JP4402181B2 - 回転ブラシ洗浄体材料および回転ブラシ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は回転ブラシ洗浄体材料に関し、さらに詳しくは自動車、電車、飛行機、機械などの表面を傷つけずに汚れを洗浄することができる、洗車用回転ブラシなどに好適に用いられる回転ブラシ洗浄体材料およびこの材料を用いた回転ブラシに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車などの被洗浄体の洗浄には、その表面を傷つけずに汚れを洗浄するため、柔らかい洗浄体材料が使用されている。しかし、柔らかい洗浄体材料は、構成繊維内部に砂、ゴミなどを巻き込み易く、また油などを吸着し、汚染され易いという欠点がある。またこのような材料を洗車用回転ブラシなどの洗浄体に用いると、回転時の腰がなく、被洗浄体を押圧しにくくなり洗浄能力が低下し、また回転ブラシの形状が型崩れし易く、破れ易く、さらに突起物に絡みついて被洗浄体を損傷させ易いという問題があった。さらに水や洗浄液を吸い易いために吸液性が高く、洗浄体の重量増加が大きくなり、ブラシ回転時のモータ負荷が増大するなどの問題があった。
【0003】
一方、上記問題を解決するために硬い洗浄体材料を使用すると、洗浄体材料が起立し易く、被洗浄体表面を押圧し易くなり、回転時の腰があり、回転ブラシの形状の型崩れがなく、また吸液性が少なくなりモータ負荷変化が少なくなるなどの利点があるが、被洗浄体の表面を傷つけ易くなるという問題が生じる。
また近年、洗浄液含水後の重量増加を小さくしてモーター負荷変化を少なくし、かつ塗装表面を傷つけることのない洗車ブラシ用不織布として、見かけ密度が0.2〜1g/cm3 、撥水度が50以上である部分熱圧着された合成長繊維不織布が提案されている(特開平7−125613号公報)。
しかし、このような不織布を用いた場合には、不織布に保持される洗浄液量が少ないため、洗浄能力が低下する等の問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、被洗浄体の表面を傷つけずに、適度な硬さ(回転ブラシの保形性)を有し、適度に水や洗浄液を吸液しても洗浄体材料の硬さおよび重量の変化が少なく、かつ吸液および乾燥を繰返しても優れた耐久性を有し、摩擦毛羽強さ、強力、寸法変化(収縮率)などの機械的特性に優れた回転ブラシ洗浄体材料および回転ブラシを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、特定の不織布に特定の樹脂加工を行って一定の剛軟性を有する不織布を用いることにより、適度な吸液性を有し、かつ吸液および乾燥を繰り返しても優れた耐久性を有し、回転時のモータ負荷変化の少ない回転ブラシ洗浄体材料が得られることを見いだし、本発明に到達したものである。
すなわち、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
【0006】
(1)長繊維集合体を圧接接合して得られたスパンボンド法長繊維不織布に、浸漬法により、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂およびラテックス樹脂から選ばれた単一または2種以上の樹脂を主剤とした樹脂を付着率0.5〜20重量%で塗布した不織布であって、該不織布の目付けが50〜300g/m 、平均みかけ密度が0.13〜0.19g/cm 部分圧着面積率が5〜25%であり、該不織布の吸液時の剛軟性が50〜150mmで、かつ20回洗濯後の剛軟性が50〜104mm、該不織布の吸液率が145〜400重量%で、かつ20回洗濯後の吸液率が210〜375重量%であることを特徴とする回転ブラシ洗浄体材料。
(2)前記樹脂の付着率が0.5〜15重量%である(1)に記載の回転ブラシ洗浄体材料。
(3)(1)または(2)に記載の回転ブラシ洗浄体材料を用いた回転ブラシ。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における回転ブラシ洗浄体材料は、例えば、一端が束ねられた扇形状のプリーツ状不織布からなる複数の洗浄ユニットとされ、これらは回転体の軸に固定されて洗車用回転ブラシなどの回転ブラシとして使用される。
図1は、本発明の一実施例を示す洗車用回転ブラシの側面図である。該洗車用回転ブラシは、回転体である鋼管3の外周に、8枚のプリーツ状不織布2が接合された洗浄ユニット1が複数固定され、上記鋼管3に図示しない駆動部から回転力が与えられて回転し、被洗浄体を洗浄する。
【0008】
本発明において、回転ブラシ洗浄体材料としては不織布が用いられるが、該不織布の吸液時の剛軟性は50〜150mm、好ましくは70〜130mm、より好ましくは90〜130mmであることが必要である。
不織布の吸液時の剛軟性が50mm未満では、不織布が柔らかすぎて吸液時の回転ブラシの形状維持が難しく、型崩れし易くなり、また150mmを超えると不織布が硬く、回転ブラシの形状維持に優れ、型崩れしにくくなるが、被洗浄体の表面を傷つけやすくなる。本発明において、不織布の吸液時の剛軟性は、洗剤2gを水1リットルに溶解した溶液中に10分間浸漬して十分に濡らした後、該溶液から引き上げて20秒間水切りした後の不織布(試験片)を、JIS−L−1096 A法(45度カンチレバー法)に基づいて測定した値をいう。
【0009】
回転ブラシ洗浄体材料としての不織布は、被洗浄体の表面を洗浄する際に供給される水や洗浄液を吸液するが、一般に吸液時の剛軟性は、乾燥時の剛軟性に比べて低下する。本発明においては、後述する樹脂加工および圧接接合処理が施された不織布を用いるため、吸液時の不織布の剛軟性の低下を抑制しつつ、一定の吸液率を確保することができ、また吸液時および乾燥時の剛軟性および重量の変化、さらには繰り返し使用による吸液率の変化が少なくなり、モーター負荷変化を少なくすることができる。
【0010】
上記剛軟性を有する不織布は、長繊維集合体を圧接接合して得られた長繊維不織布に付着率0.5〜20重量%、好ましくは1.0〜15重量%で樹脂を塗布することにより得ることができる。
長繊維不織布の樹脂付着率が0.5重量%未満では不織布が柔らかく吸液時の剛軟性が小さく、回転ブラシが型崩れし易くなり、また20重量%を超えると不織布が硬くなりすぎてプラスチックライクで吸液時の剛軟性が大きくなり、被洗浄体の表面を傷つけ易くなる。また上記範囲の樹脂付着率を有する不織布は、吸液および乾燥の繰り返しによる不織布の耐久性を向上させつつ一定の吸液率を確保することができる。
【0011】
長繊維不織布の樹脂加工は公知の浸漬法により行うことができる。樹脂加工には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ラテックス樹脂などの単一または2種以上混合した主剤と、タンニンなどの固着剤、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂などの撥水剤、界面活性剤、顔料などの助剤とを組み合わせた加工剤が用いられる。これらの主剤と助剤を混合した加工剤を用いるのが好ましいが、これらを別々に塗布して樹脂加工してもよい。このような主剤と助剤を組み合わせて樹脂加工することにより、不織布を構成する繊維相互の自由度を拘束せずに、繊維交絡部の接合を強め、不織布の水や洗浄液の吸液性および吸液時の剛軟性を改善することができる。
【0012】
また長繊維集合体の圧接接合は、全面接合よりも部分的に凹凸エンボスで接合させるのが、構成する繊維の拘束が少なく、不織布が柔らかくなり、かつ強度、摩擦毛羽などの点から好ましい。不織布の部分圧着面積比率は5〜25%である。3%未満では構成する繊維の相互の接合面積比率が少なく、不織布が柔らかく、剛軟性が小さくなり、強度、摩擦毛羽などに劣る場合がある。また30%超えると不織布が硬すぎ、プラスチックライクで剛軟性が大きくなり、回転ブラシが型崩れし難いが、被洗浄体の表面を傷つけやすくなる。部分圧着1個当たりの面積は0.5〜5.0mm2の範囲とするのが好ましく、また不織布全面に均一に分布させるのが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる長繊維集合体は、例えば、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、これらの複合繊維または共重合繊維などの単一または2種以上を混合または積層してなる長繊維を、スパンボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法などの公知の方法を1種また2種以上組合わせて製造される。該繊維の平均繊維径としては0.5〜20デニールが好ましく、より好ましくは1.0〜10デニールである。また繊維断面形状は丸形およびY型、X型、ハ型などの異型構造が用いられる。
【0014】
本発明における不織布の吸液率は、洗浄能力の低下を防止する点から、145〜400重量%、好ましくは170〜300重量%の範囲である。なお、本発明において吸液率は、試験片(不織布)を洗剤2gを1リットルの水に溶解した溶液に10分間浸漬して十分に濡らした後、取り出して20秒水切りした時の重量変化から算出したものである。
【0015】
本発明における不織布の平均みかけ密度(繊維密度)は、後述する実施例に示すように0.13〜0.19g/cm 3 の範囲である。平均みかけ密度が小さすぎると、構成する繊維の空隙が大きく、不織布が柔らかくなり、被洗浄体の表面を傷つけることはないが、剛軟性が小さく回転ブラシが型崩れし易く、繰返し使用の耐久性が乏しくなる。また大きすぎると、不織布が硬く、剛軟性が大きくなり、回転ブラシが型崩れし難いが、被洗浄体の表面を傷つけ易くなる。
【0016】
本発明に用いられる不織布の目付は50〜300g/m2 が好ましく、より好ましくは70〜200g/m2 、さらに好ましくは80〜150g/m2 である。目付が50g/m2 未満では硬さが不足し、強度が低く剛軟性が小さくなり易い。また300g/m2 を超えると不織布が硬く、剛軟性が大きくなるが、不織布の乾燥時と吸液時の重量変化が大きくなり、モータ負荷変化が大きくなり易い。
本発明に用いられる不織布の引張強力は5kg/5cm以上、好ましくは10〜150kg/5cmである。引張強力が少なすぎると不織布の耐久性、特に吸液時の耐久性が低下し易い。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中における不織布の剛軟性、吸液率、摩擦毛羽強さ、洗濯試験および収縮率、摩擦傷、平均みかけ密度、樹脂付着率は下記の方法で測定した。
(1)剛軟性:JIS−L−1096 A法(45度カンチレバー法)に準じて測定した。試料は5cm×15cmの試験片とし、縦方向3点の平均値をとった。吸液時の剛軟性は、乾燥時の不織布を洗剤2gを1リットルの水に溶解した溶液に10分間入れて充分に濡らした後、該溶液から引き上げて20秒間水切りして試料片とし、上記方法で測定した。
(2)吸液率:試験片(乾燥重量W)を洗剤2gを1リットルの水に溶解した溶液に10分間入れて充分に濡らした後、取出して20秒間水切りし、そのときの試料重量W1 を測定し、式〔(W1 −W)/W〕×100により試料の重量変化による吸液率を算出した。
【0018】
(3)摩擦毛羽強さ:JIS−L−1096 C法に準じて外観変化を下記の基準により判定した。
○:異常なし、△:やや損傷している、×:損傷が甚だしい
(4)洗濯試験:家庭用洗濯機で温度25度、浴比30:1、洗剤2g/l、洗濯時間5分を1回とし、洗濯回数のまとめ洗い、10回単位で連続して行った。また洗濯後の収縮率は、30cm角の試料に縦、横各々20cm間隔で印を書き、洗濯前後の寸法変化から求めた。なお、該洗濯試験10回は、自動車などの被洗浄体を実際に5000台分繰り返し使用した場合に相当する。
(5)摩擦傷:アルミニウム板の上に試料を乗せ、手で摩擦し、この試料表面の外観変化を下記の基準で判定した。なお、試料としては、乾燥時の不織布を洗剤2gを1リットルの水に溶解した溶液に10分間入れて充分に濡らした後、該溶液から引き上げて20秒間水切りしたものを用いた。
○:異常なし、△:やや損傷している、×:損傷が甚だしい
(6)平均みかけ密度:JIS−L−1096に準じて測定した厚みと重量から算出した。
(7)樹脂付着率:樹脂加工前後の試料重量を求め、下記の式により算出した。ただし、W0 は樹脂加工前の試料重量、W2 は樹脂加工後の試料重量である。
〔(W2 −W0 )/W0 〕×100
【0019】
実施例、比較例1〜2
スパンボンド法によりナイロン長繊維不織布(目付120g/m2 、平均繊維径2.1デニール、平均みかけ密度は0.19g/cm3 、部分圧着面積比率が12%、引張強力が縦方向50.5kg/5cm幅、横方向24.5kg/5cm幅)を、青色染色加工し、続いて天然タンニンを固着させ、次いでゴム系ラテックス樹脂、メラミン樹脂およびフッ素樹脂を混合調整した加工剤を用いて浸漬法により表1に示す樹脂付着率となるように樹脂加工してそれぞれの不織布を得た。得られた不織布の剛軟性、吸液性、摩擦毛羽強さ、寸法変化(収縮率)特性および繰返し使用の耐久性評価として洗濯試験をモデル的に行い、その結果を表1に示した。
【0020】
実施例2〜4、比較例3〜4
スパンボンド法によりポリプロピレン長繊維不織布(目付100g/m2 、平均繊維径2.8デニール、平均みかけ密度は0.16g/cm3 、部分圧着面積比率が6%、引張強力が縦方向26.5kg/5cm幅、横方向12.5kg/5cm幅)を、緑色顔料、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、界面活性剤、固着剤(天然タンニン)およびフッ素樹脂を混合調整した加工剤を用いて浸漬法により表1に示す樹脂付着率となるように樹脂加工してそれぞれの不織布を得た。得られた不織布の剛軟性、吸液性、摩擦毛羽強さ、寸法変化(収縮率)特性および繰返し使用の耐久性評価として洗濯試験をモデル的に行い、その結果を表1に示した。
【0022】
実施例5〜6、比較例
スパンボンド法によりポリエステル長繊維不織布(目付200g/m、平均繊維径4.5デニール、平均みかけ密度は0.13g/cm3 、部分圧着面積比率が12%、引張強力が縦方向30.5kg/5cm幅、横方向29.5kg/5cm幅)を、赤色顔料、アクリル樹脂、メラミン樹脂、界面活性剤、固着剤(タンニン)およびフッ素樹脂を混合調整した加工剤を用いて浸漬法により表2に示す樹脂付着率となるように樹脂加工してそれぞれの不織布を得た。得られた不織布の剛軟性、吸液性、摩擦毛羽強さ、寸法変化(収縮率)特性および繰返し使用の耐久性評価として洗濯試験をモデル的に行い、その結果を表2に示した。
【0023】
【表1】
Figure 0004402181
【0024】
【表2】
Figure 0004402181
【0025】
表1および表2から、本発明の不織布(実施例1〜実施例10)は、乾燥時および吸液時の剛軟性の変化が少なく、また繰り返し使用による不織布の剛軟性の低下および不織布の吸液率の変化も少ないことがわかった。また不織布乾燥時の摩擦傷の発生が少なく、さらに繰り返し使用による摩擦毛羽強さの低下もなく、収縮率も少ないことがわかった。
【0026】
実施例
実施例1で得られた不織布を用いて図1に示す洗車用回転ブラシを作製し、洗剤2gを1リットルの水に溶解した洗浄液を用いて実際に自動車の洗車を実施したが、適度な剛軟性を有しているため洗浄能力に優れ、また洗車を繰り返して行っても不織布の剛軟性の低下がなく、回転ブラシの洗浄能力に低下がなく、また保形性に優れ、さらに洗車時に自動車を傷つけることがなく、良好な洗車を行うことができた。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、被洗浄体の表面を傷つけずに、適度な硬さ(回転ブラシの保形性)を有し、適度に水や洗浄液を吸液しても洗浄体材料の硬さおよび重量の変化が少なく、かつ吸液および乾燥を繰返しても優れた耐久性を有し、摩擦毛羽強さ、強力、寸法変化(収縮率)などの機械的特性に優れた回転ブラシ洗浄体材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す洗車用ブラシの側面図である。
【符号の説明】
1…洗浄ユニット、2…プリーツ状不織布、3…鋼管。

Claims (3)

  1. 長繊維集合体を圧接接合して得られたスパンボンド法長繊維不織布に、浸漬法により、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂およびラテックス樹脂から選ばれた単一または2種以上の樹脂を主剤とした樹脂を付着率0.5〜20重量%で塗布した不織布であって、該不織布の目付けが50〜300g/m 、平均みかけ密度が0.13〜0.19g/cm 部分圧着面積率が5〜25%であり、該不織布の吸液時の剛軟性が50〜150mmで、かつ20回洗濯後の剛軟性が50〜104mm、該不織布の吸液率が145〜400重量%で、かつ20回洗濯後の吸液率が210〜375重量%であることを特徴とする回転ブラシ洗浄体材料。
  2. 前記樹脂の付着率が0.5〜15重量%である請求項1に記載の回転ブラシ洗浄体材料。
  3. 請求項1または2に記載の回転ブラシ洗浄体材料を用いた回転ブラシ。
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