JP4397468B2 - シクロオレフィンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも、ルテニウム触媒、水及び硫酸亜鉛からなる触媒スラリーを用いて、単環芳香族炭化水素を水素により部分水添反応してシクロオレフィンを製造する方法に関するものである。シクロオレフィン類、特にシクロヘキセン類は有機化学工業製品の中間原料としてその価値が高く、特にシクロヘキサノール原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
シクロオレフィン類の製造方法としては様々な方法が知られており、それらの中でも単環芳香族炭化水素をルテニウム触媒を用いて部分的に水添する方法が最も一般的であり、選択率や収率を改良する方法として、触媒成分や担体の種類、あるいは反応系への添加物としての金属塩などについて検討した結果が多く報告されている。
【0003】
それらの中でもシクロオレフィンの収率が比較的高い水及び亜鉛が共存する反応系においては、例えば、(1)単環芳香族炭化水素を水及び少なくとも1種の亜鉛化合物の共存下、中性もしくは酸性条件下に水素により部分還元するに際し、触媒として30〜200Åの平均結晶子径を有する金属ルテニウムを主成分とする粒子を担体に担持した触媒を用いて行う方法(特公平8−25919号公報)、(2)ルテニウム触媒の存在下に、単環芳香族炭化水素を部分的に水素添加してシクロオレフィンを製造するに当たり、反応系中に、飽和溶解度以下の量の、酸化亜鉛及び水酸化亜鉛の中の少なくとも1種をすべて溶解状態で存在させて行う方法(特公平5−12331号公報)、(3)単環芳香族炭化水素を水の存在下、水素により部分還元するに際し、200Å以下の平均結晶子径を有する金属ルテニウムを主成分とする水素化触媒粒子を用い、少なくとも1種の固体性塩基性亜鉛の共存下、中性または酸性の条件下に反応を行う方法(特公平8−19012号公報)などを挙げることができる。
【0004】
また、これら触媒の活性を賦活する方法においても研究がなされており、その方法として、不飽和有機化合物の水素化反応に使用されることによって活性が低下したルテニウム触媒を液相において酸素と接触させる工程と該水素化反応条件における水素分圧よりも低い水素分圧下かつ該水素化反応条件における温度より50℃を下回らない温度に保持する工程を組み合わせることを特徴とするルテニウム触媒の活性回復方法(特願平7−284911号公報)等の提案がなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来提案されている上述の方法は、目的物であるシクロオレフィンをより高い生成率で得るための方法であり、または、用いた触媒の活性を賦活させるための方法である。しかしながら、これらの方法の内、硫酸亜鉛を含む触媒スラリーを用いた場合に、直接的に触媒スラリーと接触する装置内壁面の上に亜鉛化合物を含む固形物が析出して固着し、触媒スラリーの流動を著しく悪化させて装置の運転を困難なものとするという問題がある。該装置が配管である場合には、この析出固着した固形物が配管内の触媒スラリーの流路を狭めて流動を悪化させる。このため配管内を流れる触媒スラリーの圧力損失の増大を招き、あるいは配管を完全に閉塞させてしまい、該装置の本来の機能を失わしめるという問題もある。この析出固着した固形物によって発生する上記の問題を回避するために、シクロオレフィンの製造設備の一部または全部を停止してこの析出固着した固形物の除去作業を行う必要があり、さらに、この固形物は水に殆ど溶解しないばかりか内壁面上に堅く固着する場合がほとんどであるので、除去作業自体も人手を要する作業で相当の労力と時間を要する。
【0006】
工業的にシクロオレフィンを製造する設備は、通常は連続的に反応を行い、数ヶ月以上に渡る長期連続稼働を行うのが好ましい。これは製造設備を停止すると製造設備の稼働率が落ちてシクロオレフィンの生産量が少なくなってしまうことを避けるためであるが、この製造設備の一部の装置内に析出する固形物の除去作業を行うためには、この製造設備の一部または全部を止めなければならず、シクロオレフィンの生産量が減少してしまう。またシクロオレフィンを製造する条件は高温高圧条件であり、設備の一部を停止する作業においてでさえ煩雑な作業となり、また人手を要する作業となる。従って、このような作業はできるだけ避けなければならない。
【0007】
この析出固着する固形物は、少なくとも亜鉛及び/又は亜鉛化合物が触媒スラリーに含まれていないと生じることはないが、触媒スラリーに亜鉛及び/又は亜鉛化合物を含まないものを用いてシクロオレフィンを単環芳香族炭化水素から製造しようとすると、その反応におけるシクロオレフィン生成率が大幅に低下し、かわりに完全水添物であるシクロパラフィンが多量に生成するので、結果的にシクロオレフィン収率は低下して現実的に工業的なシクロオレフィンの製造方法とはなり得ない。従って、亜鉛及び/又は亜鉛化合物を含む触媒スラリーを用いることが、工業的なシクロオレフィンの製造にとって、不可避なことである。尚、高いシクロオレフィン収率を達成するためには、硫酸亜鉛を含む触媒スラリーを用いることがもっとも好ましい。
【0008】
にもかかわらず、従来提案されている技術はこれらの問題に対する解決策を与えていないばかりか、このような問題そのものに触れていない。この問題を工業的に実施可能な簡便な方法で解決できれば、先述した洗浄除去作業そのものも不必要となり、その手間を省けるばかりか、該製造装置を一時的に停止する必要もなくなり、亜鉛及び/又は亜鉛化合物を含む触媒スラリーを用いて、高いシクロオレフィン収率で安定的に長期間連続してシクロオレフィンを製造できることになる。従って、前記問題の解決策が強く望まれている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この要請に対し、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、この亜鉛化合物を含む固形物の析出固着は、触媒スラリーが接触している装置壁面の材質の種類には影響されず、またシクロオレフィンを製造する反応を行っている温度つまり該部分水添反応の温度よりも低い温度の触媒スラリーが接触している装置の接触壁面上に選択的に生じて固着するという現象を見いだした。同時に、本発明者らはこの知見に基づきこの固形物の析出固着防止技術の開発に挑み、度重なる試行錯誤の後に、この析出固着防止技術の開発に成功するとともに、この防止技術を用いたシクロオレフィンの製造方法によってより効率的にシクロオレフィンを製造する技術を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0010】
1)ルテニウム触媒、水及び硫酸亜鉛からなる酸性の触媒スラリーを用いて、単環芳香族炭化水素を水素により50〜250℃で部分水添反応してシクロオレフィンを製造するに当たり、該部分水添反応の温度よりも20℃以上低い温度で流動する触媒スラリーが内部に存在する装置において、
該装置内部の触媒スラリーより高く、300℃以下の温度の熱媒で該装置の外部を加熱する操作を含み、
該装置は、下記のア、イ、ウの3工程からなる該触媒の活性賦活工程及びそれらの工程間に用いられる設備のうち少なくとも一部であることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。
ア:部分水添反応を行う反応器から触媒スラリーを抜き出して、触媒スラリーの圧力を10atm以下に落とす工程
イ:その落圧した触媒スラリーを1つ以上の容器内で触媒の活性賦活処理する工程
ウ:触媒の活性賦活処理を終えた触媒スラリーを再び部分水添反応を行う反応器へ戻す工程
2)該装置が触媒を活性賦活処理する容器に付随する配管である1)に記載のシクロオレフィンの製造方法。
3)該加熱が該装置の外壁面に熱媒を接触させて行われる1)又は2)に記載のシクロオレフィンの製造方法。
【0011】
4)該熱媒が水蒸気及び/又は温水である1)〜3)のいずれかに記載のシクロオレフィンの製造方法。
5)該加熱の温度を該熱媒である高温水蒸気の圧力を調整することによって制御することを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載のシクロオレフィンの製造方法。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で原料として用いられる単環芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、及び通常炭素数1〜4の低級アルキル基で置換されたベンゼンである。
本発明の部分水添反応の温度は一般に50〜250℃の範囲でよいが、100〜200℃の範囲がより好ましく用いられる。反応温度が低すぎると反応速度が低下し過ぎ、またシクロオレフィンの生成率が著しく低下するので好ましくなく、逆に反応温度を上げすぎると触媒であるルテニウムの平均結晶子径の成長を促してひいては触媒活性劣化を大きくするので好ましくない。
【0013】
本発明で用いるルテニウム触媒は、ルテニウム化合物を予め還元して得られる金属ルテニウムを含む触媒である。ルテニウム化合物としては、例えば塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物、あるいは硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、あるいは各種のルテニウムを含む錯体、例えばルテニウムカルボニル錯体、ルテニウムアセチルアセトナート錯体、ルテノセン錯体、ルテニウムアンミン錯体、及びかかる錯体から誘導される化合物を用いることができる。さらに、これらルテニウム化合物を2種以上混合して用いることも可能である。
【0014】
これらのルテニウム化合物を還元する方法としては、水素や一酸化炭素などによる接触還元法、あるいはホルマリン、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジンなどによる化学還元法が一般的に用いられる。このうち通常よく用いられる方法としては、水素による接触還元であり、本発明では100〜400℃の条件で還元を行うことが好ましい。還元温度が100℃未満では還元に時間がかかりすぎ、また、400℃を超えるとルテニウムの凝集が進み、触媒活性やシクロオレフィンの生成率に悪影響を及ぼすことがある。尚、この還元は気相で行っても液相で行ってもよいがより好ましくは液相還元である。
【0015】
また、ルテニウム化合物の還元前もしくは還元後において他の金属や金属化合物、例えば、亜鉛、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅、金、白金などやかかる金属の化合物を加えることによって得られるルテニウムを主体とするものを用いてもよい。かかる金属や金属化合物を使用する場合には、ルテニウム原子に対する原子比として通常0.001〜20の範囲で選択して差し支えない。この中でも通常よく用いられるのが亜鉛や亜鉛化合物であり、その加える量としてはルテニウムに対して亜鉛が0.1〜50重量%含有する量であればよい。
【0016】
本発明に用いるルテニウム触媒は、担体に担持させて使用しても特に差し支えない。用いる担体は特に制限されるものではないが、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、ハフニウム、タングステンなど、あるいは、かかる金属の酸化物、複合酸化物、水酸化物、硫酸塩、難水溶性金属塩、あるいは、このような担体となりうるものを2種以上化学的あるいは物理的に組み合わせた化合物や混合物などが例示される。ルテニウムの担持方法としては特に制限されるものではないが、吸着法、イオン交換法、浸せき法、共沈法、乾固法などが例示される。ルテニウムの担持量についても特に制限されるものではないが、好ましくは担体に対して0.001〜20重量%である。しかしより好ましく用いられるのは、ルテニウムを担体に担持せず、そのまま用いる方法である。こうすることでシクロオレフィンの高い生成率を得やすくなる。
【0017】
さらに本発明において用いられるルテニウム触媒の平均結晶子径は、200Å以下であることが好ましい。このルテニウム触媒の平均結晶子径は、ルテニウム触媒のX線回折図における回折線幅の拡がりからScherrerの式により算出される。具体的には、CuKα線をX線源として用いて、回折角(2θ)が44°付近に極大を持つ回折線の拡がりから算出される。またこの平均結晶子径の下限値は、理論的に結晶単位より大きな値であればよく、より具体的には10Å以上である。
【0018】
本発明の反応系においては水が存在していなければならず、その量は反応形式によって異なるが、用いる原料単環芳香族炭化水素に対して0.001〜100重量倍が好ましい。水の量が少なすぎるとシクロオレフィンの生成率の低下を招き、また水の量が多すぎると反応器が大きくなる等弊害があるため、好ましい量としては、原料単環芳香族炭化水素に対して0.5〜20重量倍である。但し、いずれの場合においても反応条件において原料及び生成物を主成分とする有機物液相と、水を含む液相とが1相とならない量の水が存在していなければならない。言い換えると、原料及び生成物が主成分の有機物液相つまりオイル相と水が主成分の水相が相分離した状態、つまりオイル相と水相の液2相状態となる量の水が存在していなければならない。尚、ここに言う主成分とは、前記液相を構成する成分のうちモル数にして最大割合を示す成分のことである。
【0019】
本発明における触媒スラリーを形成する水相中の水素イオン濃度つまりpHは、7.0未満であることが必要である。7.0未満の酸性でないとシクロオレフィンの生成率が著しく低下し、多量のシクロパラフィンが副生するのでシクロオレフィンの効率的な生産は望めないからである。尚、このpHは20℃大気圧下で測定する値を言い、本発明における酸性とは上記pHが7.0未満であることを言う。
【0020】
さらに、本発明の反応系には、硫酸亜鉛が存在している必要がある。この硫酸亜鉛は反応系に存する水相に少なくとも一部あるいは全部を溶解状態で存在させる。また、硫酸亜鉛以外にも他の金属硫酸塩を存在させてもよい。例えば、鉄、ニッケル、カドミウム、ガリウム、インジウム、マグネシウム、アルミニウム、クロム、マンガン、コバルト、銅などの硫酸塩が例示され、これらを2種以上併用してもよいし、かかる金属硫酸塩を含む複塩であってもよい。用いる硫酸亜鉛は水相中の濃度が1×10-5〜5.0mol/lであることが好ましく、より好ましくは1×10-3〜2.0mol/lである。この濃度が高すぎても低すぎてもシクロオレフィンの生成率が低下し、効率的にシクロオレフィンを製造出来なくなるからである。その他の金属硫酸塩を併用する場合には、用いる金属硫酸塩の量は、反応系に存在している硫酸亜鉛の量よりも少ない方が好ましい。他の金属硫酸塩の量が硫酸亜鉛の量よりも多くなるとシクロオレフィンの生成率の低下を招くからである。
【0021】
本発明の反応系へは、従来の方法において知られている下記の金属塩を存在させてもよい。すなわち、元素周期律表のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1族金属、マグネシウム、カルシウムなどの2族金属(族番号はIUPAC無機化学命名法改訂版(1989)による)、あるいは亜鉛、マンガン、コバルト、銅、カドミウム、鉛、砒素、鉄、ガリウム、ゲルマニウム、バナジウム、クロム、銀、金、白金、ニッケル、パラジウム、バリウム、アルミニウムなどの金属硝酸塩、塩化物、酸化物、水酸化物、酢酸塩、燐酸塩など、又はこれらを2種以上化学的及び/又は物理的に混合して用いることなどである。これらの中でも水酸化亜鉛、酸化亜鉛などの亜鉛塩が好ましく、特に水酸化亜鉛を含む複塩、例えば、一般式(ZnSO4)m・(Zn(OH)2)nで示されるm:n=1:0.01〜100の複塩が好ましい。
【0022】
本発明における金属塩の使用量は、水相を酸性に保てる量であればよく、特に制限はないが、通常は用いるルテニウムに対して1×10-5〜1×105重量倍であり、これらは反応系内のどこに存在してもかまわず、その存在形態についても、必ずしも全量が水相に溶解している必要はない。
本発明においては、水の他に水酸基を1つ以上持つ1種類以上の有機物が反応系内に存在していても良く、その量についても特に制限はないが、水及び単環芳香族炭化水素とそれらから得られるシクロオレフィンとシクロパラフィンの両方を反応条件下において溶解させ得るものについては、反応系内に存在する水相とオイル相が液相として1相とならない範囲内で用いればよい。
【0023】
本発明における最も重要な特徴は、ルテニウム触媒、水及び硫酸亜鉛からなる酸性の触媒スラリーを用いて、単環芳香族炭化水素を水素により部分水添反応してシクロオレフィンを製造するに当たり、該部分水添反応の温度よりも20℃以上低い温度で流動する触媒スラリーが内部に存在する装置において、該装置内部の触媒スラリーより高い温度の熱媒で該装置の外部を加熱する操作を含むことである。ここに言う装置は、シクロオレフィンを製造する設備の少なくとも一部であり、具体的には、部分水添反応を行っている反応器本体、反応器から触媒スラリーを抜き出したり再び戻したりする配管、反応器から抜き出した触媒スラリーを触媒の活性賦活等のために処理する容器及びこれに付随する配管、及びこれらの全部又は一部が例示され、触媒スラリーと装置の一部が少なくとも直接的に接触しているものを指す。
【0024】
工業的にシクロオレフィンを製造する場合において、何らかの理由で反応温度より20℃以上低い温度の触媒スラリーが製造設備内に存在し得る。具体的には、反応器内の触媒スラリーが十分撹拌されない部分、反応器内の触媒スラリーを一部または全部抜き出す配管内、この抜き出した触媒スラリーを触媒の活性賦活のために処理する装置内、この処理設備が複数の容器で構成される場合にはこれら容器を接続するための配管やポンプなどの触媒スラリー移送装置内の触媒スラリーを例示できる。
【0025】
部分水添反応の温度より温度が20℃以上低いこれらの装置内の触媒スラリーが直接的に接触している装置の内壁面の上には、亜鉛化合物を含む固形物が析出して固着するという現象が観察される。この現象は、装置の内壁の材質の種類には殆ど影響を受けず、例えば、耐食性の高級ステンレスやニッケル合金製の装置、触媒スラリーと接触する内壁にフッ素樹脂加工を施した装置のいずれにも観察される。析出した固形物は触媒スラリーの構成成分を含んでいるが、その組成は触媒スラリーの組成に比べて、亜鉛化合物の割合が高くなっている。実際に回収したこの固形物をそのまま蛍光X線分析装置で分析すると、実に50重量%以上が亜鉛化合物であり、さらに、この固形物の水や熱水に対する溶解性は酸化亜鉛のそれと同程度であり、この固形物は水や熱水にほとんど溶解しなかった。この固形物が析出し固着していく速度は、触媒スラリーの組成、反応温度、析出場所の触媒スラリーの温度等の条件によって様々に異なるが、固形物層の厚みの増加速度で表現すると、通常0.01〜50mm/月である。さらに、装置内に析出し装置内壁に固着した固形物は、あたかもセメントが固まって付着している如くに堅く、簡便な水洗操作では除去不能であり、ステンレス製スパーテルを用いて掻き取ろうとしてもほとんど掻き取れない状況である。
【0026】
本発明者らは、この亜鉛化合物を含む固形物析出の問題を解決すべく、鋭意検討を重ね、その結果、既述のように、部分水添反応の温度よりも20℃以上低い温度で流動する触媒スラリーが内部に存在する装置において、装置内部の触媒スラリーより高い温度の熱媒で該装置の外部を加熱する操作を行うことで、この析出固着が防止出来ることを見いだした。本発明の完成によって初めて、硫酸亜鉛を含む触媒スラリーを用いて高いシクロオレフィン収率で安定的に長期間連続してシクロオレフィンを製造できるようになったのである。
【0027】
この亜鉛化合物を含む固形物の析出固着が生じる理由は、触媒スラリーの構成成分である硫酸亜鉛が部分水添反応条件下で徐々に化学的変化を起こし、水に対する溶解度がより低い亜鉛化合物を生成し、触媒スラリーの温度が下がる部分でこの亜鉛化合物が析出するためと推察される。従って、触媒スラリーの温度が反応温度よりも低くかつ触媒スラリーから熱が奪われる場所、すなわち、先述のような装置内壁面上に析出し、何らかの理由でこの析出物が内壁面上へ固着するものと考えられる。本発明は、このような析出固着が発生する装置壁の外部を熱媒を用いて装置外壁面側から加熱することによって、内部を流動する触媒スラリーに温度分布を持たせ、装置内壁面近傍の亜鉛化合物の溶解度を局部的に上げてやり、この装置内壁面上に生じる析出自体を防止するものである。現実的には、触媒スラリー温度の低下による溶解度低下に相当する量の亜鉛化合物の析出は、触媒スラリー内で生じているが、このように析出した亜鉛化合物は析出後においては装置の内壁面上に固着するということはなく、触媒スラリーとともに問題なく流動して前記の問題を生じることがない。
【0028】
本発明において、該当する装置の外部を加熱する熱媒の温度の好ましい上限は、300℃である。それ以上の高温の熱媒を用いることは、触媒スラリー中の水が沸騰したり、あるいはルテニウム触媒そのものに悪影響を及ぼすので、避けることが好ましい。またこの加熱する熱媒の温度下限は、その装置の内部を流動する触媒スラリーの温度よりも少なくとも高い温度とすることが必要である。これ未満であると、析出固着する固形物の生成を防止することは出来ない。
この他にも、本発明者らはこの固着物の性質を検討し、希硫酸を含む20℃〜100℃の水溶液を用いれば、この析出固着した固形物を溶解除去洗浄できることを突き止めたが、この操作を行うためには該当する装置を停止して除去作業を行うことが必要で、それが煩雑な操作となり人手も手間も必要とすることが確認できたので、必ずしも効果的な方法ではなかった。
【0029】
一方で、この固形物の析出固着は、触媒スラリーが部分水添反応の温度よりも20℃以上低い温度でないと生じないことも明らかとなった。この理由は、20℃未満の温度差ではこの固形物の析出速度が極めて遅く、流動する触媒スラリー自体のクレンジング作用により固着がある程度防止されているためと推察できる。つまり、亜鉛化合物が析出し固着していく固形物層の成長速度よりも、触媒スラリーが流動してその固形物層を削りとる速度の方が勝っているためと推察する。触媒スラリーの温度が部分水添反応温度より20℃以上下回ってしまうと析出速度が急激に上昇し、固形物層の成長がはじまってしまうと考えている。
【0030】
さらに、この亜鉛化合物を含む固形物の析出固着は、装置内で触媒スラリーが少なからず流動していないと発生しない。流動していなければ、最初に装置内壁面上への析出は発生するものの、それ以降は亜鉛化合物の飽和溶解度以下に触媒スラリー中の亜鉛化合物濃度がほぼ保たれ、継続的な亜鉛化合物の析出は生じない。従って、この亜鉛化合物を含む固形物の析出固着は、装置内で触媒スラリーが少なからず流動していることが条件ということになる。より具体的に説明すると、この流動とは、触媒スラリーは少なくとも移動しており、毎時0.1cmより大きい流速をもっていることを言う。尚、この移動の方向は常に一方方向である必要はない。要するに、亜鉛化合物が析出して飽和溶解度以下となった触媒スラリーが他へ移動し、新たに亜鉛化合物を析出し得る触媒スラリーに入れ替わることが起こる流動であればよい。
【0031】
本発明における前記装置の中でも最もこの固形物の析出固着が激しくなる装置の一つは、触媒スラリーを移送する配管である。これは、配管が容器などの他の装置に比べて内容積の割に装置内壁の表面積が大きく、その分、触媒スラリーから熱が奪われやすくなるからであり、さらに、そのために触媒スラリーの温度自体も低下して亜鉛化合物を含む固形物が析出固着しやすくなるからである。従って、本発明の方法は、配管部分に用いるとより効果が高いのもとなる。
尚、配管などの装置において、亜鉛化合物を含む固形物の析出固着が生じて触媒スラリーの流れが悪化することをあらかじめ考慮して、配管径を大きくしておく解決方法もあるように思われるが、この場合には、固形物が析出固着する前の触媒スラリーの流速が遅くなり過ぎ、触媒スラリーに含まれるルテニウム触媒が沈降堆積して流路を狭くするという問題が生じるので、現実的な解決方法となり難い。
【0032】
ルテニウム触媒、水及び硫酸亜鉛からなる酸性の触媒スラリーを用いて、単環芳香族炭化水素を水素により部分水添反応してシクロオレフィンを製造する場合には、ルテニウム触媒の経時的な触媒活性の劣化が生じるので、これを賦活するために、ルテニウム触媒の活性賦活工程をシクロオレフィンの製造設備の一部として設けるのが一般的である。しかし、この工程へは部分水添反応を行う反応器から触媒スラリーの一部または全部を継続的にあるいは断続的に、配管を用いて抜き出したりあるいはこの反応器へ戻したりしなければならず、さらには、この活性賦活工程での処理は部分水添反応より20℃以上低い温度で行われるのが普通であるから、この活性賦活工程を構成する設備はこのような固形物が最も析出固着しやすい装置であるといえる。従って、この活性賦活工程の装置において、本発明の方法は好ましく用いられ、これにより配管を含む装置内壁面上に生じるこの固形物の析出固着は防止でき、この析出固着に起因するこの装置のトラブルをなくすることができる。従って、そのための装置の停止等も不要となる。
【0033】
また、前記触媒活性賦活工程は、ア:部分水添反応を行う反応器から触媒スラリーを抜き出して、触媒スラリーの圧力を10atm以下に落とす工程、イ:その落圧した触媒スラリーを1つ以上の容器内で触媒の活性賦活処理する工程、ウ:触媒の活性賦活処理を終えた触媒スラリーを再び部分水添反応を行う反応器へ戻す工程からなり、ア〜ウの3つの工程の内で少なくとも1つ以上の工程で、部分水添反応の温度よりも20℃以上下回る温度の触媒スラリーが内部に流動する装置を有するのが通常である。それらの工程及びそれらの工程間を構成する設備の一部である触媒スラリーを移送する装置においても、亜鉛化合物を含む固形物の析出固着がより生じやすく、本発明の方法を適用する効果は先述したように極めて大きい。
【0034】
この触媒活性賦活工程の設備を構成する一般的な装置をより具体的に例示すると、1)部分水添反応器から配管を用いて触媒スラリーを抜き出し、2)10atm以下にその圧力を落圧し、3)さらに活性賦活処理に必要な温度まで触媒スラリーを冷却するために冷却器で触媒スラリーを冷却し、4)冷却した触媒スラリーを活性賦活処理器に配管を用いて移送し、5)活性賦活処理器で触媒スラリーを処理した後、5)ポンプを用いて触媒スラリーを配管を介して反応器へ戻す、という操作を行う装置である。
【0035】
上記の冷却器は、触媒スラリーを内部に適当量保持させて、その間に触媒スラリーから除熱する必要がある。この際には、冷却器内部に冷媒の流れる冷却コイルを設置して、その冷却コイルと触媒スラリーを接触させる方法で触媒スラリーの除熱を行うことは好ましくない。このような冷却コイルを使用すると、触媒スラリーが直接的に接触する冷却コイル表面に固形物の析出固着が生じるからである。従って、触媒スラリーの冷却には、不活性なガスを冷却器の中の触媒スラリー中へ吹き込み、触媒スラリー中の水を蒸発させ、その潜熱により触媒スラリーを冷却する方法が好ましい。発生した水蒸気は別の熱交換器で冷却凝縮し、その凝縮水を冷却器へ戻せば、結果的に触媒スラリーの水は減少せずに触媒スラリーの熱だけ除去でき温度を下げることが出来る。また、ここで用いる不活性なガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム、メタン、エタン等が例示される。触媒活性賦活の処理条件によっては、これら不活性ガスを主成分として含むガスを用いてもよい。
【0036】
本発明において、装置内部の触媒スラリーより高い温度の熱媒で装置の外部を加熱する操作が行われる具体的方法として、該当する装置の外面に直接的に高温の水蒸気及び/又は温水を接触させることで行われる方法が挙げられる。この方法は、加熱用の熱媒として化学工場で一般的に使用されている高温の水蒸気及び/又は温水を用いることで、簡便に本発明の方法を実施することが可能である。さらに、高温の水蒸気を用いる場合には、その圧力を調整することで水蒸気の凝縮温度を制御してやれば、配管などの長い装置であってもより均一に加熱することが可能であるので好ましい。
【0037】
熱媒として水蒸気や温水を用いる場合の加熱装置としては、配管等を加熱する場合には、2重管式構造を持つ装置とし外側に加熱用熱媒を流し内側に触媒スラリーを流す方法を簡便な方法として例示できる。また容器などの場合には、ジャケットタイプの加熱器を用いることが該当する装置の均一な加熱方法として好ましい。加熱コイルや加熱チューブを用いると不均一な加熱となり、加熱不足のところで固形物の析出固着が発生する恐れがあるので好ましくないが、例えば、加熱コイルを密に巻きその上から十分な保温材で覆って、ジャケット式加熱器と同等の均一さで加熱する場合には、差し支えない。
本発明のシクロオレフィンの製造方法は、回分式及び連続式の両方に適用できるが、特に製造装置を止めずに長期間の連続稼動を要求される連続式に適用すればで極めて有効な方法となる。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0039】
【実施例1】
(触媒の調整)
塩化ルテニウム塩酸溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて、水酸化ルテニウムの微粒子を調整し、水洗を繰り返して塩素イオンを除去した後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、アルカリ性条件で水素圧50atm、150℃で24時間オートクレーブ中で撹拌しながら水中還元を行い、ルテニウムの平均結晶子径60Åのルテニウム触媒を調整した。
(触媒スラリーの調整)
上記の操作で得たルテニウム触媒の内8.0gを秤取り、水2000ml、硫酸亜鉛7水和物300g、分散剤として結晶子径約200Åのジルコニア40gを加えて、触媒スラリーを調整した。
(反応実験)
実験装置の反応器1に上記触媒スラリーを仕込み、水素で十分内部を置換した後、加熱用ヒータ−2を用い140℃まで昇温後、高圧水素を水素供給装置14を用いて供給しつつ、撹拌機3の高速攪拌下、1000時間の部分水添反応を連続的に行い、シクロヘキセンを製造した。尚、この部分水添反応の反応温度は、140℃、反応圧力は全圧で50atmとした。また、ジャケット付き冷却器16及びジャケット付き活性賦活処理器17の内部の触媒スラリー温度は、70〜90℃の範囲とした。ジャケット付き冷却器16及びジャケット付き活性賦活処理器17の内圧は大気圧と同等とした。
【0040】
連続反応実験装置の反応器1には内面にフッ素樹脂加工した4リットルのステンレス製オートクレーブを用いた。その反応器1へは連続的にベンゼン2.0kg/hをベンゼン供給装置15を用いて供給し、及び連続的に反応により消費された量に相当する分の水素を水素供給装置14を用いて供給し、撹拌機3による高速攪拌下で連続的に反応を行った。反応器1内の反応ゾーン26の混合状態は高速撹拌により水相が連続相となり油水完全混合となっていた。また用いる反応器内に油水分離ができるセトリングゾーン10を設置し、そこから触媒スラリーとオイルを連続的に分離して個別に連続的に抜き出した。この抜き出した触媒スラリーはスチームトレースを密に施した配管9を介して抜き出し、落圧弁22を経て、ジャケット付き冷却器16へ送った。
【0041】
一方、配管8を介して抜き出したオイルはこのオイルに溶解した溶解水とオイルを分離する分離器6へ送り、ここで回収した水はポンプ5により反応器1へ戻し、オイルは配管7を介して系外へ抜き出した。触媒活性賦活工程は、配管9、落圧弁22、ジャケット付き冷却器16、ジャケット付き活性賦活処理器17、触媒スラリーを反応器へ戻すポンプ12、配管13からなり、これら装置間をスチームトレースを密に施したライン11及び19で接続した。該部分水添反応中は常にこの触媒活性賦活工程を稼働して処理を行った。尚、落圧弁22においては、触媒スラリーの圧力を大気圧相当まで落圧した。ジャケット付き冷却器16は内面をフッ素樹脂加工したステンレス製の容器で、この容器下部より窒素ガスを窒素ガス供給装置20を用いて導入して、このガスを触媒スラリーと接触させることで、水蒸気を触媒スラリーから発生させて、触媒スラリーを冷却した。またこの冷却器16のジャケットには圧力を調整した飽和水蒸気を流して冷却器内部の触媒スラリーよりも高い温度を保ってこの装置の外部を加熱した。
【0042】
冷却器16で発生した水蒸気を含んだガスは凝縮器18へ送り、水蒸気等の凝縮成分を凝縮させ冷却器16へ回収した後にガス成分だけを配管4を介して大気へ放出した。ジャケット付き冷却器16で冷却を終えた触媒スラリーは配管9を介してジャケット付き活性賦活処理器17へ移送した。ジャケット付き活性賦活処理器17では、内部の触媒スラリーを撹拌機23で撹拌しつつ、酸素を含む窒素ガスを供給する装置21を用いて酸素を含む窒素ガスをジャケット付き活性賦活処理器17の底部より極少量吹き込み、活性賦活処理を行った。
【0043】
尚、このジャケット付き活性賦活処理器17の内面はフッ素樹脂加工してある。この吹き込んだガスは、凝縮器25へ送って凝縮成分をジャケット付き活性賦活処理器17へ回収した後に配管24を介して大気へ放出した。ジャケット付き活性賦活処理器17のジャケットには圧力を調整した飽和水蒸気を流してジャケット付き活性賦活処理器17の内部の触媒スラリーよりも高い温度を保ってこの装置の外部を加熱した。触媒の活性賦活処理を終えた触媒スラリーは連続的にジャケット付き活性賦活処理器17から抜き出されて配管11及びポンプ12及び配管13を介して反応器1へ戻した。尚、スチームトレースで加熱された配管9,19,11,13の加熱は十分でこれらの配管中に固形物が析出固着することはなかった。尚、本実験装置の概略図を図1に示す。
(亜鉛化合物の析出状況の確認)
1000時間の連続反応終了後、ジャケット付き冷却器16及びジャケット付き活性賦活処理器17を常温まで冷却した後に開放して、触媒スラリーを抜き出した後、これら容器の内部を常温の水で十分に洗浄した。洗浄後に、これらの容器の内部に析出固着した固形物層の厚さを測定した。測定は容器内の触媒スラリーと直接接触していた内壁の内で無作為に選んだ20カ所を測定して、その平均値を測定結果とした。その結果を表1に示す。
【0044】
【比較例1】
ジャケット付き冷却器16及びジャケット付き活性賦活処理器17の各々のジャケットに飽和水蒸気を全く流さないで、これらの装置の外部を全く加熱しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。この結果を表1に示す。尚、実験終了後に析出固着した固形物を回収して十分に水洗処理した後に蛍光X線分析装置を用いて組成分析したところ、この固形物の50重量%以上が亜鉛化合物であった。
【0045】
【比較例2】
ジャケット付き冷却器16とジャケット付き活性賦活処理器17を接続している配管19の密に施されたスチームトレ−スを取り外して、この配管19の外部を加熱しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。この結果、配管19の内部の触媒スラリーの流動が析出固着した固形物により妨げられて、触媒スラリーがジャケット付き活性賦活器へ移送が困難となった。これが原因で反応開始から280時間で実験装置の運転が不可能となり、シクロオレフィンの製造を中止せざるを得なかった。尚、実験終了後に配管19内に析出固着した固形物を回収して十分に水洗処理した後に蛍光X線分析装置を用いて組成分析したところ、この固形物の50重量%以上が亜鉛化合物であった。
【0046】
【表1】
Figure 0004397468
【0047】
【発明の効果】
本発明の方法を用いることで、固形物の析出固着は防止できるので、従来行っていた固形物の除去作業を行う必要がなくなるとともに、前記装置の長期連続運転も可能となり、シクロオレフィンを製造する装置の一部または全部を停止することなくシクロオレフィンを安定的に製造でき、かつシクロオレフィンの製造量の低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び比較例1で用いた実験装置の説明図である。
【符号の説明】
1反応器
2加熱用ヒータ−
3撹拌機
4配管
5ポンプ
6分離器
7配管
8配管
9配管
10セトリングゾーン
11配管
12ポンプ
13配管
14水素供給装置
15ベンゼン供給装置
16ジャケット付き冷却器
17ジャケット付き活性賦活処理器
18凝縮器
19配管
20窒素ガス供給装置
21酸素を含む窒素ガスを供給する装置
22落圧弁
23撹拌機
24配管
25凝縮器
26反応ゾーン

Claims (5)

  1. ルテニウム触媒、水及び硫酸亜鉛からなる酸性の触媒スラリーを用いて、単環芳香族炭化水素を水素により50〜250℃で部分水添反応してシクロオレフィンを製造するに当たり、該部分水添反応の温度よりも20℃以上低い温度で流動する触媒スラリーが内部に存在する装置において、
    該装置内部の触媒スラリーより高く、300℃以下の温度の熱媒で該装置の外部を加熱する操作を含み、
    該装置は、下記のア、イ、ウの3工程からなる該触媒の活性賦活工程及びそれらの工程間に用いられる設備のうち少なくとも一部であることを特徴とするシクロオレフィンの製造方法。
    ア:部分水添反応を行う反応器から触媒スラリーを抜き出して、触媒スラリーの圧力を10atm以下に落とす工程
    イ:その落圧した触媒スラリーを1つ以上の容器内で触媒の活性賦活処理する工程
    ウ:触媒の活性賦活処理を終えた触媒スラリーを再び部分水添反応を行う反応器へ戻す工程
  2. 該装置が触媒を活性賦活処理する容器に付随する配管であることを特徴とする請求項1に記載のシクロオレフィンの製造方法。
  3. 該加熱が該装置の外壁面に熱媒を接触させて行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のシクロオレフィンの製造方法。
  4. 該熱媒が水蒸気及び/又は温水であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシクロオレフィンの製造方法。
  5. 該加熱の温度を該熱媒である高温水蒸気の圧力を調整することによって制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のシクロオレフィンの製造方法。
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