JP4397441B2 - 温度履歴インジケータ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ある温度にどのくらいの期間曝されたかを不可逆的な色の変化で表すことのできる温度履歴インジケータに関するもので、低温流通食品、医薬品等の温度管理に利用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
食品及びその原材料はその温度管理を誤ると、品質の低下や腐敗、さらには食中毒の危険もある。特に低温流通食品は温度上昇の影響を受けやすく、温度管理の失敗による黴菌汚染の恐れから廃棄されている食品も多い。このような危険を回避するため、低温保管物の保存状態を継続的に監視してゆくものとして温度履歴インジケータがある。
【0003】
従来の温度履歴インジケータとして、特開平6−27880号公報には、透明な保護フィルムの上に顔料と可塑剤及び高分子結着材から成る隠蔽及び染料拡散層と、その層上に粘着材層を設け、さらに染料画像が印刷されている受像紙と貼りあわせて経時的に染料を染料拡散層に拡散させ、透明保護フィルムを通して拡散された染料画像より期間経過を表示する構成が記載されている。この構成を改良した構成が、例えば特開平7−92910号公報、特開平8−30199公報に記載されている。しかしながらこれらの温度履歴インジケータの構成は、透明な保護フィルム上に隠蔽及び染料拡散層等が3〜4層重ねた複雑な構成をしていて、しかも各層を数ミクロン単位の薄い塗布量にしなければならないため、製造技術が難しく、製造工数が多くかかり、高コストなものとなっていた。
【0004】
より簡易な構成の温度履歴インジケータとして、特開平8−101285号公報には染料が塩化ビニルシートに浸透拡散することを利用したものが記載されている。塩化ビニルシートは、染料拡散層であるとともに、使用開始時すなわち染料と塩化ビニルシートが接触した当初に染料色が透けて見えないようにする染料隠蔽層の役割を持つため、着色したシートで構成される。この着色が薄いと染料色の隠蔽が不十分となり、塩化ビニルシートの中へあたかも染料が拡散したかのように見えてしまい、温度履歴を誤って判断してしまう。塩化ビニルシートの着色を濃くすると、使用開始時の隠蔽効果は十分得られるが、拡散層として機能する塩化ビニルシートに染料が拡散する速さが、特に低温において非常に遅いため、染料色が僅かしか観察できず、やはり温度履歴を誤って判断する結果となっていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記の課題を解決するためなされたもので、使用開始時には染料色が識別できず、温度が上昇して時間が経過し、染料が拡散したときは染料色が明瞭に識別できる温度履歴インジケータを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するためになされた本発明の温度履歴インジケータを実施例に対応する図面により説明すると以下のとおりである。
【0007】
温度履歴インジケータは、図1(A)、又は図2に示すように、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂から選ばれる樹脂と拡散性染料と非拡散性色素とを含有するインキ6が付されることにより、又は拡散性染料10と非拡散性色素11とがポリエステル、ポリスチレン及び/又はポリカーボネイトからなるフィルムに混合されて練り込まれていることにより、表面の少なくとも一部に拡散性染料10と非拡散性色素11とが露出してそれらの混合色を示している基材4と、
透明または半透明でポリエチレン及び/又はポリウレタン製の染料拡散層1とを、
使用開始前に個別に有し、使用開始時に接触させることができる温度履歴インジケータであって、
染料拡散層1の非観察面と基材4の染料10露出表面とが前記接触して拡散性染料10が染料拡散層1に拡散することで前記混合色から、それと識別可能な拡散性染料10の色合いになって現れる経時的色変化により、温度監視対象の流通及び/又は保管時の温度上昇と時間経過との両方の温度履歴を表示するものである。
温度履歴インジケータは、図1(A)、及び同(B)に示すとおり染料拡散層1の非観察面と基材4の染料露出表面とが接触すると、同(C)に示すとおり拡散性染料10が染料拡散層1に拡散することで現れる経時的色変化により温度履歴を表示する。拡散性の染料10と、非拡散性の色素11とが混合されて、基材4の染料露出表面の少なくとも一部に露出していてもよい。
【0008】
温度履歴インジケータは、温度監視対象が、食品、その原材料、医薬品であることで好適に実施される。
【0009】
図2に示すように、拡散性染料10を含むインキ6が、基材4の表面の少なくとも一部に印刷されていてもよい。インキ化は、樹脂に溶剤、タルク等の通常の印刷インキの添加剤とともに拡散性染料と非拡散性色素を加え溶剤に溶解する。拡散性染料10の拡散効率を上げるため、界面活性剤、可塑剤等を加えてもよい。
【0010】
染料拡散層1の非観察面と基材4の染料露出表面との少なくとも一方の面に、拡散性染料10の浸透性粘着層3を有していることが好ましい。粘着層3としては、アクリル樹脂系、ゴム系、シリコーン系の粘着剤が染料の浸透拡散に障害とならないため望ましい。
【0011】
拡散性染料10はアゾ系または(および)アントラキノン系の染料である。アゾ系の染料には、例えばC.I.(カラーインデックス)26125、C.I.12055、C.I.11021、C.I.21260、C.I.Solvent Red 83、C.I.Solvent Red 83、C.I.26100、C.I.12770、C.I.Desperse Blue102、が挙げられる。アトラキノン系の染料には、例えばC.I.Solvent Red 146、C.I.Solvent Blue 78、C.I.Solvent Red 117、C.I.Solvent Blue 36が挙げられる。これらの染料を単独または組み合わせて使用することができる。
【0012】
非拡散性色素11は、拡散性染料10に混合できるが、染料拡散層1には拡散浸透しない色素で、例えば無機顔料であればC.I.77491、C.I.77007、有機顔料であればC.I.73310、C.I.69015、C.I.74160、染料であればC.I.73040、C.I.59850、C.I.47000、C.I.74350、C.I.69500、C.I.73671を使用できる。これらのなかから、選定された拡散性染料と色差が大きい色素を使用することが望ましい。
【0013】
拡散性染料10と非拡散性色素11の混合比率は、前者が色素全体の5〜60%が望ましい。拡散性染料10がこれより多いと変色時の色差が小さくなり、また少なすぎても色差は小さくなる。
【0014】
染料拡散層1は透明または半透明のフィルムであって、材質はポリエチレン、塩化ビニル、またはポリウレタンが拡散性の面で好ましい。
【0015】
基材4としては、例えばポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネイトのフィルムが使用できる。
【0016】
拡散性染料10と非拡散性色素11との混合色に近似する色が染料拡散層1の観察面(図1(A)参照)の少なくとも一部に付されていることで、より適切に実施できる。この色は、混合色になるべく近い色に調色したインキにより、印刷で付される。使用開始前には、丸抜きパターン5が観察される。使用開始時(図1(B))に粘着層3で染料拡散層1と基材4とを接着すれば、観察面が均一色に見え、拡散性染料10が基材4から染料拡散層1へ拡散浸透し始める。拡散性染料10が染料拡散層1に拡散してくることにより(図1(C))、色2が付されていない部分だけ拡散性染料10の色合いに変化して観察しやすくなる。
【0017】
図2に示すように、基材4が、インキ6に近似する色の色素2を含有していてもよい。
【0018】
基材4の表面の少なくとも一部に、インキ6に近似する色の色素が印刷されていてもよい。具体的には、図3に示すように、基材4上にインキ6に近似する色の色素2が印刷され、その上にインキ6が印刷されている構成であるか、または、図4に示すように、基材4上に色素2とインク6とが別々に印刷されている構成である。図2、図3および図4に示す温度履歴インジケータは、図1に示すインジケータと同様に、拡散性染料が染料拡散層に拡散し、経時的に色変化する。
【0019】
この色素2は、染料拡散層1を拡散して印刷領域外に浸透することは好ましくないので、拡散性染料10と同質のものは避ける。色素2の印刷域に拡散性染料10が拡散してくると変色が不明瞭になるため、色素2の印刷インキに使用する樹脂は拡散性染料10が拡散しにくい樹脂、例えばアクリル系、シリコーン系、ポリアミド系、エポキシ系等の樹脂を採用する。
【0020】
インジケータの形はラベル形状でもテープ形状にしてもよく、基材4の裏面に粘着剤層を設け、温度監視の対象である食品等の包装の上に貼り付けるようにしてもよい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明を適用する温度履歴インジケータの実施例を現す平面図と断面図であり、(A)は使用前の状態、(B)は使用開始時の状態、(C)は温度履歴を経た後の状態を各々示してある。
【0022】
図1(A)に示すように温度履歴インジケータは、使用前の状態では染料拡散層1と基材4とは個別になっている。透明または半透明の染料拡散層1の上面(観察面)には、中央部を丸抜きにした黒色2のパターン5が形成されている。染料拡散層1の下面(非観察面)には、アクリル樹脂系の粘着層3が形成される。基材4の上面は、赤色の拡散性染料10と、青色および緑色の非拡散性色素11とが混合された黒色が付されている。
【0023】
温度履歴インジケータの使用を開始するときには、染料拡散層1の粘着層3と基材4の上面(拡散性染料10と非拡散性色素11との混合黒色が付されている面)とを貼り合わせる(図1(B)参照)。このとき観察面(染料拡散層1の上面)からは、黒色2の丸抜きパターン5とともに基材4の赤色拡散性染料10と青色および緑色の非拡散性色素11との混合黒色が透明または半透明の丸抜きパターン5を通して見え、全面的に黒く観察できる。
【0024】
温度履歴インジケータは、この状態で温度が上昇し、時間が経過すると図1(C)に示すとおり、赤色拡散性染料10が透明または半透明の染料拡散層1に拡散浸透してゆき、観察面からは黒色2の丸抜きパターン5を通して赤色拡散性染料10が見える。すなわち上面から見たとき、全面的に黒く見えた染料拡散層1が中央部のみ丸く赤色に変化したときには、温度が上昇した履歴を示している。使用開始時から温度が上昇しなければ、赤色拡散性染料10の拡散浸透はないので、観察面からは全面的に黒色に見える。すなわち変色がなければ、温度上昇の履歴がなかったことを示している。
【0025】
以下、本発明を適用する温度履歴インジケータを実際に試作した例を記載する。基材4に使用する黒色インキを下記の配合で製造した。
インキビヒクル NSPメジウム 十條化工(株)製 900重量部
赤色染料 C.I.26125 5重量部
青色染料 C.I.73040 5重量部
緑色染料 C.I.59850 5重量部
溶剤 シクロヘキサノン 90重量部
添加剤 タルク 10重量部
界面活性剤 トラックスK-40 日本油脂(株)製 5重量部
得られた黒色インキを基材4となるポリエステルフィルムの片面にスクリーン印刷(スクリーンメッシュ#150)した。
【0026】
染料拡散層1の上面に付す黒色インキを下記の配合で製造した。
インキビヒクル AT100メジウム 大日本インキ化学(株) 900重量部
黒色顔料 C.I.50440 8重量部
溶剤 シクロヘキサノン 90重量部
添加剤 タルク 10重量部
得られた黒色インキで染料拡散層1となる厚さ100ミクロンの透明な低密度ポリエチレンフィルムの片面に丸抜きパターン5のある黒色2を印刷した。
【0027】
基材4のフィルムと染料拡散層1のフィルムとを各1枚宛で1組の温度履歴インジケータとし、染料拡散層1の黒色2を印刷した面の裏面にアクリル樹脂系の粘着剤3を塗り、基材4の黒色インキを印刷した面を貼り付けた。この状態で染料拡散層1の上面部より目視したところ、全体が黒色であった。温度履歴インジケータを30℃の環境内に24時間放置後、目視すると中央部に輪郭のはっきりした赤色の丸い画像が浮き出ていた。
【0028】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように本発明を適用する温度履歴インジケータは、拡散性染料が染料拡散層に拡散することで現れる経時的色変化により、温度履歴を表示するものであり、使用開始時には染料色が識別できず、温度が上昇して時間が経過し、染料が拡散したときは染料色が明瞭に識別できる。そのため温度履歴を誤って判断することを防止できる。また構成が簡易であるため、製造工数が少なく、低コストなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する温度履歴インジケータの実施例の構成と使用状態を表す平面図と断面図である。
【図2】本発明を適用する温度履歴インジケータの別な実施例の構成を表す平面図である。
【図3】本発明を適用する温度履歴インジケータの別な実施例の構成を表す平面図である。
【図4】本発明を適用する温度履歴インジケータの別な実施例の構成を表す平面図である。
【符号の説明】
1は染料拡散層、2は黒色、3は粘着層、4は基材、5は丸抜きパターン、6はインキ、7は変色部、10は拡散性染料、11は非拡散性色素である。
Claims (9)
- アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂から選ばれる樹脂と拡散性染料と非拡散性色素とを含有するインキが付されることにより、又は拡散性染料と非拡散性色素とがポリエステル、ポリスチレン及び/又はポリカーボネイトからなるフィルムに混合されて練り込まれていることにより、表面の少なくとも一部に前記拡散性染料と非拡散性色素とが露出してそれらの混合色を示している基材と、
透明または半透明でポリエチレン及び/又はポリウレタン製の染料拡散層とを、
使用開始前に個別に有し、使用開始時に接触させることができる温度履歴インジケータであって、
前記染料拡散層の非観察面と前記基材の染料露出表面とが前記接触して前記拡散性染料が前記染料拡散層に拡散することで前記混合色から、それと識別可能な前記拡散性染料の色合いになって現れる経時的色変化により、温度監視対象の流通及び/又は保管時の温度上昇と時間経過との両方の温度履歴を表示する温度履歴インジケータ。 - 前記拡散性染料と前記非拡散性色素とは、前記拡散性染料がそれら色素全体の5〜60%となる混合比率であることを特徴とする請求項1に記載の温度履歴インジケータ。
- 前記温度監視対象が、食品、その原材料、医薬品であることを特徴とする請求項1に記載の温度履歴インジケータ。
- 前記インキが、樹脂、タルク、溶剤、界面活性剤、及び/又は可塑剤を含有していることを特徴とする請求項1または2に記載の温度履歴インジケータ。
- 前記染料拡散層の非観察面と基材の染料露出表面との少なくとも一方の面に、拡散性染料の浸透性粘着層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の温度インジケータ。
- 拡散性染料がアゾ系または/およびアントラキノン系の染料であることを特徴とする請求項1または2に記載の温度インジケータ。
- 前記拡散性染料と非拡散性色素との混合色に近似する色が染料拡散層の観察面の一部に付されていることを特徴とする請求項2に記載の温度履歴インジケータ。
- 前記基材が、前記インキに近似する色の色素を含有していることを特徴とする請求項4に記載の温度履歴インジケータ。
- 前記基材の表面の少なくとも一部に、前記インキに近似する色の色素が印刷により付されていることを特徴とする請求項4に記載の温度履歴インジケータ。
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