JP4401307B2 - 成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は各種の成型ばね等に使用される加工性に優れた成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法に関する。
各種の成型バネに使用されるオーステナイト系ステンレス鋼板は加工硬化係数が高く、例えば代表的な組成のSUS304では10%圧延加工を行いHv300程度の硬さを示してもなお30%程度の引張伸びを有することができるが、添加元素のNiはそれ自体が高価であり、また価格安定性が低い。このため、代替可能な特性を発現できる、Ni添加量の少ないフェライト系ステンレス鋼板の利用が望まれている。
しかし、フェライト系ステンレス鋼板は加工硬化係数が低く、オーステナイト系ステンレス鋼と同等な強度を得ようとすれば、例えば代表的な組成のSUS430では圧延率70%でもHv280程度にとどまり、引張伸びは2%以下と低く、所望の延性を確保することができない。このため、フェライト系ステンレス鋼は、バネ材等の高強度と加工性が要求される分野での利用価値は低いものと一般に認識されていた。
これまでにもフェライト系ステンレス鋼の特性を向上させるために種々の提案がなされている。例えば、特許文献1は「異方性が小さく深絞り性の優れた軟質フェライト系ステンレス鋼」を提案している。同文献の第2頁には「C及びNを固定し、鋼に軟質性を与え結晶粒の粗大化や脆化を抑制して鋼の加工性特に本発明の深絞り性を向上せしめるのに有効な元素である」と記載され、Nb添加によるC,N量の低減によって加工性を得ているが、課題は素材の軟質化であり、深絞り用途の素材製造を目的としている。
また、特許文献2は「加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法」を提案している。同文献の段落0010には、「Nb系析出物を結晶方位の制御に利用することにより・・・(中略)加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供すること」と記載されているが、その最終焼鈍温度は900℃〜1100℃と高く(段落0029)、鋼板を軟質化した後に強加工することを目的としている。
このようにフェライト系ステンレス鋼は、低い加工硬化係数のために、ばね用途としての認識が低い。フェライト系ステンレス鋼をばね用途とする提案として、例えば特許文献3と特許文献4をあげることができる。
特許文献3は「高強度・高靭性フェライト系ステンレス鋼の製造方法」を提案している。同文献では添加元素にTiを用い、C,N,Tiの添加量、溶体化処理温度、冷間圧延率によって決められる管理値とバネ限界値の関係を述べているが、時効熱処理に用いる最終焼鈍温度範囲は400℃以下であり、同文献の3頁にある「時効温度は400℃を超えると過時効を起こし、固溶C,Nは炭窒化物を形成し転位を固着する効果が小さくなる」としている点で成型ばねに必要な延性を得ようとはしていない。
特許文献4は「ばね用フェライト系ステンレス鋼板とその製造方法」を提案している。同文献の第4頁には「軟化開始温度を高温側へ移動させ、製品ばねを550〜600℃で後熱処理した場合の特性劣化を抑制する効果」を述べているが、Nb,Tiの添加量は0.1質量%以下と小さい範囲に規定され、耐食性の付与のために必要とされる添加量((C+N)質量%8倍以上)を下回る設計とし、その代わりにバネ特性を得ようとしてSiを「高いバネ特性を実現するためには不可欠な元素」として積極的に固溶元素による強化を用いている。
このように、従来用いられているオーステナイト系ステンレス鋼に対し、遜色ないバネ特性(耐食性、強度、延性)を有する発明は未だなされていなかった。
特公昭51−29694号公報、第2頁 特開2002−194508号公報、段落0010,0029 特開平5−287375号公報 特開2001−123248号公報、第4頁
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、各種成型バネ材に使用されているオーステナイト系ステンレス鋼と比べてみても遜色ないばね特性を有し、Ni等の高価格の成分元素をほとんど用いない低コストの成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明では炭窒化物として消費される以上の充分なNbを加え、予歪によって過飽和となったC,Nを利用し、過時効域の熱処理で析出硬化を利用し、特別な固溶強化元素を必要とせず、高いバネ特性を得ることができるようにした。以下にその具体的手段を述べる。
本発明の成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板は、質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:16〜20%、Ni:0.60%以下、Nb:8×(C+N)%以上0.80%以下をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、70%の圧延率の冷間圧延に相当する加工歪を内部に蓄積させた後に550℃以上750℃以下の温度範囲で最終熱処理されることにより、600MPa以上の0.2%耐力σを有し、かつ、下式をともに満たす伸びε(%)を示すことを特徴とする。
ε≧−0.02×σ+22 …(1)
ε≧5 …(2)
本発明の成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:16〜20%、Ni:0.60%以下、Nb:8×(C+N)%以上0.80%以下をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるフェライト系ステンレス鋼に対して、70%の圧延率の冷間圧延に相当する加工歪を内部に蓄積させた後に、550〜750℃の温度範囲で最終熱処理し、0.2%耐力σが600MPa以上で、かつ、伸びε(%)が(1)式ε≧−0.02×σ+22および(2)式ε≧5の関係をともに満たす鋼板とすることを特徴とする。
圧延鋼材を延性が回復する過時効域で焼鈍すると、通常の場合はそれによって強度が低下しようとするが、本発明では、冷間圧延で所望の予歪(15%以上の冷間圧延に相当する加工歪)を付与したフェライト系ステンレス鋼に対して過時効域(550〜750℃)で最終熱処理を施すことにより、Nb炭化物およびNb炭窒化物の析出時効を積極的に起こさせ、これにより強度の低下を補償している。これにより所望のばね特性として600MPa以上の0.2%耐力σが得られる。このような0.2%耐力σは、図5に示す臨界特性線CL1より右方領域R2に存在する鋼材に与えられる。
一方、本発明では、諸特性のうちから延性に関して主要成分元素のC,N,Nb,Cr,Si,Mnの成分設計を行い、析出時効に伴う延性低下を最小限に抑え、所望の伸びεを確保して、ばねの成型加工を可能にしている。これにより所望のばね特性として上式(1)と(2)を共に満たす伸びεが得られる。このような伸びεは、図5に示す臨界特性線CL2,CL3より上方領域R2に存在する鋼材に与えられる。
本発明では、さらに、質量%で、Cu:0.80%以下およびMo:2.50%以下のうちの1種又は2種を含有させることができる。加工性を損なわない範囲でCu,Moを添加すると、強度および耐食性がさらに向上する。
以下に、本発明における各成分元素の作用、圧延条件および熱処理条件の限定理由についてそれぞれ説明する。
1)C:0.03質量%以下
一般的にはC含有量が多くなると耐食性、耐酸化性、加工性、靭性が低下する。本発明では、冷間圧延による予歪を利用して固溶Cを過飽和とし、その安定化元素であるNbを過時効域でCと反応させることにより析出硬化を生じさせる。過時効域でNb炭化物やNb炭窒化物を安定に析出させて時効析出硬化を起こさせるためには、不必要にC含有量を多くするとNb添加量を多くしなければならなくなるので、C含有量の上限値を通常操業で制御可能な低炭素レベルの0.03質量%に設定した。
2)N:0.03質量%以下
NはCと同様の侵入型元素であり、圧延予歪によって過飽和となったNがNbと炭窒化物を形成して析出硬化に寄与する。よって、本発明の所望の効果を得るためには、不必要にN含有量を多くするとNb添加量を多くしなければならなくなるので、N含有量の上限値を通常操業で制御可能な低Nレベルの0.03質量%に設定した。
3)Si:1.00質量%以下
Siは素材強度の向上に寄与するとともに高温酸化特性の改善に有効な元素である。しかし、1.00質量%を超えてSiを過剰に添加すると加工性及び靱性が劣化する。よって、Si含有量の上限値を1.00質量%に設定した。
ちなみに、特許文献4の鋼では、ばねに必要とされる特性としてビッカース硬さHv310以上を得るために、Siを高いバネ特性を実現するために不可欠な元素として積極的に添加している。
4)Mn:1.00質量%以下
Mnは、高温酸化特性のなかでも特にスケール剥離性の改善に有効な元素であるが、Mn量を多くしても本発明の析出硬化には寄与しないので、通常フェライト系ステンレス鋼に含有される程度のレベルとして1.00質量%を上限とした。
5)Cr:16〜20質量%
Crは、フェライト相を安定させ、耐食性および耐熱性を向上させる元素である。所望の耐食性を得るためにはCr量を少なくとも16質量%添加する必要がある。しかし、Crを多量に含有すると原料コストの増大を招くばかりでなく、20質量%を超えて過剰に添加するとかえって加工性が阻害されるため20質量%を上限とした。
6)Ni:0.6質量%以下
Niは素材強度の向上や耐食性に寄与する元素であるが、高価であり、価格安定性が低いのでできるだけ添加しないほうが望ましい。本発明ではNiの添加効果を期待していないので、通常フェライト系ステンレス鋼に含有を許容されるNi量として日本工業規格(JIS)に規定されている0.6質量%を上限とした。
7)Nb:8×(C+N)質量%以上0.8質量%以下
Nbは、炭窒化物等の形成元素として炭素および窒素を固定させ、Cr欠乏層の発生による耐食性劣化を防止するため、生成した炭窒化物によって粒界移動を抑制し、耐熱向上性を狙うために添加される。Nbは、C,Nを固定し、Cr欠乏層の発生による耐食性劣化を防止するためには最低でも、C,N量により(C+N)質量%の8倍のNbを添加する必要があり、固溶Nbの効果(軟化温度上昇、析出硬化)を狙うにはそれ以上のNbを含有する必要があることから、その下限は8×(C+N)質量%より多いものとし、その上限は経済的理由と延性低下の抑制から0.80%とした。
本発明鋼では炭窒化物として消費される以上の充分なNb量を添加し、予歪によって過飽和となったC,Nを利用し、過時効域の熱処理にて析出硬化にて高いバネ特性を得るようにしている。C,Nを析出物として固定しているNbは、熱間圧延後から最終焼鈍までの間においてNb(C,N)の形態で存在し、その量および析出状態がほとんど変化しない。
ちなみに特許文献1の第2頁には「Nbは、C及びNを固定し、鋼に軟質性を与え結晶粒の粗大化や脆化を抑制して鋼の加工性特に本発明の深絞り性を向上せしめるのに有効な元素である」と記載され、Nb添加によるC,N量の低減によって加工性を得ているが、課題は素材の軟質化であり、深絞り用途の素材製造を目的としている。
また、ちなみに特許文献4の第4頁には「軟化開始温度を高温側へ移動させ、製品ばねを550〜600℃で後熱処理した場合の特性劣化を抑制する効果」と記載されているが、Nb添加量が0.1質量%以下と小さい範囲に規定されている。さらに、特許文献4の第4頁に示された成分範囲によれば、(C+N)質量%は0.04〜0.24%となっており、耐食性の付与のために必要とされるNbの添加量は(C+N)質量%8〜16倍以上必要とすれば0.32〜3.84%となるが、Nbの添加範囲はそれを下回る設計となっている。
8)Cu:0.80質量%以下
Cuは耐食性と強度の向上に有効な元素であり、抗菌性付与にも有効であることから、使用環境に応じて添加する。しかし、0.80質量%を超えてCuを過剰に添加すると熱間加工性を低下させ、加工性を劣化させるため、0.80質量%を上限とした。
9)Mo:2.50質量%以下
Moは耐食性と強度の向上に有効な元素であり、使用環境に応じて添加する。しかし、2.50質量%を超えてMoを過剰に添加すると熱間加工性を低下させ、加工性を劣化させるため、2.50質量%を上限とした。
10)その他の添加成分
本発明が対象とするフェライト系ステンレス鋼では、上記以外の他の合金元素に関しては特段規定されるものではなく、必要に応じて適宜添加される。この種の添加成分として、熱間加工性および靭性の改善に有効な元素としてCa,Mg,Bを0.05質量%以下の微量レベルで添加することができる。
11)不可避不純物
P,S,Oは、強度や加工性を劣化させるため汎用の成分分析機の検出限界に近い程度まで可能な限り低く抑えるほうが望ましい。しかし、製鋼工程において不可避的に不純物として混入する場合は、Pを0.04質量%以下、Sを0.03質量%以下、Oを0.02質量%以下にそれぞれ規制して加工性の劣化を防ぐようにする。
12)圧延率:15%以上の圧延率の冷間圧延に相当する加工歪
Nb炭化物及びNb炭窒化物の析出硬化によるばね特性の向上効果を狙う場合には、最低限15%以上の冷間圧延に相当する加工歪を鋼板の内部に蓄積させる必要がある。加工歪が15%を下回るとNb炭化物、Nb炭窒化物の析出量が不十分になり、ばね特性(引張強度、0.2%耐力、伸び、硬さ)が所望レベルまで向上しないからである。
ここで「15%以上の冷間圧延に相当する加工歪」とは、再結晶温度より低い温度領域にて、固溶CをNbと結合可能な過飽和Cとする格子歪を加える加工歪のことをいう。冷間圧延にて15%未満の圧延率ではその格子歪を与えることができないからである。成型ばね材として使用する場合、曲げ加工等の成型工程が付加されることが多々あり、加工部分は形状的に応力が集中し、その部位でばね特性を補償することになる。仮に15%未満の圧延率で作製した鋼板であっても、最終的に曲げ加工を行うことでさらに歪を与え、その後に過時効域で熱処理を行うことで同等な特性を得ることも可能であるので、本発明では「…に相当する」という表現としている。なお、圧延率の上限は、成分毎の加工限界と製造コストの上昇によるため本発明では特定しない。
13)最終熱処理温度:550℃以上750℃以下
過時効温度域を利用し、成型ばね材として必要な加工性を保有させるため、550〜750℃(さらに好ましくは600〜700℃)の温度域で最終焼鈍を行う。550〜750℃の温度範囲は、歪時効温度よりも高く、加工歪を完全に除去し得る再結晶温度よりも低い温度範囲である。
ちなみに特許文献2の段落0010には、「Nb系析出物を結晶方位の制御に利用することにより・・・(中略)加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼板を提供すること」と記載されているが、その最終焼鈍温度は900℃〜1100℃と高く(段落0029)、鋼板を軟質化した後に強加工することを目的としている。
また、ちなみに特許文献3では時効熱処理に用いる最終焼鈍温度範囲は400℃以下であり、同文献の3頁にある「時効温度は400℃を超えると過時効を起こし、固溶C、Nは炭窒化物を形成し転位を固着する効果が小さくなる」としている点で本発明鋼とは異なる。
本発明鋼によれば、特定の予歪を与えたNb含有フェライト系ステンレス鋼に対して特定の過時効域の温度で最終熱処理を行うことにより、成型バネ材として充分な強度と加工性を有するフェライト系ステンレス鋼が提供される。また、本発明によれば、安定生産可能なフェライト系ステンレス鋼の製造方法が提供される。
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付の図面を参照して説明する。
表1に示す組成の各種フェライト系ステンレス鋼を真空溶解炉でそれぞれ溶製し、厚みが約50mmのスラブに切り出し、1200℃に加熱した後、板厚3mmまで熱間圧延した。さらに、750〜920℃の軟化焼鈍と冷間圧延を繰り返し、1mm厚の冷間圧延焼鈍材を製作した。
Figure 0004401307
(実施例1)
表1の実施例1に示す化学組成の鋼板を用いて、30〜70%圧延率の冷間圧延を行い、各温度にて熱処理を行った後、素材硬さ測定及び引張試験にて0.2%耐力σと伸びεをそれぞれ評価した(図1、図2)。
図1は、横軸に最終熱処理の加熱温度(℃)をとり、縦軸に各種サンプルのビッカース硬さHv(荷重1kg)をとって両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。図中にて特性線A1(白丸)は圧延率30%、特性線A2(白三角)は圧延率50%、特性線A3(白四角)は圧延率70%の結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、素材硬度は圧延率によって変化し、50%以上の圧延率では600℃中心の温度領域にて炭窒化物析出により圧延後の硬さを上回るほど時効熱処理の効果が顕著に表れ、最大でHv320の硬さを得た。圧延率によって軟化開始温度は若干変化するものの、750℃まで圧延ままの硬度を保持した。
図2は、横軸に最終熱処理の加熱温度(℃)をとり、縦軸に各種サンプルの引張強度(MPa)、0.2%耐力σ(MPa)、伸びε(%)およびビッカース硬さHv(荷重1kg)をとって、それぞれの相関について調べた結果を示す特性線図である。圧延率70%の条件とした。図中にて特性線Bは引張強度、特性線Cは0.2%耐力σ、特性線Dはビッカース硬さHv、特性線Eは伸びεの結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、70%圧延材にて延性は加熱温度とともに回復し、550℃にて6%を上回り、延性、硬度とも安定する温度範囲が550〜700℃であることを確認し、素材硬度Hv290〜320、伸び6〜8%の材料を得た。550℃より低い温度では素材硬度の減少は無いが延性の回復が充分ではなく、750℃より高い温度では延性の回復を示すが、軟化速度が著しく、安定品質を得る量産条件として適さなくなる。
実施例2及び3の鋼種においても実施例1と同様の確認を行ったところ、安定した品質を得られる最終熱処理の加熱条件が550〜750℃の温度範囲にあり、そのときの機械的特性値(0.2%耐力、伸び)を図5中に黒丸プロットで示した。これに対して、組成が本発明の範囲に入っているものであっても製造条件(最終熱処理温度400〜550℃)が本発明の範囲から外れているものを比較例として図5中に白丸プロットで示した。また、圧延のままの機械的特性は従来例として図5中に白四角プロットで示した。
図5は、横軸に0.2%耐力σ(MPa)をとり、縦軸に伸びε(%)をとって、各種鋼板の0.2%耐力σと伸びεを調べた結果を示す特性図である。図中の黒丸は実施例(組成が本発明範囲内、最終熱処理温度が550〜750℃)、白丸は比較例(組成が本発明範囲内、最終熱処理温度が400〜550℃)、白四角は従来例(組成が本発明範囲内、圧延まま)の結果をそれぞれ示した。図中に引いた3本の線CL1,CL2,CL3は本発明鋼を従来鋼から区別するための区画線である。第1の臨界区画線CL1は0.2%耐力σが600MPaに対応している。第2の臨界区画線CL2は上記の式(1)に対応している。第3の臨界区画線CL3は上記の式(2)に対応している。図中の領域R1が従来例を含む比較例に、領域R2が本発明の実施例にそれぞれ該当する。
(比較例)
表1の比較例1に示す化学組成の熱延鋼板を用い、30〜70%圧延率の冷間圧延を行い、各温度にて熱処理を行った後、素材硬さ測定及び引張試験にて0.2%耐力σと伸びεをそれぞれ評価した(図3、図4)。
図3は、横軸に最終熱処理の加熱温度(℃)をとり、縦軸に各種サンプルのビッカース硬さHv(荷重1kg)をとって両者の相関について調べた結果を示す特性線図である。図中にて特性線F1(白丸)は圧延率30%、特性線F2(白三角)は圧延率50%、特性線F3(白四角)は圧延率70%の結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、素材硬度は600℃付近から素材硬度が急激に変化し、圧延率によって軟化開始温度は若干変化するものの、全ての圧延率で700℃にてほぼ完全に軟化が終了した。
図4は、横軸に最終熱処理の加熱温度(℃)をとり、縦軸に各種サンプルの引張強度(MPa)、0.2%耐力σ(MPa)、伸びε(%)およびビッカース硬さHv(荷重1kg)をとって、それぞれの相関について調べた結果を示す特性線図である。圧延率70%の条件とした。図中にて特性線Mは引張強度、特性線Nは0.2%耐力σ、特性線Pはビッカース硬さHv、特性線Qは伸びεの結果をそれぞれ示す。図から明らかなように、70%圧延材にて延性は加熱温度とともに回復していくが軟化温度も顕著であり、500〜650℃の150℃の温度差で0.2%耐力は100MPa以上減少してしまい、Nb添加した実施例鋼を用いた実施例1に比べて品質安定性を得る加熱条件は400〜600℃までの温度範囲であった。
比較例2の鋼種において比較例1と同様の確認を行い、安定した品質を得られる加熱条件は600℃までであり、その時の機械的特性値(0.2%耐力σ、伸びε)及び圧延のままの機械的特性を図5中に白四角プロットで示した。
本発明の成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板は、各種の成型ばね等に使用される。
Nb添加フェライト系ステンレス鋼板の熱処理温度と熱処理後の素材硬さとの関係を示す特性線図。 Nb添加フェライト系ステンレス鋼板の熱処理温度と熱処理後の引張り特性等との関係を示す特性線図。 Nb非添加フェライト系ステンレス鋼板の熱処理温度と熱処理後の素材硬さとの関係を示す特性線図。 Nb非添加フェライト系ステンレス鋼板の熱処理温度と熱処理後の引張り特性等との関係を示す特性線図。 本発明と従来技術とを併記した特性プロット図。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:16〜20%、Ni:0.60%以下、Nb:8×(C+N)%以上0.80%以下をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であって、70%の圧延率の冷間圧延に相当する加工歪を内部に蓄積させた後に550℃以上750℃以下の温度範囲で最終熱処理されることにより、600MPa以上の0.2%耐力σを有し、かつ、式ε≧−0.02×σ+22および式ε≧5の関係をともに満たす伸びε(%)を示すことを特徴とする成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板。
  2. さらに、質量%で、Cu:0.80%以下およびMo:2.50%以下のうちの1種又は2種を含むことを特徴とする請求項1記載の成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板。
  3. 質量%で、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:1.00%以下、Mn:1.00%以下、Cr:16〜20%、Ni:0.60%以下、Nb:8×(C+N)%以上0.80%以下をそれぞれ含有し、残部がFe及び不可避不純物からなるフェライト系ステンレス鋼に対して、70%の圧延率の冷間圧延に相当する加工歪を内部に蓄積させた後に、550〜750℃の温度範囲で最終熱処理し、0.2%耐力σが600MPa以上で、かつ、伸びε(%)が式ε≧−0.02×σ+22および式ε≧5の関係をともに満たす鋼板とすることを特徴とする成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
  4. さらに、質量%で、Cu:0.80%以下およびMo:2.50%以下のうちの1種又は2種を含むことを特徴とする請求項3記載の成型ばね用フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
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