JP4396237B2 - 鋼材の熱処理装置及び鋼材の製造方法 - Google Patents

鋼材の熱処理装置及び鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、誘導加熱装置を用いて鋼材を熱処理する技術に関する。
鉄鋼プロセスにおいては、製品となる鋼材の硬度、靭性等の性質を向上させ、より強く粘り強い鋼材を製造するため、焼入れ、焼き戻し、焼きなまし等さまざまな熱処理が行われている。これらの熱処理は一般的に加熱過程と冷却過程に分けられる。このうち加熱過程では鋼材の成分に応じた変態点温度が基準となる。例えば、焼入れの場合は変態点よりも高温に加熱し、焼き戻し及び焼きなましでは変態点に達しないように加熱を行わねばならない。
よって、熱処理の目的に応じて精度良く加熱することが必要である。また、同一部材内での品質のばらつきを抑えるためには、鋼材の内部にわたり均一に加熱する必要がある。この熱処理方法を均一加熱という。
また、一般に製造されている焼入れ、焼き戻しの熱処理を施された鋼材は、主に表面から冷却を受けるため、表面の硬度が内部に比べて高くなりがちである。このような板厚方向の硬度分布を持った鋼材は、腐食環境に弱く、海洋や、石油、天然ガスのパイプライン等に使用されると応力腐食割れを起こしやすいことがわかっている。
そこで、表層部を高温で加熱することにより軟化させ、表層部と内部の硬度差を少なくする処理が行われることもある。この熱処理方法を表層加熱という。
従来、これらの加熱条件を実現する加熱方法として、誘導加熱装置を用い、鋼材を誘導加熱炉内で昇温させる加熱段階と、加熱段階よりも周波数を高くし、かつ投入電力を下げて加熱する均熱段階との間に、加熱段階での誘導加熱と同一の周波数で、かつ加熱段階よりも投入電力を下げて誘導加熱する準加熱段階を設ける誘導加熱方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平9−170021号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、加熱時間が数十分を要するため効率的ではない。また、鋼材の加熱途中において誘導加熱装置の周波数を変更するものであるため、周波数を切り替える機構を装備する必要がある。従って装置が高価になり、さらに装置の構造が複雑になる。また、鋼材を加熱するための投入電力計算において、精度良い温度制御を実現する上で必要な要素である鋼材内部における誘導電流分布が考慮されていない。
そのため、誘導加熱装置を用いたインライン熱処理のアイデアは従来から存在していたが、実用化には至らなかった。この理由には、誘導加熱能力の不足などのハード面の問題以外にも、熱処理方法について具体的にどのように問題を解けば良いのかという問題解決手法等のソフト面での問題もあった。熱処理を行うためには、長手方向・厚み方向・幅方向で所定の温度条件を満足するように加熱することが必要となる。このためには、誘導加熱時の鋼材の内部温度を精度よく推定する必要があり、この温度推定モデルを用いて加熱のための電力を求める計算する必要がある。さらには、加熱前の温度により加熱時の電力も異なるため、これらの処理をオンラインで行う必要がある。しかしながら、これらの問題に対して明確な解答を与えるような、電力の計算方法や搬送速度の決め方について検討した文献はほとんどなかった。
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、誘導加熱によって熱処理を行うに際し、鋼材の表面温度及び内部温度を精度よく目標に一致させ、鋼材が目的の性質をもつような熱処理を行うことができる鋼材の熱処理装置及びその熱処理装置を用いた鋼材の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]搬送中の鋼材を加熱する誘導加熱装置と、前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算する演算装置と、前記演算装置により演算された供給予定電力を前記誘導加熱装置に供給する電源装置とを備えた鋼材の熱処理装置であって、
前記演算装置は、
前記鋼材のサイズと、前記鋼材の搬送速度と、前記鋼材の加熱前温度と、前記誘導加熱装置に供給する電力に基づいて、前記誘導加熱装置での加熱時の前記鋼材の幅方向と厚み方向からなる二次元断面の温度分布を推定する温度推定手段を有し、
前記温度推定手段を用いて、加熱中の前記鋼材の幅方向表面温度の最大値が第1の目標温度以下で、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第2の目標温度と所定範囲内の差になるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力、または前記誘導加熱装置による加熱中の前記鋼材の幅方向の表面温度の最小値が第3の目標温度以上となり、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第4の目標温度以下となるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算することを特徴とする鋼材の熱処理装置。
[2]搬送中の鋼材を加熱する誘導加熱装置と、前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算する演算装置と、前記演算装置により演算された供給予定電力を前記誘導加熱装置に供給する電源装置とを備えた鋼材の熱処理装置であって、
前記演算装置は、
前記鋼材のサイズと、前記鋼材の搬送速度と、前記鋼材の加熱前温度と、前記誘導加熱装置に供給する電力に基づいて、前記誘導加熱装置での加熱時の前記鋼材の幅方向と厚み方向からなる二次元断面の温度分布を推定する温度推定手段を有し、
前記温度推定手段を用いて、加熱中の前記鋼材の幅方向の所定位置における表面温度が第1の目標温度以下で、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第2の目標温度と所定範囲内の差になるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力、または前記誘導加熱装置による加熱中の前記鋼材の幅方向の所定位置における表面温度が第3の目標温度以上となり、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第4の目標温度以下となるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算することを特徴とする鋼材の熱処理装置。
[3]前記演算装置は、
前記温度推定手段によって推定された前記鋼材の表面温度と内部温度とが所定の温度条件に適合するかどうかを判定する適合判定手段と、
前記温度条件に適合しない場合は、演算に用いられた電力を修正して前記温度推定手段と前記適合判定手段とを繰り返し実行する判定処理手段と、
前記温度条件に適合する場合は、その演算に用いられた電力を前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力とする電力決定手段と
を有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の鋼材の熱処理装置。
[4]前記演算装置は、
前記温度推定手段によって推定された前記鋼材の表面温度と内部温度とが所定の温度条件に適合するかどうかを判定する適合判定手段と、
前記温度条件に適合しない場合は、演算に用いられた電力を修正して前記温度推定手段と前記適合判定手段とを繰り返し実行する判定処理手段と、
前記温度条件に適合する場合は、その演算に用いられた電力に基づいて、各誘導加熱装置の電力量の合計値を求め、その電力量合計値が所定の値以下であるという電力量条件に適合するかどうかを判定する電力量判定手段と、
前記電力量条件に適合する場合は、その演算に用いられた電力を前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力とする電力決定手段と
を有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の鋼材の熱処理装置。
[5]前記演算装置は、
前記温度推定手段によって推定された前記鋼材の表面温度と内部温度とが所定の温度条件に適合するかどうかを判定する適合判定手段と、
前記温度条件に適合する電力の内、各誘導加熱装置の電力量の合計値が最小になる電力を前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力とする電力決定手段と
を有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の鋼材の熱処理装置。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載の鋼材の熱処理装置を用いて熱処理を行うことによって鋼材を製造することを特徴とする鋼材の製造方法。
本発明によれば、誘導加熱装置を用いて鋼材の熱処理を行うに際し、誘導加熱時の鋼材の幅方向断面の温度分布を推定し、その温度推定値が所定の温度目標を満たすように誘導加熱装置への供給予定電力を定めているので、鋼材の表面温度及び内部温度を精度よく目標に一致させ、鋼材が目的の性質をもつような熱処理を行うことができる。また、そのような熱処理を行うことにより、良好な品質の鋼材を製造することができる。
本発明の一実施形態を以下に示す。
一般に、鋼材は加熱炉内で加熱されて、1200℃前後にまで昇温する。その後、鋼材は、通常複数台の圧延機により所定の厚さと幅に圧延される。圧延後、まだ800℃〜1000℃にある鋼材は、冷却水により強制冷却され、又は大気により自然冷却される。この処理によって、鋼材は焼入れされる。特に圧延後に加速冷却装置による急速冷却を行うことにより、鋼材の強度や靭性を強化できることがわかっている。この後、必要に応じて、再びガス炉で焼き戻し、焼き鈍し等の熱処理が行われる。熱処理が行われた鋼材は、裁断され出荷される。
図1は、本発明の一実施形態が適用される鋼材の製造ラインの概略構成を示す側面図である。この鋼材製造ラインは、鋼材1を加熱する加熱炉2と、粗圧延機3と、仕上圧延機4と、加速冷却装置5と、矯正装置6と、熱処理装置7と、鋼材1の温度を測定する温度検出器8とを備えている。
この鋼材製造ラインでは、加熱炉2で加熱された鋼材1を、粗圧延機3と仕上圧延機4により圧延した後、加速冷却装置5により急速冷却し、矯正装置5を用いて鋼材1の反りや曲がりを矯正した後、ライン上に設置した熱処理装置7によって焼き戻し処理を行う。
そして、この実施形態においては、熱処理装置7が、1台又は複数台の誘導加熱装置11(ここでは3台)と、誘導加熱装置11に供給する供給予定電力を演算する演算装置12と、前記演算装置により演算された供給予定電力を誘導加熱装置11に供給する電源装置13とで構成されている。
これによって、ガス炉による熱処理の代わりに誘導加熱装置11を用いて熱処理をするようにしているので、インラインで焼入れ処理後に焼き戻し処理を行うことができるため、能率を飛躍的に向上させることができる。また、誘導加熱装置11を使用することにより、ガス炉を使用した場合に比べて加熱温度の精度を上げることができる。従って、幅方向及び厚み方向の温度分布をも精度良く制御することが可能となる。
特に、圧延後に加速冷却装置4による急速冷却を行い、その直後、誘導加熱装置11による熱処理を行うことにより、強度や靭性が強化した鋼材を製造することが可能となる。
このような熱処理装置7を用いて、鋼材が目的の性質をもつような熱処理を行うに際しては、以下の点を考慮する必要がある。
まず、誘導加熱装置11が、鋼材1を所定の温度に加熱できる能力を有することが必須である。誘導加熱装置11を用いてインライン熱処理を行う場合、誘導加熱装置11における搬送速度の制約により熱処理能率が圧延能率に劣り、結果的に生産性が阻害される場合が生じる。そこで、搬送速度を上げるためには誘導加熱装置11の台数を増やす必要があるが、設備が大掛かりになり、設備コストと設置スペースのコストが増えるとともに、消費電力も大きくなり、運転コストも増えて、実機への適用は困難となる。
そこで、この実施形態においては、誘導加熱装置11が少ない台数でも、鋼材1を複数回往復させて加熱することで、圧延能率に劣らず、生産性を阻害しないとともに、コスト抑制を実現する加熱方法を行うようにしている。この場合の加熱回数をパス数と呼ぶ。1方向のみで加熱終了する場合は1パス、誘導加熱装置を1往復させて加熱する場合は2パスとなる。
次に、加熱方法には、対象となる鋼材によって均一加熱と表層加熱の二つの加熱パターンがあるが、どちらの場合にも、鋼材の表面温度と鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置の温度(内部温度)をそれぞれ別の目標温度に加熱する必要がある。内部温度としては、幅方向及び板厚方向の平均温度(平均温度)の場合もあるし、特定の幅方向の位置における板厚中心部の温度(中心温度)の場合、板表面から任意の深さ(例えば、板厚1/3、1/4深さ)の温度の場合等がある。
均一加熱の場合は、加熱過程中の表面温度が上限温度(第1の目標温度)を超えないようするとともに、内部温度が所定の目標温度(第2の目標温度)と所定範囲内の差になるように加熱する。このような均一加熱により、同一部材での品質ばらつきを抑えることを実現する。
表層加熱の場合は、加熱過程中の表面温度が下限温度(第3の目標温度)を超えるようにするとともに、内部温度が所定の目標温度(第4の目標温度)以下になるように加熱する。このような表層加熱を行うことにより、表面の硬度を内部と同じにでき、パイプライン等の用途での問題を回避できる。
均一加熱を行うためには、誘導加熱装置11を複数台用意して加熱過程と冷却過程を繰り返しながら徐々に加熱をする必要がある。例えば、パス数を複数回として鋼材1を誘導加熱装置11内を通過させた後に、反対方向に搬送させて再度加熱する工程を指定パス数回分繰り返す。このとき、誘導加熱装置11内を通過している間は表面付近が表皮効果により加熱されて、誘導加熱装置11を出た後、反転するまでは冷却過程となって表面からの放熱と内部への伝熱によって、表面と内部の温度が均一になっていく。
逆に、表層加熱を行うためには、誘導加熱装置11により加熱された表面から内部への熱伝達や表面からの放熱によって表面と内部の温度が均一になる前に、表面を目標温度に加熱することが必要である。
そこで、この実施形態においては、表層加熱及び均一加熱ともに、鋼材内部の誘導加熱電流分布モデルと鋼材断面の温度分布を推定するモデルを用いることにより、熱処理時の温度の推定精度を向上させている。
さらに、同じ製造条件でも、加速冷却後の鋼材温度が操業条件により異なるため、誘導加熱装置11に供給する供給予定電力(加熱電力)をテーブル等であらかじめ用意しておくよりは、加速冷却後、あるいは加熱前の鋼材温度に基づいて、加熱電力や搬送速度をオンラインで求めて決定するような仕組みを構築する必要がある。
上記の点を踏まえて、誘導加熱装置11を用いて熱処理を行う際には、次の点が重要である。
(a)誘導加熱時の鋼材の内部温度を精度良く推定する。
(b)加熱温度の目標及び制限を満たすような加熱電力と搬送速度を求める。
(c)消費電力は、なるべく小さいほうが望ましい。
そこで、この実施形態に係る熱処理装置7おける演算装置12は下記の機能を備えるようにしている。
(a)誘導加熱時の鋼材断面の温度分布を精度よく推定するため、二次元の差分式を採用して、鋼材温度、透磁率と浸透深さから鋼材断面の誘導電流分布を求め、発熱量を推定する。
(b)加熱電力の設定値を求めるに際して、温度条件が複数あり、操作量(加熱電力)も複数あり、モデルが非線形であるため、非線形計画法で算出する。その結果、表面温度と内部温度は独立変数ではないが、複数台加熱により、ある程度独立と見なせ、別々に目標設定をすることが可能とした。
(c)非線形計画法の目的関数を消費電力の和(消費電力量)とし、所定の温度条件を満たす加熱電力の中で消費電力量が最小となる加熱電力を求める。
以下に、この実施形態に係る熱処理装置7おける演算装置12の具体的な演算処理内容を記載する。
最初に、加熱電力と搬送速度の求め方を示す。この実施形態では、鋼材断面の温度分布を推定する数式モデルを用いて、加熱電力設定計算と搬送速度設定計算を行う。
まず、誘導加熱による鋼材の温度分布を推定する数式モデルは以下のようなものである。
鋼材内部の電流分布は、浸透深さで表される。浸透深さは式(1)のように周波数、比透磁率で表される。
δ=5.03*SQRT(R/μ/fx)/100 ……(1)
ただし、δ:浸透深さ、R:比抵抗、μ:比透磁率、fx:周波数。
浸透深さの値が大きい場合には誘導電流が鋼材内部まで流れるが、浸透深さが小さい場合には、誘導電流が表面に集中するため加熱も表面に集中し、鋼材内部は表面からの熱伝達により加熱されることになる。従って、同じ電力を投入しても、浸透深さにより表面の加熱温度は変わってくる。そこで、比透磁率等により浸透深さを求め、浸透深さにより鋼材内部での電流分布を算出し、電流分布により鋼材内部の温度分布を求める。
鋼材の断面を、図7のように分割し、厚み方向i番目、幅方向j番目の温度をxi,jと定義する。その部分の分割幅として、dyiを厚み方向分割幅、dzjを幅方向分割幅とする。
一般に、鋼材表面からの距離yと、誘導電流密度ψ(y)の関係は式(2)で表される。αは定数である。
ψ(y)=αexp(−y/δ) ……(2)
iを式(3)で定義すると、厚み方向i番目のブロックに流れる電流は、式(4)で表される。
Figure 0004396237
よって、消費電力の比は式(5)で表される。
Figure 0004396237
図8のように鋼材断面では、表面から同じ位置では、同じ電流が流れ、発熱量も同じであるとする。このとき、同じ電流が流れるドーナツ状の面積をs(i)(i=1,2,…,n)とすると、s(i)は下記のように表される。
Figure 0004396237
各s(i)に加わる発熱量の比をp(i)とすると、
Figure 0004396237
これらは解析的に解くことができ、
Figure 0004396237
よって、各部分の発熱量の比は以下のように表される。
Figure 0004396237
次に、誘導加熱装置を用いた加熱過程における鋼材の温度変化を数式で表す。熱伝導方程式の差分式から、式(16)を得る。
Figure 0004396237
式(16)のQi,j,kは境界条件である大気との熱伝達と、加熱装置から供給される熱量からなる。
Figure 0004396237
式(16)〜(18)を用いることにより、加熱後の鋼材の温度分布(x1,j2,j … xnb-1,jnb,j)を求めることができる。これのフローを図2に示す。鋼材が誘導加熱装置を抜けたところで計算終了となる。
以上が誘導加熱による鋼材の温度分布を推定する数式モデルの説明である。
次に、この温度モデルを用いた加熱電力の求め方を図3に示す。
まず、適当な初期値電力un,kを与えて、誘導加熱装置出側の加熱温度分布xi,j,kを計算する。そして、各誘導加熱装置での加熱温度と前述の温度条件を比較し、温度条件を満たしているかどうかの判定を行う。温度条件に合致していれば、その加熱電力を最終的な加熱電力として計算を終了する。合致していない場合は、新たな加熱電力を与えて温度計算のやり直しを行う。新しい加熱電力uk,jを与える方法は、線形計画法、非線形計画法など一般的な方法でかまわない。温度条件が実現可能であるならば、有限回の計算で収束する。
さらに、目的関数として各誘導加熱装置での消費電力の和(消費電力量)を与える。加熱後の鋼材温度が温度条件に合致するかどうかの判定を行った後、誘導加熱装置での消費電力量が最少になるかどうかの判定も重ねて行う。すなわち、この処理によって求められる加熱電力が誘導加熱装置での消費電力量を最少にするようにする。この場合も、新しい加熱電力uk,jを与える方法は、線形計画法、非線形計画法など一般的な方法でかまわない。このフローを図4に示す。
次に、搬送速度の求め方を図5に示す。
搬送速度の決定には、始めにパス数を決めておき、図5に示すような収束計算を行う。適当な初期速度から始めて、加熱電力設定計算を行う。速度によっては、電力能力の上限や温度条件の制約によって、加熱が不可能の場合がある。その場合は、速度を下げて加熱電力の設定計算を行う。加熱が可能なら、搬送速度を上げて加熱電力の設定計算を行う。加熱可能な範囲の中で最も早い速度を求める。
そして、ここで決まった搬送速度をもとに、前述の電力設定計算によって加熱電力を求める。
以上がこの実施形態における加熱電力と搬送速度の求め方である。
このようにして演算装置12が求めた加熱電力と搬送速度に基づいて、電源装置13から各誘導加熱装置11に加熱電力が供給され、鋼材1が加熱される。
なお、演算装置12によって上記のようにして求まる加熱電力と搬送速度は、事前に計算して演算装置12内にテーブル等で保存しておき利用することもできるし、鋼材の加速冷却が終了し、加熱開始温度が確定した時点にオンラインで計算して求めることもできる。
しかしながら、事前に計算しておいた場合は、加速冷却終了時の温度が予定と異なる場合がある。また、複雑なモデルを用いて収束計算を繰り返し行うため膨大な計算量になり、オンラインでは計算が間に合わないことも考えられる。
そこで、このような場合に有効な、加熱電力と搬送速度の修正方式を述べる。これは、加熱電力と搬送速度を事前に計算しておき、加速冷却終了後の実績温度で搬送速度を修正し、加熱電力を再計算する方式である。これを以下に示す。
まず、加速冷却を終了し、実績温度が検出された時点で、次のようにして搬送速度の修正を行う。
すなわち、図5に示す事前に搬送速度を求める計算を行った後に、加熱開始温度が変更になった場合の搬送速度への影響係数を求めておく。この手順を図6に示す。加熱開始温度をTi、加熱開始温度の変更量をΔTiとし、加熱開始温度がTi+ΔTiの場合に搬送速度をどれだけ変更すれば良いのかの影響係数を求める。影響係数を1から処理を始めて、加熱可能で最も処理時間が短くなるように影響係数を調整する。この値をqとすると、実際の加熱開始温度がTi+ΔTの場合の搬送速度v’は、下式(19)で求められる。
v’(i)=(qΔT+1)v(i) ……(19)
ただし、i=1,2,…,np、np:パス数、v(i):事前に求めておいた速度、v’(i):修正された搬送速度、q:影響係数。
次に、修正された速度で図3又は図4に示す電力計算を再度行う。電力計算の収束計算のみであれば、時間はさほどかからない。
このような修正方式を利用することにより、最も効率の良い搬送速度を求めることができ、適切な加熱電力を精度よく設定することができる。
上記のようにして、この実施形態においては、誘導加熱時の鋼材の幅方向断面の温度分布を推定し、推定された表面温度と内部温度が所定の温度目標を満たすように誘導加熱装置の加熱電力と搬送速度を定めているので、鋼材の表面温度及び内部温度を精度よく目標に一致させ、鋼材が目的の性質をもつような熱処理を行うことができる。また、そのような熱処理を行うことにより、良好な品質の鋼材を製造することができる。
なお、鋼材の表面温度と内部温度が所定の温度目標を満たすようにする際に、必ずしも、鋼材の幅方向全域について温度目標を満たすようにする必要はない。すなわち、加熱時の温度変化が大きい幅方向端部近傍を最終製品に仕上げる段階で切断するような場合には、所定の切断位置から幅方向中央部に向かう領域で表面温度と内部温度が温度目標を満たすようにすれば良い。これによって、一層効率的な加熱電力等の設定をすることができる。
逆に、幅方向端部近傍で表面温度と内部温度が温度目標を満たさない領域ができるだけ狭くなるように加熱電力等の設定をすることによって、最終製品に仕上げる段階での切断シロを低減でき、歩留を向上させることが可能となる。
図9は、そのようにして加熱した鋼材の幅方向の温度分布を示すものであり、幅方向端部20mmの位置から幅方向中央部に向かう領域で表面温度と平均温度が温度目標を満たすようになっている。
本発明の一実施形態が適用される鋼材の製造ラインの概略構成を示す側面図。 加熱時の鋼材温度分布を求める温度モデルにおけるフロー図。 加熱電力を求める加熱電力設定計算のフロー図。 加熱電力の最小値を求める電力設定計算のフロー図。 搬送速度を決定する搬送速度設定計算のフロー図。 搬送速度の影響係数を決定する手順を示すフロー図。 温度モデルにおける鋼材断面の温度分布を表す記号の説明図。 鋼材断面の誘導電流の分布を示す図。 熱処理後の鋼材の幅方向の温度分布を示す図。
符号の説明
1 鋼材
2 加熱炉
3 粗圧延機
4 仕上圧延機
5 加速冷却装置
6 矯正装置
7 熱処理装置
8 温度検出器
11 誘導加熱装置
12 演算装置
13 電源装置

Claims (6)

  1. 搬送中の鋼材を加熱する誘導加熱装置と、前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算する演算装置と、前記演算装置により演算された供給予定電力を前記誘導加熱装置に供給する電源装置とを備えた鋼材の熱処理装置であって、
    前記演算装置は、
    前記鋼材のサイズと、前記鋼材の搬送速度と、前記鋼材の加熱前温度と、前記誘導加熱装置に供給する電力に基づいて、前記誘導加熱装置での加熱時の前記鋼材の幅方向と厚み方向からなる二次元断面の温度分布を推定する温度推定手段を有し、
    前記温度推定手段を用いて、加熱中の前記鋼材の幅方向表面温度の最大値が第1の目標温度以下で、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第2の目標温度と所定範囲内の差になるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力、または前記誘導加熱装置による加熱中の前記鋼材の幅方向の表面温度の最小値が第3の目標温度以上となり、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第4の目標温度以下となるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算することを特徴とする鋼材の熱処理装置。
  2. 搬送中の鋼材を加熱する誘導加熱装置と、前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算する演算装置と、前記演算装置により演算された供給予定電力を前記誘導加熱装置に供給する電源装置とを備えた鋼材の熱処理装置であって、
    前記演算装置は、
    前記鋼材のサイズと、前記鋼材の搬送速度と、前記鋼材の加熱前温度と、前記誘導加熱装置に供給する電力に基づいて、前記誘導加熱装置での加熱時の前記鋼材の幅方向と厚み方向からなる二次元断面の温度分布を推定する温度推定手段を有し、
    前記温度推定手段を用いて、加熱中の前記鋼材の幅方向の所定位置における表面温度が第1の目標温度以下で、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第2の目標温度と所定範囲内の差になるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力、または前記誘導加熱装置による加熱中の前記鋼材の幅方向の所定位置における表面温度が第3の目標温度以上となり、加熱終了時の鋼材内部の所定の幅及び厚みの位置における温度が第4の目標温度以下となるように加熱するために前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力を演算することを特徴とする鋼材の熱処理装置。
  3. 前記演算装置は、
    前記温度推定手段によって推定された前記鋼材の表面温度と内部温度とが所定の温度条件に適合するかどうかを判定する適合判定手段と、
    前記温度条件に適合しない場合は、演算に用いられた電力を修正して前記温度推定手段と前記適合判定手段とを繰り返し実行する判定処理手段と、
    前記温度条件に適合する場合は、その演算に用いられた電力を前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力とする電力決定手段と
    を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼材の熱処理装置。
  4. 前記演算装置は、
    前記温度推定手段によって推定された前記鋼材の表面温度と内部温度とが所定の温度条件に適合するかどうかを判定する適合判定手段と、
    前記温度条件に適合しない場合は、演算に用いられた電力を修正して前記温度推定手段と前記適合判定手段とを繰り返し実行する判定処理手段と、
    前記温度条件に適合する場合は、その演算に用いられた電力に基づいて、前記鋼材の加熱に使用される各誘導加熱装置の電力量合計値が所定の値以下となる電力条件に適合するかどうかを判定する電力量判定手段と、
    前記電力条件に適合する場合は、その演算に用いられた電力を前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力とする電力決定手段と
    を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼材の熱処理装置。
  5. 前記演算装置は、
    前記温度推定手段によって推定された前記鋼材の表面温度と内部温度とが所定の温度条件に適合するかどうかを判定する適合判定手段と、
    前記温度条件に適合する電力の内、前記鋼材の加熱に使用される各誘導加熱装置の電力量の合計値が最小になる電力を前記誘導加熱装置に供給する供給予定電力とする電力決定手段と
    を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼材の熱処理装置。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の鋼材の熱処理装置を用いて熱処理を行うことによって鋼材を製造することを特徴とする鋼材の製造方法。
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