JP4407113B2 - 接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金からなり且つ少なくとも一端に中空部を有する複数の押出形材の接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アルミニウム合金からなる中空押出形材同士の摩擦攪拌接合方法ついては、例えば特許文献1の図7,8に示すように、一対の中空(押出)形材の垂直な平坦面のリブ(端部側板)により接合部を形成し、係る接合部に沿って回転工具を押し込みつつ移動することによって行うことが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特許第3224091号公報 (図7,8)
【0004】
例えば、図6(A)に示すように、アルミニウム合金からなり、上板32、下板33、端部側板34a,34b、および仕切壁36a,36bを一体に有し且つ断面がほぼ長方形の中空押出形材30a,30bは、複数の中空部38を内蔵している。ところで、係る中空押出形材30a,30bは、その押出成形工程における様々な要因によって高さにバラツキを生じるため、図6(B)に示すように、突き合わせた際にそれぞれの高さの差に応じた段差hが生じる。
【0005】
図6(B)に示す状態で、中空押出形材30a,30bを拘束し、前記同様の回転工具により摩擦攪拌接合を施した場合、高さが高い上記押出形材30aに合わせて接合条件を設定すると、高さの差である段差hが1.5mm以上の場合、得られる接合部にはトンネル欠陥が発生する。
一方、高さの低い上記押出形材30bに合わせて接合条件を設定すると、得られる接合部に沿って多量のバリが発生し、上記押出形材30aの上板32側に段差溝が残る。係る接合すべき中空押出形材の高さが相違し接合部に沿って段差が生じる場合、前記特許文献1に開示された摩擦接合方法では、不都合であった。
【0006】
また、図6(C)に示すように、アルミニウム合金からなり上板42、下板43、および端部側板44からなる断面が長方形の中空押出形材40a,40bは、その押出成形工程における様々な要因により、多くの場合、端部側板44の一部が外側に緩く突出した曲面を有する。これらの押出形材40a,40bを、図6(C)に示すように突き合わせると、突出した曲面の端部側板44,44間には、上下一対の隙間Sが生じる。係る隙間Sを含む接合部に沿って、前記同様の摩擦攪拌接合を行うと、得られる接合部にはトンネル欠陥が多発する。この場合にも、前記特許文献1に開示された摩擦接合方法では、不都合であった。
【0007】
【発明が解決すべき課題】
本発明は、以上において説明した従来の技術における問題点を解決し、接合すべき中空押出形材間に段差や隙間があっても、これらの形材同士を確実に摩擦攪拌接合することができる接合方法を提供する、ことを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、接合すべき中空押出形材間に跨って幅高さ調整材を配置する、ことに着想して成されたものである。
本発明の接合方法(請求項1)は、アルミニウム合金からなり断面がほぼ矩形で且つ少なくとも一端に中空部を有する複数の押出形材を、それらの押出方向に直交する方向に隣接して接合する方法であって、隣接する一対の押出形材の端部側板にそれぞれ形成された外向きに開口し、断面が長方形を呈する一対の凹溝を対向させて、高さが幅よりも大きな断面長方形の閉断面を上記押出方向に沿って形成し、係る閉断面内にこれよりも僅かに小さくほぼ相似形断面であり、且つアルミニウム合金からなる幅高さ調整材を挿入する工程と、上記隣接する一対の押出形材の端部側板間における外側から摩擦攪拌ピンを含む摩擦攪拌ツールを、上記幅高さ調整材に向けて回転しつつ挿入し且つ上記押出方向に沿って移動させることにより、上記一対の押出形材の端部側板間、および一対の押出形材と幅高さ調整材との突き合わせ部に、塑性流動化したアルミニウム合金材料が固化した接合部を形成する摩擦攪拌接合を施す工程と、を含む、ことを特徴とする。
【0009】
これによれば、アルミニウム合金からなる一対の押出形材の端部側板に形成し、断面が長方形を呈する一対の凹溝を対向させて、高さが幅よりも大きな断面長方形の閉断面を上記押出方向に沿って形成し、係る閉断面内にこれよりも僅かに小さくほぼ相似形断面であり、且つアルミニウム合金からなる幅高さ調整材を挿入し、上記一対の押出形材を突き合わせた状態で、上記摩擦攪拌ツールにより摩擦攪拌接合を施すと、上記幅高さ調整材に隣接する押出形材の凸条が、係るツールの押し込み圧力を受け止める。ところで、一対の押出形材間に段差がある場合は、高さの高い押出形材の凸条が、上記ツール本体の圧力を受けるため、垂直方向に弾性変形する。その結果、当該突き合わせ部に形成される接合部の段差が減少するため、バリの発生量を低減することができる。また、高さの低い押出形材における凸条の上面にも、上記ツール本体の下部が押圧しつつ接触するため、摩擦攪拌される面積が一定に保たれる。
【0010】
更に、高さの高い押出形材における凸条に隣接する凹溝の上部は、一定以上の変形を防ぐ幅高さ調整材により支持されるため、過度の変形が抑制される。しかも、前記摩擦攪拌接合により生じるアルミニウム合金材料の半固相化や重力による落ち込みも、幅高さ調整材の支持により抑制されるため、形成される接合部内のトンネル欠陥が防止できる。従って、一対の押出形材の突き合わせ面に沿って、不定期に生じる前述した段差の有無に拘わらず、一対の押出形材の端部側板間、および一対の押出形材と幅高さ調整材との突き合わせ部に、健全な接合部を得ることが可能となる。
尚、上記押出形材は、少なくとも一端に中空部を有すれば、中間部や他端側がオープン材であっても良い。また、上記幅高さ調整材は、接合すべき押出形材と硬度が同じかそれ以上のものであれば良く、その材質は特に限定されない。
【0011】
また、本発明には、前記幅高さ調整材の高さは、前記凹溝の高さ未満で且つ該高さとの差が3mm未満の範囲にあり、あるいは、前記幅高さ調整材の幅は、前記一対の凹溝により形成される閉断面の幅未満で且つ係る幅との差が2mm未満の範囲にある、接合方法(請求項2)も含まれる。
係る請求項2の前段によれば、前記一対の凹溝により形成される閉断面内に幅高さ調整材を確実に挿入することができると共に、得られる接合部におけるトンネル欠陥を低減することができる。一方、請求項2の後段によれば、前記一対の凹溝により形成される閉断面内に幅高さ調整材を一層確実に挿入することができると共に、係る幅高さ調整材により一対の押出形材間の隙間を小さくできるので、トンネル欠陥のない接合部を一層容易に形成することが可能となる。
【0012】
尚、幅高さ調整材および凹溝の高さは、前記押出形材同士が隣接する方向と直交する方向に沿った長さである。また、幅高さ調整材の望ましい高さは、上記凹溝の高さ未満であって且つこれよりも1.5mm短い高さの範囲である。
更に、幅高さ調整材および閉断面の幅は、前記押出形材の押出方向と直交し且つ押出形材同士が隣接する方向に沿った長さである。
【0013】
加えて、本発明には、前記摩擦攪拌ツールは、円柱形の本体と、その底面の中心部から同心で垂下する前記摩擦攪拌ピンとを備え、係る攪拌ピンの周面には当該ピンの軸方向またはこれとほぼ直交する方向にほぼ沿った複数の小溝が形成されている、接合方法(請求項3)も含まれる。
【0014】
これによれば、上記ツールの攪拌ピンの周面に形成した複数の小溝により、互いに突き合わされた一対の中空押出形材の端部側板を形成しているアルミニウム合金材料を半固相状態で長距離(物質)移動が可能となる。このため、該ツールを用いる摩擦攪拌接合により、従来埋めきれなかった部分へのアルミニウム合金材料の補充が可能となり、欠陥のない健全な接合部を一層確実に形成可能となる。
【0015】
尚、以上のような接合方法に用いられる押出形材は、アルミニウム合金からなり断面がほぼ矩形で、上板、下板、左右一対の端部側板、およびこれら囲まれた中空部を備え、前記端部側板の少なくとも一方には、外向きに開口し且つ摩擦攪拌接合に活用される幅高さ調整材の半体が挿入可能な凹溝と、係る凹溝の上下に隣接する凸条とが形成されている。これによる場合、前述した接合方法を確実に施すことが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の実施に好適な形態を図面と共に説明する。
図1(A)は、本発明の接合方法に用いる中空押出形材(押出形材)1の断面を示す。係る押出形材1は、アルミニウム合金(例えばJIS:6N01−T5)からなり、図1(A)に示すように、上板2、下板3、左右一対の端部側板4、および複数の仕切壁7、ならびにこれらに囲まれた複数の中空部8を、図示の前後方向の全長に沿って一体に有する。端部側板4の中間には、外向きに開口する断面ほぼ長方形の凹溝6が形成され、その上下には短い凸条5,5が突出している。
【0017】
一対(複数)の中空押出形材1,1をそれらの押出方向と直交する方向に隣接させ且つそれらの端部側板4,4に隣接する凸条5,5間で接合するには、図1(B),(C)に示すように、隣接する中空押出形材1,1間で対向する凹溝6,6内に、これらとほぼ相似形の長方形の断面を有する幅高さ調整材9を、凹溝6,6のほぼ全長に沿って挿入する。係る調整材9には、各押出形材1と硬度が同じか、あるいは更に高い硬度を有する例えばアルミニウム合金(例えばJIS:6N01−T5)の板材が用いられるが、これ以外の金属素材も適用され得る。
図1(B)に示すように、幅高さ調整材9の高さh1は、凹溝6の高さh2未満で且つ係る高さh2との差が3mm未満の範囲((h2−3mm)<h1<h2)内にあり、望ましい上記高さh1は、上記高さh2未満で且つ係る高さh2との差が1.5mm未満の範囲((h2−1.5mm)<h1<h2)内である。
尚、係る高さh1,h2は、押出形材1,1の隣接する方向と直交する方向に沿った長さである。
【0018】
図1(C)に示すように、中空押出形材1,1における上下の凸条5,5を突き合わせると、それぞれの凹溝6,6は、断面長方形の閉断面を形成し、係る閉断面内には、これよりも僅かに小さく且つほぼ相似形断面の幅高さ調整材9が挿入される。係る状態で、中空押出形材1,1を図示しない治具によって拘束する。
係る幅高さ調整材9の幅x1は、上記閉断面の幅x2未満で且つ係る幅x2との差が2mm未満の範囲((x2−2mm)<x1<x2)内、望ましくは1.0mm未満の範囲((x2−1mm)<x1<x2)内とされる。尚、これらの幅x1,x2は、押出形材1,1の隣接する方向に沿った長さである。
【0019】
次に、中空押出形材1,1を摩擦攪拌接合する本発明の前提的な参考形態の工程を図2によって説明する。
図2(A)に示すように、上下の凸条5,5間で突き合わせて拘束した中空押出形材1,1の付近に、摩擦攪拌ツール10を配置する。係る摩擦攪拌ツール10は、例えば工具鋼からなり、円柱形の本体12と、その底面14の中心部から同心で垂下する摩擦攪拌ピン16とを含む。係る攪拌ピン16の周面には、図2(A),(a)に示すように、その軸方向に沿った複数(3つ)の小溝18が形成され、且つ上記摩擦攪拌ピン16とほぼ直交する方向に沿ったネジ溝(小溝)17が螺旋状に形成されている。上記本体12の直径は6〜25mm、摩擦攪拌ピン16の長さは3〜10mmで且つその直径は2〜10mmである。
また、係る摩擦攪拌ツール10の回転数は500〜15000rpm、送り速度は0.05〜2m/分であり、当該ツール10の軸方向に加える押し込み力は1kN〜20kN程度である。
【0020】
図2(B)に示すように、回転する摩擦攪拌ツール10を中空押出形材1,1の端部側板4,4に隣接する凸条5,5間に近付け、その摩擦攪拌ピン16を係る凸条5,5の当接線に押し込むと共に、本体12の底面14を形材1,1の上板2,2の表面に傾斜して接触させる。係る傾斜は、本体12および上記ピン16が図2(B)の前後方向に1〜3度傾く前進角であるが、なくても良い。
図2(B)に示すように、摩擦攪拌ツール10における摩擦攪拌ピン16の底面19は、幅高さ調整材9の上端付近に達する。係る状態で高速回転する上記ピン16により、その周囲に位置する中空押出形材1,1のアルミニウム合金材料は、摩擦熱により加熱され、半固相状態で塑性化し且つ流動化(物質移動)する。この際、上記ピン16の周面に形成された複数の小溝18により、上記アルミニウム合金材料には上向きの力が働くため、下方への流下を抑制することができる。
【0021】
図2(B)に示すように、摩擦攪拌ピン16は、幅高さ調整材9の付近まで達するため、塑性化および流動化した中空押出形材1,1の少なくとも一方のアルミニウム合金材料は、ツール10における本体12の底面14と幅高さ調整材9とに挟まれ、係る幅高さ調整材9により下側への落ち込みを防止される。
図2(B)に示す状態で、摩擦攪拌ツール10は、一対の中空押出形材1,1の凸条5,5に沿って、即ち係る形材1,1の押出方向に沿って高速回転しつつ、図2(B)で手前方向に沿って所定速度で送られる(摩擦攪拌接合工程)。
その結果、摩擦攪拌ツール10が回転しつつ通過した跡には、図2(C)に示すように、中空押出形材1,1の凸条5,5間および幅高さ調整材9に沿って、前記塑性・流動化したアルミニウム合金材料が固化した接合部Wが形成される。
【0022】
係る接合部Wは、押出形材1,1間の高い段差部分が前記ツール10の押圧により凹むため、図2(C)に示すように、バリが少なく且つ溝段差が微少な平坦な表面waを有し、その内部には、押出形材1,1間の低い段差部分も塑性流動するため、微細な多数の空孔からなるトンネル欠陥などが皆無となる。
以上のような本発明の接合方法では、中空押出形材1,1の端部側板4,4間付近において、高速回転する摩擦攪拌ピン16により塑性・流動化されたアルミニウム合金材料を、摩擦攪拌ツール10の本体12の底面14が外側から押さえ込み、且つ幅高さ調整材9が内側から下支えしている。従って、上記アルミニウム合金材料は空気を巻き込まず且つ高い密度で固化するので、健全な上記接合部Wを確実に形成することが可能となる。尚、図2(C)で下方に位置する端部側板4,4(凸条5,5)間にも同様な摩擦攪拌接合を施しても良い。
【0023】
図3は、本発明の接合方法の前提となる異なる参考形態を示す。
図3(A)は、前記同様の断面形状を有し図示で垂直方向の高さがh分だけ相違する一対の中空押出形材1b,1cを、それらの押出方向と直交する方向に隣接して接合する形態を示す。図3(A)で右側の押出形材1bは、正規寸法の端部側板4および凸条5,5を有するのに対し、図3(A)で左側の押出形材1cは、端部側板4cおよび上方の凸条5cが僅かに大きい。このため、これらの押出形材1b,1cを突き合わせると、図3(A)に示すように、両者の端部側板4,4cに隣接する凸条5,5c間には、高さh分の段差が生じる。係る中空押出形材1b,1cの凹溝6,6に跨って、前記と同じ幅高さ調整材9を上記凹溝6,6の長手方向に沿って挿入する。この際、幅高さ調整材9の高さおよび幅は、上記押出形材1bの凹溝6に挿入できるよう前述した範囲内に予め調整する。
【0024】
図3(A)に示すように、図示しない定盤の上で拘束された中空押出形材1b,1cの凸条5,5c間の付近に、高速回転する前記摩擦攪拌ツール10の摩擦攪拌ピン16を前記同様に挿入し、当該押出形材1b,1cの凸条5,5cの当接線に沿って、即ち押出方向に沿って移動させる。
その結果、図3(B)に示すように、中空押出形材1b,1cの端部側板4,4c間および幅高さ調整材9に沿って、上記ツール10の摩擦攪拌ピン16によって塑性・流動化したアルミニウム合金材料が固化した前記同様の接合部Wが形成される。この際、幅高さ調整材9は、塑性・流動化した上記合金材料を支える。
また、図3(B)に示すように、中空押出形材1cの端部側板4cは、上記ツール10の押込み圧力を受けて、その中空部8側に緩くカーブする変形を常に生じる。この結果、図3(B)に示すように、押出形材1b,1c間の段差は縮少し、健全な接合部Wにより強固に接合される。尚、図3(B)で下方の凸条5,5間にも同様な摩擦攪拌接合を施しても良い。
【0025】
図4(A)〜(C)は、本発明の接合方法に関し、図4(A)は、前記図6(C)に示したように、押出形材の突き合わせ部に隙間Sが生じる形態の接合方法に関する。即ち、前記同様の断面形状を有し、端部側板4d,4eの中央付近が外側に緩く突出した曲面を有する一対の中空押出形材1d,1eを、それらの押出方向と直交する方向に隣接して接合する形態を示す。
図4(A)に示すように、押出形材1d,1eの端部側板4d,4eには、凹溝6a,6aが形成され、係る凹溝6a,6aの両側には、凸条5a,5aが位置している。上記凹溝6a,6aに跨って、前記と同じ素材からなる幅高さ調整材9aを挿入した後、押出形材1d,1eを、図4(A)に示すように突き合わせると、突出した曲面の端部側板4d,4e間には、上下一対の隙間Sが生じる。
【0026】
しかし、上記隙間Sは、凸条5a,5aの上・下端における位置の差のみに依存するため、前記図6(C)に示した隙間Sよりも大幅に縮小している。
図4(A)に示す状態で、中空押出形材1d,1eを図示しない定盤の上で拘束すると、凸条5a,5aは当該拘束圧力により一部が凹むため、上記隙間Sが縮小する。次いで、端部側板4d,4eに隣接する凸条5a,5a間の付近に、高速回転する前記摩擦攪拌ツール10の摩擦攪拌ピン16を前記同様に挿入し、当該押出形材1d,1eの押出方向に沿って移動させる。
【0027】
その結果、図4(B)に示すように、中空押出形材1d,1eの端部側板4d,4e間および幅高さ調整材9aに沿って、前記摩擦攪拌ツール10の摩擦攪拌ピン16によって塑性・流動化したアルミニウム合金材料が固化した前記同様の接合部Wが形成される。この際、幅高さ調整材9aは、上記アルミニウム合金材料を下側から支え且つこれに空気が巻き込まれないようにしている。しかも、接合部Wは、前記ツール10の本体12の底面14および幅高さ調整材9によって、上下から押さえ込まれたため、トンネル欠陥のない健全な組織を有する。
従って、係る接合部Wを介して、中空押出形材1d,1eを確実に接合することができる。尚、図4(B)で下方の凸条5a,5a間にも同様な摩擦攪拌接合を施しても良い。
【0028】
図4(C)は、参考形態の幅高さ調整材9bを用いる一対の中空押出形材1f,1fの接合形態に関する。各押出形材1fは、前記同様の素材および断面形状を有するが、その端部側板4には、図4(C)に示すように、底側が広く開口部側が狭い底広凹溝(凹溝)6bが形成されている。また、幅高さ調整材9bは、対向する一対の底広凹溝6b,6bに倣った細長いほぼ鼓形の断面形状で且つ4隅に鋭角部9cをそれぞれ対称に有するアルミニウム合金の押出形材が用いられる。
図4(C)に示すように、一対の中空押出形材1f,1fを、それらの押出方向と直交する方向に隣接して配置し、対向する一対の底広凹溝6b,6b間に形成される断面ほぼ鼓形の閉断面の長手方向に沿って、上記幅高さ調整材9bを挿入する。この結果、係る押出形材1f,1fが離間する方向への開きをなくし、これらを相対的に位置決めできる。このため、拘束治具を減らしつつ、次いで行う前記同様の摩擦攪拌接合も精度良く行うことが可能となる。
【0029】
ここで、本発明による具体的な実施例を比較例と併せて説明する。
図5(A)に示すように、1辺が60mmで且つ厚みが全て10mmの上板2、下板3、端部側板4、および側壁7を有し且つ断面がほぼ正方形であり、全長が500mmの中空押出形材1g,1hを用意した。
これらの形材1g,1hは、アルミニウム合金(JIS:6N01−T5)からなる。これらの端部側板4の中間には、高さ38mmで深さ4mmの凹溝6が形成されている。また、係る凹溝6,6内に跨って上記と同じアルミニウム合金からなる板材の幅高さ調整材9を挿入した後、凸条5,5を拘束した。係る幅高さ調整材9は、高さ36.5mm×幅6.5mmで長さ500mmである。
表1に示すように、一方の形材1gと他方の形材1hとの高さが同じ60mmの組を実施例1用、高さが相違する組を実施例2,3用とした。尚、表1に示すように、実施例1と同じ条件の中空押出形材1g,1hを用いるが、それらの凹溝6内に幅高さ調整材9を挿入しない組を比較例1用とした。
【0030】
また、図5(B)に示すように、1辺が60mmで且つ厚みが全て10mmの上板22、下板23、および一対の端部側板24,27からなり且つ断面が正方形で全長が500mmの中空押出形材20a,20bを用意した。表1に示すように、一方の形材20aと他方の形材20bとの高さが同じ60mmとなるように表面を機械加工した組を比較例2用、高さが相違する組を比較例3,4用とした。
更に、図5(C)に示すように、1辺が60mmで且つ厚みが全て10mmの上板22、下板23、端部側板25,27からなり、対向する側板25,25が外側に半径150mmのアールで突出した曲面を有する断面で且つ全長が500mmの中空押出形材21a,21bを用意した。この組を比較例5用とした。
【0031】
加えて、上記押出形材21a,21bと同じ形状および寸法を有し且つ対向する曲面を有する端部側板25,25の中間に、前記凹溝6と同じ寸法の凹溝を有する一対の中空押出形材を用意し、これらの凹溝に跨って前記と同じ幅高さ調整材9を挿入した後、凸条5,5を拘束し、この組を実施例4用とした。
各例の一対の中空押出形材の突き合わせ面に沿って、工具鋼(SKD61)からなる図示しない摩擦攪拌ツールを回転させつつ挿入し且つ移動させる摩擦攪拌接合を施した。係る摩擦攪拌ツールにおける本体の底面の直径は20mm、その摩擦攪拌ピンは長さ7mm×直径8mmであり、当該ツールの回転数は900rpm、送り速度は300mm/分である。
各例において得られた接合部を10箇所ずつ切断し、目視によりバリの有無およびトンネル欠陥の有無を調べた。その結果も表1にそれぞれ示した。
【0032】
【表1】
【0033】
表1によれば、実施例1〜4の接合方法では、段差を有する実施例2,3の接合方法、および曲面で突き合わせた実施例4の接合方法を含めて、バリおよびトンネル欠陥が認められない健全な接合部が全ての切断位置で確認された。
一方、実施例1の接合方法と同じ中空押出形材1g,1hを用い且つその凹溝6,6に幅高さ調整材9を挿入しなかった比較例1の接合方法では、係る幅高さ調整材9がなく流動化したアルミニウム合金材料が下方に流出したため、メタル不足により接合部に大きなトンネル欠陥が生じていた。
【0034】
また、断面が正方形の中空押出形材20a,20bを用い且つ突き合わせ面に沿って段差を有する比較例3,4の接合方法や、曲面で突き合わせ且つ隙間が介在していた比較例5の接合方法の接合部でも、トンネル欠陥およびバリの少なくとも一方が顕著に発生していた。
尚、断面が正方形の中空押出形材20a,20bを用い且つ突き合わせ面が平坦であった比較例2の接合方法では、接合部は満足できる状態であったが、係る形状を常に保つべく、その表面を機械加工する必要がある。
以上のような実施例1〜4の接合方法によって、本発明の接合方法の作用および効果が裏付けられたことが理解された。
【0035】
尚、前記接合すべき一対の中空押出形材は、同じか同種のアルミニウム合金に限らず、互いに異なるアルミニウム合金の組合せであっても良い。
また、幅高さ調整材も、接合すべき一対の中空押出形材と同じか同種のアルミニウム合金に限らず、異種のアルミニウム合金材を用いることも可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上において説明した本発明の接合方法(請求項1)によれば、高さが幅よりも大きな断面長方形の前記閉断面内に挿入され、これより僅かに小さなほぼ相似形断面の幅高さ調整材は、前記摩擦攪拌ツールの圧力をより均一化し、係るツールにより攪拌され塑性・流動したアルミニウム合金材料を下支えする。その結果、段差を有する一対の押出形材の突き合わせ面に沿って形成される接合部でも、段差が減少してトンネル欠陥やバリが生じにくくなる。従って、一対の押出形材の突き合わせ面に沿って介在する段差や隙間に拘わらず、一対の押出形材の端部側板間、および一対の押出形材と幅高さ調整材との突き合わせ部に、健全な接合部を得ることが可能となる。
また、請求項2の接合方法によれば、前記幅高さ調整材を一対の押出形材の各凹溝間に形成される閉断面内に確実に挿入できると共に、係る形材間の隙間を低減することができる。
【0037】
加えて、請求項3の接合方法によれば、前記複数の小溝により、突き合わされた一対の中空押出形材の端部側板を形成しているアルミニウム合金を半固相状態で更に塑性・流動させるため、係るツールを用いる摩擦攪拌接合により、欠陥のない健全な接合部を一層確実に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明に用いる1形態の中空押出形材を示す断面図、(B),(C)は係る形材を一対突き合わせ且つ幅高さ調整材を挿入する工程を示す概略図。
【図2】(A)〜(C)は図1の一対の中空押出形材について摩擦攪拌接合を施す参考形態の工程を示す概略図、(a)はこれに用いる前記ツールの摩擦攪拌ピンの部分断面図。
【図3】(A),(B)は異なる条件の中空押出形材による異なる参考形態の接合方法を示す概略図。
【図4】(A),(B)は更に異なる条件の中空押出形材による本発明の接合方法を示す概略図、(C)は参考形態の幅高さ調整材を用いた接合方法を示す概略図。
【図5】(A)〜(C)は本発明の実施例または比較例の接合方法に用いた一対の中空押出形材などの接合直前の状態を示す概略図。
【図6】(A)〜(C)は従来の接合方法を示す概略図。
【符号の説明】
1a〜1e,1h…中空押出形材(押出形材)
4,4c〜4e……端部側板
6,6a……………凹溝
8……………………中空部
9,9a……………幅高さ調整材
10…………………摩擦攪拌ツール
12……………………本体
14…………………底面
16…………………摩擦攪拌ピン
17…………………ネジ溝(小溝)
18…………………小溝
h1…………………幅高さ調整材の高さ
h2…………………凹溝の高さ
x1…………………幅高さ調整材の幅
x2…………………閉断面の幅
Claims (3)
- アルミニウム合金からなり断面がほぼ矩形で且つ少なくとも一端に中空部を有する複数の押出形材を、それらの押出方向に直交する方向に隣接して接合する方法であって、
隣接する一対の押出形材の端部側板にそれぞれ形成された外向きに開口し、断面が長方形を呈する一対の凹溝を対向させて、高さが幅よりも大きな断面長方形の閉断面を上記押出方向に沿って形成し、係る閉断面内にこれよりも僅かに小さくほぼ相似形断面であり、且つアルミニウム合金からなる幅高さ調整材を挿入する工程と、
上記隣接する一対の押出形材の端部側板間における外側から摩擦攪拌ピンを含む摩擦攪拌ツールを、上記幅高さ調整材に向けて回転しつつ挿入し且つ上記押出方向に沿って移動させることにより、上記一対の押出形材の端部側板間、および一対の押出形材と幅高さ調整材との突き合わせ部に、塑性流動化したアルミニウム合金材料が固化した接合部を形成する摩擦攪拌接合を施す工程と、を含む、
ことを特徴とする接合方法。 - 前記幅高さ調整材の高さは、前記凹溝の高さ未満で且つ該高さとの差が3mm未満の範囲にあり、あるいは、前記幅高さ調整材の幅は、前記一対の凹溝により形成される閉断面の幅未満で且つ係る幅との差が2mm未満の範囲にある、
ことを特徴とする請求項1に記載の接合方法。 - 前記摩擦攪拌ツールは、円柱形の本体と、その底面の中心部から同心で垂下する前記摩擦攪拌ピンとを備え、係る攪拌ピンの周面には当該ピンの軸方向またはこれとほぼ直交する方向にほぼ沿った複数の小溝が形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
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