JP4395048B2 - リソグラフィ・シミュレーションの積分範囲の拡張 - Google Patents

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Description

本発明は、一般に光学マイクロリソグラフィの分野に関し、詳細には、セクタに基づく光学的近接効果補正(OPC;optical proximity correction)エンジンに三角形コンボリューション(convolution;重畳積分)を用いることに関する。本発明は、より詳細には、中距離(intermediate-range)、遠距離、または無限に延びるカーネルのコンボリューションを本質的に、そのカーネルを空間的に切り取ることなく、また過大な関心領域(ROI;Region of Interest)サイズを必要とせずに正規化する非有界(unbounded)セクタに三角形コンボリューションを用いることに関する。
半導体製造における光学マイクロリソグラフィ・プロセスは、フォトリソグラフィ・プロセスとしても知られており、半導体ウエハ上に所望の回路パターンをできるだけ良好に転写する(duplicate)ことからなる。一般に、この所望の回路パターンは、通常フォトマスクと呼ぶテンプレート上の不透明および透明な領域として表される。光学マイクロリソグラフィでは、露光システムにより光学的結像(opticalimaging)の手段によって、フォトレジストを被覆したウエハ上にフォトマスク・テンプレート上のパターンを投影する。
空間像(aerial image)シミュレータは、投影光学系によって生成される画像を計算するものであり、集積回路製造に用いる光学リソグラフィの最新技術を解析し改善する有用なツールであることが実証されている。こうしたシミュレーションは、PSM(phaseshifting mask;位相シフト・マスク)設計、OPC(光学的近接効果補正)など最新のマスク設計、ならびに投影光学系の設計に応用されている。空間像のモデリングは、半導体製造を構成する不可欠な要素である。現在のリソグラフィ・ツールは部分コヒーレント照明を用いるので、このようなモデリングでは、基本的なパターンを除くあらゆるパターンに対して大量の計算が行われる。マスクによって生成される空間像、すなわち投影光学系の結像面における光強度は、マスク設計が、現像されるフォトレジスト構造にどれだけ良好に転写されるかを左右するので、マイクロリソグラフィにおいて極めて重要な量である。
マスク・ポリゴンが従来方式で分解される非有界セクタにわたって画像カーネルを解析的に表現しようと試みると、部分的には発散問題(divergence issue)に帰すことができる光学的近接効果補正の計算において数学的な問題が生じる。インコヒーレントなフレア(flare)を補償する(accountfor)試みも、こうした解析的な制限を受ける。
光学モデルまたはレジスト・モデルの較正計算を行うときは精度が極めて重要である。補正方法をよりよく理解し評価するには、ウエハ形状のシミュレーション精度が必要である。解析的なプロセスによって、「意図した」形状に対するウエハ形状の忠実度(fidelity)を高くすると、最終的にマスク形状をより良好に補正することができる。このような精度が実現されると、その直接の結果としてチップ製造時の歩留まりが改善する。
本発明では、セクタに基づく光学的近接効果補正エンジン(engine)に三角形コンボリューションを使用する。数学モデルに三角形を用いて非有界コーナの難点を取り除くと、中距離および遠距離の影響にも適応する積分が可能になる。
従来技術では、一般に、光学的近接効果補正エンジンにおいて下記の数学的な処理が用いられる。これらの手法はすべてどのような形にせよ、双1次変換(bilinear transform)を効率よく計算するアルゴリズムであるSOCS(Sum of Coherent Source;コヒーレント源の和)法に関係する。
SOCS(コヒーレント源の和)法
画像強度は、以下に示すホプキンス(Hopkin's)の部分コヒーレントの式(双1次変換)によって与えられる。
Figure 0004395048
ただし、
hはレンズのPSF(点像分布関数)、
jはコヒーレンス、mはマスク、
は空間像である。
SOSC技法を用いることによって、ホプキンスの部分コヒーレントの式の最適なn次のコヒーレント近似を次のように表すことができる。
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
は、以下のマーサー(Mercer)の展開式から導出される固有値(eigenvalue)および固有ベクトル(eigenvector)を表す。
Figure 0004395048
この式は、線形コンボリューションなどコヒーレント結像の有限和によって部分コヒーレント結像問題を最適に近似できることを示唆している。
瞳位相誤差(pupil phase error)を伴うSOCS
上記計算では理想的な結像システムを想定している。しかし、瞳位相誤差およびアポディゼーション(apodization)などのレンズの収差が存在するときには、以下に示す瞳関数(pupil function)を含めなければならない。
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
は瞳透過関数であり、
Figure 0004395048
は、収差情報およびフレア情報をともに含む瞳位相関数である。
波面関数において生じ得る比較的高い空間周波数のために、
Figure 0004395048
は、比較的大きい空間的な広がりをもつことになる。この場合、必要とされる固有値および固有ベクトルの数は理想的な系よりも多くなる。したがって、カーネルがサポートする区域は、λ/NAよりも離れたところからの寄与を考慮に入れるように拡張される。ただし、基本的な数学的構造およびアルゴリズムは同じままである。
フレアの物理モデル
一般に、フレアは、波面の高周波位相「リップル」によって生成される画像成分として記述される。すなわち、フレアは、光がレンズの位相不規則性のためにかなりの角度で前方散乱するときに生じる。このような不規則性は、以下の3つの理由からしばしば無視される。第1に、時には波面データが低分解能干渉計で取得され、さらに、それよりも低分解能のアルゴリズムを用いて再構成されることがある。第2に、波面のパワー・スペクトル(power spectrum)が既知であるか、あるいは推定されるときでさえ、短いROI距離のところで打ち切られる画像積分に対する高周波波面成分の影響を含めることは不可能であり、そのため散乱光の大部分が無視される。最後に、これらの項を理論(calculated)画像に含めることは簡単なものではない。本発明は、これらの問題に対処するものである。
米国特許出願第10/694465号 米国特許出願第10/694473号 米国特許出願第10/694339号 米国特許出願第10/694299号
従来技術の問題および欠陥を念頭におくと、本発明の目的は、マスク・ポリゴンからの中距離および遠距離の画像の寄与を計算する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、セクタに基づくOPCエンジンに三角形コンボリューション技法を適用することである。
本発明の別の目的は、インコヒーレントなフレアを計算する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、中距離計算の数値積分に必要とされる時間を短縮することである。
本発明の別の目的は、べき法則(power law)によるインコヒーレント・カーネルに対して三角形コンボリューションを行う解析的な解法を提供することである。
本発明の別の目的は、カーネルではなくマスクを切り取ることによって遠距離および中距離の計算を分離するプログラム可能な方法を提示することである。
本発明の別の目的は、波面の高周波位相「リップル」によって生成される画像成分を補償する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、レンズの位相不規則性の影響を計算する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、短いROI距離のところで打ち切られる画像積分に対する高周波波面成分の影響を含める方法を提供することである。
本発明の他の目的および利点は、部分的には明白であり、部分的には本明細書から明らかになろう。
当業者には明らかな上記その他の目的は、モデルに基づく光学的近接効果補正を実施する方法を対象とする本発明の第1の態様において達成される。この方法は、規定のコーナを有するマスク・ポリゴンの各セクタごとに有限積分を計算して、前記マスク・ポリゴンの頂点からのセクタ寄与を求めるステップと、前記セクタ内の有限形状に対して積分を行うステップと、前記マスク・ポリゴンの前記セクタ寄与を合計するステップと、前記有限積分計算からの相互作用の影響を計算するステップとを含む。この有限形状は、少なくとも2つの三角形を含み得る。前記ポリゴンの前記各コーナが積分される。この方法は、非有界セクタ(unbound sector)に三角形コンボリューションを用いるか、あるいはべき法則によるインコヒーレント・カーネル(incoherentkernel)に三角形コンボリューションを用いるステップを含む。この三角形コンボリューションは、数値積分を容易にするために不完全ベータ関数を含む解析的な式に変形(reduce)される。最小半径Rminは、前記コンボリューションがROI内部からのいかなる寄与も二重に計算しないように決定される。
この方法は、前記寄与の正負の符号のルールを設けるステップをさらに含む。このステップは、セクタ内の第1辺(edge)側の2つの区画(partition)および前記区画の反対側の区画については第1三角形の前記符号を+1に割り当て、それ以外では前記第1三角形の前記符号を−1に割り当てるステップと、前記第1三角形と第2三角形が重なり合わない場合には、第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号に割り当て、そうでない場合には、前記第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号の反対の符号に割り当てるステップとを含む。前記半径Rminを有するフレア・カーネル内で解析的にホール(hole)を画定し、前記フレアからの寄与のうちRmin内にあるものはどれも部分コヒーレント双1次コンボリューションで処理する。半径Rminはほぼλ/NAに等しい。前記相互作用の影響を計算するステップは、複数のマスク・ポリゴンからなる粗いグリッドにわたって積分するステップを含む。
第2の態様では、本発明は、中距離および遠距離スケールが含まれるようにリソグラフィ・シミュレーションの積分を拡張する方法を対象とする。前記方法は、少なくとも2つのマスク・ポリゴンを、コーナおよび辺を有する三角形からなるセクタに分割し分解する(decompose)ステップと、複数の前記少なくとも2つのマスク・ポリゴンのコーナからの距離スケール計算を実施するステップと、ポリゴン・ピンニング(pinning)・アルゴリズムを実施するステップと、前記複数のマスク・ポリゴンの三角形コンボリューションを実施するステップと、前記セクタの寄与を合成して、前記複数の前記マスク・ポリゴンのコンボリューションを得るステップと、前記複数の前記マスク・ポリゴンを合成するステップと、前記合成されたセクタ寄与から、光学的近接効果補正用の空間像を計算するステップとを含む。距離スケール計算を実施するステップは、前記マスク・ポリゴンの半無限(semi-infinite)コーナからの有限積分を実施するステップを含む。この方法は、画像サンプリング・ポイントにおいて前記ポリゴンのうち前記それぞれのものからの寄与を計算するステップと、第1および第2位置ベクトルを用いて、面積(area)コンボリューションを、周辺構造体(featureperimeter)の周りで位置ベクトルに依存する積分に変換するステップと、前記辺に対して得られた不定積分を割り当てて、前記第1位置ベクトルの頂点と第2位置ベクトルの頂点の間で、ある辺からの寄与が各位置ベクトルにおいて求められた不定積分の差になるようにするステップと、前記得られた不定積分を、前記辺の向き、前記位置ベクトルから前記辺までの垂直距離、および前記第1位置ベクトルから前記第2位置ベクトルにより画定された極座標角度の関数としてパラメータ化するステップとをさらに含む。前記寄与の正負の符号のルールも設けられる。このルールは、45°および90°のセクタを含む6つの基本セクタを含めて前記セクタに適合される。前記コンボリューションの値は、前記位置ベクトルの様々な値について第1ルックアップ・テーブルに記憶する。このルールは、セクタ内の第1辺側の2つの区画および前記区画の反対側の区画については第1三角形の前記符号を+1に割り当て、それ以外では前記第1三角形の前記符号を−1に割り当てるステップと、前記第1三角形と第2三角形が重なり合わない場合には、第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号に割り当て、そうでない場合には前記第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号の反対の符号に割り当てるステップとを含む。この方法は、第2ルックアップ・テーブルに前記三角形コンボリューションの前記符号を記憶するステップをさらに含む。前記第2テーブルは、行(row)インデックスおよび列(column)インデックスを有し、前記行インデックスは前記セクタの前記第1辺に割り当てられ、前記列インデックスは第2辺の方向に割り当てられて、前記セクタ・タイプが一義的に指定される。前記行および列のインデックスは、前記第1および第2の辺の方向(direction)に基づいて、考慮中の任意のセクタに対して決定される。前記第2ルックアップ・テーブルに関して、第1の符号マトリックスMat1(edge1,edge2)および第2の符号マトリックスMat2(edge1,edge2)が提供される。前記マトリックスは、前記第1および第2の辺の関数として表現され、それによって、前記第1符号マトリックスMat1(edge1,edge2)により、前記方向ベクトル(directionvector)が存在し得る前記区画のどれが、前記第1三角形に正の符号を与えるかが決まり、前記第2マトリックスMat2(edge1,edge2)により、前記方向ベクトルが存在し得る前記区画のどれが、前記第1三角形と比較して前記第2三角形に同じ符号を与えるかが決まる。各マトリックスの行および列のインデックスは、上、下、右、左、右上、左上、右下、および左下を含む8つの基本区画によって与えられる。この方法は、前記符号に、前記セクタが凸である場合には−1を掛け、前記セクタが凹である場合には+1を掛けるステップをさらに含む。この第1マトリックスは、前記区画からなるサブセットのうち、どのサブセットが正の符号を有し、どのサブセットが負の符号を有するかを示し、それによって、前記区画がマトリックス入力と一致する場合、前記第1三角形コンボリューションの前記符号に正の値が割り当てられる。第2三角形コンボリューションの符号は、前記方向ベクトルが存在した前記第1三角形の区画の前記符号に等しく設定され、そうでない場合には、前記符号は、前記第1三角形コンボリューション符号の反対の符号に設定される。各辺ごとに積分定数が不定積分に加えられ、前記積分定数は前記極座標角度に無関係である。前記積分定数により、分離した頂点からの無限大の寄与を排除することができる。この積分定数は、前記不定積分中にしか存在せず、前記辺の2つの端点(endpoint)における前記不定積分の差を取るときにはゼロになる。複数の辺を有する個々のマスク・ポリゴンからの寄与は、前記辺の各コーナごとに、前記積分定数が前記不定積分から減算されるように、前記マスク・ポリゴンの各辺にわたって加算されることによって表される。個々の非有界コーナから生じる特異点は、各コーナの寄与が、前記三角形コンボリューションの1対の前記三角形からのフレアの和になるように、コーナの寄与を有限のままにする積分定数項を加えることによって解ける。このコーナの寄与は、1つの頂点当たり前記三角形のうちの2つの三角形からの寄与の計算を含む。その結果、前記三角形コンボリューションからの前記寄与をすべての頂点にわたって合計した後で、前記マスク・ポリゴンの正味の寄与が得られる。
第3の態様では、本発明は、モデルに基づく光学的近接効果補正を実施する方法ステップを実施するための、マシンが実行可能な命令からなるプログラムを確実に実施する機械可読プログラム記憶装置を対象とする。前記方法ステップは、規定のコーナを有するマスク・ポリゴンの各セクタごとに有限積分を計算して、前記マスク・ポリゴンの頂点からのセクタ寄与を求めるステップと、前記セクタ内の有限形状に対して積分を行うステップと、前記マスク・ポリゴンの前記セクタ寄与を合計するステップと、前記有限積分計算からの相互作用の影響を計算するステップとを含む。
新規と考えられる本発明の特徴および本発明を特徴づける構成要素は、特許請求の範囲に詳細に述べられている。図は、単に説明を行うためのものであり、原寸に比例していない。ただし、本発明自体は、その編成および動作方法に関して、以下の詳細な説明を添付の図面と併せ読めば最もよく理解されよう。
本発明の好ましい1つ(または複数)の実施形態を説明する際に、本明細書では図1〜図17の図面を参照することになる。これらの図面では、同じ数字は本発明の同じ要素(feature)を指す。
この開示では、マスク・ポリゴンからの遠距離画像の寄与を計算する新しい方法を説明する。この方法は、これらのマスク・ポリゴンが従来方式で分解される非有界セクタの全体にわたって発散する画像カーネルと一緒に用いても機能する。したがって、この方法を用いて、べき法則によってモデル化されるようなインコヒーレントなフレア、すなわちフラクタル(fractal)・パワー・スペクトルのエンベロープを計算することができる。あるいは、積分量は、測定された波面から計算される決定性PSF(pointspread function;点像分布関数)とすることができる。
ただし、この方法は、光学的フレア強度の積分に限定されるものではない。例えば、画像の振幅寄与は、部分コヒーレント結像を左右するホプキンス積分などの双1次積分からの固有カーネルでマスク・ポリゴンをコンボリューションすることによって計算することができる。このカーネルは元来が非光学的なものとすることもでき、本質的に実験的なものである。このカーネルは、レジスト中の様々な転写された構造体間の化学的相互作用を現象的に線形化することを表すことができる。同じ数学的形式で、光学的および非光学的な影響を扱うことができ、そのため、いずれの場合にも本発明を効果的に適用できることを以下に示す。
線形コンボリューションを合計するだけでよいように、あるいは代わりにインコヒーレント・カーネルを組み込むように、レジスト・カーネルを組み込むための改変をSOCS(コヒーレント源の和)法に加えることが提案されている。
レジスト・カーネルを用いるSOCS
レジスト画像は、レジスト・カーネルKで
Figure 0004395048
をコンボリューションすることによって以下のように定義することができる。
Figure 0004395048
上記の式を、SOCS分解として表し得ることを以下に示す。
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
であり、gおよび
Figure 0004395048
は次式から得られる固有値および固有ベクトルである。
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
である。
すなわち、このレジスト・カーネルによって、線形コンボリューションを合計するだけでよいSOCS法と同様に最終的な画像強度を処理することができる。
SOCSへのインコヒーレント・カーネルの組込み
Figure 0004395048
を定義し、
Figure 0004395048
の近似を用いることによって、ホプキンスの積分は以下のようになる。
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
は、成分コヒーレント・カーネルである。
この近似の解釈は簡単である。ROI内のマスク・ポリゴンからの画像寄与は、(SOCS展開における)部分コヒーレント結像の通常の式を用いて説明され、ROIの外側のポリゴンからの寄与は、より近似的に説明される。このように、すべてのマスク・ポイントからの寄与は、二重に計算されることなく、近似の程度が異なった状態で説明される。この積分方法は、ROIの境界において突然異なるものになるが、これにより、ROIの外側からの寄与がゼロに落ちる現在行われている方法に比べて改善される。
第2積分は正しくはインコヒーレント積分ではない。というのは、角括弧(squarebracket)内のマスク様の項がコヒーレンス
Figure 0004395048
によって決まるからである。インコヒーレントの場合はデルタ関数のコヒーレンスに相当し、これは、マスクが低誘電率(low-k)の配線からなるときには最終的に良好な近似にならない。リソグラフィでは通常、光源のエネルギーの合計を1に正規化する。すなわち、限定されたコヒーレンスおよびクロム・マスクでは、角括弧内の量は常に、純粋なインコヒーレントの場合よりも小さくなる。このインコヒーレントの仮定が十分に正確であれば、第2積分は線形コンボリューションになり、本発明の方法によく適している。
本発明を3つの別個の部分に分けて説明する。第1に、光学リソグラフィにおいて光学的近接効果補正に適用されるアルゴリズムを導入する。普通なら特定のユーザ定義OPCカーネルに対して発散する従来技術で用いられる無限積分の代わりに、ポリゴンの各セクタごとに有限積分を用いる。全セクタに対して積分を行うのではなく、2つの三角形にわたって積分すると、有限積分が実現される。カーネルの範囲が極めて大きい場合でさえ、この積分は依然として発散しない。というのは、有限な面積が積分されるからである。第2に、べき法則カーネルについての解析的な手法を提示する。この手法により、セクタの数値積分が解析的な式の計算に変形され、そのため、計算スピードがかなり速くなる。第3に、従来技術で示唆されるようにカーネル関数を切り取る代わりにマスクを切り取ることによって、マスクを複数の領域に分割して、中距離および遠距離の影響など相互作用の影響を計算するためにある方法を導入する。このように分割すると、遠距離および中距離の近接効果の影響の計算が効率よく簡単になり、OPC環境の応用例に良好に適合される。
波面空間周波数の様々なスケール
図1に、高周波波面収差による光の散乱の概略図を示す。高周波波面収差10は、波長λのmサイクルで示されている。そのため、散乱12は、波長、サイクル数、周波数、および開口数の関数になる。瞳(pupil)における位相変調の高調波成分(harmonic component)は、開口数(瞳半径)にわたってmサイクルの周期性を有し、像面において散乱距離mλ/NAだけ光を逸脱させることになる。そのため、光学的カーネルの半径を0.5μmに設定すると、無視される強度には、中距離空間周波数ならびに遠距離のフレアが含まれることになる。実際、最初の37個のゼルニケ(Zernike)項以外にさらに、すべての位相周波数からの寄与が無視されることになる。
これらの無視された周波数は、一般に分離間隔が約1μm以上の、近くにある微細配線の幅に対する大型パッドの影響に関する診断測定値に関係している。さらに、積分範囲を適度に拡張することによって、1次部分コヒーレント画像計算の精度を改善することが望ましいであろう。これよりもわずかに大きいスケールを考慮する場合、一般に、約2μmよりも離れたテスト構造の周りにフィル・パターンを配置する際に観察されるような描画の差異をモデル化すると有利である。それとは正反対に、無視し得ないフレアの寄与が、数ミリメートルという範囲にわたって生じることが知られている。
一般に、小さな絶対値のべき法則指数によって長いスケールにわたるデータが特徴づけられ、比較的大きなべき指数を伴う項が、より短い範囲にわたって寄与する。リソグラフィ・レンズでは、極めて低い周波数(収差)に関しては大きなストレール比(Strehl ratio)が得られる。このことは、問題の画像ポイントの約λ/NA以内の構造体によっては少量の光しか逸脱し得ないことを暗に示唆している。このため、(3に近づく)べき法則指数によって左右される大きなフレア・レベルが生じるとは誰も予想しないであろう。というのは、かなりのフレア強度は、λ/NAに比べて大きな距離にわたってしか蓄積され得ないからである。一般に、2.5程度のべき法則指数が、インコヒーレントなフレアを左右する。標準の37個のゼルニケ項以外に、近距離波面リップルが依然として重要になり得る。というのは、このリップルが、近くの構造体間でコヒーレントまたは部分コヒーレントな相互作用に影響を及ぼすからである。光源が、低シグマ(σ)で強制的な環状(annular)4重極(quadrupole)など狭い構成のコヒーレンスを提供するときは特にそうである。他の中距離相互作用の影響を考慮に入れた実験的なカーネルを採用すると有益である。このカーネルは、レジストのローディングの影響など、本質的に非光学的なものとし得る。
一般に、典型的なマスク・ポリゴンよりもはるかに粗いグリッドを用いて極めて長い範囲にわたって寄与を積分するとより効率的である。こうすると、効率的に改善を行うことができる。というのは、一度に多数の画像ポイントについて周期的グリッド(密度マップ)上で局所的に平均されたパターンによってコンボリューションを実行することが可能だからである。FFT(高速フーリエ変換)は、高速なビットマップ・コンボリューションを行う従来の方法である。マスク・ポリゴンによる直接積分は、中距離において適切に実行される。
フレア以外の影響
レジスト処理により、フレア以外の重大な影響が生じる。このレジストの影響の発生箇所は、光酸/塩基の拡散、現像液のローディングの影響、または空気中の汚染物によるものであり得る。レジストの影響は通常、全レジスト化学モデルまたは集中(lumped)パラメータ・モデルによってモデル化される。近似として、このレジストの影響は、実験的に較正されたレジスト・カーネルによる画像強度のインコヒーレント・コンボリューションによって記述することもできる。理論(calculated)画像強度に対してレジスト・カーネルの線形コンボリューションを実施するか、あるいは、双1次変換にレジスト・カーネルを取り込み、SOCS(コヒーレンス源の和)分解を行い、上記で説明したように、マスク関数とコヒーレントな固有カーネルの間でコンボリューションを実施することができる。
図2に、中距離および遠距離スケールを含めるようにリソグラフィ・シミュレーションの積分範囲を拡張する、本発明で提案されるアルゴリズム20の流れ図を示す。マスクを、遠距離計算22および中距離計算24用に分割する。ポリゴンのピンニング(pinning)26を中距離計算のもとで実施し、ポリゴン・セクタを分解し(28)、三角形コンボリューションを実施する(30)。ポリゴン・ピンニング・アルゴリズムの説明は、上記で特定した関連の相互参照出願で定義され教示される。次いで、セクタ寄与を合成し(32)、光学的近接効果補正用の空間像を計算する(34)。
半無限コーナからの有限積分
本発明の主要な要素は、半無限コーナからの有限積分を求めることである。マスク・ポリゴンの頂点からのセクタ寄与は、セクタに対して発散するカーネル、例えば、べき法則カーネルr−γ(γ≦2)でポリゴンをコンボリューションする状態で正規化される。リソグラフィ技術分野では、マスク・ポリゴンは、本質的に半無限であるコーナを有するオープン・セクタの重ね合わせとして表すことができることが知られているが、これらのセクタはある方向には有界でなく、潜在的に無限大の寄与が生じる可能性がある。
もちろん、個々のセクタは、有限のポリゴンに対するコンボリューションを得るという目的のための単なる手段である。このため、1つの解決策は、離れた周辺のところで、例えば現行技術のウエハでは301mmのところで、すべてのセクタを制限することである。ただし、この技法は精度に影響を及ぼす。
好ましい解法は、以下の考察に基づいている。ポリゴンからの寄与を計算する観察ポイント
Figure 0004395048
を仮定すると、ストークス(Stokes)またはグリーン(Green)の定理を用いて面積コンボリューションが周辺構造体の周りで
Figure 0004395048
に依存する積分に変換され、次いでこれが、各辺に沿った積分の和になる。
ある辺について得られる不定積分をQとすると、頂点
Figure 0004395048
と、頂点
Figure 0004395048
の間の特定の辺からの寄与はQn+1−Qになる。項Qn+1は、3つの量に関してパラメータ化し得る。この3つの量とは、辺の向きである
Figure 0004395048
と、
Figure 0004395048
からこの辺までの垂直距離である
Figure 0004395048
と、この垂線をθ=0の原点と定義して、
Figure 0004395048
から
Figure 0004395048
までの極座標角度である
Figure 0004395048
である。これらの量を図3に示す。Qの変数はθだけであり、これは、この辺に沿った個々の端点の特定の位置によって決まることに留意されたい。
各辺ごとにその不定積分に積分定数
Figure 0004395048
を含めることもできる。ここで、
Figure 0004395048
はθに無関係であると仮定する。この積分定数は、不定積分中にしか存在せず、この辺の2つの端点における不定積分の値の差を取るときにはゼロになる。たとえそうであっても、この積分定数により、分離した頂点からの無限大の寄与を排除することができる。
各辺からの寄与に積分定数を加えると、ポリゴンに対する積分は、次のように複数の辺にわたる合計として表される。
Figure 0004395048
ここで、Fは、n個の辺を有する個々のマスク・ポリゴンからの、例えばフレアからの寄与を示す。式(9)の括弧で括られた項はそれぞれ、この辺の1つの端点からの寄与を表す。これらの項を編成し直すことによって、Fを再構成して複数の頂点にわたる合計にすることができる。こうすると、複数の非有界セクタにわたる合計が次のように得られる。
Figure 0004395048
この新たな和形式(複数のコーナにわたる合計)中の各項内で積分定数が消去されなくても、やはり積分定数は全体としてこのポリゴンに対して消去されることに留意されたい。実際、上記の関数依存性に従う限り、任意の積分定数を用いることができる。このことは、個々の非有界コーナから生じる特異点を解くのに重要である。Qn,n−1−Qn+1,nが無限大になり得るとしても、合計を変えずに各コーナの寄与を有限のまま残す項
Figure 0004395048
を加えることによって、この合計を変換することができる。
これを実現する最も簡単な方法は、各コーナの寄与を、1対の三角形から合計したフレアにすることである。この方法の基礎になっているのは、端点に常に無関係なθの1つの値があることであり、これはすなわちθ=0である。というのは、θ=0は、この辺から問題の点までの垂線によって明白に定義されるからである。次いで、
Figure 0004395048
と決めることができる。このように決めると、角括弧の項はもはや非有界ではなくなる。図3に、1対の三角形32、34から合計されたフレア値に対する各コーナの寄与を計算するための幾何形状を示す。
以下に、三角形コンボリューションの導出を明確に示す。図4を参照し、かつカーネルを、
r≧Rminの場合はG(r,θ)、
r<Rminの場合は0(11)
と仮定し、Lを、図に示すhおよびθを伴うクロス・ハッチングした区域42で示す三角形ACDAの積分と定義する。h≧Rminの場合(場合1)は、
Figure 0004395048
であり、ただし、
Figure 0004395048
である。
図5に示すようにh<Rminの場合(場合2)には、この三角形の積分は、以下に示すようにL’(h,θ)=三角形ACDA−三角形CDECで与えられる。
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
である。
図6に示すように
Figure 0004395048
の場合(場合3)には、この三角形の積分は、L”(h,θ)=0で与えられる。というのは、三角形全体がカーネルのホールの内部にあるからである。
セクタ・コンボリューションのルール
このポリゴン・コンボリューション法は、前に述べ、かつ図3に示すように、1つの頂点当たり2つの三角形からの寄与を計算するというものである。これらの三角形の寄与をすべての頂点にわたって合計した後で、このポリゴンの正味の寄与が得られる。このポリゴンは任意の形状のものとすることができ、かつ観察ポイントxはポリゴンの内側にも外側にもし得るので、各三角形の寄与の符号に関するルールが必要である。ほとんどの場合、リソグラフィ用マスク・パターンは、水平、垂直、および45°の線分だけで形成されたポリゴンを含む。したがって、アルゴリズムは、90°のセクタに加えて45°のセクタを取り扱わなければならない。このため、任意のポリゴン内に存在し得る可能なセクタのタイプは96個になる。時計周りの頂点横断方向と反時計周りの頂点横断方向の間の対称性と、凸状セクタと凹状セクタの間の非対称性を考慮に入れることによって、一意的に決まるセクタ数は24に減る。頂点の内角が180°以下のときセクタは凸になり、そうでない場合にはセクタは凹になる。さらに、別の研究から、セクタ・コンボリューションは、他の4つの特定のセクタ間で大きさが同じであることが示される。図7に示すように、6つの基本グループA〜Fに24個の異なるセクタを示す。
負になることはないコンボリューションの数値は、生成される三角形が同じなので各グループのセクタについて同じであり、そのため、一意的に決まるセクタ数は6つの基本セクタに減る。これらの6つの基本セクタについてセクタ・コンボリューションが求められると、それを様々なxについてルックアップ・テーブルに記憶することができる。各グループ内のセクタのいずれか1つが、符号規則に関して対応するルールが設けられる限り、基本セクタになり得ることに留意されたい。これらの三角形コンボリューションの符号Ψもルックアップ・テーブル内に記述することができる。45°セクタの場合、この1対の三角形の符号規則がさらに複雑になる。図8〜図9に、符号の割当てに関する2つの異なる方法(senario)を示す。これら2つの三角形の符号は、図8に示すようにこれら2つの三角形が重なり合うか、あるいは、図9に示すように、隣接したままであるが重なり合わないかどうかに応じて、同じまたは反対のものとし得る。これは、xがこのセクタに対してどこに配置されるかによって決まる。このさらなる条件を一般化することによって、1組の符号の割当てテーブルを構築して、これら2つの三角形の符号を決めることができる。
符号決定の一般ルール
図10および図11を参照すると、90°および45°のセクタについての符号の決定に関する一般ルールは次のように確定される。第1三角形の符号をΨ1とし、第2三角形の符号をΨ2とする。Ψ1についてのルールは、このセクタ内の辺#1側の2つの区画およびそれらの反対側の区画についてはΨ1=+1になることを単に示している。それ以外では、Ψ1には−1が割り当てられる。セクタが凹である場合、Ψ1には−1が掛けられ、そうでない場合には+1が掛けられ変化しない。セクタは、その内角が180°よりも大きい場合に凹になり、そうでない場合には凸になる。Ψ2についてのルールでは単に、2つの三角形が重なり合わない場合にはΨ2=Ψ1になり、そうでない場合にはΨ2=−Ψ1になる。
この符号決定プロセスは、以下のやり方で決定される。まず、テーブル索引用の2つの符号マトリックスが生成される。各マトリックスの行および列のインデックスは、上、下、右、左、右上、左上、右下、および左下の8つの基本方向によって与えられる。行インデックスにはこのセクタの第1辺の方向が割り当てられ、列インデックスには第2辺の方向が割り当てられる。これらの行および列のインデックスにより、セクタ・タイプが一意的に指定される。三角形コンボリューションの符号は、xが実空間における8つの区画のそれぞれの中にあるときにマトリックスに記憶される。一般にMat1(edge1,edge2)と称する第1符号マトリックス要素により、xが存在し得る8つの区画のどれが、第1三角形に正の符号を与えることになるかが決まる。一般にMat2(edge1,edge2)と称する第2マトリックスにより、xが存在し得る8つの区画のどれが、第1三角形と比較して第2三角形に同じ符号を与えるかが決まる。
次に、このセクタの第1および第2の辺の方向に基づいて、考慮中の任意のセクタについて、行および列のインデックスを求める。第1マトリックスは、8つの区画からなるサブセットのうち、どのサブセットが正の符号を有し、どのサブセットが負の符号を有するかを示す。特定のxについて、xが存在する区画を求める。この区画の番号がマトリックス入力と一致する場合、第1三角形コンボリューションの符号は正になる。
セクタが凸(または凹)の場合、得られる符号には、用いられる規則に応じて−1(または+1)が掛けられる。
次いで、第2符号マトリックスMat2で、同じ行および列のインデックスを用いる。xが存在した区画が、第2マトリックス入力と一致する場合、第2三角形コンボリューションの符号は第1三角形と同じになり、そうでない場合にはこの符号は反対の符号になる。
図12〜図13に、個々の三角形コンボリューションの符号を見つける手順を図式的に示す。図12に、90°および45°の向きの構造体の辺についてのマスク・スペースの8つの区画1〜8を示す。図13に、例として、2つの辺によって画定されるセクタを示す。行インデックスは右上方向102であり、列インデックスは右方向104である。この例では、上記手順ステップから、領域2、3、6、および7が正の符号を有し、残りの領域が負の符号を有する必要がある。この例では、xが領域1内にあるので、領域1には負の符号が割り当てられる。ただし、このセクタが凹であると、この符号は反対になる。このセクタが凸の場合、符号はそのままである。第2符号テーブルによれば、領域1は正の符号に相当し、そのため、第2三角形の符号は第1三角形と同じになる。
べき法則カーネルを用いたポリゴン・コンボリューション
上述したように、フレアの影響は、点像分布関数のコヒーレンス距離Rminの外側の寄与を検討している限り、インコヒーレント・カーネルとして扱うことができる。一般に、フレア計算に関するインコヒーレント・カーネルは、以下の式G(r)のべき法則に従う。
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
である。
一般のカーネルについて、観察ポイント
Figure 0004395048
におけるコンボリューションの値を求めるには通常、数値積分が必要とされる。しかし、べき法則カーネルでは、三角形コンボリューションQ(Ψn,n−1,hn,n−1,θn,n−1)は、ある種の代数的な操作をすると、I(a,b)で示す不完全ベータ関数を含む解析的な式に変形することができる。Beta(ベータ)は、ベータ関数から求められる定数である。上記の前セクションで述べた場合1、2、および3について、三角形コンボリューションを以下に示す。
Q(Ψ,h,θ)=ΨL(h,θ)、(i=1,2,3) (18)
場合1では、
Figure 0004395048
になる。ただし、
Figure 0004395048
である。そのため、
Figure 0004395048
になる。
場合2では、
Figure 0004395048
になる。
場合3では、
(Ψ,h,θ)=0 (23)
になる。
上記の式は、γ≠2の場合のみ有効である。γ=2の場合、関数Lは、以下のように変形される。
(h,θ)=Ψ[θ ln(2h/Rmin)−1/2f(π−2θ)] (24)
ただし、f(x)はクラウゼン(Clausen)積分である。
不完全ベータ関数およびクラウゼン積分は、特定のγ値についてあらかじめ求め、後続の任意のQの計算中のテーブル索引用に記憶することができる。Qについての解析的な式により、ルックアップ・テーブルによるコンボリューションの計算がかなり速くなり、そのため時間のかかる数値積分が回避される。不完全ベータ関数は、以下の式から導出される。
Figure 0004395048
Figure 0004395048
ただし、Betaは、以下に示すベータ関数であり、
Figure 0004395048
は、xを変数とした以下に示す不完全ベータ関数である。
Figure 0004395048
恒等式
(a,b)=1−I1−x(b,a)
(a,b)=1 (29)
および式(26)を用いて、以下の式が得られる。
Figure 0004395048
minの影響
minは、ポリゴン・コンボリューションがROIの内側からの寄与を二重に計算しないように決める。このROIは本質的に、回折限界PSFおよび最初の37個のゼルニケ項の収差に相当するものである。この理由から、半径Rminを有するフレア・カーネル内に「ホール」を配置する。Rminは、ほぼλ/NAで与えられるものである。Rmin内からのすべてのフレア(Flare)の寄与は、ROI内で計算される部分コヒーレント双1次コンボリューションによって取り扱われる。
インコヒーレントなフレアの計算の遠距離および中距離への分割
べき法則カーネルの広さが無限(γ≦2)である場合など、遠距離の影響では、セクタ・コンボリューションは、フル・チップに対して適用しなければならない。しかし、マスク上のすべてのポリゴンに対してセクタ・コンボリューションを行うことは実際的ではなく、その必要もない。効率の理由から、フル・マスク・パターンMを2つの領域に分割する。点像分布関数を収差の影響とフレアにさらに分割するのとは異なり、このフレア・カーネルは遠距離および中距離に分割せず、その代わりにマスクを分割することに留意されたい。第1に、図14に示すように、M1に対する遠距離コンボリューションを、粗いグリッド110に対する高速フーリエ変換によって行う。各グリッド・ポイント112は、この特定のグリッド・ポイント内部のパターンの平均パターン密度を表す。このステップは、1枚のマスク当たり1回行わなければならない。というのは、各グリッド・ポイント内のパターン密度は、光学的近接効果補正の後でも大きく変わらないことを想定しているからである。第2に、近距離コンボリューションを、図15に示すように、領域M2内でポリゴン・コンボリューションによって行う。もちろん、M2と同じサイズのものである領域M3を、寄与を二重に計算しないように減ずる必要がある。直線性および加算性は、以下に示すようにコンボリューション演算子において利用される。ここで、マスク強度関数およびカーネル(Kernel)は、次のように定義される。
Figure 0004395048
および
Figure 0004395048
ただし、
Figure 0004395048
はコンボリューション演算を表す。
M2は、xおよびy方向の所定の距離+/−Rmidによって画定された領域である。M1により、マスクの残りの部分が画定される。M1およびM2においてポリゴンの寄与を二重に計算しないように、両方の領域内に存在するポリゴンは領域の境界に留める(clip)必要がある。M3は、M2によってトリミングされたホールを表し、容易に計算することができる。次いで、ポリゴン・ピンニング・アルゴリズムを適用する。
図14〜図15では、全マスクMをM1およびM2に分割する。M2は、Rmidによって画定されたサイズの矩形として示されている。マスクM1は、マスクの残りの部分を示す。M1上の各グリッド・ポイントxは、平均密度ρを有する。マスクM2に、+/−Rmidによって画定された範囲内のポリゴン114を示す。M1およびM2の両方に重なり合うポリゴンは、右上コーナの矩形116のように境界上に留め固定する(pin)必要がある。M3は、二重計算しないように後で減算する必要があるマスク部分である。図16〜図17は、近距離および中距離の計算の空間的な広がりを示す概略図である。図16に、通常は、近距離計算の評価領域の外側にガード・バンドが必要とされ、それによってこの計算における周期性パラメータを求めて疑似周期的要件を満足させることを示す。図17に、カーネルの広さがはるかに大きいので、同じ評価ボックスに関して、中距離計算にはより大きな面積を含める必要があることを示す。
特定の好ましい実施形態に即して本発明を詳細に説明してきたが、上記説明に照らして当業者には、多くの代替、改変、および変形が容易に想起されることが明らかである。したがって、特許請求の範囲は、任意のこのような代替、改変、および変形を、本発明の真の範囲および趣旨に含まれるものとして包含することが企図されている。
高周波波面収差による光の散乱を示す概略図である。 中距離および遠距離スケールを含めるようにリソグラフィ・シミュレーションの積分範囲を拡張する、本発明で提案されるアルゴリズムを示す流れ図である。 1対の三角形から合計されたフレア値に対する各コーナの寄与を計算するための幾何形状を示す図である。 h≧Rminの条件で三角形コンボリューションを導出するための幾何形状を示す図である。 h<Rminの条件で三角形コンボリューションを導出するための幾何形状を示す図である。 h/cosθ<Rminの条件で三角形コンボリューションを導出するための幾何形状を示す図である。 セクタ・コンボリューションに用いるための、6つの基本グループに分けて示した24個の異なるセクタを示す概略図である。 セクタ・コンボリューションで用いる符号が互いに反対である2つの重なり合う三角形を示す図である。 セクタ・コンボリューションに用いる符号が互いに同じである2つの重なり合わない三角形を示す図である。 直交する(90°)頂点についての符号生成例を示す図である。 45°の頂点についての符号生成例を示す図である。 90°および45°の向きの構造体の辺についてのマスク・スペースの8つの区画を図式的に示す図である。 本発明の辺の規則に従って2辺によって画定されたセクタを図式的に示す図である。 粗いグリッドに対して実施される遠距離コンボリューションを示す図であり、各グリッド・ポイントは、この特定のグリッド・ポイント内部のパターンの平均パターン密度を表す。 ある領域内でポリゴン・コンボリューションによって実施される近距離コンボリューションを示す図である。 近距離計算の空間的な広がりを示す概略図である。 中距離計算の空間的な広がりを示す概略図である。
符号の説明
1、2、3、4、5、6、7、8 区画
10 高周波波面収差
12 散乱
102 右上方向
104 右方向
110 グリッド
112 グリッド・ポイント
114 ポリゴン
116 矩形

Claims (29)

  1. セクタに基づく光学的近接効果補正を実施する方法であって、
    規定のコーナを有するマスク・ポリゴンにおいて、各コーナのセクタをそれぞれ有限形状に分解するステップと、
    前記セクタ内の前記有限形状に対して有限積分を行い、前記マスク・ポリゴンの前記各コーナからのセクタ寄与を求めるステップと、
    前記マスク・ポリゴンの前記セクタ寄与を合計するステップと、
    前記マスク・ポリゴンと他のマスク・ポリゴンとの間の相互作用の影響を計算するステップとを含む、方法。
  2. 前記有限形状が少なくとも2つの三角形を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 非有界セクタに三角形コンボリューションを用いるステップを含む、請求項2に記載の方法。
  4. べき法則によるインコヒーレント・カーネルに三角形コンボリューションを用いるステップを含む、請求項2に記載の方法。
  5. 前記三角形コンボリューションを、不完全ベータ関数を含む解析的な式に変形して、数値積分を容易にするステップを含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記コンボリューションが関心領域(ROI)内部からのいかなる寄与も二重に計算しないように、最小半径Rminを決めるステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
  7. 前記寄与の正負の符号のルールを設けるステップを含み、このステップが、
    セクタ内の第1辺側の2つの区画および前記区画の反対側の区画について、第1三角形の前記符号を+1に割り当て、それ以外では第1三角形の前記符号を−1に割り当てるステップと、
    前記第1三角形と第2三角形が重なり合わない場合には、第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号に割り当て、そうでない場合には、前記第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号の反対の符号に割り当てるステップとを含む、請求項に記載の方法。
  8. 前記半径Rminを有するフレア・カーネル内で解析的にホールを定義するステップと、前記フレアからの寄与のうちRmin内にあるものはどれも部分コヒーレント双1次コンボリューションで処理するステップとを含む、請求項に記載の方法。
  9. 前記半径Rminをほぼλ/NAに等しくするステップをさらに含む、請求項に記載の方法。
  10. 前記相互作用の影響を計算する前記ステップが、複数のマスク・ポリゴンからなる粗いグリッドにわたって積分するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  11. 中距離および遠距離スケールが含まれるようにリソグラフィ・シミュレーションの積分を拡張する方法であって、
    少なくとも2つのマスク・ポリゴンを、コーナおよび辺を有する三角形からなるセクタに分割し分解するステップと、
    複数の前記少なくとも2つのマスク・ポリゴンのコーナからの距離スケールの計算を実施するステップと、
    ポリゴン・ピンニング・アルゴリズムを実施するステップと、
    前記複数のマスク・ポリゴンの三角形コンボリューションを実施して、セクタ寄与を求めるステップと、
    前記セクタの寄与を合成して、前記複数の前記マスク・ポリゴンのコンボリューションを得るステップと、
    前記複数の前記マスク・ポリゴンを合成するステップと、
    前記合成されたセクタ寄与から、光学的近接効果補正用の空間像を計算するステップと
    を含む、方法。
  12. 距離スケール計算を実施する前記ステップが、前記マスク・ポリゴンの半無限コーナからの有限積分を実施するステップを含む、請求項11に記載の方法。
  13. 画像サンプリング・ポイントにおいて前記ポリゴンのうち前記それぞれのものからの寄与を計算するステップと、
    第1および第2位置ベクトルを用いて、面積コンボリューションを、周辺構造体の周りで位置ベクトルに依存する積分に変換するステップと、
    前記辺に対して得られた不定積分を割り当てて、前記第1位置ベクトルの頂点と第2位置ベクトルの頂点の間で、ある辺からの寄与が各位置ベクトルにおいて求められた不定積分の差になるようにするステップと、
    前記得られた不定積分を、前記辺の向き、前記位置ベクトルから前記辺までの垂直距離、および前記第1位置ベクトルから第2位置ベクトルまで定義された極座標角度の関数としてパラメータ化するステップとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
  14. 前記寄与の正負の符号のルールを設けるステップを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記ルールが、45°および90°のセクタを含む6つの基本セクタを含めて前記セクタに適合される、請求項14に記載の方法。
  16. 前記コンボリューションの値を、前記位置ベクトルの様々な値について第1ルックアップ・テーブルに記憶するステップを含む、請求項14に記載の方法。
  17. 前記ルールが、
    セクタ内の第1辺側の2つの区画および前記区画の反対側の区画について、第1三角形の前記符号を+1に割り当て、それ以外前記第1三角形の前記符号を−1に割り当てるステップと、
    前記第1三角形と第2三角形が重なり合わない場合には、第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号に割り当て、そうでない場合には前記第2三角形の前記符号を前記第1三角形の前記符号の反対の符号に割り当てるステップとを含む、請求項14に記載の方法。
  18. 第2ルックアップ・テーブルに前記三角形コンボリューションの前記符号を記憶するステップを含み、前記第2テーブルが、行インデックスおよび列インデックスを有し、前記行インデックスが前記セクタの前記第1辺に割り当てられ、前記列インデックスが第2辺の方向に割り当てられて、前記セクタ・タイプが一義的に指定され、前記行および列のインデックスが、前記第1および第2の辺の方向に基づいて、考慮中の任意のセクタに対して決定される、請求項17に記載の方法。
  19. 前記第2ルックアップ・テーブルに関して、第1符号マトリックスMat1(edge1,edge2)および第2符号マトリックスMat2(edge1,edge2)を有するステップを含み、前記マトリックスが、前記第1および第2の辺の関数として表現され、それによって、前記第1符号マトリックスMat1(edge1,edge2)により、前記方向ベクトルが存在し得る前記区画のどれが、前記第1三角形に正の符号を与えるかが決まり、前記第2マトリックスMat2(edge1,edge2)により、前記方向ベクトルが存在し得る前記区画のどれが、前記第1三角形と比較して前記第2三角形に同じ符号を与えるかが決まる、請求項18に記載の方法。
  20. 各マトリックスの前記行および列のインデックスが、上、下、右、左、右上、左上、右下、および左下を含む8つの基本区画によって与えられる、請求項19に記載の方法。
  21. 前記符号に、前記セクタが凸である場合には−1を掛け、前記セクタが凹の場合には+1を掛けるステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
  22. 前記第1マトリックスが、前記区画のサブセットのうち、どのサブセットが正の符号を有し、どのサブセットが負の符号を有するかを示し、それによって、前記区画がマトリックス入力と一致する場合、前記第1三角形コンボリューションの前記符号に正の値が割り当てられる、請求項19に記載の方法。
  23. 前記第2三角形コンボリューションの前記符号を、前記方向ベクトルが存在した前記第1三角形の区画の前記符号に等しく設定し、そうでない場合には、前記符号を、前記第1三角形コンボリューションの符号の反対の符号に設定するステップを含む、請求項22に記載の方法。
  24. 各辺ごとに積分定数を不定積分に加えるステップをさらに含み、前記積分定数が前記極座標角度に無関係であり、前記積分定数により、分離した頂点からの無限大の寄与を排除することができる、請求項23に記載の方法。
  25. 前記積分定数を、前記不定積分中にしか存在させないようにするステップをさらに含み、前記積分定数が、前記辺の2つの端点における前記不定積分の差を取るときにゼロになる、請求項24に記載の方法。
  26. 複数の辺を有する個々のマスク・ポリゴンからの寄与が、前記辺の各コーナごとに、前記積分定数が前記不定積分から減算されるように、前記マスク・ポリゴンの各辺にわたって加算されることによって表される、請求項24に記載の方法。
  27. 個々の非有界コーナから生じる特異点を、各コーナの寄与が、前記三角形コンボリューションの1対の前記三角形からのフレアの和になるように、コーナの寄与を有限のままにする積分定数項を加えることによって解くステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
  28. 前記コーナの寄与が、1つの頂点当たり前記三角形のうちの2つの三角形からの寄与の計算を含み、その結果、前記三角形コンボリューションからの前記寄与をすべての頂点にわたって合計した後で、前記マスク・ポリゴンの正味の寄与が得られる、請求項27に記載の方法。
  29. 光学的近接効果補正を実施する方法ステップを実施するための、マシンが実行可能な命令からなるプログラムを確実に実施する機械可読プログラム記憶装置であって、前記方法ステップが、
    規定のコーナを有するマスク・ポリゴンにおいて、各コーナのセクタをそれぞれ有限形状に分解するステップと、
    前記セクタ内の前記有限形状に対して有限積分を行い、前記マスク・ポリゴンの前記各コーナからのセクタ寄与を求めるステップと、
    前記マスク・ポリゴンの前記セクタ寄与を合計するステップと、
    前記マスク・ポリゴンと他のマスク・ポリゴンとの間の相互作用の影響を計算するステップとを含む、
    プログラム記憶装置。
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