JP4407170B2 - 液体噴射装置及びその駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射装置及びその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ノズルからターゲットに対して液体を噴射する液体噴射装置として、インクジェット式記録装置が広く使用されている。このインクジェット式記録装置は、キャリッジと、同キャリッジに搭載された記録ヘッドとを備えていた。そして、キャリッジを記録媒体に対して移動させながら、記録ヘッドに形成されたノズルからインクを吐出し、記録媒体に対して印刷を行うようになっていた。
【0003】
ところで、このようなインクジェット式記録装置は、非印刷時において、記録ヘッドのノズルから水蒸気等のインクの溶媒が蒸発することにより、ノズルにおけるインク粘度が上昇したり、インクが固化したりしてしまうことがあった。そしてその結果、ノズルに塵埃が付着したり、インクの吐出が良好に行われなくなったりして、印刷が良好に行われなくなる可能性があった。
【0004】
このため、これらの問題を解決するために、キャッピング手段を備えたインクジェット式記録装置が知られていた。詳しくは、キャッピング手段は、記録ヘッドのノズル形成面を覆うことが可能なキャップと、同キャップの内部を減圧可能な吸引ポンプとを備えており、非印刷時にはこのキャップによって記録ヘッドのノズル形成面を覆うようになっていた。そして、記録ヘッドとキャップによって形成される空間の湿度を保ち、インクの固化を防ぐようになっていた。
【0005】
また、キャップによって記録ヘッドのノズル形成面を覆った状態で、吸引ポンプによってキャップの内部を減圧させることにより、ノズルからインクや塵埃等を吸引するようになっていた。これにより、ノズル付近における粘度の上昇したインクや塵埃等が除去され、ノズルの性能を最適な状態に保つことが可能となっていた。
【0006】
ところで、上記のようなインクジェット式記録装置においては、インクカートリッジから記録ヘッドまでのインク流路中に、インクに混入している気泡や不純物が滞留することがあった。そして、これらの気泡や不純物によって、インク流路内におけるインクの充填性が低下し、記録ヘッドへのインクの供給性が低下したり、印刷中にノズルから気泡や不純物が流れ出したりして、印刷品質が低下するおそれがあった。
【0007】
そこで、インク流路中におけるインクの充填性を高めるために、いわゆる、チョークバルブといわれるバルブユニットを備えたインクジェット式記録装置が知られていた(例えば、特許文献1参照。)。詳しくは、このバルブユニットは、インクカートリッジと記録ヘッドとの間のインク流路内に設けられ、インク流路を開閉することが可能となっていた。
【0008】
そして、バルブユニットを閉弁状態とするとともに、前記したキャップによって記録ヘッドのノズル形成面を覆い、吸引手段によってキャップの内部を減圧させることにより、バルブユニットよりも下流におけるインク流路内に負圧を蓄積することができるようになっていた。その後、負圧が蓄積された状態でバルブユニットを開弁状態とすることにより、インク流路内のインクの流速を瞬間的に高めることができるようになっていた。そして、瞬間的に流速の高められたインクと一緒に、滞留していた気泡や不純物を一気にノズルから排出する、いわゆる、チョーククリーニングを行うことができるようになっていた。そして、この結果、インク流路内におけるインクの充填性を高めることが可能となっていた。
【0009】
【特許文献1】
特開2001−38925号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のようなインクジェット式記録装置のなかには、インク流路中に、気泡だめといわれる、気泡をトラップする機構を備えたものがあった。詳しくは、この気泡だめは、インク流路途中において部屋状に形成されており、天井部分より低い位置にインクの流入口と出口とを備えるようになっていた。従って、この気泡だめに流入されたインクは、そのインク中に含まれている気泡が、インクとの比重の違いによって、気泡だめの天井部分に向かって上昇し、トラップされるようになっていた。この結果、インクに含まれている気泡を、この気泡だめから排出させないようにすることができ、記録ヘッドに気泡が流入することによる印刷不良をより効果的に防ぐことができるようになっていた。
【0011】
ところが、このような気泡だめは、その容積に限界があったため、トラップ可能な気泡の量に限界があった。そこで、前記したようなチョーククリーニングを行うことによってトラップされた気泡を定期的に除去することが望まれていた。しかし、チョーククリーニングを行うときに、気泡だめの内部において、インクや気泡の澱み部分が生じることがあり、澱み部分に滞留した気泡を完全に除去することができなくなることがあった。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、気泡だめに滞留している気泡の除去をより確実に行うことができる液体噴射装置及びその駆動方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を貯留する液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を導く液体供給路とを備えた液体噴射装置において、前記液体供給路は、少なくとも、前記液体中に含まれる気泡をトラップ可能な気泡だめを備え、流路抵抗が第1の流路抵抗値から該第1の流路抵抗値よりも大きい第2の流路抵抗値までの間で変化可能な気泡トラップ流路と、前記気泡の浮力に抗して前記気泡を移送可能であり、流路抵抗が前記第1の流路抵抗値と前記第2の流路抵抗値との間となるように流路断面積が決定されている気泡非トラップ流路と、を互いに並列となるように備え、前記気泡トラップ流路の流路抵抗を変化させることにより、前記気泡トラップ流路と前記気泡非トラップ流路とを流れる前記液体の流量の分配率を変化させる分配手段を備え、該分配手段は、前記液体噴射ヘッドから前記ターゲットに前記液体を噴射する場合には、前記気泡非トラップ流路よりも前記気泡トラップ流路側に多めに前記液体が流れるようにする。
【0014】
本発明によれば、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射しているときには、分配手段によって、気泡非トラップ流路よりも気泡トラップ流路側に多めに液体が流れるようにすることができる。この結果、液体噴射ヘッドへと供給される液体中に含まれる気泡が、気泡トラップ流路においてトラップされる確率が高くなり、液体噴射ヘッドから液体とともに気泡が排出されることによる噴射性能の低下を防ぐことができる。
【0015】
また、気泡トラップ流路にトラップされた気泡の体積が増加し、気泡トラップ流路における気泡のトラップ能力に限界が生じるような場合には、分配手段によって、気泡トラップ流路よりも気泡非トラップ流路へと液体が多めに流れるようにすることができる。そして、気泡非トラップ流路から液体噴射ヘッドへの液体の流れにより、気泡トラップ流路においてトラップされていた気泡を気泡非トラップ流路へと導くことができる。このとき、気泡非トラップ流路は、気泡をトラップしにくい流路断面積となるように形成されているので、気泡非トラップ流路に導かれた気泡は、液体噴射ヘッドへと移送される。この結果、気泡トラップ流路に滞留している気泡の除去をより確実に行うことができるようになる。
【0016】
この液体噴射装置において、前記気泡だめは、液体貯留室と、前記液体貯留室に前記液体を流入させる液体流入孔と、前記液体貯留室から前記液体を流出させる液体流出孔とを備え、前記液体流入孔と前記液体流出孔とは、鉛直方向において、前記液体貯留室の天井部分よりも下方に位置するように設けられている。
【0017】
これによれば、気泡トラップ流路を流れる液体が液体貯留室に流入すると、液体貯留室の天井部分と液体流入孔と液体流出孔との間の高低差により、液体に含まれる気泡が、浮力によって天井部分に向かって上昇し、液体流出孔から流出されないようにすることができる。この結果、気泡トラップ流路に簡単な構造の液体貯留室を設けることで容易に気泡をトラップすることができ、気泡をトラップするための複雑な装置等を設ける必要がないので、装置全体の構造を簡素化させることができる。
【0018】
この液体噴射装置において、前記分配手段は、前記液体貯留室の容積を第1の容積から、同第1の容積よりも小さい第2の容積までの間で変化させることにより、前記気泡トラップ流路の流路抵抗を前記第1の流路抵抗値から前記第2の流路抵抗値までの間で変化させる容積変更手段である。
【0019】
これによれば、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射しているときには、容積変更手段によって、液体貯留室の容積を第1の容積に近付けて、気泡トラップ流路の流路抵抗を第1の流路抵抗値に近付ける。この結果、気泡トラップ流路における流路抵抗の大きさを、気泡非トラップ流路よりも小さくすることができ、気泡非トラップ流路よりも気泡トラップ流路側に多めに液体が流れるようにすることができる。
【0020】
また、気泡トラップ流路にトラップされた気泡が成長し、気泡トラップ流路における気泡のトラップ能力に限界が生じるような場合には、容積変更手段によって、液体貯留室の容積を第2の容積に近付けて、気泡トラップ流路の流路抵抗を第2の流路抵抗値に近付ける。この結果、気泡トラップ流路における流路抵抗の大きさを、気泡非トラップ流路よりも大きくすることができ、気泡非トラップ流路へと多めに液体が流れるようにすることができる。
【0021】
なお、第2の容積を限りなく小さな値とすることで、液体貯留室の容積を第2の容積に近付けさせたときに、液体貯留室内にトラップされている気泡を、液体貯留室内において行き場を失わせることができる。従って、このようにすることにより、行き場を失った気泡がより確実に気泡非トラップ流路へと導かれるようになり、液体貯留室にトラップされている気泡をより確実に除去することが可能となる。
【0022】
この液体噴射装置において、前記容積変更手段は、前記液体貯留室の壁面の一部を構成する可撓性部材と、前記可撓性部材を撓ませる変位手段とによって構成される。
【0023】
これによれば、可撓性部材の撓みによって液体貯留室の容積が増減するようになり、液体貯留室の容積の増減の範囲を大きくすることができる。従って、液体貯留室の容積を第2の容積に近付けたときに、液体貯留室内にトラップされている気泡を、液体貯留室内においてより確実に行き場を失わせることができる。そして、液体貯留室にトラップされている気泡をより確実に除去することが可能となる。
【0024】
この液体噴射装置において、前記可撓性部材は、前記液体貯留室の内外の圧力差によって撓む部材であり、前記変位手段は、前記液体貯留室に前記内外の圧力差を生じさせる圧力調整手段である。
【0025】
これによれば、圧力調整手段によって液体貯留室の内外の圧力差を生じさせることにより、可撓性部材を変位させることができる。すなわち、可撓性部材を変位させるために、アクチュエータ等の駆動手段にて直接的に変位させるようにする必要がなく、液体貯留室に流入する液体の圧力や、液体貯留室の外部の空気の圧力等を変化させることで間接的に変位させるようにすることができる。この結果、可撓性部材を変位させるための駆動手段を、可撓性部材から離れた位置に設けることができ、装置の設計の自由度を増加させることができる。
【0026】
この液体噴射装置において、前記圧力調整手段は、前記気泡トラップ流路及び前記気泡非トラップ流路よりも上流における前記液体供給路を流れる前記液体の流量を変化させる流量調整手段と、前記液体噴射ヘッドのノズルから前記液体を吸引する吸引手段とによって構成される。
【0027】
これによれば、流量調整手段によって液体供給路を流れる液体の流量を減少させた状態で、吸引手段によって液体噴射ヘッドのノズルから液体を吸引することで、液体流路内に負圧を蓄積させることができる。この結果、液体貯留室の内外に圧力差を生じさせ、可撓性部材を変位させることができる。
【0028】
すなわち、可撓性部材を変位させるための圧力調整手段として、液体流路内に負圧を蓄積させるための装置である、流量調整手段と吸引手段とを使用することができる。そして、これら流量調整手段と吸引手段とは、チョーククリーニングを行う液体噴射装置に通常備えられているものを使用可能である。従って、チョーククリーニングを行うことが可能な液体噴射装置に、もともと備えられていた装置を圧力調整手段として兼用することができるので、装置の構造を簡単なものとすることができる。
【0029】
この液体噴射装置において、前記液体供給路上において前記液体を一時貯留し、前記液体噴射ヘッドからの前記液体の噴射に伴って、前記一時貯留した前記液体が減少する圧力室と、同圧力室内の前記液体の減少に伴う負圧を感知して前記液体供給路から前記圧力室への前記液体の供給及び非供給を切り換える開閉弁とを有する液体供給用バルブユニットを備え、前記液体貯留室は、前記圧力室である。
【0030】
これによれば、液体貯留室が、液体供給用バルブユニットに備えられている圧力室と兼用されるので、装置を簡素化させることができる。
この液体噴射装置において、前記気泡非トラップ流路は、蛇行形状に形成されている。
【0031】
これによれば、全体的にコンパクトな状態で、気泡非トラップ流路を、流路の長さが比較的長い形状となるように形成することができる。従って、気泡非トラップ流路は、液体噴射ヘッドからターゲットに対して液体を噴射しているときには、気泡非トラップ流路へと液体が流入しにくい構造であることが望まれるが、流路の長さが比較的に長く、流路抵抗が比較的大きいため、液体が流入しにくい構造に適したものとすることができる。
この液体噴射装置において、前記分配手段は、前記気泡だめにトラップされている気泡を排出させる場合には、前記気泡トラップ流路よりも前記気泡非トラップ流路側に多めに前記液体が流れるようにする。
この液体噴射装置において、前記分配手段は、前記液体噴射ヘッドから前記ターゲットに前記液体を噴射する場合には、前記気泡トラップ流路の流路抵抗が前記第1の流路抵抗値に近い値となるように作動する。
本発明は、ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を貯留する液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を導く液体供給路とを備えた液体噴射装置において、前記液体供給路は、少なくとも、前記液体中に含まれる気泡をトラップ可能な気泡だめを備え、流路抵抗を変更可能な気泡トラップ流路と、前記気泡の浮力に抗して前記気泡を移送可能な気泡非トラップ流路と、を互いに並列となるように備え、前記気泡だめは、壁面の一部が可撓性部材によって構成され、該可撓性部材が撓み変位することにより、前記気泡トラップ流路と前記気泡非トラップ流路とを流れる前記液体の流量の分配率を変化可能とし、前記可撓性部材は、前記液体噴射ヘッドから前記ターゲットに前記液体を噴射する場合には、前記気泡非トラップ流路よりも前記気泡トラップ流路側に多めに前記液体が流れるようにすべく作動する。
【0032】
本発明は、ターゲットに対してノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、前記液体を貯留する液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を導く液体供給路とを備えた液体噴射装置の駆動方法において、前記液体供給路は、少なくとも、前記液体中に含まれる気泡をトラップ可能な気泡トラップ流路と、前記気泡の浮力に抗して前記気泡を移送可能に流路断面積が決定されている気泡非トラップ流路とを互いに並列となるように備え、前記液体噴射装置は、前記気泡トラップ流路及び前記気泡非トラップ流路よりも上流における前記液体供給路を流れる前記液体の流量を変化させる流量調整手段と、前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記液体を吸引する吸引手段とを備え、分配手段により、前記気泡トラップ流路よりも前記気泡非トラップ流路を流れる前記液体の流量の方が多くなるように、前記液体の前記流量の分配率を変化させる流路切り換え段階と、前記流量調整手段によって前記液体供給路を流れる前記液体の流量を減少させる流量減少段階と、前記吸引手段により前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記液体を吸引する吸引段階と、前記吸引段階の後に、前記流量調整手段によって前記液体供給路を流れる前記液体の流量を増加させる流量増加段階とを備えた。
【0033】
これによれば、第1の流量変化段階において、気泡非トラップ流路へと流れる液体の流量が多くなっている状態で、液体供給路を流れる液体の流量が減少されるとともに、吸引手段によって液体噴射ヘッドのノズルから液体が吸引され、液体供給路内に負圧が蓄積されるようになる。この結果、液体供給路内に滞留している気泡の体積を増大させ、液体噴射ヘッドを介して外部に排出させやすい状態とすることができる。
【0034】
また、この後に、流量増加段階に移行することにより、液体供給路内における負圧の蓄積を解消させ、液体供給路内に滞留していた気泡を一気にノズルから排出することが可能となる。この結果、チョーククリーニングを行うことができ、気泡トラップ流路にトラップされている気泡の除去をより確実に行うことができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図13に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置11は、本体ケース12、プラテン13、ガイド軸14、キャリッジ15、タイミングベルト16、キャリッジモータ17、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド20を備える。さらに、インクジェット式記録装置11は、液体供給用バルブユニットとしてのバルブユニット21、液体貯留手段としてのインクカートリッジ23、加圧ポンプ25、吸引手段としてのキャッピング装置26を備える。
【0036】
本体ケース12は、略直方体形状の箱体であり、図1に示す右側端部にはカートリッジホルダ12aが形成されている。なお、本実施形態においては、本体ケース12の長手方向を主走査方向というものとする。
【0037】
プラテン13は、本体ケース12内において、主走査方向に沿って架設されており、紙送り手段(図示しない)を介して送出されるターゲットとしての記録媒体(図示しない)を支持するための部材となっている。なお、本実施形態においては、記録媒体は、前記主走査方向と直交する方向、すなわち、副走査方向に送出されるものとする。
【0038】
ガイド軸14は棒状に形成され、前記プラテン13と平行、すなわち、主走査方向に沿って、本体ケース12内に架設されている。キャリッジ15は、前記プラテン13と対向する位置において、前記ガイド軸14に対して相対移動可能に貫挿されており、主走査方向に往復移動可能となっている。
【0039】
そして、キャリッジ15は、タイミングベルト16を介してキャリッジモータ17に接続されている。キャリッジモータ17は本体ケース12に支持されており、キャリッジモータ17が駆動されることにより、タイミングベルト16を介してキャリッジ15は駆動される。この結果、キャリッジ15がガイド軸14に沿って往復移動される。
【0040】
記録ヘッド20は、キャリッジ15の前記プラテン13と対向する面に設けられており、プラテン13側に向かって液体としてのインクを噴射させるための複数の図示しないノズルを備えている。バルブユニット21は、キャリッジ15上に搭載されており、一時貯留したインクを、圧力を調整した状態で前記記録ヘッド20へと供給するようになっている。なお、本実施形態においては、バルブユニット21は、2つ設けられており、1つのバルブユニット21は、2色のインクの圧力を調整可能となっている。そして、本実施形態においては、一方のバルブユニット21はブラックとイエロー、他方のバルブユニット21はマゼンタとシアンの各色のインクについて、圧力を調整して記録ヘッド20へと供給するものとするが、その他の色の組み合わせに変更してももちろんよい。
【0041】
インクカートリッジ23は、前記カートリッジホルダ12aに対して着脱可能に収容されており、前記インクの色に対応して4個具備されている。そして、図2には、4個のインクカートリッジ23のうち、1つを示しており、インクカートリッジ23は、インクケース31とインクパック32とを備えている。インクケース31は略直方体状に形成されている。また、インクパック32は、2枚のフィルム32a,32bを重ね合わせて形成され、その内部にインクが封入されている。
【0042】
そして、インクパック32は、インク排出口32cを備え、前記インクケース31内に収納されている。なお、このとき、インク排出口32cのみがインクケース31から露出した状態となり、それ以外の部分がインクケース31内に気密状態となるようにして収納される。従って、インクケース31とインクパック32との間には、隙間33が形成されている。
【0043】
また、前記インクケース31には、前記隙間33に連通する連通孔(図示しない)が設けられており、この連通孔を介して空気を流入させることにより、隙間33における圧力を上昇させ、インクパック32を押し潰すような力を発生させることが可能となっている。そして、インクパック32のインク排出口32cは、図1に示すように、インクの色毎に設けられているインク供給チューブ35を介して、前記バルブユニット21に対して接続されている。なお、インク供給チューブ35は、液体供給路を構成する。従って、インクケース31内の隙間33に空気を導入することにより、インクパック32内のインクは、インク供給チューブ35を介して、バルブユニット21に対して供給される。
【0044】
加圧ポンプ25は、本実施形態においては、インクカートリッジ23の上に位置するようにして、本体ケース12に対して固定されている。加圧ポンプ25は、大気を吸引して加圧空気として排出することが可能であり、加圧された空気は、空気流路を構成する加圧チューブ37を介して圧力検出器38に供給される。
【0045】
圧力検出器38では、加圧ポンプ25から供給された空気の圧力が検出される。そして、本実施形態においては、圧力検出器38において検出された圧力に基づいて、加圧ポンプ25の駆動が調整されるものとする。従って、加圧ポンプ25から供給された空気は、圧力検出器38によって、所定範囲内の圧力となるように調整される。そして、圧力検出器38は、空気流路を構成する4本の空気供給チューブ39を介して前記インクカートリッジ23の連通孔に対して接続されており、インクカートリッジ23の前記隙間33に所定範囲内の圧力となるように調整された空気が導入される。
【0046】
以上により、各インクカートリッジ23のインクパック32は、加圧ポンプ25から供給される加圧空気によって加圧され、インクパック32内のインクが、前記バルブユニット21に対して供給される。そして、バルブユニット21において一時貯留されたインクは、圧力が調整された状態で、記録ヘッド20へと供給される。
【0047】
このとき、画像データに基づいて、紙送り手段によって記憶媒体を副走査方向に移動させながら、キャリッジ15を主走査方向に移動させ、記録ヘッド20からインクを噴射させることにより、記録媒体上に印刷を行うことが可能となる。
【0048】
キャッピング装置26は、前記キャリッジ15の移動経路上における非印刷領域(ホームポジョン)に設けられている。そして、キャッピング装置26の上面には、前記記録ヘッド20のノズル形成面に密着して封止し得るエラストマ等の弾性材料により形成されたキャップ26aが配置されている。そして、図3に示すように、このキャップ26aは、キャリッジ15がホームポジョンに移動したときに、記録ヘッド側に移動(上昇)して、記録ヘッド20のノズル形成面を封止することができるように構成されている。
【0049】
そして、キャップ26aの内部には、インクを含んだ吸収材26bが配設されており、インクジェット式記録装置11の休止期間中において、キャップ26aによって記録ヘッド20のノズル形成面を封止することで、キャップ26aの内部を高湿状態に保ち、インク粘度の上昇を防ぐようになっている。なお、吸収材26bの材質としては、スポンジ等が使用可能であるが、インクを吸収保持可能な材質であれば、これに限定されない。
【0050】
また、キャップ26aの底部にはインクや気泡、不純物等を排出するための排出口26cが設けられており、この排出口26cにはインク排出チューブ26dの一端が接続されている。そして、インク排出チューブ26dの他端は、図示しない廃液タンクに接続されている。
【0051】
インク排出チューブ26dの途中にはチューブポンプ26eが設けられており、チューブポンプ26eの吸引動作によって、キャップ26aの内部に負圧が形成されるようになっている。そして、粘度が上昇したインクや、塵埃、カートリッジ交換等によって発生した記録ヘッド20の内部の気泡等が、インク排出チューブ26dを介して廃液タンクへと排出されるようになっている。これにより、いわゆるクリーニング操作を行うことができるようになっている。
【0052】
一方、図1に示すように、キャッピング装置26には、キャップ26aの印字領域側に隣接するようにして、ゴム等の弾性素材を短冊状に形成したワイピング部材26fが備えられている。そして、ワイピング部材26fは、必要に応じて記録ヘッド20の移動経路に水平方向に進出することにより、ノズル形成面を払拭して清掃することができるように構成されている。
【0053】
次に、前記バルブユニット21について、図4〜図9に従って、詳しく説明する。
図4〜図8に示すように、バルブユニット21は、流路形成部材41、第1及び第2のフィルタ43a,43b、第1のフィルム部材45、第1及び第2の嵌合部材47a,47bを備える。さらに、バルブユニット21は、開閉弁としての第1及び第2の弁部材49a,49b、可撓性部材としての第2のフィルム部材51、第1及び第2の受圧板53a,53bも備える。
【0054】
流路形成部材41は、略直方体形状に形成されており、その背面41a(図4の左側面)にインク導入部55が設けられている。図6及び図7に示すように、インク導入部55は、2つの円筒を連結したような形状を有しており、第1及び第2のインク導入孔57a,57bを備える。そして、これら第1及び第2のインク導入孔57a,57bに、前記インク供給チューブ35(図1参照)がそれぞれ1本ずつ接続されることによって、インク供給チューブ35から合わせて2色のインクが流路形成部材41内に導かれるようになっている。
【0055】
図4及び図6に示すように、流路形成部材41には、その一側面41bに、第1及び第2の正方形凹部61a,61bが凹設されている。また、図6に示すように、第1及び第2の正方形凹部61a,61bの底面には、それぞれ第1及び第2の球面状凹部63a,63bが凹設されている。そして、これら第1及び第2の球面状凹部63a,63bは、球面状に形成されている。従って、第1及び第2の正方形凹部61a,61bと第1及び第2の球面状凹部63a,63bとの間には、第1及び第2の段差65a,65bが形成されている。
【0056】
また、図4及び図6に示すように、流路形成部材41は、その一側面41bに、第1〜第3の溝67a,67b,67cが凹設されている。第1の溝67aは、その一端が前記第1の正方形凹部61aと連通されている。また、図8に示すように、第1の溝67aは、その他端が流路形成部材41内に形成された連通孔69を介して前記第1のインク導入孔57aに連通されている。
【0057】
さらに、図4及び図6に示すように、第2の溝67bは、その一端が前記第2の正方形凹部61bと連通されている。また、第2の溝67bは、前記第1の溝67aと同様にして、その他端が流路形成部材41内に形成された連通孔(図示しない)を介して前記第2のインク導入孔57bに連通されている。第3の溝67cは、前記第2の正方形凹部61bと第2の溝67bの近傍に設けられている。
【0058】
図4及び図8に示すように、流路形成部材41は、その下面41cに第1及び第2のインク排出部71a,71bを備える。そして、これら第1及び第2のインク排出部71a,71bは、それぞれ円筒形状に形成されており、第1及び第2のインク排出孔73a,73bを備える。なお、第1のインク排出孔73aは、前記第3の溝67cと連通されている。
【0059】
そして、第1及び第2のインク排出孔73a,73bは、それぞれ、前記記録ヘッド20(図1参照)に設けられたノズルに対してインクの色毎に接続されている。従って、第1及び第2のインク排出孔73a,73bから排出されるインクは、色毎に記録ヘッド20へと導かれ、ノズルから噴射される。
【0060】
一方、図7に示すように、流路形成部材41には、その他側面41eに第1及び第2の円形凹部75a,75bが凹設されている。なお、第1及び第2の円形凹部75a,75bは、それぞれ、第1及び第2の嵌合用凹部77a,77bと、第1及び第2の非嵌合用凹部79a,79bとによって構成されている。
【0061】
第1及び第2の嵌合用凹部77a,77bは、断面が半円となるように形成されており、その底面はそれぞれ平面状となっている。一方、第1及び第2の非嵌合用凹部79a,79bは、同じく、断面が半円となるように形成されているが、前記第1及び第2の嵌合用凹部77a,77bよりも浅く形成されている。そして、第1及び第2の非嵌合用凹部79a,79bは、その底面が略球面状となるように形成されている。
【0062】
そして、図8に示すように、前記第1の嵌合用凹部77aは、前記第1の球面状凹部63aに対して、連通孔81a介して連通されている。また、第2の嵌合用凹部77bについても、前記第2の球面状凹部63bに対して連通孔81b(図6参照)を介して連通されている。
【0063】
さらに、第1の嵌合用凹部77aは、連通孔83aを介して前記第3の溝67cに対して連通されている。従って、第1の嵌合用凹部77aは、第3の溝67cを介して第1のインク排出孔73a(図4参照)と連通されている。また、図7に示すように、第2の嵌合用凹部77bには、連通孔83bが設けられており、この連通孔83bは、前記第2のインク排出孔73b(図4参照)と連通されている。
【0064】
図4及び図6〜図8に示すように、第1及び第2のフィルタ43a,43bは、ともに、略正方形の薄片状に形成されている。そして、第1及び第2のフィルタ43a,43bは、それぞれ、前記第1及び第2の正方形凹部61a,61bと、第1及び第2の球面状凹部63a,63bとの間を仕切るようにして、前記第1及び第2の段差65a,65b(図6参照)に対して取り付けられている。
【0065】
第1のフィルム部材45は、本実施形態においては、略長方形形状のガスバリア性の高い可撓性材料によって形成され、前記流路形成部材41の一側面41bに対して熱溶着されている。なお、このとき、第1のフィルム部材45によって、第1及び第2の正方形凹部61a,61b、第1〜第3の溝67a,67b,67cの開口が封止されるようにして、第1のフィルム部材45は流路形成部材41に対して熱溶着される。
【0066】
これにより、図4及び図8に示すように、第1のフィルム部材45と、流路形成部材41の第1の正方形凹部61a、第1の球面状凹部63aとによって、第1のインク導入室84aが形成される。また、同様にして、第1のフィルム部材45と、第2の正方形凹部61b、第2の球面状凹部63bとによって、第2のインク導入室84bが形成される。なお、本実施形態においては、加圧ポンプ25、第1及び第2のフィルタ43a,43b、第1のフィルム部材45、第1及び第2のインク導入室84a,84bによって流量調整手段が構成されているものとする。
【0067】
そして、この第1のフィルム部材45は、前記第1及び第2のインク導入室84a,84b内外の圧力差によって、撓むようになっている。すなわち、第1のフィルム部材45は、第1及び第2のインク導入室84a,84b内の圧力が所定圧よりも減少すると、第1及び第2のインク導入室84a,84bの容積を減少させるような方向に撓む。この結果、第1のフィルム部材45は、第1及び第2のインク導入室84a,84b内の第1及び第2のフィルタ43a,43bに当接するようになり、第1及び第2のフィルタ43a,43bを通過するインクの流れを遮断することが可能となっている。なお、第1のフィルム部材45は、第1及び第2のインク導入室84a,84b内外の圧力差によって撓むのであれば、フィルム部材以外の材料に変更するようにしてもよい。
【0068】
さらに、図4に示すように、第1のフィルム部材45と流路形成部材41の第1の溝67aとによって第1の流路85aが、第1のフィルム部材45と第2の溝67bとによって第2の流路85bが、第1のフィルム部材45と第3の溝67cとによって第3の流路85cが、それぞれ形成されている。
【0069】
図5〜図7に示すように、第1及び第2の嵌合部材47a,47bは、略半月形状に形成されており、前記流路形成部材41の第1及び第2の嵌合用凹部77a,77bに対してそれぞれ嵌合されている。そして、図5及び図8に示すように、第1及び第2の嵌合部材47a,47bと第1及び第2の非嵌合用凹部79a,79bとによって、連続した球面状の第1及び第2の大凹部89a,89bが形成されている。
【0070】
また、図5〜図8に示すように、第1及び第2の嵌合部材47a,47bには、それぞれ、前記流路形成部材41に形成されている連通孔81a,81bと、前記第1及び第2の大凹部89a,89bとを連通させる液体流入孔としての第1及び第2のインク流入孔91a,91bが設けられている。さらに、第1及び第2の嵌合部材47a、47bには、それぞれ、前記第1及び第2の大凹部89a,89bと、前記連通孔83a,83bとを連通させる液体流出孔としての第1及び第2のインク流出孔93a,93bが設けられている。
【0071】
なお、本実施形態におけるバルブユニット21は、図4に示す上面41dが鉛直方向の最上部に位置するようにして、キャリッジ15(図1参照)に搭載されるようになっている。そして、前記第1及び第2のインク流入孔91a,91bと、前記第1及び第2のインク流出孔93a,93bとは、前記第1及び第2の嵌合部材47bに対して、それぞれ、第1及び第2の大凹部89a,89bのほぼ鉛直方向中央部に対して連通されるような位置に設けられている。
【0072】
また、図6及び図9に示すように、第1及び第2の嵌合部材47a,47bには、それぞれ、前記第1のフィルム部材45側の面に、S字形状の第1及び第2のS字溝94a,94bが凹設されている。そして、これら第1及び第2のS字溝94a,94bと、前記流路形成部材41の第1及び第2の嵌合用凹部77a,77bとによって、それぞれ、第1及び第2のS字流路95a,95bが形成されている。本実施形態においては、この第1及び第2のS字流路95a,95bによって気泡非トラップ流路が構成されている。
【0073】
なお、第1及び第2のS字溝94a,94bは、その一端が、前記第1及び第2のインク流入孔91a,91bに対して連通されているとともに、その他端が、前記第1及び第2のインク流出孔93a,93bに対して連通されている。従って、第1及び第2のS字流路95a,95bについても、その一端が、前記第1及び第2のインク流入孔91a,91bに対して連通されているとともに、その他端が、前記第1及び第2のインク流出孔93a,93bに対して連通されるようになっている。
【0074】
また、第1及び第2のS字流路95a,95bは、その流路断面積が、インクに含まれる気泡が第1及び第2のS字流路95a,95b内において滞留しない程度にインクの流速を確保することができるような大きさに形成されている。すなわち、比較的小さな流路断面積となるように形成されている。
【0075】
また、第1及び第2の嵌合部材47a,47bには、それぞれ、前記連通孔81a,81bと対向する位置に、略円柱形状の第1及び第2の凸部96a,96bが設けられている。さらにまた、第1及び第2の嵌合部材47a,47bには、その中心部に、前記第1及び第2のインク流入孔91a,91bと連通する第1及び第2の中心孔97a,97bが設けられている。
【0076】
図6〜図8に示すように、第1及び第2の弁部材49a,49bは、第1及び第2の弁部材本体98a,98bと、第1及び第2の密着部99a,99bと、第1及び第2の弁付勢ばね101a,101bとを備える。第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、略くの字形状に形成されており、その一端に円盤部103a,103bが形成されている。また、円盤部103a,103bの近傍には、支軸105a,105bが形成されている。
【0077】
そして、図8に示すように、第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、この支軸105a,105bを介して、前記第1及び第2の嵌合部材47a,47bに対して回動可能に支持されている。このとき、第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、その円盤部103a,103bが前記連通孔81a,81bと対峙するようにして支持される。さらに、第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、その他端が、前記第1及び第2の嵌合部材47a,47bの、第1及び第2の中心孔97a,97bを貫通するようにして第1及び第2の弁部材本体98a,98bに対して支持される。
【0078】
図6〜図8に示すように、第1及び第2の密着部99a,99bは、可撓性部材により円盤形状に形成されており、前記第1及び第2の弁部材本体98a,98bにおいて、前記円盤部103a,103bの前記連通孔81a,81b側の面に対して、重ね合わされるようにして固定されている。
【0079】
第1及び第2の弁付勢ばね101a,101bは、それぞれ、その一端が、前記第1及び第2の嵌合部材47a,47bの、第1及び第2の凸部96a,96bに対して外嵌固定されているとともに、他端が、前記第1及び第2の弁部材本体98a,98bの円盤部103a,103bに対して固定されている。従って、第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、この第1及び第2の弁付勢ばね101a,101bによって、支軸105a,105bを回動中心として、図8に示す矢印R方向に回動するように付勢されている。
【0080】
そして、第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、外部から何も力が加わっていない状態においては、図8に示す矢印R方向に付勢されており、第1及び第2の密着部99a,99bが、前記連通孔81a,81bに対して当接するようになっている。また、第1及び第2の弁部材本体98a,98bに対して、図8に示す矢印R方向と反対方向への力を加えると、第1及び第2の密着部99a,99bが、前記連通孔81a,81bから離間するようになっている。すなわち、第1及び第2の弁部材本体98a,98bに対して、力を加えなかったり、矢印R方向と反対方向への力を加えたりすることにより、前記連通孔81a,81bと、前記第1及び第2のインク流入孔91a,91bとの間が連通、及び、非連通状態となるように切り換えることができるようになっている。
【0081】
図5〜図8に示すように、第2のフィルム部材51は、前記第1のフィルム部材45と同一材料にてほぼ同一形状に形成されており、前記流路形成部材41の他側面41eに対して熱溶着されている。なお、このとき、第2のフィルム部材51によって、第1及び第2の大凹部89a,89bの開口が封止されるようにして、第1のフィルム部材45は流路形成部材41に対して熱溶着される。これにより、図5及び図8に示すように、第2のフィルム部材51と、前記第1及び第2の大凹部89a,89bとによって、第1及び第2の圧力室106a,106bが形成されている。すなわち、第1及び第2の圧力室106a,106bの壁面の一部は、第2のフィルム部材51によって形成されている。なお、本実施形態においては、この第1及び第2の圧力室106a,106bによって、気泡トラップ流路、気泡だめ及び液体貯留室が構成されている。
【0082】
以上の構成により、図4〜図9に示すように、本実施形態のバルブユニット21は、第1のインク導入孔57aにインクが流入すると、流入したインクが、連通孔69、第1の流路85a、第1のインク導入室84a、連通孔81aを介して第1のインク流入孔91aへと流入するようになる。そして、第1のインク流入孔91aに流入したインクは、前記第1のS字流路95aと前記第1の圧力室106aとの2つの流路のうち、少なくともいずれか一方を通過して、前記第1のインク流出孔93aへと流出する。そして、第1のインク流出孔93aから、連通孔83a、第3の流路85c、第1のインク排出孔73aを介して記録ヘッド20(図1参照)へと供給される。
【0083】
また、同様にして、本実施形態のバルブユニット21は、第2のインク導入孔57bにインクが流入すると、流入したインクが、連通孔、第2の流路85b、第2のインク導入室84b、連通孔81bを介して第2のインク流入孔91bへと流入するようになる。そして、第2のインク流入孔91bに流入したインクは、前記第2のS字流路95bと前記第2の圧力室106bとの2つの流路のうち、少なくともいずれか一方を通過して、前記第2のインク流出孔93bへと流出する。そして、第2のインク流出孔93bから、連通孔83b、第2のインク排出孔73bを介して記録ヘッド20へと供給される。
【0084】
なお、本実施形態においては、これら、第1及び第2のインク導入孔57a,57bから記録ヘッド20までの各流路によって液体供給路が構成されている。また、第2のフィルム部材51は、前記第1及び第2の圧力室106a,106bの内外の圧力差によって、撓むようになっている。すなわち、第2のフィルム部材51は、第1及び第2の圧力室106a,106b内の圧力が所定圧よりも減少すると、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積を減少させるような方向に撓む。
【0085】
そして、本実施形態においては、この第2のフィルム部材51における撓みの度合いによって、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積が第1の容積V1から第2の容積V2までの間で変化するものとする。なお、第1の容積V1は第2の容積V2よりも大きいものとする。
【0086】
また、この第1及び第2の圧力室106a,106bにおける容積変化に伴い、第1及び第2の圧力室106a,106bを通過しようとするインクの与える流路抵抗も変化するようになっている。なお、本実施形態においては、第1及び第2の圧力室106a,106bにおける容積が、第1の容積V1から第2の容積V2に変化するに伴い、流路抵抗は、第1の流路抵抗値L1から第2の流路抵抗値L2までの間で変化するものとする。なお、第1の流路抵抗値L1は第2の流路抵抗値L2よりも小さな値となっている。
【0087】
すなわち、第2のフィルム部材51における撓みの度合いが大きくなり、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積が減少すればするほど、流路抵抗の大きさは大きくなる。
【0088】
また、本実施形態においては、前記第1及び第2のS字流路95a,95bは、インクに与える流路抵抗の大きさが、前記第1の流路抵抗値L1と第2の流路抵抗値L2の間の大きさとなるように形成されているものとする。従って、第2のフィルム部材51における撓みの度合いが小さく、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積が第1の容積V1に近い状態である場合には、第1及び第2の圧力室106a,106bがインクに与える流路抵抗は、第1の流路抵抗値L1に近付く。そして、第1及び第2のS字流路95a,95bがインクに与える流路抵抗よりも小さくなる。従って、このような場合には、第1及び第2のインク流入孔91a,91bに流入するインクは、第1及び第2の圧力室106a,106bの方を積極的に通過して、第1及び第2のインク流出孔93a,93bへと流出する。
【0089】
また、第2のフィルム部材51の撓みの度合い大きく、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積が第2の容積V2に近付く場合には、第1及び第2の圧力室106a,106bがインクに与える流路抵抗は、第2の流路抵抗値L2に近付く。そして、第1及び第2のS字流路95a,95bがインクに与える流路抵抗よりも大きくなる。従って、このような場合には、第1及び第2のインク流入孔91a,91bに流入するインクは、第1及び第2のS字流路95a,95bの方を積極的に通過して、第1及び第2のインク流出孔93a,93bへと流出する。
【0090】
すなわち、第1及び第2のインク流入孔91a,91bに流入するインクが、第1及び第2の圧力室106a,106bと、第1及び第2のS字流路95a,95bとに流入するときの流量の配分は、第2のフィルム部材51の撓みの度合いによって決まるようになっている。そして、第2のフィルム部材51の撓みが大きくなればなるほど、第1及び第2のS字流路95a,95bへとインクが流入する配分率が増加する。
【0091】
第1及び第2の受圧板53a,53bは、円盤形状に形成されており、図5及び図8に示すように、第1及び第2の圧力室106a,106b内に位置するようにして、前記第2のフィルム部材51に対してそれぞれ固着されている。
【0092】
そして、図6〜図8に示すように、第1及び第2の受圧板53a,53bと、前記第1及び第2の大凹部89a,89bとの間には、第1及び第2の受圧用ばね107a,107bが介在している。なお、この第1及び第2の受圧用ばね107a,107bは、第1及び第2の受圧板53a,53bを、前記第1及び第2の大凹部89a,89bから離間するように付勢している。従って、外部から力が加わっていない状態においては、前記第1及び第2の受圧板53a,53bは、前記第1及び第2の大凹部89a,89bから離間した状態となっている。
【0093】
また、前記第1及び第2の受圧板53a,53bは、前記第1及び第2の弁部材本体98a,98bの他端に対して当接している。そして、第1及び第2の受圧板53a,53bが、前記第1及び第2の受圧用ばね107a,107bの付勢力に抗して、前記第1及び第2の大凹部89a,89bに近付くように移動すると、第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、図8に示す矢印R方向と反対方向に回動する力を受けるようになっている。
【0094】
すなわち、前記第1及び第2の圧力室106a,106b内の圧力が減少することにより、第2のフィルム部材51が撓むと、第1及び第2の受圧板53a,53bが、前記第1及び第2の受圧用ばね107a,107bの付勢力に抗して、前記第1及び第2の大凹部89a,89bに近付くように移動する。すると、第1及び第2の弁部材本体98a,98bは、図8に示す矢印R方向と反対方向に回動し、前記連通孔81a,81bと、前記第1及び第2のインク流入孔91a,91bとの間が連通状態とされる。また、第1及び第2の圧力室106a,106b内の圧力が増加すると、第1及び第2の受圧板53a,53bが第1及び第2の大凹部89a,89bから離間するように移動し、連通孔81a,81bと第1及び第2のインク流入孔91a,91bとの間が非連通状態とされる。
【0095】
次に、以上のように構成されたインクジェット式記録装置11の電気的構成について説明する。
図10に示すように、インクジェット式記録装置11は、CPU111、ROM112、RAM113を備える。また、インクジェット式記録装置11は、入力部115、第1のモータ駆動回路117、第2のモータ駆動回路119、第3のモータ駆動回路120、第4のモータ駆動回路121、ヘッド駆動回路123を備える。そして、これらは、バス124を介してお互いに接続されている。
【0096】
CPU111は、前記入力部115からオン信号を入力する。なお、本実施形態においては、入力部115は、インクジェット式記録装置11の本体ケース12等に設けられ、ユーザの操作によりオン信号がCPU111に対して入力されるように構成されているものとする。また、CPU111は、第1のモータ駆動回路117を介して前記キャリッジモータ17に対して接続され、キャリッジモータ17に対して駆動制御のための駆動制御信号を出力する。
【0097】
また、CPU111は、第2のモータ駆動回路119を介して、加圧ポンプモータ125に接続され、同加圧ポンプモータ125を駆動させるための駆動制御信号を出力する。なお、加圧ポンプモータ125は、前記加圧ポンプ25に対して動力を伝達可能に接続されており、本実施形態においては、加圧ポンプモータ125を正回転させることにより、前記加圧ポンプ25から加圧空気を送出することができるように構成されているものとする。また、加圧ポンプモータ125の駆動を停止させることで、加圧ポンプ25からの加圧空気の送出を停止させることができるように構成されているものとする。
【0098】
さらに、CPU111は、第3のモータ駆動回路120を介して、キャップ昇降モータ126と接続され、同キャップ昇降モータ126を正逆回転させるための駆動制御信号を出力する。なお、キャップ昇降モータ126は、前記キャップ26aに対して動力を伝達可能に接続されている。そして、本実施形態においては、キャップ昇降モータ126を正回転させることにより、前記キャップ26aを上昇させることができるように構成されているものとする。また、キャップ昇降モータ126を逆回転させることにより、前記キャップ26aを下降させることができるように構成されているものとする。
【0099】
さらに、CPU111は、第4のモータ駆動回路121を介して、チューブポンプモータ127と接続され、同チューブポンプモータ127を正逆回転させるための駆動制御信号を出力する。なお、チューブポンプモータ127は、前記チューブポンプ26eに対して動力を伝達可能に接続されている。そして、本実施形態においては、チューブポンプモータ127を正回転させることにより、前記チューブポンプ26eによって、キャップ26aの内部に負圧を形成することができるように構成されているものとする。また、チューブポンプモータ127の駆動を停止させることで、チューブポンプ26eにおける吸引動作を停止させることができるように構成されているものとする。
【0100】
さらにまた、CPU111は、ヘッド駆動回路123を介して、前記記録ヘッド20に接続され、記録ヘッド20に設けられているノズルからインクを吐出させるための図示しないノズル駆動体に対してノズル駆動信号を出力する。
【0101】
CPU111は、ROM112に記憶された各種プログラムに従って動作し、その演算処理結果等を一時RAM113に記憶するようになっている。詳述すると、ROM112は、チョーククリーニングプログラム及びその他プログラムを備えている。
【0102】
チョーククリーニングプログラムは、CPU111が、前記入力部115からオン信号を入力すると、第1のモータ駆動回路117を介してキャリッジモータ17を駆動させ、キャリッジ15をホームポジションに移動させるためのプログラムである。また、チョーククリーニングプログラムは、前記入力部115からオン信号を入力すると、第2のモータ駆動回路119を介して加圧ポンプモータ125を停止させ、加圧ポンプ25から加圧空気が送出されないようにするためのプログラムである。
【0103】
さらに、チョーククリーニングプログラムは、キャリッジ15がホームポジションに移動すると、CPU111が、第3のモータ駆動回路120を介してキャップ昇降モータ126を駆動させ、キャップ26aを上昇させて記録ヘッド20のノズル形成面を封止するためのプログラムである。さらにまた、チョーククリーニングプログラムは、前記キャップ26aが上昇されると、第4のモータ駆動回路121を介してチューブポンプモータ127を駆動させ、チューブポンプ26eの吸引動作によってキャップ26aの内部に負圧を形成するためのプログラムである。
【0104】
加えて、チョーククリーニングプログラムは、前記チューブポンプモータ127の駆動から所定時間が経過すると、前記第2のモータ駆動回路119を介して加圧ポンプモータ125を駆動させ、加圧ポンプ25からの加圧空気の送出を開始するためのプログラムである。
【0105】
すなわち、CPU111は、前記入力部115からオン信号を入力すると、まず、チョーククリーニングプログラムに従って、キャリッジモータ17に駆動信号を出力し、キャリッジ15をホームポジションに移動させる。また、CPU111は、入力部115からのオン信号の入力に基づいて、加圧ポンプモータ125を停止させ、加圧ポンプ25からの加圧空気の送出を停止させる。
【0106】
続いて、CPU111は、チョーククリーニングプログラムに従って、キャップ昇降モータ126を駆動させ、キャップ26aを上昇させて記録ヘッド20のノズル形成面を封止させる。そして、CPU111は、チューブポンプモータ127を駆動させ、チューブポンプ26eの吸引動作によってキャップ26aの内部に負圧を形成させる。
【0107】
さらに、CPU111は、チョーククリーニングプログラムに従って、チューブポンプモータ127の駆動時間を計時し、所定時間が経過すると、加圧ポンプモータ125を駆動させ、加圧ポンプ25からの加圧空気の送出を開始する。
【0108】
次に、以上のように構成されたインクジェット式記録装置11の作用について説明する。
まず、通常の印刷時におけるインクジェット式記録装置11の作用について説明する。通常の印刷時においては、インクパック32から記録ヘッド20までの間に、インクが各色毎に充填された状態となっている。そして、CPU111によって、第2のモータ駆動回路119を介して加圧ポンプモータ125が駆動された状態となっており、インクカートリッジ23の隙間33に導入された加圧空気により、インクパック32内のインクは加圧状態に維持されている。従って、印刷時においては、インクカートリッジ23からバルブユニット21へと、インクが加圧状態で供給された状態となっている。
【0109】
そして、バルブユニット21には、インクパック32から加圧状態で導入されたインクが各色毎に供給されている。そして、図8に示すように、例えば、第1のインク導入孔57aを介して第1のインク導入室84aへと供給されたインクは、高い圧力を有する状態に維持されている。従って、バルブユニット21の第1のフィルム部材45は、撓まない状態に維持されている。この結果、第1のインク導入孔57a内に供給されたインクは、前記第1のフィルタ43aを通過することが可能な状態とされている。
【0110】
そして、第1の圧力室106aは、インクが充填された状態となっており、第1の受圧板53aが第1の大凹部89aから離間し、第1の容積V1に近い容積を有した状態となっている。従って、第1の圧力室106aがインクに与える流路抵抗は、第1の流路抵抗値L1に近い値となっており、前記第1のS字流路95aがインクに与える流路抵抗よりも小さくなっている。この結果、第1のインク流入孔91aに流入するインクは、第1の圧力室106aを積極的に通過して、第1のインク流出孔93aへと流出するようになっている。
【0111】
そして、この状態において、画像データに基づいて印刷が開始されると、記録ヘッド20からインクの噴射が行われ、インクの噴射量に応じて、バルブユニット21の前記第1の圧力室106a内のインクが、第1のインク排出孔73a等を介して記録ヘッド20へと供給される。この結果、第1の圧力室106a内のインクが減少し、第1の圧力室106aの内部の圧力が減少する。
【0112】
そして、例えば、第1の圧力室106a内のインクの圧力が所定圧よりも減少すると、図11に示すように、前記第2のフィルム部材51が、第1の圧力室106a内の容積を減少させるような方向に撓む。この結果、第1の受圧板53aによって、第1の弁部材本体98aが回動され、第1の連通孔81aと第1のインク流入孔91aとの間が連通状態とされる。そして、第1のインク導入室84a内に加圧状態で貯留されていたインクは、第1の圧力室106a内に流入し、第1の圧力室106a内にインクが充填されるようになる。
【0113】
第1の圧力室106a内へとインクが流入されると、第1の圧力室106a内のインクの圧力が上昇する。この結果、第2のフィルム部材51の撓みが解消される。そして、第1の弁部材本体98aが元の位置に向かって回動し、第1の連通孔81aと第1のインク流入孔91aとの間が再び非連通状態とされる。
【0114】
すなわち、第1の圧力室106a内におけるインクが減少し、内部の圧力が所定値以下となると、第1の連通孔81aと第1のインク流入孔91aとの間が連通状態となり、第1の圧力室106aにインクが供給される。また、第1の圧力室106a内にインクが供給されることにより、第1の圧力室106a内のインクの圧力が上昇し、所定値以上となると、第1の連通孔81aと第1のインク流入孔91aとの間が非連通状態となり、第1の圧力室106aへのインクの供給が停止されるようになっている。
【0115】
この結果、印刷時においては、第1の圧力室106a内には、所定範囲の圧力値となるように調整されたインクが貯留された状態となり、記録ヘッド20へのインク供給の安定性が確保されるようになっている。
【0116】
なお、印刷時においては、第2のフィルム部材51は、撓んでもすぐに第1の連通孔81aからのインクの流入により撓みが解消されるため、第1の圧力室106a内の容積変化は、第1の容積V1付近における微少な範囲となっている。従って、印刷時においては、第1の圧力室106aがインクに与える流路抵抗は、常に、第1の流路抵抗値L1に近い値となっており、第1のS字流路95aがインクに与える流路抵抗よりも小さくなっている。従って、第1のインク流入孔91aに流入するインクは、第1の圧力室106aを積極的に通過して、第1のインク流出孔93aへと流出するようになる。
【0117】
そして、図12に示すように、第1のインク流入孔91aと第1のインク流出孔93aとは第1の圧力室106aの鉛直方向の中央部付近に位置しているため、第1の圧力室106a内に流入したインクI中に含まれる気泡Aは、インクIとの比重の差により、第1の圧力室106aの鉛直方向の天井部分に移動する。この結果、気泡Aは、第1のインク流出孔93aを介して第1の圧力室106a外に流出することができなくなり、第1の圧力室106a内にトラップされた状態となる。これにより、印刷中においてバルブユニット21を通過するインクは、第1の圧力室106aにおいて、含有する気泡がトラップされるようになる。従って、記録ヘッド20へと供給されるインク中に含まれる気泡を減少させることができ、印刷の品質を向上させることができる。
【0118】
なお、前記第2のインク導入孔57bを介して第2のインク導入室84bへと供給されるインクについても、第1のインク導入室84aへと供給されたインクと同様にして、前記第2の圧力室106bおいて、所定範囲の圧力に調整されるとともに、気泡がトラップされる。
【0119】
次に、チョーククリーニング時におけるインクジェット式記録装置11の作用について説明する。本実施形態においては、ユーザによって前記入力部115(図10参照)が操作されることにより、チョーククリーニングが行われるようになっている。ユーザによって入力部115が操作され、CPU111に対してオン信号が入力されると、CPU111は、まず、チョーククリーニングプログラムに従って、キャリッジモータ17を駆動させ、キャリッジ15をホームポジションに移動させる。
【0120】
また、CPU111は、加圧ポンプモータ125の駆動を停止させ、加圧ポンプ25から加圧空気が送出されないようにする。この結果、インクカートリッジ23からバルブユニット21へと、インクが非加圧状態で供給される状態となる。続いて、CPU111は、キャップ昇降モータ126を駆動させ、キャップ26aを上昇させて記録ヘッド20のノズル形成面を封止する。そして、CPU111は、キャップ26aを上昇させると、流量減少段階に移り、チューブポンプモータ127を駆動させ、キャップ26aの内部に負圧を形成する。
【0121】
この結果、記録ヘッド20を介してインクが吸引され、バルブユニット21の前記第1及び第2の圧力室106a,106b内のインクが減少し始める。なお、図13には、第1の圧力室106aにおいてインクが減少した様子を示しており、第2の圧力室106bについては、第1の圧力室106aと同様のため、その図示を省略している。そして、この図13に示すように、第1及び第2の圧力室106a,106b内の圧力が所定圧以下となることにより、前記印刷時と同様にして、第2のフィルム部材51、第1及び第2の弁部材本体98a,98b等が作用する。この結果、第1及び第2の連通孔81a,81bと第1及び第2のインク流入孔91a,91bとの間が連通状態とされる。
【0122】
すると、第1及び第2のインク導入室84a,84b内のインクが第1及び第2の圧力室106a,106b内に流入するようになる。ところが、このチョーククリーニング時においては、前記したように、第1及び第2のインク導入室84a,84b内には、インクカートリッジ23からのインクが非加圧状態で供給されている。従って、第1及び第2のインク導入室84a,84b内の圧力についても、第1及び第2の連通孔81a,81bと第1及び第2のインク流入孔91a,91bが連通状態とされることにより、減少し始める。
【0123】
そして、第1及び第2のインク導入室84a,84b内における圧力が所定圧よりも減少すると、前記第1のフィルム部材45が撓み、第1のフィルム部材45と第1及び第2のフィルタ43a,43bが当接する。この結果、第1及び第2のフィルタ43a,43bを通過するインクの流れが遮断される。
【0124】
次に、CPU111は、吸引段階及び流量切り換え段階に移り、この状態で、さらに、前記チューブポンプ26eによる吸引動作を継続させる。この結果、第1及び第2のインク導入室84a,84bを境目に、下流側に負圧が蓄積されるようになる。そして、第2のフィルム部材51の撓みの度合いが大きくなり、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積が第2の容積V2に近付く。すると、第1及び第2の圧力室106a,106b内の流路抵抗が、第2の流路抵抗値L2に近付き、第1及び第2のS字流路95a,95bの流路抵抗よりも大きくなる。この結果、第1及び第2のインク流入孔91a,91bに流入するインクは、第1及び第2のS字流路95a,95bの方へと積極的に流入するようになる。
【0125】
なお、第1及び第2の圧力室106a,106b内には、印刷時において、トラップされた気泡A(図12参照)が滞留している。しかし、この気泡Aは、チューブポンプ26eの吸引動作の継続により、第2のフィルム部材51の撓みの度合いが大きくなることにより、第1及び第2の圧力室106a,106b内において行き場を失う。この結果、気泡Aは、第1及び第2のインク流入孔91a,91bを介して、第1及び第2のS字流路95a,95bへと移動する。
【0126】
なお、前記したように、第1及び第2のS字流路95a,95bは、その流路断面積が比較的小さく形成されているため、第1及び第2のS字流路95a,95bにおいては、比較的大きな流速でインクが流れるようになっている。従って、この第1及び第2のS字流路95a,95bへと流入された気泡Aは、この第1及び第2のS字流路95a,95b内に滞留することなく、第1及び第2のインク流出孔93a,93bへと導かれる。
【0127】
この結果、第1及び第2の圧力室106a,106b内にトラップされていた気泡Aは、第1及び第2のS字流路95a,95bを介して記録ヘッド20へと移動され、記録ヘッド20のノズルを介してキャップ26aへと排出される。
【0128】
そして、CPU111は、チョーククリーニングプログラムに従って、チューブポンプモータ127の駆動時間を計時し、所定時間が経過すると、流量増加段階に移り、加圧ポンプモータ125の駆動を開始する。そして、CPU111は、加圧ポンプモータ125の駆動を開始すると、チョーククリーニングプログラムの処理を終了する。
【0129】
この結果、加圧ポンプ25から加圧空気の送出が開始され、インクカートリッジ23からバルブユニット21へとインクが加圧状態で供給される。すると、バルブユニット21の第1及び第2のインク導入室84a,84bにインクが供給され、前記第1のフィルム部材45の撓みが解消される。これにより、第1のフィルム部材45と第1及び第2のフィルタ43a,43bが離間し、第1及び第2のフィルタ43a,43bを通過するインクの流れが許容される。
【0130】
そして、第1及び第2のインク導入室84a,84bの下流には、蓄積されていた負圧を解消しようとして、上流側から一気にインクが流れ込み、瞬間的に流速の高められたインクが流れるようになる。この結果、第1及び第2のインク導入室84a,84bよりも下流において滞留していた気泡や不純物が、インクとともに一気に記録ヘッド20のノズルから排出される。そして、いわゆるチョーククリーニングを行うことができる。
【0131】
そして、この結果、チョーククリーニングの終了後、第1及び第2の圧力室106a,106bには、トラップされていた気泡Aが除去された状態でインクが充填される。従って、このチョーククリーニングを定期的に行うことにより、第1及び第2の圧力室106a,106b内にトラップされている気泡Aを定期的に確実に除去することができる。そして、この結果、第1及び第2の圧力室106a,106bにおける気泡のトラップの能力を、減退させないように維持することが可能となる。
【0132】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 上記実施形態では、バルブユニット21において、第1及び第2のインク導入孔57a,57bに流入したインクは、第1及び第2のS字流路95a,95b、あるいは、第1及び第2の圧力室106a,106bの少なくともいずれか一方を通過して記録ヘッド20へと供給されるようにした。そして、第1及び第2の圧力室106a,106bは気泡をトラップしやすい構造となるようにした。また、第1及び第2のS時流路95a,95bは、その流路断面積が、インクに含まれる気泡が第1及び第2のS字流路95a,95b内において滞留しない程度にインクの流速を確保することができるような大きさに形成されるようにした。従って、第1及び第2のS字流路95a,95bは、気泡をトラップしにくい構造となるようにした。また、第1及び第2の圧力室106a,106bと、第1及び第2のS字流路95a,95bとに流入するインクの流量の配分は、第2のフィルム部材51の撓みによって変化できるようにした。
【0133】
従って、第2のフィルム部材51を撓みの大きさによって、印刷時には、第1及び第2の圧力室106a,106bに多めにインクが流れるようにすることができる。そして、記録ヘッド20へと供給されるインク中に含まれる気泡を、トラップできる確率を高くすることができる。この結果、記録ヘッド20からインクとともに気泡が排出されることによる印刷性能の低下を防ぐことができる。
【0134】
また、第1及び第2の圧力室106a,106bにトラップされていた気泡が成長し、気泡のトラップの能力に限界が生じるような場合には、第2のフィルム部材51の撓みの大きさによって、第1及び第2のS字流路95a,95bにインクが多めに流れるようにすることができる。これにより、第1及び第2のS字流路95a,95bから記録ヘッド20へのインクの流れにより、第1及び第2の圧力室106a,106b内にトラップされている気泡を第1及び第2のS字流路95a,95bへと導き、記録ヘッド20から排出させることができる。この結果、第1及び第2の圧力室106a,106bに滞留している気泡の除去をより確実に行うことができるようになる。そして、第1及び第2の圧力室106a,106bにおける気泡のトラップ能力を回復させることができる。
【0135】
(2) 上記実施形態では、バルブユニット21において、第1及び第2のインク流入孔91a,91bと、第1及び第2のインク流出孔93a,93bとは、第1及び第2の圧力室106a,106bの鉛直方向のほぼ中央部に設けられるようにした。従って、第1及び第2の圧力室106a,106bにインクが流入すると、液体に含まれる気泡は、インクとの比重の差によって第1及び第2の圧力室106a,106b内を上昇し、第1及び第2のインク流出孔93a,93bから流出されないようにすることができる。この結果、簡単な構造で気泡をトラップすることができ、気泡をトラップするために複雑な装置等を設ける必要がないので、インクジェット式記録装置11全体の構造を簡素化させることができる。
【0136】
(3) 上記実施形態では、第2のフィルム部材51の撓みの度合いを大きくすればするほど、第1及び第2の圧力室106a,106b内の容積を減少させることができるようにした。そして、この第1及び第2の圧力室106a,106b内の容積が減少すればするほど、第1及び第2の圧力室106a,106b内の流路抵抗が大きくなり、第1及び第2のS字流路95a,95bへと流入するインクの流量の配分を増加させることができるようにした。
【0137】
従って、第1及び第2の圧力室106a,106bにトラップされていた気泡が成長したときに、第2のフィルム部材51を大きく撓ませることで、第1及び第2のS字流路95a,95bを流れるインクの流量が増大させることができる。そして、このとき、第1及び第2の圧力室106a,106bは、第2のフィルム部材51の撓みによって、その容積が減少されているので、第1及び第2の圧力室106a,106b内の気泡は、行き場を失った状態となる。従って、第1及び第2のS字流路95a,95bの流量が増加させるときに、行き場を失った気泡をより確実に第1及び第2のS字流路95a,95bへと導くことができ、第1及び第2の圧力室106a,106b内にトラップされている気泡をより確実に除去することができる。
【0138】
(4) 上記実施形態では、第2のフィルム部材51は、第1及び第2の圧力室106a,106bの内外の圧力差によって撓む部材であるようにした。そして、加圧ポンプ25とキャッピング装置26との駆動によって第1及び第2の圧力室106a,106bに内外の圧力差を生じさせることができるようにした。
【0139】
従って、第2のフィルム部材51は、加圧ポンプ25とキャッピング装置26とを駆動させることにより生じる、第1及び第2の圧力室106a,106b内の圧力変化によって間接的に撓ませることが可能となる。すなわち、第2のフィルム部材51を撓ませるために、第2のフィルム部材51を直接的に撓ませるアクチュエータ等の駆動手段を設けていないので、第2のフィルム部材51を変位させるための駆動手段を、第2のフィルム部材51から離れた位置に設けることができる。この結果、インクジェット式記録装置11の装置の設計の自由度を増加させることができる。
【0140】
また、チョーククリーニングを行うために、インクジェット式記録装置11にもともと備えられている装置を、第1及び第2の圧力室106a,106bに内外の圧力差を生じさせるための装置として兼用することができるので、装置の構造を簡単なものとすることができる。
【0141】
(5) 上記実施形態では、記録ヘッド20へのインクの供給を安定させるために設けられている第1及び第2の圧力室106a,106bを、気泡をトラップする液体貯留室として兼用するようにした。従って、インクジェット式記録装置11の構造を簡素化させることができる。
【0142】
(6) 上記実施形態では、第1及び第2のS字流路95a,95bは、S字形状となるように形成するようにした。これによれば、全体的にコンパクトな状態で、第1及び第2のS字流路95a,95bを、流路の長さが比較的長い形状となるように形成することができる。この結果、第1及び第2のS字流路95a,95bの流路抵抗を比較的大きくすることができ、印刷時において、インクが流入しにくい構造とすることが容易となる。
【0143】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、液体貯留室としての第1及び第2の圧力室106a,106bは、第1及び第2の圧力室106a,106bの鉛直方向のほぼ中央部に、第1及び第2のインク流入孔91a,91bと、第1及び第2のインク流出孔93a,93bとを設けることにより、気泡をトラップできるようにした。これを、第1及び第2の圧力室106a,106bの天井部分よりも下方となるのであれば、第1及び第2のインク流入孔91a,91bと、第1及び第2のインク流出孔93a,93bの位置をその他の位置に変更するようにしてもよい。
【0144】
また、第1及び第2の圧力室106a,106bを通過するインクに含まれる気泡をトラップできるのであれば、第1及び第2の圧力室106a,106bを、その他の構成に変更するようにしてもよい。
【0145】
・上記実施形態においては、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積を変化させる第2のフィルム部材51等によって、流路抵抗を変化させるようにした。そして、第1及び第2の圧力室106a,106bと、第1及び第2のS字流路95a,95bとの間における、インクの流量の配分率を変化させるようにした。これを、第1及び第2の圧力室106a,106bと、第1及び第2のS字流路95a,95bとの間におけるインクの流量の配分率を変化させることが可能であれば、他の分配手段によって変化させるようにしてもよい。例えば、第1及び第2の圧力室106a,106bと、第1及び第2のS字流路95a,95bとの間の流量の分配率を開閉弁等によって機械的に分配するようにしてもよい。
【0146】
・上記実施形態においては、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積は、第2のフィルム部材51を撓ませることによって変化させるようにした。これを、その他の可撓性部材によって撓ませるようにしてもよい。さらに、第1及び第2の圧力室106a,106bの容積を、可撓性部材以外の他の容積変更手段によって変更可能とするようにしてもよい。
【0147】
・上記実施形態においては、第2のフィルム部材51は、第1及び第2の圧力室106a,106bの内外の圧力を変化させる圧力調整手段によって撓ませるようにした。これを、圧力調整手段以外の変位手段によって、第2のフィルム部材51を撓ませるようにしてもよい。例えば、変位手段として、第2のフィルム部材を直接的に撓ませるアクチュエータ等を使用するようにしてもよい。
【0148】
・上記実施形態においては、第2のフィルム部材51は、圧力調整手段を構成するキャッピング装置26、加圧ポンプ25、第1及び第2のフィルタ43a,43b、第1のフィルム部材45、第1及び第2のインク導入室84a,84bの作用により、インクの圧力を調整することにより撓むようにした。これを、その他の圧力調整手段によって、第1及び第2の圧力室106a,106bの内外に圧力差を生じさせ、第2のフィルム部材51を撓ませるようにしてもよい。
【0149】
・上記実施形態においては、吸引手段として、キャッピング装置26に具体化するようにした。これを、記録ヘッド20のノズルからインクを吸引することが可能な他の吸引手段に変更するようにしてもよい。
【0150】
・上記実施形態においては、加圧ポンプ25、第1及び第2のフィルタ43a,43b、第1のフィルム部材45、第1及び第2のインク導入室84a,84bによって流量調整手段が構成されるようにした。これを、第1及び第2の圧力室106a,106bと、第1及び第2のS字流路95a,95bの上流におけるインクの流量を変化させることのできるものであれば、その他の流量調整手段に具体化するようにしてもよい。例えば、インク供給チューブ35を押し潰して流量を調整するチョークバルブ等に具体化するようにしてもよい。
【0151】
・上記実施形態においては、チョーククリーニング時の負圧蓄積時においては、第1のフィルム部材45が第1及び第2のフィルタ43a,43bに当接し、第1及び第2のフィルタ43a,43bを通過するインクの流れが遮断されるようにした。これを、第1及び第2のフィルタ43a,43bを通過するインクに対して流路抵抗を増大させるのであれば、完全に流れを遮断するようにしなくてもよい。
【0152】
・上記実施形態においては、液体貯留室として、バルブユニット21に備えられている第1及び第2の圧力室106a,106bに具体化するようにした。これを、液体貯留室を、第1及び第2の圧力室106a,106bと別体となるように設けるようにしてもよい。
【0153】
・上記実施形態においては、第1及び第2のS字流路95a,95bは、S字形状となるように形成するようにした。これを、S字形状以外の蛇行形状とするようにしてもよい。また、第1及び第2のS字流路95a,95bは、その流路抵抗の大きさが、第1の流路抵抗値L1と第2の流路抵抗値L2との間の値となっているとともに、気泡の浮力に抗して気泡を移送可能な流速を確保できる流路断面積を有するのであれば、その他の形状の流路に変更するようにしてもよい。
【0154】
・上記実施形態においては、チョーククリーニングプログラムは、CPU111に、チューブポンプモータ127の駆動時間を計時させ、所定時間が経過すると、加圧ポンプモータ125の駆動を開始させるようなプログラムであるようにした。これを、チョーククリーニングプログラムは、CPU111が、チューブポンプモータ127の駆動時間の計時結果以外の要因に基づいて。加圧ポンプモータ125の駆動を開始させるようなプログラムであるようにしてもよい。
【0155】
・上記実施形態においては、バルブユニット21は、2色のインクに対応するようにして、1つのバルブユニット21に、インク導入室、圧力室等を2つずつ備えるようにした。これを、バルブユニット21を1色のインクに対応するように、または、3色以上のインクに対応するように、インク導入室、圧力室等の数を変更するようにしてもよい。
【0156】
・上記実施形態においては、液体噴射装置として、インクを吐出するインクジェット式記録装置11(ファックス、コピア等の印刷装置を含む)を用いて説明した。これを、他の液体を噴射する液体噴射装置に具体化するようにしてもよい。例えば、他の液体を噴射する液体噴射装置として、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本実施形態におけるインクジェット式記録装置の平面図。
【図2】 同じく、インクカートリッジの断面図。
【図3】 同じく、インクジェット式記録装置の部分断面図。
【図4】 同じく、バルブユニットの側面図。
【図5】 同じく、バルブユニットの側面図。
【図6】 同じく、バルブユニットの分解斜視図。
【図7】 同じく、バルブユニットの分解斜視図。
【図8】 同じく、バルブユニットの部分断面図。
【図9】 同じく、バルブユニットの部分断面図。
【図10】 同じく、インクジェット式記録装置の電気的構成図。
【図11】 同じく、バルブユニットの作用を説明する図。
【図12】 同じく、バルブユニットの作用を説明する図。
【図13】 同じく、バルブユニットの作用を説明する図。
【符号の説明】
A…気泡、I…液体としてのインク、L1,L2…第1及び第2の流路抵抗値、V1,V2…第1及び第2の容積、11…液体噴射装置としてのインクジェット式記録装置、20…液体噴射ヘッドとしての記録ヘッド、21…液体供給用バルブユニットとしてのバルブユニット、23…液体貯留手段としてのインクカートリッジ、25…流量調整手段を構成する加圧ポンプ、26…吸引手段としてのキャッピング装置、35…液体供給路を構成するインク供給チューブ、43a,43b…流量調整手段を構成する第1及び第2のフィルタ、45…流量調整手段を構成する第1のフィルム部材、49a,49b…開閉弁としての第1及び第2の弁部材、51…可撓性部材としての第2のフィルム部材、84a,84b…流量調整手段を構成する第1及び第2のインク導入室、91a,91b…液体流入孔としての第1及び第2のインク流入孔、93a,93b…液体流出孔としての第1及び第2のインク流出孔、95a,95b…気泡非トラップ流路を構成する第1及び第2のS字流路、106a,106b…気泡トラップ流路、気泡だめ及び液体貯留室を構成する第1及び第2の圧力室。
Claims (12)
- ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を貯留する液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を導く液体供給路とを備えた液体噴射装置において、
前記液体供給路は、
少なくとも、
前記液体中に含まれる気泡をトラップ可能な気泡だめを備え、流路抵抗が第1の流路抵抗値から該第1の流路抵抗値よりも大きい第2の流路抵抗値までの間で変化可能な気泡トラップ流路と、
前記気泡の浮力に抗して前記気泡を移送可能であり、流路抵抗が前記第1の流路抵抗値と前記第2の流路抵抗値との間となるように流路断面積が決定されている気泡非トラップ流路と、
を互いに並列となるように備え、
前記気泡トラップ流路の流路抵抗を変化させることにより、前記気泡トラップ流路と前記気泡非トラップ流路とを流れる前記液体の流量の分配率を変化させる分配手段を備え、
該分配手段は、前記液体噴射ヘッドから前記ターゲットに前記液体を噴射する場合には、前記気泡非トラップ流路よりも前記気泡トラップ流路側に多めに前記液体が流れるようにすることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項1に記載の液体噴射装置において、
前記気泡だめは、
液体貯留室と、
前記液体貯留室に前記液体を流入させる液体流入孔と、
前記液体貯留室から前記液体を流出させる液体流出孔と
を備え、
前記液体流入孔と前記液体流出孔とは、鉛直方向において、前記液体貯留室の天井部分よりも下方に位置するように設けられていることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項2に記載の液体噴射装置において、
前記分配手段は、前記液体貯留室の容積を第1の容積から、同第1の容積よりも小さい第2の容積までの間で変化させることにより、前記気泡トラップ流路の流路抵抗を前記第1の流路抵抗値から前記第2の流路抵抗値までの間で変化させる容積変更手段であることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項3に記載の液体噴射装置において、
前記容積変更手段は、
前記液体貯留室の壁面の一部を構成する可撓性部材と、
前記可撓性部材を撓ませる変位手段と
によって構成されることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項4に記載の液体噴射装置において、
前記可撓性部材は、前記液体貯留室の内外の圧力差によって撓む部材であり、 前記変位手段は、前記液体貯留室に前記内外の圧力差を生じさせる圧力調整手段であることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項5に記載の液体噴射装置において、
前記圧力調整手段は、
前記気泡トラップ流路及び前記気泡非トラップ流路よりも上流における前記液体供給路を流れる前記液体の流量を変化させる流量調整手段と、
前記液体噴射ヘッドのノズルから前記液体を吸引する吸引手段と
によって構成されることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項2〜6のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記液体供給路上において前記液体を一時貯留し、前記液体噴射ヘッドからの前記液体の噴射に伴って、前記一時貯留した前記液体が減少する圧力室と、同圧力室内の前記液体の減少に伴う負圧を感知して前記液体供給路から前記圧力室への前記液体の供給及び非供給を切り換える開閉弁とを有する液体供給用バルブユニットを備え、
前記液体貯留室は、前記圧力室であることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項1〜7のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記気泡非トラップ流路は、蛇行形状に形成されていることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項1〜8のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記分配手段は、前記気泡だめにトラップされている気泡を排出させる場合には、前記気泡トラップ流路よりも前記気泡非トラップ流路側に多めに前記液体が流れるようにすることを特徴とする液体噴射装置。 - 請求項1〜9のいずれか1つに記載の液体噴射装置において、
前記分配手段は、前記液体噴射ヘッドから前記ターゲットに前記液体を噴射する場合には、前記気泡トラップ流路の流路抵抗が前記第1の流路抵抗値に近い値となるように作動することを特徴とする液体噴射装置。 - ターゲットに対して液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を貯留する液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を導く液体供給路とを備えた液体噴射装置において、
前記液体供給路は、
少なくとも、
前記液体中に含まれる気泡をトラップ可能な気泡だめを備え、流路抵抗を変更可能な気泡トラップ流路と、
前記気泡の浮力に抗して前記気泡を移送可能な気泡非トラップ流路と、
を互いに並列となるように備え、
前記気泡だめは、壁面の一部が可撓性部材によって構成され、該可撓性部材が撓み変位することにより、前記気泡トラップ流路と前記気泡非トラップ流路とを流れる前記液体の流量の分配率を変化可能とし、
前記可撓性部材は、前記液体噴射ヘッドから前記ターゲットに前記液体を噴射する場合には、前記気泡非トラップ流路よりも前記気泡トラップ流路側に多めに前記液体が流れるようにすべく作動することを特徴とする液体噴射装置。 - ターゲットに対してノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
前記液体を貯留する液体貯留手段から前記液体噴射ヘッドへ前記液体を導く液体供給路とを備えた液体噴射装置の駆動方法において、
前記液体供給路は、少なくとも、前記液体中に含まれる気泡をトラップ可能な気泡トラップ流路と、前記気泡の浮力に抗して前記気泡を移送可能に流路断面積が決定されている気泡非トラップ流路とを互いに並列となるように備え、
前記液体噴射装置は、
前記気泡トラップ流路及び前記気泡非トラップ流路よりも上流における前記液体供給路を流れる前記液体の流量を変化させる流量調整手段と、
前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記液体を吸引する吸引手段と
を備え、
分配手段により、前記気泡トラップ流路よりも前記気泡非トラップ流路を流れる前記液体の流量の方が多くなるように、前記液体の前記流量の分配率を変化させる流路切り換え段階と、
前記流量調整手段によって前記液体供給路を流れる前記液体の流量を減少させる流量減少段階と、
前記吸引手段により前記液体噴射ヘッドの前記ノズルから前記液体を吸引する吸引段階と、
前記吸引段階の後に、前記流量調整手段によって前記液体供給路を流れる前記液体の流量を増加させる流量増加段階と
を備えたことを特徴とする液体噴射装置の駆動方法。
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