JP4403250B2 - 循環式冷却水系の水処理方法および水処理システム - Google Patents

循環式冷却水系の水処理方法および水処理システム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術の分野】
この発明は、循環式冷却水系の水処理方法および水処理システムに関する。さらに詳しくは、循環式冷却水系の運転状況や水質の変化に随時対応して、適切な管理を行うことができる水処理方法およびこの方法に適用されるシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
製鉄、化学、石油化学のような各種工場ではプロセス冷却用に、また学校、病院、ホテルその他のビルでは空調用に大量の冷却水が使用されている。このような冷却水の使用の増大に伴い、冷却塔を設けて水を循環再利用したり、さらに節水のために、可能な範囲で高濃縮運転を行ったりする冷却水系が採用され、冷却水の有効利用が図られている。
【0003】
これらの冷却水系では、常に水に起因する腐食やスケール付着などの障害が発生し、特に、冷却水系の不純物や添加薬剤の濃縮に基づく水質悪化により、上記のような障害がますます発生しやすい状況となっている。上記のような障害は、機器や配管の閉塞、機器耐用年数の低減、破損や熱効率の低下などの資源およびエネルギーの損失、メンテナンス費の増大、ならびに工場での生産停止など、種々の問題を引き起こす。
【0004】
これらの障害を防止するために、従来より冷却水系の運転状況や水質に応じて、防食剤、スケール防止剤または防食成分とスケール防止成分とを含有する一液型水処理薬剤が使用されている。特に、水処理薬剤の選定およびタンクへの補充作業の効率化を図るために、防食成分およびスケール防止成分さらに汚れ防止成分がそれぞれ1種以上配合されている一液型水処理薬剤が広く用いられている。
【0005】
一液型水処理薬剤は、一般に、防食成分およびスケール防止成分の種類や配合割合を変えたものを調製し、その中から冷却水系の運転状況や水質に応じて最適のものが選定され、使用されている。しかしながら、一液型水処理薬剤の種類には限りがあるため、冷却水系の運転状況や水質の大きな変動に対応できない場合がある。
また、各種の防食成分およびスケール防止成分さらに汚れ防止成分を含むため、冷却水系に添加されても、その効果が発揮されないで無駄に消費される成分があり、環境面および経済面でも問題があった。
【0006】
このような状況に鑑みて、薬剤の濃度を管理するために、循環冷却水の一部をサンプリングしてその水質を判定し、判定結果に基づいて循環冷却水の排出量及び/または薬剤注入量を制御する循環冷却水の水質管理方法(特開平10−142219号公報参照)や、冷却水の濃縮倍数、冷却水の蒸発水量、さらにこれらから求めた補給水量の3つの因子により、冷却水中の水処理薬剤濃度を演算する水処理薬剤の濃度演算方法(特開平11−211386号公報参照)が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの方法は、冷却水に添加する一液型水処理薬剤の添加量の増減、すなわち薬剤濃度を調整する方法でしかないため、運転状況および/または水質の変化には対応しきれていないという問題があった。
上記のような場合に、使用する水処理薬剤が変更されることもあるが、水処理薬剤を切り替えるまでには相当の時間を要し、水処理薬剤の切り替えが遅れた場合は、その間に腐食やスケール障害が進行してしまうという問題もあった。
また、冷却水に多種類の薬剤を任意の量で添加する添加手段を前記の薬剤毎に設け、冷却水の水質の変動に応じて前記薬剤を選択し、選択された薬剤を冷却水に添加することもできるが、薬剤の補充等のメンテナンスが煩雑になり、設備機器の構成およびその制御が複雑なものになる。
【0008】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、冷却水系の運転状況や水質の変化に随時対応し、最適の防食およびスケール防止効果が得られる循環式冷却水系の水処理方法およびこの方法に適用される水処理システムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明によれば、循環式冷却水系のpHおよび電気伝導度を測定し、前記測定結果に応じて低アルカリ用と高アルカリ用の少なくとも2種類の防食剤の添加量を決定し、決定された添加量の前記防食剤を含む水処理薬剤を前記水系に添加することを特徴とする循環式冷却水系の水処理方法が提供される。
【0010】
この発明の別の観点によれば、循環式冷却水系のpHおよび電気伝導度を測定する測定手段と、低アルカリ用および高アルカリ用の少なくとも2種類の防食剤を前記水系にそれぞれ添加する薬剤添加手段と、前記水系のpHおよび電気伝導度の各測定結果に応じて前記少なくとも2種類の防食剤の各添加量を決定し、決定された添加量の各防食剤の供給を前記薬剤供給手段に指令する制御部とからなる循環式冷却水系の水処理システムが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、循環式冷却水系の水質を監視しながら防食成分やスケール防止成分の濃度調整を行っていても、前記冷却水系に腐食やスケール障害等の生じる原因が、防食成分の選定にあることを突き止めた。さらに、防食成分の性能と処理水質について鋭意研究を行った結果、種々の防食成分を低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤とに分類し、これらの配合割合、すなわち添加比率とその添加量を調整することにより、循環式冷却水系におけるブロー水の排出や給水あるいは運転負荷の変動等による水質の変化に対応した防食効果が得られるとともに、防食剤に起因するスケール障害が未然に防止できることを見出した。
【0012】
さらに、上記の調整は、冷却水系のpHおよび電気伝導度を測定し、その結果に基づいて行われるので、最適の防食効果が得られるような低アルカリ用防食剤および高アルカリ用防食剤の添加比率とその添加量を適宜決定して前記冷却水系に添加することにより、冷却水系の腐食防止効果が得られるとともに、防食剤に起因するスケール障害の発生を防止できる。したがって、多量のスケール防止剤を添加させることなく、適切な水質管理を行うことができる。
このことは、防食剤を低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤に分類した場合、通常pHがそれらの適応性の決定因子であり、従来、それに基づいて決定された防食剤を用いて処理していたにもかかわらず、薬剤濃度の調整だけでは腐食やスケール障害が生じていたことからも、意外な事実であるといえる。
【0013】
この発明における冷却水系の汚染物質としては、スライム、菌類、スケール等が挙げられる。
【0014】
この発明における低アルカリ用防食剤とは、通常、Mアルカリ度がCaCO3 換算で100mg/L以下の冷却水系に用いられるものであり、具体的には、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、デカメタリン酸およびそれらのナトリウムもしくはカリウム塩などの重合リン酸類、リン酸(正リン酸またはオルトリン酸)、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムなどのリン酸類、塩化亜鉛や硫酸亜鉛などの亜鉛イオンを水中で容易に放出する化合物、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、モリブデン酸アンモニウムなどのモリブデン酸類、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸およびそれらのナトリムもしくはカリウム塩などのオキシカルボン酸類が挙げられる。
【0015】
また、高アルカリ用防食剤とは、通常、Mアルカリ度がCaCO3 換算で150mg/L以上の冷却水系に用いられるものであり、具体的には、エチルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1,1−アミノエタンジホスホン酸、1,1−ヒドロキシプロパンジホスホン酸、1,1−ヒドロキシブタンジホスホン酸、1,1−アミノブタンジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、ジエチレントリアミン−ペンタメチルホスホン酸、2−ホスホノ酢酸、2−ホスホノプロピオン酸、2−ホスホノスクシン酸、2−カルボキシエチルホスフィン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸およびそれらのナトリウムもしくはカリウム塩などの有機リン酸類が挙げられる。
【0016】
この発明では、前記の防食剤とともに、公知のスケール防止剤および汚れ防止剤を適宜使用することができる。
スケール防止剤としては、マレイン酸重合物、マレイン酸−アクリル酸アルキル−ビニルアセテート共重合物、ホスフィノカルボン酸共重合物、ビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスフィン酸およびその塩類などが例示される。
汚れ防止剤としては、塩素、次亜塩素酸およびその塩類、二酸化塩素、過酸化水素などが例示される。
【0017】
この発明におけるスケール防止剤および汚れ防止剤は、それぞれ別々の添加手段を用いて添加することもできるが、両方を合わせて1つの添加手段を用いて添加してもよい。
また、スケール防止剤および汚れ防止剤を低アルカリ用防食剤または高アルカリ用防食剤のいずれか一方あるいは両方に混合しておいて添加してもよい。
所定量のスケール防止剤を低アルカリ用と高アルカリ用の各防食剤に予め添加した少なくとも2種類の水処理薬剤を前記水系に添加することにより、スケール防止剤を前記水系に添加する添加手段を別途設けなくてもよいので、システムを簡略化することができる。
【0018】
〔実施例〕
以下、この発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これにより、この発明の範囲は限定されない。
図1は、この発明の循環式冷却水系の水処理システムの実施の一形態を示す。
【0019】
図1に示すように、本発明の水処理システム20は、例えば、冷却水槽51から熱交換装置52および冷却塔53を経て冷却水槽51に帰還する循環式冷却水系に適用される。
この水処理システム20は、前記水系のpHおよび電気伝導度を測定する測定手段としてのオンライン水質モニター1と、高アルカリ用防食剤を貯留する高アルカリ用防食剤タンク2および低アルカリ用防食剤を貯留する低アルカリ用防食剤タンク3と、前記タンク2および3に貯留された高アルカリ用および低アルカリ用防食剤を前記水系にそれぞれ添加するポンプ4および5と、ポンプ4および5と冷却水槽51の間に介設されたスタティックミキサー6と、制御部7とから主に構成される。
【0020】
さらに、水処理システム20は、汚れ防止剤を貯留する汚れ防止剤タンク8と、前記タンク8に貯留された汚れ防止剤を前記水系に添加するポンプ9と、塩素の消費量を指標として前記水系の汚れを測定するオンライン残留塩素モニター10とを備える。
オンライン水質モニター1は、pHおよび電気伝導度を測定する各プローブが冷却水槽51内に配置された図示しないpHセンサーおよび導電率センサーを有する。
オンライン残留塩素モニター10は、残留塩素量を測定するプローブが冷却水槽51内に配置された図示しない残留塩素センサーを有する。
【0021】
図2は、この発明の水処理システム20の構成を示すブロック図である。
水処理システム20は、CPU、ROM、RAMおよびタイマー等を有するコンピュータを含む制御部7を有する。
制御部7は、演算条件や演算プログラム等を入力する入力部71と、入力部71から入力された演算条件や演算プログラムを入力データとして、またオンライン水質モニター1およびオンライン残留塩素モニター10からの出力信号を測定データとして、書き込み/読み出し可能な記憶媒体(例えば、メモリーカードやフロッピーディスク)に格納する記憶部72と、記憶部72に格納された前記データを演算処理する演算部73と、液晶表示装置等のディスプレー装置からなる表示部74と、前記データおよび演算結果を表示部74に表示させる表示制御部75とを備える。
【0022】
演算部73は、入力された演算条件や演算プログラムに基づいて、予め設定されたpHおよび電気伝導度の各しきい値と前記水系のpHおよび電気伝導度の各測定結果とを比較し、この比較結果に基づいて低アルカリ用と高アルカリ用の防食剤の添加量を決定する。なお、前記の各ポンプ4、5および9、前記のpHセンサーおよび導電率センサーならびに図示しない他の入出力部は、所定のインターフェース(例えば、アンプ、AC/DC変換器等)を介して制御部7に適宜接続される。
【0023】
図3のフローチャートを参照しながら、水処理システム20における制御部7の動作の一例を以下に説明する。
まず、図3のステップS1において、演算条件の入力、各ポンプ4、5、9の運転条件、オンライン水質モニター1の運転条件、pHセンサーおよび導電率センサーの校正およびpHおよび電気伝導度の各しきい値等の初期設定が行われる。例えば、各ポンプ4、5、9の運転条件について、各ポンプ4、5、9の流量(時間あたりの添加量)を一定にして、ポンプ4、5を一定周期(例えば、8時間)で一定時間(例えば、30分ずつ)駆動し、ポンプ9は連続駆動するものとする。また、オンライン水質モニター1の運転条件について、ポンプ4、5の駆動開始1分前に測定を行うものとする。pHおよび電気伝導度の各しきい値については、pHのしきい値をpH7.5およびpH8.5に、電気伝導度のしきい値を50mS/mおよび100mS/mにそれぞれ設定するものとする。
さらに、オンライン残留塩素モニター10は、ほぼ連続的に駆動される。また、スタティックミキサー6は、ポンプ4、5の駆動に同期して駆動される。
【0024】
ステップS2においてポンプ9の連続駆動を開始し、次いでステップS3においてモニター1、10が駆動される。モニター1、10の駆動により、得られた各測定データは、記憶部72に格納される。
次いで、ステップS4において、演算部73は、予め入力された演算プログラムに基づいて、モニター1のpHセンサーおよび導電率センサーの各測定結果と前記の各しきい値との比較を行い、次いで、前記比較結果に基づいて低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤の各添加量を決定する。
【0025】
演算プログラムの一例としては、pHが7.5未満であって、電気伝導度が50mS/m未満のときには低アルカリ用防食剤のみの添加とし、電気伝導度が50〜100mS/mのときには低アルカリ用防食剤:高アルカリ用防食剤の添加比率を8:2とし、電気伝導度が100mS/m以上のときには低アルカリ用防食剤:高アルカリ用防食剤の添加比率を6:4とする。
【0026】
また、pHが7.5〜8.5であって、電気伝導度が50mS/m未満のときには低アルカリ用防食剤:高アルカリ用防食剤の添加比率を7:3とし、電気伝導度が50〜100mS/mのときには低アルカリ用防食剤:高アルカリ用防食剤の添加比率を5:5とし、電気伝導度が100mS/m以上のときには低アルカリ用防食剤:高アルカリ用防食剤の添加比率を3:7とする。
【0027】
また、pHが8.5以上であって、電気伝導度が50mS/m未満のときには低アルカリ用防食剤:高アルカリ用防食剤の添加比率を4:6とし、電気伝導度が50〜100mS/mのときには低アルカリ用防食剤:高アルカリ用防食剤の添加比率を2:8とし、電気伝導度が100mS/m以上のときには高アルカリ用防食剤のみの添加とする。
【0028】
低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤の添加比率が決定されると、各ポンプ4、5の流量(時間あたりの添加量)を互いに同一かつそれぞれ一定に設定し、防食剤の1回あたりの添加合計量が一定になるように、つまり、ポンプ4、5の1回あたりの駆動時間の合計が一定になるように、ポンプ4、5のそれぞれの駆動時間が設定される。上記の各添加比率に応じてポンプ4、5の各駆動時間が予め設定されている場合には、その設定駆動時間が選択される。
【0029】
次いで、ステップS5において、決定された駆動時間に応じて、各ポンプ4、5の駆動が行われる。前記のステップS3からステップS5の動作は、ステップS6において、入力部71から水処理システム20の停止が入力されるまで、繰り返し行われる。
【0030】
水処理システム20を開放型循環式冷却水系のモデルプラントに適用した二例の試験を試験例1および試験例2として以下に説明する。
【0031】
試験例1
図1に示した循環式冷却水系を有する某化学工場のモデルプラントで、水処理システム20によるこの発明の水処理方法を適用し、かつ比較のための水処理方法を行いながら、上記冷却水系で1ヶ月間の試験を行った。
モデルプラントにおける循環式冷却水系は同じ条件の二系統を有し、第1の冷却水系にはこの発明の水処理方法を適用し(実施例)、第2の冷却水系には比較のための水処理方法を用いた(比較例)。
【0032】
この発明の水処理方法では、以下の防食剤、スケール防止剤および汚れ防止剤を使用した。
すなわち、低アルカリ用防食剤として、75%リン酸水溶液および50%塩化亜鉛水溶液の重量比が1:1の混合物を使用し、高アルカリ用防食剤として、1−ヒドロキシエチリデン−1、1−ジホスホン酸を使用した。
また、スケール防止剤として、ホスフィノカルボン酸共重合物(BioLab社製、商品名:Belclene400)を使用した。このスケール防止剤は、低アルカリ用防食剤および高アルカリ用防食剤にそれぞれ10重量%の割合で予め配合され、低アルカリ用防食剤および高アルカリ用防食剤の添加比率が変わっても、上記冷却水系におけるスケール防止剤濃度が10mg/Lとなるように、高アルカリ用防食剤タンク2および低アルカリ用防食剤タンク3から上記冷却水系に添加した。
さらに汚れ防止剤として、次亜塩素酸ナトリウムを汚れ防止剤タンク8から上記冷却水系における濃度が0.5mg/Lとなるように添加した。
【0033】
モデルプラントにおける冷却水の水質を表1に、運転条件を表2にそれぞれ示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004403250
【0035】
【表2】
Figure 0004403250
【0036】
表1に示すように、第1および第2の冷却水系における試験開始時のpHがともに7.2、電気伝導度がともに37mS/mであったので、低アルカリ用防食剤のみを添加量50mg/Lで上記二水系にそれぞれ添加することにより運転を開始した。
運転開始から2週間後、冷却水のpHおよび電気伝導度の変化に伴い、第1および第2の冷却水系に対して異なる水処理方法を用いた。
すなわち、第1の冷却水系には、この発明の水処理方法として、低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤との添加比率を8:2に変更し、両防食剤の合計添加量50mg/Lで運転を続けた。一方、比較となる第2の冷却水系には、低アルカリ用防食剤のみを添加量100mg/Lで運転を続けた。
【0037】
4週間の運転終了後、テストチューブとしてモデルプラントの熱交換装置52に使用された熱交換器チューブ(材質:STB−340、内径:19mm、厚さ:2mm、長さ1000mm)を酸洗した後、その重量を測定した。
次いで、前記測定値と試験前に予め測定しておいた前記テストチューブの重量との重量差Wfを求め、得られた重量差Wfを次の〔式1〕に算入して腐食速度MDD(mg/日・dm2 )を求めた。
【0038】
MDD=重量差Wf(mg)/〔期間(日)×表面積(cm2 )〕…〔式1〕
なお、式1中の表面積は、冷却水が接触する前記テストチューブの接触面の表面積を意味する。
【0039】
4週間の運転終了後、前記テストチューブを酸洗し、その重量を測定して、この測定値と試験前に予め測定しておいたチューブの重量との重量差Wcを求めた。得られた重量差Wcを次の〔式2〕に算入してスケール付着速度MCM(mg/月・cm2 )を求めた。
MCM=重量差Wc(mg)/〔期間(月)×表面積(cm2 )〕…〔式2〕
なお、式2中の表面積は、冷却水が接触するテストチューブの接触面の表面積を意味する。
得られた結果を表3に示す。
【0040】
【表3】
Figure 0004403250
【0041】
試験例2
まず、表1に示すように、第1および第2の冷却水系における試験開始時のpHがともに8.7、電気伝導度がともに126mS/mであったので、高アルカリ用防食剤のみを添加量50mg/Lで上記二水系にそれぞれ添加することにより運転を開始した。
運転開始から2週間後に、冷却水のpHおよび電気伝導度の変化に伴い、第1および第2の冷却水系に対して異なる水処理方法を用いた。
すなわち、第1の冷却水系には、この発明の水処理方法として、低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤との添加比率を5:5に変更し、両防食剤の合計添加量50mg/Lで運転を続けた。一方、比較となる第2の冷却水系には、高アルカリ用防食剤のみを添加量100mg/Lで運転を続けた。
【0042】
4週間の運転終了後、試験例1と同様に、テストチューブ(試験例1で用いたものと同じもの)を酸洗し、その重量を測定して、この測定値と試験前に予め測定しておいたチューブの重量との重量差Wfを求めた。得られた重量差Wfを前記の式1および式2にそれぞれ算入して、腐食速度MDDおよびスケール付着速度MCMを求めた。
【0043】
得られた結果を表3に示す。
【0044】
表3に示した試験例1および試験例2の結果から明らかなように、水処理薬剤を低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤とに分離して、冷却水のpHおよび電気伝導度の変化に応じて両者の添加比率を変更する方式の、本発明の方法を適用することにより、腐食速度およびスケール付着速度の著しい低減を実現することができた。
【0045】
【発明の効果】
本発明では、種々の防食成分を低アルカリ用防食剤と高アルカリ用防食剤とに分類し、これらの配合割合、すなわち添加比率とその添加量を調整することにより、循環式冷却水系におけるブロー水の排出や給水あるいは運転負荷の変動等による水質の変化に対応した防食効果が得られるとともに、防食剤に起因するスケール障害が未然に防止できる。
さらに、多量のスケール防止剤を添加させることなく適切な水質管理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による循環式冷却水系の水処理システムの実施の形態を模式的に示す図である。
【図2】図1の水処理システムの制御ブロック構成図である。
【図3】図1の水処理システムにおける制御部の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 オンライン水質モニター(pHおよび電気伝導度測定手段)
2 高アルカリ用防食剤タンク
3 低アルカリ用防食剤タンク
4 高アルカリ用防食剤ポンプ(薬剤添加手段)
5 低アルカリ用防食剤ポンプ(薬剤添加手段)
7 制御部
20 水処理システム
73 演算部(比較手段、添加量決定手段)

Claims (6)

  1. 循環式冷却水系のpHおよび電気伝導度を測定し、前記測定結果に応じて低アルカリ用と高アルカリ用の少なくとも2種類の防食剤の添加量を決定し、決定された添加量の前記防食剤を含む水処理薬剤を前記水系に添加することを特徴とする循環式冷却水系の水処理方法。
  2. 所定量のスケール防止剤を低アルカリ用と高アルカリ用の各防食剤に予め添加した少なくとも2種類の水処理薬剤を前記水系に添加する請求項1に記載の水処理方法。
  3. 循環式冷却水系のpHおよび電気伝導度を測定する測定手段と、低アルカリ用および高アルカリ用の少なくとも2種類の防食剤を前記水系にそれぞれ添加する薬剤添加手段と、前記水系のpHおよび電気伝導度の各測定結果に応じて前記少なくとも2種類の防食剤の各添加量を決定し、決定された添加量の各防食剤の供給を前記薬剤供給手段に指令する制御部とからなる循環式冷却水系の水処理システム。
  4. 薬剤添加手段が、低アルカリ用防食剤を貯留する第1薬剤タンクおよび高アルカリ用防食剤を貯留する第2薬剤タンクを含む、水処理薬剤の複数のタンクと、これらの薬剤タンクにそれぞれ貯留された水処理薬剤を前記水系に添加するポンプとからなる請求項3に記載の循環式冷却水系の水処理システム。
  5. 制御部が、予め設定されたpHおよび電気伝導度の各しきい値と前記水系のpHおよび電気伝導度の各測定結果とを比較する比較手段と、この比較結果に基づいて低アルカリ用と高アルカリ用の防食剤の添加量を決定する添加量決定手段とを有する請求項3または4に記載の循環式冷却水系の水処理システム。
  6. 前記pHのしきい値がpH7.5およびpH8.5であり、前記電気伝導度のしきい値が50mS/mおよび100mS/mである請求項5に記載の循環式冷却水系の水処理システム。
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