JP4404800B2 - キャンデーチップの製造方法、該方法により製造されたキャンデーチップを用いた焼き菓子、パン、冷菓及びゼリー状菓子 - Google Patents
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Description
しかし、キャンデーチップは耐熱性が乏しく、80℃程度に加熱されると融解しはじめるので、製造工程に高温を伴う食品には配合することができない。例えば、焼き菓子は170〜180℃のオーブンで焼成され、焼き菓子の内部も130〜140℃に達するので、焼き菓子の生地にキャンデーチップを配合して焼成すると、表面のキャンデーチップは流れ出してあばた状の穴となり、内部のキャンデーチップは融解して生地にしみ込んでしまうので、キャンデーチップが有する食感を楽しむことができないばかりでなく、焼き菓子の外観と風味もいちじるしく損なわれてしまう。
キャンデーチップは、コーヒーなどの飲料や、アイスクリームなどの冷菓とともに、その食感を楽しむ試みもなされている。例えば、カップに注いだコーヒーの上にホイップクリームをのせ、その上にキャンデーチップを散らした飲み物や、キャンデーチップが入っているアイスクリームがあるが、キャンデーチップは耐水性が乏しいために、水分と接すると急速に溶解し、飲食物の準備から飲食を終了するまでの時間も、その形状を完全に保つことは困難であった。
しかし、従来はキャンデーチップは元来このようなものであると考えられ、耐熱性と耐水性を向上する試みはなされていなかった。
すなわち、本発明は、
(1)砂糖と水あめを重量比50:50〜75:25で混合し、加熱により水分率4重量%以下まで濃縮し、砂糖と水あめの合計100重量部に対して粉糖1〜25重量部を添加し、冷却したのち得られた糖化物を粉砕することを特徴とするキャンデーチップの製造方法、
(2)(1)記載の方法により製造されたキャンデーチップを生地に配合し、焼成してなることを特徴とする焼き菓子、
(3)(1)記載の方法により製造されたキャンデーチップを生地に配合し、焼成してなることを特徴とするパン、
(4)(1)記載の方法により製造されたキャンデーチップをトッピング又は配合してなることを特徴とする冷菓、及び、
(5)(1)記載の方法により製造されたキャンデーチップをトッピングしてなることを特徴とするゼリー状菓子、
を提供するものである。
本発明方法に用いる砂糖に特に制限はなく、テンサイ糖、甘ショ糖のいずれをも用いることができる。砂糖の種類は、キャンデーチップの用途に応じて選択することができ、例えば、純白のキャンデーチップが必要な場合は白ざらめ糖を用い、カラメルの褐色が望ましい場合は黄ざらめ糖を用い、黒砂糖の風味と色が必要な場合は黒砂糖を用いることができる。
本発明方法に用いる水あめに特に制限はなく、酵素糖化による麦芽あめ、酸糖化による澱粉あめのいずれをも用いることができる。これらの中で、もち米を原料とする麦芽あめは、風味が良好なので好適に用いることができる。
本発明方法に用いる粉糖としては、例えば、ショ糖100重量%の粉糖、コーンスターチ、コーンシロップパウダーが少量添加された粉糖などを挙げることができる。これらの中で、ショ糖100重量%の粉糖を好適に用いることができる。
本発明方法においては、砂糖と水あめの均一に溶解した混合物を、加熱により水分率4重量%以下、より好ましくは水分率3重量%以下まで濃縮する。水分率が4重量%を超えると、糖化が困難になったり、あるいは、得られるキャンデーチップの耐熱性と耐水性が低下したりするおそれがある。砂糖と水あめの均一に溶解した混合物を、常温から次第に温度を上昇して加熱する。最終の加熱温度を145〜155℃とすることにより、濃縮物の水分率を4重量%以下とすることができる。砂糖と水あめの混合物の濃縮は、常圧で行うことができ、あるいは、減圧下に行うこともできる。
糖化とは、砂糖と水あめの混合物の濃縮物の中で砂糖の結晶が析出する現象である。糖化が起こると、濃縮物は白濁する。従来、ハードキャンデーは、糖化しないことが必要とされ、糖化を抑制するために、例えば、オリゴグルコシルスクロースなどの三糖類の添加などが行われてきた。本発明方法においては、砂糖と水あめの混合物の濃縮物に粉糖を添加することにより、ハードキャンデーを積極的に糖化させる。砂糖と水あめの混合物の濃縮物の糖化は、高温の濃縮物に粉糖を添加したときに直ちに起こる場合もあり、あるいは、粉糖を添加した濃縮物を冷却する過程で起こる場合もある。さらに、砂糖の配合比率が高い場合は、煮詰め撹拌中にも起こる。
本発明方法においては、砂糖と水あめの混合物の濃縮物に粉糖を添加し、冷却したのち得られた白濁した糖化物を粉砕し、キャンデーチップとする。粉砕物を篩い分けて、必要とする大きさの粒を分取することができる。小さすぎる粒は、次回の砂糖と水あめの混合物の原料として利用し、大きすぎる粒は、再度粉砕することができる。
本発明方法においては、砂糖と水あめの混合物に、さらに他の成分を添加することができる。他の成分としては、例えば、油脂、バター、練乳、色素、香料などを挙げることができる。これらの成分を添加することにより、キャンデーチップの外観と食感と風味に変化を与えることができる。砂糖と水あめの混合物に他の成分を添加する場合は、必要に応じて、ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤を併用し、他の成分を砂糖と水あめの混合物中に均一に微粒子状に分散させることができる。
実施例1
砂糖[日本甜菜製糖(株)、ビートグラニューHA]750gと水あめ[林原(株)、マルトエース70]750gを混合して均一に溶解し、撹拌しつつ、室温から150℃まで30分かけて昇温して加熱、濃縮した。濃縮物を冷却し、カールフィッシャー法により測定した水分率は、2.3重量%であった。
この濃縮物100gを取り出し、150℃を保ったまま、粉糖[有友商店(株)、ARD]10gを添加して混合したが、糖化しなかった。
さらに濃縮物100gを取り出し、粉糖20gを添加して混合したところ、糖化した。
実施例2
砂糖900gと水あめ600gを混合した以外は、実施例1と同様にして濃縮物を得た。濃縮物の水分率は、2.2重量%であった。
この濃縮物100gを取り出し、粉糖2gを添加して混合したが、糖化しなかった。粉糖の添加量を3g、4gとして、同様に濃縮物と粉糖を混合したが、いずれも糖化しなかった。
濃縮物100gに対する粉糖の添加量を5g、6gとすると、濃縮物はやや糖化した。さらに、濃縮物100gに対する粉糖の添加量を7g、10gとすると、濃縮物はいずれも糖化した。
実施例3
砂糖1,050gと水あめ450gを混合した以外は、実施例1と同様にして濃縮物を得た。濃縮物の水分率は、2.1重量%であった。
この濃縮物100gを取り出し、粉糖1gを添加して混合したところ、濃縮物はやや糖化した。濃縮物100gに対する粉糖の添加量を2gとすると、濃縮物は完全に糖化した。また、濃縮物100gに対する粉糖の添加量を3gとしても、濃縮物は完全に糖化した。
実施例1〜3の結果を、第1表に示す。
実施例4
砂糖[日本甜菜製糖(株)、ビートグラニューHA]140gと水あめ[林原(株)、マルトエース70]60gを混合して均一に溶解し、撹拌しつつ、室温から150℃まで15分かけて昇温して加熱、濃縮した。この濃縮物に、粉糖[有友商店(株)、ARD]4gを添加して混合し、完全に糖化させ、室温まで冷却し、粉砕してキャンデーチップを得た。
得られたキャンデーチップを6個のガラスシャーレに各10gずつ入れ、70℃、90℃、120℃、140℃、150℃、160℃の各温度に保った乾燥機の中に15分間静置して、キャンデーチップの状態の変化を観察した。140℃以下ではチップは融解せず形が残り、150℃でチップの周囲が融解し、160℃でチップ全体が融解して流れた。
比較例1
砂糖120gと水あめ80gを混合して均一に溶解し、撹拌しつつ、室温から150℃まで15分かけて昇温して加熱、濃縮した。この濃縮物に、粉糖6gを添加して混合し、糖化しないままの状態で室温まで冷却し、粉砕してキャンデーチップを得た。
実施例4と同様にして、得られたキャンデーチップを6個のガラスシャーレに各10gずつ入れ、70℃、90℃、120℃、140℃、150℃、160℃の各温度に保った乾燥機の中に15分間静置して、キャンデーチップの状態の変化を観察した。70℃でチップの周囲が融解し、90℃以上ではチップ全体が融解してチップの形が残らなかった。
実施例4及び比較例1の結果を、第2表に示す。
実施例5
砂糖[日本甜菜製糖(株)、ビートグラニューHA]282g、ショートニング[雪印乳業(株)、マーガリン]222g、ショ糖脂肪酸エステル[三菱化学フーズ(株)、シュガーエステルSP]13g、異性化糖[参松工業(株)、サンフラクト550]24g、食塩6g及び全卵3個をボールに取り、混合した。
炭酸アンモニウム[和光純薬工業(株)]7.2gを、温水30mLに溶解した。また、小麦粉[日清製粉(株)、フラワー]600gに重曹3.6gを加えて混合し、篩いにかけた。
ショートニングが柔らかくなったとき、上記の混合物をケンミックスミキサーに入れ、クリーム状になるまで撹拌し、さらに炭酸アンモニウムを溶かした温水を加えて高速で撹拌した。次いで、ミキサーのホイッパを軍配型に替え、上記の篩いにかけた小麦粉を少しずつ加えながら撹拌し、生地を調製した。得られた生地をボールに入れてラップで包み、冷蔵庫で30分間寝かせた。
冷蔵庫から取り出した生地150gに、実施例4で得られたキャンデーチップ20gを添加、混合し、天板に敷いたクッキングシートの上に、絞り袋を用いて絞り出しながら成型した。次いで、あらかじめ上火180℃、下火170℃に設定して180℃に加熱していたオーブンに入れ、180℃で8分間焙焼した。クッキー表面のキャンデーチップは僅かに融解しているが、生地中への陥没はなく、クッキーの外観は良好であり、クッキー内部のキャンデーチップは原形を保ち、試食すると爽やかなシャリシャリ感が感じられた。
比較例2
実施例4で得られたキャンデーチップ20gの代わりに、比較例1で得られたキャンデーチップ20gを添加、混合した以外は、実施例5と同様にしてクッキーを焙焼した。
クッキー表面のキャンデーチップは融解、陥没して穴が残り、クッキー内部のキャンデーチップも融解して僅かに形が残るだけであった。試食すると、食感、風味ともに劣っていた。
実施例5及び比較例2の結果を、第3表に示す。
実施例6
ゼラチン[ニッピゼラチン工業(株)、ゴールド]12gに水100mLを加えて膨潤させ、さらに温水浴で加温してゼラチンを溶解させた。砂糖[日本甜菜製糖(株)、ビートグラニューHA]50gに水400mLを加えて沸騰させ、インスタントコーヒー[味の素ゼネラルフーヅ(株)、マキシム]15gを加え、この液に前記のゼラチン溶解液を加え、二つの容器に分けて入れ、冷却してゼリーとした。
一夜室温で放置したのち、一つのゼリーの上に実施例4で得られたキャンデーチップ5gを散らせ、チップの経時変化を観察した。30分後チップの周囲が僅かに溶解し、60分後一部の形がなくなり、90分後には殆ど溶解した。
比較例3
実施例6で調製した他方のゼリーの上に、実施例6と並行して、比較例1で得られたキャンデーチップ5gを散らせ、チップの経時変化を観察した。30分後チップの周囲が溶解し、60分後に殆ど溶解し、90分後には完全に溶解した。
実施例6及び比較例3の結果を、第4表に示す。
実施例7
砂糖[日本甜菜製糖(株)、ビートグラニューHA]900g、水あめ[林原(株)、マルトエース70]429g、油脂[不二製油(株)、ニューメラリン]24g、バター[雪印乳業(株)、有塩バター]36g、全脂加糖煉乳[北海道乳業(株)、全脂練乳]24g及びショ糖脂肪酸エステル[三菱化学フーズ(株)、シュガーエステルSP]6gを混合して均一に溶解したのち、さらに色素[池田糖化(株)、ビタベース#2]4.8gと香料[長岡香料(株)、バタースカッチフレーバーWR−8916]3.6gを添加して溶解した。
この混合物を撹拌しつつ、室温から150℃まで30分かけて昇温して加熱、濃縮した。次いで、濃縮物に粉糖[有友商店(株)、ARD]36gを加えて撹拌することにより混合し、室温まで冷却した。冷却の途中で糖化が起こり、濃縮物は濁った。冷却して得られた糖化物を粉砕することにより、濃厚な香ばしさを有する褐色のキャンデーチップが得られた。
Claims (5)
- 砂糖と水あめを重量比50:50〜75:25で混合し、加熱により水分率4重量%以下まで濃縮し、砂糖と水あめの合計100重量部に対して粉糖1〜25重量部を添加し、冷却したのち得られた糖化物を粉砕することを特徴とするキャンデーチップの製造方法。
- 請求項1記載の方法により製造されたキャンデーチップを生地に配合し、焼成してなることを特徴とする焼き菓子。
- 請求項1記載の方法により製造されたキャンデーチップを生地に配合し、焼成してなることを特徴とするパン。
- 請求項1記載の方法により製造されたキャンデーチップをトッピング又は配合してなることを特徴とする冷菓。
- 請求項1記載の方法により製造されたキャンデーチップをトッピングしてなることを特徴とするゼリー状菓子。
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