本発明の外部電極蛍光ランプ用外套容器は、誘電正接が小さいガラスからなる。
ガラスの発熱に影響を与える誘電損失は、誘電正接、電圧、誘電率と周波数の積に比例する。電源の電圧と周波数は電源条件で一定である。また、電極面積とガラス肉厚が同じランプを一定の明るさにするとすれば、式1において誘電正接以外の積の値は一定となるので、誘電正接が誘電損失を決定付ける重要な因子となる。なお誘電正接は、蛍光ランプで使用されるおおよそ100kHz以下の周波数では、ガラスのイオン伝導の影響に大きく支配される。ガラスのイオン伝導は、温度が上昇すると急速に大きくなる傾向にあるため、誘電正接も温度上昇と共に増大する。
次に本発明の外套容器を構成するガラスの誘電正接について詳述する。
蛍光ランプは40KHzから100KHzで使用されるが、誘電正接は周波数が高くなるほど小さくなる傾向がある。つまり40KHzの誘電正接の方が100KHzのそれよりも高くなる。よって40KHzの値で外套容器用ガラスの誘電特性を規定することができる。以下に150℃、250℃、350℃における誘電正接の値を示す。なお150℃はランプの通常の作動温度に相当し、250℃はランプ内部で発生する可能性のある温度に相当する。さらに350℃は安全面から考慮すべき温度である。本発明では、蛍光ランプで考えられる最高温度である250℃での値が最も重要であると認識し、この値を重視している。
150℃、40kHzでの誘電正接は0.005より大きく、0.05以下であることが好ましい。特に0.02以下、さらには0.01以下であることが望まれる。0.05以下であれば誘電損失が小さくなって発熱量を実使用上問題ないレベルに抑えることが可能になり、0.02以下であればランプ稼動温度の高いものでも使用できる。さらに0.01以下であれば高出力タイプの蛍光ランプでも発熱が小さくなり好ましい。
250℃、40kHzでの誘電正接は0.02よりも大きく0.2以下である。好ましくは0.1以下、さらに好ましくは0.05以下である。0.2以下であれば誘電損失が小さくなって発熱量を実使用上問題ないレベルに抑えることが可能になり、0.1以下であればランプ稼動温度の高いものでも使用できる、さらに0.05以下であれば高出力タイプの蛍光ランプのような発熱が大きいタイプでも使用可能であり好ましい。
350℃、40kHzでの誘電正接は0.1より大きく2以下であることが好ましい。特に1以下、さらには0.5以下であることが望ましい。2以下であれば、誘電損失が小さくなって電極の発熱を抑制し、発熱量を実使用上問題ないレベルに抑えることが可能となる。1以下であればランプ稼動温度の高いものでも使用できる、さらに0.5以下であれば周辺温度が高温でかつ放熱しにくい環境下においても、高出力タイプのランプが使用可能となり好ましい。
また1MHzの誘電特性は物質の性質を代表する値であり、本発明においては、1MHzにおける誘電正接が室温で0.003以下、特に0.0025以下、さらには0.002以下のガラスを使用することが好ましい。0.003以下であれば誘電損失が小さくなって、発熱量を実使用上問題ないレベルに抑えることが可能になり、0.025以下であればランプ稼動温度の高いものでも使用できる。さらに0.002以下であれば高出力タイプや高周波数タイプのランプでも発熱が小さくなり好ましい。
なお管型外部電極ランプでは電極金属部分からは光が取り出せないため、電極を極力小さくする必要があり、結果として駆動電圧を高くせざるをえない。これに対し、平面型外部電極ランプでは、光の取りだし効率に関係のない背面板に大きな電極を形成することができるために、管型外部電極ランプの場合に比較して駆動電圧を低くすることができる。つまり、ガラスの誘電正接の許容範囲は平面型ランプの方が大きくなる。それゆえ本発明の外套容器を管型の外部電極ランプに用いる場合にはランプ設計上配慮する必要がある。一方、平面型の外部電極ランプに用いる場合は、特段の制約なく使用可能である。
また下記式で表される誘電正接変化率が、150℃〜250℃間の平均値で、0.002以下、好ましくは0.001以下、さらに好ましくは0.0005以下であることが望まれる。0.002以下であればランプ周辺温度が上昇しても、ランプ発熱量の変化が少なく安定した温度で使用でき、0.001以下であればランプ外部環境の影響が少なくなり、0.0005以下であればランプを高温雰囲気下でも高信頼性で使用できる。
また下記式で表される誘電正接変化率が、250℃〜350℃間の平均値で、0.01以下、好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.004以下であることが望まれる。0.01以下であれば、温度上昇に伴う誘電損失の増大による異常発熱が抑制できるため、外套容器の異常加熱を防止することができる。0.008以下、さらに好ましくは0.004以下であればランプからの放熱が制限されるような条件でも外套容器の異常加熱が起こりにくくなる。
誘電正接変化率 = △誘電正接/△T
[△誘電正接:誘電正接の差 △T:誘電特性の測定温度(℃)の差]
なおガラスの誘電正接を低くするには、組成的にイオン伝導が起こりにくくなるようにすればよい。具体的には、アルカリ成分を少なくしたり、アルカリ成分の割合を調整したり、或いは水分量を制限したりすることにより調整可能である。また低アルカリ、或いは無アルカリのガラスは、低い誘電正接を有しているため、特に低い誘電正接を必要とする場合には、この種のガラスにより外套容器を作製してもよい。ただしこの種のガラスは、粘性が高くなり易いため、成形性や加工性が劣る場合がある。
本発明の外套容器を構成するガラスは、上記した誘電正接に加え、所望の誘電率を有することが好ましい。つまり、誘電容量は誘電率と電圧の積で決まる。従ってガラスの誘電率が高ければ、駆動電圧を下げることができ、ランプ周辺の絶縁物質の削減やガラスの体積抵抗による導電損失を低減できる。以下、誘電率に関して具体的に述べる。
150℃、40kHzでの誘電率は5以上であることが好ましい。特に6以上、さらには7以上であることが望まれる。5以上であれば必要な電気容量を、実用上可能な電極面積とランプ駆動電圧に抑えながら確保することが可能になり、6以上であればさらに好ましく7以下であれば高出力タイプの蛍光ランプでも使用可能であり好ましい。
250℃、40kHzでの誘電率は5〜13、特に6〜11、さらには7〜10であることが好ましい。 5以上であれば必要な電気容量を、実用上可能な電極面積とランプ駆動電圧に抑えながら確保することが可能になり、6以上であればさらに好ましく7以下であれば高出力タイプの蛍光ランプでも使用可能であり好ましい。13以下であればガラス誘電体として異常が無く均一であることの目安になり、11以下さらに10以下であれば電極内のバラツキがちいさくなって好ましい。
350℃、40kHzでの誘電率は5〜22、特に6〜15、さらには7〜12であることが好ましい。5以上であれば必要な電気容量を、実用上可能な電極面積とランプ駆動電圧に抑えながら確保することが可能になり、6以上であればさらに好ましく7以下であれば高出力タイプの蛍光ランプでも使用可能であり好ましい。22以下であればガラス誘電体として異常が無く均一であることの目安になり、15以下さらに12以下であれば電極内のバラツキが小さくなって好ましい。
また、1MHzにおける誘電率が室温で5以上、特に6以上、さらには7以上のガラスを使用することが好ましい。5以上であれば誘電損失が小さくなって、発熱量を実使用上問題ないレベルに抑えることが可能になり、6以下であればランプ稼動温度の高いものでも使用できる。さらに7以上であれば高出力タイプや高周波数タイプのランプでも発熱が小さくなり好ましい。10以下であることが、ガラス誘電体として異常がないためにバラツキが無く好ましい。
また下記式で表される誘電率変化率が、150℃〜250℃間の平均値で、0.04以下、特に0.02以下、さらには0.01以下であることが望まれる。0.04以下であればランプ周辺温度が上昇しても、電極内の誘電率バラツキによる電荷集中を防止して局所加熱を防止することが可能であり、0.02以下であればさらに好ましく、0.01以下であればランプ駆動電圧の影響が少なくなり極めて理想的である。
また下記式で表される誘電正接変化率が、250℃〜350℃間の平均値で、0.1以下、特に0.05以下、さらには0.02以下であることが望まれる。0.1以下であれば、温度上昇に伴う誘電率バラツキによる異常発熱が抑制できるため、外套容器の局所加熱を防止することができる。0.05以下であればさらに好ましく、ランプからの放熱が制限されるような条件でも外套容器の局所加熱が起こりにくくなる。
誘電率変化率 = △誘電率/△T
[△誘電率:誘電率の差 △T:誘電特性の測定温度(℃)の差]
なおガラスの誘電率変化を低くするには、組成的にイオン伝導が起こりにくくなるようにすればよい。具体的には、アルカリ土類成分を導入し、アルカリ成分を少なくしたり、アルカリ成分の割合調整したりすることにより調整可能である。
本発明の外部電極蛍光ランプ用外套容器を構成するガラスは、成形性や加工性に優れており、精度よく管状、板状等に成形できる。板状に成形したガラス部材は、背面板等としてそのまま使用されたり、或いは、前面板等に使用するためにさらにプレス加工等を施されたりして、平面型の外套容器の作製に供される。
ガラスの成形性は、成形方法に適した粘度特性を有しているかどうかに左右される。例えば管状に成形されるガラスは、通常、ダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法等の方法で管引き成形される。また板状に成形されるガラスはオーバーフロー法、フロート法、スロットダウン法等の方法で板引き成形される。このため、成形温度域において、温度に対するガラスの粘性変化が緩やか(ロングなガラス)である方がよい。特に本発明のように、液晶表示素子の照明装置用途に用いられる外部電極蛍光ランプ用外套容器では、管型の場合、管ガラスが薄肉細径である。しかも真円度、外内径偏芯や肉厚バラツキに対する制約が厳しいため、精密成形するためには温度に対する粘性変化が十分に緩やかなガラスである必要がある。また平面型の場合も、高い平坦度や均質な肉厚が求められる。
そこで本発明では、ガラスがほぼ固まる歪点を目安としている。即ち、歪点が低いほど、実際上の成形温度との温度差が大きくなるため、いわゆるロングなガラスとなる。具体的には、この温度が650℃以下、好ましくは600℃以下であるガラスを用いる。歪点が650℃以下であればガラスの粘性変化が急にならず、管引き成形や板引成形に適した粘度特性を得やすくなる。さらに600℃以下であればガラスの成形温度を下げることが可能になる。
また同様の理由から、歪点と、104dPa・Sに相当する温度の差が400℃以上、好ましくは450℃以上、特に500℃以上、さらには550℃以上であることが望まれる。この温度差が400℃以上であれば寸法精度のよい管ガラスを得ることが可能になり、450℃さらに500℃以上であれば容易に寸法精度のよい管ガラスが得られる。550℃以上あれば、高い寸法精度を維持しながら、成形速度を上げることが可能になる。
またガラスの成形温度が高いと、特殊な耐熱レンガやPtが必要になるだけでなく、環境面からも使用エネルギー量が多くなって好ましくない。従って、管引き開始時の粘度(103dPa・S)に相当する温度が1400℃以下であることが望まれる。同様にランプの加工粘度(104dPa・S)に相当する温度が1200℃以下であることが望まれる。
また成形時に結晶が生成すると結晶周辺の粘性が変化してガラスの伸びに違いが生じ、寸法精度のよい管ガラスや板ガラスを得ることが困難になる。ガラスの液相粘度は、ガラスの結晶発生のしやすさを表す。この値が大きいほど大きい粘性でも結晶が発生しにくいといえる。本発明では、液相粘度が104dPa・S以上、特に104.5dPa・S以上、さらには105dPa・Sであることが好ましい。104dPa・S以上であれば管や板の成形に支障がなく、104.5dPa・S以上であれば量産性の向上が望める。105dPa・S以上あれば、成形設備に特別な配慮をしなくても、寸法精度のよい管ガラス等を効率よく成形することができる。
また平面型ランプの外套容器の場合、例えば前面板等の構成部材は、板ガラスを弁当ケース型や波板などに加工して使用される。この加工は、ガラスを軟化点付近の温度でプレス加工することにより行われる。加工性を向上させるには、加工温度域でガラスの粘性がロングであることが望まれる。本発明で外套容器を構成するガラスは、歪点が低いため、実際の加工温度との温度差が大きく、ロングなガラスであるために加工性がよい。具体的には軟化点と歪点の温度差は150〜400℃、特に220〜300℃の範囲にあることが望まれる。この温度差が150℃以上あれば上記した効果が現れる。また400℃以内であれば、成形温度を極端に高めることなく成形可能である。
なおガラスの粘度特性をロングにするには、Li2O、Na2O、K2Oといったアルカリ成分やB2O3の含有量を増やしたり、SiO2やAl2O3を少なくしたり、水分量を増やしたりすることによって達成することができる。またガラスの液相粘度を高くするには、MgO、CaO、SrO、BaOといったアルカリ土類成分、ZnO、Al2O3等の含有量及びこれらの成分の割合を適正化することによって達成可能である。
またガラス中に含まれる水分は、ガラスの低温粘性を低下させてランプの加工性を向上させる働きがある。しかし水分量が多くなると誘電正接が大きくなるという不具合がある。またランプ内部にガスとして放出されるとランプの輝度が低下する。さらに泡不良の原因ともなる。
このような理由から、水分量を適正に管理することが好ましい。具体的には、下記式で求められる係数Xが0.8以下であれば、上記問題が生じにくい。また0.1以上であれば、精度良くガラスを成形することが容易になる。係数Xの好適な範囲は0.15〜0.6、特に0.2〜0.5である。
なお水分量は、下記の式で表される赤外線透過率係数(X)に比例する。
X=(log(a/b))/t
a:3840cm-1の透過率(%)
b:3560cm-1付近の極小点の透過率(%)
t:試料測定厚み(mm)
ただし外套容器の形状によっては、赤外線透過率係数を直接測定することが困難な場合がある。例えば管形状の場合など、赤外線透過率を直接測定することは困難である。そのような場合、測定対象のガラスの粘度(dPa・s)がlog表示で5.0±0.5となる温度に設定した電気炉の中に、白金板に乗せた外套容器を5分間投入して溶融し、得られた塊状のガラスを厚さ1mmになるように鏡面研磨した後、評価に供すればよい。この条件で測定試料を作製すれば、試料作製に伴う水分量の減少を最小限に抑えることができ、得られる赤外線透過率係数Xは、試料作製前の係数Xとみなすことができる。
ガラス中の水分量の調整は、通常ガラス溶融時の燃焼ガス中の水分量や、ガラス原料(硼酸と無水硼砂の混合比)で調整する。また、これらで調整しきれない場合には、ガラス溶融時の乾燥空気バブリング等によって調整できる。
外部電極蛍光ランプに用いられる外套容器には、上記(1)(2)の特性が要求されるが、これ以外にも下記の特性を満足することが望まれる。
(3)泡を含まないこと。
誘電体部分である外套容器に泡が存在すると、泡の電極側に電荷が蓄積される。これがトリーと呼ばれる微小な放電現象を起こし、局所的に著しく加熱されてガラスが溶けるおそれがある。その結果、外套容器の気密性が損なわれ、ランプの発光が停止する可能性がある。従って、外部電極蛍光ランプ用の外套容器には、従来の蛍光ランプ用外套容器よりも泡が少ないことが要求される。
なお従来の蛍光ランプの外套容器の場合、泡数は、ガラス中に200個/100gまで許容されてきたが、液晶表示素子の照明用途に使用されるような外部電極蛍光ランプの外套容器においては10個/100g以下、さらに好ましくは1個/100g以下であることが必要である。
(4)紫外線遮蔽性に優れること。
液晶表示装置のバックライトユニットでは、反射板等の有機部材が蛍光灯の近傍に備えられているため紫外線による有機物の劣化により光量が減衰するおそれがある。このため蛍光ランプ内部で発生する紫外線を外部に漏らさないよう、外套容器は紫外線遮蔽性の高いガラスで作製する必要がある。
(5)耐ソラリゼーション性に優れること。
紫外線がガラスに当たるとソラリゼーションと呼ばれるガラス着色が生じるが、外套容器を構成するガラスに着色が生じるとランプの光量が減少するため好ましくない。このためソラリゼーションが起こりにくいガラスを採用する必要がある。
(6)たわみ難いこと。
バックライトユニットに使用される管形状の蛍光ランプは細径長尺であり、その両端で固定すると、ランプの自重で中央部が垂れ下がりやすい。ところがランプがたわむと、バックライトの干渉しまの原因となるため好ましくない。またバックライトユニットに使用される平面型の蛍光ランプは薄肉扁平であり、やはり中央部分がたわみやすい。ところがこのタイプのランプがたわむと放電空間の容積が変化して発光のバラツキが生じる。従って、できるだけ密度が小さく、ヤング率が高いガラスで外套容器を作製することが望まれる。
外套容器材質としては、上記種々の条件を考慮して使用可能なガラスを適宜選択すればよい。例えば質量百分率で、
SiO2 35〜75%、
Al2O3 0.1〜20%、
Li2O+Na2O+K2O 0〜25%
の組成を有するガラス、特に質量百分率で、
SiO2 35〜75%、
B2O3 0〜25%、
Al2O3 0.1〜20%、
Li2O 0〜10%、
Na2O 0〜18%、
K2O 0〜18%、
Li2O+Na2O+K2O 0〜25%、
MgO 0〜20%、
CaO 0〜20%、
SrO 0〜30%、
BaO 0〜30%、
MgO+CaO+SrO+BaO 1〜45%、
ZnO 0〜25%、
TiO2 0〜15%、
WO3 0〜15%、
CeO2 0〜5%、
TiO2+WO3+CeO2 +Fe2O3 0.005〜15%、
ZrO2 0〜9%、
SnO2 0〜10%、
Nb2O5 0〜15%、
Ta2O5 0〜15%、
Fe2O3 0〜1%
P2O5 0〜10%、
Bi2O3 0〜30%、
Cl2 0〜0.5%、
Sb2O3 0〜1%
含有するガラスを使用することができる。上記組成において、各成分の範囲を限定した理由を以下に述べる。
SiO2は、ガラスの骨格を構成するために必要な主成分であり、含有量が増えるほど化学耐久性が向上する。一方で、粘度を上げる傾向があるため、多すぎるとロングなガラスを得にくくなる。その含有量は35%以上、好ましくは40%以上である。また75%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは59%以下である。SiO2が40%以上であれば、使用可能なレベルの化学的耐久性が確保できる。35%以上であれば化学耐久性が十分に高くなってガラス表面のヤケ等の発生が防止でき、長期にわたって輝度低下のない蛍光ランプを作製することができる。またSiO2 が75%以下であればシリカ原料の溶融に長時間を要することがないため生産性に支障をきたすことがない。70%以下であればガラス粘性が低くなる。65%以下であれば成形に好適な粘性が得ることが容易になる。特に59%以下であれば、ガラスの粘性がさらに低くなり、容易に寸法精度のよいガラスを得ることができる。
B2O3は、必須ではないが溶融性の向上、粘度の低下のために必要な成分であり、含有量が増えるほどガラスが低粘性化する。B2O3を0.1%以上含有すれば、上記した効果が現れる。一方で、化学耐久性を低下させ誘電率を下げる傾向がある。B2O3の上限は25%以下、特に16%以下、さらには5%以下である。B2O3が25%以下であれば実用上使用可能な化学耐久性を確保することが可能となる。20%以下であれば化学耐久性がさらに改善される。16%以下ではガラス表面でのヤケ等が発生するおそれが殆どなく、長期にわたって輝度低下のない蛍光ランプを作製することができる。
Al2O3は、ガラスの安定性を大きく改善する必須成分であり、ガラスの溶融、成形を容易にする。同時にヤング率を高くする成分である。一方で、粘度を上げる傾向があるため、多すぎるとロングなガラスを得にくくなる。その含有量は0.1%以上、特に3%以上、さらには5%以上であることが望まれる。また20%以下、特に15%以下、さらには12.5%以下である。Al2O3が0.1%以上であれば上記した効果が現れ、3%以上であれば特にガラスを安定化する効果が現れる。5%以上であれば結晶の生成がより少なくなって、寸法精度に優れた管ガラスを生産するのに適したものとなる。高ヤング率のガラスを得るという観点からは、6%以上含有することが好ましい。またAl2O3が20%以下であればガラス融液の粘度が高くなりすぎることがない。15%以下であれば低粘性とガラスの安定性が両立し易くなる。12.5%以下であれば、アルカリ含有量が0.1%未満であっても成形に適した粘性とガラスの安定性の両立が可能になる。
アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O及びK2Oは、ガラス原料を溶けやすくする融剤として働き、ガラス溶融を容易にする。これらの成分の合量を0.1%以上含有させると、ガラスの溶解性を改善する効果が期待できる。またガラスを低粘性化して粘度特性をロングにしたり、ガラスの安定性を向上させることができる。さらにガラスの電気抵抗を下げて電気溶融を容易にするという効果もある。しかしガラスの誘電正接を高くする成分でもあるため、含有量の決定に当たっては細心の注意を払う必要がある。アルカリ金属酸化物によって低粘性化させたい場合は、合量で0〜25%、特に1〜20%、さらには8〜18%とすることが望ましい。これら成分の合量が0.1%以上であれば、ガラスの粘度特性を改善することが可能となり、4%以上含有すればガラスを低粘性化する効果が十分に得られる。また溶融性が向上するため、エネルギー効率の点からも好ましい。8%以上含有すればガラスの電気抵抗が電気溶融に適した値となる。またアルカリ成分が25%以下であれば誘電正接がそれほど高くならず、ガラスの発熱を実用上問題ないレベルに抑えることができるが、できれば18%以下が推奨される。
またLi2O、Na2O、及びK2Oの各々の含有量は、それぞれLi2O 0〜10%(特に0〜6%)、Na2O 0〜18%(特に0.1〜10%、さらには1〜9%)、K2O 0〜18%(特に0〜10、さらには0.1〜10%)であることが好ましい。なおK2Oは、他のアルカリ成分に比べて誘電正接を高める度合いが小さいために、優先的に使用することが推奨される。Na2Oを使用する場合は、特にアルカリ土類とともに用いることが好ましい。
アルカリ土類成分であるMgO、CaO、SrO、BaOはガラスを安定化させてガラス中に結晶が生じることを防止する。またガラス中でのアルカリの移動を抑制して誘電正接の上昇を抑制する効果がある。一方で、ガラス成形装置の耐火物等と反応してアルカリ土類長石結晶を生成するおそれがある。その含有量は合量で1〜45%、好ましくは5〜35%、さらに好ましくは10〜25%である。3%以上含有すればアルカリの移動を防止する効果が現れ、5%以上含有すると結晶を抑制する効果が顕著になる。10%以上であれば相対的にSiO2量を少なくすることができ、結果としてガラスを低粘性化することができる。また45%以下であればアルカリ土類長石結晶の生成を抑制可能であるが、35%以下、特に25%以下であればアルカリ土類長石結晶が非常に生成し難くなり、成形装置等の制約が少なくなる。なおガラスの密度を低減させるためには、例えばBaOよりもSrOやCaOを使用すればよい。
MgOは、上記特徴に加えてガラスのヤング率を高める効果があるが、他成分との組み合わせによっては容易にMg系結晶を生成してしまう。その含有率は0〜20%、好ましくは0〜5%、より好ましくは0〜2.5%である。20%以下であればMg系結晶の析出が抑制可能となり、5%以下であればガラス成形時にMg系結晶が析出しにくくなる。2.5%以下ではMg系結晶が極めて析出し難くなるために、他成分との組み合わせの自由度が増し好ましい。
CaOはMgOと同様の成分であるが、MgOよりも耐火物等との反応性が低い。その含有量は0〜20%、好ましくは0.1〜10%、より好ましくは1〜8%、さらに好ましくは1〜5%である。CaOは0.1%以上含有させることより、ガラスを安定化させる効果が現れ、1%以上含有するとさらにガラスが安定する。また20%以下であればCa系結晶の析出を抑制可能であり、真円度の高い管ガラスが得易くなる。10%以下、特に8%以下であればCa系結晶が極めて析出し難くなる。より好ましくは5%である。
SrOの含有量は0〜30%、好ましくは0.1〜25%、さらに好ましくは3〜20%、より好ましくは5〜15%である。SrOを0.1%以上含有すれば、ガラスを安定化させる効果が現れる。より効果的には3%以上であり、5%以上であれば相対的にSiO2量を少なくすることができ、結果としてガラスを低粘性化することができる。また30%以下であればSr系結晶の析出を抑制可能であり、真円度に優れた管ガラスが得易くなる。25%以下、特に15%以下であればさらにSr系結晶が析出し難くなる。
BaO含有量は0〜30%、好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜15%である。BaOを含有する場合、SiO2とAl2O3が多い耐火物にガラスが触れると、その部分でBa長石結晶が生成しやすい。このため、使用する成形設備等によってはできるだけガラス中のBaO量が少ない方がよい。しかしBaOは、ガラスを安定化し、結晶析出を抑制する効果も大きいため3%以上含有することが好ましい。成形設備の制約がない場合、5%を超えれば相対的にSiO2量を少なくすることができ、結果としてガラスを低粘性化することができる。また30%以下であればBa系結晶の析出を抑制可能であり、優れた真円度の管ガラスが得られ、15%以下であれば、さらにBa系結晶が発生しにくい。
ZnOはガラスの粘性を下げ、結晶析出を抑制する効果のある成分である。その含有量は0〜25%、好ましくは0〜5%である。25%以下であれば、Znを含む結晶が生成しにくく、5%以下であれば揮発も少なくなって、より好ましい。
TiO2、CeO2、Fe2O3及びWO3は任意成分であるが、紫外線を遮蔽したい場合には1種類以上を含有させることが望ましく、その場合は合量で0.005〜15%、特に0.005〜10%、さらには0.1〜3%であることが好ましい。0.005%以上であれば上記効果を確認できるが、確実に上記効果を得るためには0.1%以上含有することが望まれる。また10%以下であればガラス中に結晶が析出することなく安定して生産できる。
TiO2は、ソラリゼーション防止及び紫外線遮蔽効果が最も高い。またガラスの誘電率やヤング率を高める成分である。上記効果を得たい場合は、0.01%以上、特に0.1%以上含有することが好ましい。0.1%以上含有させれば、Ceなどの着色の影響を受けることなく上記した効果が得られる。ただしTiO2はガラス中に結晶を生じさせたり、ガラス中でFe2O3と共存すると着色を引き起こすおそれがある。そのためTiO2の上限は15%以下、特に5%以下であることが好ましい。15%以下であれば、ガラス中に結晶を生じることなく安定して生産でき、5%以下であればFe2O3の含有量が増えても着色の影響が少なくなる。
WO3は紫外線を遮蔽する効果がある。その含有量は0〜15%、好ましくは0〜5%である。15%よりも少なければ、ガラス中に結晶を析出させることなく安定して生産できる。
CeO2の含有量は5%以下であることが好ましい。CeO2は紫外線遮蔽効果及びソラリゼーション防止効果がある。また清澄作用がある。上記効果を得たい場合、0.01〜5%、特に0.1〜3%であることが好ましい。5%以下であれば結晶を析出させることなくガラスを溶融することが可能である。一方、0.01%以上であれば清澄剤としての効果が期待でき、0.1%以上であればソラリゼーションの防止効果が期待でき、2%よりも多ければ高い紫外線遮蔽効果が得られ、例えばガラス肉厚0.2mmで313nm付近の紫外線を単独で遮蔽することが可能になる。
ZrO2はガラスの化学的安定性を改善し、ガラスのアルカリ吹きやアルカリ土類吹きを防止する効果がある。またヤング率を高める成分である。上記効果を得たい場合、0.01%以上含有させることが好ましい。その一方で、ZrO2はガラス粘性を上げる成分である。そのため9%以下、特に5%以下、さらには3%以下、最適には2%であることが望まれる。特にZrO2が3%以下であればZrを含有する結晶が生じることなく安定したガラスが得られやすく、2%以下であれば他の結晶の析出を誘発する心配も無くなる。
SnO2は清澄作用と、ガラスを安定化させる効果がある。SnO2が0.01%以上であれば清澄効果が期待できる。その一方で、SnO2はガラス中に結晶を析出させるおそれのある成分である。そのため10%、特に5%以下であることが好ましい。SnO2が10%以下、特に5%以下であれば結晶が生じることなく好ましい。
Nb2O5はソラリゼーションを防止する効果があり、その含有量は0〜15%、好ましくは0〜10%である。15%以下であれば結晶を析出することなく安定して生産でき、10%以下であればさらに工程の安定化をはかることができる。
Ta2O5はソラリゼーションを防止する効果があり、その含有量は0〜15%である。15%以下であれば結晶を析出することなく安定して生産できる。
P2O5はガラスの骨格成分となる元素であり、少量で結晶の発生を抑制する効果がある。上記効果を得たい場合には、0.1%以上含有させることが好ましい。その一方でP2O5が多すぎると分相を生じてガラスが白濁する。そのためP2O5の含有量は10%以下、特に5%以下、さらには3%以下であることが望ましい。10%以下であれば分相が少なくなり、5%以下であれば量産上好ましく、3%以下であればさらに好ましい。
Bi2O3は、ガラスの誘電率を高める成分であり、外部電極の面積を小さくするために高誘電率が必要な場合には含有することが好ましい。その含有量は0〜30%であることが好ましい。30%よりも少なければ、ガラス中に結晶を析出させることなく安定して生産できる。
塩化物は清澄剤として有効であり、塩化物原料、例えば塩化バリウムを使用することによってガラスに導入することができる。ガラスの成形までに揮発しやすく、その残留含有量は1%以下、特に0.5以下である。清澄剤として効果を得るためには、その残留含有量が0.0001%以上、特に0.001%以上となるようにすればよい。
Sb2O3は清澄剤として有効である。上記効果を得るためには0.01%以上、特に0.1%以上であることが好ましい。0.01%以上であれば清澄効果が現れ、0.1%以上であれば十分な清澄効果を得ることが可能になる。一方で、Sb2O3が多くなると、ランプ加工時の加熱でSbが還元されてガラスが黒くなる現象が生じることがある。そのためSb2O3は1%以下に制限することが好ましい。
また上記成分の他にも種々の成分を含み得る。例えばFe2O3、硫黄成分(SO3)、F2、さらには稀土類(CeO2以外)等がガラス中に含まれていてもよい。
Fe2O3は、意識的に除外しない限り、ガラス工業においては不可避的に含有される成分で1%以下である。Fe2O3の価数及び配位数によって、ガラスの着色やソラリゼーションを引き起こしたり、紫外線を吸収し、ソラリゼーションを抑制したりする。即ち、Fe2+イオンは青色の色調をガラスに与え、Fe3+イオンの低い配位の場合はガラスを褐色にする。またFe3+イオンの高配位の場合は、紫外線領域に鋭い吸収を有し、ガラスを着色することなく、紫外線吸収性を与える。またソラリゼーション防止効果もある。各イオンは共存しており、ガラスの酸化度合いに応じて各イオンの割合が連続的に変化する。それゆえFeの3価ができるだけ多くなるよう酸化状態にする必要があるが、完全にFeの3価の高配位のみにすることは困難である。このため、Fe自体の含有量の管理が重要となってくる。Fe2O3の含有量は0.001〜0.1%、好ましくは0.005〜0.06%、さらに好ましくは0.01〜0.03%に抑制することが好ましい。ソラリゼーションを防止する効果を得るためには0.001%以上含有することが望ましく、0.005%以上含有することが推奨される。0.01%以上含有すればソラリゼーション防止効果がより高くなる。また0.1%以下であれば、Feイオンを原因とする着色の影響をなくすことが可能になるが、0.06%以下であることが望まれる。TiO2を含有する場合には着色が促進されるので、特に色調に厳しい高精細液晶TV等の用途では0.03%以下であることが望ましい。
ガラス原料中の硫黄成分は、原料粉末の溶解を容易にし、泡切れを良くする成分である。上記効果を得たい場合には、SO3として表して0.0001%以上、特に0.0005%以上含有することが好ましい。ただし硫黄成分がガラス中に過剰に残留すると、ランプ加工時にリボイルして泡の原因になることがあるのでその含有量は0.5%以下、特に0.2%以下、さらには0.1%以下に制限すべきである。
なおSO3は原料や燃料に不純物として含まれていることもあり、その不純物量によっては原料の選択が必要になってくる。不純物のみでは不足である場合は、硫酸塩の形で添加することができる。SO3の許容量はアルカリの増加と共に増すので、ガラスの泡の状態を考慮してSO3の含有量を調整すればよい。またガラス中に残留するSO3を減少させる方法として、CeO2、SnO2、Sb2O3、Cl、Fや硝酸塩の少なくとも1種類、できれば2種類以上と共存させる方法や、溶融中に酸素や空気等のガスでバブリングする方法がある。
F2は清澄効果があり、フッ化物原料、例えばフッ化アルミニウムを使用することによってガラスに導入することができる。ガラスの成形までに揮発しやすく、その残留含有量は1%以下であることが好ましい。
Y2O3、La2O3等の希土類は、ガラスのヤング率を大きくする目的で10%まで含有することができる。
なおAs2O3は清澄作用が大きく、またFe3+イオンの高配位による着色を抑制する効果がある。しかしながらCeO2と共存すると、ソラリゼーションを引き起こす。また毒性が高いために設計上導入しないことが望ましく、不純物レベルでも0.1%以下、好ましくは0.005%以下に制限することが望まれる。PbOもAs2O3と同様に環境上の理由から、不純物レベルで0.5%以下、好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.01%以下にすることが望まれる。
次に本発明の外部電極蛍光ランプ用外套容器の製造方法を説明する。
まず管形状の外套容器を製造する場合について述べる。
上記特性又は組成となるように原料を調合し、混合した後、溶融炉にてガス溶融する。このとき必要に応じてガラス中の水分量を調整する。次に溶融ガラスをダンナー法、ダウンドロー法、アップドロー法等の管引き法を利用して管状に成形する。その後、管状ガラスを所定の寸法に切断し、必要に応じて後加工することにより、外部電極蛍光ランプ用外套容器を得ることができる。
なお外部電極蛍光ランプ用外套管の寸法は、特に制限されるものではないが、液晶表示装置のバックライトユニットに使用される場合には、外径が8mm以下、特に5.2mm以下の細管であることが望ましい。また外套管の肉厚は、静電容量を大きくするために薄肉であることが望ましく、具体的には0.6mm以下、特に0.4mm以下、さらには0.3mm以下であることが望ましい。また肉厚のバラツキは、ランプの投入電力を左右し、ランプ毎の明るさの不均一を招く。従ってバラツキをできる限り小さくすることが重要であり、0.02mm以内、特に0.01mm以下であることが望ましい。なお、肉厚のバラツキは、外套容器端面部分全周の肉厚をマイクロゲージにて測定し、その最大値及び最小値の差とした。
次に平面型の外套容器を製造する方法を述べる。
上記特性又は組成となるように原料を調合し、混合した後、溶融炉にてガス溶融する。このとき必要に応じてガラス中の水分量を調整する。次に溶融ガラスをオーバーフロー法、フロート法、スロットダウン法等の方法で板引き成形する。その後、板状ガラスを所定の寸法に切断し、必要に応じて後加工することにより、背面板を得る。また同様にして作製した板ガラスをプレス加工等により再成形し、放電空間が形成可能なように複数の凹部を形成する。このようにして前面板を得る。その後、封着材等を用いて前面板と背面板を封着する。なお、予め前面板及び背面板の所定箇所に蛍光体を塗布しておいてもよい。このようにして複数の放電空間を有する平面型外部電極蛍光ランプ用外套容器を得ることができる。
このようにして得られた外套容器を用い、常法に従って外部電極蛍光ランプを作製することができる。なお蛍光ランプを組み立てるに先立って、外套容器外面、例えば管形状の外套容器であればその両端近傍に、平面型の外套容器であれば背面板に電極を形成しておくことができる。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。表1は本発明の外套容器を構成するガラスの実施例(試料No.1〜3)及び比較例(No.4)を示している。
まず、表の組成となるようにガラス原料を調合した後、白金坩堝を用いて1600℃で18時間溶融した。溶融後、融液を所定の形状に成形、加工して各ガラス試料を作製した。各試料の特性を表に示す。なお主原料として酸化珪素(150μm篩上1%以下、45μm篩下30%以下)、酸化アルミニウム(平均粒径50μm・マイクロトラック)、硼酸(400μm篩上10%以下、63μm篩下10%以下)、高純度炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム(平均粒径2μm)、硝酸バリウム(500μm篩上1%以下、45μm篩下5%以下)、炭酸バリウム(平均粒径2μm)、炭酸リチウム(造粒品)、炭酸ナトリクム(造粒品)、炭酸カリウム、酸化亜鉛(45μm篩上1%以下)を用い、その他の微量成分として試薬級の無水硼酸、酸化マグネシウム、硝酸ストロンチウム、塩化バリウム、酸化ジルコニウム、五酸化アンチモン、メタリン酸アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化タングステン、硫酸ストロンチウム、及び酸化セリウムを使用した。
1MHzでの誘電率と誘電正接については、各ガラス試料から50×50×3tmmの大きさの板状試料を作製し、30mmφの電極を貼り付け、LCRメーターで測定した。測定条件は1MHz、25℃とした。
40KHzでの誘電率と誘電正接の評価は次のようにして行った。具体的には、まず図1に示すように、#1000仕上げの直径20mm、厚さ1mmの円盤状試料Gを用意し、その片面に、外径14.5mmの主電極aと、主電極aの外側に同心状に設けられた外径20mm、内径16mmのガイド電極bとをそれぞれ金蒸着にて作製した。また試料のもう一方の面には、その全面に対電極cを金蒸着にて作製した。
測定装置は、図2に示すように、ヒーター100と、試料測定室110と、LCRメーター(図示せず)とを有する構造になっている。ヒーターは無誘電巻きしたテープヒーターを使用している。試料測定室110は、ヒーター100の影響による電磁誘導を避けるために、シールド(金属筒)120内に設置されている。また試料測定室110には、試料Gの主電極a及びガード電極bと接するための主電極用端子111及びガード電極用端子112が一体的に昇降可能に設けられている。主電極用端子111はLCRメーターの端子と、ガード電極用端子112はLCRメーターのガード端子とそれぞれ導線を介して接続されている。また試料測定室110内の上部には、試料Gの対電極cと接するための対電極用端子113が設けられている。対電極用端子113は、LCRメーターの端子に導線を介して接続されている。また対電極用端子113の導線と主電極用端子111の導線との間での影響がないように、両者間にはシールド(アルミニウム箔、図示せず)が設けられている。また試料測定室110内に保持される試料Gの近傍には、サーモメーターに接続された熱電対114が設置されており、試料温度が測定できるようになっている。
上記測定装置を用いて試料Gの誘電特性を測定するには、まず、試料Gを主電極用端子111及びガード電極用端子112上に載置する。次いで両端子を上方へ移動させ、上部に設置された対電極用端子113に押しつけられた状態で試料Gを保持する。続いてヒーター100で試料Gを加熱し、所定温度になったときの誘電特性を、LCRメーターによって測定する。このようにして、室温−1MHz、40KHz−150℃、40KHz−250℃、40KHz−350℃の条件で誘電正接を測定した。
熱膨張係数は、熱膨張測定器にて測定した。
各粘度に相当する温度は、ASTM C336、ASTM C338及び球引き上げ法によって求めた。
液相粘度は次のようにして求めた。まず、粒径0.1mm程度に粉砕したガラスをボート状の白金容器に入れ、温度勾配炉に24時間保持した後、取り出した。この試料を顕微鏡で観察して結晶の初相が出る温度(液相線温度)を測定し、次いで予め測定しておいた当該ガラスの温度と粘度の関係から、初相の温度に対応する粘度(液相線粘度)を求めた。
水分量を示す係数Xは、赤外分光光度計にて測定した3846cm−1付近の極小点の透過率aと、3560cm−1付近の極小点の透過率bを下記式に代入して求めた。なおtは試料厚み(mm)である。
X=(log(a/b))/t
密度はアルキメデス法にて、ヤング率は曲げ共振法にて求めた。
次に、得られたガラス試料について、紫外線遮蔽性、耐ソラリゼーション性、泡数、リボイル性、加工性及び着色の有無を評価した。結果を表2に示す。
紫外線遮蔽性は、両面を鏡面研磨した厚さ0.2mmの板状ガラス試料を作製し、波長253.7nmの分光透過率を測定し、1%以下であれば「A」とした。なお253.7nmの波長は水銀の輝線である。本発明の用途では、この波長の透過率が低いほどよい。
耐紫外線ソラリゼーション性は次のようにして評価した。まず、厚さ1mmの板状ガラスの両面を鏡面研磨して試料を得た。次いで紫外線照射前の試料の透過率が80%を示す光の波長を測定した。さらにその試料に40Wの低圧水銀ランプによって主波長253.7nmの紫外線を照射距離20mmで60分間照射した後、400nmの照射前に透過率と照射後の透過率を比較して、その差が1%以下である場合を「A」とした。なお耐紫外線ソラリゼーション性の劣るガラスほど、この透過率低下が大きくなるが、液晶バックライト等の蛍光ランプ用外套容器は、この低下が殆どないことが重要である。
ガラスの着色は、厚さ1mmのガラス試料を肉眼で観察し、着色が無いものを「A」とした。
溶解性は次のようにして評価した。まずガラス原料100gを三角坩堝に投入し、1550℃で2時間加熱した後、坩堝内で冷却、固化させた。固化後、坩堝からガラス塊を壊れないように取り出し、アニールした。その後、ガラス塊の中央部を7mm厚で切り出し、透過光を用いて断面を観察した。その結果、未溶解物が見当たらないものを「A」、僅かに認められるものを「B」、未溶解物が集合して白く見える状態のものを「C」とした。
泡数は、ブロック状に切り出したガラス試料を観察し、40倍の顕微鏡で見える泡(直径30μm程度以上の泡)の数を数え、100g当たりの個数に換算した値である。
加工性は、管ガラスの端を封止することで評価した。具体的には次のようにして行った。まず試料をガラス細管状に加工し、その一端をバーナーで加熱しながら、はさみ状の工具でつまみ封止した封入面を観察し、リボイル泡のないこと、封入管周辺の変形の無いことを確認して、問題が無けれは「A」とした。
ガラスの着色は、厚さ1mmのガラス試料を肉眼で観察し、着色が無いものを「A」とした。
型付着性は、金型の間に板ガラスを挟み、軟化点+30℃まで加熱して加工したときの金型からのはがれ易さを評価し、問題なく離型できたものを「A」とした。