JPH11241145A - 耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents
耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法Info
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- JPH11241145A JPH11241145A JP4670998A JP4670998A JPH11241145A JP H11241145 A JPH11241145 A JP H11241145A JP 4670998 A JP4670998 A JP 4670998A JP 4670998 A JP4670998 A JP 4670998A JP H11241145 A JPH11241145 A JP H11241145A
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Abstract
らびに耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステン
レス鋼とその製造方法を提案すること。 【解決手段】C:0.03〜0.20wt%、Si:0.1 〜2.0 wt
%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以下、Cr:14〜20wt
%、N:0.20〜0.50wt%、Mo, Wのうちの少なくとも1
種をMo:0.5 〜6.0 wt%、W:0.5 〜6.0 wt%の範囲内
で含有し、Ni当量が14.0以上であることを特徴とする耐
高温へたり性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼、
および最終冷間圧延で圧下率20%以上の圧延を行い、そ
の後 300〜600 ℃の温度で時効処理を施すその製造方
法。
Description
優れるオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方
法に関し、詳しくは、自動車やオートバイの高温燃焼ガ
スを外部に排出する部分、例えば、エキゾーストマニホ
ールドとエキゾーストパイプの合わせ面の高温用ガスケ
ットなどとして好適に用いられるオーステナイト系ステ
ンレス鋼およびその製造方法についての提案である。
スベストが使用されてきたが、このアスベストが環境に
及ぼす悪影響が指摘されたのちは、これに代わるものと
して、主としてステンレス鋼製のメタルガスケットが賞
用されてきた。
しては、SUS-301 系のものが多く、冷間加工によってオ
ーステナイト組織をマルテンサイト相に加工誘起変態さ
せることにより、高強度化することでバネ性を付与した
ものである。このようなステンレス鋼は、シリンダーヘ
ッド部のガスケット用素材として使用され、現在でもメ
タルガスケットの主流である。
るシリンダーヘッド部というのは、エンジン冷却水の循
環により、あまり高温とはならず、最高温度でも200 ℃
程度である。従って、この部分に用いられるガスケット
については、エンジンの爆発燃焼により大きな繰り返し
応力を受けるため、むしろ疲労特性に対する備えが必要
であり、その特性の向上が求められている。
めに用いられるエキゾーストパイプやエキゾーストマニ
ホールドなどの排気系に用いられるガスケットについて
は、その燃焼ガスの影響により常に 500〜600 ℃の高温
に曝される。従って、この部分のガスケットには、疲労
強度よりはむしろ、高温での使用に耐え得るような高温
強度特性が必要になってくる。そのため、このような個
所に使うガスケット材料としては、従来、アスベストな
どの使用が不可欠とされてきたが、前述した理由により
メタルガスケットに変更する必要がでてきている。
は、特開平7−3407号公報では、従来のSUS-301 系ステ
ンレス鋼に比べてN, Cを多量に添加し、Alを所定量含
有させることで高温での特性を改善した材料を提案して
いる。しかしながら、近年、エンジンの高性能化に対応
し、かかるステンレス鋼に対して耐熱性のさらなる向上
が求められている。加えて、現在のガスケット用ステン
レス鋼は、有価金属であるNiを8 〜16wt%も含有してい
るため高価であることから、コストダウンを図る必要も
ある。
加工に伴なう加工誘起変態によってマルテンサイト相を
析出させたステンレス鋼を提案している。しかし、この
加工誘起マルテンサイト相は、500 〜600 ℃の温度域に
おいてマルテンサイト相からオーステナイト相への逆変
態が生じて軟化し、急激にへたりが生じるという問題が
あった。即ち、高温での組織の安定性と耐久性に不安が
あった。
性を改善するためには、Nの添加が有効であることも知
られている。例えば、特開平7−3407号公報ではNを積
極的に添加したステンレス鋼を提案している。それは、
Nを多量に添加すると、オーステナイト相の安定度が高
くなり、加工誘起マルテンサイト相が生じなくなり、さ
らに、高温にさらされる時間が短い場合に高温強度の向
上が期待できるからである。しかし、冷間加工を施し、
バネ性を付与した材料を高温に長時間(400hr〜) 保持し
た場合、回復,再結晶,および粗大なCr窒化物が多量析
出して急激に軟化し、そのためにへたりが生じてしまう
という問題があった。冷間圧延した材料を高温で使用す
る場合、加工誘起マルテンサイト相を含まなくても、回
復,再結晶が起きると歪みが解放され、バネ性がなくな
ってしまい、これに対する備えをする必要があった。ま
た、Cr窒化物の析出に関しても、冷間加工した材料で
は、析出速度が、焼鈍状態に比べて2桁程度大きくなる
ことが知られており、これに対する配慮もなされていな
かった。以上の理由より、N添加による高温強度の向上
にも限界があり、冷間加工した状態で高温で使用される
ガスケット材料としては、不十分であった。
ならびに耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステ
ンレス鋼を提案することにある。本発明の他の目的は、
バネ性およびシール性に優れるオーステナイト系ステン
レス鋼を提案することにある。本発明の他の目的は、高
温に晒される排気系に用いられて有益な高温用ガスケッ
ト材料を提案することにある。また、本発明のさらに他
の目的は、上掲の目的に適うオーステナイト系ステンレ
ス鋼を有利に製造する方法を開発, 提案することにあ
る。
えている上述した問題点を解決し、上掲の目的を実現す
るために開発したものであり、その要旨とするところ
は、C:0.03〜0.20wt%、Si:0.1 〜2.0 wt%、Mn:10
〜25wt%、Ni:8 wt%以下、Cr:14〜20wt%、N:0.20
〜0.50wt%、Mo, Wのうちの少なくとも1種をMo:0.5
〜6.0 wt%、W:0.5 〜6.0 wt%の範囲内で含有し、残
部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、オ
ーステナイト安定指数である下記Ni当量; Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N−0.077Cr −0.5Si −
0.14(Mo+W) が14.0以上を満足することを特徴とする耐高温へたり性
に優れるオーステナイト系ステンレス鋼である。
i:0.1 〜2.0 wt%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以
下、Cr:14〜20wt%、N:0.20〜0.50wt%、B:0.001
〜0.05wt%、Mo, Wのうちの少なくとも1種をMo:0.5
〜6.0 wt%、W:0.5 〜6.0 wt%の範囲内で含有し、残
部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、オ
ーステナイト安定指数である下記Ni当量; Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N+10B−0.077Cr −0.5S
i −0.14(Mo+W) が14.0以上を満足することを特徴とする耐高温へたり性
に優れるオーステナイト系ステンレス鋼を提案する。
i:0.1 〜2.0 wt%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以
下、Cr:14〜20wt%、N:0.20〜0.50wt%、Mo, Wのう
ちの少なくとも1種をMo:0.5 〜6.0 wt%、W:0.5 〜
6.0 wt%の範囲内で含有し、V,Ti, Nb+Taのうちの1
種または2種以上を、V:0.03〜1.0 wt%、Ti:0.03〜
1.0 wt%、Nb+Ta:0.03〜1.0 wt%の範囲内で含有し、
残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
かつ下記Ni当量; Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N−0.077Cr −0.5Si −
0.14(Mo+W)−1.5 ( Ti+V+Nb+Ta) が14.0以上であることを特徴とする耐高温へたり性に優
れるオーステナイト系ステンレス鋼を提案する。
i:0.1 〜2.0 wt%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以
下、Cr:14〜20wt%、N:0.20〜0.50wt%、B:0.001
〜0.05wt%、Mo, Wのうちの少なくとも1種をMo:0.5
〜6.0 wt%、W:0.5 〜6.0 wt%の範囲内で含有し、
V, Ti, Nb+Taのうちの1種または2種以上を、V:0.
03〜1.0 wt%、Ti:0.03〜1.0 wt%、Nb+Ta:0.03〜1.
0 wt%の範囲内で含有し、残部Feおよび不可避的不純物
からなる成分組成を有し、かつ下記Ni当量 Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N+10B−0.077Cr −0.
5Si −0.14(Mo+W)−1.5 ( Ti+V+Nb+Ta) が14.0以上であることを特徴とする耐高温へたり性に優
れるオーステナイト系ステンレス鋼である。
うち1種または2種以上を添加する理由は、これらの添
加により結晶粒が微細化し、ガスケット成形時の耐割れ
性を向上させることができるからである。
ト系ステンレス鋼は、基本的に、上述した成分組成とNi
当量を有する鋼素材を、常法に従って溶製し、鋳造し、
熱間圧延、冷間粗圧延後、焼鈍したのち、圧下率が20wt
%以上の最終冷間圧延を施し、さらにその後、300 〜60
0 ℃の温度で時効処理を施すことによって製造すること
ができる。
ーステナイト組織にすることができる高マンガンオース
テナイト系ステンレス鋼に着目し、研究を行った。その
結果、オーステナイト安定指数であるNi当量を上記式を
満足するように調整した場合、オーステナイト相が安定
となり、冷間加工により加工誘起マルテンサイト相が誘
起されないことが判った。このため、冷間加工後の加工
誘起マルテンサイト相がオーステナイト相へ逆変態する
という現象はなく、これによる急激なへたり現象は、完
全に防止することができる。
サイト相がオーステナイト相へ逆変態する現象だけでな
く、冷間加工材の回復再結晶によっても生じる。そこ
で、これに対する対策を高マンガン鋼をベースとする合
金について詳細に検討した。その結果、この種の鋼にM
o, Wを添加すると、耐熱性 (高温強度、高温へたり性)
が飛躍的に向上することを見いだした。即ち、冷間圧延
を施した材料は、500 〜600 ℃の温度にさらされると、
回復, 再結晶し、へたりが生じてしまうが、高マンガン
オーステナイトステンレス鋼にMo, Wを添加すると、そ
の回復, 再結晶の温度を高温側にシフトさせることがで
き、これにより耐熱性が向上することをつきとめた。こ
の点、Mo, Wの添加の一般的な作用は、これらの元素を
マトリックス中に固溶させて強化する、いわゆる固溶強
化による耐熱性の改善が一般的であるのに対し、本発明
の場合、回復, 再結晶温度を変えることで耐熱性を改善
するという点で、全く異なる考え方を利用している。
ステンレス鋼の冷間加工材のCr窒化物析出におよぼす添
加元素の影響についても検討した。その結果、この鋼に
Bを添加した場合には、Cr窒化物の析出を著しく長時間
側(1000hr 以上) にシフトさせ得ることをつきとめた。
Cr窒化物の析出による軟化は、前記の加工誘起マルテン
サイト相の逆変態による軟化,冷間加工材の回復,再結
晶による軟化ほど大きくはないが、析出がはじまると、
継続的に緩やかに軟化させる。これを防止することで、
長時間の安定的使用を確保することができる。Cr窒化物
の析出に対するBの効果は、NiをMnに置換したことで、
積層欠陥エネルギーが著しく低下し、これによってCr窒
化物の優先析出位置であった転位の性格が大きく変わる
こと、即ち、拡散速度の大きなBが前記析出位置に優先
的に拡散し、Cr窒化物の析出を抑制するためと考えられ
る。
分組成を上記のように限定した理由について説明する。 C:0.03〜0.20wt% Cは、マトリックスを固溶強化するとともに、オーステ
ナイト組織を安定にし、さらに、炭窒化物を形成して高
温でのへたり性を改善する元素である。このような作用
が得られるためには、少なくとも0.03wt%の添加が必要
である。一方、このCを多量に含有させた場合、耐食性
が著しく劣化するため、上限は0.20wt%とする。より好
ましい範囲は、0.05〜0.15wt%である。
がある。ただし、あまり多く含有させるとオーステナイ
ト相を不安定にするため、上限は2.0 wt%とする。より
好ましい範囲は 0.5〜1.5 wt%である。
る。このため、少なくとも10wt%は必要である。しか
し、あまり過剰に含有すると、溶製、熱間加工が困難に
なるので上限は25wt%とする。より好ましは範囲は、10
〜20wt%である。
加工性の点からも重要で必須の成分である。しかしなが
ら、これを多量に添加すると高価となることに加え,冷
間加工後の硬さを小さくする。よって、8wt%以下とす
る。より好ましい上限は5wt%である。
であり、少なくとも14wt%は必要である。しかし、これ
をあまり多く含有させるとオーステナイト相を不安定に
するため、上限を20wt%とする。より好ましい範囲は、
15〜18wt%である。
用、加工硬化作用が高く、高強度、高硬度を得るには必
須の元素である。しかも、耐高温へたり性の改善にも有
効に作用するので、少なくとも0.20wt%の含有は必要で
ある。しかし、このNもあまり過剰に添加すると鋼塊に
気泡を多く含むようになり、製造が困難になる。従っ
て、Nは0.50wt%を上限とする。より好ましくは、N:
0.25〜0.40wt%の範囲である。
出を抑制する元素である。このBの添加により、高温強
度、耐高温へたり性の低下を抑制でき、高温での特性を
格段に向上させる。そのためには、少なくとも0.001 wt
%の添加は必要である。しかし、0.05wt%を超えて添加
すると、耐食性を劣化させるため、上限は0.05wt%とす
る。より好ましい上限は、B:0.01wt%である。
へたり性を積極的に改善する元素である。そのために
は、少なくとも0.5 wt%の添加は必要である。しかし、
これらMo, Wをあまり過剰に添加するとオーステナイト
相を不安定にするため、上限は6.0 wt%とする。より好
ましいMo, Wの範囲は 1.0〜3.5 wt%である。
する元素である。これらの元素の作用により、ガスケッ
ト等に加工する時に発生する割れを効果的に抑制するこ
とができる。そのためには、これらの元素の少なくとも
1つを、最低0.03wt%添加することが必要である。しか
し、0.1 wt%を超えて添加すると、耐高温へたり性を向
上させるC, N量を減少させてしまうので、0.1 wt%を
上限として添加する。より好ましくは、V, Ti, Nb+T
a:0.03〜0.07wt%の範囲内で添加する。
設計をすることに加え、さらに冷間圧延後であっても鋼
組織がオーステナイト相を示すようにするためにNi当量
を限定する。即ち、添加成分の有無によつて下記(1),
(2),(3) または(4) 式のNi当量が、それぞれ14.0以上を
示すようにする。
テナイト組織の安定性を表す指数であり、この値が14.0
以上であれば、60%の冷間圧延を施してもオーステナイ
ト組織が維持され、マルテンサイト組織の逆変態による
へたりを防止できる。本発明にかかる高マンガンオース
テナイト系ステンレス鋼は、常温使用用途材としても適
用が可能であるが、300 ℃以上、特に、300 〜750 ℃と
いう高温使用用途材として好適に用いられる。また、よ
り好ましくは 300〜600 ℃の使用温度域に用いられる材
料としてより好適である。
テンレス鋼の製造方法について説明する。本発明にかか
る製造方法は、上掲のように成分組成を調整したステン
レス鋼素材を、常法に従って溶製し、鋳造し、熱間圧延
し、そして冷間粗圧延ののち焼鈍し、その後、20%以
上、好ましくは20〜60%、より好ましくは、35〜60%の
圧下率で最終冷間圧延を施した後、300 〜600 ℃, 好ま
しくは400℃〜600℃の範囲で時効処理を施すことにあ
る。
以上, より好ましくは45%に限定する理由は、鋼素材に
バネ性を付与するために必要である。一方、60%を超え
るような大きな冷間圧下率では、冷間圧延機の能力を越
えることが懸念される。このため、最終冷間圧下率は60
%が上限で、35〜60%の範囲が最適である。
間圧延を施したものについて、さらに時効処理を施す
と、室温での強度が向上し、より高いシール性が得られ
るばかりではなく、時効処理を施していない材料と比較
すると、使用開始直後のへたりを小さくする効果があ
る。この時効処理について、温度を 300〜600 ℃に限定
した理由は、300 ℃以下の温度では、室温の強度がほと
んど向上せず、600 ℃以上の温度では、室温の強度は逆
に低下してしまうためである。また、時効処理の時間
は、1min以上が適当で、用途に合わせて上記効果を確実
に具現化するために400hr 以下から適当に選択すること
ができる。
較鋼6〜10をそれぞれ高周波大気誘導炉にて溶解し10kg
の鋼塊とし、これを鍛造し、熱間圧延し、冷間粗圧延
し、そして熱処理を施すことにより0.6 mmの板を得た。
これに圧下率40%の最終冷間圧延を施し、これを供試材
とした。なお、本発明鋼1〜6についてはさらに、450
℃×2minの条件で時効処理を施した。各供試材につい
て、図1に示すようなビード部を有し,圧縮率90%で圧
縮した状態でビード高さが1.0mm となるような試験片を
作製した。これを500 ℃、600℃の加熱炉中に投入し、1
00 、200 、400 時間保持した後、炉から取り出し、へ
たりの大きさ (初期とのビード高さの違い) を調べた。
その結果を表2にまとめて示した。なお、この表2は、
各条件に保持した後のビード高さ (へたり性) (mm)の測
定結果 (ただし、初期高さ1.0 mm) を示したものであ
る。
スケット材として使用されてきた比較鋼7(SUS 301) で
は、500 ℃でも保持時間が長くなると加工誘起マルテン
サイト相の逆変態が生じて軟化し、へたりが生じた。高
温強度を向上さる目的でMo,Nbを添加した同8(Ni当量
はずれ) 、NiをMnに置換し安価とした同11(Ni当量は
ずれ) でも、オーステナイト安定度が低いため加工誘起
マルテンサイト相の逆変態が生じ軟化し、へたりが生じ
た。同11のように、たとえ高マンガンオーステナイト
系ステンレス鋼であっても、成分組成, Ni当量が不適切
だと加工誘起マルテンサイト相が生じ、これの逆変態に
よりへたりが生じてしまうことがわかった。さらに、オ
ーステナイト安定度を考慮し、加工誘起マルテンサイト
相が生じていない比較鋼9 (B添加) や、WあるいはMo
を含有していない比較鋼10では、600 ℃に保持する
と、回復,再結晶に起因するへたりが生じてしまうとい
う結果となった。
マンガンオーステナイト系ステンレス鋼では、オーステ
ナイト安定度を考慮することで加工誘起マルテンサイト
相の逆変態を、WあるいはMoのうち少なくとも1種を含
有することで回復,再結晶を防止し、これらに起因する
へたりを抑制できた。加えて、さらにBを含有している
ものについてはCr窒化物の析出が抑制され、さらにへた
りを小さくできた。このため600 ℃で400 時間もの長い
時間保持してもへたりが5%以下に抑えられ、十分な耐
高温へたり性を有し、高温で使用するメタルガスケット
材としては最適であることがわかった。
オーステナイト系ステンレス鋼は、高温強度と耐高温へ
たり性に優れるので、高温ガスケット用材料として好適
である。とくに冷間加工によりバネ性を付与したのち、
時効処理することにより、高温で長時間使用してもへた
りが生じることなく、いわゆるバネ性, シール性を維持
したまま使用することができる。そのために、自動車や
オートバイの高温燃焼ガスを外部に排出する部分、例え
ば、エキゾーストマニホールドとエキゾーストパイプの
合わせ面に用いられる高温ガスケット用材料として有用
である。また、従来のFe−Ni−Crオーステナイトステン
レス鋼に比べると、高温での使用によく耐え、高価なNi
を使用しないので、安価である。
Claims (6)
- 【請求項1】C:0.03〜0.20wt%、Si:0.1 〜2.0 wt
%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以下、Cr:14〜20wt
%、N:0.20〜0.50wt%、Mo, Wのうちの少なくとも1
種をMo:0.5 〜6.0 wt%、W:0.5 〜6.0 wt%の範囲内
で含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組
成を有し、かつ下記Ni当量が14.0以上であることを特徴
とする耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステン
レス鋼。 Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N−0.077Cr −0.5Si −
0.14(Mo+W) - 【請求項2】C:0.03〜0.20wt%、Si:0.1 〜2.0 wt
%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以下、Cr:14〜20wt
%、N:0.20〜0.50wt%、B:0.001 〜0.05wt%、Mo,
Wのうちの少なくとも1種をMo:0.5 〜6.0 wt%、W:
0.5 〜6.0 wt%の範囲内で含有し、残部Feおよび不可避
的不純物からなる成分組成を有し、かつ下記Ni当量が1
4.0以上であることを特徴とする耐高温へたり性に優れ
るオーステナイト系ステンレス鋼。 Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N+10B−0.077Cr −0.
5Si −0.14(Mo+W) - 【請求項3】C:0.03〜0.20wt%、Si:0.1 〜2.0 wt
%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以下、Cr:14〜20wt
%、N:0.20〜0.50wt%、Mo, Wのうちの少なくとも1
種をMo:0.5 〜6.0 wt%、W:0.5 〜6.0 wt%の範囲内
で含有し、V, Ti, Nb+Taのうちの1種または2種以上
を、V:0.03〜1.0 wt%、Ti:0.03〜1.0 wt%、Nb+T
a:0.03〜1.0 wt%の範囲内で含有し、残部Feおよび不
可避的不純物からなる成分組成を有し、かつ下記Ni当量
が14.0以上であることを特徴とする耐高温へたり性に優
れるオーステナイト系ステンレス鋼。 Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N−0.077Cr −0.5Si −
0.14(Mo+W)−1.5 ( Ti+V+Nb+Ta) - 【請求項4】C:0.03〜0.20wt%、Si:0.1 〜2.0 wt
%、Mn:10〜25wt%、Ni:8 wt%以下、Cr:14〜20wt
%、N:0.20〜0.50wt%、B:0.001 〜0.05wt%、Mo,
Wのうちの少なくとも1種をMo:0.5 〜6.0 wt%、W:
0.5 〜6.0 wt%の範囲内で含有し、V, Ti, Nb+Taのう
ちの1種または2種以上を、V:0.03〜1.0 wt%、Ti:
0.03〜1.0 wt%、Nb+Ta:0.03〜1.0 wt%の範囲内で含
有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を
有し、かつ下記Ni当量が14.0以上であることを特徴とす
る耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステンレス
鋼。 Ni当量=Ni+0.38Mn+22C+13N+10B−0.077Cr −0.
5Si −0.14(Mo+W)−1.5 ( Ti+V+Nb+Ta) - 【請求項5】高温用ガスケットの素材として用いられる
ことを特徴とする請求項1、2、3または4のいずれか
1項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。 - 【請求項6】請求項1〜4のいずれか少なくとも1項に
記載された成分組成とNi当量を有するオーステナイト系
ステンレス鋼素材を常法に従って溶製し、鋳造し、熱間
圧延, 冷間粗圧延後、焼鈍したのち、最終冷間圧延で圧
下率20%以上の圧延を行い、その後 300〜600 ℃の温度
で時効処理を施すことを特徴とするオーステナイト系ス
テンレス鋼の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP04670998A JP4116134B2 (ja) | 1998-02-27 | 1998-02-27 | 耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP04670998A JP4116134B2 (ja) | 1998-02-27 | 1998-02-27 | 耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH11241145A true JPH11241145A (ja) | 1999-09-07 |
JP4116134B2 JP4116134B2 (ja) | 2008-07-09 |
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JP04670998A Expired - Fee Related JP4116134B2 (ja) | 1998-02-27 | 1998-02-27 | 耐高温へたり性に優れるオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法 |
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JP (1) | JP4116134B2 (ja) |
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