JP4404188B2 - 層間剥離の改良された多層容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は接着剤を介せずに樹脂層が積層された多層容器に関する。詳しくは酸素吸収性ポリアミド樹脂を中間層とした多層容器の輸送時、または落下時の衝撃を受けた際に起こる樹脂層間の剥離を防止した多層容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレートを主体とするプラスチック容器(以下、PETボトルということがある)がお茶、果汁飲料、炭酸飲料等に広く使用されている。また、近年になって缶やガラス瓶が利用されていた分野においてもPETボトルへの代替が進み、それに伴って容量の小さい小型プラスチックボトルの占める割合が年々大きくなっている。しかしながら、PETボトルは缶やガラス瓶と異なりボトル外部の酸素がボトル内に侵入するため、内容物の賞味期限をより短くする傾向があるため、PETボトルにガスバリア性を付与する方法が検討されている。また最近になってPETボトルに収納される飲料も種々にわたるようになり、酸素や光の影響を受けやすいビールやお茶等の飲料を収納するPETボトルに対しては特にガスバリア性の更なる向上が要求されている。
【0003】
PETボトルにガスバリア性を付与する方法としてPETからなるボトルの中間層としてガスバリア性樹脂を積層した多層ボトル、PETにガスバリア性樹脂を混合して得られるブレンドボトル、PET単層ボトルの表面にカーボンコート、蒸着、バリア樹脂の塗布を施したバリアコーティングボトル等が開発されている。
【0004】
これらの中でも、製造装置のコストやガスバリア性の向上効果、リサイクル性の面から、ガスバリア性樹脂を中間層として積層した多層ボトル、PETとガスバリア性樹脂を混合して得られるブレンドボトルが広く利用されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。特にガスバリア性樹脂の使用量が少なくても優れたガスバリア性を発揮でき、かつボトルの透明性に優れた多層ボトルが好適な容器として利用されている。多層ボトルの一例としては、最内外層を形成するPET等のポリエステル樹脂とポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)等のガスバリア性樹脂とを射出して金型キャビティーを満たすことにより得られる3層または5層構造を有するパリソンを2軸延伸ブロー成形した多層ボトルが実用化されている。
【0005】
更に、ポリアミドMXD6に少量の遷移金属を添加、混合してポリアミドMXD6に酸素吸収機能を付与した酸素吸収性樹脂(例えば、特許文献6参照。)を多層ボトルのガスバリア層として使用することにより、容器外からの酸素を遮断すると共に容器内部に残存する酸素を吸収することにより、優れた酸素バリア性を有することから、酸素許容濃度の低い内容物、例えばビールやお茶等の容器に用いられている。
【0006】
しかしながら、上記多層ボトルは相溶性や接着性を持たないPET等のポリエステル樹脂とポリアミドMXD6を接着剤を介さずに積層した構造を有するため、ボトルに衝撃が加えられたり、ボトルを誤って落としてしまった時にポリエステル層とポリアミドMXD6層の間で層間剥離が起こることがある。さらに酸素吸収機能を付与したポリアミドMXD6をバリア層とした際は、酸素吸収が進むに従ってポリマー鎖の酸化分解が進むため、ガスバリア層の破壊が生じ、層間剥離しやすくなるという欠点がある。層間剥離が起こると外観上、層間剥離部分は白く変色してしまうため、商品価値を損ねてしまうおそれがあった。また、このような層間剥離はボトル表面に凹凸の多いデザインを有するものにおいて顕著に起こりやすい傾向があり、多層ボトルではその形状が限定されることがあった。
【0007】
このような問題点を改良する方法として、特許文献7に開示されているように、最内外層を構成する樹脂を最後に金型キャビティー内に射出する際に、ガスバリア層側に一定量逆流させることが可能な逆流調節装置を使用し層間に粗混合樹脂が入り込むことによって耐層間剥離性を改善することが開示記載されているが、特殊な装置を使用するという問題点がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭61−108542号公報
【特許文献2】
特開昭63−294341号公報
【特許文献3】
特開昭63−203540号公報
【特許文献4】
特開昭58−160344号公報
【特許文献5】
特開平1−154733号公報
【特許文献6】
特開2001-226585号公報
【特許文献7】
特開2000-254963号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記課題を解決し、層間に接着剤を介せずに異なる層を積層した多層容器において、落下や衝撃による剥離を起こしにくくするとともに、凹凸の少ない形状に限定されず、デザインの自由度が大きい多層容器を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、多層容器の耐層間剥離性について鋭意研究を重ねた結果、最内外層を構成する樹脂と中間層を構成する樹脂の親和性を高めることで層間の密着性を改善し、落下時等の発生する多層容器の層間剥離を抑えることを見出し本発明に到った。
即ち、中間層を構成する樹脂の溶解度指数と最内外層を構成する樹脂の溶解度指数を近づけることにより、層間剥離を抑制できる多層容器が得られることを見いだし本発明に到った。
【0011】
即ち本発明は、3層以上からなる多層容器であって、最外層および最内層が、70モル%以上のテレフタル酸を含むジカルボン酸成分と70モル%以上のエチレングリコールを含むジオール成分を重合して得たポリエステル樹脂を主成分とする樹脂Aからなる層であり、かつ中間層の少なくとも1層が、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分とを重合して得たポリアミド樹脂(樹脂B)、small法により計算した溶解度指数が式(1)を満たすナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6IT及びナイロン6I6Tから選ばれるポリアミド樹脂(樹脂C)並びに元素周期律表第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子(金属原子E)を含む化合物あるいは錯体を、重量比として樹脂B:樹脂C:金属原子E=20〜99:1〜80:0.01〜0.1(樹脂Bと樹脂Cの合計は100である)となるように混合してなる酸素吸収樹脂(樹脂F)からなる層であることを特徴とする多層容器に関する。
式(1) : Sa<Sc<Sb
Sa:樹脂Aの溶解度指数
Sb:樹脂Bの溶解度指数
Sc:樹脂Cの溶解度指数
【0012】
本発明の多層容器は、最外層および最内層がポリエステル樹脂を主成分とする樹脂Aからなる層であり、中間層の少なくとも1層が、酸素吸収機能を有するポリアミド樹脂を主成分とする酸素吸収樹脂(樹脂F)からなる層である3層以上の多層容器である。ここで、樹脂Fからなる層は2層以上でもよい。また、樹脂Aからなる層を中間層として用いてもよい。層構成の一例としては、樹脂A/樹脂F/樹脂Aの3層構成や、樹脂A/樹脂F/樹脂A/樹脂F/樹脂Aの5層構成が挙げられるがこれらに限定されない。
【0013】
樹脂Aの主成分であるポリエステル樹脂は、芳香族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分および脂肪族ジオールを主成分とするジオール成分を重縮合して得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,4’−ビフェニルジカルボン酸等およびこれらのエステル形成性誘導体が例示でき、これらの中でもテレフタル酸やイソフタル酸が好ましく用いられる。芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を使用する場合、芳香族ジカルボン酸成分中に占めるテレフタル酸の割合は70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。又、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸にイソフタル酸を併用する場合、その割合は芳香族ジカルボン酸成分の1〜10モル%、好ましくは1〜8モル%、更に好ましくは1〜6モル%である。イソフタル酸を芳香族ジカルボン酸として上記に示した量を添加して得た共重合樹脂は結晶化速度が遅くなり、成形性を向上させることが可能となる。更に他のジカルボン酸として、本発明の目的を損なわない範囲でアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、安息香酸、プロピオン酸、酪酸等のモノカルボン酸や、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸や、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等のカルボン酸無水物を用いることができる。
【0014】
ポリエステル樹脂の原料であるジオール成分としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等およびこれらのエステル形成性誘導体が例示でき、これらの中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。ジオール成分中に占めるエチレングリコールの割合は70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上である。更に他のジオールとして、本発明の目的を損なわない範囲でブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等のモノアルコール類や、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類、環状アセタール骨格を有するジオール等を用いることもできる。
【0015】
ポリエステル樹脂の製造は、公知の方法である直接エステル化法やエステル交換法を適用することができる。ポリエステル樹脂製造時の重縮合触媒としては、公知の三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン化合物、酸化ゲルマニウム等のゲルマニウム化合物等が例示できるが、これらに限らない。
【0016】
本発明において好ましいポリエステル樹脂を例示すると、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂、エチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン−テレフタレート共重合樹脂、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−テレフタレート共重合樹脂、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート−イソフタレート共重合樹脂、エチレン−テレフタレート−4,4’−ビフェニルジカルボキシレート共重合樹脂が挙げられる。特に好ましいポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合樹脂である。
【0017】
本発明で用いるポリエステル樹脂の極限粘度(フェノール/1,1,2,2,−テトラクロロエタン=60/40質量比混合溶媒中、25℃で測定した値)には、特に制限はないが、通常0.5〜2.0dl/g、好ましくは0.6〜1.8dl/gであることが望ましい。極限粘度が0.5dl/g以上であるとポリエステル樹脂の分子量が充分に高いために、これを使用して得られる多層容器が構造物として必要な機械的性質を発現することができる。
【0018】
また、本発明の特徴を損なわない範囲でポリエステル樹脂には、他のポリエステル樹脂を配合して使用することができる。他のポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等の耐熱性に優れたポリエステル樹脂等が挙げられるが、これに限定されることなく種々のポリエステル樹脂を配合できる。また容器の外観を整えるために顔料を添加しても良い。
【0019】
本発明の多層容器の中間層を構成する樹脂Fは酸素バリア層であり、金属原子Eと、後述の樹脂Bおよび樹脂Cとの混合物からなる。金属原子Eは、元素周期律表の第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子であり、樹脂Bの酸化反応を促進して酸素吸収機能を発現させる。
【0020】
本発明において金属原子Eを樹脂F中に添加、混合するには金属原子を含有する化合物あるいは錯体(以下、金属触媒化合物と総称する)を用いることが好ましい。金属触媒化合物は前記金属原子の低価数の無機酸塩、有機酸塩又は錯塩の形で使用される。無機酸塩としては、塩化物や臭化物等のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩等が挙げられる。一方、有機酸塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩等が挙げられる。また、β−ジケトンまたはβ−ケト酸エステル等との遷移金属錯体も利用することができる。特に本発明では酸素吸収機能が良好であることから、前記金属原子を含むカルボン酸塩、ハロゲン化物、アセチルアセトネート錯体を使用することが好ましく、さらに好ましくはステアリン酸塩、酢酸塩又はアセチルアセトネート錯体である。本発明において、ポリアミド樹脂には上記金属触媒化合物のうち一種以上を添加することができるが、コバルト金属原子を含むものが特に酸素吸収機能に優れており、好ましく用いられる。
【0021】
本発明で樹脂Fに添加できる前記金属原子Eの濃度は、樹脂Bと樹脂Cの合計量に対して0.01〜0.10重量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは0.02〜0.08重量%である。金属原子Eの添加量が0.01重量%より少ない場合、酸素吸収機能が十分に発現せず、多層容器の酸素バリア性の向上効果も低いものとなる。また0.10重量%より多い場合、多層容器の酸素バリア性向上効果に変化はないため、不経済である。
【0022】
樹脂Fの構成成分である樹脂Bは、メタキシリレンジアミン(MXDA)を主成分とするジアミン成分と、アジピン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重合して得られるポリアミド樹脂であり、樹脂Bは、本発明の多層容器にガスバリア性を付与する機能を持つものである。
樹脂Bを構成するジアミン成分としては、メタキシリレンジアミンが70モル%以上含まれることが必要であり、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。ジアミン成分中のメタキシリレンジアミンが70モル%以上であると、それから得られるポリアミド樹脂は優れたガスバリア性を発現することができる。メタキシリレンジアミン以外に使用できるジアミンとしては、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
また樹脂Bを構成するジカルボン酸成分は、アジピン酸が70モル%以上含まれることが必要である。ジカルボン酸成分中のアジピン酸が70モル%以上あると、ガスバリア性の低下や結晶性の低下を防止することができる。アジピン酸以外に使用できるジカルボン酸成分として、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
また、本ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えても良い。
【0024】
樹脂Bは、溶融重縮合法により製造される。溶融重縮合法としては、例えばジアミン成分とジカルボン酸成分からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧下で昇温し、加えた水および縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法がある。また、ジアミン成分を溶融状態のジカルボン酸成分に直接加えて、重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態に保つために、ジアミン成分をジカルボン酸成分に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミドおよびポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。なお、樹脂Bについては必要に応じて溶融重縮合により得られたものをさらに固相重合することにより分子量を高めることもできる。
【0025】
本発明に用いる樹脂Bの相対粘度(ポリアミド樹脂1gを96%硫酸100mlに溶解し、25℃で測定した値)は1.5〜4.2、好ましくは1.7〜4.0、さらに好ましくは2.0〜3.8である。樹脂Bの相対粘度が1.5以下の場合には、多層容器を成形する際に、溶融したポリアミド樹脂の流動性の不安定さから生じる溶融むらが顕著となり容器の商品価値が低下する。また樹脂Bの相対粘度が4.2以上であると、ポリアミド樹脂の溶融粘度が高すぎて容器の成形が不安定になる。
【0026】
樹脂Bには、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいは樹脂Bの着色を防止するためにリン化合物が含まれていても良い。リン化合物としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のリン酸塩、次亜リン酸塩、亜リン酸塩が挙げられ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。また、本発明のポリアミド樹脂Bには上記のリン化合物の他に本発明の効果を損なわない範囲で滑剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤等を加えることもできるが、以上に示したものに限定されることなく、種々の材料を混合しても良い。
【0027】
本発明で樹脂Fを構成する樹脂Cとしては、式(1)を満たすポリアミド樹脂が好ましく、さらに好ましくは、溶解度指数が11〜13のポリアミド樹脂である。尚、溶解度指数はsmall法により計算できる(日本接着協会誌、Vol.22、No.10、p.51(1986)参照。)。
式(1) : Sa<Sc<Sb
Sa:樹脂Aの溶解度指数
Sb:樹脂Bの溶解度指数
Sc:樹脂Cの溶解度指数
【0028】
式(1)を満足しない条件においては、樹脂Aと樹脂F(樹脂Bと樹脂Cを含む)の親和性が低くなり、層間の密着性が低下し耐剥離性改善に好ましくない。樹脂Cとして使用できるポリアミド樹脂としては、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6IT、ナイロン6I6Tなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明における、樹脂Bと樹脂Cの混合比(B/C)は重量比で99/1〜20/80が良く、好ましくは98/2〜30/70、さらに好ましくは95/5〜60/40である。混合比が99/1より大きいと、顕著な耐剥離性改善効果が得られない。また、混合比が20/80より小さいと耐剥離性改善に効果は見られるが樹脂Bの良好な酸素バリア性が多層容器に寄与されず実用的ではない。
【0030】
本発明において、樹脂Fを得るには、混合方法あるいは混合順序に特に制限はなく、例えば、回転中空容器内に金属原子Eを含む金属触媒化合物、樹脂Bおよび樹脂Cを投入し、乾式で混合して射出成形機ホッパーに投入するドライブレンドと呼ばれる方法、もしくは上述の金属触媒化合物とポリアミド樹脂を一度溶融押出しし、再ペレット化して用いるメルトブレンドと呼ばれている方法のいずれによっても行なうことが可能である。なお、用途、使用条件、機械的性能等に応じて適切な配合処方が選択される。
【0031】
本発明で使用する樹脂Fは、主としてポリアミド樹脂からなるため、パリソンや容器の形状によっては低延伸倍率の部分が生じることがある。この容器に内容物を保存すると、中間層のポリアミド層が吸水によって結晶化して白化し、多層容器の外観を損なうことがある。このような現象を防ぐために、本発明では樹脂Fとして、白化防止剤として、特定の脂肪酸金属塩、ジアミド化合物あるいはジエステル化合物を添加したものを容器の中間層として使用することが好ましく行われる。このようにすることで内容物を充填した多層容器を長期間保存してもポリアミド樹脂の白化が防止される。
【0032】
本発明に用いる脂肪酸金属塩は、脂肪酸金属塩の炭素数18〜50、好ましくは、炭素数18〜34の脂肪酸金属塩である。炭素数が18以上であればポリアミド樹脂が吸水した際の白化が防止できる。また、炭素数が50以下で樹脂組成物中への均一分散が良好となる。脂肪酸は側鎖や二重結合があってもよいが、ステアリン酸(C18)、エイコ酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)などの直鎖飽和脂肪酸が好ましい。脂肪酸と塩を形成する金属に特に制限はないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウム、アルミニウム、亜鉛等が例示され、ナトリウム、カリウム、およびリチウム、カルシウム、アルミニウム、および亜鉛が特に好ましい。
【0033】
本発明に用いられる脂肪酸金属塩は、上記のうち1種類でもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明では、脂肪酸金属塩の形状に特に制限はないが、粒径が小さい方が樹脂組成物中に均一に分散させることが容易に行えるため、その粒径は0.2mm以下が好ましい。
【0034】
本発明において、脂肪酸金属塩の添加量は、ポリアミド樹脂(樹脂Bと樹脂Cの合計)に対して0.005〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、特に好ましくは0.12〜0.5重量%である。脂肪酸金属塩の添加量が0.005重量%未満であると実用的な白化防止効果が得られない。また、1.0重量%より多いと脂肪酸金属塩の影響でポリアミド樹脂が白くにごるため好ましくない。
【0035】
本発明で用いられるジアミド化合物は、炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物である。脂肪酸の炭素数が8以上、ジアミンの炭素数が2以上で白化防止効果が期待できる。また、脂肪酸の炭素数が30以下、ジアミンの炭素数が10以下で組成物中への均一分散が良好となる。
【0036】
ジアミド化合物に用いられる脂肪酸は、側鎖や二重結合があってもよいが、直鎖飽和脂肪酸が好ましい。例として、ステアリン酸(C18)、エイコ酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)が例示でき、中でもモンタン酸が好ましい。ジアミド化合物に用いられるジアミンとして、エチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサンジアミン、キシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が例示でき、中でもエチレンジアミンが好ましい。これらを組み合わせて得られるジアミド化合物が本発明に用いられる。ジアミド化合物は1種類でも良いし、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
本発明で用いられるジエステル化合物は、炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジオールから得られるジエステル化合物である。脂肪酸の炭素数が8以上、ジオールの炭素数が2以上で白化防止効果が期待できる。また、脂肪酸の炭素数が30以下、ジオールの炭素数が10以下で組成物中への均一分散が良好となる。
【0038】
ジエステル化合物に使用される脂肪酸として、ステアリン酸(C18)、エイコ酸(C20)、ベヘン酸(C22)、モンタン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等が例示でき、中でもモンタン酸が好ましい。ジエステル化合物に使用されるジオールとして、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、キシリレングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が例示でき、中でもエチレングリコールあるいは1,3−ブタンジオールが好ましい。これらを組み合わせて得られるジエステル化合物が本発明に用いられる。ジエステル化合物は1種類でも良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
本発明において用いられるジアミド化合物とジエステル化合物は単独で用いても良いし、併用して用いても良い。
本発明において、ジアミド化合物および/またはジエステル化合物の添加量は、ポリアミド樹脂(樹脂Bと樹脂Cの合計)に対して0.005〜1.0重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、特に好ましくは0.12〜0.5重量%である。ジアミド化合物および/またはジエステル化合物の添加量が0.005重量%未満であると実用的な白化防止効果が得られない。また、1.0重量%より多いとジアミド化合物および/またはジエステル化合物の影響でポリアミド樹脂が白くにごるため好ましくない。
【0040】
ポリアミド樹脂に上記白化防止剤を添加する方法は公知の混合法を適用できる。たとえば、回転中空容器内にポリアミド樹脂ペレットと白化防止剤を投入し混合して使用してもよい。また、高濃度の白化防止剤を含有する組成物を製造した後、白化防止剤を含有しないポリアミド樹脂ペレットで所定の濃度で希釈し、これらを溶融混練する方法、溶融混連後、引き続き、射出成形などにより成形体を得る方法などが採用される。
【0041】
さらに本発明では、樹脂Fとして、有機膨潤化剤で処理した層状珪酸塩を添加したものを用いて容器の中間層として積層することもできる。このようにすることで容器の酸素バリア性だけではなく、炭酸ガス等の他のガスに対するバリア性も向上させることができる。
【0042】
層状珪酸塩は、0.25〜0.6の電荷密度を有する2−八面体型や3−八面体型の層状珪酸塩であり、2−八面体型としては、モンモリロナイト、バイデライト等、3−八面体型としてはヘクトライト、サボナイト等が挙げられる。これらの中でも、モンモリロナイトが好ましい。
【0043】
層状珪酸塩は、高分子化合物や有機系化合物等の有機膨潤化剤を予め層状珪酸塩に接触させて、層状珪酸塩の層間を拡げたものとすることが好ましい。有機膨潤化剤としては、第4級アンモニウム塩が好ましく使用できるが、より好ましくは、炭素数12以上のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも一つ以上有する第4級アンモニウム塩が用いられる。
【0044】
有機膨潤化剤の具体例として、トリメチルドデシルアンモニウム塩、トリメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩、トリメチルエイコシルアンモニウム塩等のトリメチルアルキルアンモニウム塩;トリメチルオクタデセニルアンモニウム塩、トリメチルオクタデカジエニルアンモニウム塩等のトリメチルアルケニルアンモニウム塩;トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリエチルテトラデシルアンモニウム塩、トリエチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリエチルオクタデシルアンモニウム塩等のトリエチルアルキルアンモニウム塩;トリブチルドデシルアンモニウム塩、トリブチルテトラデシルアンモニウム塩、トリブチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリブチルオクタデシルアンモニウム塩等のトリブチルアルキルアンモニウム塩;ジメチルジドデシルアンモニウム塩、ジメチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジタロウアンモニウム塩等のジメチルジアルキルアンモニウム塩;ジメチルジオクタデセニルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデカジエニルアンモニウム塩等のジメチルジアルケニルアンモニウム塩;ジエチルジドデジルアンモニウム塩、ジエチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジエチルジオクタデシルアンモニウム塩等のジエチルジアルキルアンモニウム塩;ジブチルジドデシルアンモニウム塩、ジブチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジブチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジブチルジオクタデシルアンモニウム塩等のジブチルジアルキルアンモニウム塩;メチルベンジルジヘキサデシルアンモニウム塩等のメチルベンジルジアルキルアンモニウム塩;ジベンジルジヘキサデシルアンモニウム塩等のジベンジルジアルキルアンモニウム塩;トリドデシルメチルアンモニウム塩、トリテトラデシルメチルアンモニウム塩、トリオクタデシルメチルアンモニウム塩等のトリアルキルメチルアンモニウム塩;トリドデシルエチルアンモニウム塩等のトリアルキルエチルアンモニウム塩;トリドデシルブチルアンモニウム塩等のトリアルキルブチルアンモニウム塩;4−アミノ−n−酪酸、6−アミノ−n−カプロン酸、8−アミノカプリル酸、10−アミノデカン酸、12−アミノドデカン酸、14−アミノテトラデカン酸、16−アミノヘキサデカン酸、18−アミノオクタデカン酸等のω−アミノ酸などが挙げられる。また、水酸基及び/又はエーテル基含有のアンモニウム塩、中でも、メチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、エチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、ブチルジアルキル(PAG)アンモニウム塩、ジメチルビス(PAG)アンモニウム塩、ジエチルビス(PAG)アンモニウム塩、ジブチルビス(PAG)アンモニウム塩、メチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、エチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、ブチルアルキルビス(PAG)アンモニウム塩、メチルトリ(PAG)アンモニウム塩、エチルトリ(PAG)アンモニウム塩、ブチルトリ(PAG)アンモニウム塩、テトラ(PAG)アンモニウム塩(ただし、アルキルはドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシルなどの炭素数12以上のアルキル基を表し、PAGはポリアルキレングリコール残基、好ましくは、炭素数20以下のポリエチレングリコール残基またはポリプロピレングリコール残基を表す)などの少なくとも一のアルキレングリコール残基を含有する4級アンモニウム塩も有機膨潤化剤として使用することができる。中でもトリメチルドデシルアンモニウム塩、トリメチルテトラデシルアンモニウム塩、トリメチルヘキサデシルアンモニウム塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジドデシルアンモニウム塩、ジメチルジテトラデシルアンモニウム塩、ジメチルジヘキサデシルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジメチルジタロウアンモニウム塩が好ましい。なお、これらの有機膨潤化剤は、単独でも複数種類の混合物としても使用できる。
【0045】
本発明では、ポリアミド樹脂(樹脂Bと樹脂Cの合計)に対し、有機膨潤化剤で処理した層状珪酸塩を0.5〜8重量%添加したものが好ましく用いられ、より好ましくは1〜6重量%、さらに好ましくは2〜5重量%である。層状珪酸塩の添加量が0.5重量%より低いとガスバリア性の改善効果が小さいため好ましくない。また8重量%より多いと中間層が濁って容器の透明性が損なわれるため好ましくない。
【0046】
樹脂Fを構成するポリアミド樹脂において、層状珪酸塩は局所的に凝集することなく均一に分散していることが好ましい。ここでいう均一分散とは、ポリアミド樹脂中において層状珪酸塩が平板状に分離し、それらの50%以上が5nm以上の層間距離を有することをいう。ここで層間距離とは平板状物の重心間距離のことをいう。この距離が大きい程分散状態が良好となり、透明性等の外観が良好で、かつ酸素、炭酸ガス等のガスバリア性を向上させることができる。
【0047】
ポリアミド樹脂と層状珪酸塩を混合する方法としては、特に制限はないが、本発明では溶融混練法が好ましく用いられる。例えば、ポリアミド樹脂の重縮合中に層状珪酸塩を添加し攪拌する方法、単軸もしくは二軸押出機等の通常用いられる種々の押出機を用いて溶融混練する方法等の公知の方法を利用することができるが、これらのなかでも、二軸押出機を用いて溶融混練する方法が本発明において好ましい方法である。
【0048】
以上述べたように、本発明の多層容器における樹脂Fには白化防止剤や、ガスバリア性を高める効果を有する層状珪酸塩を添加することができるが、これらを組み合わせたものを容器の中間層として利用することもできる。
【0049】
本発明の多層容器の製造方法は特に制限はないが、例えば、2つの射出シリンダーを有する射出成形機を使用して、ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂Aと樹脂Fとをそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランナーを通して、金型キャビティー内に射出して得られた多層パリソンを更に二軸延伸ブロー成形することにより得られる。
【0050】
例えば、容器の前駆体である多層パリソンを製造する際に、先ず、樹脂Aを射出し、次いで樹脂Fと樹脂Aと同時に射出し、次に樹脂Aを必要量射出して金型キャビティーを満たすことにより、樹脂A/樹脂F/樹脂Aの3層構造を有するパリソンが製造できる。
【0051】
同様に、先ず樹脂Aを射出し、次いで樹脂Fを単独で射出し、最後に樹脂Aを射出して金型キャビティーを満たすことにより、樹脂A/樹脂F/樹脂A/樹脂F/樹脂Aの5層構造を有するパリソンが製造できる。
なお、多層パリソンを製造する方法は、上記方法だけに限定されるものではない。
【0052】
多層パリソン、あるいは、多層パリソンを二軸延伸ブロー成形して得られる多層容器において、ガスバリア性能は中間層が少なくともボトル胴部に存在していれば発揮されるが、ガスバリア層がボトルの口栓部先端付近まで延びている方がガスバリア性能は更に良好になるため好ましい。
【0053】
本発明の多層容器において樹脂Fからなる層の重量は、多層容器全体に対して1〜20重量%とすることが好ましく、より好ましくは2〜15重量%である。樹脂Fからなる層の重量が1重量%より少ないと多層容器のガスバリア性が十分でなくなることがあるため好ましくない。また樹脂Fからなる層の重量が20重量%より多いと前駆体であるパリソンから多層容器を成形しにくくなることがあるため好ましくない。
【0054】
本発明の多層容器は、従来、落下や衝撃による剥離を起こしにくくするとともに、凹凸の少ない形状に限定されないデザインの自由度を大きくする事ができるものである。本発明の多層容器には、例えば、炭酸飲料、ジュース、水、牛乳、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし等の調味料、液体スープ等の液体系食品、液状の医薬品、化粧水、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー等、種々の物品を収納することができる。
【0055】
【実施例】
以下実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例等で測定した主な特性の測定法を示す。
(1)ポリエチレンテレフタレートの固有粘度[η]: フェノール/テトラクロロエタン=6/4(重量比)の混合溶媒を使用。測定温度30℃。
(2)ポリアミドMXD6の相対粘度[ηrel.]: 樹脂1g/96%硫酸水溶液100ml、測定温度25℃。
(3)溶解度指数の算出 : small法により計算(日本接着協会誌、Vol.22、No.10、p.51(1986)参照。)。
(4)多層容器の層間剥離性 : 容器の落下試験により確認。
落下試験方法:500mlの水を入れキャップをして室温で24時間後(初期)、および40℃、相対湿度60%の雰囲気で4週間保存した多層容器について、多層容器を落下させ層間剥離の有無を目視で確認した。多層容器は底部が床に接触するように落下させた(垂直落下)。落下高さ50cm。50本落下させたときの層間剥離したボトルの本数(層間剥離発生率)で剥離性を評価した。
(5)多層容器の酸素透過率: 23℃、多層容器内部の相対湿度100%、外部の相対湿度50%の雰囲気下にてASTM D3985に準じて測定した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX-TRAN 10/50Aを使用した。
【0056】
実施例および比較例に用いた多層容器は下記の如く成形を行った。
パリソン形状:全長95mm、外径22mmφ、肉厚4.2mm。なお、多層パリソンの製造には、名機製作所(株)製、射出成形機(型式:M200、4個取り)を使用した。3層パリソンの製造条件は下記の通りである。
3層パリソン成形条件
スキン側射出シリンダー温度:285℃
コア側射出シリンダー温度 :265℃
金型内樹脂流路温度 :285℃
金型冷却水温度 :10℃
パリソン中のコア樹脂の割合 :5重量%
多層容器形状:全長223mm、外形65mmφ、内容積500ml。底部形状はシャンパンタイプ。なお、二軸延伸ブロー成形はブロー成形機(クルップ コーポプラスト社(KRUPP CORPOPLAST社)製、型式:LB−01)を使用した。二軸延伸ブロー条件は下記の通りである。
二軸延伸ブロー成形条件
パリソン加熱温度 :100℃
ブロー圧力 :2.7MPa
【0057】
実施例1
下記の材料を使用し、3層構成の多層容器を成形した。
樹脂A:固有粘度が0.75のポリエチレンテレフタレート(日本ユニペット製RT543C)。溶解度指数は11.1である。
樹脂B:相対粘度が2.70のポリアミドMXD6(三菱ガス化学製 MXナイロン S6007)を使用した。溶解度指数は13.0である
樹脂C:N−6(宇部興産製 1024B)を使用した。溶解度指数は12.6である。
金属原子E:コバルト(ステアリン酸Co)
最内外層を構成する樹脂を樹脂A、中間層を構成する樹脂Fとして樹脂B:樹脂C:金属原子E=70:30:0.05(樹脂Bと樹脂Cの合計は100である)となるようにドライブレンドしたものを使用して、樹脂A/樹脂F/樹脂Aの順に積層された3層パリソンおよび3層多層容器を作製した。上記方法で得られた3層多層容器の層間剥離性(初期)、及び酸素透過率を調査した。また、水を500ml充填した3層容器を40℃、60%RH下で4週間保存した後、層間剥離性(4週間後)を調査した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例2
樹脂B/樹脂Cの混合比を30/70とした以外は実施例1と同様に3層構成の多層容器を成形した。得られた3層容器の層間剥離性、及び酸素透過率を調査した結果を表1に示す。
【0059】
実施例3
樹脂CとしてN−6IT(三井・デュポンポリケミカル(株)製 Selar PA 3426)を使用し、樹脂B/樹脂Cの混合比を90/10とした以外は実施例1と同様に3層構成の多層容器を成形した。樹脂Cの溶解度指数は12.6である。得られた3層容器の層間剥離性、及び酸素透過率を調査した結果を表1に示す。
【0060】
比較例1
樹脂Cを使用しない以外は実施例1と同様に3層構成の多層容器を成形した。得られた3層容器の層間剥離性、及び酸素透過率を調査した結果を表1に示す。
【0061】
比較例2
樹脂CとしてLLDPE(日本ポリケム(株)製 UF240)を使用し、樹脂B/樹脂Cの混合比を90/10とした以外は実施例1と同様に3層構成の多層容器を成形した。樹脂Cの溶解度指数は8.5である。得られた3層容器を前記と同様の落下試験により、層間剥離性を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
以上の結果から、本発明の多層容器が耐層間剥離性に優れており、さらに高い酸素バリア性を有することを確認した。
また、従来例である比較例1では酸素吸収に伴い耐層間剥離性が悪化し、40℃、60%RH、4週間後では層間剥離発生率が100%なのに対し、樹脂Cの混合比を増すことにより、保存後においても層間剥離発生率を低減できることを確認した。
【0064】
実施例4
樹脂Fに層状珪酸塩(白石工業(株)製「オルベン」(有機膨潤化剤として、トリメチルオクタデシルアンモニウムを34重量%含有))を3重量%添加した以外は実施例1と同様に3層構成の多層容器を成形した。得られた3層容器の層間剥離性は5%、酸素透過率は0.001(ml/bottle・day・0.02MPa)であり、耐層間剥離性を損なうことなく酸素バリア性を高めることが出来ることを確認した。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた耐層間剥離性を有し、かつガスバリア性に優れた多層容器であり、飲料等の包装材料として非常に有用な物が得られ、その工業的価値は非常に大きい、
Claims (7)
- 3層以上からなる多層容器であって、最外層および最内層が、70モル%以上のテレフタル酸を含むジカルボン酸成分と70モル%以上のエチレングリコールを含むジオール成分を重合して得たポリエステル樹脂を主成分とする樹脂Aからなる層であり、かつ中間層の少なくとも1層が、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分とアジピン酸を70モル%以上含むジカルボン酸成分とを重合して得たポリアミド樹脂(樹脂B)、small法により計算した溶解度指数が式(1)を満たすナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66、ナイロン6IT及びナイロン6I6Tから選ばれるポリアミド樹脂(樹脂C)並びに元素周期律表第VIII族の遷移金属、マンガン、銅及び亜鉛から選択された一種以上の金属原子(金属原子E)を含む化合物あるいは錯体を、重量比として樹脂B:樹脂C:金属原子E=20〜99:1〜80:0.01〜0.1(樹脂Bと樹脂Cの合計は100である)となるように混合してなる酸素吸収樹脂(樹脂F)からなる層であることを特徴とする多層容器。
式(1) : Sa<Sc<Sb
Sa:樹脂Aの溶解度指数
Sb:樹脂Bの溶解度指数
Sc:樹脂Cの溶解度指数 - 樹脂Cの溶解度指数Scが11〜13である請求項1記載の多層容器。
- 樹脂Fが、樹脂Bと樹脂Cの合計に対し、(1)炭素数が18〜50の脂肪酸金属塩、(2)炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジアミンから得られるジアミド化合物、および(3)炭素数8〜30の脂肪酸と炭素数2〜10のジオールから得られるジエステル化合物から選ばれる1種以上の化合物を0.005〜1.0重量%添加してなるものである請求項1または2に記載の多層容器。
- 樹脂Fが、樹脂Bと樹脂Cの合計に対し、有機膨潤化剤で処理した層状珪酸塩0.5〜8重量%を添加して得られる樹脂を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の多層容器。
- 樹脂Fからなる層の重量が、多層容器全体に対して1〜20重量%である請求項1〜4のいずれかに記載の多層容器。
- 2つの射出シリンダー(pおよびq)を有する射出成形機を使用して、樹脂Aを射出シリンダーpに、樹脂Fを射出シリンダーqに充填し、樹脂A、樹脂Aと樹脂F、樹脂Aの順に樹脂を金型キャビティー内に射出して樹脂A/樹脂F/樹脂Aの順に積層された3層パリソンを成形した後にブロー成形して得られる請求項1〜5のいずれかに記載の多層容器。
- 2つの射出シリンダー(pおよびq)を有する射出成形機を使用して、樹脂Aを射出シリンダーpに、樹脂Fを射出シリンダーqに充填し、樹脂A、樹脂F、樹脂Aの順に樹脂を金型キャビティー内に射出して樹脂A/樹脂F/樹脂A/樹脂F/樹脂Aの順に積層された5層パリソンを成形した後にブロー成形して得られる請求項1〜5のいずれかに記載の多層容器。
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