程ではエッチング工程が不要なので、工程が簡素化され、高価なエッチング装置が不要なので設備投資が安く、低コスト化も図れる。
【0027】
また、液晶を使って偏光ホログラムを作る別の方法としては、図8に示すような方法もある。まず図8(a),(b)に示すように、等方性基板5aにフォトリソグラフィ工程とエッチング工程を行って凹凸加工した後、図8(c)に示すように、もう1枚の基板5bと貼り合わせ、図8(d)に示すように、基板間に液晶4を充填して、偏光ホログラム1Dを作製する。この方法は、例えば特許文献5に開示されている。この方法では、ガラス基板等をエッチングするので、デューティー比を0.4〜0.5に管理して加工しやすいというメリットを有する。
【0028】
(実施例3)
次に実施例1,2に示した偏光光学素子(偏光ホログラム)を2つの光学部材(例えば透明な平面基板)で挟んだ構成の回折光学素子について説明する。図9にその構成例を示す。この回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eは、図5に示した偏光光学素子(偏光ホログラム)1Bを、第1光学部材7と第2光学部材8とで挟んだ構成になっている。このような構成にすると光学部材(具体的にはガラスもしくはプラスチック部材からなる透明な平面基板)7,8により偏光光学素子1Bが覆われるので、平面性が高く、熱や湿度に対して安定になる。また、直接ホログラム面に触れることがないので、偏光ホログラムが傷ついたり、汚れたりすることがない。このように光学部材7,8で偏光光学素子1Bを覆った構成とすれば、その光学部材の表面であれば汚れた場合でも拭くことができる。
【0029】
さらに偏光光学素子1Bが光学部材7,8で覆われている場合は、図10(a)に示すように空気→光学部材7→偏光光学素子1Bの順に光が入ってくるので、図10(b)に示すように空気から直接偏光光学素子1Bに光が入る場合に比べて、偏光光学素子1Bに入る光の入射角度が小さくなる。また、光の入射角がθ0の時、図10(b)に示すように、光学部材がない場合は、光は偏光光学素子1Bに入射角θ0で入射するが、図10(a)のように光学部材7があると、スネルの法則により、
sinθ0=n1・sinθ1
となり、光は偏光光学素子1Bに入射角θ1で入射する。仮にθ0=10°、光学部材7の屈折率n1がn1=1.5とすると、θ1=6.65°となり、光学部材7があると偏光光学素子1Bへの入射角度が小さくなることがわかる。前述の図3で示したように、回折効率は入射角度により変動するので、入射する光の角度の範囲が狭ければ、利用できるデューティー比の範囲を広げることができ、加工バラツキの許容値が大きくなり、歩留りが向上する。
【0030】
(実施例4)
次に実施例3で示した回折光学素子を光学素子ユニットに一体化した場合の第1光学部材7と第2光学部材8の関係を説明する。まず、本発明の回折光学素子1Eを光学素子ユニット11に搭載した場合の構成例を図11に示す。この光学素子ユニット11は、図11(a)に示すように、半導体レーザからなる光源9と光検出器(受光素子)10を一体に収納したユニット11aの光出・入射用の開口部に、実施例3で示した回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eを固定して一体化した構成のホログラム光源ユニットである。
ここで回折光学素子1Eの偏光ホログラム1Bの格子ピッチは、ホログラム面と、光検出器10の受光素子面の間隔で決まる。偏光ホログラム1Bの格子ピッチはできるだけ大きい方が加工が容易で、Q値も大きくなるので望ましい。偏光ホログラム1Bの格子ピッチを大きくするためには、ホログラム面と、光検出器10の受光素子面を、光軸方向(図11のZ軸方向)に遠ざければよい。したがって、図11(b)に示すように、第2光学部材8を厚くすればホログラム面を光検出器10の受光素子面から遠ざけることができる。
【0031】
しかしながら、第2光学部材8を厚くした分、第1光学部材7も厚くすると回折光学素子全体が厚くなるので、ダイシングで切るときに切りにくくなる。ダイシングはダイサーという刃を回転させて切るので、厚いものを切る時は切削速度を遅くしなければならず、加工時間が長くなる。したがって生産性が低下する。ダイシングのことを考慮すると、回折光学素子全体の厚さとしては、せいぜい3.5mm以下程度にしなければいけないので、図11(b)に示すように、第2光学部材8を厚くした分、第1光学部材7は薄くした方が望ましい。
以上のように、第2光学部材8を厚くしたことにより、偏光ホログラム1Bの格子ピッチを大きくでき、偏光ホログラム1Bの加工が容易になる。さらに第1光学部材7は薄くしたことにより、回折光学素子全体の厚さを厚くならないようにでき、ダイシング加工にかかる時間を長くしないため、生産性の低下を防ぐことができる。
【0032】
(実施例5)
次に実施例4で示した光学素子ユニット11の回折光学素子1Eの第1光学部材7と第2光学部材8の関係をさらに説明する。第1光学部材7の屈折率n1は、実施例3で説明したように、
sinθ0=n1・sinθ1
となるので、屈折率n1が大きいほど偏光ホログラム1Bへの入射角度θ1が小さくなり、角度依存性の影響を緩和するのに効果がある。したがって、第1光学部材7は屈折率が1.7くらいの高屈折率ガラスを用いることが望ましい。その一方、第2光学部材8は実施例4で示したように基板厚さを厚くすることが望ましい。基板厚さを厚くしてもコストが高くなったり、ダイシングで切りにくくなったりしないように、安価で加工が容易な材料であることが望ましい。具体的には、BK7や石英ガラスや樹脂などである。このように第1光学部材7と第2光学部材8は別の光学材料としたほうが、角度依存性の緩和、偏光ホログラムの加工性の観点から有利である。
【0033】
(実施例6)
光ピックアップ装置では、3ビーム法やDPP法など3つの光ビームを光ディスクに照射してトラック信号を検知する方法が良く知られている。3つの光ビームを使うことにより1つの光ビームを照射する方法に比べてトラックオフセットの影響を受けにくくなる。3つの光ビームを生成するためには回折格子(グレーティング)が必要であるが、図12に示すように、3つの光ビームを生成するためのグレーティング12を、第2光学部材8の1面に形成することができる。グレーティング12で生成させる3つの光ビームを、メインビーム(0次光)、サブビーム(±1次光)と分けると、メインビーム(0次光)は光ディスクから反射されて回折光学素子1Eに垂直に入射するが、サブビーム(±1次光)は回折光学素子1Eに垂直ではなく、プラスとマイナスの逆の所定の傾きを持って入射する。従って偏光光学素子1Bに角度依存性があると、サブビームのうち、+1次光は回折効率が高く、−1次光は回折効率が低いといった現象が生じてしまい、正確なトラック検出ができなくなってしまう。したがって、本発明のように格子のデューティー比を0.4〜0.5に限定し、角度依存性を抑制した構成の偏光光学素子1B(または回折光学素子1E)を光ピックアップ装置に用いることは、3ビーム法やDPP法など、3つの光ビームを光ディスクに照射してトラック信号を検知する方法に対しても、正確な信号検出ができる有効な手段となる。
【0034】
(実施例7)
次に光ピックアップ装置の実施例を説明する。図13は本発明の一実施例を示す光ピックアップ装置の概略構成図である。図13において、符号11は光学素子ユニット(ホログラム光源ユニット)、13はカップリングレンズ、14は立上げミラー、15は1/4波長板、16は集光レンズである対物レンズ、17は記録媒体である光ディスクである。図13に示す光ピックアップ装置の光学素子ユニット11のユニット内には、図11または図12に示したように、光源9及び光検出器(受光素子)10が一体に配設されており、そのユニットの光出・入射用の開口部に回折光学素子1Eが一体に設置されている。尚、図13に示す構成は一例であり、本発明に係る光ピックアップ装置はこの構成に限定されるものではない。
【0035】
図13において、光学素子ユニット11内の光源(例えば半導体レーザ)9から出射された直線偏光の光は、回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eを透過し、カップリングレンズ13で略平行光になり、立上げミラー14で光路を略直角方向に偏向され、1/4波長板15を透過して円偏光となり、対物レンズ16で集光されて光ディスク17の記録面に微小なスポット光として照射される。そして、光ディスク17の記録面上の信号を読み取った光は、記録面で反射されて往路とは反対回りの円偏光となり、対物レンズ16で略平行光とされ、1/4波長板15を透過して往路とは直交した直線偏光となり、立上げミラー14で光路を偏向され、カップリングレンズ13に戻り、回折光学素子(偏光ホログラム素子)1Eの偏光ホログラム1Bで回折されて分岐され、分岐された光は光検出器(受光素子)10で受光され、情報信号、フォーカス誤差信号、トラッキング誤差信号等の信号が検出される。
【0036】
図13に示すような構成の光ピックアップ装置に、実施例1〜6に示した偏光光学素子や回折光学素子を用いれば、以下のような利点がある。
(1)入射角度によらず回折効率が均一なので、信号出力にアンバランスが無く正確なトラッキング誤差信号の検出ができる。
(2)回折効率が均一で、かつ回折効率自体も高いので、高速記録・再生に対応できる。
(3)回折光学素子1Eの光学部材7により偏光ホログラム1Bに入射する光の入射角度の範囲を狭い範囲に抑えられるので、利用できるデューティー比の範囲を広げることができ、加工バラツキの許容値が大きくなり、歩留りが向上する。
また、このような回折光学素子を、図11または図12に示すように、光源9と光検出器10が一体となった光学素子ユニット11に一体化することにより、経時変化に安定な信号検出ができる。
【0037】
(実施例8)
実施例7に示した光ピックアップ装置は、回折効率が高く、均一な回折効率の偏光ホログラムを用いるので、光利用効率が高く、信頼性の高い信号が得られる。また、回折効率が高いと信号検出系の光集積回路(OPIC)のゲインを小さくでき、OPICの高速応答化に貢献できる。また、入射角度により回折効率が変わらなければオフセットの小さい信号が得られる。したがって光ディスクドライブ装置の記録・再生速度の高速化と安定したサーボ制御を達成することができる。
さらに、本発明に係る光ピックアップ装置は、偏光分離に偏光ホログラム1Bを用いた回折光学素子1Eを用い、光源1と光検出器(受光素子)10を配設した光学素子ユニット11と一体化しているので、光ピックアップ装置の小型化、薄型化が可能であり、図14に示すようなノート型パーソナルコンピュータ19に搭載される光ディスクドライブ装置20の光ピックアップ装置として好適に用いることができる。
【0038】
次に光ディスクドライブ装置の構成例を図15に示す。図15は光ディスクドライブ装置の概略構成の一例を示すブロック図である。この光ディスクドライブ装置20は、情報記録媒体としての光ディスク17を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、レーザコントロール回路24、エンコーダ25、モータドライバ27、再生信号処理回路28、サーボコントローラ33、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、リード・オンリー・メモリ(ROM)39、中央演算処理装置(CPU)40、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)41などを備えている。尚、図11における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表わすものではない。また、光ディスク17としては、CD(コンパクト・ディスク)系の光ディスク(CD,CD−R,CD−RW)や、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)系の光ディスク(DVD,DVD−R,DVD−RW)等があり、光ピックアップ装置23内に波長の異なる光源を複数備えることにより、互換性を持たせることができる。
【0039】
光ピックアップ装置23は、光ディスク17のスパイラル状または同心円状のトラックが形成された記録面にレーザ光を照射すると共に、記録面からの反射光を受光し、情報の記録または再生を行うための装置であり、例えば実施例7で説明した図13のような構成となっている。
再生信号処理回路28は、光ピックアップ装置23の出力信号である電流信号を電圧信号に変換し、該電圧信号に基づいてウォブル信号、再生情報を含むRF信号及びサーボ信号(フォーカスエラー信号、トラックエラー信号)などを検出する。そして、再生信号処理回路28では、ウォブル信号からアドレス情報及び同期信号等を抽出する。ここで抽出されたアドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25に出力される。さらに、再生信号処理回路28では、RF信号に対して誤り訂正処理等を行なった後、バッファマネージャ37を介してバッファRAM34に格納する。また、サーボ信号は再生信号処理回路28からサーボコントローラ33に出力される。サーボコントローラ33では、サーボ信号に基づいて光ピックアップ装置23を制御する制御信号を生成し、モータドライバ27に出力する。
【0040】
前記バッファマネージャ37では、バッファRAM34へのデータの入出力を管理し、蓄積されたデータ量が所定の値になると、CPU40に通知する。前記モータドライバ27では、サーボコントローラ33からの制御信号及びCPU40の指示に基づいて、光ピックアップ装置23及びスピンドルモータ22を制御する。前記エンコーダ25では、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されているデータをバッファマネージャ37を介して取り出し、エラー訂正コードの付加などを行い、光ディスク17への書き込みデータを作成するとともに、再生信号処理回路28からの同期信号に同期して、書き込みデータをレーザコントロール回路24に出力する。前記レーザコントロール回路24では、エンコーダ25からの書き込みデータに基づいて、光ピックアップ装置23からのレーザ光出力を制御する。
【0041】
前記インターフェース38は、ホスト(例えば、パーソナルコンピュータ)との双方向の通信インターフェースであり、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)及びSCSI(Small Computer System Interface)等の標準インターフェースに準拠している。
前記ROM39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された制御用のプログラム等が格納されている。CPU40は、ROM39に格納されている前記プログラムに従って上記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を一時的にRAM41に保持する。
【0042】
以上、光ディスクドライブ装置の一構成例を説明したが、本発明では光ピックアップ装置23として、実施例1〜6で説明した光学素子(偏光光学素子、回折光学素子)を用いた光ピックアップ装置(例えば図13の構成)を搭載しているので、光利用効率が高く、信頼性の高い信号が得られ、かつ記録・再生速度の高速化を達成することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の偏光光学素子では、格子のデューティー比を0.4〜0.5(より好ましくは略0.45)と限定することにより、回折効率の入射角度依存性を抑制でき、光の入射角度が違っても回折効率が等しく、かつ高効率になるようにすることができるので、信号にアンバランスが出ることなく高い回折効率を得ることができる。
請求項2記載の偏光光学素子では、光学的異方性材料に凹凸形状を設け、少なくともその凹部に等方性物質を充填した構成としたので、格子のデューティー比を0.4〜0.5になるように精度良く加工することができ、光の入射角度が違っても回折効率が等しくなるようにすると同時に、低コスト化を図ることができる。
【0044】
請求項3記載の回折光学素子では、請求項1または2記載の偏光光学素子を2つの光学部材で挟むことにより、偏光光学素子が光学部材で覆われるので平面性が高く、熱や湿度に対して安定になる。また、直接ホログラム面に触れないので、偏光光学素子が傷ついたり、汚れたりすることがない。さらに、偏光光学素子への光の入射角度を小さくできるので、入射角度依存性の許容値を大きく確保できるようになり、回折効率の変動を小さくできる。
請求項4記載の回折光学素子では、2つの光学部材の厚さを異ならせることにより、素子全体の厚さを変えることなく、偏光光学素子を光検出器から遠ざけて、格子のピッチを大きくすることができ、Q値を小さくして回折効率の入射角度依存性を緩和することができる。また、偏光光学素子の格子ピッチを大きくすることができるので加工しやすくなる。
【0045】
請求項5記載の回折光学素子では、2つの光学部材のうち一方の部材の屈折率を他方の部材の屈折率よりも大きくすることにより、偏光光学素子に入る光の入射角度をより小さくして、入射角度依存性の許容値をさらに大きく確保できるようにすることができ、コストアップすることなく加工性に優れた回折光学素子を提供することができる。
請求項6記載の回折光学素子では、2つの光学部材のうち、一方の部材に回折格子(グレーティング)を設けることにより、3つのビームを記録媒体に照射して信号検出ができ、光軸ずれに対して安定なトラック信号検出ができるようになる。また、サブビームがある角度を持って偏光光学素子に入射しても、格子のデューティー比を0.4〜0.5と限定して回折効率の入射角度依存性を抑制しているので、サブビーム信号にアンバランスが出ることなく高い回折効率を得ることができる。
請求項7記載の光学素子ユニットでは、光源と光検出器を一体化したユニットに、偏光光学素子または回折光学素子を一体化することにより、経時変化に安定な信号検出ができるようになる。
【0046】
請求項8,9記載の光ピックアップ装置では、光の入射角度が違っても回折効率が等しい偏光光学素子または回折光学素子を使うことにより、信号出力にアンバランスが無く、正確なトラッキング信号検出ができるうえに高速記録が可能となる。
請求項10記載の光ディスクドライブ装置では、請求項8または9記載の光ピックアップ装置を搭載することにより、安定した信号検出ができ、記録・再生速度の高速化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】偏光光学素子の一例を示す偏光ホログラムの概略要部断面図である。
【図2】図1に示す偏光ホログラムに入射角度を変えて光を入射させ、1次光の回折効率を測定する方法の説明図である。
【図3】(a)はデューティー比が0.1〜0.9の偏光ホログラムのサンプルを用い、光の入射角度を−20°から+20°まで変化させて+1次光の回折効率を測定した結果を示す図、(b)は偏光ホログラムの格子のデューティー比の説明図である。
【図4】偏光ホログラムに収束光が入射した場合の回折光の強度分布の説明図である。
【図5】本発明の一実施例を示す偏光光学素子の概略要部断面図である。
【図6】有機延伸膜の作製方法の一例を示す図である。
【図7】液晶を用いた偏光光学素子の作製工程の一例を示す図である。
【図8】液晶を用いた偏光光学素子の作製工程の別の例を示す図である。
【図9】本発明の一実施例を示す回折光学素子の概略要部断面図である。
【図10】図9に示す回折光学素子の作用効果の説明図である。
【図11】図9に示す回折光学素子を一体化した光学素子ユニットの構成説明図である。
【図12】光学部材の1面にグレーティングを設けた回折光学素子を用いた光学素子ユニットの構成説明図である。
【図13】本発明の一実施例を示す光ピックアップ装置の概略構成図である。
【図14】ノート型パーソナルコンピュータとそれに搭載される光ディスクドライブ装置の一例を示す外観斜視図である。
【図15】光ディスクドライブ装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【図16】BK7ガラス上にピッチの異なる凹凸形状のホログラムを形成した時の、格子の溝深さと回折効率の関係を示す図である。
【図17】液晶を用いてピッチの異なる偏光ホログラムを形成した時の、格子の溝深さと回折効率の関係を示す図である。
【図18】偏光ホログラムのQ値を変えたときの回折効率の光束入射角依存性を示す図である。
【符号の説明】
1A,1B,1C,1D:偏光ホログラム(偏光光学素子)
1E:回折光学素子
2:光学的異方性材料(複屈折性材料)
3:光学的等方性材料
4:液晶
5a,5b:基板
6:マスク
7:第1光学部材
8:第2光学部材
9:光源
10:光検出器(受光素子)
11:光学素子ユニット
12:グレーティング(回折格子)
13:カップリングレンズ
14:立上げミラー
15:1/4波長板
16:対物レンズ
17:光ディスク(記録媒体)
Claims (10)
- 光ピックアップ装置に用いられる偏光光学素子であって、
入射する光の偏光方向により回折効率が異なる回折格子(ホログラム)を有し、格子の周期に対する格子の凸部の幅の比率を格子のデューティー(duty)比と定義したときに、格子のデューティー比を0.4〜0.5とすることを特徴とする偏光光学素子。 - 請求項1記載の偏光光学素子において、
前記回折格子は、光学的異方性材料に凹凸形状を設け、少なくともその凹部に等方性物質を充填してなることを特徴とする偏光光学素子。 - 光ピックアップ装置に用いられる回折光学素子であって、
請求項1または2記載の偏光光学素子を、第1光学部材と第2光学部材で挟んだ構造としたことを特徴とする回折光学素子。 - 請求項3記載の回折光学素子において、
前記第1光学部材と前記第2光学部材の基板厚が異なることを特徴とする回折光学素子。 - 請求項3または4記載の回折光学素子において、
前記第1光学部材と前記第2光学部材の屈折率が異なることを特徴とする回折光学素子。 - 請求項3または4または5記載の回折光学素子において、
前記第1光学部材と前記第2光学部材のいずれか一方の表面に回折格子を形成したことを特徴とする回折光学素子。 - 光源と光検出器を一体化したユニットに、請求項1または2記載の偏光光学素子あるいは請求項3〜6のいずれか一つに記載の回折光学素子を一体化したことを特徴とする光学素子ユニット。
- 光源からの光を集光レンズで記録媒体に集光して記録または再生を行う光ピックアップ装置において、
光路中に回折光学素子を配置して記録媒体からの反射光を回折光学素子により分岐し、光検出器で受光する光学系を備え、前記光路中に配置する回折光学素子が、請求項1または2記載の偏光光学素子、あるいは請求項3〜6のいずれか一つに記載の回折光学素子であることを特徴とする光ピックアップ装置。 - 請求項8記載の光ピックアップ装置において、
請求項7記載の光学素子ユニットを用いることを特徴とする光ピックアップ装置。 - 記録媒体に対して光ピックアップ装置を用いて情報の記録または再生を行う光ディスクドライブ装置において、
前記光ピックアップ装置として、請求項8または9に記載の光ピックアップ装置を搭載したことを特徴とする光ディスクドライブ装置。
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