JP4397825B2 - Hcr可否判定方法 - Google Patents
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そもそもHCR操業では、表面割れや内部割れ欠陥の起こりにくい鋼種や鋳造条件により鋳造が行われるものであるが、ユーザの製品に対する品質基準が厳しくなったことなどに起因し、HCR操業の中間工程における鋳片欠陥検査が導入されるようになっている。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、連続鋳造工程で鋳造した鋳片を常温まで冷却することなく熱間圧延工程に移送するHCR(ホット・チャージ・ローリング)操業で、前記連続鋳造工程で鋳造された直後の鋳片の一部を切り出して試料とし、この試料に対して、当該試料の切断面をJISB0659の50Sまで研磨後、研磨面の表面温度を0〜50℃とし、過硫酸アンモニウム((NH 4 ) 2 S 2 O 8 )15〜20%水溶液を前記研磨面に塗布し腐食させる条件で断面マクロ試験を実施し、この断面マクロ試験により判明した内部割れ欠陥の有無又は内部割れの発生量に応じて、前記鋳片を熱間圧延工程へ移送するか否かを判定することを特徴とする。
その理由は次の通りである。
(i) 鋳片内の内部割れ欠陥が物理的破断に至るためには、鋳片の限界歪εcと実際に発生した最大歪εpとの関係が「εc−εp<0」の関係を満たす必要がある。
(ii) 限界歪εcは鋼種成分により一義的に決まる値であって、最大歪εpは鋳造時の設備状態(ロールアライメント、2次冷却水状態など)や鋳造速度などの鋳造条件により決まる値であることが明らかとなっており、それぞれの歪εc,εpは、鋼種や鋳造条件が同一である1製造ロットごとに略同一の値を有することが知られている。
なお、連続鋳造工程から出てくる鋳片はそれぞれ内部割れ欠陥に関する品質レベルを有しており、前記断面マクロ試験の結果が該品質レベルを満たす場合のみ、熱間圧延工程への鋳片移送を行うようにするとい。
こうすることで、内部割れ欠陥の状況が品質レベルを満たすもののみ熱間圧延工程に移送されることになり、該熱間圧延工程で製造される圧延材の品質は常に一定且つ高品質のものとなる。
図1は、製鋼工場におけるHCR操業を示したものである。
図に示す如く、HCR操業は、連続鋳造工程に備えられた連続鋳造装置1で鋳造されたスラブ等の鋳片2を常温まで冷却することなく、温度約400℃〜700℃のまま輸送車3で熱間圧延工程に移送するものである。輸送車3で運ばれたスラブ2は、熱間圧延工程の加熱炉4に装入されて約1200℃まで加熱され、その後、熱間圧延機5(粗圧延機及び仕上げ圧延機)で厚板等の圧延材に圧延される。連続鋳造工程(連続鋳造装置1)と熱間圧延工程(加熱炉4と圧延機5)の配置場所は、製鋼工場のレイアウトにより異なり、近接している場合もあるし互いが離れていることもある。
本発明は、このようなHCR操業において、鋼種や鋳造条件が同一である製造ロット毎に、前記連続鋳造装置1で鋳造された直後のスラブ(鋳片)2の一部を切り出して試料6とし、この試料6に対して過硫酸アンモニウムを用いた断面マクロ試験を実施し、この断面マクロ試験により判明した内部割れ欠陥の有無又は内部割れの発生量に応じて、前記スラブ2を熱間圧延工程へ移送するか否か、すなわちHCR可否判定を行うものである。
まず、図2に示す如く、移送前の赤熱状態にあるスラブ2を、その幅方向にガスカッタ7を用いて所定厚み(約80mm)で切断し試料6とする。試料6の切断面Aはスラブ2内部が外側に露出した面となっている。
本実施形態では、試料6は各鋼種ごとに切り出さず、同一鋼種、同一鋳造条件で鋳造が実施されている単位である「製造ロット」ごとに1つの試料6を切り出している。その理由は、内部割れを起こす限界の値である限界歪εcは鋼種成分により一義的に決まる値であって、鋳片2に実際に発生した最大歪εpは鋳造時の設備状態(ロールアライメント、2次冷却水状態など)や鋳造速度などの鋳造条件により決まる値であることが明らかとなっており、それぞれの歪εc,εpは1製造ロットごとに単一の値を有することが知られているからである。ゆえに、1製造ロット毎の試料6切り出し、それに基づいたHCR可否判定で十分な成果を得ることができる。
腐食処理が終了した後は、肉眼や顕微鏡を用いた目視により、研磨面状の腐食斑すなわちスラブ2内の割れ欠陥の有無を探す。過硫酸アンモニウムによる腐食時間が極めて短時間で終わることに起因して、当該断面マクロ試験は約3時間程度の短時間で終わるものとなっている。
なお、本実施形態の場合、前記腐食処理を試料6の一断面のみで行っている。これは、本願出願人がスラブ2内部における割れ欠陥の詳細調査を実施した結果、同一製造ロット内の内部割れ発生状況には再現性があり、一断面で腐食検査を実施すれば、ほぼスラブ2全長の品質レベルが予測できることを明らかにしている為である。ゆえに、各製造ロットで一断面以上の検査を実施すれば、製造ロット間のバラツキに起因する製品欠陥を見逃すことはない。
一方、当然のことながら、HCR操業においては、スラブ2等の中間製品や最終製品に対する品質レベルがあり、例えば、「連続鋳造装置1から出たスラブ2は、内部割れ欠陥の品質レベルがランク0又は1を満たすこと」とうの基準が課せられている。この品質ランクを満たさないスラブ2は、下工程である熱間圧延工程に送らず、HCR操業から外すようにしている。
仮に、断面マクロ試験により、鋳片2内に内部割れ欠陥が存在することが判明したとしても、当該スラブ2は一旦常温まで冷却され、低級グレードのオーダに充当するようにしている。換言すれば、スラブ2の用途やユーザにより要求される「製品に対する品質レベル」が違うことから、内部割れの発生があったとしても、一概にスラブ2を欠陥品と見なすことは行っておらず、鋳片2の有効な活用ができるようになっている。
本実施例で用いた断面マクロ試験の作業手順の概略と、試料6の切断面Aのエッチングに用いた薬液は次の通りである。
[作業手順]
(1) 試料6の表面温度が50℃以下か確認する(手で触れる程度)。
(2) 試験面(切断面A)を水で洗浄し薬液を塗布し反応させる。
(3) 反応時間は、試料6の炭素濃度0.4%未満は2分間、0.4%以上は1.5分間静置する。
(4) 規定時間、静置後に試験面を水で洗浄しエアで乾燥する。
(5) 検査範囲を目視で入念に疵見する。ただし、「低P・S」鋼の場合は、水で洗浄する前に疵の観察を行い、疵ありの場合はマーキングをしておき、乾燥後に再度疵見する。
(6) 疵があれば疵部をマーキングし、巻き尺又は直尺で深さ・長さを測定する。
(7) 記録紙に疵の位置をスケッチし、深さ・長さを記録する。
(8) 疵の評価判定をする。
(9) サンプルの後始末をする。
[薬液]
・薬品名 : 過硫酸アンモニウム (NH4)2S2O8
・成分・含有量 : 98%以上
・薬液濃度 : 15〜20%水溶液
図5には、HCR操業により製造した厚板向けスラブ連鋳の鋳造実績と内部割れ検査の結果をまとめたものが示してある。
ここでいう従来の内部割れ欠陥の検査方法とは、塩酸等を用いて検査面をエッチングするものである。検査は、鋳片2自体の品質管理のためではなく、連続鋳造装置1自体の異常を検出したり、新しい鋼種の鋳造条件が適切であるか否かの確認を行う為に実施され、一定期間毎、例えば、1回/日〜1回/月の行われていた。したがって、表からわかるように、ロット2や3,7〜11の内部割れを見逃しており、下工程での品質不良やユーザでのクレームとなっていた可能性が高い。
内部割れ欠陥が発生したロット2,6,11などについても、ユーザの求める品質レベルに応じて充当可否(HCR可否)を判断していることから、すべて一律にスラブ2がリジェクトされている(廃品となる)わけではない。HCR工程から外された(紐切りされた)スラブ2については、内部割れに関する品質レベルの低いオーダに再充当付け(紐付け)を可能であることから実質的な損害はほとんどない。
当然のことながら、断面マクロ試験は、短時間且つ連鋳終了から熱間圧延工程へのトラックタイム(最短4時間)以内に確実に行えるものであるため、本HCR可否判断方法により、HCR操業に遅延が生じることは全くない。
すなわち、HCR可否判定方法はスラブの判定のみならずブルームやビレットの判定にも可能である。
断面マクロ試験の薬液として、過硫酸アンモニウム水溶液を用いているが、試料6研磨面を短時間で腐食させ、割れ欠陥を明らかにできるものであればよく、本薬液に限定されるものではない。
2 スラブ(鋳片)
3 輸送車
4 加熱炉
5 圧延機
6 試料
Claims (3)
- 連続鋳造工程で鋳造した鋳片を常温まで冷却することなく熱間圧延工程に移送するHCR(ホット・チャージ・ローリング)操業で、
前記連続鋳造工程で鋳造された直後の鋳片の一部を切り出して試料とし、
この試料に対して、当該試料の切断面をJISB0659の50Sまで研磨後、研磨面の表面温度を0〜50℃とし、過硫酸アンモニウム((NH 4 ) 2 S 2 O 8 )15〜20%水溶液を前記研磨面に塗布し腐食させる条件で断面マクロ試験を実施し、
この断面マクロ試験により判明した内部割れ欠陥の有無又は内部割れの発生量に応じて、前記鋳片を熱間圧延工程へ移送するか否かを判定する
ことを特徴とするHCR可否判定方法。 - 前記断面マクロ試験を、鋼種や鋳造条件が同一である製造ロット毎に行うことを特徴とする請求項1に記載のHCR可否判定方法。
- 前記鋳片はそれぞれ内部割れ欠陥に関する品質レベルを有しており、
前記断面マクロ試験の結果が該品質レベルを満たす場合のみ、熱間圧延工程への鋳片移送を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のHCR可否判定方法。
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