JP4398313B2 - 水性エマルションの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、新規な水性エマルションの製造方法に関する。
近年、環境に対する関心が高まる中、インク、接着剤、塗料・コーティング分野においては、環境に対応するため、溶剤系材料から水系材料への移行が急速に進んでいる。
このような状況下、水系の塗料の研究も盛んに行われ、各種物性において、溶剤系塗料に匹敵する水系塗料が、出現するようになってきた。
このような水系塗料において、さらなる物性の向上が望まれる中、水系塗料に用いられる水性エマルションの性能をコントロールすることで、耐候性、耐汚染性、耐久性、接着性・粘着性、弾性・粘弾性、耐水性、耐溶剤性、分散性、乾燥性、造膜性等、適材適所において各種物性の向上を図っている。
例えば、水性エマルションの性能をコントロールする方法としては、各種性能を有する2種以上の成分を複合する方法が一般的である。具体的には、2種以上のモノマーを共重合する方法、2種以上のポリマーをブレンドする方法、1種以上のポリマーの存在下で1種以上のモノマーを重合する方法、またはこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。
このうち、1種以上のポリマーの存在下で1種以上のモノマーを重合する方法では、様々な物性が得られやすい点から、種々検討がなされている。
例えば、特許文献1では、架橋性を有する単量体と、アクリレートまたはメタクリレートと、これらの単量体と共重合する単量体の混合物に、粘着付与剤樹脂(ポリマー)を溶解または分散した配合物、または、この配合物を、乳化剤を含有する水中に分散した乳化配合物を、水と乳化剤と重合触媒を含有する重合液に、連続的に添加しつつ重合を行いエマルションを得る方法が記載されており、耐水性と接着性の向上を図っている。
このようなエマルションの製造では、「安定な重合の場」はミセルとなり、水等の媒体を移動した単量体が、ミセル中で速やかに重合しエマルションが生成される。この時、粘着付与剤樹脂は、単量体の混合物に溶解しているため単量体の移動とともにミセル中へ移動する。しかしながら、粘着付与剤樹脂は、単量体に比べ、水等の媒体に溶けにくいものであるため、ミセルに移動しにくい。したがって最終的に、単量体から形成される重合体と粘着付与剤樹脂は、分離した状態となる場合があり、目的とする諸物性が得られない場合がある。
また、単量体に溶解させている粘着付与剤樹脂の添加量にも限度があり、粘着付与剤樹脂を多く添加することができないため、諸物性を達成できない場合もある。
また、特許文献2では、ビニルエステル及び(メタ)アクリル酸エステルの群から選択されたエステル基含有単量体の少なくとも一つを主成分として成る重合体のエマルションの中に、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とした単量体混合物と粘着付与剤樹脂(ポリマー)と乳化剤と水を含有しているプレエマルションを、逐次添加して、重合触媒の存在下に乳化重合を行なう方法が記載されている。
このような方法では、エマルション中の重合体がシードポリマーとして存在し、「安定な重合の場」を提供しており、粘着付与剤樹脂が「安定な重合の場」へ移動しやすい状態となっている。そのため、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とした単量体混合物の重合が、「安定な重合の場」で速やかに進行し、物性バランスの極めて良好な感圧接着性エマルションを製造することができる。(第15頁第30欄第31〜40行目記載)
しかしながら、このような方法においても、粘着付与剤樹脂は、単量体に比べ、水等の媒体に溶けにくいものであるため、粘着付与剤樹脂が「安定な重合の場」へ移動しにくい場合がある。したがって、単量体から形成される重合体と粘着付与剤樹脂は、分離した状態となる場合があり、諸物性を達成するには不十分な場合がある。
また、単量体に溶解させている粘着付与剤樹脂の添加量にも限度があり、粘着付与剤樹脂を多く添加することができないため、諸物性を達成できない場合もある。
特開昭58−185668号公報 特公平7−57864号公報
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、シード粒子を含むエマルションに、モノマー、ポリマーを含むプレエマルションを添加して乳化重合する方法において、モノマーとポリマーが両者とも「安定な重合の場」に移動しやすいように、ポリマーを溶解可能な非重合性の物質をプレエマルションに混合することにより、シード粒子とモノマーの重合体とポリマーが複合化された水性エマルションを効率よく製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.シード粒子を含むエマルション(A)に、
モノマー(b−1)、ポリマー(b−2)、α−ピネン、β−ピネン、β−ミルセン、d−リモネン、l−リモネン、d/l−リモネン、サビネン、γ−テルピネン、p−シメン、リナロール、α−テルピネオール、1−テルピネン−4−オール、酢酸オクチル、酢酸ネリル、酢酸リナリル、デカノール、オクタノール、1,4−シネオール、ゲラノール、ネロール、オクタナール、デカナール、ゲラニアール、ネラール、α−シネンサール、β−シネンサール、シトロネラール、ヌートカトン、ペリルアルデヒド、ソラーレン、クマリン、7−メトキシクマリン、ベルガブテンから選ばれる該ポリマーを溶解可能な非重合性の物質(b−3)、乳化剤、水を含むプレエマルション(B)を添加し、乳化重合することを特徴とする水性エマルションの製造方法。
2.プレエマルション(B)において、(b−1)、(b−2)、(b−3)の混合比率が、(b−1)100重量部に対し(b−2)が10〜100重量部、(b−2)100重量部に対し(b−3)が10〜500重量部であることを特徴とする1.に記載の水性エマルションの製造方法。
本発明は、シード粒子を含むエマルションに、モノマー、ポリマーを含むプレエマルションを添加して乳化重合する方法において、シード粒子とポリマーが分離することなく、シード粒子、ポリマー、モノマーの重合体が効率よく複合化された水性エマルションを製造できる。
本発明の製造方法では、「安定な重合の場」はシード粒子となる。この「安定な重合の場」に、プレエマルション中のモノマー、ポリマー、ポリマーを溶解可能な非重合性の物質等が移動し、重合が進行して、水性エマルションが製造される。この際、プレエマルションは、ポリマーを溶解可能な非重合性の物質により、ポリマーを溶解させているため、重合初期から重合後期にわたり、「安定な重合の場」へポリマーが移動しやすい。さらに、非重合性の物質は、ポリマー、モノマーの吸収力を高める効果もあるため、「安定な重合の場」へ移動した非重合性の物質は、ポリマーやモノマーを「安定な重合の場」へより移動しやすくする効果がある。よって、最終的にはシード粒子とポリマーが分離することなく、シード粒子、ポリマー、モノマーの重合体が効率よく複合化された水性エマルションを製造することができる。
また、ポリマーを溶解可能な非重合性の物質を含むため、プレエマルション中に高含有量のポリマーを含むことができる。そのためポリマーの性能を生かした、多機能な水性エマルションを製造することができる。よって、本発明は、目的に合わせて、諸性能をコントロールできる水性エマルションを製造することが可能である。
また、本発明の製造方法で得られた水性エマルションは、インク、接着剤、塗料・コーティング材料、プラスチック形成用材料等様々な分野で利用可能である。特に、塗料・コーティング材料として用いる場合は、ポリマーを溶解可能な非重合性の物質(b−3)が、造膜性を向上させるため、造膜助剤を添加しなくても、造膜性に優れた水性エマルションを得ることができる。
以下、本発明をその最良の形態に基づき詳細に説明する。
本発明の製造方法は、シード粒子を含むエマルション(以下、「(A)成分」ともいう。)に、モノマー(以下、「(b−1)成分」ともいう。)、ポリマー(以下、「(b−2)成分」ともいう。)、該ポリマーを溶解可能な非重合性の物質(以下、「(b−3)成分」ともいう。)、乳化剤、水を含むプレエマルション(以下、「(B)成分」ともいう。)を添加し、乳化重合して得られることを特徴とするものである。
エマルション(A)のシード粒子は、「安定な重合の場」を提供するものである。このようなシード粒子を構成する成分としては、最終的に製造される水性エマルションの性能に合わせて、各樹脂を選択すればよい。
例えば、シード粒子を構成する成分として、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、アルキッド樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース等が挙げられる。
シード粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、100nmから1000nm(好ましくは150nmから800nm)であることが好ましい。
なお、本発明の平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値である。具体的には、動的光散乱測定装置として、マイクロトラック粒度分析計(例えば、UPA150、日機装株式会社製)を用い、検出された散乱強度をヒストグラム解析法のMarquardt法により解析した値であり、測定温度は25℃である。
シード粒子は、シード粒子を構成するモノマー(a−1)を、乳化重合(モノマー一括仕込み法、モノマー添加法、プレエマルション添加法等あるいはそれらの組み合わせた方法)することによって製造することができる。また、シード粒子は、懸濁重合や分散重合等公知方法で製造することもできる。
モノマー(a−1)としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル基含有(メタ)アクリルモノマー;
(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有(メタ)アクリルモノマー;
アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、N−tブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等などのアミン含有(メタ)アクリルモノマー;
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクロイルピロリジン、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミド含有(メタ)アクリルモノマー;
アクリロニトリルなどのニトリル基含有(メタ)アクリルモノマー;
グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリルモノマー;
ジアセトン(メタ)アクリレート、ジアセトンアクリルアミド、アクロレイン、ビニルメチルケトン、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリルアミド、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、2ーヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、及びブタンジオールアクリレートアセチルアセテートなどのカルボニル基含有モノマー;
メタクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマー;
プロピレン−1,3−ジヒドラジン及びブチレン−1,4−ジヒドラジンなどのヒドラジノ基含有モノマー;
2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有モノマー;
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどのジ(メタ)アクリルモノマー;
スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系モノマー;
スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸含有モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル等のビニルエステル等が挙げられる。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、両イオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤等特に限定されず、用いることができる。
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルスルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル(アリール)硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤、
ラウリルトリアルキルアンモニウム塩、ステアリルトリアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、第1級〜第3級アミン塩、ラウリルピリジニウム塩、ベンザルコニウム塩、ベンゼトニウム塩、或は、ラウリルアミンアセテート等のカチオン性界面活性剤、
炭素数1〜20のアルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、炭素数1〜20のアルキルフェノール、炭素数1〜20のアルキルナフトール、ポリオキシエチレン(プロピレン)グリコール、脂肪族アミンなどのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物等のノニオン性界面活性剤、
カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸型、イミダゾリン誘導体型等の両性界面活性剤等が挙げられる。
開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩開始剤、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4’−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等の過酸化系開始剤、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等を用いることができる。
媒体としては、主に水を用いることが好ましいが、必要に応じ、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールエタン、グリセリン等の多価アルコール類、セロソルブ、ブチルセロソルブ、イソブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等のエステル類等の媒体を混合することもできる。
その他、必要に応じ、公知の分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤等を混合することもできる。
また、重合温度は、適宜設定すればよいが、例えば、20〜90℃程度であればよい。
本発明は、上記(A)成分に、モノマー(b−1)、ポリマー(b−2)、該ポリマーを溶解可能な非重合性の物質(b−3)、乳化剤、水を含むプレエマルション(B)を添加し、乳化重合することを特徴とするものである。
このような方法では、プレエマルション(B)を一括に添加してもよいし、連続的に添加しながら乳化重合してもよい。
本発明のプレエマルションでは、(b−3)成分により、(b−2)成分を溶解させているため、重合初期から重合後期にわたり、「安定な重合の場」として提供されるシード粒子に、ポリマー((b−2)成分)が移動しやすい。よって、最終的にシード粒子とポリマーが分離することなく、シード粒子、ポリマー、モノマーの重合体が効率よく複合化された水性エマルションを製造できる。
さらにシード粒子に移動した(b−3)成分は、ポリマー、モノマーの吸収力を高める効果もあるため、ポリマー、モノマーを「安定な重合の場」へ、より移動しやすくする。
(b−1)成分としては、例えば、上記に挙げたモノマー(a−1)の中から1種または2種以上を用いることができる。
(b−2)成分としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ビニル樹脂、アルキッド樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル・バーサチック酸ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース等が挙げられる。また(b−2)成分としては、上記に挙げたモノマー(a−1)の中から1種または2種以上を重合して得られたポリマー等でもよい。
(b−1)成分と(b−2)成分の混合比率は、(b−1)成分100重量部に対し、(b−2)成分が10〜100重量部、さらには12〜75重量部、さらには15〜50重量部であることが好ましい。
本発明では、特に、ポリマー((b−2)成分)を比較的多く混合でき、目的とする諸物性が得られやすいことが特徴である。また(b−2)成分として、発泡ポリスチレン等のプラスチック包装廃棄物等を用いた場合、リサイクル等に役立てることもできる。
(b−2)成分が100重量部を超える場合は、(b−2)成分と(A)成分のシード粒子が、効率よく複合化できない場合があり、好ましくない。
(b−3)成分としては、(b−2)成分が(b−3)成分に溶解するように適宜選択して用いればよい。例えば、アセトン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ペンテン、ジペンテン、テトラリン、デカリン、シクロヘキサン等の物質も用いることができるが、本発明ではα−ピネン、β−ピネン、β−ミルセン、d−リモネン、l−リモネン、d/l−リモネン、サビネン、γ−テルピネン、p−シメン、リナロール、α−テルピネオール、1−テルピネン−4−オール、酢酸オクチル、酢酸ネリル、酢酸リナリル、デカノール、オクタノール、1,4−シネオール、ゲラノール、ネロール、オクタナール、デカナール、ゲラニアール、ネラール、α−シネンサール、β−シネンサール、シトロネラール、ヌートカトン、ペリルアルデヒド、ソラーレン、クマリン、7−メトキシクマリン、ベルガブテン等の植物油を用いることが好ましい。このような植物油は、安全性および(b−3)成分等との溶解性等を考慮した場合に有利である。
(b−2)成分と(b−3)成分の混合比率は、(b−2)成分100重量部に対し、(b−3)成分が10〜500重量部、さらには20〜400重量部、さらには30〜300重量部であることが好ましい。このような範囲であれば、(b−3)成分等を効率よく溶解させ、目的とする水性エマルションを得ることができる。
(b−3)成分が少なすぎる場合は、(A)成分のシード粒子に、(b−1)成分や(b−2)成分が効率よく移動しない場合があり、最終的にシード粒子と、(b−1)成分や(b−2)成分が分離した状態となり、目的とする水性エマルションが得られないため好ましくない。(b−3)成分が多すぎる場合は、それに似合うだけの効果が期待できない。
(B)成分における乳化剤としては、例えば、上記に挙げた(A)成分における乳化剤の中から1種または2種以上を用いることができる。
このようなプレエマルションを上記シード粒子を含むエマルション(A)に添加し、乳化重合する方法としては、プレエマルションを一括で仕込む方法、プレエマルションを添加しながら重合する方法、あるいはそれらの組み合わせた方法等特に限定されない。
また、重合温度は、適宜設定すればよいが、例えば、20〜90℃程度であればよい。
この時、プレエマルションには、上記成分の他に、開始剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、水以外の媒体等の添加剤を混合することもできる。開始剤としては、上記に挙げた(A)成分における開始剤等を用いることができる。
本発明では、このような重合方法を採用することにより、シード粒子、ポリマー、モノマーの重合体が効率よく複合化された水性エマルションを製造できる。よって、シード粒子、ポリマー、モノマーの重合体の種類、量等を適宜選択することにより、目的とする諸物性を得ることが可能である。
したがって本発明の製造方法で得られた水性エマルションは、インク、接着剤、塗料・コーティング材料、プラスチック形成用材料等様々な分野で利用可能である。
特に、塗料・コーティング材料として用いる場合は、ポリマーを溶解可能な非重合性の物質(b−3)が、造膜性を向上させるため、造膜助剤を添加しなくても、造膜性に優れた水性エマルションを得ることができる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
(シード粒子を含むエマルション(A)の製造)
表1に示す原料・配合比率にて混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間、乳化重合を行い、シード粒子を含むエマルション(A)を得た。エマルション(A)は固形分52.0%であった。また、シード粒子の平均粒子径は450nmであり、比較的粒子径分布の狭いものであった。
(実施例1)
表2に示す原料配合比率にて、(b−1)成分、(b−2)成分、(b−3)成分を均一に混合し、さらにアニオン乳化剤、過硫酸アンモニウム、水を混合しプレエマルションを作製した。次に、表2に示す原料配合比率にて、シード粒子を含むエマルション(A)に作製したプレエマルションを3時間かけて滴下し、窒素雰囲気下80℃で乳化重合を行い、さらに3時間攪拌を続け、水性エマルションを得た。
得られた水性エマルションは、平均粒子径が570nmであり、比較的粒子径分布の狭いものであった。
(比較例1)
表2に示す原料配合比率にて、(b−1)成分、(b−2)成分、(b−3)成分を均一に混合し、さらにアニオン乳化剤、過硫酸アンモニウム、水を混合し、窒素雰囲気下80℃で3時間乳化重合を行い、さらに3時間攪拌を続け、水性エマルションを得た。
得られたエマルションは、凝集しており、分離が困難であった。
(比較例2)
表2に示す原料配合比率にて、(b−1)成分、(b−2)成分を均一に混合し、さらにアニオン乳化剤、過硫酸アンモニウム、水を混合しプレエマルションを作製した。次に、表2に示す原料配合比率にて、シード粒子を含むエマルション(A)に作製したプレエマルションを3時間かけて滴下し、窒素雰囲気下80℃で乳化重合を行い、さらに3時間攪拌を続け、水性エマルションを得た。
得られたエマルションは、平均粒子径が460nmのものと、1μm以上のものに分離していた。なお、1μm以上の粒子は、ポリスチレンを主成分とするものであり、効率よく複合化することができなかった。
Figure 0004398313
Figure 0004398313

Claims (2)

  1. シード粒子を含むエマルション(A)に、
    モノマー(b−1)、ポリマー(b−2)、α−ピネン、β−ピネン、β−ミルセン、d−リモネン、l−リモネン、d/l−リモネン、サビネン、γ−テルピネン、p−シメン、リナロール、α−テルピネオール、1−テルピネン−4−オール、酢酸オクチル、酢酸ネリル、酢酸リナリル、デカノール、オクタノール、1,4−シネオール、ゲラノール、ネロール、オクタナール、デカナール、ゲラニアール、ネラール、α−シネンサール、β−シネンサール、シトロネラール、ヌートカトン、ペリルアルデヒド、ソラーレン、クマリン、7−メトキシクマリン、ベルガブテンから選ばれる該ポリマーを溶解可能な非重合性の物質(b−3)、乳化剤、水を含むプレエマルション(B)を添加し、乳化重合することを特徴とする水性エマルションの製造方法。
  2. プレエマルション(B)において、(b−1)、(b−2)、(b−3)の混合比率が、(b−1)100重量部に対し(b−2)が10〜100重量部、(b−2)100重量部に対し(b−3)が10〜500重量部であることを特徴とする請求項1に記載の水性エマルションの製造方法。
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