JP4393293B2 - 浚渫装置 - Google Patents
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またダムなどでは貯水量を回復するために定期的に浚渫が行われる。これはダム湖などでは水の流れがほとんどなくなるため流入した水が長時間貯まり、湖底には土砂が沈降して堆積しやすく、特にウォッシュロードと呼ばれる細粒土はそのほとんどが湖底に堆積し、徐々にダム湖の貯水量を減少させるためである。
ポンプによって水底からスラリー(土砂と水との混合物)を吸引する場合には、吸い上げたスラリーを土砂と水とに分離するため、これを沈殿池に導入し、沈降促進剤をそこに投入して土砂を沈殿分離させるか、フィルターやサイクロン方式によって土砂と水とを強制的に分離して、分離した水をもとの水源に還流させている。
一方、ポンプによって水底からスラリーを吸引して沈殿池で土砂を沈殿させる方法では、沈殿池を設けるための広大なスペースを要するため、港湾の埋め立てなどのように広いスペースを水域と分離・区画して設定できる場合にのみその実施が限定されており、従って狭隘な場所ではこの方法を利用することはできず、また、沈降促進剤を用いるため薬害の発生を危惧する下流域の住民との折衝が難航し、工事が困難となることも多い。
そこで特許文献1の「筏式泥回収装置」では、分離した濁水を水底まで誘導して吸引口の近くに放流することで濁水の拡散を抑制する手段が提案され、また、特許文献2の「浚渫工法および装置」では、分離した水の一部で土砂を噴き上げるとともに、残りの水を吸引口に向けて噴出する手段が提案されている。
吸引管12の先端には湖底に配置されて土砂の吸引を行う吸引部12a(吸引口)が取り付けられている。吸引部は吸引しようとする土砂2の性質に適したものが選択される。すなわち、吸引部には吸引管の先端の開口(吸引口12a)そのものを用いることもできるが、比較的粘度が低い砂状の土砂を吸引する場合には図2に示したような側方から土砂を吸引する吸引部を、粘土の高い泥状の土砂を吸引する場合には図1及び図3に示したような上方から土砂を吸引する吸引部を用いることが好ましい。
一方、吸引管12から分岐した戻水管24は、(1)濁水の流速を減少させるためにその先端の吐出口をラッパ状に拡径して湖底に対向して配置し濁水を湖底に沈滞させるもの(図示せず)、(2)吸引部の吸引口の近くでゆっくりと濁水を放流して濁水の一部を循環させるもの(図2(a)および図3(a))の他、図2の吸引部では、(3)戻水管の先端に設けたノズル17から噴出した濁水を、吸引口の内面に形成したスロートを通過させることで濁水のほとんど全てを循環させるとともに、エゼクタ効果により吸引口から土砂を吸引するもの(図2(b))や、図3の吸引部では、(4)吸引部の内部において湖底の土砂に濁水を噴出して土砂を軟化させるもの(図3(b))、の中から適当なものを選択することができる。
なお濁水が分離した水域の下面から漏れ出ることもありうるが、濁水は予め冷却されているため湖底に沈降して周囲に拡散することなく、沈降した濁水中の微細な土砂は、時間の経過とともに湖底に速やかに沈殿する。
なお吸引管12及び戻水管24と支持リング27とは固定されておらず、吸引管及び戻水管は支持リングに対して摺動することができるため、巻取装置15によって垂下される長さを調節することができるようになっている。
ここで吊り滑車25は浚渫装置10を移動することにより吸引管12及び戻水管24からの張力によって索道ワイヤ28上を動かすものとすることもでき、また、吊り滑車25に操作ワイヤ(図示せず)を取り付けて、この操作ワイヤをダム湖の岸若しくは堤体通路30上から操作することによって索道ワイヤ28上を動かすものとすることもできる。
また支持ポスト26を移動可能とし、又は、支持ポストを複数対設置し、選択した一対の支持ポスト26に索道ワイヤ28を張り渡すことで、より広い範囲での浚渫が可能となる。なお、本実施例では索道ワイヤ28は宙に張り渡しているが、これを水中や水面に張り渡すことも可能である。
ここで一方の支持ポスト26に近接する位置にはけん引ワイヤ42の巻取り・開放を行う第1ウィンチ(図示せず)が設置され、他方の支持ポスト26の近接位置には、第2滑車がけん引ワイヤ42からの張力によって不用意に移動しないように第2滑車35に繋がれた操作ロープ37を操作するための第2ウィンチ(図示せず)が取り付けられている。なおけん引ワイヤ42を巻き取るとともに操作ロープ37を緩めることで、第2滑車35を操作ロープを緩めた分だけ第1ウィンチ側に移動させることができる。逆に、けん引ワイヤ42を緩めるとともに第2ウィンチにより操作ロープ37を引き寄せることで、レーキ38を適当な位置まで移動させることができる。
しかしこの速度は土砂2の性質に合わせて調節することが好ましい。すなわち湖底に堆積している土砂の粒径が大きく、レーキ38による埋没物36の掻き取りに動作よっても土砂の舞い上がりが少ない場合には、レーキの作動速度を速めることができ、逆に土砂の粒径が小さく、掻き取り動作の際の土砂の舞い上がりが多い場合には、レーキの作動速度を遅くすることが好ましい。このようにレーキをゆっくりと作動させて埋没物の掻き取りを行うことで、下準備としての埋没物の除去を、水中での土砂(濁り)の舞い上がり・拡散を最小限にすることが可能となり、また舞い上がった土砂も容易に再び湖底に沈降することができる。さらに土砂を掻き取りによって軟化させることで、後に行うサクションポンプによる土砂の吸引を行いやすくすることができる。
本実施例の浚渫方法では、土砂の吸引に先立ち湖底の土砂中にその全部又は一部を埋没している埋没物36をレーキ38によって予め取り去る作業が行われる。
この段階では、まず第1、第2ウィンチによりけん引ワイヤ42の先端に取り付けられたレーキ38を、けん引ワイヤ42と操作ロープ37の長さを調節して第2滑車35を操作することにより水面上方の宙に浮かせた状態で所定の位置まで移動させ、その後けん引ワイヤ42のみを緩めることでレーキ38を垂下し、湖底の土砂に濁りを発生させないようにゆっくりと着底させる。
次に、操作ロープを緩めながらけん引ワイヤ42を第1ウィンチで巻き取ることにより第2滑車を第1ウィンチ側に引き寄せて、着底させたレーキ38によって湖底の木枝などの埋没物36の掻き取りを行う。このときけん引ワイヤ42の巻き取りは毎秒1cm程度とする。
レーキ38により掻き取られた木枝等の埋没物36は最終的には岸まで引き寄せられ、その後有用なものは置物や各種加工材料として利用され、不要なものは適正に廃棄処分される。
なお図は省略するが、レーキが巨大な堆積物などに引っ掛かりその引き上げが不能な状況に陥った場合のために、第1ウィンチによるレーキの巻き取りの方向と反対側の方向にレーキを引き戻すための引き戻しワイヤをL型レーキの背の部分に設けてやってもよい。また引き戻しワイヤを用いる代わりに、L字型のレーキの櫛歯に一定以上の負荷がかかった場合にその屈曲を開放する機構を設けてやることによって、レーキの引き上げ不能な事態の発生を回避することができる。この屈曲を開放する機構には例えば、櫛歯をバネが取り付けられたヒンジとする構成や、櫛歯を板バネによって構成するものなどが考えられる。
この作業ではまず、堤体通路30上を浚渫装置10および土砂トレー13を、浚渫を行いたい位置の近くまで移動する。このとき吊り滑車25と支持リング27を介して、連結された吸引管12と戻水管24もこれに伴って浚渫位置まで移動される。
次に連結された吸引管12および戻水管24を、巻取装置15から送り出すことで吸引口12aおよび吐出口24aを湖底まで下ろす。
次に水と混合してスラリー状となった土砂2を吸い上げ、これを遠心分離機18にかけることによって土砂から水分を除去する。水分が除去された土砂は土砂トレー13に排出される。一方、土砂から除去された水分(濁水)は、遠心分離機18に隣接して配置された冷却機22に送られ、一定の温度だけ冷却される。冷却機にはコンプレッサーを利用した冷却装置や、夜間電力を利用して作った氷などが充填された冷却塔などを使用することができる。
放出される濁水は、上述した吸引部(吸引口)のタイプに応じて、広い面積の吐出口からゆっくりと放出される場合と、狭い面積の吐出口から勢いよく放出される場合とがある。
吐出口24aは吸引部の近くに配置されているため、吐出口から放出された濁水の一部又は全部は、吸引口12aから土砂2とともに再び吸引されて循環することになる。また吸引口12aから吸引されなかった濁水も、その温度が周囲の水温よりも低いため、速やかに沈降する。沈降した濁水中の微細な土砂は、時間の経過とともに湖底に速やかに沈殿する。
なお、例えば一定量の吸引したスラリーもしくはスラリーから分離した濁水を一時的に蓄えることができるバッファータンク(図示せず)を浚渫装置10に備えてやってもよい。バッファータンクを用いれば、例えばカバー体34を用いて分離した水域内で、濁水を湖底の土砂に噴出して軟化させる場合などに、ノズルからの濁水の放出を止めたあとに、カバー体に囲まれた水域の濁水を吸引し、これをバッファータンクに一時的に蓄えることで、分離した水域の濁りが落ち着くのを待つことなく、迅速に次の浚渫箇所に吸引部を移動させて浚渫を続行することができる。
なお、沈殿池を設置するための広いスペースをとることができる場合であっても、沈殿池を設けたくない場合などには当然に本発明の浚渫方法を用いることができる。
10 浚渫装置
11 動力台車
12 吸引管
12a 吸引口
13 土砂トレー
15 巻取装置
17 ノズル
18 遠心分離機
19 フレーム
20 レーキ装置
21 シート材
22 冷却機
23 開閉窓
24 戻水管
24a 吐出口
25 吊り滑車
26 支持ポスト
27 支持リング
28 索道ワイヤ
29 ワイヤ
30 堤体通路
34 カバー体
35 第2滑車
36 埋没物
37 操作ロープ
38 レーキ
42 けん引ワイヤ
Claims (5)
- ダム湖、湖沼、河川、港湾等の水底に堆積した土砂(2)を浚渫する際に発生する濁水の拡散を抑制しながら浚渫を行うための浚渫装置(10)であって、
前記水底から土砂を吸引するための吸引管(12)と、
該吸引管の先端の吸引口(12a)から土砂を吸引するためのサクションポンプと、
吸引した土砂から濁水を分離するための遠心分離機(18)と、
該遠心分離機で土砂から分離した濁水を冷却するための冷却機(22)と、
冷却した濁水を水底に戻すための戻水管(24)と、
を備えた、ことを特徴とする浚渫装置。 - 前記吸引管(12)が、ダム湖、湖沼等の岸に設置された一対の支持ポスト(26)間に張り渡された索道ワイヤ(28)に支えられ、かつ、索道ワイヤに沿って移動可能な状態で水底まで垂下される、ことを特徴とする請求項1に記載の浚渫装置。
- 前記戻水管(24)が、ダム湖、湖沼等の岸に設置された一対の支持ポスト(26)間に張り渡された索道ワイヤ(28)に支えられ、かつ、索道ワイヤに沿って移動可能な状態で水底まで垂下される、ことを特徴とする請求項1に記載の浚渫装置。
- 前記浚渫装置(10)が、浚渫したい箇所の水面上方に設置された堤体通路(30)上を移動し、または、船上に搭載されて浚渫したい箇所の水上まで運搬される、ことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の浚渫装置。
- 前記吸引管(12)の吸引口(12a)および戻水管(24)の吐出口(24a)を取り囲み、かつ、浚渫時に水底を含む一定の水域を他の水域と分離するために水底と対向する面を開口するカバー体(34)を更に備えた、ことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の浚渫装置。
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