JP4399874B2 - 表示媒体用帯電粒子、表示素子、表示媒体及び表示媒体用帯電粒子の製造方法 - Google Patents
表示媒体用帯電粒子、表示素子、表示媒体及び表示媒体用帯電粒子の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散媒中で電界の印加に対して、所定の電極方向に移動する特性を有する表示媒体用帯電粒子、該表示媒体用帯電粒子及び分散媒が封入されたマイクロカプセル、及び、可撓性シートに該マイクロカプセルの配列層が形成され、該配列層への制御用電界の印加により画像形成するようにした表示媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、画像や文字情報等を表示する方式としては、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)方式から、液晶(Liquid Crystal )方式、プラズマ発光方式、EL(エレクトロルミネセンス)方式等を利用して可視化する方式まで、多岐にわたるものが存在している。
【0003】
近年、半導体技術の急速な進歩による各種電子装置の小型化に伴い、ディスプレイデバイスに対しても、小型化、軽量化、低駆動電圧化、低消費電力化、薄型フラットパネル化等が求められている。
【0004】
上述した要請に答えるべく、PDP(Plasma Display Panel)に代表される発光型や、LCD(Liquid Crystal Display )に代表される受光型等、非常に多くの種類のフラットパネル型電子ディスプレイデバイスが提案され、実用に供されている。そして、これらの中でも低消費電力であるという点で、近年、特に反射型LCDの研究が盛んに行われている。
【0005】
反射型LCDのメリットとしては、小型化、軽量化、低駆動電圧化、低消費電力化、薄型フラットパネル化等が可能な点や、通常の光源下において印刷物と同様に、目になじみやすく、外光の影響のない表示品質を有する点等が挙げられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、反射型LCDでは、ゲスト−ホスト液晶にTFTパネルを組み合わせた構成としても、理論的には、反射率66%、コントラスト比5:1の画像しか得られない。
【0007】
これは反射率57%、コントラスト比5:1の新聞紙の画像に限りなく近い画質であり、カレンダーやレーザープリンタによる出力画像の持つ反射率80%、コントラスト比21:1の画質にはほど遠く、画像が見にくいという問題があった。また、LCDは、メモリー機能を有さないため、制御電界を遮断すると画像表示を維持することができず、画像表示をおこなう間、常に、表示面に外部から電界等の刺激を加え続けなくてはならず、使いにくく、経済的にも不利であるという問題があった。
【0008】
【課題を解決するための手段】
これらの問題を解決するため、本発明者は、「低駆動電圧」「反射型方式における高反射率、高コントラスト」「制御電界遮断時のメモリ効果」に着目し、これらの機能を実現する表示機構を開発するために検討を行った結果、マイクロカプセル中において、顔料等の着色剤及び電荷調整剤等を含む表示媒体用帯電粒子を、電界の印加により所定の電極方向に移動させることにより、表示面への画像書き込みをおこなう画像表示方式が好都合であり、かつ、実現可能であることを見いだし、先に上記表示機構に関する出願を行った。その後、上記表示機構において使用する表示素子をより安価かつ高性能のものとすることを目的としてさらに検討を行った結果、溶媒中に分散させた液状のワックスの周囲に乳化剤の層を形成した後冷却する方法等を用い、表示媒体用帯電粒子の表面を乳化剤で被覆することにより、電荷調整剤を表示媒体用帯電粒子表面に存在させる等の方法を用いなくても、充分な帯電特性を有する表示媒体用帯電粒子を効率的に製造することができることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、上記目的を達成するために、請求項1記載の表示素子における表示媒体用帯電粒子は、分散媒中で正又は負に帯電する、0.1〜100μmの平均粒子径を有する表示媒体用帯電粒子であって、着色剤が分散又は溶解したワックス又は樹脂と、少なくとも上記ワックス又は上記樹脂の表面の一部を被覆する乳化剤とからなることを特徴としている。
【0010】
上記請求項1記載の表示素子における表示媒体用帯電粒子によれば、上記表示媒体用帯電粒子は、着色剤が分散又は溶解したワックス又は樹脂と、少なくとも上記ワックス又は上記樹脂の表面の一部を被覆する乳化剤とからなるので、上記乳化剤の極性基により表示媒体用帯電粒子に帯電特性を付与することができ、その帯電極性を制御することもできる。従って、表示媒体用帯電粒子中に電荷調整剤を添加したり、表示媒体用帯電粒子の主成分である上記ワックス又は上記樹脂によって帯電特性を付与する必要がなくなり、より安価で高性能の表示媒体用帯電粒子を実現することができる。
【0011】
また、請求項1記載の表示素子は、二種以上の表示媒体用帯電粒子及びこれらの表示媒体用帯電粒子を分散させるための分散媒が封入されたマイクロカプセルからなり、上記マイクロカプセル中の上記表示媒体用帯電粒子の分布状態を制御用電界の作用下で変えることにより、上記マイクロカプセルの所定領域の光学的反射特性に変化を与えて所要の表示動作を行わせるようにした表示素子であって、上記表示媒体用帯電粒子として、上述の表示媒体用帯電粒子が使用されていることを特徴としている。
【0012】
上記請求項1記載の表示素子によれば、上記マイクロカプセル中の表示媒体用帯電粒子として上述の表示媒体用帯電粒子が使用されているので、より安価で高性能の表示素子を実現することができる。
【0013】
また、請求項2記載の表示媒体は、可撓性シートに、マイクロカプセルの配列層が形成され、上記配列層中のそれぞれのマイクロカプセルに制御用電界を印加することにより、所要の表示動作を行わせるようにした表示媒体であって、上記マイクロカプセルとして、請求項1記載の表示素子が使用されていることを特徴としている。
【0014】
上記請求項2記載の表示媒体によれば、上記マイクロカプセルとして、請求項1記載の表示素子が使用されているので、より安価で高性能の表示媒体を実現することができる。
また、請求項2記載の表示媒体は、上述の表示媒体用帯電粒子を備えたことを特徴としている。
また、請求項3記載の表示媒体用帯電粒子は、電気泳動型の表示装置に用いる表示媒体用帯電粒子であって、分散媒中で正又は負に帯電し、0.1〜100μmの平均粒子径を有し、着色剤が分散又は溶解したワックス又は樹脂と、少なくとも上記ワックス又は上記樹脂の表面の全面を被覆する乳化剤とからなることを特徴としている。
【0015】
また、請求項4記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法は、電気泳動型の表示装置に用いる表示媒体用帯電粒子の製造方法であって、着色剤が分散又は溶解したワックス及び乳化剤を、上記ワックスの濃度が50重量%未満、上記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後、この液の加熱により上記ワックスを液状化するとともに、攪拌により微粒子状に分散したワックスの周囲全面に上記乳化剤の層を形成し、その後冷却することを特徴としている。
【0016】
上記請求項4記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法によれば、ワックスの分散性を向上さる乳化剤の添加により、より粒子径の揃った微粒子を製造することができる。また、上記方法は簡単であり、少量の乳化剤のみにより表示媒体用帯電粒子に帯電極性を付与することができるので、効率的かつ安価に表示媒体用帯電粒子を製造することができる。
【0017】
また、請求項5記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法は、電気泳動型の表示装置に用いる表示媒体用帯電粒子の製造方法であって、着色剤が分散又は溶解した重合性不飽和結合を有する単量体又は上記単量体の2種以上を混合した単量体混合液と重合開始剤と乳化剤とを、上記単量体又は上記単量体混合液の濃度が50重量%未満、上記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後攪拌し、微粒子状に分散した上記単量体又は上記単量体混合液の周囲全面に上記乳化剤の層を形成した後、重合反応を行うことを特徴としている。
【0018】
上記請求項5記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法によれば、分散性を向上させる乳化剤の添加により、より粒子径の揃った微粒子を製造することができる。また、少量の乳化剤のみにより表示媒体用帯電粒子に帯電極性を付与することができるので、効率的かつ安価に表示媒体用帯電粒子を製造することができる。
また、請求項6記載の表示媒体用帯電粒子は、上記請求項4記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法により得られることを特徴としている。
また、請求項7記載の表示媒体用帯電粒子は、上記請求項5記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法により得られることを特徴としている。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の表示媒体用帯電粒子、表示素子及び表示媒体の実施の形態について図を参考にしながら説明する。本発明の表示媒体用帯電粒子は、分散媒中で正又は負に帯電する、0.1〜100μmの平均粒子径を有する表示媒体用帯電粒子である。
【0020】
上記表示媒体用帯電粒子の平均粒子径を0.1〜100μmとしたのは、上記表示媒体用帯電粒子の平均粒子径が0.1μm未満では、表示媒体用帯電粒子が小さすぎるため、上記表示媒体用帯電粒子の製造が困難になるとともに、マイクロカプセル等の表示素子中に上記表示媒体用帯電粒子を多数存在させる必要が生じ、性能低下の原因となり易く、一方、上記表示媒体用帯電粒子の平均粒子径が100μmを超えると、表示媒体用帯電粒子が大きくなりすぎ、移動しにくくなるため、表示素子としての機能を果たしにくくなるからである。
【0021】
上記表示媒体用帯電粒子は、着色剤が分散又は溶解したワックス又は樹脂と、少なくとも上記ワックス又は上記樹脂の表面の一部を被覆する乳化剤とからなる。この樹脂には、合成樹脂や天然樹脂を使用可能であり、環境安定性の高い合成樹脂がより好ましい。
【0022】
上記表示媒体用帯電粒子を着色するための着色剤としては、例えば、一般に周知の着色コロイド粒子;種々の有機・無機質顔料、染料、金属粉、ガラス、樹脂等の粉砕微粉末等が挙げられる。
【0023】
上記有機顔料としては特に限定されず、例えば、Hansa Yellow、Benzine Yellow等の黄色顔料;Parmanent Red、benzine orange、pyrazolone orange、vulcan orange、orange lake、para red、lakered、toluidine red、brill fast scarlet、brill carmine、brill scarlet、bordo、watchung red、lithol red、bon maroon、lake bordo、rhodamine、madder lake等の赤色顔料;rhodamine b lake、dioxazine violet、crystal violet lake等の紫色顔料;victoria pure blue lake、victoria blue lake、phthalocyanine blue、fast sky blue、threne blue rs等の青色顔料、diamonde green lake、phthalocyanine green、pigment green b、green gold等の緑色顔料、diamond black等の黒色顔料等が挙げられる。
【0024】
上記無機顔料としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック等の黒色顔料;酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化すず等の白色顔料等が挙げられる。
上記無機顔料及び有機顔料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記染料としては特に限定されず、例えば、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペノリン染料、フタロシアニン染料等が挙げられる。上記染料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記ワックスは、上記着色剤を溶解又は分散させる、いわゆるバインダーとなるものである。上記ワックスは、合成高分子からなる合成ワックスと天然の材料からなる天然ワックスとに分けられる。上記合成樹脂や天然樹脂も、上記着色剤を溶解又は分散させるバインダーとなるものである。上記合成ワックス又は上記合成樹脂は、重合性不飽和結合を有する単量体又は上記単量体の2種以上を混合した単量体混合物を重合させることにより得られるものである。また、上記合成ワックスは、上記樹脂と比べて分子量が低く、80〜150℃程度で容易に液状化するものをいい、それよりも高分子量のものを樹脂という。
【0027】
上記合成ワックス又は合成樹脂の製造に使用する単量体成分としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、エチレン、プロピレン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0028】
また、上記単量体成分は、その化合物中に、例えば、カルボキシル基、水酸基、メチロール基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、グリシジル基等の官能基を含むものであってもよい。
【0029】
上記カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等が挙げられ、上記水酸基を有する単量体としては、例えば、β−ハイドロキシエチルアクリレート、β−ハイドロキシエチルメタクリレート、β−ハイドロキシプロピルアクリレート、β−ハイドロキプロピルメタクリレート、アリルアルコール等が挙げられる。
【0030】
上記メチロール基を有する単量体としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等が挙げられ、アミノ基を有する単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
上記酸アミド基を有する単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられ、グリシジル基を有する単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル等が挙げられる。
【0032】
上記した単量体成分の官能基は、従来においては、製造した表示媒体用帯電粒子の帯電極性を決定するものであり、帯電調整剤等を使用しない場合には、必ずこれら官能基を有する単量体を使用する必要があった。しかし、本発明においては、製造した表示媒体用帯電粒子の帯電極性を、表面を被覆する乳化剤の種類により制御することができる。従って、単量体として、これらの官能基を有さないものも自由に選択することができ、より安価な単量体を選択することができる。
【0033】
上記天然ワックスは、植物系、動物系、鉱物系、石油系に分類される。植物系ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油等が挙げられる。動物系ワックスとしては、例えば、みつろう、ラノリン、鯨ろう等が挙げられる。
【0034】
鉱物系ワックスとしては、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が挙げられる。石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラム等が挙げられる。これらの天然ワックスは、単独で使用されるほか、2種以上が併用される。樹脂として、上記の合成樹脂の他に使用可能な天然樹脂としては、サンダラック、マニラコバール、ペリーバラサム、トルーバルサム、アラビアゴム、カシューゴム、ゼオルゴム、アンモニアゴム、ジュルトン、クチルゴム等が挙げられる。
【0035】
上記表示媒体用帯電粒子は、以下に説明する方法により製造するため、通常、乳化剤は表示媒体用帯電粒子の全面をほぼ被覆している。しかし、乳化剤は必ずしも表示媒体用帯電粒子の全面を被覆している必要はなく、その一部を被覆していても、充分に表示媒体用帯電粒子に帯電特性を付与することができる。
【0036】
次に、ワックスを使用した表示媒体用帯電粒子の製造方法について説明する。この場合、着色剤が分散又は溶解したワックス及び乳化剤を、上記ワックスの濃度が50重量%未満、上記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後、この液の加熱により上記ワックスを液状化するとともに、攪拌により微粒子状に分散したワックスの周囲に上記乳化剤の層を形成し、その後冷却することにより上記ワックスを固化させ、表示媒体用帯電粒子を製造する。
【0037】
まず、着色剤として顔料を使用する場合には、ロールミル等を使用することにより、顔料をワックスに練り込み、ワックス中に顔料を分散させる。また、着色剤として上記染料を使用する場合には、ワックスを溶融させた後、染料をワックスと混合すると、染料がワックス中に溶解する。着色剤として染料を使用した場合、上記染料は、ワックス中には溶解するが、表示媒体用帯電粒子を分散させる分散媒には溶解しない特性が要求される。
【0038】
次に、着色剤が分散又は溶解したワックス及び乳化剤を、上記ワックスの濃度が50重量%未満、上記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入する。ワックスの濃度は、5〜20重量%がより好ましい。
【0039】
上記乳化剤とは、液中に添加されることにより乳化作用を示すものをいい、界面活性剤及び親水性高分子等が該当する。上記界面活性剤は、パラフィン、オレフィン、アルキルベンゼン等の疎水性化合物に結合している親水基の種類により、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤等に分類され、本発明では、上記いずれの界面活性剤も使用することができる。
【0040】
上記アニオン系界面活性剤としては、例えば、親水基がカルボン酸基、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等で構成されているもの等が挙げられる。上記カチオン系界面活性剤としては、例えば、親水基が第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩、第四級アンモニウム塩等で構成されたものが挙げられる。
【0041】
上記両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。上記非イオン界面活性剤としては、親水基を形成するための原料として、グリセリン等の多価アルコールや、エチレンオキサイド等のポリエチレングリコールを使用し、疎水基を形成するための原料として、多価アルコール、アルキルフェノール、脂肪酸、油脂等を使用して合成されたもの等が挙げられる。上記親水性高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース等が挙げられる。
【0042】
上記方法においては、まず、ワックス及び乳化剤を液中に投入した後、液を80〜150℃程度に加熱し、上記ワックスを液状にする。そのため、ワックスの融点は、150℃以下のものが好ましい。常圧では、ワックスの融点より高い温度とすることができない液体を使用する場合には、液の温度を上げるために、加圧攪拌装置等を使用してもよい。加圧攪拌装置を使用すると、溶媒等の沸点が上昇するため、溶媒等の沸点以上での乳化が可能となる。
【0043】
液の温度を上げてワックスを液状にした後、乳化剤の存在下、ワックスがより微粒子になるように、充分に攪拌を行う。この際、ミキサー等の種々の攪拌装置を使用することができる。上記攪拌により、ワックスは微粒子状に分散し、このワックスの周囲に親油性基をワックス側に向け、親水性基を周囲の液側に向けた乳化剤の層が形成される。その後、液を冷却すると、周囲に乳化剤の層が形成された微粒子状のワックスはそのまま固化し、表面が乳化剤で被覆された表示媒体用帯電粒子が製造される。上記方法のほか、ワックスを80〜150℃程度に加熱して液状とした後、このワックス及び乳化剤をワックスの融点よりも高い温度の液に投入して攪拌し、ワックスの周囲に乳化剤の層を形成し、その後冷却して上記ワックスを固化させ、表示媒体用帯電粒子を製造してもよい。この場合にも、加圧攪拌装置等を使用してもよい。
【0044】
この表示媒体用帯電粒子を被覆した乳化剤は、洗浄等の操作を行っても除去されず、さらに上記表示媒体用帯電粒子を分散媒中に分散させた後も上記乳化剤は表示媒体用帯電粒子の表面に留まり、極性基を分散液側に向けているため、この乳化剤の極性基に基づく帯電極性を有する表示媒体用帯電粒子が製造されたことになる。従って、使用する乳化剤の極性基の正、負を選択することにより、表示媒体用帯電粒子の帯電極性を選択することができる。
【0045】
上記方法では、乳化剤の作用によりワックスが液中に均一に分散するため、数μm程度の小さな平均粒子径を有し、かつ、粒子径の揃った表示媒体用帯電粒子を製造することが可能となる。帯電調整剤を用いる方法では、帯電調整剤をワックス中に均一に分散させる必要があり、また、表示媒体用帯電粒子をその表面に露出させる必要があるため、技術的に難しく、全ての表示媒体用帯電粒子について、上記帯電調整剤が表面に露出したものを製造することは困難であった。また、官能基を有するワックスを使用することにより表示媒体用帯電粒子に帯電特性を付与する方法では、使用するワックスが限られていた。しかし、本発明の方法は、液状のワックスと乳化剤とを液中に投入して攪拌するという簡単な方法であり、また、安価なワックスを使用することができ、少量の乳化剤のみにより表示媒体用帯電粒子に帯電極性を付与することができるので、効率的かつ安価に表示媒体用帯電粒子を製造することができる。
【0046】
次に、樹脂を主成分とする表示媒体用帯電粒子の製造方法について説明する。この場合、上記着色剤が分散又は溶解した上記単量体又は上記単量体の2種以上を混合した単量体混合液と重合開始剤と乳化剤とを、上記単量体又は上記単量体混合液の濃度が50重量%未満、上記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後攪拌し、微粒子状に分散した上記単量体又は上記単量体混合液の周囲に上記乳化剤の層を形成した後、重合反応を行うことにより表示媒体用帯電粒子を製造する。
【0047】
通常、上記単量体は液体であるので、上記単量体と上記着色剤とを混合することにより、単量体中に着色剤を溶解又は分散させることができる。上記したように、単量体の重合による表示媒体用帯電粒子の製造は、通常の乳化重合と同様の方法を用いることにより行うことができる。また、重合開始剤は、通常の乳化重合で使用する重合開始剤を使用することができ、乳化剤は、上記ワックスを用いた表示媒体用帯電粒子の製造方法において使用した乳化剤を使用することができる。上記単量体又は上記単量体混合液の濃度は、5〜20重量%がより好ましい。
【0048】
上記方法により得られる表示媒体用帯電粒子では、その表面を被覆した乳化剤が、洗浄等の操作を行っても除去されず、上記表示媒体用帯電粒子を分散媒に分散させた後も表面に留まっているため、この乳化剤の極性基に基づく帯電極性を有する表示媒体用帯電粒子が製造されたことになる。従って、使用する乳化剤の極性基を選択することにより、表示媒体用帯電粒子の帯電極性を選択することができる。
【0049】
また、上記方法を用いることにより、数μm程度の小さな平均粒子径を有する粒子径の揃った表示媒体用帯電粒子を製造することが可能となる。また、少量の乳化剤のみにより表示媒体用帯電粒子に帯電極性を付与することができるので、効率的かつ安価に表示媒体用帯電粒子を製造することができる。
【0050】
上記方法により製造された表示媒体用帯電粒子に関し、着色剤として酸化チタンが使用された表示媒体用帯電粒子は、白色度及び隠蔽性の点で優れており、着色剤として使用するカーボンブラックは完全な黒色を示すため、カーボンブラックが使用された表示媒体用帯電粒子は、黒色度に優れている。
【0051】
従って、酸化チタン及びカーボンブラックを着色剤として使用した表示媒体用帯電粒子を用いることにより、反射率やコントラスト比が高く、見やすい画像等を有する表示媒体を実現することができる。表示媒体用帯電粒子に含有される着色剤の含有量は、酸化チタンの場合には、5〜60重量%が好ましく、カーボンブラックの場合には、3〜30重量%が好ましい。
【0052】
上記表示媒体用帯電粒子を分散させるための分散媒は、高絶縁性と無色透明性を有しているものが好ましく、このような特性を有する分散媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環式炭化水素、ハロゲン化炭化水素、各種エステル類、アルコール類、その他の油類等が挙げられる。これらの分散媒は、単独で使用されるほか、2種以上が併用される。
【0053】
上記分散媒中には、表示媒体用帯電粒子の分散状態を良好にするために、界面活性剤が含まれていてもよい。上記界面活性剤は、パラフィン、オレフィン、アルキルベンゼン等の疎水基に結合している水酸基の種類により、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤等に分類され、本発明では、上記いずれの界面活性剤も使用することができる。
【0054】
ただし、その添加量は界面活性剤の種類、構造によっても異なるが、絶縁性の分散媒の絶縁度を極度に低下させない範囲において添加することが好ましい。
【0055】
上記表示媒体用帯電粒子は、上記分散媒に分散された状態で使用され、種々の表示素子に使用することが可能であるが、マイクロカプセル中に封入することにより、以下に説明するような構成の表示素子、表示媒体として使用することができる。
【0056】
図1は、本発明の表示素子として機能するマイクロカプセルの一例を模式的に示した説明図であり、図2は、マイクロカプセルに電界を作用させた後の黒色表示媒体用帯電粒子及び白色表示媒体用帯電粒子の状態を模式的に示した説明図である。
【0057】
図1に示されるように、このマイクロカプセル10には、例えば、多数の黒色表示媒体用帯電粒子12a及び白色表示媒体用帯電粒子12bからなる表示媒体用帯電粒子12と、液体分散媒14とが封入されている。黒色表示媒体用帯電粒子12aは、例えば、カーボンブラックと天然ワックスとから構成されており、白色表示媒体用帯電粒子12bは、例えば、酸化チタンと天然ワックスとから構成されている。そして、電界が作用していない場合には、図1に示されるように、黒色表示媒体用帯電粒子12aと白色表示媒体用帯電粒子12bとは、無秩序に分散している。
【0058】
次に、このマイクロカプセル10に電界を作用させると、液体分散媒14中に分散浮遊している黒色表示媒体用帯電粒子12aと白色表示媒体用帯電粒子12bとは、電界の作用により、各々逆方向に泳動し、例えば、図2に示されるように、上方に白色表示媒体用帯電粒子12bが凝集し、一方、下方には、黒色表示媒体用帯電粒子12aが凝集する。
【0059】
このため、上方からこのマイクロカプセル10を見た場合、下側で凝集している黒色表示媒体用帯電粒子12aは、白色表示媒体用帯電粒子12bに隠蔽されて見えず、マイクロカプセル10の部分は白色に見える。
【0060】
一方、図には示していないが、図2と反対方向の電界が印加された場合、黒色表示媒体用帯電粒子12aは上側に凝集し、白色表示媒体用帯電粒子12bは下側に凝集するため、このマイクロカプセル10の部分は上方から黒色に見える。
【0061】
このようなマイクロカプセル10を可撓性シートの表面等に配列させ、マイクロカプセル10に印加する電界の方向を変えることにより、表示面に所定の画像を形成することが可能になる。また、マイクロカプセル10中に赤、青、黄色等の色を含む表示媒体用帯電粒子12を封入することにより、赤、青、黄色等の色を含む画像を表示することも可能となる。本発明においては、粒径の整った表示媒体用帯電粒子12を使用するので、電界を印加した場合の表示媒体用帯電粒子12の移動がスムーズに行われ、より高性能の表示が可能になる。
【0062】
上記マイクロカプセルは、すでに当業界において公知の技術となっている方法で作製することが可能である。マイクロカプセルの製造方法としては、例えば、米国特許第2800457号、同第2800458号明細書等に示されるような水溶液からの相分離法、特公昭38−19574号、特公昭42−446号、特公昭42−771号公報等に示されるような界面重合法、特公昭36−9168号、特開昭51−9079号公報等に示される単量体の重合によるin−situ法、英国特許第952807号、同第965074号明細書に示される融解分散冷却法等があるが、これに限定されるものではない。
【0063】
マイクロカプセル10の外壁部の形成材料としては、上記のカプセル製造方法にて外壁部が作製可能であれば特に限定されず、無機物質でも有機物質でもよいが、光を充分に透過させるような材質が好ましい。
【0064】
上記外壁部の形成材料の具体例としては、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、デンプン、アルギン酸ソーダ、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリユリア、ポリスチレン、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、これらの共重合物等が挙げられる。
【0065】
マイクロカプセル10中の各表示媒体用帯電粒子12の体積は、マイクロカプセル10の容積に対して、それぞれ1.5〜25容量%であるのが好ましく、すべての表示媒体用帯電粒子12の体積の総和は、マイクロカプセル10の容積に対して、1.5〜50容量%であることが好ましい。
【0066】
各表示媒体用帯電粒子12の体積が1.5容量%未満であると、目的とする表示色ではない反対色粒子も観察者の目に触れてしまい、そのためにコントラストが低下して見える。一方、25容量%を超えると、表示媒体用帯電粒子12が大きすぎるためにマイクロカプセル10の内部を移動しにくくなる。また、すべての表示媒体用帯電粒子12の体積の総和が1.5容量%未満であると、表示媒体用帯電粒子12の量が少なすぎるため、はっきりした画像が形成されず、一方、50容量%を超えると、表示媒体用帯電粒子12の量が多すぎるためにマイクロカプセル10の内部を移動しにくくなり、そのため、制御電界に対する応答性が低下する。
【0067】
表示媒体用帯電粒子12の粒子径は、マイクロカプセル10の粒子径に対して1/1000〜1/5であるのが好ましく、表示媒体用帯電粒子12の粒度分布の分散度は、体積平均粒子径/個数平均粒子径で表した場合、1〜2であるのが好ましい。また、マイクロカプセル10の粒子径は、50〜500μmであるのが好ましい。
【0068】
図3は、本発明の表示素子を利用した表示媒体の一例を模式的に示した断面図である。この表示媒体20においては、マイクロカプセル10が多数内部に分散、配列された可撓性シート22の上面側に、多数の透明電極24が平面視アレー状に設けられており、下面側に透明又は不透明の電極25が設けられている。
【0069】
また、これら個々の透明電極24と電極25には、図示しない電源が接続され、各透明電極24と電極25との間に、電極25の電圧を基準として、+又は−の電圧がそれぞれ独立して印加されるようになっている。
【0070】
また、透明電極24は、マイクロカプセル10を平面視した形状よりも大きくなっており、1個の透明電極24につき、少なくとも1個のマイクロカプセル10が対応して設けられている。
【0071】
可撓性シート22としては、樹脂製のフィルム、紙等が挙げられる。表示しようとする画像等に応じた電圧を、この表示装置20の各透明電極24と電極25との間にそれぞれ印加すると、図3に示したように、上側に黒色表示媒体用帯電粒子12a又は白色表示媒体用帯電粒子12bが凝集し、これにより表示しようとする画像に対応した画像が形成される。
【0072】
また、電源をオフにしても、表示媒体用帯電粒子12の凝集状態は変化しないので、別の画像に対応する電圧を、各透明電極24と電極25との間にそれぞれ印加しないかぎり、その画像の表示状態が維持される。表示媒体には電極を設けず、外部の電界印加装置を使用して、個々のマイクロカプセルに電界を印加するようにしてもよい。
【0073】
以上のように、本発明の表示媒体においては、可撓性シートに、その表面に乳化剤が被覆された表示媒体用帯電粒子及び分散媒が封入されたマイクロカプセルの配列層が形成され、上記配列層中のそれぞれのマイクロカプセルに制御用電界を印加することにより所要の表示動作を行わせるようにした表示媒体が使用されているので、より高性能の表示媒体を実現することができる。
【0074】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0075】
実施例1
表示媒体用帯電粒子のコア材料としてアミドワックスを使用し、カーボンブラックが10重量%含有されるように、ロールミルを使用してカーボンブラックをワックスに練り込んだ。
【0076】
次に、蒸留水に乳化剤としてポリビニルアルコール(PVA)を溶解し、PVAの濃度が3重量%の水溶液を調製した。続いて、この水溶液にカーボンブラックが分散したアミドワックスを投入し、90℃になるまで加熱した後、充分に攪拌し、微粒子状に分散したアミドワックスの周囲に上記乳化剤の層を形成した後冷却してアミドワックスを固化させ、平均粒子径が10μmの黒色の表示媒体用帯電粒子を製造した。次に、このようにして製造された表示媒体用帯電粒子を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。充分に乾燥させた表示媒体用帯電粒子を分散媒(Exxson社製 IsoparG)中に浸漬し、ゼータ電位計(大塚電子製 ELS−8000)でゼータ電位を測定したところ、この表示媒体用帯電粒子のゼータ電位は、−24.9mVであった。
【0077】
比較例1
乳化剤を全く使用しなかったほかは、実施例1と同様にして表示媒体用帯電粒子を作製した。この方法により製造された表示媒体用帯電粒子は、実施例1で製造した表示媒体用帯電粒子に比べ、粒子が不揃いであった。また、実施例1と同様にゼータ電位を測定したところ、この表示媒体用帯電粒子のゼータ電位は、+18.5mVであった。
【0078】
上記実施例1及び比較例1の結果より、比較例1で製造された表示媒体用帯電粒子は、乳化剤により表面が被覆されていないため、アミドワックスの極性基に起因して、+に帯電したと考えられ、一方、実施例1で製造された表示媒体用帯電粒子は、表面がPVAにより被覆されているため、この極性基である水酸基、又は、PVAの中間物質であるポリ酢酸ビニルの極性基(カルボキシル基)に起因して、−に帯電したと考えられる。
【0079】
実施例2
表示媒体用帯電粒子のコア材料としてアミドワックスを使用し、酸化チタンが10重量%含有されるように、ロールミルを使用して酸化チタンをワックスに練り込んだ。
【0080】
次に、蒸留水に乳化剤としてカチオン性界面活性剤C8H17N(CH3)3 +Br− を溶解し、C8H17N(CH3)3 +Br−の濃度が5重量%の水溶液を調製した。続いて、この水溶液に酸化チタンが分散したアミドワックスを投入し、90℃になるまで加熱した後、充分に攪拌し、微粒子状に分散したアミドワックスの周囲に上記乳化剤の層を形成した後冷却してアミドワックスを固化させ、平均粒子径が10μmの白色の表示媒体用帯電粒子を製造した。
【0081】
次に、このようにして製造された表示媒体用帯電粒子を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。充分に乾燥させた表示媒体用帯電粒子を分散媒(Exxson社製 IsoparG)中に浸漬し、ゼータ電位計(大塚電子製 ELS−8000)でゼータ電位を測定したところ、この表示媒体用帯電粒子のゼータ電位は、+30.0mVであった。
【0082】
実施例3
表示媒体用帯電粒子のコア材料としてアミド樹脂(三和化学工業製 サンマイド550)を使用し、カーボンブラックが10重量%含有されるように、ロールミルを使用してカーボンブラックを上記アミド樹脂に練り込んだ。
【0083】
次に、蒸留水に乳化剤としてポリビニルアルコール(PVA)を溶解し、PVAの濃度が3重量%の水溶液を調製した。続いて、この水溶液にカーボンブラックが分散したアミド樹脂を投入し、140℃になるまで加熱した後、充分に攪拌し、微粒子状に分散したアミド樹脂の周囲に上記乳化剤の層を形成した後冷却してアミド樹脂を固化させ、平均粒子径が10μmの表示媒体用帯電粒子を製造した。次に、このようにして製造された表示媒体用帯電粒子を蒸留水で洗浄し、乾燥させた。充分に乾燥させた表示媒体用帯電粒子を分散媒(Exxson社製 IsoparG)中に浸漬し、ゼータ電位計(大塚電子製 ELS−8000)でゼータ電位を測定したところ、この表示媒体用帯電粒子のゼータ電位は、−14.3mVであった。
【0084】
比較例2
乳化剤を全く使用しなかったほかは、実施例3と同様にして表示媒体用帯電粒子を作製した。この方法により製造された表示媒体用帯電粒子は、実施例1で製造した表示媒体用帯電粒子に比べ、粒子が不揃いであった。また、実施例1と同様にゼータ電位を測定したところ、この表示媒体用帯電粒子のゼータ電位は、+7.2mVであった。
【0085】
実施例4
乳化剤である5%ポリスチレンスルホン酸の一部ナトリウム塩水溶液と液体分散媒である脂肪族炭化水素溶媒の1:1水溶液100cc中に、上記実施例1において製造された黒色表示媒体用帯電粒子及び上記実施例2において製造された白色表示媒体用帯電粒子を加え、ホモジナイザーで6000回転、5分間攪拌して、水溶液中に白色表示媒体用帯電粒子及び黒色表示媒体用帯電粒子を含む液体分散媒が均一に分散したエマルジョンを得た。
【0086】
別に、ホルムアルデヒド37%水溶液に市販のメラミン粉末を加え、水酸化ナトリウム溶液によってPH9.0に調整し、水温60℃で30分間加熱してメラミン/ホルムアルデヒドプレポリマーを得た。次に、上記エマルジョンにメラミン/ホルムアルデヒドプレポリマーを加え、アジホモミキサーなどによって100〜300回転で攪拌しつつ水温が80℃になるように加熱した状態で5時間保持し、その後PH7に調整して常温まで冷却した。
【0087】
この結果、白色表示媒体用帯電粒子及び黒色表示媒体用帯電粒子を含む液体分散媒のまわりにメラミン/ホルムアルデヒド樹脂からなる壁部材が析出し、表示媒体用帯電粒子を内包するマイクロカプセルが得られた。マイクロカプセルの平均粒子径は40〜70μmであった。
【0088】
次に、上記方法により製造されたマイクロカプセルを取り出し、可撓性シート上に分散、配列させた後、電極間に配置し、100V/mmの制御電界を引加して画像表示を行い、下記に示す画像の評価を行った。
【0089】
評価方法
(1)白色反射率
測定器として反射濃度計(マクベス社製 RD914)を使用してOD値(オプティカル デンシティ)を測定し、反射率T(%)を、−log10T=ODで算出した。
(2)コントラスト比
白色反射率の場合と同様に、黒印字部分についても、反射率Tblack を測定し、コントラスト比=Tblack :Twhite =1:(Twhite /Tblack )で求めた。上記した画質の評価基準(スレッシ値)には、様々な条件下でのレーザプリンタ画像サンプルの平均値(白色反射率72%、コントラスト比15:1)を適用した。
【0090】
この結果、この表示媒体の白色反射率は72%、黒色反射率は4.6%、コントラスト比は15.6:1であり、高反射率、高コントラスト比の画像が形成されていた。
【0091】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の表示素子の表示媒体用帯電粒子は、着色剤が分散又は溶解したワックス又は樹脂と、少なくとも上記ワックス又は上記樹脂の表面の一部を被覆する乳化剤とからなるので、上記乳化剤の極性基により表示媒体用帯電粒子に帯電特性を付与することができ、その帯電極性を制御することもできる。また、表示媒体用帯電粒子中に電荷調整剤を添加したり、表示媒体用帯電粒子の主成分である上記ワックス又は上記樹脂によって帯電特性を付与する必要がなくなるため、より安価で高性能の表示媒体用帯電粒子を実現することができる。
【0092】
また、請求項1記載の表示素子は、二種以上の表示媒体用帯電粒子及びこれらの表示媒体用帯電粒子を分散させるための分散媒が封入されたマイクロカプセルからなり、上記マイクロカプセル中の上記表示媒体用帯電粒子の分布状態を制御用電界の作用下で変えることにより、上記マイクロカプセルの所定領域の光学的反射特性に変化を与えて所要の表示動作を行わせるようにした表示素子であって、上記表示媒体用帯電粒子として、上述の表示媒体用帯電粒子が使用されているので、より安価で高性能の表示素子を実現することができる。
【0093】
また、請求項2記載の表示媒体は、可撓性シートに、マイクロカプセルの配列層が形成され、上記配列層中のそれぞれのマイクロカプセルに制御用電界を印加することにより、所要の表示動作を行わせるようにした表示媒体であって、上記マイクロカプセルとして、請求項1記載の表示素子が使用されているので、より安価で高性能の表示媒体を実現することができる。
【0094】
また、請求項4記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法は、着色剤が分散又は溶解したワックス及び乳化剤を、上記ワックスの濃度が50重量%未満、上記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後、この液の加熱により上記ワックスを液状化するとともに、攪拌により微粒子状に分散したワックスの周囲全面に上記乳化剤の層を形成し、その後冷却するので、より粒子径の揃った微粒子を製造することができる。また、上記方法は簡単であり、少量の乳化剤のみにより表示媒体用帯電粒子に帯電極性を付与することができるので、効率的かつ安価に表示媒体用帯電粒子を製造することができる。
【0095】
また、請求項5記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法は、着色剤が分散又は溶解した重合性不飽和結合を有する単量体又は上記単量体の2種以上を混合した単量体混合液と重合開始剤と乳化剤とを、上記単量体又は上記単量体混合液の濃度が50重量%未満、上記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後攪拌し、微粒子状に分散した上記単量体又は上記単量体混合液の周囲全面に上記乳化剤の層を形成した後、重合反応を行うので、より粒子径の揃った微粒子を製造することができる。また、少量の乳化剤のみにより表示媒体用帯電粒子に帯電極性を付与することができるので、効率的かつ安価に表示媒体用帯電粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の表示素子として機能するマイクロカプセルの一例を模式的に示した説明図である。
【図2】本発明の表示素子として機能するマイクロカプセルに電界を作用させた後の黒色表示媒体用帯電粒子及び白色表示媒体用帯電粒子の状態を模式的に示した説明図である。
【図3】本発明の表示素子を利用した表示媒体の一例を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
10 マイクロカプセル
12 表示媒体用帯電粒子
12a 黒色表示媒体用帯電粒子
12b 白色表示媒体用帯電粒子
14 液体分散媒
20 表示媒体
22 可撓性シート
24 透明電極
25 電極
Claims (7)
- 二種以上の表示媒体用帯電粒子及びこれらの表示媒体用帯電粒子を分散させるための分散媒が封入されたマイクロカプセルからなり、前記マイクロカプセル中の前記表示媒体用帯電粒子の分布状態を制御用電界の作用下で変えることにより、前記マイクロカプセルの所定領域の光学的反射特性に変化を与えて所要の表示動作を行わせるようにした表示素子であって、前記表示媒体用帯電粒子として、分散媒中で正又は負に帯電し、0.1〜100μmの平均粒子径を有し、着色剤が分散又は溶解したワックス又は樹脂と、少なくとも前記ワックス又は前記樹脂の表面の一部を被覆する乳化剤とからなる表示媒体用帯電粒子が使用されていることを特徴とする表示素子。
- 可撓性シートに、マイクロカプセルの配列層が形成され、前記配列層中のそれぞれのマイクロカプセルに制御用電界を印加することにより、所要の表示動作を行わせるようにした表示媒体であって、前記マイクロカプセルとして、請求項1記載の表示素子が使用されていることを特徴とする表示媒体。
- 電気泳動型の表示装置に用いる表示媒体用帯電粒子であって、分散媒中で正又は負に帯電し、0.1〜100μmの平均粒子径を有し、着色剤が分散又は溶解したワックス又は樹脂と、少なくとも前記ワックス又は前記樹脂の表面の全面を被覆する乳化剤とからなることを特徴とする表示媒体用帯電粒子。
- 電気泳動型の表示装置に用いる表示媒体用帯電粒子の製造方法であって、着色剤が分散又は溶解したワックス及び乳化剤を、前記ワックスの濃度が50重量%未満、前記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後、この液の加熱により前記ワックスを液状化するとともに、攪拌により微粒子状に分散したワックスの周囲全面に前記乳化剤の層を形成し、その後冷却することを特徴とする表示媒体用帯電粒子の製造方法。
- 電気泳動型の表示装置に用いる表示媒体用帯電粒子の製造方法であって、着色剤が分散又は溶解した重合性不飽和結合を有する単量体又は前記単量体の2種以上を混合した単量体混合液と重合開始剤と乳化剤とを、前記単量体又は前記単量体混合液の濃度が50重量%未満、前記乳化剤の濃度が0.5〜20重量%となるように液中に投入した後攪拌し、微粒子状に分散した前記単量体又は前記単量体混合液の周囲全面に前記乳化剤の層を形成した後、重合反応を行うことを特徴とする表示媒体用帯電粒子の製造方法。
- 請求項4記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法により得られることを特徴とする表示媒体用帯電粒子。
- 請求項5記載の表示媒体用帯電粒子の製造方法により得られることを特徴とする表示媒体用帯電粒子。
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