JP4406153B2 - 予加工後の成形性の優れた鋼管とその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車の足廻り、メンバーなどに用いられる鋼材で、特に、ハイドロフォーム成形等で本成形前に予加工を施し、その後の成形で、優れた成形性を示す鋼管とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の軽量化ニーズに伴い、鋼板の高強度化が望まれている。高強度化することで、板厚減少による軽量化や、衝突時の安全性向上を狙いとする。また、最近では、複雑な形状の部品について、高強度鋼の素鋼板又は鋼管からハイドロフォーム法を用いて成形加工する試みが行われている。これは、部品数の減少や溶接フランジ箇所の削減などを狙ったものである。
【0003】
自動車の軽量化や低コスト化のニーズに伴い、このような各部位のハイドロフォーム(特開平10-175026 号参照)などの成形加工方法が実際に採用され、コストの削減や設計の自由度が拡大されるなどの大きなメリットが期待される。このような、優れた成形方法を活用するためには、成形性の優れた鋼板が必要不可欠となる。既存材料の中では、TiやNbを添加することで侵入型固溶元素を極力低下させたIF鋼(Interstitial Free STEEL)が、その成形性の良さから、特に難加工部分を含んだ部位の候補材の1つである。
【0004】
しかしながら、IF鋼において高延性を保ちながら高強度化を図るには限界がある。例えば、Cuの析出強化を活用したIF鋼が開発されている(鉄と鋼:76(1990)759-766 )が、高強度化に伴って延性は低下してしまう。また、加工途中に熱処理を施すことで延性や成形性を回復することもできるが、コストの上昇は免れない。
【0005】
また、部品点数の減少やいくつかの部品のモジュール化の観点から、各部品の形は複雑になり、個々の部品が大型化するため、従来の多段プレス等では、1つの成型品とすることが困難な場合も少なくない。この種の複雑形状の部品を成形する場合には、1回の成形加工で部品形状をだすことは一般には困難で、予加工を伴うのが一般的である。ここで言う予加工とは、本成形前の成形加工のことを指す。
【0006】
具体的には、鋼管ハイドロフォームにおける造管後のパイプの曲げ成形、パイプの予プレス、パイプのしごき加工など、パイプの断面形状又は大きさを変える成形加工、シートハイドロフォームにおけるハイドロフォーム前の予プレスなどがその典型で、最終形状に近い形又は本成形の加工度を緩和するような成形加工がこれにあたる。
【0007】
このように、ハイドロフォームが適用される部品の多くは、特に複雑形状のものが多く、前述の造管後の曲げや、しごき、又は、板の予プレス成形等を、単独又は組み合わせで行った後、本成形をハイドロフォームで行い、最終部品形状を作りだすことが多い。これらの比較的厳しい予加工時によって延性や成形性指標の1つであるn値が低下してしまい、本成型時に十分な成形加工性を、従来の高強度鋼板では確保できず、本成形のハイドロフォーム時には、十分な成形性が残存せずに成形加工できなくなってしまう場合が少なくない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、例えば、自動車の足廻り、メンバーなどに用いられる鋼材で、特にハイドロフォーム成形等で本成形前に予加工を伴い、その後、ハイドロフォーム等の本成形時に、優れた成形加工性を示す高強度鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高強度鋼板において、ハイドロフォーム等の本成形前に行なう予加工による成形性劣化を抑制することで、ハイドロフォーム等の本成形時の成形性を向上させたものである。
即ち、本発明者らは、予加工における集合組織の形成や安定性の確保を図ることで、予加工後の成形性を確保した鋼管及びその製造方法を見い出した。例えば、鋼管ハイドロフォームにおけるパイプの曲げ成形、パイプのしごき加工、パイプのプレスやパイプの断面形状又は大きさの変化、シートハイドロフォームにおけるハイドロフォーム前の予プレスなどが、ここでいう予加工の典型であり、ハイドロフォームが適用される複雑形状の部品のハイドロフォーム成形性を確保し得るものである。
【0010】
即ち、本発明の要旨とするところは、以下の通りである。
〔1〕質量%で、
C:0.002〜0.3%、
Si:0.01〜2.5%、
Mn:0.07〜3.0%、
Al:0.001〜2.0%、及び、
N:0.001〜0.05%、
を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、歪み量にして5%以上の予加工を施した鋼管であって、
(1)少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{111}<110>のX線ランダム強度比が3.0以上、{110}<110>〜{332}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が3.0以上、及び、鋼板1/2板厚での板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が3.0以上であること、
(2)少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>〜{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が3.0以下、及び、鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>のX線ランダム強度比が3.0以下であること
(3)少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{111}<110>〜{111}<112>及び{554}<225>の方位群のX線ランダム強度比の平均が2.0以上であること、
の(1)〜(3)の項目を満たすことを特徴とする予加工後の成形性の優れた鋼管。
【0011】
〔2〕前記鋼管が、質量%で、更に、Pを0.005〜0.3%含むことを特徴とする〔1〕記載の予加工後の成形性の優れた鋼板及び鋼管。
〔3〕前記鋼管が、質量%で、更に、Nb、Ti及びVの1種又は2種以上を、合計で0.01〜0.3%含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
【0012】
〔4〕前記鋼管が、質量%で、更に、Bを0.0001〜0.01%含むことを特徴とする〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
〔5〕前記鋼管が、質量%で、更に、Cr、Cu、Ni、Co、W及びMoの1種又は2種以上を、合計で0.01〜3.0%含むことを特徴とする〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
【0013】
〔6〕前記鋼管が、質量%で、更に、Mg、Ca及び希土類元素の1種又は2種以上を、合計で0.0001〜0.5%含むことを特徴とする〔1〕〜〔5〕の何れかに記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
〔7〕〔1〕〜〔6〕の何れかに記載の予加工後の成形性の優れた鋼管を製造するに当たり、熱延板又は冷延板を基板として母管を造管した後、(Ac3 −50)℃以上(Ac3 +100)℃以下に加熱し、その後、少なくとも(Ar3 +50)℃以下800℃以上で、30%以上の縮径加工を施し、全縮径加工率を50%以上として700℃以上で熱間での縮径加工を終了し、5%以上の予加工を施すことを特徴とする予加工後の成形性の優れた鋼管の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明で対象とする鋼管は、前述のようにハイドロフォーム前に、歪み量にして5%以上の予加工を施したものとする。
予加工の歪み量が5%未満では、複雑形状の部品を1回の成形加工で製造することが困難であるので、本発明の対象鋼管は、上記のように、歪み量にして5%以上の予加工を施した鋼管に限定する。
【0015】
まず、成分組成の限定理由について説明する。
C:Cは高強度化に有効であり、0.002%以上の添加を必要とするが、集合組織を制御する上で、多量添加は好ましいものではないので、上限を0.30%とした。
Si:Siは強化元素であり、また、脱酸元素でもあることから、下限を0.01%とした。一方、過剰添加は、メッキのぬれ性や加工性の劣化を招くので、上限を2.5%とした。
【0016】
Mn:Mnは高強度化に有効な元素であるので、下限を0.07%とした。一方、過剰添加は、延性の低下を招くので、上限を3.0%とした。
Al:Alは脱酸元素である。また、Alは、特に、箱焼鈍を行う場合には、成形性向上に寄与する元素である。一方、過剰添加は、酸化物や窒化物の多量晶出・析出を招き、清浄度を劣化させ、延性を低下させてしまう上、メッキ性を著しく損なう。従って、Alは、0.001〜2.0%とした。
【0017】
N:Nは高強度化に有効な元素であり、0.001%以上の添加を必要とするが、溶接欠陥制御の点で、多量添加は好ましいものではないので、上限を0.05%とした。
P:Pは高強度化に有効な元素であり、必要に応じて添加するが、溶接性や鋳片の耐置き割れ性の劣化や、疲労特性、靱性の劣化を招くことから、必要に応じて添加することとして、その範囲を、0.005〜0.30%とした。
【0018】
Nb、Ti及びV:必要に応じて添加するNb、Ti及びVは、これらの1種又は2種以上の合計0.01%以上の添加で、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成して鋼材を高強度化する。しかし、合計又は単独の含有量が0.3%を超えると、母相であるフェライト粒内又は粒界に、多量の炭化物、窒化物又は炭窒化物が析出して、延性を低下させる。それ故、添加量範囲を、1種又は2種以上の合計で、0.01〜0.3%とした。
【0019】
B:必要に応じて添加するBは、粒界の強化や鋼材の高強度化に有効な元素であり、0.0001%以上の添加が必要であるが、その添加量が0.01%を超えると、その効果が飽和するばかりでなく、必要以上に鋼板強度を上昇させ、加工性も低下させるので、添加量範囲を0.0001〜0.01%とした。
Cr、Cu、Ni、Co、W及びMo:Cr、Cu、Ni、Co、W及びMoは、強化元素であり、必要に応じて、1種又は2種以上を、合計で0.001%以上添加する。一方、過剰の添加は、延性低下を招くので、上限を、1種又は2種以上の合計で3.0%とした。
【0020】
Mg、Ca及び希土類元素(Rem):これらは必要に応じて添加され、介在物制御に有効な元素である。適量添加は、熱間加工性を向上させるが、過剰の添加は、逆に、熱間脆化を助長させるので、必要に応じて、1種又は2種以上を、合計で0.0001〜0.5%添加する。ここで、希土類元素とは、Y、Sr及びランタノイド系の元素を指し、工業的には、これらの混合物であるミッシュメタルとして添加することが、コスト的に有利である。また、Mgの添加は、組織の微細均一化に効果的である。
【0021】
また、本発明の鋼管中に、O、Sn、S、Zn、Pb、As、Sb等が、それぞれ、0.01質量%以下混入しても本発明の効果は失することはない。次に、予加工後の集合組織の限定について説明する。
(1)鋼板又は鋼管の1/2板厚での板面の{111}<110>、{110}<110>〜{332}<110>の方位群、及び、{110}<110>のX線ランダム強度比:この方位群のX線ランダム強度比が、予加工後、ハイドロフォームにて成形を行う上で最も必要な特性値である。板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム結晶に対する各方位の強度比を求めたときの、{111}<110>のX線ランダム強度比を3.0以上、{110}<110>〜{332}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均を3.0以上、及び、{110}<110>のX線ランダム強度比を3.0以上とした。
【0022】
中でも、{110}<110>は重要であり、この方位のX線ランダム強度比が3.0以上であることが、特に望ましい。
{110}<110>〜{332}<110>の方位群の平均強度比が3.0以上で、かつ、{110}<110>の強度比が3.0以上であれば、特に、ハイドロフォーム用鋼管として、より好適であることは言うまでもない。
【0023】
また、成形困難な場合には、上記方位群の平均強度比が5.0以上であること、及び、{110}<110>の強度比が10.0以上であることのうち、少なくとも1つを満たすことが望ましい。
(2)また、少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>〜{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が3.0以下、及び、鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>のX線ランダム強度比が3.0以下であること:少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>〜{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が3.0を超え、鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>のX線ランダム強度比が3.0を超えると、本発明の目的とする、特に、ハイドロフォームにおける拡管率等が1.2程度以下にまで低くなる。それ故、上記2つのX線ランダム強度比のいずれをも、3.0以下とした。
(3)少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{111}<110>〜{111}<112>及び{554}<225>の方位群のX線ランダム強度比の平均が2.0以上であること:また、少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{111}<110>〜{111}<112>及び{554}<225>の方位群のX線ランダム強度比の平均が2.0未満であると、やはり、ハイドロフォームにおける拡管率が低くなる。それ故、上記のX線ランダム強度比については、2.0以上の集積度を確保することとした。
【0024】
そして、本発明の鋼管においては、前記1)〜(3)の項目を満たすこととし、ハイドロフォーム成形時の加工性を確保するものとした。また、上記の各方位におけるX線ランダム強度比は、板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダム結晶に対する各方位の強度比として求める。
【0025】
上記方位群に含まれる主な方位について説明する。
(1){111}<110>及び{110}<110>〜{332}<110>の方位群:この方位群に含まれる主な方位は、{110}<110>、{661}<110>、{441}<110>、{331}<110>、{221}<110>、{332}<110>、{443}<110>及び{554}<110>である。これらの各方位のX線ランダム強度比は、{110}極点図よりベクトル法により計算した3次元集合組織や、{110}、{100}、{211}及び{310}極点図のうちの複数の極点図を基に級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。
【0026】
例えば、後者の方法で各結晶方位のX線ランダム強度比を求める場合には、3次元集合組織のφ2 =45度断面における(1 1 0)[1 1 0]、(6 6 1)[1 1 0]、(4 4 1)[1 1 0]、(3 3 1)[1 1 0]、(2 2 1)[1 1 0]、(3 3 2)[1 1 0]、(4 4 3)[1 1 0]及び(5 5 4)[1 1 0]の強度で代表できる。
{110}<110>〜{332}<110>方位群の平均X線ランダム強度比とは、上記の各方位の相加平均である。上記方位のすべての強度が得られない場合には、{110}<110>、{441}<110>、{221}<110>の方位の相加平均で代替してもよい。
(2){100}<110>〜{223}<110>の方位群:
この方位群に含まれる主な方位は{100}<110>、{116}<110>、{114}<110>、{113}<110>、{112}<110>、{335}<110>及び{223}<110>である。
【0027】
これらの各方位のX線ランダム強度比は、{110}極点図よりベクトル法により計算した3次元集合組織や、{110}、{100}、{211}及び{310}極点図のうちの複数の極点図を基に級数展開法で計算した3次元集合組織から求めればよい。例えば、後者の方法で{100}<110>〜{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比を求める場合には、3次元集合組織のφ2 =45度断面における(001)[1 1 0] 、(116) [1 -10] 、(114)[1 -10] 、(113)[1 -10] 、(112)[1 -10] 、(335)[1 -10] 及び(223)[1 -10] の強度で代表できる。
(3){111}<110>〜{111}<112>の方位群:
この方位群に含まれる主な方位は、{111}<110>及び{111}<112>である。
【0028】
この方位群について、例えば、前記の級数展開法で計算した3次元集合組織から各結晶方位のX線ランダム強度比を求める場合には、3次元集合組織のφ2 =45度断面における(111) [1 -10] および(111) [-1 -12] で代表できる。
なお、本発明の集合組織は、通常の場合、φ2=45°断面において上記の方位群の範囲内に最高強度を有し、この方位群から離れるにしたがって、徐々に強度レベルが低下するが、X線の測定精度の問題や、鋼管製造時の軸周りのねじれの問題、X線試料作製時の精度の問題などを考慮すると、最高強度を示す方位が、これらの方位群から±5°ないし10°程度ずれる場合も有り得る。
【0029】
鋼管のX線回折を行う場合には、鋼管より弧状試験片を切り出し、これをプレスして平板とし、X線解析を行う。また、弧状試験片から平板とする時は、試験片加工による結晶回転の影響を避けるため、極力低歪みで行うものとし、加えられる歪み量の上限を、10%以下で行うこととした。このようにして得られた板状の試料について、機械研磨によって所定の板厚まで減厚した後、化学研磨等によって歪みを除去すると同時に、板厚中心層が測定面となるように調整する。
【0030】
なお、鋼板の板厚中心層に偏析帯が認められる場合には、板厚の3/8〜5/8の範囲で偏析帯のない場所について測定すればよい。また、偏析帯が認められない場合においても、板厚1/2の板面以外の板面、例えば3/8〜5/8で、本発明に規定する集合組織が得られてもよい。更に、X線測定が困難な場合には、EBSP法やECP 法により測定しても差し支えない。
【0031】
本発明の集合組織は、上述のとおり、板厚中心又は板厚中心近傍の面におけるX線測定結果により規定されるが、中心付近以外の板厚においても、同様の集合組織を有することが好ましい。
しかしながら、鋼管の外側表面〜板厚1/4程度までは、後述する縮径加工によるせん断変形に起因して集合組織が変化し、上記の集合組織の要件を満たさない場合もあり得る。
【0032】
なお、{hkl}<uvw>とは、上述の方法でX線用試料を採取した時、板面に垂直な結晶方位が<hkl>で、鋼管の長手方向が<uvw>であることを意味する。
本発明の集合組織に関する特徴は、通常の逆極点図や正極点図だけでは表すことができないが、例えば、鋼管の半径方向の方位を表す逆極点図を、板厚の中心付近に関して測定した場合、各方位のX線ランダム強度比は、以下のようになることが好ましい。
【0033】
<100>:2以下、<411>:2以下、<211>:4以下、<111>:15以下、<332>:15以下、<221>:20.0以下、<110>:30.0以下。
また、軸方向を表す逆極点図においては、<110>:10以上、上記の<110>以外の全ての方位:3以下。
【0034】
さらに、鋼管の製造方法に係る条件の限定理由について説明する。
加熱温度:溶接部の成形性向上のために、縮径前の加熱温度を(Ac3 −50)℃以上とし、粒の粗大化を防止するため、加熱温度を(Ac3 +100)℃以下と規定する。
縮径加工終了温度:縮径後の歪み硬化を回復させるために、縮径直後の温度を700℃以上と限定する。縮径加工終了温度の上限は特に限定しないが、粗大粒生成の点で、900℃以下とすることが好ましい。
【0035】
縮径加工率:集合組織の発達を促す目的で限定する。(Ar3 +50)℃以下800℃以上で、30%未満の縮径加工であると、有効な集合組織の形成に支障をきたすので、この温度域での縮径率の下限を30%とした。更に、熱間での全縮径加工率が50%未満であると、やはり有効な集合組織の形成に支障をきたすので、全縮径加工率の下限を50%とした。また、縮径加工が200%を越えると、加工時の破断等の懸念があるので、200%以下とするのが望ましい。
【0036】
また、ハイドロフォーム前に5%以上の予加工を施すこととする。
さらに、本発明の鋼管を製造するにあたっては、高炉、転炉、電炉による溶製に続き、各種の2次製錬を行い、次いで、インゴット鋳造や連続鋳造を行い、連続鋳造の場合には、そのまま熱間圧延するなどの製造方法を組み合わせて製造しても、何ら本発明の効果を阻害するものではない。
【0037】
また、1050℃〜1300℃に鋼塊を加熱して、熱間圧延を、Ar3 変態点−10℃以上Ar3 変態点+120℃未満で行うことや、熱延時に潤滑圧延を施すこと、熱延板の巻き取り処理を750℃以下で行うこと、更には、冷間圧延を施すこと、その後に、箱焼鈍又は連続焼鈍にて焼鈍を行うことなどの、造管前の鋼板の製造方法を組み合わせて製造しても、何ら本発明の効果を阻害するものではない。即ち、造管用の鋼板は熱延板、冷延板または冷延焼鈍板を用いることができる。
【0038】
鋼管製造にあたっては、電縫溶接、TIG、MIG、レーサー溶接、UOや鍛接等の溶接・造管手法等を用いることができる。
【0039】
【実施例】
表1に示す成分の各鋼を、実験室規模で溶製して1200℃に加熱後、熱間圧延して、各鋼の成分と冷却速度で決まるAr3 変態点−10℃以上Ar3 変態点+120℃未満(概ね900℃)で、2.2mm厚及び7mm厚さで熱間圧延を終了し、造管用の元板とした。
【0040】
また、一部については、更に、冷延後焼鈍して、2.2mm厚さの冷延焼鈍板とした。その後、外径178〜63mmの管に、冷間で、TIG、レーザー又は電縫溶接を用いて造管した。そのうち、外径89mm以下の小径の鋼管については、後述の予加工を施し、ハイドロフォーム成形性を評価した。
それより、径の大きい鋼管については、Ac3 変態点〜Ac3 変態点+100℃に加熱して、外径75mmに、900〜700℃で全縮径加工率50〜75%で縮径して鋼管を作製した。その際、800〜Ar3 +50℃で30〜75%の縮径加工を施した。その後、上記の全鋼管を対象として、予加工として、冷間で15%の縮径絞り加工を施し、外形63mmの鋼管を得た。
【0041】
予加工後に、ハイドロフォーム成形を、種々の押し込み・内圧の条件で行い、バーストに至るまで行った。前もって鋼管に、10mmφのスクライブドサークルを転写し、内圧と軸押し量を制御して、円周方向への張り出し成形を行った。種々の押し込み量及び内圧にて、ハイドロフォーム成形を、挫屈又はバーストするまで行い、バースト直前での最大拡管率(拡管率=成形後の最大周長/母管の周長)を示す部位、及び、破断部近傍又は最大板厚減少部分の管における長手方向歪み:εφと周方向歪み:εθを測定した。
【0042】
この2つの歪の比ρ=εφ/εθと最大拡管率をプロットし、εφ/εθが−0.5(板厚は減少するためマイナスとなる)になる拡管率を求めて、予加工後のハイドロフォーム成形性の指標として評価した。X線解析は、予加工後の鋼管から弧状試験片を切り出し、プレスして平板として行った。また、X線の相対強度はランダム結晶と対比することで求めた。
【0043】
表2に示すように、化学組成及び各集合組織の要素が本発明の範囲内にある鋼A〜Oでは、予加工後においても高い拡管率が達成されている。一方、化学成分が本発明の範囲を外れている鋼P〜Tでは、拡管率は低いか、又は、造管時に問題が生じてしまう。
また、表3に示すように、化学成分だけ本発明の範囲を満たしていても、各集合組織の集積度が本発明の範囲内に確保されていない場合には、拡管率は低い。
【0044】
【表1】
Figure 0004406153
【0045】
【表2】
Figure 0004406153
【0046】
【表3】
Figure 0004406153
【0047】
【発明の効果】
本発明は、予加工後のハイドロフォーム等の成形性に優れた集合組織及びその制御方法を見い出だし、これらに係る条件を限定することで、予下加工後にもハイドロフォーム等の成形性に優れた鋼管及びその製造方法を提供するものである。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.002〜0.3%、
    Si:0.01〜2.5%、
    Mn:0.07〜3.0%、
    Al:0.001〜2.0%、及び、
    N:0.001〜0.05%、
    を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなり、歪み量にして5%以上の予加工を施した鋼管であって、
    (1)少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{111}<110>のX線ランダム強度比が3.0以上、{110}<110>〜{332}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が3.0以上、及び、鋼板1/2板厚での板面の{110}<110>のX線ランダム強度比が3.0以上であること、
    (2)少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>〜{223}<110>の方位群のX線ランダム強度比の平均が3.0以下、及び、鋼板1/2板厚での板面の{100}<110>のX線ランダム強度比が3.0以下であること
    (3)少なくとも鋼板1/2板厚での板面の{111}<110>〜{111}<112>及び{554}<225>の方位群のX線ランダム強度比の平均が2.0以上であること、
    の(1)〜(3)の項目を満たすことを特徴とする予加工後の成形性の優れた鋼管。
  2. 前記鋼管が、質量%で、更に、Pを0.005〜0.3 %含むことを特徴とする請求項1記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
  3. 前記鋼管が、質量%で、更に、Nb、Ti及びVの1種又は2種以上を、合計で0.01〜0.3%含むことを特徴とする請求項1又は2記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
  4. 前記鋼管が、質量%で、更に、Bを0.0001〜0.01%含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
  5. 前記鋼管が、質量%で、更に、Cr、Cu、Ni、Co、W及びMoの1種又は2種以上を、合計で0.01〜3.0%含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
  6. 前記鋼管が、質量%で、更に、Mg、Ca及び希土類元素の1種又は2種以上を、合計で0.0001〜0.5%含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の予加工後の成形性の優れた鋼管。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の予加工後の成形性の優れた鋼管を製造するに当たり、熱延板又は冷延板を基板として母管を造管した後、(Ac3 −50)℃以上(Ac3 +100)℃以下に加熱し、その後、少なくとも(Ar3 +50)℃以下800℃以上で、30%以上の縮径加工を施し、全縮径加工率を50%以上として700℃以上で熱間での縮径加工を終了し、5%以上の予加工を施すことを特徴とする予加工後の成形性の優れた鋼管の製造方法。
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