JP4405039B2 - ガス回収装置及びガス回収方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス絶縁機器に封入されたSFガスのガス回収技術に係り、特に、SFガス回収率の向上と分解ガスの放出抑制を図ったガス回収装置とその運用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に変電所には、系統切換えや保守点検などに使用するために遮断器や断路器等のガス絶縁機器が設置されている。ガス絶縁機器内にはSFガスが封入されている。SFガスは絶縁性能と消弧性能に優れており、また、化学的にも安定で無害な気体である。したがって、ガス絶縁機器の絶縁媒体として広く用いられている。しかし、SFガスは温室効果が高く、分解までの寿命も長いので、今後の長期にわたる地球環境保護を目的として排出規制対象に指定された。
【0003】
ガス絶縁機器は、試験後や現地での内部点検時には蓋を開けて大気開放されるが、それに先立って内部に封入したSFガスを外部に排出しないように回収する必要がある。SFガスのガス純度が高い場合、比較的低圧で液化できるので、ガスのまま別のタンクに回収・保管するよりも、安全面を含めて液化回収した方が利点が多い。このような液化回収装置の代表例について、図6の概念図を参照して説明する。
【0004】
このガス回収装置は、SFガスを封入したガス絶縁機器1に、フィルタ・分解ガス吸着装置2、真空ポンプ3、加圧装置8、液化装置4、液化SFタンク5及び気化装置16が順次接続されて構成されている。なお、ガス絶縁機器1の中身については、本出願と関係が少ないのでこの図では省略する。以上のガス回収装置では、真空ポンプ3が動作してガス絶縁機器1から加圧装置8にSFガスを送り、加圧装置8にてこれを加圧し、液化装置4にて液化した上で、液化SFをタンク5に保管し、再利用するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記ガス回収装置において、SFガスの排出量を最大限削減するためには最終的にガス絶縁機器1内が高真空状態になるまで真空ポンプ3を使ってSFガスを引く必要がある。しかし、図7のグラフに示すように、ガス絶縁機器1内のSFガスは、圧力が低くなるに従って真空ポンプ3の排気効率が悪くなるため、その回収に要する時間は長くなる。
【0006】
また、ガス絶縁機器内には、水分やSFガス分解ガスを除去する目的で、主にゼオライト系の吸着剤が封入されるのが一般的である。前段で述べたようにSFガス排出量削減のためにはガス絶縁機器内が高真空になるまで減圧する必要があるが、この減圧に伴って、吸着剤から逆にSFガスや分解ガスが徐々に離脱して回収ガス側に移動することがある。水及び各種分解ガスに対するゼオライト系の吸着剤に関する吸着順位(力)について述べると、
HF>>HO>SO>SOF,(SO)の順番になる。
【0007】
HFは化学反応により強固に吸着剤に付着している。また、HOに関しては吸着力が強いため、高真空状態でもゼオライトから出てくる可能性は少ない。しかし、SO以下の分解ガスやSFガスは減圧回収時にはゼオライト系の吸着剤から徐々に離脱し、回収ガス中に混じる可能性がある。この結果、回収されるガス量が増大し、回収に要する時間が長引くことになる。
【0008】
本発明は、以上の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、SFガス回収率を高めると共に吸着剤からの各種分解ガスの放出を抑えて回収作業時間の短縮化に寄与するガス回収装置及びガス回収方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的を達成するために提案されたものであり、ガス絶縁機器内に封入されたSF6 ガスを回収するガス回収装置において、次のような技術的特徴を有している。
【0010】
請求項1の発明は、前記ガス絶縁機器には、主系列のガス回収ラインと、副系列のガス回収ラインと、前記ガス絶縁機器内に前記SF6 ガスを薄める希釈用ガスを充填する希釈用ガス充填ラインとが繋がれており、前記主系列のガス回収ラインには真空ポンプ、前記SF6 ガスの加圧液化装置及び液化SF6 タンクが取り付けられ、前記副系列のガス回収ラインには前記SF6 ガスと前記希釈用ガスとの混合ガスを分離濃縮する混合ガス分離濃縮装置が取り付けられると共に、この混合ガス分離濃縮装置を回避するバイパス回路が接続され、前記2つのガス回収ラインを切り替えるライン切り替え手段が設けられ、さらに、前記混合ガス分離濃縮装置のガス出口側に排出部バッファタンクが設けられ、この排出部バッファタンク内に孔径10オングストロームのゼオライト系吸着剤が封入されたことを特徴とする。
【0011】
以上の請求項1の発明では、ガス絶縁機器内のSFガス圧力が高い時には、主系列のガス回収ラインで回収を進める。すなわち、真空ポンプが動作して加圧液化装置によりSFガスを液化し、これを液化SFタンクに貯蔵する。回収が進み、ガス絶縁機器内のSFガス圧力が低くなり、真空ポンプで引いたとしても排気性能が悪くなった時点で、希釈用ガス充填ラインから希釈用ガスをガス絶縁機器内に充填し、見掛け上のガス圧力を上げた状態の混合ガスとする。希釈用ガスとして乾燥窒素や空気が考えられる。そして、ライン切り替え手段が主系列のガス回収ラインから副系列のガス回収ラインに切り替え、副系列のガス回収ラインで混合ガスを回収し、混合ガス分離濃縮装置にて混合ガスをSFガスと希釈用ガスとに分離し、SFガスを濃縮する。
【0012】
このような請求項1の発明によれば、SFガス加圧液化装置と混合ガス分離濃縮装置とを組み合わせることによって、SFガスの回収率を高めることができる。しかも、希釈用ガス充填ラインから希釈用ガスを充填してガス絶縁機器内のガス圧力を高いレベルに維持できるため、必要以上に減圧する必要が無い。したがって、真空ポンプの排気性能低下がなく、回収作業時間を短くすることができる。さらに、副系列のガス回収ラインに接続したバイパス回路は、混合ガス分離濃縮装置の出口側から入口側へと、回収したガスを還流させることができる。したがって、混合ガス分離濃縮装置から出た希釈用ガス中にSFガスが含まれた場合でも、これを混合ガス分離濃縮装置に戻して再度、SFガスと希釈用ガスとの分離することができ、結果としてSFガスの回収率を高めることができる。
【0026】
また、排出部バッファタンク内のゼオライト系吸着剤がSF6 ガスを吸着するので、混合ガス分離濃縮装置にて分離しきれなかった微量のSF6 ガスをここで回収することができる。
【0027】
請求項の発明は、請求項記載のガス回収装置において、所定時間ごとに前記排出部バッファタンク内の吸着剤が吸着したSF6 ガスを減圧回収するように構成されたことを特徴とする。
【0028】
以上の請求項の発明では、所定時間ごとに排出部バッファタンク内の吸着剤が吸着したSF6 ガスを減圧回収して吸着剤の再生を図ることができ、排出部バッファタンクにおけるSF6 ガスの回収効率を保持することが可能である。
【0029】
請求項の発明は、請求項1または2記載のガス回収装置において、前記排出部バッファタンクの排出口にSF6 ガス検知器が取付けられたことを特徴とする。
【0030】
以上の請求項の発明では、SF6 ガス検知器が排出部バッファタンクの排出口でのSF6 ガス濃度を検知するので、吸着剤の再生時期を的確に把握することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、図7に示した従来技術と同一の部材に関しては同一符号を付して説明は省略する。また、各実施の形態において同一の部材に関しては同一符号を付す。
【0036】
(1)第1の実施の形態
[構成]
1は第1の実施の形態の全体概要を示す構成図である。第1の実施の形態は、本発明の基本構成に関するものである。ガス絶縁機器1には主系列のガス回収ラインAと、副系列のガス回収ラインBと、ガス絶縁機器1内にSF6 ガスを薄める希釈用ガスとして窒素ガスを充填する窒素ガス充填ラインCとが繋がれている。
【0037】
主系列のガス回収ラインAには、既存の現在実用化されている液化回収装置、すなわち真空ポンプ3、SFガスの液化装置4a及び液化SFタンク5aが取り付けられている。なお、液化を促進するための冷却用の冷凍機等は省略している。また、副系列のガス回収ラインBにはSFガスと窒素ガスとの混合ガスを分離濃縮する混合ガス分離濃縮装置6、濃縮されたSFガスを液化する液化装置4b及び液化SFタンク5bが取り付けられている。さらに、副系列のガス回収ラインBには前記混合ガス分離濃縮装置6を回避するバイパス回路7が接続されている。これらの構成要素はバルブ11を有する配管10で結ばれている。また、前記2つのガス回収ラインA,Bを切り替えるライン切り替え手段として前記バルブ11の開閉を制御する制御盤9が設けられている。
【0038】
第1の実施の形態における混合ガス分離濃縮装置6は、吸着剤を有する圧力スイング吸着装置から構成されており、吸着剤には孔径3.8〜5オングストロームのゼオライト系吸着剤が用いられている。ここで圧力スイング吸着装置の基本原理について図2を用いて述べる。また、この部分の基本構成を図3に示す。まず、ゼオライト系吸着剤について説明する。
【0039】
窒素ガスや酸素ガスとSFガスを分離するために、孔径のサイズにより特異な吸着選択性を示す合成ゼオライト系吸着剤が有効である。ゼオライトは含水アルミノケイ酸塩鉱物群の総称で、一般式MeO・Al2O3・mSiO2・nH2Oで示される。また、合成ゼオライトは、その表面に均一な細孔を有し、この細孔よりも小さい分子のみが、孔路を通って空洞の内部に吸着されるため、優れた選択吸着性(分子篩効果)を発揮する。
【0040】
一方、分離回収対象のSFガスと窒素ガスは分子の大きさが異なっている。SF分子はDS:5.49オングストローム〜DL:6.06オングストローム、N2分子はDS:3.1オングストローム〜DL:4.2オングストロームである。ここでDSは分子の短い方の長さ、DLは分子の長い方の長さを示す。吸着剤の細孔径が5オングストロームのものを使用した場合、SFガスは表面にある細孔を通れずゼオライト内部には入れない。そのため、SFガスは吸着されず、内部に侵入できる窒素ガスだけが選択的に吸着されて、SFガスの分離が可能となる(図2参照)。またゼオライトは、結晶構造中に金属陽イオンを包蔵し、これが極性基を静電気的に引き付けたり、分極性分子を分極して引き付ける作用を示し吸着するもので中性分子の吸着にも適用できる有利がある。商品名としてモレキュラーシーブス(U.C.C.)、ゼオラム(東ソー)、モレキュライト(栗田工業)、ニッカペレット(日本活性白土)等が知られている。
【0041】
続いて、圧力スイング吸着装置について説明する。圧力スイング吸着装置とは、その名のように吸着剤の吸着量がガス圧力に比例することを基本原則にしている。混合ガスの分離を連続的に効率良く行なうためには、この圧力スイング吸着法を応用すると良いことが分かった。図3は混合ガス分離濃縮装置6内部を詳細に示している。
【0042】
混合ガス分離濃縮装置6は2個の分離槽15a,15bから構成されている。分離槽15a,15b内には孔径5オングストロームのゼオライト系吸着剤16が封入されている。また、分離槽15a,15bに混合ガスが入いる側にはバルブB1〜B5、回収されたガスが出ていく側にはバルブB6,B7が設置されている。
【0043】
混合ガス分離濃縮装置6におけるバルブB1〜B7の開閉操作に関して基本的な運転パターンを説明する。まず、バルブB1は開、その他のバルブB2〜B7は閉の状態になっている。また、バルブB4は開の状態で真空ポンプ3に連結され減圧処理されている。初めにSFガスの分離に関して説明する。ガス絶縁機器1内の混合ガスは、真空ポンプ3により、ラインBに導かれていく。混合ガス分離濃縮装置6の入口に入り、まず分離槽15aに混合ガスが注入される。分離槽15aでは吸着剤の分子篩効果により、吸着剤には窒素ガスだけが吸着され、SFガスは徐々に濃度を上げながら図面上方に流れていく。最終的に分離槽15aの上部ではSFガス濃度が高いガスが溜まっていく。所定圧力に達した時点で、バルブB1を閉とし混合ガスの流入を止め、バルブB6を開にして濃縮したガスを回収し、液化装置4bへ流す。
【0044】
一方、この時期、分離槽15bは、真空処理されており減圧状態にあり、吸着していた窒素ガスを放出した初期の再生状態にある。濃縮されたSFガスの回収が終わった時点で、バルブB6を閉、バルブB3を開とし、混合ガスの流路を分離槽15b側に切り替える。この場合のSFガスの分離濃縮は、分離槽15bが機能することになる。そして前サイクルと逆に分離槽15a側は減圧処理し、窒素ガスを吸着剤から離脱し、排出すると共に吸着剤は再生された未吸着の状態になる。この繰り返しによって混合ガスはSFガスと窒素ガスに分離されることになり、濃縮SFガスとして回収が可能となり、液化装置4bへ流す。
【0045】
すなわち、先に説明したように吸着工程では圧力が高く、分子の大きさが吸着剤の孔径より小さい窒素ガスだけが多量に吸着できる。逆に圧力を低下させると吸着している窒素ガスが離脱し、最終的に排出され、同時に吸着剤は、初期の未吸着の状態に再生される。その後、再度ガス圧が上昇した場合、吐き出した量と同じ量だけ窒素ガスを吸収され、この吸収と再生を交互に繰り返せば、原則的には、半永久的にガスの分離が可能になる。
【0046】
しかし、先に述べたように水分や分解ガスの一部は吸着剤と強く結びつくので、初期の性能から低下していく可能性がある。吸着剤の交換を避けたい場合は、混合ガス分離濃縮装置6に入るガスは、分解ガス等が入らないようにフィルタ・分解ガス吸着装置2による純度管理が必要となる。以上述べた方法で、導入した混合ガス中のSFガス濃度を例えば10vol%から50vol%以上の濃度まで濃縮することは容易である。液化圧力は、室温下でも約4MPa程度になり、既存レベルの冷凍機と加圧装置で液化が可能となり、SFガスの液化回収と再使用が可能となる。
【0047】
分離原理のところで説明したように、吸着対象のガス分子の大きさと吸着剤の細孔径の大きさの違いを応用したものであるから、当然孔径3.8オングストローム〜5オングストロームの範囲のものが使用できるが、吸着速さも考えると、孔径が5オングストロームタイプのゼオライト系吸着剤が最も適切であった。孔径3.8オングストロームの吸着剤を用いた場合、窒素ガスの吸着速度が遅く、5オングストロームのものに比べて約2倍以上の時間が掛かり回収速度の点で差が見られた。
【0048】
ここで、バイパス回路7の機能について説明する。混合ガスは混合ガス分離濃縮装置6内に入って、窒素ガスが選択的に吸着され、SFガスは濃度を上げながら、装置の下流側に溜まっていく。ただし、SFガスと窒素ガスの間には、分離面をはっきり示すような明確な境はない。特に、排出ガス中のSFガス濃度を下げるためには、回収ガスに含まれるSFガス濃度をある程度犠牲にして、余分の窒素ガスと一緒に回収していく必要がある。
【0049】
一方、回収されたガスは液化装置4bにおいてSFガスの液化回収が進行している。このような混合ガスの回収を続行していくと、窒素ガスはガスの状態で液化装置4bに溜まり続けていくので、徐々に圧力が上昇していき、最終的に液化装置4b内の設計圧力を越え、回収作業を続けることができなくなる。この窒素ガスにはSFの蒸気圧分に相当するSFガスが含まれるので、このままの状態で大気中に放出することができない。そこでバイパス回路7を利用して、このSFガスを含有する窒素ガスを混合ガス分離濃縮装置6の入口に還流することができる。
【0050】
なお図示しないが、バイパス回路18には所定の圧力で動作するリリーフ弁等(冷却性能にも関連するが、4.5〜4MPa間で開閉動作を繰り返す弁)が取付けられており、圧力上昇時に弁を開けて効率的な液化に必要な圧力を確保しつつ圧力を緩和させるようになっている。また、バイパス回路7の代わりに別途ボンベを準備し、一時的にSFガスを含む窒素ガスを保管し、ボンベの許容量に達した時点でバッチ式に混合ガス分離濃縮装置6の前工程に戻しても同じ効果が得られる。
【0051】
[作用効果]
以上の構成を有する第1の実施の形態では、ガス回収作業の初期においてガス絶縁機器1内部のガス圧力が高い場合、機器1内からSFガスを容易に取り出すことができる。つまり、主系列のガスラインA側の液化装置4a及び液化SFタンク5aを用いて液化回収していく。ガス絶縁機器1内のガス圧力は徐々に低下していくので、真空ポンプ3を用いてSFガスの回収を進めていくが、大気圧以降は減圧回収になるとSFガスの排出に時間が掛かるようになり、ガス絶縁機器1内部に入れた吸着剤から、吸着しているSFガスや先に述べた分解ガスの一部が徐々に離脱して、SFガスが混入されるようになる。そこで第1の実施の形態では、減圧状態になった時点で窒素ガス充填ラインCからガス絶縁機器1内部に窒素ガスを入れ、ガス絶縁機器1内のガス圧力を維持する。
【0052】
例えば、ガス絶縁機器1内に残ったSFガスが100mmHg(0.013MPa)の時点で窒素ガスを機器1内に入れて、10倍に希釈した状態で絶対圧約0.13MPaまで加圧し、機器1内部を混合ガス状態にする。その後、制御盤9の制御によりバルブ11の開閉を行い、副系列のガスラインBに切り替えて回収作業を続行する。つまり、副系列のガス回収ラインBで混合ガスを回収し、混合ガス分離濃縮装置6にて混合ガスをSFガスと窒素ガスとに分離、SFガスを濃縮し、ラインB側の液化装置4b及び液化SFタンク5bを用いて液化回収していく。そして、ガス絶縁機器1内に残ったSFガスが先に到達した100mmHg(0.013MPa)まで回収を行なった場合、ガス絶縁機器1内に残留しているSFガス量はほぼ1/10に低減できる。
【0053】
これは、今までの方式で10mmHgまで回収したのと同等の結果が可能となることを意味する。このように運用すれば、同一真空度まで回収したと仮定して残存のSFガス量を1/10に低減できる。また、SFガス残存ガス量を同一にした場合、真空度は10倍高いところで終了して良いことを意味する。このように運用することで、必要以上に真空処理する必要が無い。そのため、吸着剤から分解ガス等の離脱を防ぐことができる。
【0054】
以上述べたように、第1の実施の形態によれば、SFガスの液化装置4a,4bと混合ガス分離濃縮装置6とを組み合わせることによって、SFガスの回収率を高めることができる。しかも、窒素ガス充填ラインCから窒素ガスを充填してガス絶縁機器1内のガス圧力を高いレベルに維持できるので、真空ポンプ3の排気性能が低下することなく、回収作業時間を短縮化することができる。また、真空処理の程度が低いため、ガス絶縁機器1内の吸着剤から分解ガスが離脱することを抑制でき、回収ガス量の増大を招くおそれがなく、作業時間の短縮化を図ることができる。
【0055】
さらに、副系列のガス回収ラインBに接続したバイパス回路7は、混合ガス分離濃縮装置6の出口側から入口側へと、回収したガスを還流させるので、混合ガス分離濃縮装置6から出た窒素ガス中にSFガスが含有される場合でも、これを混合ガス分離濃縮装置6に戻して再度、SFガスと窒素ガスとの分離を実施ができ、結果としてSFガスの回収率が向上する。
【0056】
(2)第2の実施の形態
[構成]
4は第2の実施の形態の要部構成図を示している。第2の実施の形態の特徴は、混合ガス分離濃縮装置6の入口側に導入部バッファタンク12が、出口側に排出部バッファタンク14がそれぞれ設けられた点にある。導入部バッファタンク12内には孔径5オングストロームと孔径10オングストロームのゼオライト系混合吸着剤13がそれぞれ、80〜100wt%、20〜0wt%となるように配合比率で封入されている。
【0057】
なお、導入部バッファタンク12には前記バイパス回路7が接続されている。また、導入部バッファタンク12の出口側には真空ポンプ3が接続されている。一方、排出部バッファタンク14内には孔径10オングストロームのゼオライト系吸着剤15が封入されている。さらに、第2の実施の形態では、所定時間ごとに排出部バッファタンク14内のゼオライト系吸着剤15が吸着したSFガスを減圧回収するように構成されている。
【0058】
[作用効果]
以上のような構成を有する第2の実施の形態の作用効果は次の通りである。一般に、真空ポンプ3の能力に比べて混合ガス分離濃縮装置6で処理できるガス量は小さい。しかし、第2の実施の形態では、混合ガス分離濃縮装置6における混合ガスの処理速度が遅くても、導入部バッファタンク12内に混合ガス分離濃縮装置6で処理すべきSFガスを全て取り込むことができるので、その時点で混合ガス分離濃縮装置6を含む副系列のガス回収ラインBとガス絶縁機器1との接続を取り外すことが可能となる。このようにすれば、導入部バッファタンク12内のガスの回収作業を続けながら、機器1側に必要な作業を別途並列で行なうことができ、作業性の改善を図ることができる。
【0059】
また、導入部バッファタンク12により、処理するガス流量の適正化が図り易いという利点もある。混合ガス分離濃縮装置6にはできるだけ単位時間当たり一定の流量が流れる方が分離性能が良くなる。バッファタンク12内に封じ込めたガスは、一旦所定圧力(例えば0.1MPa)まで回収した時点で停止し、次の回収作業まで貯えておいても、大気中に放出する訳ではないので問題はない。仮に導入部バッファタンク12が無い場合は、0.5MPaから減圧側(真空状態)の範囲が対象になり、この範囲で分離・濃縮を行なう装置に入るガス流量の適正化を図る必要があり、真空ポンプ3の動作制御はかなり複雑となる。
【0060】
これに対して、混合ガス分離濃縮装置6の前に導入部バッファタンク12を設けてバッファタンク12の圧力0.1MPaまで回収すると仮定すれば、混合ガス分離濃縮装置6に入るガスの圧力の変動範囲は、機器1側の初期圧力(0.5MPaとした場合)の0.5MPaから0.1MPaである。したがって、真空ポンプ3の動作制御は極めて容易となる。なお、導入部バッファタンク12の適切な大きさとしては、大きくても機器1の容積の1/5程度であり、あまり大きいものは意味が無くなる。
【0061】
ところで、大気中に排出するSFガス量を抑制するためには、ガス絶縁機器1の回収作業は最終的に大気圧を経て高真空条件下での回収となる。先に述べたように減圧状態になった場合には、水分や分解ガスを除去するため回収対象であるガス絶縁機器1内に封入されている吸着材から吸着されていたSFガスと共に分解ガスが離脱していく可能性がある。SFガスの回収を十分行うほど、減圧度を高くする必要があるが、それだけ離脱する分解ガス量も多くなり、フィルタ・分解ガス吸着装置2で除去しきれない分解ガスが増えてくる問題があった。
【0062】
そこで第2の実施の形態では、導入部バッファタンク12にゼオライト系混合吸着材13を入れることにより、分解ガスが混合ガス分離濃縮装置6側に入ることを極力抑えている。すなわち、前項のフィルタ・分解ガス吸着装置2で完全に除去されなかった分解ガスが回収している混合ガスに混入した場合でも、導入部バッファタンク12内でゼオライト系混合吸着材13に接触するため、このタンク12内の吸着材13により再度分解ガス等を除去することが可能になる。なお、この導入部バッファタンク12は先に述べたような運用により、減圧処理しなくても良いので再離脱の可能性が低い。混合ガス分離濃縮装置6に送り込む所定のガス量が不足した場合でも、そのまま導入部バッファタンク12内に封じ込めておき、次のガス回収操作時に回収処理すれば良いので、分解ガスの離脱は考える必要が無い。
【0063】
また、吸着材13として孔径5オングストロームと孔径10オングストロームの混合ゼオライト系吸着剤を使用しているため、バッファタンク12内でのSFガス自体の吸着量を抑制すると同時に、分解ガス中で分子の大きさが5オングストロームより大きいものを素早く吸着することが可能となる。しかも、孔径5オングストロームと孔径10オングストロームのゼオライト系吸着剤の配合比率をそれぞれ80〜100wt%、20〜0wt%と規程しているので、SFガスの吸着を確実に抑えることがてき、且つ分子径の大きい分解ガスが多少混じっていてもバッファタンク12内で再吸着することができる。
【0064】
さらに、第2の実施の形態では、混合ガス分離濃縮装置6の出口側に吸着材15を有する排出部バッファタンク14を設けたので、回収されるガス圧力や流量の変動に伴って、混合ガス分離濃縮装置6からの排出ガスが分離濃縮装置6で分離しきれなかった微量のSFガスを含んでいても、これを吸着することができる。ここで、SFガス5%のガス圧力0.2MPaの混合ガス中に孔径10オングストロームタイプのゼオライト系吸着剤を封入した時のSFガス濃度の変化のグラフを図5に示す。
【0065】
仮に、SFガスと窒素ガスの吸着性が同じであれば、混合ガスの比率は変化しない筈であるが、明らかにSFガスの濃度が低くなっており、窒素ガスよりSFガスの方がゼオライト系吸着材に吸着し易いことを示している。実際に、孔径10オングストロームタイプのゼオライト系吸着剤15が封入された排出部バッファタンク14を取り付けると、排出ガス中のSFガス濃度は、安定して低いレベル(0.01vol%以下)であった。なお、実験によれば、10オングストロームタイプのゼオライト系吸着剤15を充填した筒内に排出ガスを流すだけでも、SFガス吸着が吸着される効果があることが解っている。したがって、必ずしもバッファタンク14でトラップさせる必要は無く、10オングストロームタイプのゼオライト系吸着剤15を充填した筒内に排出ガスを流すだけでも同じ効果が得られる。
【0066】
さらに、第2の実施の形態によれば、前記10オングストロームタイプのゼオライト系吸着剤15も最終的には、SFガス吸着が飽和に近づけば、吸着性能が低下して、窒素ガスに含まれるSFガス濃度が高くなる。所定量回収した後には、何らかの方法でSFガスを回収すると共に吸着剤を再生する必要がある。この場合には、真空ポンプにより減圧処理してSFガスを含んだ窒素ガスの混合ガスとしてバイパス回路7で導入部バッファタンク12に還流する。そして、還流した混合ガスは再度分離回収工程されるので、SFガスの大気への放出はほとんど無視できる程度まで低減される。窒素ガスを逆流させて、リンスするようにSFガスを窒素ガスと一緒に流すように回収しても良い。また、温度を上昇させると、SFガスの離脱が容易になる。
【0067】
(3)他の実施の形態
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態として、副系列のガス回収ラインBに用いる混合ガス分離濃縮装置として透過膜を使用しても良い。透過膜も混合ガスを分離することができる。効率良く分離するためには透過膜の膜面積を大きくすると共に膜厚さは極力薄くする必要がある。ただし、薄いほど供給ガスに含まれる微粒子とSF6 分解ガス量により影響を受けやすく、耐用寿命が短くなるので、耐用寿命を短くしない程度の薄さが望ましい。
【0068】
また、他の実施の形態として、混合ガス分離濃縮装置後の排出部バッファタンクの排出口にSF6 ガス検知器を取付けた実施の形態も包含される。この実施の形態によれば、SF6 ガス検知器からの警報により吸着剤を減圧再生する時期を正確に知ることができる。SF6 ガス検知器としては、既存のハロゲン系のリークディテクタが使用できる。
【0069】
さらに、他の実施の形態として、回収対象のガス絶縁機器1内に乾燥用及び分解ガス吸着用として封入してあるゼオライト系の吸着材に関するものある。孔径5オングストロームと孔径10オングストロームのゼオライト系混合吸着剤を封入することを特徴とし、望ましく孔径5オングストロームと孔径10オングストロームのゼオライト系吸着剤の比率が80〜100wt%、20〜0wt%となるように配合したことを特徴としている。
【0070】
このような施の形態では、分解ガスの吸着性能に影響を与えず、SF6 ガス吸着量を最小限にするため、口径の異なる吸着剤を使い分けて数値限定している。これをまとめたものが下記の表1である。
【表1】
Figure 0004405039
すなわち、配合比率が20〜0wt%の孔径10オングストロームのゼオライト系吸着剤は、回収対象ガスであるSF6 ガスを吸着する。吸着しているSF6 ガスは、減圧回収時、吸着剤から徐々に離脱するが、ここで規定する配合の吸着材を使うことにより、減圧回収した時にSF6 ガスが徐々に何時までも離脱するような現象を回避でき、回収時間の短縮化も図ることができる。一方、孔径5オングストロームのゼオライト系吸着剤だけだと、一部の分解ガスの吸着が困難で、吸着速度が遅くなる可能性がある。通常の遮断ではSO2 2 の発生量は、SOF2 に比べて小さく量的に1/10以下であるため、孔径5オングストロームのゼオライト系吸着剤の配合比率を80〜1000wt%としている。
【0071】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のガス回収装置及びガス回収方法によれば、ガス回収初期は主系列のガス回収ラインで行い、圧力が低下した時点に希釈用ガスを導入してSFガスを薄めることにより見掛けの圧力を上昇させて副系列のガス回収ラインで混合ガスを回収し混合ガス分離濃縮装置で回収を行うことによって、SFガス回収率を高めると共に必要以上に減圧する必要が無いので吸着剤からの各種分解ガスの放出を抑えることができ回収作業時間の短縮化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の全体概要を示す構成図。
【図2】第1の実施の形態の圧力スイング吸着装置の基本原理図。
【図3】第1の実施の形態の要部構成図。
【図4】本発明の第2の実施の形態の要部構成図。
【図5】SFガス5%のガス圧力0.2MPaの混合ガス中に孔径10オングストロームタイプのゼオライト系吸着剤を封入した時のSFガス濃度の変化を示すグラフ。
【図6】従来のガス回収装置の構成図。
【図7】ガス回収時のSFガス圧力と時間経過による真空ポンプの排気効率との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…ガス絶縁機器
2…フィルタ・分解ガス吸着装置
3…真空ポンプ
4a,4b…液化装置
5a,5b…液化SFガスタンク
6…混合ガス分離濃縮装置
7…バイパス回路
8…加圧装置
9…制御盤
10…配管
11…バルブ
12…導入部バッファタンク
13…ゼオライト系混合吸着剤
14…排出部バッファタンク
15…ゼオライト系吸着材
16…気化装置
A…主系列のガス回収ライン
B…副系列のガス回収ライン
C…窒素ガス充填ライン

Claims (3)

  1. ガス絶縁機器内に封入されたSF6 ガスを回収するガス回収装置において、
    前記ガス絶縁機器には、主系列のガス回収ラインと、副系列のガス回収ラインと、前記ガス絶縁機器内に前記SF6 ガスを薄める希釈用ガスを充填する希釈用ガス充填ラインとが繋がれており、
    前記主系列のガス回収ラインには真空ポンプ、前記SF6 ガスの加圧液化装置及び液化SF6 タンクが取り付けられ、
    前記副系列のガス回収ラインには前記SF6 ガスと前記希釈用ガスとの混合ガスを分離濃縮する混合ガス分離濃縮装置が取り付けられると共に、
    この混合ガス分離濃縮装置を回避するバイパス回路が接続され、前記2つのガス回収ラインを切り替えるライン切り替え手段が設けられ
    さらに、前記混合ガス分離濃縮装置のガス出口側に排出部バッファタンクが設けられ、この排出部バッファタンク内に孔径10オングストロームのゼオライト系吸着剤が封入されたことを特徴とするガス回収装置。
  2. 所定時間ごとに前記排出部バッファタンク内の吸着剤が吸着したSF6 ガスを減圧回収するように構成されたことを特徴とする請求項記載のガス回収装置。
  3. 前記排出部バッファタンクの排出口にSF6 ガス検知器が取付けられたことを特徴とする請求項1または2記載のガス回収装置。
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