JP4396082B2 - 非水電解質二次電池及び電気機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は非水電解質二次電池及び電気機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
非水電解質二次電池は、従来のニッケル・カドミウム電池や鉛蓄電池のような水系の電解質二次電池に比べ、高エネルギー密度、電池電圧が高く、自己放電も少ないといった各種優れた特徴を有し、最近ではノート型パソコンや携帯電話機などの電子機器を中心として広く用いられるようになってきている。
非水電解質二次電池は、よく知られているように、例えば炭素材料のようにリチウムイオンのドープ・脱ドープが可能な物質を負極活物質とし、一方、リチウムコバルト複合酸化物等のリチウム複合酸化物を正極活物質とし、非水溶媒にリチウム塩を溶解してなる非水電解液を非水電解質として用いるものである。そして、一般的な非水電解質二次電池として、結着剤などとともに調整した前記正極活物質をアルミニウム箔などの金属箔からなる正極集電体の表面に塗布した正極板と、結着剤などとともに調整した前記負極活物質を銅箔などの金属箔からなる負極集電体の表面に塗布した負極板とを、ポリプロピレンフィルムなどのセパレータを介して巻回した状態で電池缶内に収容し、これに非水電解質を含浸させたものが多く用いられている。
【0003】
非水電解質二次電池は、高エネルギー密度を有し、小型軽量化が可能な充放電電池であるため、現在盛んに研究開発が行われている。
非水電解質二次電池に用いられる電解質の非水溶媒として、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)に代表される環状炭酸エステルや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)に代表される鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)に代表される環状カルボン酸エステル、ジメトキシメタン(DMM)や1,3−ジメトキシプロパン(DMP)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン(THF)あるいは1,3−ジオキソラン(DOL)等の環状エーテルが多く用いられている。
【0004】
これらの非水溶媒を非水電解質二次電池に適用する際には、電気伝導率が高い物が望ましい。そのためには比誘電率が高く、粘度の低い溶媒が好ましく用いられる。しかしながら、比誘電率が高いということは極性が強いことにほかならず、すなわち、粘度も高いものとなる。そのために現在の実用電池では、上述の溶媒のうち、エチレンカーボネート(誘電率ε=90)のような高誘電率溶媒と、ジメチルカーボネート(DMC、ε=3.1)やエチルメチルカーボネート(EMC、ε=2.9)に代表される低誘電率溶媒とを併用して多く用いられている。非水電解質二次電池に用いられる電解質は上述の非水溶媒に、1mol濃度程度の支持電解質を溶解したものが用いられている。支持電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ほうふっ化リチウム(LiBF4)、りんふっ化リチウム(LiPF6)に代表される無機酸アニオンリチウム塩や、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiSO3CF3)、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CF3SO2)2NLi)等の有機酸アニオンリチウム塩が用いられている。
【0005】
セパレータは、従来前記非水電解質に不溶なものであり、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン樹脂製の多孔膜が用いられている。
正極活物質にはコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4、LiMnO2)、鉄酸リチウム(LiFeO2)やそれらの遷移金属(Co、Ni、Mn、Fe)の一部を他の遷移金属、錫(Sn)、アルミニウム(Al)等で置換したもの、酸化バナジウム(V2O5)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化モリブデン(MoO2、MoO3)等の遷移金属酸化物や硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2、MoS3)、硫化鉄(FeS2)などの遷移金属硫化物などが用いられている。
【0006】
負極活物質としてはリチウムイオンやナトリウムイオンを用い、その負極ホスト材として、非晶質炭素材、2000℃以上の温度で焼成した人造黒鉛、天然黒鉛などの炭素材料やアルカリ金属と合金化するアルミニウム(Al)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、シリコン(Si)などの金属やアルカリ金属格子間挿入型の立方晶系の金属間化合物(AlSb、Mg2Si、NiSi2)やリチウム窒素化合物(Li(3-X)MXN(M:遷移金属))等が用いられている。
近年この種の電池の中で、アルカリ金属を活物質供給源かつ集電体とする非水電解質二次電池よりもアルカリ金属イオンを吸蔵・放出できる上記のようなホスト材料を負極に用いた非水電解質二次電池が主流を占めてきている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、非水電解質二次電池の技術利用分野が同じであって、主要部が同一であるA発明とB発明からなる。
【0008】
まずA発明について説明する。
上述した従来技術におけるセパレータの厚みは10〜50μmと薄いため、充電器の回路故障による過充電や電池内部の異常等により電池温度が上昇した場合、セパレータの溶融や収縮により内部ショートが発生し、電池の破裂や燃焼をまねくおそれがある。
そこで、この問題を回避するため、例えば、セパレータの厚みを増したり正負極間の間隔を拡げることが考えられるが、一般に非水電解質の伝導度は水系電解液の伝導度に比べて小さく、微小な伝導度の変化によっても電池容量等の電池性能が大きく変化してしまうおそれがあるため、むやみにセパレータの厚みを増したり正負極間の間隔を拡げることはあまり好ましい方法であるとはいえない。
【0009】
本発明Aはこのような事情に鑑みてなされたものであって、電池の性能に影響を与えることなく過充電や電池異常時における温度上昇に起因する電池の内部ショートの発生を防止することができる、安全性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0010】
B発明について説明する。
従来の電池系での課題として、負極ホスト材には、非水電解質二次電池の特徴である高電圧・高エネルギー密度を示すために、アルカリ金属の電位に近い電位を発生するような物質、例えば、非晶質炭素材、2000℃以上の温度で焼成した人造黒鉛、天然黒鉛などの炭素材料が用いられているが、これらの物質は高温でその物質中に含まれるアルカリ金属イオンと電解質とが反応し、発熱したり、ガス発生を起こす。また、非水電解質二次電池は高電圧・高エネルギー密度を示すために、正極上でも溶媒や溶質の酸化分解が起こり得る。これらの現象は、高温になるほど顕著となり、60℃以上での高温保存時等に負極側で還元分解及び正極側で酸化分解が起こり、多量のガスが発生する。またこれら非水電解質二次電池は近年ノートパソコンのバックアップ用電源としても広く用いられているが、ノートパソコン内部の温度は常に45℃から60℃にあり、このような温度下で、常に高容量を保つために4.2Vの定電圧が印加されており、ガス発生が起こりやすいものとなる。
このような電池の高温時にガスが発生すると、電池内部の圧力上昇により安全装置が作動し電流遮断したり、あるいは電池特性の低下がおこるため、改善が強く望まれている。
本発明Bは、正極と負極と非水電解質を備えた非水電解質二次電池における上記の問題を解決するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明Aは、正極、負極及び非水溶媒を含む非水電解質を具備し、前記正極がリチウムと遷移金属Mを含む複合酸化物からなる非水電解質二次電池であり、前記正極の表面にバインダー及び導電性炭素材からなる薄膜が形成されている非水電解質二次電池であって、より詳しくは、例えば集電体に負極活物質が塗布されてなる負極と、集電体に正極活物質が塗布されてなる正極と、非水電解質とを有する非水電解質二次電池において、前記正極の表面にバインダー及び導電性炭素材からなる薄膜が形成されており、後述のピーク強度比:I(50)/I(0)≧3の関係を満たしていることを特徴とする。
このように正極の表面にバインダー及び導電性炭素材からなる薄膜が形成されているため、電池温度の上昇によりセパレータが溶融したり収縮するなどしても正負電極が直接接触することがなく、内部ショートの発生を防止することができる。
【0012】
上記目的を達成するための本発明Bは、正極表面上に酸素を含有する前記薄膜を形成させ、XPSによって測定される酸素の1s内殻準位スペクトルにおいて、530eV〜535eV領域のピーク強度極大値が、528eV〜530eV領域における酸素の1s内殻準位のピーク強度極大値よりも大きくすることによって、優れた充放電特性およびサイクル寿命を有し、保存中に発生するガスを低減させた非水電解質二次電池を提供する。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1) 正極、負極及び非水溶媒を含む非水電解質を具備し、正極がリチウムと遷移金属Mを含む複合酸化物からなる非水電解質二次電池であって、正極の表面にバインダー及び導電性炭素材からなる薄膜が形成されており、XPSによって前記薄膜の表面を測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(0)と、前記薄膜の表面の粒子をアルゴンイオン照射によりエッチングして表面から深さ50nmの内部をXPSによって測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(50)とが、I(50)/I(0)≧3の関係を満たすように前記薄膜が形成されている、非水電解質二次電池、
(2) 前記薄膜の厚さの制御によって、I(50)/I(0)≧3の関係が得られている、(1)に記載の非水電解質二次電池、
(3) 前記正極の構成材料が正極集電体上に塗布された後の乾燥時間によって、前記薄膜の厚さが制御されている、(2)に記載の非水電解質二次電池、
(4) 正極、負極及び非水溶媒を含む電解質を具備し、正極表面に前記薄膜が形成されている非水電解質二次電池の正極薄膜表面から35度以下の光電子の取り出し角度で、XPSによって測定される酸素の1s内殻準位スペクトルにおいて、530eV〜535eV領域のピーク強度極大値が、528eV〜530eV領域における酸素の1s内殻準位のピーク強度極大値よりも大きい、(1)〜(3)のいずれかに記載の非水電解質二次電池、
(5) 薄膜中に酸素を含有する、(4)に記載の非水電解質二次電池、
(6) 電池を組み立てた後、過充電条件で充放電を行うことによって形成されている、(4)に記載の非水電解質二次電池、
(7) 過充電条件で充放電を行う際の充電電圧が4.2V以上である、(6)に記載の非水電解質二次電池、
(8) 電池を組み立てた後、パルス状の電圧を加える、(4)に記載の非水電解質二次電池、
(9) 充電後にさらに電池を30℃以上の環境下で保存する、(6)に記載の非水電解質二次電池、
(10) 非水溶媒がエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含む、(1)又は(4)に記載の非水電解質二次電池、
(11) さらに、非水溶媒が、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルブチレート、ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソブチルプロピオネート、ベンジルアセテート、ビニレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メトキシプロピレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、テトラヒドロフランカーボネート、ジフェニルカーボネートおよびジエチルジカーボネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、(10)に記載の非水電解質二次電池、
(12) 負極が、炭素材料を負極活物質として含む、(1)又は(4)に記載の非水電解質二次電池、
(13) 電解質が電解液である、(1)又は(4)に記載の非水電解質二次電池、
(14) 電解質がゲル状電解質又は固体電解質である、(1)又は(4)に記載の非水電解質二次電池、
(15) 負極が炭素材料を負極活物質として含み、正極がLiCoO2及び/又はCoの一部を他の元素で置換したリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として含む、(1)又は(4)に記載の非水電解質二次電池、
(16) 負極が炭素材料を負極活物質として含み、正極がリチウム複合酸化物であるLiMn2O4、LiNiO2、または、そのMn若しくはNiの一部を他の元素で置換したリチウム複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を正極活物質として含む、(1)又は(4)に記載の非水電解質二次電池、
(17) 負極が炭素材料を負極活物質として含み、正極がLiFeO2を正極活物質として含む、(1)又は(4)に記載の非水電解質二次電池、
(18) (イ)負極、(ロ)正極及び(ハ)電解質塩が非水溶媒に溶解されてなる非水電解質を電池収容体内に収容して電池を組み立てた後、パルス状の電圧を加える、非水電解質二次電池、
(19) (A)正極、負極、及び非水溶媒を含む非水電解質を具備し、正極がリチウムと遷移金属Mを含む複合酸化物からなる非水電解質二次電池であって、正極の表面にバインダー及び導電性炭素材からなる薄膜が形成されており、XPSによって薄膜の表面を測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(0)と、薄膜の表面の粒子をアルゴンイオン照射によりエッチングして表面から深さ50nmの内部をXPSによって測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(50)とが、I(50)/I(0)≧3の関係を満たしている、非水電解質二次電池、又は、(B)(A)において正極表面に薄膜が形成されている非水電解質二次電池であって、光電子の取り出し角度が試料面からの角度で35度以下のXPSによって測定される酸素の1s内殻準位スペクトルにおいて、530eV〜535eV領域のピーク強度極大値が、528eV〜530eV領域のピーク強度極大値よりも大きい、(1)〜(18)のいずれかに記載の非水電解質二次電池を搭載した電気機器、
に関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明Aを説明する。
本発明における非水電解質二次電池は、正極活物質、導電性炭素材およびバインダーを正極集電体の表面に塗布した正極と、結着剤などとともに調整した負極活物質を負極集電体の表面に塗布した負極とを、セパレータを介して巻回した状態で筒型の金属外装の電池缶内に収容し、これに非水電解質を含浸させた構成を特徴とする。
【0015】
本発明における正極活物質は、特に限定されず、目的とする電池の種類等に応じて、従来公知のコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4、LiMnO2)、鉄酸リチウム(LiFeO2)やそれらの遷移金属(Co、Ni、Mn、Fe)の一部を他の遷移金属、錫(Sn)、アルミニウム(Al)等で置換したもの、酸化バナジウム(V2O5)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化モリブデン(MoO2、MoO3)等の遷移金属酸化物や硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2、MoS3)、硫化鉄(FeS2)などの遷移金属硫化物等から選択される。
【0016】
本発明における導電性炭素材は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられる導電性炭素材は、特に炭素粉末が好ましい。本発明におけるバインダーは、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられるバインダーは、特にPVdF(ポリフッ化ビニリデン)が好ましい。
【0017】
本発明における正極集電体は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられる正極集電体は、特にアルミニウム箔などの金属箔が好ましい。本発明における負極集電体は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられる負極集電体は、特に銅箔などの金属箔が好ましい。
【0018】
本発明における負極活物質は、特に限定されず、目的とする電池の種類等に応じて、従来公知のリチウムイオンやナトリウムイオンを用い、その負極ホスト材として、非晶質炭素材、2000℃以上の温度で焼成した人造黒鉛、天然黒鉛などの炭素材料やアルカリ金属と合金化するアルミニウム(Al)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、シリコン(Si)などの金属やアルカリ金属格子間挿入型の立方晶系の金属間化合物(AlSb、Mg2Si、NiSi2)やリチウム窒素化合物(Li(3-X)MXN(M:遷移金属))等から選択され得る。
【0019】
本発明におけるセパレータは、特に限定されない。適宜、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられるセパレータとしては、特にポリオレフィン、ポリエチレン及びポリプロピレン樹脂製の多孔膜が好ましい。本発明における非水電解質は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、上記非水電解質は、どのような形状を有していても良く、例えば、液状である電解液、ゲル状電解質及び固体電解質などの電解質を挙げることができる。
【0020】
上記電解液は、電解質塩および非水溶媒を含むことができる。
上記電解質塩として、LiPF6 、LiBF4 、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2 、LiN(C2F5SO2)2等のうち少なくとも1つの化合物を使用することが望ましい。
上記非水溶媒は、特に限定されず、非水溶媒として、従来公知のものを用いることができ、例えばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)に代表される環状炭酸エステルや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)に代表される鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)に代表される環状カルボン酸エステル、ジメトキシメタン(DMM)や1,3−ジメトキシプロパン(DMP)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン(THF)あるいは1,3−ジオキソラン(DOL)等の環状エーテルなどの従来から電解液に使用されている種々の非水溶媒を挙げることができる。
【0021】
また、上記ゲル状電解質や上記固体電解質は、電解質塩、非水溶媒、高分子マトリックスを含むことができる。非水溶媒や電解質塩としては、上記電解液である非水電解質と同様の非水溶媒、電解質塩を使用することができる。高分子マトリックスは、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメタクリルニトリル等を含むことができ、使用形態(ゲル状、固体状等)等に応じてこれらから適宜選択することもできる。
【0022】
本発明Aの好ましい実施例となる非水電解質二次電池の作製方法について説明する。好ましくは、正極は、正極活物質となるLiCoO2と、導電材としての炭素粉末と、バインダーとしてのPVdF(ポリフッ化ビニリデン)とをそれぞれ92:5:3の重量比で混合し、これに溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を加えてペースト状に混練したものを、正極集電体となるアルミニウム箔の両面に塗布・乾燥して作製する。
【0023】
バインダーおよび導電性炭素材からなる薄膜の形成は、塗布乾燥時の作製条件を適切に設定することによって可能となる。塗布後の乾燥を速くすることによって、正極表面におけるバインダーおよび導電性炭素材からなる薄膜の形成が好ましい。本発明の効果を得るためには、正極表面においてバインダーおよび導電性炭素材による炭素濃度が30重量%以上であることが望ましい。ここで述べている炭素濃度は、X線光電子分光分析(XPS)を用いて求められるものである。
【0024】
前記バインダーおよび導電性炭素材からなる薄膜の厚さは、特に限定されるものではないが、XPSによって、正極表面を測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(0)と、正極薄膜表面の粒子をアルゴンイオン照射によりエッチングして表面から深さ50nmの内部をXPSによって測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(50)とが、I(0)<I(50)の関係を満たすものが挙げられる。さらに詳しくは、I(50)として、例えば加速電圧1kV、角度(光電子の取り出し角度であって、試料面から測定した角度)45度、分析器の取込立体角±20度、エッチングレート約2.5nm/min(SiO2換算)の条件でアルゴンイオンによるエッチングを20分間行い、表層部を50nm除去した後の内部粒子を測定したときの遷移金属Mの2pスペクトルに基づくピーク強度を用いればよい。
【0025】
前記XPSにおいて、例えばMがコバルトのときは810〜770eV、鉄のときは740〜700eV、マンガンのときは662〜631eV、銅のときは975〜925eV、ニッケルのときは888〜848eVの範囲内にそれぞれ現れる2pスペクトルのピーク強度を比較すればよい。
表層部の遷移金属含有量が内部よりも少なければ本発明の効果は得られるが、なかでもMが元素番号21のScから元素番号30のZnまでの元素のものであって、粒子の最表面を測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(0)と、粒子をアルゴンイオン照射によりエッチングして表面から深さ50nmの内部を測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(50)とが、I(50)/I(0)≧3の関係を満たすことが好ましい。
【0026】
一方、負極は、好ましくは負極活物質となる人造黒鉛と、バインダーとしてのPVdFとをそれぞれ91:9の重量比で混合してNMPに分散させたものを、負極集電体となる銅箔の両面に塗布・乾燥して作製する。
つぎに、正極、負極を厚さ25μmのポリオレフィンセパレータを介して円柱状に巻回し、これを筒型の金属外装に挿入して電池を完成させる。その後、外装缶内に非水電解質を注入して電極に非水電解質を含浸させる。ここで前記非水電解質としては、好ましくはエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを重量比1:1:1で混合し、これにLiPF6を1.0mol/Lになるように混合したものを用いる。
なお、遷移金属Mとして、例えばNi,Co,Mn,およびFe等が挙げられる。また、バインダーとしてゴム系バインダー、SBRバインダー、フッ素樹脂バインダー(上記のPVdF等)などが挙げられる。
要するに本発明の二次電池は、具体的には実施例に従って製造され得るが、要するに上記の原料を使用して上記製造方法によって製造し、上記分析方法による分析値を満足するものを選択することによって容易に製造され得る。
【0027】
次に発明Bについて説明する。
本発明者は、正極表面構造と電池特性、ガス発生量との関係を鋭意検討した結果、電池特性とガス発生量の両面で良好な電池を得るためには、正極表面に酸素を含有する薄膜を存在させる必要があることが分った。さらに詳しくは、XPSによって薄膜表面に検出される酸素の1s内殻準位のXPSスペクトルにおいて、530eV〜535eV領域におけるピーク強度極大値が、528eV〜530eV領域におけるピーク強度極大値よりも大きいことが、良好な電池特性を得るために必要である。
【0028】
本発明における非水電解質二次電池は、正極活物質、導電性炭素材およびバインダーを正極集電体の表面に塗布した正極と、結着剤などとともに調整した負極活物質を負極集電体の表面に塗布した負極とを、セパレータを介して巻回した状態で筒型の金属外装の電池缶内に収容し、これに非水電解質を含浸させた構成を特徴とする。
【0029】
本発明における正極活物質は、特に限定されず、目的とする電池の種類等に応じて、従来公知のコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4、LiMnO2)、鉄酸リチウム(LiFeO2)やそれらの遷移金属(Co、Ni、Mn、Fe)の一部を他の遷移金属、錫(Sn)、アルミニウム(Al)等で置換したもの、リチウムコバルト複合酸化物等のリチウム複合酸化物、酸化バナジウム(V2O5)、二酸化マンガン(MnO2)、酸化モリブデン(MoO2、MoO3)等の遷移金属酸化物や硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2、MoS3)、硫化鉄(FeS2)などの遷移金属硫化物等から選択される。
【0030】
本発明における導電性炭素材は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられる導電性炭素材は、特に炭素粉末が好ましい。本発明におけるバインダーは、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられるバインダーは、特にPVdF(ポリフッ化ビニリデン)が好ましい。
【0031】
本発明における正極集電体は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられる正極集電体は、特にアルミニウム箔などの金属箔が好ましい。本発明における負極集電体は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられる負極集電体は、特に銅箔などの金属箔が好ましい。
【0032】
本発明における負極活物質は、特に限定されず、目的とする電池の種類等に応じて、従来公知のリチウムイオンやナトリウムイオンを用い、その負極ホスト材として、非晶質炭素材、2000℃以上の温度で焼成した人造黒鉛、天然黒鉛などの炭素材料やアルカリ金属と合金化するアルミニウム(Al)、鉛(Pb)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、シリコン(Si)などの金属やアルカリ金属格子間挿入型の立方晶系の金属間化合物(AlSb、Mg2Si、NiSi2)やリチウム窒素化合物(Li(3-X)MXN(M:遷移金属))等から選択され得る。
【0033】
本発明におけるセパレータは、特に限定されない。適宜、従来公知のものを用いることができる。なお、本発明において用いられるセパレータとしては、特にポリオレフィン、ポリエチレン及びポリプロピレン樹脂製の多孔膜が好ましい。本発明における非水電解質は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。また、上記非水電解質は、どのような形状を有していても良く、例えば、液状である電解液、ゲル状電解質及び固体電解質などの電解質を挙げることができる。
【0034】
上記電解液は、電解質塩および非水溶媒を含むことができる。
上記電解質塩として、LiPF6 、LiBF4 、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2 、LiN(C2F5SO2)2等のうち少なくとも1つの化合物を使用することが望ましい。
上記非水溶媒は、特に限定されず、非水溶媒として、従来公知のものを用いることができ、例えばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)に代表される環状炭酸エステルや、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)に代表される鎖状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)に代表される環状カルボン酸エステル、ジメトキシメタン(DMM)や1,3−ジメトキシプロパン(DMP)などの鎖状エーテル、テトラヒドロフラン(THF)あるいは1,3−ジオキソラン(DOL)等の環状エーテルなどの従来から電解液に使用されている種々の非水溶媒を挙げることができる。
【0035】
また、上記ゲル状電解質や上記固体電解質は、電解質塩、非水溶媒、高分子マトリックスを含むことができる。非水溶媒や電解質塩としては、上記電解液である非水電解質と同様の非水溶媒、電解質塩を使用することができる。高分子マトリックスは、ポリビニリデンフルオライド、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメタクリルニトリル等を含むことができ、使用形態(ゲル状、固体状等)等に応じてこれらから適宜選択することもできる。
【0036】
本発明Bにおける薄膜形成は、例えば発明Aで説明した方法に従って、電池を組み立てた後に4.2V以上の過充電条件で充放電を行うことによって行われる。薄膜形成は溶媒の一部が酸化分解することに起因していると考えられるが、詳細については定かではない。薄膜形成には、主溶媒である、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートの他に、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルブチレート、ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソブチルプロピオネート、ベンジルアセテート、ビニレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メトキシプロピレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、テトラヒドロフランカーボネート、ジフェニルカーボネートおよびジエチルジカーボネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含んでいることが望ましい。
【0037】
本発明の製造方法では、電池を組み立てた後、電池に過充電条件で充放電を行うか、あるいはパルス状の電圧を印加する。
過充電条件で充放電を行う場合、電池電圧は4.2V以上に設定するのが望ましい。ただし、この場合、あまり電池電圧を上げると電池内でLiが析出する可能性があるので、4.2V以上4.8V未満の電圧に設定するのが好ましい。
これに対して、パルス状の電圧を加える手法では、4.8V程度にまで電池電圧を上げてもLiの析出は見られないので、比較的高い電圧に設定できる。また、パルス状の電圧を印加する場合、その周波数は10〜100kHzとするのが望ましい。
【0038】
また、薄膜形成を加速する目的で、高温下で電池を保存することも効果的である。この場合、温度は30℃以上に設定することが望ましい。上限は通常90℃以下、好ましくは60℃以下である。
XPSによって、酸素の1s内殻準位スペクトルにおける530eV以上の領域のピーク強度と530eV以下のピーク強度を比較することが本発明のポイントであるが、その手順は以下の通りである。
正極試料は電池を解体後に、ジメチルカーボネートで洗浄を行う。これは表面に存在する、揮発性の低い溶媒成分と電解質塩を除去するためである。サンプリングは可能な限り、不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
スペクトルのエネルギー軸の補正にはC1sピークを用いる。通常正極は導電性が高く、X線照射による帯電はほとんど生じない。サンプルのC1sスペクトルを測定し、波形解析を行い、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置を284.5eVとする。波形解析には市販のソフトウエアを用いればよい。
【0039】
次にO1sピークの解析を行う。O1sピークは、528eV〜530eV領域の最低束縛エネルギー側に現われる正極活物質に由来するピークと、530eV〜535eV領域に存在する、主に有機化合物に由来すると考えられる2つのピークの、全部で3つのピークに分離される。ただし、ここではピーク高さを比較すればよいので、ピーク分離を正確に行う必要はない。バックグラウンドの引き方は、直線法でもShirley(シャーリー)法でもどちらでも良いが、Shirley法の方が望ましい。バックグラウンドを差し引いた後、528eV〜530eV領域と530eV〜535eV領域のピーク極大値を求め、比較すれば良い。ただし重要なポイントとして、XPSを測定する際の光電子取り出し角度は重要なパラメータである。この角度を変える事によって、試料表面から深い側に存在する正極活物質に由来するピーク強度と、表面側に存在する有機化合物のピーク強度の相対強度比が変化する。本発明においては、使用した市販XPS装置(Surface Science Instruments社製のS−Probe)の光電子取り出し角が試料面からの角度で35度、分析器の取込立体角±15度であったので、35度以下の試料面からの角度で測定した場合に、有機化合物側のピーク強度が大きいという条件を満たせば、効果を発揮できる一定以上の薄膜が存在することが保証される。
本発明の二次電池は、具体的には実施例に従って製造され得るが、要するに上記の原料を使用して上記製造方法によって製造し、上記分析方法による分析値を満足するものを選択することによって容易に製造され得る。
【0040】
【実施例A】
本実施例は発明Aについての実施例である。正極は、正極活物質となるLiCoO2と、導電材としての炭素粉末と、バインダーとしてのPVdF(ポリフッ化ビニリデン)とをそれぞれ92:5:3の重量比で混合し、これに溶媒としてNMP(N−メチル−2−ピロリドン)を加えてペースト状に混練したものを、正極集電体となるアルミニウム箔の両面に塗布・乾燥して作製した。
【0041】
バインダーおよび導電性炭素材からなる薄膜の形成は、塗布乾燥時の作製条件を適切に設定することによって可能となる。塗布後の乾燥を速くすることによって、正極表面におけるバインダーおよび導電性炭素材からなる薄膜の形成が可能となる。本発明の効果を得るためには、正極表面においてバインダーおよび導電性炭素材による炭素濃度が30重量%以上であることが望ましい。ここで述べている炭素濃度は、従来十分に確立されたX線光電子分光分析(XPS)を用いて求められるものである。
【0042】
一方、負極は、負極活物質となる人造黒鉛と、バインダーとしてのPVdFとをそれぞれ91:9の重量比で混合してNMPに分散させたものを、負極集電体となる銅箔の両面に塗布・乾燥して作製した。
つぎに、正極、負極を厚さ25μmのポリオレフィンセパレータを介して円柱状に巻回し、これを筒型の金属外装に挿入して電池を完成させた。その後、外装缶内に非水電解質を注入して電極に非水電解質を含浸させた。ここで前記非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを重量比1:1:1で混合し、これにLiPF6を1.0mol/Lになるように混合したものを用いた。
以上の構成の非水電解質二次電池において前記バインダーおよび導電性炭素材からなる薄膜の厚さのみを変えた、例A1,A2,A3,A4の4種類の非水電解質二次電池を作製した。例A1〜A4電池の膜の厚さは120℃下での減圧乾燥時間をそれぞれ1時間、5時間、10時間、24時間と変化させることで調整した。
【0043】
次に、電池過充電試験として、各電池について3.0A、18Vの定電流定電圧充電を行い、電池表面温度が120℃になったところで通電を止め、電池の安全性を比較した。安全性の評価は、破裂および発火が無かった場合を「合格」とし、破裂もしくは発火が有った場合は「不合格」とした。試験の結果を表1に示す。尚、試験は各電池につき3回ずつ行った。
【0044】
【表1】
この表1から、例A1および例A2は、過充電を行った場合でも破裂、発火することがなく、内部ショートの発生が防止されることは明らかである。また、例A1,A2と例A3の比較から、I(50)/I(0)≧3とした場合には、特に特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができることがわかる。
【0045】
例A1の正極表面について、加速電圧1kV、角度(光電子の取り出し角度であって、試料面から測定した角度)45度、分析器の取込立体角±20度、エッチングレート約2.5nm/min(SiO2換算)の条件でアルゴンイオンによるエッチングを用いた時のXPS深さ方向分析結果であり、縦軸をピーク強度、横軸をスパッタ時間で示した図を図1として示す。なお、この場合、スパッタ時間×エッチングレート=エッチングによる表面からの深さである。
【0046】
次に、発明Bについての例を説明する。
【0047】
例B1
先ず、正極、負極を作製した。
正極は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)92重量%,粉状ポリフッ化ビニリデン3重量%,粉状黒鉛5重量%をNメチルピロリドン(NMP)を溶媒として分散させた後、集電体のアルミニウム箔に塗布し、100℃にて24時間減圧乾燥して作製した。塗布は両面に行った。更に適当に加圧したロールプレスにより圧縮した。これを50mm×300mmに切り出して使用した。
負極は人造黒鉛91重量%、粉状ポリフッ化ビニリデン9重量%を用い、NMPに分散させた後、銅箔上に塗布し、120℃にて24時間減圧乾燥して作製した。更に適当に加圧したロールプレスにより圧縮し、52mm×320mmに切り出して使用した。
【0048】
負極用電極端子は厚さ50μmの銅箔またはニッケル箔を裁断して作製し、負極集電体に溶接した。正極側はアルミニウム箔を用いて負極と同様に作製した。電解質には、EC,PCを重量比1:1で混合し、これにLiPF6を1.0mol/Lになるように混合したものを用いた。
正極,負極を厚さ25μmの多孔質ポリオレフィンセパレータを介して円柱状に巻回し、これを筒型の金属外装に挿入して電池を完成させた。
【0049】
電池は、定電圧定電流充電(4.20V、200mA)し、室温で1日保存した。その後、100mAで3Vまで定電流放電し、ガスの発生量を調べた。また、同条件で作製した電池について0.2Cおよび1.0Cのレート特性を調べた。なお、1.0Cとは電池の定格容量を1時間で放電しきる電流値のことであり、0.2Cとは電池の定格容量を5時間で放電しきる電流値のことである。
また、3Vまで放電した電池をArグローブボックス中で解体し、DMCで洗浄後、市販のXPS装置に大気に曝さずに導入し、酸素の1s内殻準位のXPSスペクトルを測定し、530eV〜535eV領域のピーク強度極大値と528eV〜530eV領域のピーク強度極大値の大きさを比較して図2に示した。
【0050】
例B2
充電電圧を4.30Vとした以外は例B1と同様であった。
例B3
充電電圧を4.40Vとした以外は例B1と同様であった。
例B4
4.80Vの電圧を100kHzでパルス状に印加した以外は例B1と同様であった。
【0051】
例B5
電解質には、EC,PC,EMCを重量比1:1:1で混合し、これにLiPF6を1.0mol/Lになるように混合したものを用いた以外は例B1と同様であった。
例B6
充電電圧を4.30Vとした以外は例B5と同様であった。
例B7
充電電圧を4.40Vとした以外は例B5と同様であった。
例B8
4.80Vの電圧を100kHzでパルス状に印加した以外は例B5と同様であった。
【0052】
例B9
保存温度を35℃とした以外は例B5と同様であった。
例B10
保存温度を35℃とした以外は例B6と同様であった。
例B11
保存温度を35℃とした以外は例B7と同様であった。
例B12
保存温度を35℃とした以外は例B8と同様であった。
【0053】
例B1〜B12の結果を表2に示す。
【表2】
表2から明らかなように、530eV〜535eV領域のピーク強度極大値と528eV〜530eV領域のピーク強度極大値の大きさを比較した時、530eV〜535eV領域のピーク強度が大きくなるに従って、保存後のガス発生比率が小さくなることがわかった。また、これらの場合でもレート特性が大きく悪化するようなことはない。
【0054】
【発明の効果】
以上の結果より、本発明Aの非水電解質二次電池は、正極の表面にバインダーおよび導電性炭素材からなる薄膜を特定のXPSピーク強度比で形成するという簡単な構成により内部ショートの発生を容易に防止することができ、過充電や電池異常時における温度上昇に起因する電池の内部ショートの発生を防止することができる。
以上の説明からも明らかなように、本発明Bによれば、電池特性を損なうことなく、電池の保存中に発生するガスを低減させることができる。
したがって、本発明は、電池の性能向上、ひいては携帯型電子機器に係わる産業の発展に大いに貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 例A1の正極表面について、加速電圧1kV、角度(光電子の取り出し角度であって、試料面から測定した角度)45度、分析器の取込立体角±20度、エッチングレート約2.5nm/min(SiO2換算)の条件でアルゴンイオンによるエッチングを用いた時のXPS深さ方向分析結果であり、縦軸をピーク強度、横軸をスパッタ時間で示した図である。
【図2】 例B1についての酸素の1s内殻準位のXPSスペクトルの例であり、530eV〜535eV領域のピーク強度極大値と528eV〜530eV領域のピーク強度極大値の大きさの比較を行った例である。
Claims (18)
- 正極、負極、及び非水溶媒を含む非水電解質を具備し、前記正極がリチウムと遷移金属Mを含む複合酸化物からなる非水電解質二次電池であって、前記正極の表面にバインダー及び導電性炭素材からなる薄膜が形成されており、XPSによって前記薄膜の表面を測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(0)と、前記薄膜の表面の粒子をアルゴンイオン照射によりエッチングして表面から深さ50nmの内部をXPSによって測定したときのMの2pスペクトルに基づくピーク強度I(50)とが、I(50)/I(0)≧3の関係を満たしている、非水電解質二次電池。
- 前記薄膜の厚さの制御によって、I(50)/I(0)≧3の関係が得られている、請求項1に記載の非水電解質二次電池。
- 前記正極の構成材料が正極集電体上に塗布された後の乾燥時間によって、前記薄膜の厚さが制御されている、請求項2に記載の非水電解質二次電池。
- 前記薄膜の表面から35度以下の光電子の取り出し角度で、XPSによって測定される酸素の1s内殻準位スペクトルにおいて、530eV〜535eV領域のピーク強度極大値が、528eV〜530eV領域における酸素の1s内殻準位のピーク強度極大値よりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
- 前記薄膜中に酸素を含有する、請求項4に記載の非水電解質二次電池。
- 電池の組み立て後に過充電条件で充放電が行われている、請求項4に記載の非水電解質二次電池。
- 過充電条件での前記充放電に際する充電電圧が4.2V以上である、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
- 電池の組み立て後にパルス状の電圧が加えられている、請求項4に記載の非水電解質二次電池。
- 充電後にさらに電池が30℃以上の環境下で保存される、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
- 前記非水溶媒がエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートを含む、請求項1又は4に記載の非水電解質二次電池。
- さらに、前記非水溶媒が、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルブチレート、ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソブチルプロピオネート、ベンジルアセテート、ビニレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メトキシプロピレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、テトラヒドロフランカーボネート、ジフェニルカーボネートおよびジエチルジカーボネートよりなる群から選ばれた少なくとも1種を含む、請求項10に記載の非水電解質二次電池。
- 前記負極が、炭素材料を負極活物質として含む、請求項1又は4に記載の非水電解質二次電池。
- 前記電解質が電解液である、請求項1又は4に記載の非水電解質二次電池。
- 前記電解質がゲル状電解質又は固体電解質である、請求項1又は4に記載の非水電解質二次電池。
- 前記負極が炭素材料を負極活物質として含み、前記正極がLiCoO2及び/又はCoの一部を他の元素で置換したリチウムコバルト複合酸化物を正極活物質として含む、請求項1又は4に記載の非水電解質二次電池。
- 前記負極が炭素材料を負極活物質として含み、前記正極がリチウム複合酸化物であるLiMn2O4、LiNiO2、または、そのMn若しくはNiの一部を他の元素で置換したリチウム複合酸化物から選ばれる少なくとも1種を正極活物質として含む、請求項1又は4に記載の非水電解質二次電池。
- 前記負極が炭素材料を負極活物質として含み、前記正極がLiFeO2を正極活物質として含む、請求項1又は4に記載の非水電解質二次電池。
- 請求項1〜17のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池を搭載した電気機器。
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