JP4401675B2 - 土壌又は地下水の汚染を原位置で浄化する装置 - Google Patents

土壌又は地下水の汚染を原位置で浄化する装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、有機塩素系化合物によって汚染された土壌及び地下水を、現位置において浄化用金属粉である鉄粉と混合することによって浄化する技術に係り、特に、オーガを用いて浄化用鉄粉を現位置土と撹拌混合する場合の、オーガ先端からの鉄粉噴射機構の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機塩素系の化合物によって汚染された地下土壌又は地下水を、その現位置土壌に対して例えば鉄粉を混合することによって浄化する工法及び装置は、例えば特開2002−273403号公報等において知られている。この様な公知の浄化工法において、現位置の汚染土壌又は汚染地下水と浄化のための鉄粉との混合は、一般的に単軸又は多軸のアースオーガ等により行われている。
この場合、オーガによって汚染土壌を掘削すると同時に、該オーガの掘削ビット端部から浄化用鉄粉を搬送用圧搾空気と共に噴射させ、該鉄粉と掘削された汚染土壌とを撹拌混合することにより行うものである。
【0003】
この様な、従来公知の浄化工法に用いられるオーガの構造を図3及び図4により説明する。
図3は、従来公知の三軸型アースオーガ1を示しており、3本の掘削軸2〜2を有すると共に、その各軸の先端には掘削ビット3〜3が取付けられている。また、図中の符号4〜4は各掘削軸2〜2に設けられた螺旋翼又は撹拌翼を示している。
【0004】
図4は、上記図3に示すアースオーガの掘削ビット部分における、掘削ビット端部側面及び底面を示している。該ビット端部はスクリュー5の先端部分に掘削爪6〜6が固着されており、掘削軸の端部には鉄粉のための噴射孔7が設けられている。なお、図4に示す掘削軸端部の一般的な構造は、例えば3軸式オーガにおいても、単軸式オーガにおいても概略同様の構造である。
【0005】
図5は、このような従来形式の掘削軸の端部における鉄粉のための、噴射孔の位置を示している。
矢印A’は鉄粉のための噴射孔7の開口方向を示しており、上記スクリュー5の下端部である爪支持部(又はスクリュー以外の爪支持部材もある)に対して直交する方向に開口している。そして、図示の符号C’は、この様な噴射孔7から噴射される鉄粉の広がりを示している。また、この他にも該噴射孔7は、図示しないが、掘削軸端部の軸先端方向(下方)に向けて開口されたものもある。
なお、同図の符号B’はオーガビット先端部分の正回転方向を示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の形式のオーガにおいては、浄化用鉄粉は搬送空気と共に噴射孔7より矢印A’方向に噴射されるために、後に説明する測定データから明らかなごとく、掘削土と鉄粉との混合割合にむらができると言う欠点があった。すなわち、オーガ軸内を可成りの高圧の空気によって搬送される鉄粉は、該空気と共に爪6〜6によって掘削された掘削土中に噴射され、続いて当該スクリュー5及びその上方の撹拌翼4等により撹拌混合されるけれども、噴射孔7の直前に位置する掘削土のために、あまり前方まで鉄粉が移動せず、このために、撹拌混合域である符号11に示す掘削円内において、その掘削軸端部の外周近傍が該掘削円11の近傍よりも、混合割合が高くなると言う問題が生じていた。
【0007】
本発明は、この様な浄化用金属粉である例えば鉄粉の混合むらを低減し、掘削及び撹拌混合域における鉄粉の混合割合を均一にし、効率の良い汚染浄化を実現する浄化装置を提供するものである。
また、汚染土壌と浄化用金属粉である鉄粉との混合割合を均一化することによって、余分な鉄粉の仕用を回避すると同時に、施工域内の迅速な浄化を実現する浄化装置を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、オーガ掘削軸先端部より金属粉を噴射させ、汚染原位置土と掘削、撹拌混合することにより汚染を浄化するためのオーガによる浄化装置であって、その掘削軸先端における金属粉の噴射を掘削爪の配列位置のスクリュー背面に沿って行うものであり、当該金属粉の噴射のための噴射孔の開口方向とスクリュー下端部に設けられた掘削爪配列方向との成す角度を45°以内としたことを特徴とするものである。

【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1及び図2によって説明する。
図1は、前記図4に示す従来例と概略同様の構成からなる、オーガ軸の先端部分の掘削軸20を示しており、該掘削軸20の先端部分21には、スクリュー25の下端部に多数の掘削用の爪26〜26が固着されていると共に、その中心先端部にも爪26を有している。
また、掘削軸20は撹拌翼24を有する他、掘削土が軸等と伴回りすることを防止するために、伴回り防止プレート29を有しており、該伴回り防止プレート29と掘削軸20の先端部21とは回動自在である。そして、該掘削軸20の先端部には鉄粉噴射孔27が設けられている。
【0010】
本発明の最も特徴的構成は鉄粉噴射孔27に関する構造であって、該噴射孔27の開口部が図2に示すように、矢印Aに示す方向に設けられている。
この図に示す装置の各部材の構成は、上記図4、図5に示す形式の掘削軸端部の構成と概略同様であるが、符号25,25によって示すスクリューの下端部には多数の掘削爪26〜26が設けられ、掘削軸20の先端部分21には鉄粉噴射孔27が、矢印Aの方向に開口されている。そして、該噴射孔27の開口方向Aとスクリュー下端部25の掘削爪26の取付位置との成す角度αを約45°以内としている。
【0011】
本発明はこのようなスクリュー25の下端部、すなわち掘削爪26〜26の配列方向と、鉄粉噴射孔27の開口方向Aとの角度関係に特徴を有するものであって、次のような作用を奏するものである。
図2において、スクリュー25の回転方向、従って掘削爪26〜26の回転方向は、正回転時である掘削撹拌時は矢印Bの方向である。そして、浄化用鉄粉の噴射孔27は上記掘削軸20の先端部分21における、該スクリュー25の背面側に設けられており、その開口は矢印A方向に向けられている。
【0012】
このため、スクリュー25が回転していない場合には、噴射される鉄粉が上記矢印Aに沿って、例えば前述の図5における符号C’で示す領域形状で噴射されるはずである。
しかしながら、スクリュー25を含む掘削軸20は矢印Bの方向に回転しながら掘削及び撹拌を行っているので、該スクリュー25の回転方向背面の掘削土圧がその他の部位における土圧よりも低くなる。このため、高圧空気とともに噴射された鉄粉はその搬送空気とともに、該低圧な部分であるスクリュー25の背面に沿って移動拡散することとなり、結果的にその広がりは図示Cの領域となるのである。また、噴射された鉄粉及び空気はスクリュー25の背面に沿って、その先端部分まで十分に拡散されるものである。
【0013】
図6〜図9によって、本発明の浄化装置と従来公知の装置による噴射鉄粉の拡散具合を比較する。
図6は、本発明に係る装置と従来装置を用いた比較試験例であって、夫々の浄化のための鉄粉の掘削撹拌施工域と、夫々の施工域及び対比のための非施工域における各鉄粉濃度測定位置とを表わしている。
【0014】
同図において、「旧ヘッド施工」とは上記図5に示す形式の、鉄粉の噴射孔7の開口方向A’が掘削爪6〜6の配列方向に対して90°の方向である掘削ヘッドを用いた、浄化施工域を示している。
また、「改良ヘッド施工」とは上記図2に示す形式の、本発明に係る掘削ヘッドを用いた浄化施工域を示している。そして、同図のいずれの部分においても、符号イは、1回の掘削撹拌域における中心部位の、符号ロは同じく中間位置を、符号ハは同じく施工域の外周端部における、各測定位置を表示している。また、BL〜BLは、これらのいずれの装置によっても浄化のための鉄粉が掘削混合されていない地域における、比較のための鉄粉濃度測定位置を示している。
【0015】
図7に示すように、従来公知の掘削ヘッドを用いた(旧ヘッド施工)鉄粉の掘削混合域において、地表から深度1mの位置(A)における土壌中の鉄粉推定値は、その平均値が中心部位(イ)で1.2%、中間部位(ロ)で1.0%、端部(ハ)で0.5%と測定された。
同様に、地表から深度2mの位置(B)における土壌中の鉄粉推定値も、その平均値が中心部位(イ)で1.3%、中間部位(ロ)で1.2%、端部(ハ)では0.5%と測定された。
【0016】
これに対して、図8に示す値は本発明に係る掘削ヘッド(改良掘削ヘッド施工)を用いて鉄粉の掘削混合域における、同じく地表から深度1mの位置(A)及び2mの位置(B)の土壌中の鉄粉推定値を示している。そして、深度1mにおける平均値で中心部位(イ)は1.0%、中間部位(ロ)は1.2%、端部(ハ)では1.1%の値が得られた。また同様に、深度2mの位置においてもその平均値が、中心部位(イ)で1.0%の測定値が得られた。
【0017】
図9は、上記図6においてBL〜BLに示す非施工域における鉄粉の含有推定値であって、自然土壌中に存在する鉄粉の推定値を示している。そして、上記図7、図8と同様の方法によって深度1m(A)及び深度2m(B)の位置で測定した結果は、同図より明らかなように、いずれも0.3%であった。
なお、これらの土壌中の鉄粉含有推定値(%)は、公知の帯磁率計を用いて測定されたものである。
また、この実験における浄化用鉄粉の混合量は、浄化対象掘削土量に対して重量比1%とした。
【0018】
上記の結果、図7及び図8の測定値(鉄粉含有推定値%)の比較から明らかなように、従来公知の掘削ヘッドにおける鉄粉噴射構造においては、各回の施工域の外周部位における鉄粉濃度が、中心部位及び中間部位の鉄粉濃度に比較して極端に低くなっているのに対し、本発明に係る改良された掘削ヘッドによると、各回の施工域のいずれの部位における鉄粉濃度も略均等な値を示していることが判る。
【0019】
【発明の効果】
本発明のオーガ掘削装置における鉄粉噴射構造によれば、高圧空気による鉄粉の噴射口が掘削ヘッドの掘削爪配列部背面に向けられているので、掘削撹拌域の中心部、中間部及び外周部のいずれかの位置においても均一に鉄粉を拡散混合させることができた。このため、鉄粉の搬送及び噴射のための空気圧を低減でき、浄化施工域の地盤の「盤ぶくれ」等を軽くすることができた。また、浄化域での鉄粉の混合割合を均一にできるので、使用する全鉄粉量を減少させることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のオーガ掘削軸の一部断面を示す正面図である。
【図2】本発明のオーガ掘削軸における金属粉の噴射状態を示す説明図である。
【図3】多軸オーガによる掘削施工状態説明図である。
【図4】一般的なオーガ掘削軸端部の正面図及び平面図である。
【図5】従来公知のオーガ掘削軸における金属粉の噴射状態説明図である。
【図6】施工試験における測定位置の説明図である。
【図7】従来装置における鉄粉の拡散状態測定値を示す表である。
【図8】本発明装置における鉄粉の拡散状態測定値を示す表である。
【図9】非施工土壌における既存鉄粉の測定値を示す表である。
【符号の説明】
1 三軸掘削機
2,20 掘削軸
6,26 掘削爪
7,27 金属粉噴射孔
21 掘削軸先端部分
24 撹拌翼
25 スクリュー
29 伴回り防止プレート
A 金属粉噴射孔の開口方向

Claims (1)

  1. オーガ掘削軸先端部より金属粉を噴射させ、汚染原位置土と掘削、撹拌混合することにより汚染を浄化するためのオーガによる浄化装置であって、その掘削軸先端における金属粉の噴射を掘削爪の配列位置のスクリュー背面に沿って行うものであり、当該金属粉の噴射のための噴射孔の開口方向とスクリュー下端部に設けられた掘削爪配列方向との成す角度を45°以内としたことを特徴とする土壌又は地下水汚染の浄化装置。
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