JP4400979B2 - ラチェット型ワンウェイクラッチ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車(特に自動車用の自動変速機)や産業機械などの駆動装置内でトルク伝達、バックストップ等の部品として使用されるラチェット型ワンウェイクラッチに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車用の自動変速機に組み込まれるクラッチは、駆動軸と被駆動軸との間でエンジンから駆動系への動力伝達を断接するものであり、例えばラチェット型、スプラグ型ワンウェイクラッチといった種々のタイプがある。
【0003】
ラチェット型ワンウェイクラッチは、内周にポケットを有する外輪と、外輪と同心であり、相対回転自在に配置された内輪と、外輪と内輪との間でトルクを伝達するためのラチェット機構とを有している。
【0004】
さらに、内輪の外周にはノッチが設けられ、外輪と内輪との間でトルクを伝達するための爪体が外輪のポケットに収容されている。また、外輪及び内輪が組み付けられた状態において、軸方向外方のー側面には側板が装着され、爪体の抜け防止と、内輪と外輪との同心性を保つ機能を果たしている。
【0005】
この構成により、内輪(被駆動軸)に対して外輪が一方向に回転すると、爪体の爪がノッチに嵌合し、外輪と内輪との間でトルクの伝達がなされる。また、外輪が他方向に回転すると、爪とノッチは係合することなく、外輪のみが空転する(実開昭53−115549号公報参照)。
【0006】
図5は、従来のラチェット型ワンウェイクラッチの部品である側板190及び外輪130の軸方向部分断面図である。外輪130の内周には、爪体を収容するためのポケット131が設けられている。また、内輪と外輪とが組み合わされた状態において、側板190は外輪130の軸方向一側面に当接し、爪体の軸方向移動を規制している。
【0007】
さらに、外輪130と側板190の周方向の相対移動を防止するための手段として側板190の外周部に山部195を、外輪130の外周面に谷部138をそれぞれ設け、山部195と谷部138とを嵌合する事が考えられる。
【0008】
以上の構成によればラチェット型ワンウェイクラッチを構成する側板190及び外輪130には、外輪130に側板190を嵌合するためのみの山部195及び谷部138を設ける必要があり、加工するには難しい形状であるとともに、その加工に伴うコストが高くなるという問題点が生じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、側板及び外輪の構成を簡易化し、加工工程を簡略化することのできるラチェット型ワンウェイクラッチを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明のラチェット型ワンウェイクラッチは、
内周にポケットを有する外輪と、前記外輪とほぼ同心に配置され、外周にノッチを有する内輪と、前記ポケットに収納され、前記内輪と前記外輪との間でトルクの伝達をするための爪体と、前記爪体を前記内輪へ付勢するための弾性体と、前記爪体の軸方向への移動を制限するための側板からなり、
前記側板には、前記ポケットに嵌合する凸部が設けられている。
【0011】
また、前記側板は、前記外輪と前記内輪に対する軸受機能を有する。
さらに、前記凸部には、前記爪体の軸方向の側部を支持する突起が設けられている。
このような構成により、側板及び外輪の構成を簡易化でき、加工工程を簡略化することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、内周にポケットを有する外輪と、前記外輪とほぼ同心に配置され、外周にノッチを有する内輪と、前記ポケットに収納され、前記内輪と前記外輪との間でトルクの伝達をするための爪体と、前記爪体を前記内輪へ付勢するための弾性体と、前記爪体の軸方向への移動を制限するための側板からなるラチェット型ワンウェイクラッチであり、
前記側板には、前記ポケットに嵌合する凸部が設けられている。
【0013】
弾性体としては、コイルスプリング、ガータスプリング、波ばね等が利用できる。
さらに、前記側板は、前記外輪と前記内輪に対する軸受機能を有する。
【0014】
また、前記凸部には、前記爪体の軸方向の側部を支持する突起が設けるとよい。なお、該突起は、爪体の移動中心を支持することが最も望ましい。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図面中同一部分は同一符号で示してある。図1は、本発明のラチェット型ワンウェイクラッチの正面図である。
【0016】
図面に示されたラチェット型ワンウェイクラッチ1は、自動変速機用トルクコンバータのステータに用いられるものである。環状の外輪30はステータの羽部分33と一体成形されたものであり、内周側には爪体40を収納するための3つのポケット31が円周方向等間隔に設けられ、内周に開口している。さらに、各ポケット31の内部には、爪体40を半径方向内方に付勢するためのコイルスプリング50、ガータスプリング、波ばね等の弾性部材を収容するためのばね用ポケット(凹部)32が設けられている。なお、外輪のポケットとコイルスプリングの配置及び数は、本実施例に限定されるものではなく任意変更可能であることは言うまでもない。
【0017】
外輪30の内周面の半径方向内方には、外輪30とほぼ同心に環状の内輪20が配置されている。内輪20は、外周に爪体40の爪40bと嵌合するためのノッチ22を円周方向に複数備え、内周面にシャフト(不図示)と嵌合するためのスプライン21を有している。なお、ノッチとスプラインの配置及び数は本実施例に限定されるものではなく、任意変更できることは言うまでもない。
【0018】
さらに、図2を参照しつつ、本発明のラチェット型ワンウェイクラッチ1の構成について述べる。図2は、図1の線A−Aに沿った軸方向断面図である。図に示されているようにポケット31は、外輪30の上面56及び上面に対してほぼ垂直な壁面31bから構成され、壁面31bと軸方向に対向する部分は開口している。そして、ポケット31内には、内輪20の半径方向に対して揺動可能な爪体40が配置されている。
【0019】
また、内輪20と外輪30との間には、断面ほぼL字状で環状の側板90が介在している。側板90のプレート部97には、凸部94が設けられていて、ポケット31の開口に嵌合可能に寸法付けされている。また、プレート部97の一端から軸方向外方に突出する突出部99が延在し、プレート部97と突出部99とが画成するほぼ垂直の角部と外輪の軸方向の外側面には、おのおのニードル軸受部材70が装着されている。つまり、ラッチ型ワンウェイクラッチ1の軸方向端部は、ニードル軸受で支持されることとなる。
【0020】
さらに、外輪30の段部38の内周には、スナップリング用の溝38aが刻設され、この溝38aにスナップリング80を装着することにより側板90が軸方向外方に抜けることを防止されている。
【0021】
上記のように構成されたラチェット型ワンウェイクラッチ1は、外輪30が内輪20に対して一方向の回転(図1中時計回り)のみ可能である。例えば、外輪30が正回転(図1中時計回り)した場合、爪体40は内輪20の外周面上を摺動する。一方、外輪30が逆転した場合、爪体40の爪40bは内輪20の外周面に設けられたノッチ22に収容され係止状態となり、外輪30は内輪20に対してトルクを伝達する。
【0022】
次に、本発明のラチェット型ワンウェイクラッチ1の部品である側板90の構成について図3を参照しつつ詳述する。図3は、図2に示されたラチェット型ワンウェイクラッチ1の部分拡大図である。断面ほぼL字状の側板90は、環状のプレート部97と、プレート部97の半径方向一端部からほぼ垂直に突出する突出部99と、突出部と対向してプレート部97からほぼ垂直に突出する凸部94からなる。
【0023】
さらに、凸部94の軸方向側面94bには、軸方向に突出する円筒状の突起93が設けられ、突起93により爪体40の軸方向一側面40aが支持されている。
【0024】
一方、ポケット31の壁面31bにも軸方向に突出する円筒状の突起35が設けられている。従って、爪体40の軸方向両側面は、それぞれ外輪に設けられた突起35及び側板の凸部94に設けられた突起93により支持される。ここで、突起35及び突起93は、爪体40に対する潤滑油による粘性抵抗を低減する目的で設けられている。ただし、突起の配置としては、爪体40の移動中心を支持するように両突起部を設けるのが最も望ましい。
【0025】
さらに、外輪30のポケット31と、側板90に設けられた凸部94について図4を参照しつつ詳述する。図4は、図3の線B−Bに沿った部分断面図であり、ポケット31に凸部94が嵌合した状態を示している。ただし、ばね用ポケット32に設けられたコイルスプリング等は、図4の明確化のため割愛してある。
【0026】
ポケット31は、外輪30の半径方向に延在する係合面58と、係合面58から円周方向に延在する上面56と,上面56から内輪方向に傾斜する傾斜面54と、傾斜面54から内輪方向に傾斜する後面62により構成されている。なお、後面62は、内周面60に接続している。爪体40(図3参照)を内輪20に対して付勢するための弾性部材を収容するためのばね用ポケット32は、突起93より爪40b(図1参照)に近接するとともに、後面62に対してほぼ垂直に刻設されている。
【0027】
側板90の凸部94は、ポケット32を画成する係合面58,上面56,傾斜面54,後面62各々に相補的な形状を有する係合面78,上面76、傾斜面74,後面72と、突起93を有する当接面94bにより画成される。
【0028】
上述の構成である凸部94によって円周方向の位置決めが行われていれば、この突起93の位置も正確な位置に維持することができるともに、側板90の円周方向への移動を規制することが可能となる。さらに、軸受機能は、側板90の内周面60、凸部94の内周側面52、外輪30の内周面24のいずれにも持たせることが可能である。
【0029】
なお、以上説明した実施例は本発明の例示として説明するものであって、本発明を限定するものではないことは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
ラチェット型ワンウェイクラッチの側板を、外輪のポケットに嵌合可能で、軸受機能を有する凸部を設ける構成とすることで、側板を外輪に嵌合するためだけの凸部や凹部を外輪及び側板に設ける必要がないので、加工工程を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるラチェット型ワンウェイクラッチを示す正面図である。
【図2】図1の線A−Aに沿った軸方向断面図である。
【図3】図2のラチェット型ワンウェイクラッチの部分拡大図である。
【図4】図3の線B−Bに沿った円周方向断面図である。
【図5】従来のラチェット型ワンウェイクラッチの円周方向部分断面図である。
【符号の説明】
1 ラチェット型ワンウェイクラッチ
20 内輪
30 外輪
31 ポケット
32 ばね用ポケット
40 爪体
50 コイルスプリング
90 側板
Claims (3)
- 内周にポケットを有する外輪と、前記外輪とほぼ同心に配置され、外周にノッチを有する内輪と、前記ポケットに収納され、前記内輪と前記外輪との間でトルクの伝達をするための爪体と、前記爪体を前記内輪へ付勢するための弾性体と、前記爪体の軸方向への移動を制限するための側板からなるラチェット型ワンウェイクラッチにおいて、
前記側板には、軸方向に突出し、前記ポケットに嵌合する凸部が設けられており、該凸部は前記ポケットを画成する面に相補的な形状を備えると共に、前記内輪に対して軸受機能を有することを特徴とするラチェット型ワンウェイクラッチ。 - 前記側板は、前記外輪と前記内輪に対する軸受機能を有することを特徴とする請求項1に記載のラチェット型ワンウェイクラッチ。
- 前記凸部には、前記爪体の軸方向の側部を支持する突起がさらに設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のラチェット型ワンウェイクラッチ。
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JP2000017659A JP4400979B2 (ja) | 2000-01-26 | 2000-01-26 | ラチェット型ワンウェイクラッチ |
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